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JBL SG520もどきアンプの製作~その5~ [オーディオ]

2022年7月18日の日記

JBL SG-520 test.jpg ほぼ? 完成しました。

今日は海の日で休みです。iruchanは3連休反対派? なんですけど,さすがにこう暑いと3連休くらいにならないと身体が休まりませんね~。皆さんお身体ご自愛ください。

さて,3連休なので,このところ取り組んでいる,JBLの名機SG520のもどきアンプを完成させたいと思います。

前回は基板を完成させ,基板のテストまででした。今回はケースを作って,電源部をテストします。

☆ケース

ケースはLEADのP-12を使いました。W250×H60×D150mmです。ちょっと小さすぎましたけど,小さなアンプの方が好きなので,よかったと思います。今回,ウッドケースに入れよう,と思っているのでケースはしょぼいです。

JBL SG-520 interior.jpg 内部です。

大きな茶色のコンデンサはEQ素子の15000pFと47000pFのディップマイカです。EQ素子用だともう1桁小さいのが普通ですが,SG520は抵抗が小さいため,時定数を稼ぐため,コンデンサの容量が大きくなっています。

オリジナルはペーパーコンのようです。そりゃそうですよね。今だって,こんな大きな容量だとフィルムコンになるでしょう。

電源SWは秋月で売っている照光式にしました。金属ケース入りでなかなかかっこいいです。

JBL SG-520 power switch.jpg LEDはピンクにしました。ちょっとハデかな.....。

iruchanはパイロットはピンクと決めているので,このSWも中を分解して,LEDをピンクに交換しました。AC点火にして,電源offと同時に消灯するようにしています。DC点火だとぼ~~っと消えていきますからね。なお,AC点火の場合は,▼のように逆耐圧保護用のシリコンDiを入れてください。

☆電源部

JBLのSG520はツェナーDiを使った簡単な定電圧電源になっています。フィードバック回路はないので,安定化電源じゃありませんが,小電流のプリアンプ用としては十分だと思います。

電源部回路1.jpg 電源部

2SA640と3Ωでオリジナルにはない,電流制限型保護回路を入れています。ないとバチッとやった瞬間に2N176が死んじゃいますから,入れておいた方がよいです。

整流は印Panjit社製のSDI2100を使いました。100V,2Aの定格です。ショットキーだから音もよいでしょう。規格表を見ても,逆回復時間trrの記載がないんですけど,ショットキーDiは理論上,0なはずですから,書いてないんでしょう。

オリジナルはMalloryのFW-50というブリッジDiです。素子はシリコンで,50V,2Aの定格のようです。FRDじゃない,普通のシリコンDiはノイズが出ますから,わざわざオリジナルのFW-50を使う必要はないでしょう。

半導体は制御Trにゲルマの2N176を使い,同じくゲルマの2N2614とダーリントン接続してあります。オリジナルは前者はMotorola,後者はRCAのようですが,どちらも同じものを作っているようです。

iruchanは今回,できるだけオリジナルと同じTrを入手したかったのですが,どちらもニセ物[雨]

2N176はポピュラーな出力Trで,カーラジオの出力に使われたようです。1956年,Motorolaが開発しましたが,爆売れしたようで,一時は全パワーTrの半分を占めたようです。RCA以外にも他社が作っており,SG520で使っているのはGM傘下のDelco製のようです。そういや,Motorolaはもとはカーラジオが発祥でしたね。MotorolaはこのTrの成功で半導体会社としての基礎を確立したようです。

VCE=30Vとごく普通のゲルマのパワーTrですが,Pcが90Wと言うのは驚き[晴れ]

NECの2SB250だと同じ耐圧で54Wですから,このあたり,日米の半導体技術の差なんでしょうか。

ただ,残念ながら,オリジナルは結構高く,eBayでは$20以上します。送料も同じ位するので,当面,あきらめます。

まあ,ニセ物もVBEを測定すると0.2Vくらいだし,ゲルマのようです。たぶん,90年代にどこかのセットメーカから注文が入って,適当な規格のTO-3のゲルマのTrをリマークしたものでしょう。

とはいえ,オリジナルの2N176を手に入れても,うっかり飛ばしてしまうこともあり得るので,試験中はニセ物にしておいて,そのうち,本物が手に入ったら交換することにします。

2N2614は買ったときはTO-5のメタルキャンだし,本物,と思っていましたが,規格表を見るとTO-1がオリジナルのようなので違うようです。

2N176.jpg 2N176

dsiって何の会社だろう.....。どこかの半導体商社なんだろうな,と思っていたら,独ミュンヘン近郊のDSI GmbHという会社で,米NJSみたいに,主にこういう製造中止のディスクリート半導体を作っている会社のようです。取引先にAirbusやSiemensやALSTOMなんて会社もありますので,信用できそうです。そういや,電車って,半導体の方が先に製造中止になって,機器の保守に困るんですけど,こういうときにこんな会社が供給してくれれば助かりますね。

でも,その割に明らかにケースを削って型番を書き直した形跡もありますし,もっと丁寧に作れよ,なんて思います[雨]

一応,電源とすべての信号配線を終了し,電源を投入してオシロと発振器をつないでみると正常に動作しているようです。

トランスはいつもだったらトロイダルにするんですけど,SG520にはあわない感じです。そもそも1960年代にトロイダルはないでしょうしね。

ということでEIコアの小さなトランスにしました。オリジナルはケース入りの非常に立派なトランスなんですけど......。でも中身はEIコアですよね。

ちなみに,蛇足ですけど,本機の最大電流は60mAほどと,結構大きいです。オリジナルのSG520の2N176は,発熱すると思います。また,オリジナルは先ほども書いたように,保護回路が入っていませんので,調整するときはご注意ください。できれば,調整ついでに0.1AくらいのPTCサーミスタを入れておくことをお勧めします。

次回,レコードを聴いてみたい,と思います。

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ALTEC 405Aが届きました [オーディオ]

2022年4月16日の日記

altec 405A-1.jpg ALTEC 405A

ALTECのスピーカーが昔から好きでした。いつか,604-8Gを買って鳴らしてみたい.....って思っていました。

真空管アンプの時代,出力がそれほど大きくないので,このような高能率のスピーカーが愛用されていました。

38cmという大口径のSPの中央に同軸のホーントウィータを備え,フルレンジ的な使い方ができましたし,なにより103dB/w/mと言う高能率は驚き。ホーントウィータと揃える意味もあったでしょうけど,コーン型スピーカーとしては異例の高能率でした。

604のシリーズは古く,最初の604Aは1945年の発売のようです。終戦の年にこんなスピーカーを発売するのですから驚きます。マグネットは当時ですから当然ですけどアルニコ5を使っていますが,最後までアルニコのようです。ちなみに8Gだと1975年発売のようです。

残念ながら,3年後の8H以降はマルチセルラーホーンをやめてしまい,マンタレーホーンと呼ばれる普通のホーンになっちゃたのが残念です。

ライバルのJBLはこういう同軸スピーカーを出していませんし,フルレンジとしてはLE-8Tくらいだったのとくらべると異色ですが,なにより真空管時代には最高峰のスピーカーのひとつで,マニアの憧れだったと思います。

と言う次第で,iruchanもいずれは604を.....なんて考えていたのですが,さすがに,もう今からこういう大きなSPを使う元気はありません。

と思っていたのですけど,より小さな 全然違うやないか 405Aはいつか手に入れたい,と思っていました。パンケーキと呼ばれる6インチ半の755Eなんかも欲しかったのですけれど.....これはもう手が届かないほど高くなっていますね。パンケーキはレンズもとても好きなんですけどね。

405は4インチ径で,日本で言えば,10cmですね。604とは大きな違いです。

でも,Altecの音がするし,何よりこのフルレンジはボーカルにぴったり,と言われていて,ジャズボーカルなんかを聴くと最高の音がする,と言われています。iruchanも300B持っているので,300Bシングルで405Aを鳴らしてジャズ聴くと最高......という気がします。

実際,You Tubeなどでエア録音? した音を聴くとまさに絶品,と言う感じですね......[晴れ]

まあボーカル用,と言うのはそもそも405Aの設計条件が空港やホールなどのパブリックアドレス(PA)用なのですから,当然でしょう。

そういえば,新幹線など,電車のスピーカーも大体,10cmくらいのフルレンジが使われていて,このサイズのスピーカの主要な用途はそのようなものでしょう。新幹線のスピーカを1個,持っていますが,どう見てもFE-103です。

とはいえ,iruchanは新幹線の音が我慢ならないんですけど......。

確か,金田明彦氏も同様のことを何度もMJ誌で書かれていた,と思います。"耳を破壊する" って書かれていた,と思いますけど,まったく同感です。

なんで正直,あれだけひずんでいて,特に高域,低域ともにまったく出ないひどい音なんでしょう。アンプもひどいんだと思いますけど,いくら,人の声が明瞭に聞こえる,と言うのが最大の目的としても,新幹線や電車にはもっとHiFiなスピーカを使うよう,要望します。

ちょっと脱線しちゃいました.....(^^;)。

その点,このALTEC 405AはPA用としても最適で,非常によい音がする,と思います。やはりこの点,日米の力の差,なんでしょうか。

驚いたことに,Western Electricに源流を持つ,604755と異なり,古いユニットか,と思ったら1968年の発売で,マグネットはBa-フェライト系のIndox Vマグネットを使っています。米Indiana Steel Productsの製品のようです。フェライト磁石なので,外磁型となっています。

ちょっとその点,残念なんですけど,能率は93dB/w/mと高いのはマグネットの磁束が大きいからで,その分,普通の10cmスピーカーにくらべてマグネットが大きいので,バックロードホーンなどの場合,スピーカー背面のスペースに注意が必要です。パイオニアのPE-101やFOSTEXのFE-103用のキャビだと要注意です。

高能率なのは驚きで,裸で鳴らしてもCORALの4A-70が負けちゃうくらいでした....。4A-70は90dB/w/mなので,音量は半分です。

Indox Vマグネットは音がよかったようで,ALTECは409B411Cでも使用しているようです。

残念ながら,後で書きますけど,ALTECの経営が代わって405-8Hからデザインも大きく変わり,フレームは丸形に変わりますし,エッジもウレタンエッジに変わります。ウレタンエッジはすぐにボロボロになっちゃうので困ったものです。おまけに,センターコーンまで,アルミ製だったのがコーン紙に変わり,ちょっと残念に思います。

ALTECは1927年にWE在籍のエンジニアが設立した名門で,1941年にはLansing社を買収してAltec Lansingとなったのですが,LansingはJBLの創始者ですね。

ところが,1958年には買収されLTV社となりますが,1974年,連邦破産法11条を申請し,破産します。日本で言えば民事再生法ですね。その後,10年間,ALTEC社として再活動しますが,1984年に再び破産し,Gulton Industoriesに買収され,先に書いたように,同社のElectro-Voiceブランドとなりました。この間,GultonはMark IV社にすぐに買収されています。

1986年には,カーオーディオ専業のSparkomatic社がALTECブランドの使用許諾を得て,1992年にはAltec Lansing Technologiesとして社名変更します。

2002年からわずか3年間のことでしたけど,Mark IV社から代わったTelex Communicationsから業務用スピーカー部門が独立し,ALTECブランドが復活しましたが,2005年にはPlantronics社に1億6,600万ドルで買収され,携帯音楽用SPを作っていました。

2011年からはProphet Equity,さらに2012年10月にオークションで1,750万ドルでInfinity Lifestyle Brandsが買収しました。

なんか,1桁違うのが気になるのですが.....。それだけ,企業価値が毀損した,ということなのでしょうか。それに,こいつら,なに? って思ったのですけど,どうもどちらもファンドのようです。またいずれ,どこかへ売却,ということになるでしょう......[雨]

もう.....ややこしい......[雨][雨][雨]

それに,今,amazonでALTECと検索してもPC用のSPとか,ヘッドホンとかしか出てこないので,もはやHiFi用スピーカーやそのユニットの販売はしていないようです[雨]

そういう状況のせいか,405のシリーズも後になるとエレボイ製の405-8H以降,廉価版205-8AというものやAltec Lansing TechnologiesのCF-404-8ACF-204-8Aがありますが,この会社の性格から考えて,カーオーディオ用という感じです。いずれも405の流れをくむものですが,商標権の関係か,405とは名乗っていません。

iruchan的には,よく知っているのは405-8Hから,なんですけど,なんでも古い方が好きなので,405Aを探していました。とはいえ,もうALTECはSPユニットは製造・販売していないようなので,これらのユニットはとても貴重だと思います。

2月にeBayでペア$200で出ていたので,これでも安い,とは思ったのですが,最近,eBayはWatchlistに登録するとsellerからofferが来て,値下げしてくれることが多いので,そうして待っていたら,翌日,$175のofferが来て,即落札。送料で$60も取られましたけど,まあ,いい買い物だったんじゃあ,ないでしょうか。

とてもきれいな状態のもので,シリアル番号も4違うだけで,ほぼ同じでした。

売り手は驚いたことにドイツ人でしたけど,発送はSalt Lake cityからでした。米国に店を持っているのでしょう。

altec 405A.jpg 黒ラベルです。

一番古いものはラベルが緑色で,DIACONEと書かれているもののようですが,iruchanのはシリアル番号は#40000番台でした。比較的,新しい方のようです。

コーン紙の周りのビスコースが1個所,少し垂れていて,汚れていましたが,ホワイトガソリンできれいに拭き取れました。

ということはこれらのユニットは天井SPじゃなく,ちゃんと立てて使われていた,と思われます。

テストをかねて,裸のまま,松たか子さんの "Let it go~ありのままで~" を聴いたらもう絶品でした.....[晴れ]

さて,キャビネットはどうしようか......。

まずはバックロードですけど,普通の10cmフルレンジ用バックロードは高さ600mmくらいのものが多く,できれば,サブロクの板の横を使って910mm位の高さにしたいところです。

ただ,長岡鉄男氏の過去の記事を見ても,あまり10cmのバックロード,と言うのはないですね....。それに,普通のSPでいえば,側面にユニットをつけたタイプが多く,壁掛形のようです。

普通の? バックロードタイプだとD-10くらいでしょうか。

有名なのはスーパースワンですけど,さすがにちょっとこれは場所も取るし,なによりSP部が小さく,バッフル効果があまりなく,なにか不合理な気もして作る気がしません.....。

長岡氏の10cmバックロードはSPユニットを幅広の面に取りつけ,バックロード開口面を縦長の側面にした,壁掛け用のものが多く,通常のバックロードのものは見つかりません。

と言う次第で,ネッシー 出た~~ か......という気もしています。


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金田式CR型超シンプルプリアンプの製作~その4 テスト編~ [オーディオ]

2022年3月31日の日記

前回から4ヶ月が経ちました。一応,すべての基板をつくり,±電源を出力できるトラッキング電源を自作したので,それでテストしました。

電源部テスト.jpg ただいま,電源テスト中。

トランスは共立で売っている,HDB-8というトロイダルトランスです。

と言う次第ですけど,まだケースを加工してませんでしたし,前回,設計,製作した金田式オールFET電源は未テストです。

金田氏はオールFET超シンプルプリアンプ(No.122)でオールFETの電源が完成したら発表する,と書かれているのですが,発表しておられません。

ひょっとして,非安定化電源か,という気もしたのですけど,当時は電池式だったようですし,実際作った方も電池式のようです。

さすがにiruchanは電池でつくると電池の消耗が気になるし,かさばるので,AC電源でつくりました。

前回,LTspiceで設計し,シミュレーションして基板をつくったところまででした。

また,今回ケースも買ったので加工しました。

買ったのはまたAli Express。前回,モノラルLP用CR型EQアンプで使用したケースと同類のものです。オールアルミでパネルが豪華でとても見栄えのするケースです。おまけに送料入れても3,000円ほど。

今回のはサイズが225(W)×52(H)×217(D)mmというもの。金田氏はNo.122ではケースについては書かれていなくて,No.121のスーパーストレートプリアンプではタカチのOS-12BBと書かれているんですけど,タカチのにこんな型番のケースはないので,誤植なんじゃないでしょうか。こんな型番のケースがあったのでしょうか。でも,iruchanの方が断然小さいと思います。

ただ,Aliのはパネルがt6mmもあって加工が大変[雨]

前回,電源SWにトグルSWを使ったのですが,小判型の穴を開けるのに困ったので,今回は秋月で売っている照光式オルタネートSWを使いました。

ただ,残念ながら,φ16mmの大穴が必要。

と言うことでホールソーで開けました。

ところが......。

monotaroで買った,バイメタルのφ16mmというノーブランド品はダメ[雨][雨][雨]

芯がぶれていて,ボール盤で開けるのに苦労したのですが,案の定,穴が空いてみるとφ17mmになっています.....orz。

やはり怪しげな中国製は避けた方がよさそうです。

と言うことで次回は,ちゃんとした日本製じゃなくても日本ブランドのものにします。値段は倍するのですが,今回のはやはり安物買いの銭失い,でした.....[雨]

なお,アルミパネルに穴開けする場合,ホールソーは金属用と書かれたものじゃなくて,アルミ用と書かれていればベストですけど,木工用で十分です。金属用は鉄やステンレス用,と考えた方がよいです。刃に超硬合金を使ってチップを溶接しているのですが,刃の厚みが大きすぎ,穴開けする場合,固定しないと危険です。

秋月の照光式SWはなかなかよいもので,onにするとSWの周囲が光ります。

日本製の照光式SWは配電盤などのSW用で,プラのハウジングがチープで,それでも2,000円以上したりしますが,秋月のは金属ケースで,たった400円。on,off時の感触もとてもよいです。まあ,ちょっと作りがちゃちで,いつまでもつか,という気がしないでもないんですけどね。

発光色は青,赤,白とあり,金田さんは青が好きでパイロットには青色LEDをいつも使われていますけど,iruchanは青色LEDは大嫌いなのでパス。

iruchanはどれも気に入らないので,分解して電球色にしちゃいました.....[晴れ]

照光式SW1.jpg 中を分解して,電球色LEDに交換しました[晴れ]

次回は,パイロットはピンク,と決めているのでピンクにしようかと考えています。

さて,こうやってケースを加工し,電源と基板を再度,テストします。

電源は一発で動作しました。

なお,前回,出力電圧は±20Vで設計しましたけど,オリジナルの2N5465じゃなくて,耐圧の低い2N5462を使っている関係で±17Vに下げました。

実を言うと,2段目差動アンプのカスコードアンプとして使われている2N5462の非出力側がほぼVDS=40Vになっていることに気がつきました。これじゃ,耐圧ギリギリです。これに気がついて下げることにしましたけど,何の問題もなかったので,特に問題ないかもしれません。

EQアンプもフラットアンプも再度,通電してテストします。

実を言うと,ch. RだけがEQアンプ,フラットアンプともにオフセット調整ができず,発振かと焦りましたが,いずれもはんだづけミスでした。おかげで1週間つぶれましたが,ちゃんと動作するのを確認できました。

いよいよ次は入出力の配線をして最終確認したいと思います。

照光式SW.jpg 電球色なので感じがよいです。


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サブミニチュア管DCプリアンプの製作~その5・トラブル対策編~ [オーディオ]

2022年3月1日の日記

調整中.jpg ようやく調整に入りました。

調整中ですけど,仮設でもパイロットランプ(LED)はつけておくことにしています。

前回,出力段の6N16B-Vが1本,スパークして昇天してしまった,と報告しました。

被害は甚大で,急遽,6N16B-Vをウクライナに注文し,すぐに届きましたが,念のため,周辺の回路を調べてみると,ツェナーDiのRD24Fが単なる抵抗と化していますし,出力段には金田氏の原設計にはないんですけど,アイドリング測定用に10Ωの抵抗を入れてあるのですが,これが数kΩになっていました。

やはり過電流が流れたのは間違いなく,それでスパークしちゃったんですね......[雨][雨]

それで,てっきりiruchanは旧ソ連製の6N16B-Vが不良品だと判断し,なんや,スターリンもたいしたことあらへんな......って思ったのですけど.....。

末尾に-V(キリル文字では-Bですけど)がついているのは軍用で,特にOTKマークが入っているものは軍の規格適合品の証明で,信頼性が高いはずなのでおかしいな,とは思っていました。-Vがついているだけなら真空管メーカの品質管理の符号ですけど,OTKはソ連軍が受入検査をして合格した,と言う意味ですね。

とりあえず,これらの部品を交換し,6N16B-Vも新品に交換したのですが,現象は同じで,念のため,スライダックでゆっくり加圧してみるとかなり大きな電流が6N16B-Vに流れています。

こりゃまずい.....[雨]

と言う次第で,基板を取り外し,入念にチェックします。特に,プリント基板は自作なので,パターンが接触していないか,ハンダ屑がついてショートしていないか,チェックしましたが,異常ありません。

他にも抵抗や周辺のTrが壊れていないか,チェックしましたが,問題なさそうです。

蛇足ですけど,Trの不良は本当は外して調べるのが正しいですが,オンボードでも,P-N接合の電圧を見ると大体わかります。0.6V前後になれば,そのTrは正常です。

そのはずだったんですが.....

散々調べてもパターンミスや他に壊れた部品はありません。

そのうち,2段目のレベルシフト用のTrのエミッタ電位が片ch.がおかしいと言うことになんとか気がつきました。ここは金田氏の原設計(No.174 MJ '03.12)では三洋の2SA1967なんですけど,iruchanはモールドが嫌いなので,メタルキャンTO-5の2N5416を起用しています。

-Vccにつながっている方のTrのエミッタ電位が+になっています。

えっ~~~!!

金田氏の記事では,-102.8Vと書かれていますから,完全におかしいです。実際,正常な方はこれくらいの電圧です。

測ってみると+100Vくらいもあり,これじゃ,下側の6N16B-Vは異常な+の高電圧がg1にかかっていたことになり,スパークしたのだと思います。

なんや,こいつが悪いんか......。

と思って,2N5416を外して調べてみてもhFEが測定でき,正常です。

一応,念のため,別の2N5416に代えてみても現象は同じで,エミッタが+になっています。

こんなはずはないので,まだプリント基板がおかしいかと散々調べても異常は見つかりません。AOCがおかしいかと思いましたけど,Spiceでシミュレーションしても関係ありません。

ようやく,全部の真空管を抜いてこの電位を調べたら,やはり+になるのでおかしいことに気がつきました。

ということでようやく,このTrが高電圧で降伏し,リーク電流が異常に増えているのだろう,と想像しました。

Trの特性で,VBEが0Vでもリーク電流がどうしても少し流れ,これはどの規格表にも書いていますけど,普通,数十μAで,これならエミッタ電位は1V変わるかどうか,と言うくらいのはずですが,今回,5mA程度流れているようです。2N5416も熱っチッチです。3Wくらいコレクタ損失が出ているようです。

そこで,東芝の2SA1924(VCE=-400V,IC=-0.5A, PC=10W)に交換してみますと,正常に動作します。エミッタ電位も-100Vくらいになります。

やはり2N5416が不良のようです。VCE=-50Vくらいで降伏してしまう感じです。

実を言うと,この2N5416は5年前,eBay経由で中国から買ったものです.....[雨]

悪かったのはスターリンじゃなく,習近平でした.....orz。

どれもきれいな仕上がりで,メーカ表記がモトローラのものとオンセミのものが2種類ありましたけど,社名変更が1999年のことなので,それほど怪しくはない,って思っていました。

このうち,ON(オンセミ)と表記されたものが怪しいようです。

ということでM(モトローラ)と表記されたものに交換したら正常に動作します。

おそらく,ONと書かれたものは何か別の,耐圧が-50Vくらいの普通のTrをリマークしたもののようです。

安かったのですが,もう中国からは買いません。皆さんもお気をつけください。

フラット基板調整.jpg あやしい~~~[雨][雨]

このまま,東芝の2SA1924に交換しても良かったのですが,モールドパッケージだし,電極配置が2N5416とは異なるので,モトローラの2N5416に交換しました。

ついでに,初段の定電流回路とAOCに使われている,2SD756も耐圧ギリギリなので,2SC2551に交換しました。

おかげですっかり泥沼にはまってしまい,まる1ヶ月間,膠着状態でした.....。

          ☆          ☆          ☆

1918年3月,ドイツ帝国の西部戦線司令官ルーデンドルフは最後の賭けに出ます。ロシアは前の年に事実上,敗北し,1917年3月3日にブレスト・リトフスクで講和条約に調印していました。東部戦線の戦力を西部戦線に全面的に投入し,新兵器の戦車A7Vとパリ砲を投入し,乾坤一擲の大作戦に打って出ます。前年4月にアメリカがドイツに宣戦布告していましたが,まだ大部隊は到着していませんでした。

3月21日,ついにパリ砲が火を噴き,合計183発が発射されます。当初,パリ市民は飛行船からの爆撃,と考えましたが,砲弾の破片を分析し,大砲によるものであることが判明して驚愕します。

ドイツ軍はパリまで120kmの地点まで進撃しますが,5月にはアメリカ遠征軍が到着,7月には第2次マルヌ会戦で敗北するとドイツ軍の進撃は止まり,8月にはこの攻勢が終息します。

原因は補給不足であるとか,米軍の大部隊による攻勢とも言われていますが,スペイン風邪の流行による影響も大きかった,と思います。

そもそも第1次世界大戦が塹壕戦になって4年もの間,膠着状態に陥ったのは開戦劈頭のシュリーフェン作戦の失敗によるものであり,参謀総長のモルトケが前任のシュリーフェンが立案した作戦を改変して2個師団を削減し,また,先陣を切っていた,第1軍のクルック将軍がセダンの戦いの再現をもくろんでフランス第5軍を包囲殲滅して決定的勝利を得ようとパリを目前にして回頭したため,です。

そのあと,モルトケはヴィルヘルム2世に,「陛下,この戦争は我々の負けです。」と報告したことが知られています。参謀総長がそう言うなら戦争はもうおしまい,ですね。

モルトケと言っても,普仏戦争の大勝利の立役者であった,大モルトケの甥で,本来は参謀総長に就くような人物ではなかったようです。でも,戦争の行方は正しく見通していました。

小モルトケはヴィルヘルム1世の孫であったヴィルヘルム2世が「俺もモルトケが欲しい」ということで昇格させた人物でした。ルーデンドルフはモルトケを憎んでいたでしょう。

やはり三代目は国を滅ぼすようですね......。

          ☆          ☆          ☆

iruchanはなんとか膠着状態を脱し,これでようやく調整に入れます。詳細はまた次回です。



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サブミニチュア管DCプリアンプの製作~その4・再びウクライナから愛を込めて~ [オーディオ]

2022年2月14日の日記

前回,現在作っているサブミニDCプリアンプのフラットアンプ出力に使用している,旧ソ連軍用6N16Bが1本,あえなく戦死? しちゃったので,急遽,ウクライナ軍に緊急増派要請することにしました。

1月31日に注文して,2月11日には届きました。なんと12日で,早っ!

ウクライナの球屋さん,郵便局,税関や空港の皆さん,どうもありがとう。

ということで,6N16Bの予備を緊急確保したのですが,ついでに何本か,また旧ソ連の真空管を買いました。

10J12S

10J12S.jpg Svetlana 10Ж12С

ご存じ,WEの310A互換球として,最近脚光を浴びています。キリル文字だと10Ж12Сです。

それにしてもどういう機器に使用していたのか......。まさか,共産党幹部向けにハリウッド映画の再生用として91Aアンプを購入してそれの予備,と言うことはないでしょう.....と,思ったのですけど,マジでそうかも。

日本製では,日本電気のCZ-501Dが互換球で,逓信省納品の電話用ですね。海底通信ケーブルなどの長距離通信に使われていた,無装架線輪(コイル)ケーブルのアンプ用に使われていたようですが,310A10J12Sもこういう機器に使われていたのでしょうか。

iruchanもCZ-501Dを何本か持っていますが,ヒータ電圧が違うし,電極の構造も違い,CZ-501Dはプレートむき出しで,シールドがついていません。ちなみに,よく310Aメッシュプレートなんて表現がありますけど,これは正確にはメッシュシールドですのでご注意ください。

CZ-501DはEf=3.5V,If=1Aなので直接,310Aの代わりに挿せません。ヒータは直列にして6.3Vを供給するとよいでしょう。


また,CZ-501Dは非常にきれいな球なんですが,なんかきれいすぎるし,作りも310Aと違うので,300Bと一緒に,310Aの代わりに使うにはちょっと違うよな,という気がします。

旧ソ連の10J12Sは今まで見向きもされませんでしたが,本家の310Aの入手が困難となり,値が上がっています。作りも310Aそっくりで,ちょっとガラスが下の方がくびれて細くなっているのと,ガラスに色がついていて薄く緑色になっている点が本家と違います。

実はこれはガラスの品質があまりよくない証拠で,マツダのST管が戦時中から戦後,こんな色のガラスになっていますけど,これはガラスに鉛が含まれているからです。

電極はよく似ています。iruchanのは310Aだとスモールパンチと呼ばれるタイプのようです。ただ,どうもメッシュシールドのものはなさそうだし,オークションや球屋のサイトに出ているものを見ると,Date Codeは1965年から1979年とかなり新しいものばかり。1950年代製,というのは見かけません。

それに,どうやらこの10J12Sを正規のWE 310AとしてWE同様,ベースに黄色くプリントして売っている場合があるようなのでご注意ください。裾すぼまりのガラスの外形や,ゲッターが共産圏特有の皿形ゲッターでしたら,もとはSVETLANAの10J12Sです。

と言うことから,うがった見方をするとこの球は内需向けではなく,外貨稼ぎのため,1960年代半ばから310Aの代替として輸出用として作られたのではないかと.....。一部の販社はベースに黄色いペイントでWestern Electric 310Aとプリントして売っていたのでは,という気がします。

amazonあたりでも売っているのは驚きますが,ebayでも1本$60~$120,と言ったところで,かつて310Aが3,500円くらいだった時代を覚えていますけど,それより高い値がついています。

旧ソ連では,米欧系,特に,なぜか欧州ではなく,米国球と同じ規格の球を多く作っていましたが,WEの互換球というのは珍しく,また,10J12SもサンクトペテルブルクのSvetlana工場製のみのようです。他の工場製のものは見られません。それに,どうも製造された数は少ないようで,ebayなどでもあまり見かけませんし,extremely rareと書いてあることも多く,希少な球のようです。なおさら,最初からニセWE310Aを作って西側のオーディオマニアを攪乱しようと狙っていたのか,という気もします。偽造ポンド札を作ってイギリスを攪乱しようとしたベルンハルト作戦かよって?

驚いたことに1970年代末まで製造されていたようで,iruchanのも Ⅸ 72 とプリントされているので,1972年9月の製造のようです。

10J12S-1.jpg サンクトペテルブルクで1972年9月に製造

なお,こちらでも書きましたとおり,現在のSVETLANAブランドの球は,このサンクトペテルブルク工場製のものではないので,ご注意ください。

今回,たった1本,と言うことだったのか,安く,たった£2.20で買うことができました。

最近,中国の湖南省・長沙市にある,長沙恒陽電子有限公司がPSVANEのブランドで310Aの復刻版を作っています。日本では2本で35,000円もするのに驚き! 確か,昔は300Bもそれくらいの値段だったよな~。

それでもよく売れているようです。実際に手にしたことはないですけど,WEBの写真を見ても出来がよさそうです。

6S41S

6C41S.jpg Ulyanov 6S41S

ご存じ,6S33S6С33С)の片割れです。ロシア文字では,6С41Сですので,そのまま,日本では6C41Cと書かれることが多いですけど,キリル文字ではCはSですので,ネット上も6C41Cで検索すると海外のページはほとんど出てきません。ebayも同様です。

レギュレータ用の大型管で,前から気になっていました。送信管の211845を除くと,単3極管としては同じロシアのGM70同様,最大級でしょう。製造は6S19Pを大量に作っていた,Ulyanov工場のようです。

6S33Sは巨大すぎるし,カソード共通で,シングルのアンプとしては使いにくいですけど,6S41Sは適当な大きさで,単3極管なのでシングルのアンプとしても使えるでしょう。

ただ,要注意なのはゲッター。

6S19P同様,こちらの記事にも書きましたが,ジルコニウムゲッターのものが多く,見た目,ゲッターがないので,どうも真空管としては変な感じがします。Eimacなど,高信頼を要求される送信管にはジルコニウムゲッターのものもあるのですが,真空管マニアとしては普通のゲッターの方がよいですね。

前から気になっていましたが,今回,通常のバリウムゲッターのものがありましたので,買いました。こっちの方がやはりかっこよいです。ちょっと見,8045Gみたいですね~~。

6J1B, 6J2B

6J1B, 6J2B.jpg Melz 6Ж2Б & Svetlana 6Ж1Б

今回,EQアンプには6J1Bを使用しています。米Raytheon社の5702と互換性がありますから,差し替えができます。キリル文字だと6Ж1Бです。

ただ,驚いたことに,以前こちらで書きましたけど,なぜか5702と電極の引き出しが同じインライン配列のものと,6111同様の円形のものと2種類あります。一体,どうなっとるんや.....。

使ってみると,円形配置の方がソケットに差してもぐらぐらしないし,使いやすいです。

と思っていたら,円形配置の6J2Bというサブミニ5極管があったので面白半分で買ってみました。特性は6AS6と同じらしく,Gm=3.2mSです。ちなみに6J1B6AK5同等で,Gm=5mSです。

ところが,どうも規格表を見ると,こいつもインライン配列のものがあるようです。いったい,ロシア人はなにを考えとるんや.....[雨]

工場はこういうサブミニ管を作っていた,Melz工場製のようです。Moscow Electro Lamp Worksが社名のようで,その名の通り,モスクワに工場があったようです。

iruchanの6J2Bは製造が1972年製で,ゲッターは古い短冊形のようです。以前買った,6J1Bの方は共産圏の球の特徴である,皿形ゲッターです。

続きはこちらへ.....。

          ☆         ☆          ☆

どうも独裁者プーチンがウクライナ侵攻を決意したようで,子分のベラルーシのルカシェンコと組んで,部隊を集結させているようです。クリミア半島が戦略上の要衝なので,いまもセヴァストポリに軍港がありますけど,そこの領有を恒久化し,ウクライナを支配下に置くため,軍事侵攻することを企んでいるようです。

最終的に併合するのか,それとも親米反露のゼレンスキー政権を倒して傀儡を立てるつもりなのか,かつてのハンガリー動乱(1956)やチェコ動乱(1968)と同じ図式となる可能性が高いように思います。

おそらく,欧米は軍事行動には踏み込めないし,天然ガスの供給を絶たれると困るので,経済制裁も形ばかりのものになるでしょう。結局,西側はなにもできない.....ということをもうひとつの赤い国が横でじっと見ているんじゃないか,という気がします。台湾を侵略しても西側はなにもしないだろう,ということを予想して今はオリンピックやりながら横目で観察しているのではないか,と思います。

iruchanは自由と民主主義,人権を守るウクライナの人を応援します。


2月15日追記

ロシアのサブミニ5極管で,電極の引き出しがインラインのものと円形のものがあることに気がつきましたが,どうやら,末尾のサフィックスで区別するようです。-Bがインライン配置で,-BPが円形配置のようです。

例:6Ж1Б, 6Ж1Б-В6J1B6J1B-V)→インライン配置

6Ж1Б-ВР6J1B-VR)→円形配置

なんですけど.....今回購入した6J2B6Ж1Б-Вとスタンプしてあります。やっぱりよくわからない.....[雨]


2月26日追記

eBayで買った球屋さんがNo longer a registered user.と出ていることを見つけました。2020年からのeBay sellerであったようですが,何かあったようです。

彼が無事でいることを祈るばかりです。


2023年8月5日追記

eBayでwatch listに追加しておくと,たまにsellerからofferが来て,値引きしてくれることがあります。

10J12Sが2本,ペアで出ていたのでwatch listに追加していたら,先日,$10引きのオファーが来ました。

2本で$93だったのが$83になるし,送料入れても$98だったので買っちゃいました。

ただ,驚いたのは売り手は米国人で,コロラドの住所だったんですけど.......昨日,届いたら発送地はロシアのチェリャビンスクでした。

amazonでものを買うと,最近,たまに中国から送られてくる,と言うことがありますけど,びっくりでした。

iruchanはウクライナを支持しているので,ロシア球もウクライナからしか買わないことにしていますが,これはしかたないですね......[雨]

そういや,チェリャビンスクって,2013年2月に隕石が落ちた街ですよね.......。

6J12S.jpg Svetlana製の10J12S

製造は1967年8月で,軍が受け入れたOTK-39という印が押してあります。かと思うと,ВЫПуск Ⅺ 1967というはんこもあり,英訳すると,release 11.1967の意のようです。

とすると,11月には軍から放出されたのか,という気がします。何でそんなに作った早々,放出しちゃったのか....[雨]

まあ,よくわかりませんが,iruchanはWEの310Aは4本しか持っていないし,10J12Sも非常に出来がよいし,いずれ300Bでアンプを作ろう,と思っているので,挿してみたい,と思います。でも,これって,呉越同舟って気もしますけどね.....[雪]

やはり旧ソ連の10J12Sは最近は高くなっているようで,その売り手は今,$120で売っています....[台風]


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JBL SG520もどきアンプの製作~その4~ [オーディオ]

2022年2月6日の日記

JBLのSG520型プリアンプを現代によみがえらせようと,オリジナルのTrを使って基板を作りました。キモとなるGEの2N508も入手したので,作ってみました。GEが作った最初のオーディオ用Trで,ゲルマニウムTrです。

SG520の音はこのTrの良さ,と言うことが言えますけど,SG520はオールゲルマじゃなく,フラットアンプは初段以外はシリコンTrの2N2712, 2N3638を使っています。SG520はオールゲルマ,という風説がまかり通っていますので,ご注意ください。特に,NPNのゲルマは作りにくかったので,NPN Trは大体,シリコンです。

それにしても前回の記事から9年も経っちゃってますね......(爆)。

どうも申し訳ありません。

部品としては,ほぼオリジナルと同じ半導体を入手できましたが,問題はCR類。特に,EQ素子が0.047μFと0.015μFとかなり大きな値です。

普通はEQ素子はマイカか,スチロールコンデンサを使うのですが,こんな大容量のものはないので,オリジナルはペーパーコンを使っているようです。

おまけに各段間のカップリングコンデンサは25μFや2μFなど,大きな値で,オリジナルのアンプではすべて電解コンデンサを使っています。

どうしてもバイポーラTrは入力インピーダンスが低いため,このようなシングルのアンプの場合は1段ずつ,大容量カップリングコンデンサを入れる必要がありますが,フィルムコンデンサはそう大容量のものは作れず,0.1μFくらいが関の山だったので,当時は音の悪い電解コンデンサを使わざるを得ませんでした。

これは半導体アンプでは最初から問題とされ,段間を直結する回路が工夫されますが,結局,1970年代後半にDCアンプが登場するまで,この問題は解決しませんでした。

と言う次第で,実を言うと,JBLのSG520は電解コンデンサの音を聴いているようなもの.....という気がするんですけどね。だから,オリジナルのPhilipsやMalloryの電解コンを探している方も多いと思います。といって,オリジナルと同じ年代の古いものは吸湿したりリークしてもうダメでしょう。

とはいえ,電源のフィルタやデカップリングコンデンサには電解コンを使わざるを得ません。iruchanは電解コンは日本製が一番,と思っているので,今回はニチコンのオーディオ用を使いました。

それと,オリジナルのEQ素子に使われているペーパーコンも吸湿してリークしているでしょうし,容量も経年変化してしまっていて,最初のオリジナルの音とはかけ離れてしまっている,と思います。

また,今はフィルムコンデンサでも20μFくらいのものがありますし,EQ素子も探せば大容量のディップマイカが手に入るはずです。

と言う次第で,iruchanはカップリングコンデンサに電解コンデンサを使いたくないので,今回,カップリングコンデンサは全部フィルムを使うことにします。お気に入りのニッセイ電機のフィルムコンデンサを使います。

EQ素子用には米軍用のディップマイカを使うことにしました。軍では何か,こんな大容量のマイカコンデンサが必要なんでしょうか。経年劣化や温度による変化がほぼない,という信頼性の高さが目的でしょうか。米国製だし,JBLのアンプにはぴったりでしょう。0.047μFと0.015μFがありました。SEコンほどじゃないけど,結構高かったですけどね.....。

と言う次第で,完成した基板はこんな感じになりました。

EQアンプ基板1.jpg 完成したEQアンプ基板

巨大なディップマイカに驚かされますけど.....。今にして思えば,無理してディップマイカ使わなくてフィルムコンでもよかったんではないかと思います。

カップリングコンは青いのがニッセイで,赤はニチコンのフィルムコンだと思います。

EQアンプ基板2.jpg 2N508です。

NJSとありますので,製造中止品を作っているNew Jersey Semiconductor製と思います。オリジナルのGE製も入手しましたけど,ちょっと怖いので,とりあえず,NJS製で試験してあとで交換するつもりです。しかし,それにしても今どき,2N508なんて古いTrの需要があるんでしょうか.....。

なおEQアンプは出力だけ,2N508じゃなく,2N2614を使っていますが,これは耐圧が足りないためです。2N508だとVCEO=-18Vですが,2N2614は-40Vです。

さて,ようやく基板が完成したので,通電して試験します。

こういうときに,昨年作ったトラッキングレギュレータが便利です。可変電圧出力ですし,マイナスも出力できますからね。SG520は-21Vが電源電圧です。

まあ,単に+出力の電源装置でも+と-を逆に接続すればいいだけの話なんですけどね....。

出力にオシロをつないで通電し,入力端子に指を触れてみるとオシロの波形が動くのでうまくいったようです。

sg520 1khz.jpg きれいな1kHzが出力されてひと安心です。

1MHzまでスイープしてもスムーズに出力波形が減衰し,高周波でのピークや発振もなさそうです。ホッ[晴れ]

特にノイズもなく,発振もしていないようなので特性を測ってみました。

基板テスト.jpg 基板テスト中。

☆EQアンプ特性

まずはEQアンプから。

EQ特性1.jpgEQアンプ特性です。

────が実測結果で,──がSpiceによるシミュレーション結果です。………は偏差です。

spice eq.jpg Spiceシミュレーションです。

最初,2N344を使ったら,ゲイン不足で,低域のEQ偏差が数dBにもなり,こちらで作った2SB54のモデルに代えてみたら正常です。実際に,実機も2SB542SB56で作ってみても面白いかもしれません。

Spiceのシミュレーション結果とほぼ一致していました。

実測結果はJBLの公式データとほぼ同じで,1kHzのゲインも32dBと,MMカートリッジ用としては妥当なところです。

低周波は偏差が小さいですが,高い方はどんどん離れていき,最大1.8dBもずれてしまいます。

iruchan的にはNGですけど,まあ,シングルのTrを使った回路ですし,何より古いTrを使っているので,こんなものか,とも思います。また,Spiceの結果とも一致しているので,設計上の問題のようです。特に,NF型イコライザでは,高域では100%負帰還がかかるので,こういう傾向があります。これは黒田徹氏の本にもあるとおり,CR1段のLPFで改善できますが,SG520の個性と思って,放置しようかもと考えています。

☆フラットアンプ

flat特性.jpgフラットアンプ特性です。

こちらはもっと驚き。-1dBでも600kHzくらいまで伸びていて,びっくりしました。普通,ゲルマニウムTrはfTが低くて,よくても数MHzなので,全然ダメだろう,と思っていました。ちなみに2N508でfT=2.5MHz,出力のエミッタフォロアに使われている,2N3215なんてfT=300kHzなんですけどね.....。2N27122N3638は不明ですけど,後者はシリコンですからずっとよいはずです。

ただ,ちょっとゲインが不足気味。フラットアンプなら20dBくらいは必要です。Spiceでも24.6dB@1kHzありますから,ちょっとゲイン不足です。

         ☆         ☆          ☆

ようやくこれでアンプ部はうまく動作することが確認できました。それに,とても特性は良好ですし,オシロで見ても非常にきれいで,動作も安定しています。

これはいい音がする予感.......悪寒かもしれませんけどね......[曇り]

と言う次第で,次回は電源のリップルフィルタを試験します。また,ケースもなんとかしたいと思います。


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サブミニチュア管DCプリアンプの製作~その3・ヒータ電源,EQアンプ編~ [オーディオ]

2022年2月1日の日記

製作開始から,もう1年ほどになろうとしています。

前回の記事からでも半年以上経ちました。すっかり泥沼にはまってしまっています.....[雨]

一応,ケースを購入し,穴開けして組み立てはじめました。金田式DCアンプの試験用にトラッキングレギュレータを作って重宝していますけど,残念ながら,真空管式の場合はバラックで試験するのは危険で,きちんとケースを組み立ててからにした方がよいかと思います。

案の定,EQアンプ用の+100V電源をショートさせてしまい,ものすごい勢いで火花が飛んでビビりました.....[雨]

電源基板のところで+Bの電源線を外しておけばよいのに,うっかり,アンプ側で外してしまい,それを放置していたら,シャシーに触れてバチッでした。

幸い,レギュレータの2SA653も飛ばなかったのでよかったですけど.....キモを冷やしました。

と言う次第で,とりあえず,EQアンプから試験をしているのですが,ここまででも大変でした。

☆ヒータ電源

まず,ヒータ電源は3端子レギュレータを使って,と思っていました。金田氏はLM317Tを使っておられますね。

でも,前回も書きましたとおり,LM317TだとモールドのTO-220なのが面白くないので,メタルキャンで,一回り下の定格のLM350Kを使うつもりでしたが,途中で仏トムソン製のTDC2912KMを入手したのでこちらにしました。こちらは-12Vの3端子レギュレータなので,球のh-k耐圧の点からもいいか,と思ったのですけれど.....。

残念ながら,使用した英国製のトロイダルトランスが海外製なので,当然,1次側が115V入力なのですが,2次側の6.3V端子を直列に使ってもレギュレータの出力が12.6Vにならないどころか,リップルが残っていることがわかりました。

さすがに実際に作る前に気がついたわけじゃなく,LTspiceでシミュレーションして,ということなのでよかったですけど。

LTspiceには3端子レギュレータはLT1086-12が含まれていますので,これでシミュレーションしてみると....

LT1086-12.jpg あちゃ~~~[雨]

全ヒータ電流は1.2Aとかなり大きいので,ちょっと心配していましたが...... 出力は12.6Vにならないし,リップルも残っています。こりゃ,あかんわ......。

一般に3端子レギュレータは入出力の電圧差は2~3V必要で,ある程度余裕がないとリップルが残ります。

ちょっと,今回のトランスでは12.6Vで点火するのは難しそうです。

ということで,結局,ヒータ電源もリップルフィルタにしちゃいました。

ついでに,前回同様,h-k耐圧の観点から+じゃなく,やはり-出力とし,-11~-12Vくらいが出力できるようにしたいと思います。

ヒーター電源(リップルフィルタ).jpg リップルフィルタです。

出力電圧は-10.6Vになっていますが,これはベース抵抗で変化できます。リップルは消え,また,立ち上がり(立ち下がり?)がスローなのもよいです。

まあ,真空管の場合は10%くらい電圧を下げても問題ないですし,球の寿命の観点からも低い方がよいと思います。

なお,制御素子は,前回,WEのMT管を使ったプリの時はにせ物の2SA649を使いましたけど,やっぱにせ物は嫌だなと思って,部品箱を探したら,大変お世話になっている河童さんから, 以前いただいた日立の2SB337があるのを見つけ,起用しました。

2SB337.jpg 日立の2SB337を使いました。

2SA649だとシリコンですが,2SB337はゲルマニウムです。定格はVCEO=-30V, IC=-7A, PC=30Wと十分すぎる定格です。番号からもわかるとおり,かなり後期のゲルマニウムTrですが,オーディオアンプ用に開発されたようです。エミッタ-コレクタ間飽和電圧VCEsat=0.29Vとシリコンが1V前後なのにくらべると非常に小さいです。

リップルフィルタの性能はTrのhFEに依存しますので,ダーリントン接続にしてhFEを稼いでいます。せっかくだから,ダーリントンの相棒は2SA1015の代わりに2SB54あたりを使ってもよかったかも....。2SA1015は東芝が製造中止にしたときに大量に買い込んじゃったんですよね......。

結果は大成功! オシロで見てもまったくリップルは見られません。

非安定化ヒータ電源.jpg フィルタコンデンサの波形です。

安定化ヒータ電源.jpg リップルフィルタ出力です。

整流直後は130mVp-pありますけど,リップルフィルタ出力ではリップルは消えました。一応,表示は128mVp-pと出ますけど,高周波の誘導ノイズですね.....[晴れ]

おまけにVCEsatが小さいのがゲルマの特長なんですが,そのおかげで,驚いたことに電圧降下は1V以下で,実際に作ってみると出力電圧は11.8Vと十分高く,また,完璧にリップルを取り除いてくれました。VCEsatが小さいので当然発熱も少なく,今回のはほんのりとも温かくなりません。

もし,LM317Tなどの3端子レギュレータを使っていたら,損失は3Wくらいになり,かなり発熱するので,大きな放熱器も必要です。リップルフィルタはなかなかよいです。

ヒータ電源基板.jpg 2SB337はコネクタ接続にしました。

フィルタ用コンデンサは秋月でニチコンの16V,33000μFが450円だったので使いました。さすがにデカい!

これだけ大容量のコンデンサを投入しても,リップフルフィルタなしじゃ,さすがに1.2Aもの負荷があると▲の波形のようにリップルは取れません。

ブリッジDiはインド・Panjit international製のショットキーSDI2100を使いました。100V,2Aの定格です。一昔前だとGeneral InstrumentsのW04あたりを使うんでしょうけどね.....。GI社も今はVishayのようです。

普通のシリコンDiを使ったブリッジはさすがに4個もDiを内蔵していると,結構発熱するので,ショットキーにしました。触ってもほんのり温かくなるだけでした。W04だと触れないくらいになるはずです。12AX7×4というような小型の真空管プリでもブリッジDiは意外に発熱するので,ご注意ください。このように小型のブリッジDiはすごく発熱するせいか,やはり壊れやすく,日本製は10年ほどで壊れるので,W04を使っていましたけど,これからはショットキーにします。

☆EQアンプ

さて,ヒータ電源も+Bのレギュレータも完成したので,EQアンプから試験します。

+Bのレギュレータは金田氏は日立の2SA566や東芝の2SB502のほか,NECの2SA653を使っておられますが,お気に入りのNECを起用します。やっぱ,メタルキャンだよな~~[晴れ]

EQアンプは無事に動作しました。

☆フラットアンプ

残念ながら,通電してみるとオフセットが8Vくらいあり,また,調整できません。

AOCの調整範囲を超えちゃっているんですね......[雨]

こういう場合,初段のオフセット調整をやり直さないといけないのですが,金田氏は共通カソードに半固定を入れていませんので,半固定で調整することはできません。

ということなのですが,初段の定電流回路の設定がまずく,初段の6N17Bの動作点が飽和領域になってしまっているのだと思います。

そこで,この定電流回路の設定電流を小さくしてみます。金田氏の設計では3kΩになっていて,定電流回路の出力としては1.8mAくらいです。

今回,真空管が金田氏の6112と異なり,旧ソ連軍用の6N17Bですので,少し特性が違います。

と言うことで,RS=4.3kΩとしてみますとオフセットは1V台となりました。

ところが.....。

どうも片ch.だけ、どんどんオフセットが大きくなっていきますし,出力に使っている6N16Bのカソードが妙に赤く光るな,と思っていたら,そのうちスパークしました。

おそらく,製作不良でカソードが熱で変形し,グリッドとタッチしたものと思います。せっかく軍用のOTKマーキングのものを使ったのに......[雨][雨]

なんや,スターリンもたいしたことあらへんな......。

この球が作られた頃はブレジネフですけどね。iruchanはこのデブのおっさん?はよく覚えています。金正恩なみにチョ~怖かった.....[雪]

もちろん,予備も買ってあったのですが,今まで,球の不良というのはLUXのKMQ-60で使用していた,NECの50C-A10が1本とラジオ用の中古の6X5GTがスパークしたくらいで経験がありません。まさか,NOS(新品未使用)という球でこんなことになるとは思っていませんでした。50C-A10の場合は耐圧ギリギリのLUXの設計が悪いでしょう。

しかたないので,またウクライナから6N16B緊急輸入することにしました。

なんで旧ソ連の球なのにロシアじゃなくて,ウクライナから買うのか.....iruchanはウクライナの人々を応援します。

ということで,また次回,です。


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金田式CR型超シンプルプリアンプの製作~その3 オールFET電源の設計~ [オーディオ]

2021年12月5日の日記

前回,基板を作って,実験用のトラッキング電源から電源供給して試験しました。無事に動作したので,いよいよケースを作りたいと思います。

でも,その前に難問が.....。

実は電源をどうするか決めていませんでした......(爆)。

というのも,金田氏はCR型プリアンプの電源について,明記していません。

記事としては,本機はMJ '97.3月号のスーパー・サーキット講座 No.15 ”CR型イコライザーの解析” が初出で,その後,単行本 "オーディオDCアンプ製作のすべて" (2003.3刊行)にも載っています。

電源については,どちらも記述がありません。ただ,後者では引き続いて広ダイナミックレンジCRプリアンプという記事が載っていて,電源は図127と同様だ,と書いてあるだけです。

で,その電源が問題で,なんとコンデンサで平滑しただけの非安定化電源なのです。

非安定化電源出力(図127).jpgえっ,本当?

確かに,本アンプはGOAなので,電源の影響を受けないとされ,非安定化電源でも十分と言うことも考えられるのですが.....。

iruchanは今まで,半導体プリアンプで非安定化電源のまま,ということはしたことがありません。理由があって,必ずレギュレータを入れています。

と言うことなのですが,一応,LTspiceでシミュレーションして確かめてみます。

記事の電圧値から推測しても前回のテストでも,本プリアンプの全電流は50mAくらいです。

まずは▼の回路で,平滑コンデンサのところの電圧波形を見てみます。

非安定化電源出力(図68).jpg リップルが出ています。

非安定化電源としての出力ですが,リップル電圧は51.4mVp-pです。

う~~ん,こんなにリップルが出ていれば,MCプリアンプには大丈夫とは言えないと思います。

ということで,前回,アンプ部もすでにモデル化したので,電源を接続してプリアンプの出力を見てみますと.....

非安定化電源プリ出力2.jpg プリアンプ出力です。

28mVp-pくらいの電圧が出力されます。これがさらにパワーアンプで増幅されるのですから,スピーカーからはとんでもないレベルのハムが聞こえると思います。

と言う次第で,と言うか,実は最初から決めていたのですが,やはりレギュレータを挿入します。

問題は回路。

前回,No.122のオールFETスーパーストレート・プリアンプとほぼ回路が同じ,と言うことを指摘していますが,その中で,金田氏は,

"本機は電源変動に対する安定度が特に高いので,レギュレーターは必要ない。----(中略)----オールFETで音のよいレギュレーターが完成すれば結果は変わるかもしれない。"

と書かれていて,レギュレータの回路図は発表されていません。

No.128 オールFETスーパーストレートプリメインアンプも同様の回路ですが,これは電池式です。実際,オールFETプリアンプを作った方はネットを見ても電池式の方ばかりのようです。

う~~ん,困ったな.....。

iruchanは電池式は電池の消耗が気になってしかたないので使いたくありません。といって,AC電源だとレギュレータは必須です。

というのも,もし,リップルの問題がなかったとしても,誘導性負荷のon,off時に生じるポップノイズには対処できないからです。

よく,蛍光灯や冷蔵庫がon,offしたときにスピーカからポッというノイズが出ますけど,これは安定器やモータなどのインダクタンス分に流れる電流をon,offしたときに高周波のスパイク状のノイズが発生し,それが整流されてDCに乗り,アンプから出力されてしまうのが原因です。よく真空管プリアンプで悩まされますよね。

これは真空管プリアンプだと非安定化電源で,せいぜい,整流したあと,2段くらいのπ型CRフィルタで平滑化している程度のため,フィルタをパルス状のノイズが素通りしてしまうからです。

対策としては,やはり安定化電源式にして,レギュレータを入れるのが有効で,真空管プリアンプでもレギュレータが必須だと思います。

まあ,今じゃ,蛍光灯も冷蔵庫もインバータ式になったし,おまけに蛍光灯はもはやLEDになってしまっていますから,昔話なんですけどね。昔は点灯管式の蛍光灯がon,offする度にスピーカからノイズが出てまいったものです。

と言う次第で,iruchanは実は最初からレギュレータを入れるつもりでした。

結局,金田氏推奨のレギュレータ回路はわかりませんでしたので,iruchan独自に設計してみます。

時代的にGOAのアンプなので,オールメタルキャンTrプリアンプ同様,超高速シリーズレギュレータなんでしょうけど,正直,これはもう作りたくない。

やっぱ,2SB716/2SD756などの小Trにも1S1588を熱結合したり,非常に作るのが面倒です。プリント基板図も作ってあるので,エッチングするだけで楽なんですけどね.....。

それに,なんとか金田氏ご推奨のオールFETで作りたいと思います。

と言う次第ですが,最近,金田氏はなぜか初心に戻ってごく普通の1石式誤差増幅器のシリーズレギュレータになっています。IVC型イコライザアンプもこうです。

iruchanはIVC型EQアンプ用の電源回路を変更し,オールFETにしてみました。制御素子は日立の2SJ77/2SK214(VDSS=150V, ID=0.5A, PD=30W) でもいいのですが,たくさん持っている東芝のMOS-FET 2SJ123/2SK442 (VDSS=70V, ID=10A, PD=30W) を使います。こっちの方が大容量ですしね。それにしても昔からずっと思ってるんですけど,日立のは何でこんなにIDが小さいんでしょうね.....。

本当言うと,V-FETの2SJ19/2SK69 (VDSS=140V, ID=0.1A, PD=0.8W) がいいな.....なんて思ったのですけど......,

      ないものねだりの子守歌  ~~~ってか。

この歌を知っている人は相当なおじさん&おばはんです[曇り]

オールFET電源回路.jpgオールFET電源です

オールFETなんて言いながら,2SA1015/2SC1815を使っていますけど.....これは保護回路なのでうちの嫁はん同様,通常は寝ていますからご容赦ください......orz。

誤差増幅回路はごく普通のシングルアンプによるもので,負荷は定電流回路になっています。出力電圧は±20Vにしました。平滑コンデンサ直後の2SJ103/2SK246による回路はNo.251 ”ダブルアーム搭載超多機能プリアンプ” では,リップル激減回路,と称しておられますが,これは昔から知られており,iruchanも中坊の頃読んだ本にも載っていましたし,この前,実験用にトラッキングレギュレータを作りましたが,その回路もそうなっていて,低雑音化のため,と記述がありました。

オールFET電源回路出力.jpgちゃんと動きます[晴れ]

安定化電源プリ出力2.jpgプリ出力波形です。

電圧波形にはリップルがありません。プリの出力電圧にはノイズは見られません。

誤差増幅器はハイgmの2SJ1072SK170にしました。本当は2SJ74にしたいのですが,手持ちがありません.....[曇り]

と言う次第なんですけど,プリント基板も作っちゃいました。

オールFET電源基板2.jpgオールFET電源基板

整流はこの頃は金田氏は31DF2のようです。このあと,V19Eに代わり,今はSiC Diですね。

11EQS06などのショットキーでもいいんでしょうけど,モールドパッケージだし,どうにもiruchanは使う気がしません。そもそも音がよい,なんて話は聞いたことがありませんしね....[雨]

やっぱ,モールドはダメか.....。31DF2がお役御免になったのもモールドだからか....。

では,次回はケース作ってテストします。

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金田式CR型超シンプルプリアンプの製作~その2 オールFETスーパー・ストレートプリアンプ~ [オーディオ]

2021年11月22日の日記

前回,金田氏設計のCR型プリアンプを作ることにしましたが,EQ偏差が意外に大きいので,オリジナルの回路のままとせず,EQ回路を少しいじりました。

ということですけど,最終的にiruchan版超シンプルCR型プリアンプはCDやチューナーも聴きたいし,最近はPC音源を聴くことも多いので,入力は切替SWを入れます。MC専用,と言うのがDCアンプ教の絶対教義なんですが,やっぱ,iruchanは邪道です.....。

本格的な回路図は最終回に載せます。まだいろいろとトラブりそうですので.....。

CR, NF Eq amplifier LTspice simulation.jpg本機の回路

えっ,と思った方も多いと思いますが,iruchanも,このプロジェクトをはじめたとき,最初,おやと思ったのです。

この超シンプルCR型プリアンプの記事を見て,何かに似ているな.....と思ったのです。

なんと,この回路はスーパー・ストレートプリアンプのFET版(No.122 MJ'91.9)とほとんど同じなのです。

もちろん,No.122はNF型イコライザなので,当然,EQ素子のところは違うのですが,あとは±VccがNo.122は±15Vなのに対し,こちらは±18Vくらいのもので,ほとんど抵抗値なども変わりません。

それならっていうことで,CR型,EQ型の切り替え式とすることにしました.......(爆)[雷][雷]

こんなバカなこと,考えるやつはいないと思いますけどね.....。やっぱ,教祖様に叱られる~~~!!

No.122はオール・メタルキャンTrのNo.121の続編で,iruchanはこちらはオール・モールドの素子だし,作るつもりはありませんでしたけど,オールJ-FETの音を聴いてみるというのも面白いかと思います。

☆音量調整について

ずっと以前のGOAの頃から金田氏は音量調整はNFB(β回路)にVRを入れて調整する方針となっています。こうすると音声の伝達経路から接点を省ける,という訳です。

とはいえ,非反転入力にNFBが入るわけですけど,その信号との差分を増幅するので,結局,音声回路に入っているのと同じ,と思います。

何よりこの方法の問題点は音量を0にできないこと。

それで金田氏はフラットアンプの入力をショートしてミューティングSWを入れていますけど....。

これはどうにも不便だ,と言うことでiruchanは昔からEQアンプとフラットアンプの間に音量調整用VRを入れています。これだとちゃんと音量は0にできます。

とはいえ,今回の超シンプルCR型プリアンプはこの方式はとれません。

と言うのはEQ素子の後に抵抗が入る形になり,EQカーブに大きな影響が出るからです。

しかたないので,金田氏の方法にするしかありません.....。

☆ゲイン配分について

今回,CR型,NF型共用という横着な回路を設計したので,2つ必要なアンプのゲインの設定に苦労します。
 
金田氏オリジナルの超シンプルCR型プリアンプのゲイン配分は次の通りです。
 
超シンプルCR型プリアンプゲイン配分.jpg
    "オーディオDCアンプ製作のすべて" から
 
今回,NF型と共用にするのですが,EQアンプはMC用だと60dB程度@1kHzのゲインが必要です。つまり,DL-103型ですと,定格出力0.5mVですので,EQアンプ出力で0.5Vになるわけです。
 
金田氏もNF型の場合,ほぼ60dBとなるように設計しておられます。
 
ところが,今回,CR型なので,NF型のEQアンプ出力とほぼ同等になるように出力電圧を揃えようとすると,CRのEQ素子で20dBの減衰があるので,1stアンプの出力としては80dBものゲインが必要,と言うことになります。
 
これ,ちょっとというか,相当,厳しいんですよね......。
 
というのも,素子がJ-FETなので,ゲインが取れないんです。開ループゲインとしては90dBくらいになってしまうでしょうから,厳しいのです。実際,あとで開ループゲインを測定したら,84dB弱でした。バイポーラだと120dBは取れるので楽勝なんですけど.....。
 
と言う次第で,金田氏は▲のゲイン配分の通り,1stアンプの出力は46.4dBですから,EQアンプの出力としてはわずか26.4dBしかありません。足りないゲインは2ndアンプで補う,と言う設計になっています。
 
iruchanはこのことに気がつかず,実際に測定してみてから気がついた,という次第です。バカだな~~~[雨]
 
iruchanはNF型と共用するばかりか,CDやチューナーも接続しよう,と考えているので,金田氏のゲイン配分ではダメです。金田氏のはMC専用だから可能な設計です。
 
と言う次第で,1stアンプは80dBのゲイン設定とします。
 
ただ,この場合,これはあくまでも1kHzでの値,ということで,高周波に行くほど,開ループゲインが落ちてくることも考えないといけないので,実際のゲインは実際に作ってみて,測定して考える,と言うことになりそうです。LTspiceは浮遊容量を考慮しませんので,高周波は苦手で,あまり当てになりませんから.....。

☆プリント基板の製作

最近まで,iruchanはサンハヤトの感光基板で作ってきましたが,数年前に感光剤が替わり,以後は全滅です。一度もうまく行ったことがなく,とうとう頭にきて最近は感光フィルムを使っています。何より普通の生基板が使えるし,フィルム自体もAliやamazonで安く買えるし,何より失敗してもやり直しができるのはありがたいです。

ホンマに今まで,サンハヤトには多額のお布施を払わされ,まったく何の御利益もありませんでした。これじゃ,何の価値もない仏像に多額のお布施を要求するエセ宗教の霊感商法と同じだ,と思います。

ただ,結構,感光フィルム方式もうまくいくまで苦労させられました。iruchanのやり方はこの記事をご参照ください。

その点,双信のSEコンも多額お布施が必要ですけど,高い品質と高音質というありがたい御利益がありますからね.....。

超シンプルCR型プリアンプ基板1.jpg 完成した基板

これでEQアンプ,フラットアンプともに1枚の基板に載っています。残念ながら,2SJ72は4個しか手持ちがないので,フラットアンプは2SJ75で代用しました。また,2N5465も今は入手困難ですので,同特性低耐圧の2N5462で代用しましたが,うまく動作しました。ただ,もう,2SJ75ですら入手困難ですし,2N5462もオンセミがどうも最近製造中止したようなので,今後,入手が難しくなるでしょう。それどころか,TO92の素子自体,もはや全部絶滅危惧種と言っていい状況ですから.....[雨]

超シンプルCR型プリアンプ基板2.jpg

NF型,CR型の切り替え用に2P,3Pのピンヘッダを使いました。実験時はジャンパピンでテストできます。1500pFはSEコンが在庫切れで,スチコンで代用しています。

☆LTspiceによるシミュレーション&実測

基板は無事に完成し,先々週からテストしています。

と,やっぱり.....。

いろいろ問題噴出!

なによりCR型とNF型でゲインが違います。当然と言えば当然ですけど....。

できるだけ,プリアンプの出力電圧はどちらも近い値にしたいと思います。ただ,録音用にEQアンプの出力まで揃えるとなると▲の議論で無理,と言うことがわかっています。

と言う次第ですが,EQアンプはDCアンプに限らず,OPアンプなわけですから,帰還量でゲインが決まります。OPアンプの反転側入力に入っている抵抗(▲の回路図でR8とR11)で簡単に設定できます。

で,極力,EQアンプの出力まで揃えよう,ということで,CR型のとき,1stアンプゲインを80dB近辺とし,EQ素子を通過したあとで60dB,NF型のとき55dB(ともに1kHz)とするとやはり問題が.....。

特に発振したり,ノイズが出たり,と言うことはないのですが,予想通り,CR型の時は高域の減衰が大き過ぎます。これは開ループゲインが足りないせいですね.....。

LTspiceでのシミュレーションでも同じ結果でした。

蛇足ですけど,2N54652N5462は同特性ですが,LTspiceのモデルとオンセミの公式? モデルはかなり違います。Idの設定がうまくいかず,LTspiceに登録されている,2N5462じゃ,動かないのに,2N5465にすると動くとか,かなり苦労しました。

RIAA偏差iruchan R8=390kΩ.jpg実測値です。

20kHzで,CR型の時はー1dBくらいになってしまいます。う~~ん,ちょっと許容できないレベルです。

なお,NF型で100Hz以下が低いのは金田式の特徴で,かならずこうなります。また,1kHzのゲインが揃わないのはあきらめ,フラットアンプで調整することにしました。CR型とNF型で7dBほど差があります。

しかたないので,やはりCR型の1stアンプのゲインはもっと下げないと高周波の偏差が大きいので,46.1dBとし,R8をLTspiceでシミュレーションした結果,200kΩに設定しました。

RIAA偏差iruchan R8=200kΩ'.jpgR8=200kΩ

こうすると,概ね偏差は±0.2dBというところです。1kHzでのゲイン差は11dBと拡大してしまいますが,フラットアンプで十分,調整できる範囲です。


と言うことで長くなりましたので続きはまた次回です。

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金田式IVCイコライザ搭載プリアンプの製作~その2 試作・測定編~ [オーディオ]

2021年11月3日の日記

前回から2ヶ月が経ちました。No.251 ダブルアーム対応超多機能プリアンプ(MJ  '17.2,3月号)を作っています。ようやくプリント基板も完成したし,テスト用の電源も準備できました。

IVC EQ基板.jpg 完成したプリント基板

実験なので,ミクシングアンプはLF356Hでも使ってやるつもりです。この基板で一応,OPアンプ使用のミクシングアンプまで載っています。

プリント基板はいつも通り,感光フィルムを使って自作しました。

残念ながら,SEコンが製造中止になる関係で品薄になっていて,15000pFと2200pFが手に入らないのでスチコンで代用です。

さて,テスト用の電源は+,-の絶対値が等しい電圧を出力するトラッキングレギュレータを作ったので,それでテストしてみます。

トラッキングレギュレータ3.jpg テスト風景

トラッキングレギュレータで±20Vを供給します。原設計では±25Vですが,±15Vくらいから動作するようです。ついでに,レギュレータ出力に1Ω 1/4Wの抵抗をかまして実験しています。こうするとトータル電流が簡単に測定できますし,何かあったらこの抵抗が焼死してくれて,基板を救ってくれますしね.....(^^;)。

まずはEQアンプから。

2個,半固定VRがありますので,調整します。

MJ '17.3月号が後編で,調整方法が載っています。EQアンプの出力につながっている7.5kΩとSAOCの2SK170BLのゲートを接地し,そのドレイン電圧を10Vにします。その後,配線を元に戻し,初段の2SA995のエミッタに入っている500Ωの半固定で出力のオフセットを0VにすればOKです。

う~~ん,でもこれ,やってみると非常に大変です。最初,後編は買い忘れたので,SAOCのFETのドレイン電流を適当にあわせていていたんですが,それでもちゃんとオフセットの調整ができるので問題ない,と思っていたのですが,よく観察すると+600mVくらいからー800mVくらいにオフセットが飛ぶ,と言う現象が出て,困りました。どうしても0V近辺だけ,オフセットが飛んじゃいます.....[雨] 最初,うまくいったのですけどね.....。

ようやく図書館で後編の記事を見つけて調整しました。やはり無手勝流に調整しているとダメですね....。

さて,今度は特性を測定してみます。きれいな正弦波も観測できるので,期待できます。

事前にLTspiceで調べておきましたので,結果を一緒に載せておきます。

IVC型EQアンプテスト回路.jpgLTspiceシミュレーション回路

IVC型EQアンプテスト'21.11.3.jpg結果

が実測結果で,……がLTspiceの結果です。予想していましたが,1kHzのゲインは55dBもあり,たった▲の回路でこれだけのゲインがあるのに驚きます。まあ,無帰還アンプだしこんなものなのでしょうけど,驚いちゃいますね。これでMCカートリッジも十分です。

ただ,前回も指摘していましたが,イコライザの定数は金田氏オリジナルでは低域に大きなピークができるので,560kΩを200kΩとしましたが,逆に200Hzくらいから低下しすぎてしまっています。

一方,LTspiceの方は1kHzのゲインが2.5dBほども大きく,また,イコライザ偏差は20Hzでも-0.1dBと小さいです。

う~~ん,なんでこれほどシミュレーション結果とずれるのかも不思議ですが,560kΩを240kΩとするとLTspiceでのシミュレーションでは+1dBくらいになるので,実機では偏差はほぼフラットになると思います。

次回,EQ素子を変更してテストしてみます。

また,金田氏の記事はまだイコライザアンプのあとにラインアンプがあり,そこでセレクターを経てミクシングアンプを使うのですが,イコライザアンプだけでプリアンプとしてのゲインは十分な感じです。

ということもあろうかと,ミクシングアンプはまだプリント基板を作っていませんし,なによりiruchanも電流伝送アンプは初めてでわからないことばかりなので,とりあえず実験用に,LF356HなどのOPアンプを使って反転増幅器をつくり,それでミクシングアンプの代用にしようかと思っていましたが,ミクシングアンプは不要なようです。

ラインアンプから直接出力するようにしたいと思います。


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