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CORAL 4A-70 10cmフルレンジスピーカーの復活 [オーディオ]

2021年10月20日の日記

CORAL 4A70-2.jpg CORAL 4A-70 4" full range speaker

急に寒くなってきましたね~~。皆様,お身体ご自愛ください。

父が亡くなり,正直なところ,ぽっかり胸に穴が開いたような状態になっていましたが,ようやく多少元気も出てきて,また,月に1回は北陸の実家に帰らないといけない状況なので,実家でちょっとクラシックでも聴こうかとスピーカーを整備しました。

実家のガレージを探してみたら,CORALの4A-70が出てきました。

これ,iruchanが学生時分,下宿で聴いていたやつです。フルトヴェングラー&ベルリンフィルのシューベルトの第9 "ザ・グレート" なんかをよく聴いていました。いま,これ8番というようですね......それって "未完成" じゃないんかいっ,て怒ってます。

NHK FMでも「シューベルトの交響曲第8番 "グレート" 」なんて放送してますしね.....[雨]

"NHKと裁判してる党 シューベルトの第8番は未完成" って党を作って衆院選に立候補しようかと考えています...(爆)。

そんなこと言っていると,「ザ・グレートは第7番」って言う爺が湧いて出てきそうなので止めておきます[雨]


もっとも,当時は箱は自作で,大学に合格して春休みの間に,t16mmのベニヤ板で自作して,黒いビニール壁紙を貼っていました。

ただ,あまり仕上がりがよくなくて,格好悪いので,結局,社会人になってお金を自分で稼ぐようになって,確か,コイズミ無線かどこかの専用箱に交換したものです。iruchanは工作マニアだけれど,木工は苦手です.....[雨]

ところがそれからあまり聴かなくなったようで,そのまま実家のガレージに置いてあったままのようです。

もう,30年近くたちますけど,今見てみるとアルミダイカストフレームの立派なユニットで,何よりマグネットがアルニコです[晴れ]

CORAL 4A70-1.jpg マグネットはアルニコです。

これは,ちょっと放置しておくのはもったいない。

それに,コーラルという会社はもうありませんしね......[雨]

コーラルは1946年,パイオニアの前身,福音電機から分離独立した会社で,最初はコーン紙専業で,社名も福洋コーン紙株式会社でした。その後,ラジオブームでスピーカーの需要が高まるようになり,スピーカーユニットの製造も手がけるようになります。のちに住友特殊金属傘下となり,この4A-70のアルニコマグネットも同社の供給によるものでしょう。

オーディオブームの終焉とともに,1992年,コーラルは解散してしまいました。本当に,山水とか,アカイとか,名門の企業が消え,残念に思っていますけど,コーラルも名門だったし,今でも熱烈なファンがいるので,とても残念です。

4A-70は1980年発売で,当時,6,900円もしたようです。大学合格祝いに,父に買ってもらって,下宿へ持っていったのだと思います。その頃の雑誌を見ると,同じ10cmユニットのFOSTEX FE-103が3,000円くらい,PioneerのPE-101が5,500円ですから,高いユニットだったと思います。

特に,当時,Technicsがこのような小型SPユニットに力を入れはじめ,従来のナショナルブランドで売られていたフルレンジのシリーズとは一線を画した,EAS-10F10などのシリーズはかっこよかったし,大人気でした。この会社の製品は安く,10F10だと2,800円と安かったので売れたと思います。ただ,松下のはかっこよかったし,よく売れたと思うんですけど,どうにも近代的すぎる感じがするし,まあ,それにこの会社,当時も今もあまり好きじゃないのでパスしました。

といって,FOSTEXはもとは音響製品などの機器組込用に販売されているユニットの外販らしく,外観がしょぼいし,Pioneerはマグネットが外磁型だし,ということでiruchanはコーラルにしました。友人がFLAT-8 懐かし~~ で聴いていて,音がよいのに憧れていたこともあります。

もっとも,コーラルは4A-70はアルニコだとはっきり宣伝していなかったような.....。せっかくのアルニコマグネットなのに,この会社,このことを考えてみても,どうにも終始控えめで宣伝が下手だったからつぶれたのか,と言う気がします。iruchanも今回,ガレージから引っ張り出してみて,アルニコだと気がついたくらいです。

一般的に,アルニコ磁石は磁束密度が高いのでサイズを小さくすることができ,内磁型,フェライト磁石は磁束密度が低いので外磁型,となります。アルニコの方が高価で,また,昔から音がよいとされています。フェライトの方が新しく,戦後の開発なので,古いユニットはアルニコです。

と言うこともあって,iruchanは4A-70を買ってもらいました。内磁型だったのはすぐにわかりますが,アルニコ=内磁型,と言うのはあとで知ったので,この頃は4A-70はアルニコと思っていなかったのだと思います。

10cmユニットは昔から人気があり,4A-70もAltecの405Aなどを多分に意識したものだと思います。センターキャップが金属製なのも似ていますけど,405Aがアルミ製なのに対し,4A-70だとジュラルミンのようですね。フレームはダイカストだし,なによりマグネットは405Aのようにフェライトじゃなくてアルニコなのはずっと高級品。Altecの405は最初からフェライト磁石の外磁型のようですし,むしろ,PioneerのPE-101の方がそっくり,と言う感じでしたね。CORALも廉価版の4A-71はフェライトでした。ただ,iruchanはこれは記憶がありません。あまり売れなかったのか....。

せっかくなので,復活させて30年ぶりに音を聴いてみよう,と思いました。

箱はそんなに傷んでなく,SPユニットもコーン紙が少し焼けて,茶色くなっている以外はなんともありません。エッジも問題ないです。

CORAL 4A70.jpg ちょっとコーン紙は茶色く変色しています。

なぜか,SP端子が切られていて,これをつけ直せばOKのようです。

ただ,困ったことに箱の背面は25.4mm間隔でφ16mmの穴が開いていて,これに合うSP端子がありません。25.4mmということは1インチ間隔だと思いますが,こんなに広い間隔のSP端子はありませんね。それに,φ16mmもの穴が開いている,ということは+,ー単独のSP端子も穴が大きすぎて使えません。アルミ板で端子台を作ってそういうのを使おうか.....とも思ったのですが,なんとかプラ製で20mm間隔のがあったのでなんとかかんとかそれを使って配線しました。

CORAL 4A70-3.jpg あまりにもショボいですけど.....。

        ☆         ☆         ☆

さすがに30年ぶり,と言うことで心配しましたけど,特に問題なく,音も出ました。アンプはとりあえず,LepaiのLP-2020Aにしました。これ,ものすごく音のよいデジアンです。

最初は全然低音が出なくてがっかりでしたが,鳴らし始めて2日ほどするとエージングできたのか,いい音で鳴るようになりました。コンパクトだし,いいSPユニットだと思います。もう,CORALも消えちゃったし,大事に使いたいと思います。


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金田式IVCイコライザ搭載プリアンプの製作~その1 Spiceシミュレーション~ [オーディオ]

2021年8月23日の日記

今年の春,双信のSEコンデンサが製造中止になる,と言うニュースがDCアンプマニアの間に駆け巡りました。

このコンデンサはとても高く,WEのオイルコンとか,そういうヴィンテージ品のコンデンサを除けば,オーディオで使われるコンデンサとしては一番高いものだったと思います。

特に,DCアンプには必須の部品で,購入するには多額お布施が必要なんですが,教祖様の教えに忠実な信者の皆さんはせっせとお布施に励んだことと思います。

iruchanはお金もないし,と言ってどうもディップマイカは好きになれないので,昔からスチコンを使っているのですが,さすがにSEコンがもう手に入らない,と思うと最後にEQアンプを作っておこうと思っています。特にレコードの再生特性と音を決めるキモとなるパーツですしね。

と言うことで,現在2つプロジェクトが進行中です。


もうひとつ,IVC型EQアンプを作っておこう,と思います。

といって,実を言うと,この10年ほど,教祖様はすっかり教義を変え,いままでずっと完全対称アンプを基本として,電圧伝送方式のアンプを布教されていたのに,電流で信号を伝送するアンプを開発されていて,iruchanはまったくついて行けていません。

まあ,ちょっと歴史的なことを考えると,半導体アンプに限らず,ずっとオーディオの世界では電圧増幅を基本とする設計をしてきました。

でも,真空管やFETと違い,バイポーラTrは電流で電流を制御する素子だし,FETよりTrの方が歴史は長いので,本来,電流を増幅する回路の技術が進められるべきだったと思いますが,今でもほとんどのアンプは電圧増幅が基本です。

これを抜本的に見直し,MCカートリッジの電圧出力をいきなりVICで電流に変換し,以後,SPに至るまで電流を増幅しよう,と言う考え方は画期的なものだと思います。

とはいえ.....

当然のことですけど,回路まで抜本的に変わってしまい,特に最初の頃こそ,昔ながらの2段差動アンプを使ったものでしたけど,つい最近まで,シングルアンプで,しかもEQアンプも含めて無帰還というアンプになってしまっています。

ぱっと見,1960年代の半導体アンプか,と思ってしまうくらい,単純な回路になってしまっていて,差動アンプが半導体アンプの基本になっていたのに,パラパラとシングルのTr増幅器が並ぶ回路はびっくりです。また,EQアンプはNF型がずっと使われていたのに,CR型になっています。

バイポーラTrが誕生して以来,特に日本では半導体アンプは真空管アンプを基本にした考え方で,1970年代くらいまで,各段ごとにカップリングコンデンサが入ったシングルのTr増幅回路が必要なゲインまで入っている,と言うアンプでした。真空管と違うのはところどころでPNPのTrが入って,直結回路になっていたりするくらいで,真空管アンプと変わらない回路構成でした。

ところが,1970年代半ばに初段に差動回路を用い,大量のNFBを用いて広帯域,低ひずみのアンプが実現できるようになり,大きく回路構成が変わります。

とはいえ,差動アンプを用いはじめた頃はオーディオ用FETがまだ実用化してない頃なので,ACアンプで,初段はTrでした。また,2段目はシングルというアンプ構成で,その後にダーリントン接続のコンプリメンタリ出力段,と言う構成ですね。

日本ではそういう時間軸ですけど,海外ではJBLが1964年に発表したSE400でこそ,トランスで位相反転しているくらいで,電圧増幅段はシングルですけど,1966年発表のSA600パワーアンプでは初段がPNP Trによる差動アンプで,2段目はNPN電流帰還付の2段差動アンプになっています。別に2段差動アンプは金田氏の発明じゃありません。さすがはロカンシーと言う感じです。日本のアンプがこんな回路になるのは1970年代も半ばを過ぎてからです。

シングルのアンプはひずみも多く,iruchanが最初に作った半導体パワーアンプはこういうACアンプでしたけど,音が悪く,半導体のアンプは大したことない,なんて生意気にも思っていました。

そんな頃,金田氏が初段にソリトロンの2N3954デュアルFETを用い,2段差動アンプでパワーアンプを構成し,びっくりしたものです。

もとはハイブリッドOPアンプのナショセミLH0032Hをヒントにしたものと言われていますが,OPアンプはやはり2段目も差動アンプでないとダメで,国産の古いFET入力OPアンプはNECのμPC822μPC832など,2段目がシングル,と言うのが多いのですが,iruchanは敬遠しています。海外でもLF353などは2段目がシングルです。

差動アンプ,と言うのは特性のそろったTrが互いに逆相でプッシュプル動作をするので,偶数次のひずみを打ち消し,非常に低ひずみの増幅ができます。

この対称動作を出力段まで広げたのが完全対称アンプで,今まで金田氏の基本的な回路構成でした。

ちょっと,iruchanは完全対称,と言うアンプには疑問を持っていて,出力段の上側素子はコレクタ接地アンプでエミッタに負荷がつながっているのに対し,下段はエミッタ接地になっているのはどうも理解できません。

また,TrにはPNPがあるのが最大のメリットで,真空管のOTLは完全対称アンプ同様,どうしても出力段がアンバランスになってしまうのを純コンプリメンタリ出力にできるのに,このメリットを捨てちゃっているのは納得できないんですよね。

と言う次第で,実はiruchanは完全対称アンプの頃からすでに教祖様の教えについて行けていないんですけど.....。

でも,IVC型EQアンプの回路を見ていて,あまりにシンプルなのに驚くとともに,音もよいらしいので作ってみよう,と思いました。何よりシングル増幅で無帰還,また,CR型イコライザ,と言うのは魅力的です。

回路方式は,初期の頃は差動増幅でNF型イコライザだったのが,いつの頃からかシングル増幅でCR型イコライザになっているなど,かなり変遷しています。

もっとも,また最近は2段差動アンプ+NF型EQという構成に変わってきているようですけどね。

実際,作ってみようと思ったのはNo.251のダブルアーム対応超多機能プリアンプ(MJ '17.2,3月号)のタイトルがついたプリアンプ。

EQアンプを2台搭載し,次段がミキシングアンプとなっているので,音の比較ができる,と言う代物.....。

     "同時にレコードに降ろすとリアルタイムで比較ができる。"

らしいのですが......こんなことやる人いるんでしょうか。そもそもレコードだから同時に同じ溝に針が下りることは滅多にないし,そもそもダブルアームと言っても数cmは離れているので,同じ溝に入ったとしても音がずれてものすごいエコーになるはずで,リアルタイム比較なんてとんでもないという状況だと思いますけど......。

☆半導体

今回,金田氏の回路では2SA9952SC2291という三菱製のデュアルTrが使われています。2SA798と同じパッケージに入っていますが,普通,デュアルTrは2SA798のようにエミッタ共通が普通ですが,2SA9952SC2291はベース共通なので互換性はありません。ちょっと変わったデュアルTrです。

でも,iruchanはこんなのがあることは知っていました。

というのも.....。

知り合いの電器屋さんから,以前,三菱半導体のデータブックをいただいていて,それに載っていたからです。

'93三菱半導体データブックs.jpg トップは2SA798です.

1993年刊行で,三菱電機のオーディオ用半導体が載っていて,非常に助かります[晴れ]

でも,2SA798は載っていますが,2SA726は載っていませんので,すでにこの時点では名石2SA726は製造中止のようです。2SA7982SA726のデュアル版であることはよく知られていますね。でも......金田氏は2SA7982SA726とは音が異なる,と書いておられて,電源では使用してもアンプでは使用していません。

それに......

2SA995 datasheet.jpg ん!?

2SA7982SA995も同じ表現で書かれているのですが,”特性の良く揃ったトランジスタ2個が樹脂封止型の....組み立てられています” って書いてあります。

2SA798は同じチップ上に2個のTrが作られていて,いわゆるワンチップデュアル,と言う構造だと思っていたのですが......これでは人為的に選別して,特性の揃ったものをひとつのパッケージにした,デュアルディスクリートTrですね。2SJ75などと同じです。

これじゃ,高いはずだ,と思ったのですが,'80年代の某通商会社の広告では1個100円です。もはや2SA798は入手は絶望的,2SA995はまだ入手可能ですが,500円以上するので高いです。伊藤博文の千円札持ってタイムマシンで'80年代の秋葉に行きたい.....(^^;)。

2SA995は定電流回路やカレントミラー用で,2SA798と組み合わせた回路が応用回路例のところに載っています。

2SA995の規格表はネット上に出ていますけど,2SC2291は散々探しても出てこないので,PDFを載せておきます。


なお,どちらも意外に入手が難しいので,金田氏は代替として,2SA9702SC2240で代用できる,と書いておられます。

それで,うっかり,2SA970のデュアルが2SA995か? と思っちゃったのですが,2SA9702SC2240はそもそも東芝製だし,互換品じゃありません。

もっとも,今までは "○○じゃないとダメ" という書き方だったのに,金田氏は,

 "耐圧とコレクター損失が同等なら,ほかのTrでも同様に動作するので,いろいろ実験してみるのもよいだろう。"

と書かれていて,iruchanもTrの場合は最大定格さえ守れば,どんなTrでも使用可能と思っているので同感です。

教祖様もずいぶん柔軟な教えをされるようになったものです。

う~~ん,それなら,と言う次第で,iruchanは東芝の石は嫌いなので2SA970/2SC2240は使わないとして,名石2SA726を使おうか,ついでに,カレントミラーの方はNECの名石2SC1400を使おうか,と思ったのですけれど.....。

実はパターンを考えてやめにしました。

ディスクリート2個だと左右対称になって,パターンがもともと面倒なんですけど,ベースを共通配線にする,と言うことだと日本製のTrはたいてい,一番右がベースなので,余計にパターンが面倒です。本当に何で日本製のTO-92のTrはこうなのか,毎回腹が立ちます。海外のFairchildなどのTO-92は真ん中がベースというのが多く,合理的だと思います。

と言う次第であっさり諦め,金田氏の指示通り,三菱のデュアルTrを買いました。

三菱デュアルTr.jpg 三菱製デュアルTr

2SA798だけ印字が薄いです。確か,これはレーザー印字のもので,最近,東芝もこちらに変わりました。樹脂表面に気泡を生じさせて印字します。バーブラウンのOPアンプなんかこの印字法で,薄くて見にくいので嫌いなんですけどね~。白いのはシルク印刷だったはずです。とするとiruchanの持っている2SA798はほかのTrより新しいのだろう,と思います。また,2SA9952SC2291のフォントが違うのがちょっと気になります。国内の店で買ったのでニセ物ではないはずですけど.....。

でも,全部,いわゆる丸脚......銅製リードの証拠です。昔はこういうことにまでこだわったオーディオ用素子があったんだな.....いい時代だな~~~orz。

☆LTspiceによるシミュレーション

さて,次は実際にプリント基板を作る前にシミュレーションで動作を確認してみます。Trは2SA970/2SC2240があったので使います。さすがに初段のソニー2SK43のモデルはないので,2SK117で代用しました。

ところが......。

う~~ん,うまく動きません。1kHzくらいから下はRIAAカーブから大きくずれ,とんでもない特性になっています。

IVC EQ回路(LTspice)''.jpgLTspiceシミュレーション回路

IVC EQ f特(LTspice)original''.jpgLTspiceシミュレーション結果

  ▲のEQ_V_outのf特ですが,なんや,これぇ~~~っ[雨][雨]

200Hzくらいから大きくゲインが過大になり,RIAAカーブからずれていきます。また,▲のグラフは1kHzを0dBとして描いているのでわかりませんが,1kHzのゲインは60dBもあり,これならラインアンプは不要です。MCのEQアンプなら50dBくらいで十分です。ちなみに,先日完成したオールメタルキャンTrのスーパー・ストレート・プリアンプは45dBでした。ラインアンプ出力だと80dBくらいのゲインになるので過大です。

低域の大きなピークとEQ偏差は何かが間違っているのですが,原因がわかりません。

Spiceで動かなかった回路が実際作ってみたらちゃんと動く,と言うことはあり得ないので,ここで一旦ストップ。

1914年9月,破竹の進撃を続けてきたクルック将軍率いるドイツ第1軍団はマルヌ川を越えたところでとうとうフランス・ガリエニ将軍に側面を突かれ,兵站線も延びきって疲弊したドイツ軍はパリを目前にして100マイルも戦線を後退せざるを得なくなり,ドイツ必勝の計画だったシュリーフェンプランは破綻しました.....ってところでせうか。う~~~~ん。

iruchanも原因を探ることにします。

    ☆         ☆          ☆

2021年8月24日追記

実はこのシミュレーションは5月に実施していて,どうにも原因がわからないので放ってありました。

30HzくらいのピークはSAOCのせいで,もっとカットオフを低くすれば直ることはすぐわかります。2SK170のドレイン~ゲート間に入っている0.22μF(C4)が小さすぎ,もっと大きくする必要があります。

ただ,それでもダメで,低域のRIAA偏差がとんでもなく大きいです。

ようやくいつもお世話になっている,kontonさんのWEBでシミュレーション結果が出ていました。

EQ素子のターンオーバー時定数がオリジナルではおかしいようです。

iruchanもそうだと思っていろいろシミュレーションしていましたが,15000pFのコンデンサをいじっていました。kontonさんによれば,パラに入っている560kΩ(R10)をいじらないといけないようです。

iruchanのシミュレーションでは200kΩくらいが適当なようです。220kΩだと偏差が大きいです。

IVC EQ f特(LTspice)200kΩ,1μF.jpg修正後。


R10=200kΩ,C4=1μFとしたときのf特です。次回,基板と電源を作って確認してみます。

また,EQアンプのゲインは大きすぎますし,ラインアンプ自体にもSAOCが必要,と言う話もあり,ラインアンプは不要で,そのままミクシングアンプに接続してもよさそうです。

つづきはこちらへ......。

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金田式CR型超シンプルプリアンプの製作~その1 さよならSEコンデンサ & Spiceシミュレーション~ [オーディオ]

2021年5月23日の日記

先週,ようやくオールメタルキャンTrを使ったスーパー・ストレートプリアンプを完成し,音を聴いたばかりです。

このアンプ,記事はMJ '91.6月号に載ったものですが,そのときに作ろう,と思って部品集めをしていたので,実に完成まで,30年かかったことになります......(爆)。

確かに,非常に音がよく,メーカー製のPioneer C-21を使っていましたが,これを駆逐し,今後はこれが主役となります。

ただ,完成して音を聴いてみると,まず,第一印象として,非常にクリアーな音がするアンプだな,ということを感じたのですが,次の感想として,どうにも地味な音がする,という印象を受けます。

今まで,iruchanは古いメタルキャンパッケージのTrやOPアンプが好きで,アンプをよく作りますけど,メタルキャンの半導体の音として,非常に高音まで澄み切った明るい音がする,と思っていました。実際,中華デジアンのLepyのLP-2020AではナショセミのLME49720Hを,LP-2024AではLF355Hを使いました。また,モノラルLP用のCR型プリアンプではLME49720Hを使っています。

これらのデジアンでは,もうもとのモールドのOPアンプには戻れないな~~と思うくらい音がよく,気に入っています。

ただ,今回のスーパー・ストレートプリアンプではちょっと印象が異なります。クリアーな音だけれど,何か地味な音がする,と言う印象です。まあ,LEPYのアンプはOPアンプだし,こちらはバイポーラTrという違いがありますけど.....。

金田氏は件の記事の最後で,

"やはりメタルキャンTrの音楽表現力がものを言ったのだ。予想はしていたものの,この音が出るのに何年かかったろう"

と書いておられます。

実際,この文章を読んで,本機を作った人はたくさんいる,と思います。

でも,金田氏は続いて,"今度は気の遠くなるほど多くのアンプの改良作業が始まる...." と書いていて,すべてメタルキャンTrにするおつもりだったのだと思いますが,その割にそのような改造はしておられないようですし,オールメタルキャンTrのプリやパワーの記事はその後,出ていません。

やはり音が少し違ったからか....という気がします。金田氏もこのように書いてから,その後の改造を止めてしまったのだ,と思います。それとも,その当時ですら,2SA606や,特に,2SC959が高くなっていて,入手が難しくなりつつあったので,編集部から続編は不要,という要望があったのかもしれません。入手できない高価な真空管や半導体を使った記事が出ると,編集部に抗議の電話がかかってくる,と言う話を昔,聞きましたけど,そういう事情もあったのでは,と推察しています。

まあ,現在は今からアンプを作ろう,などという人はいなくなって,昔からのマニアしか雑誌を読まないし,そういう人はデッドストックがあるのであまり抗議がこなくなった,と言うこともあるのか,最近はMJもラ技も大昔の真空管の記事ばかりですね.....。

と言う次第なんですが,iruchanも実を言うと,本機より,先ほどのLME49720Hを使った,モノラルLP用のEQアンプの方が音がよいように思えます。このプリはステレオLPも再生できるよう,RIAAは2チャンネルで作っていますしね。

その理由は,メタルキャンのOPアンプを使ったこともありますけど,やはりEQアンプがCR型であることにあるんじゃないか,という気がします。

iruchanはアンプ作りをはじめた中学生の頃から,ずっとCR型に憧れていました。あの頃,生意気にもMJ(当時は "無線と実験" でしたけどね)やラジオ技術を読んでいて,時折,CR型は音がよい,なんて書いた記事が出るのでずっと憧れていました。

そういうこともあり,実際にOPアンプ仕様ですけど,初めてCR型を作ってみて,やはりそうか,と思った次第で,今度はちゃんとディスクリートでMC専用プリを作ってみたい,と思いました。この前のアンプはMM型用ですし,OPアンプICを使っていますからね。

ということなんで......。

DCアンプ教の信者? としては,ぜひ金田氏の設計のCR型プリアンプで作ってみたい,と思うんですけど.....。

といって,iruchanはプリント基板を使っているし,指定部品は半導体以外はほとんど使わないので,信者と言っても異端審問会にかけられて間違いなく火あぶりの刑に処せられますね.....怖っ[雷]

それはともかく,そもそも金田氏は最初からNF型オンリーで,一度もCR型の記事は書いたことない,と思っていました。

でも,どこかで見た記憶があります.....

といって,DCアンプシリーズの一覧表を見てもそんな記事はありません。おかしいな~~。

よく調べたら通常のDCアンプシリーズの記事じゃなく,例の完全対称アンプを発表したあと,MJで論争があり,その後,スーパー・サーキット講座と称して完対アンプに至るまでの研究成果の解説をした一連の記事の中にありました。

MJ '97.3月号のスーパー・サーキット講座 No.15 ”CR型イコライザーの解析” ですね。また,この記事は2003年3月に出た,単行本 "オーディオDCアンプ製作のすべて" にも載っています。

オーディオDCアンプ製作のすべて上巻.jpg もう絶版で,amazonで5,000円以上します....[雨]

ようやく見つけました。▲の本は持っていたのに,ほとんど読んでなかったので,気がつきませんでした....信徒が教祖様の本を読まないなんて,やっぱり火あぶりだな.....[雨]

どこかで見た記憶がある,と思ったのはこの記事ですね。早速,GW中に実家に帰ってコピってきました。

しかも,中の記事は2種類あって,ひとつは超シンプルな回路で,簡単に作れそう(失礼)と思いました。もうひとつは広ダイナミックレンジの高級版です。

残念ながら,半導体はオールJ-FETなのですが,東芝の2SJ72が肝心かなめの2段目差動アンプに使われていて,これはiruchanもあと4個しか手持ちがありません。オールFETプリメインアンプ(No.136 MJ '92.9)のメイン部分のみを作ったときのあまりです。

あの頃ですら,2SJ72は入手難で,国内では見つからず,iruchanも欧州の部品屋から通販で買ったものです。まだ,あの当時は中国の部品屋が暗躍? してなくて,海外から取り寄せてもまずにせ物はなく,正真正銘の本物が入手できました。日本から直接半導体を輸出したり,輸出した機器の保守用だったりしたのでしょう。

そのときの残りをここで使っちゃおう,と思います。残念ながら,プリにしちゃうと片ch.分しかないので,EQアンプに使い,フラットアンプはデュアルの2SJ75(シングルは2SJ74)とにするつもりです。

まあ,2SJ752SJ72じゃ,gmが22mSと40mSで,倍ほど違うのですが,フラットアンプならそうゲインはいらないし,問題ないのでは,と思います。そもそも2SJ75だって,もう入手難ですしね.....。おまけに2SJ75はメタルキャンですしね.....違うか。

超シンプルCR型プリアンプ使用半導体1.jpg 使用半導体

    東芝の2SJ72はこれで手持ち最後です。

          ☆          ☆          ☆

さて,春頃に衝撃的なニュースが出回りました。

金田式ファン必須の双信のSEコンデンサが製造中止になる,と言うものです。

ついに来るものが来たか,という気がします。そもそも,SEコンって,海底ケーブルの中継器用に開発された,と聞いていますし,そもそも今時アナログで中継するわけはないし,本来の用途としてはもう使われていないだろ,と思っていました。

内部に使われているガラスペースト材料の製造中止に伴い,来年3月で製造終了,とのこと。どうも鉛が原料に含まれていて,例のRoHS指令に引っかかるため,のようです。

iruchanはあまりにもこのコンデンサは信者にとっては多額のお布施が必要で,やっぱ 宗教 オーディオはカネがかかるな~~という代物です。それでiruchanも,オールメタルキャンプリとか,WEのMT管DCプリなど,ここぞ,と言うプリ以外には使っていないのですが,今回,CR型プリを作ろうと思ったのは,特に,CR型だとEQ素子のコンデンサが主役だから,最後にSEコンを使おうと思ったんですよね~。

といって,SEコンは熱に弱く,あるとき破裂するらしいので,WEの真空管プリからは撤退させようか,と考えているのですけど.....。

おそらく,iruchanも今回のプリアンプがSEコンを使う,最後のプリアンプになると思います。

早速,某通商会社に行ってみると,1500pFや5100pFなど,よく使う値のものはやっぱり在庫切れ.....orz。

しかたないので,追加発注したので,ということで100日待ちです。

当面,スチコンで我慢するしかないようです。

SEコン.jpg さよなら Goodbye, forever!

やはり最後なので,高くてもお布施をしておきました。

          ☆          ☆          ☆

さて,いつも通り,LTspiceでシミュレーションして動作を確認してみます。最近は本の記事をコピーする場合でも,必ずLTspiceでシミュレーションしてから作ることにしています。下手するとMJの回路図にはミスがありますからね......。

超シンプルCR型プリアンプ(金田氏オリジナル)1.jpg 

  LTSpiceシミュレーション回路(金田氏オリジナル)

東芝の2SJ722SJ74のSpiceデータはCQ出版の付録で入手しました。

ちゃんとSpiceで動くので,問題なさそう.....と思ったら,前回のオールメタルキャンTrスーパー・ストレートプリアンプ同様,EQ偏差が意外に大きいです。

オリジナルの金田氏の定数ではやはり偏差が最大0.4dBもあります。

RIAA偏差original.jpg

     LTspiceでのシミュレーション結果

金田氏は件の記事で実測結果を出していて,▲の結果通り,偏差のカーブは同じような形状で,最大+0.47dBと報告しておられて,LTspiceのシミュレーション結果とぴったり一致しています。

う~~ん,ちょっと悩んじゃうんですが.....。

金田氏のCR型EQ素子の回路はちょっと変わっていて,融合型と称しておられます。

RIAA素子.jpg左:通常,右:融合型

左が一番一般的なCR型EQ素子の回路で,右が金田氏の融合型です。

通常型はちょっと問題なのは,入出力端子が直流的に浮いてしまうことで,前回のモノラル用EQアンプの場合は,前段がOPアンプで,その出力と直結するので,次段のOPアンプも直流的に0Vになるからいいのですが,真空管アンプも含めてACアンプの場合,次段の初段バイアスが不定になってしまいます。まあ,考えようによっては直結回路にすれば問題ないので,メリットかもしれませんが.....。

そこで,通常はEQ素子の前か後に抵抗で接地し,直流的に0Vとするのが普通です。この場合,後に接続するタイプだとEQカーブに影響が出ますので,極力大きな抵抗値とします。

一方,金田氏の回路も同じなのですが,困ったことにいくらDCアンプと言っても,EQアンプの出力にカップリングコンデンサは避けられないので,やはり直流的に浮いてしまい,問題になりますが,金田氏の回路は前段に820kΩがGNDとの間に入っていて,接地されていますので,直流的に0Vとなります。

でも,何かこの回路は変。定数的にもちょっと偏差が大きいようです。

ということで,iruchanは以前,CR型EQ素子の計算用にExcelのシートを作りましたが,それを使ってEQ素子だけ変更しました。このシートはRIAA以外のEQカーブの素子の定数計算に使い,Spiceや実測で検証しましたけど,正確でした。

今回,EQ素子の回路は通常版とし,R1=1.22MΩ,R2=175kΩ,C1=1800pF,C2=620pFとしました。

DCアンプ教のエセ信者のiruchanは多額のお布施を払いたくないのと,1500pFが在庫なしなので,時定数は抵抗で稼ぐことにし,コンデンサは容量を小さくしました....(^^;)。R1が小さい方がいいのですが,そうするとコンデンサの容量が大きくなってしまいます。

RIAA偏差iruchan.jpg

iruchan版です。偏差は±0.08dBです。CR型だと0.1dB以内に収めることは可能です。

結局,iruchan版超シンプルCR型プリアンプはこうなりました。

超シンプルCR型プリアンプ(iruchan).jpg2N5462を使います。

金田氏ご指定の2N5465は入手難なので,耐圧が低い2N5462で代用します。特性は同じだし,2N5465はVDS=60Vなのに対し,耐圧が低いと言っても2N5462は40Vだし,本機はLTspiceでシミュレーションしても18V程度しかかかりませんのでOKです。

と言うことですけど,長くなりましたので続きはまた次回です。次はプリント基板の製作に取りかかります。


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メタルキャントランジスタを使ったスーパー・ストレートDCプリアンプの製作~その6・再修正,試聴編~ [オーディオ]

2021年5月16日の日記

スーパー・ストレートプリアンプ内部2.jpg ただいま,調整中です。

 メタルキャントランジスタがずらり[晴れ] トランスはRコアじゃなく,トロイダルです。

前回から9か月が経ってしまいました。試聴するのに時間がかかってしまいました。

一応,去年,11月に試聴しています。音のいいことに感心したのですが,いくつか不具合があり,修正したいと思いましたけど,ちょっとその間,あまりにもいろんなことがあった,と言うことがあり,ようやく今,再調整しています。

問題点としては,

 ① ハムが少し出ている。

 ② バランスボリウムがおかしい。

 ③ EQアンプの感度が低い。

 ④ Spiceで予想したとおり,やはりEQアンプの偏差(高域)が大きい。

ということです。

まず,ハムについてですが,Phonoポジションじゃなく,全部のポジションで出ていますので,原因はフラットアンプと思われます。

思いつくのはループ。GND配線が各基板ごとに1点だけ,シャシーに落とさないといけませんが,プリアンプだと配線がややこしく,シールド線も使うので,どこかで2点アースになっている可能性が高いと思います。

よく調べてみると,基板から黒い線で直接シャシーに落としている線と,シールド線経由で背面パネルのRCAジャック経由の2個所でGNDに落ちていました。これで解決です。

バランスボリウムは配線ミスで,ch.Lがどうしても小さくならない,という現象でしたけど,調べてみたら配線ミスでした。

で,あと調査が必要なのは③と④です。

本機では,CDやチューナーが10時くらいの位置でいいとするとPhonoは1時くらいの位置になってしまい,Phonoの感度が低すぎます。確かに,今の時代,レコードだけじゃなく,CDやハイレゾ音源など,デジタル音源を聴くことが多いと思いますが,デジタル機器は最大2Vの出力電圧がありますので,通常のフラットアンプではゲインは0でもいいくらいで,通常のプリだとPhonoとレベルが違いすぎる,と言うことが往々にしてありますよね。

対策は簡単で,これは金田氏も書いているとおり,EQアンプの反転側入力(NFB)のゲートに入っている抵抗(▼の図のR)を小さくすれば,EQカーブが変化することなく,Phonoの感度を変えられますので,簡単に調整することができます。

ただ,④は問題。

その4で実測した際に,EQ偏差が低域で1dB,高域で1.7dBも偏差がありました。その2でシミュレーションしたとおりの結果です。EQ偏差は±0.2dBくらいにしたいところです。

まあ,低域は30Hzだし,高域は20kHzでの偏差なので,それほど問題ないっちゃないんですけどね。ただ,10kHzで0.3dBあり,そこから急に偏差が大きくなる現象は,NFB型EQアンプではよくあることですし,特に金田式の場合は常にこうなります。

NF型イコライザ回路は,次のような回路で構成します。

eq素子.jpgNF型EQ素子

普通は左で,金田氏の設計では右の回路となっています。定数としては,R1=820kΩ,R2=51kΩ,C1=5100pF,C2=1500pF,R3=3.6kΩです。1kHzでのゲインは,大体,A=R2/Rで表され,本機では,R=470Ωとなっています。計算上,40.7dBです。Spiceでシミュレーションしてみると,42.9dBでした。

高域での上昇の原因は,EQ素子の1500pFに直列に入っている,3.6kΩ(R3)であることは前回,指摘しました。

この抵抗はNF型イコライザ回路では超高域でNFB100%となってNFB量が過大になり,アンプによっては発振するから入れられていて,金田式の場合はたいてい,入っています。真空管式や他の半導体アンプでは入っていないことも多いです。

で,今回はこの抵抗を撤去することを考えてみます。発振しなければ取ってもよい,と思います。

と言うことで,やはりLTspiceでシミュレーションして確認してみます。

一応,R3を0Ωにしても問題なさそうですし,実際,動作させても問題ありませんでした。

ただ,注意が必要で,カートリッジをつなぐと発振することもありますし,やはり小さな抵抗を挿入しておこう,と考えました。超高域でNFB量100%と言うのはあまり気持ちのよいものではありませんしね.....。

ちょっとこのあたり,昔から指摘されていますけど,NF型イコライザの問題点です。もちろん,コンデンサはある周波数から上はインダクタンスになり,また,決してインピーダンスが0Ωになることはないのですけど.....。

と言う次第で,f特に影響を与えない範囲で,小さな抵抗を入れておくことにし,120Ωを挿入しておきます。また,ゲイン向上のため,R=300Ωとしました。5dB程度,向上するはずです。

実測したデータとLTspiceによるシミュレーション結果を載せておきます。

EQアンプ特性(実測)1.jpg

   実測結果とLTspiceによるシミュレーション結果です

が実測で,がLTspiceによるシミュレーション結果です。1kHzでのゲインは46dBで,シミュレーションとほぼ同じです。高域の急上昇は消え,最大でも+0.2dB程度です。低域で,シミュレーション結果と違うのが原因がわかりませんけど.....概ね,50Hz~20kHzで偏差は0.2dBに収まっていると思います。

          ☆          ☆          ☆

さて,お楽しみ.....レコードを聴いてみます。

米Mobile Fidelityという会社がargoレーベルで出していた,SLのサウンドです。ステレオのレコードが出た頃,こういうサウンドエフェクトのレコードがたくさん出ましたよね。といってiruchanも生まれるずっと前の話なので,中古のレコードで知っているだけですけど.....。また,折しもSLが消えつつある時代,SLのレコードも割に出てしました。

実を言うと,このレコード,菅原正二さんの映画 "ジャズ喫茶ベイシー" の冒頭に出てきて,いきなり度肝を抜かされるんですけど.....あのレコードがほしいと思って中古盤屋さんで買いました。残念ながら,iruchanのシステムじゃ,SPがフルレンジ1発なので,とてもベイシーのように大迫力では鳴りませんでしたけど......orz。

ただ,iruchanが入手したのはオリジナルの米盤じゃなくて,日本のキングレコードが出していたもの(日キング SR-502)。普通,国内盤のジャケットはオリジナルと多少違っていたり,また,当然レーベルが変わっていることが多いので,まったく同じジャケットというのはないのですが,これはまったくオリジナルと同じで,間違っちゃいました......orz。国内盤の古いのは要注意で,針圧の重いセラミックカートリッジでガリガリやってノイズの多いレコードが多いので,心配しましたが,これはノイズが少なかったです。オリジナルは結構な値段がします。

steam railroading under thundering skies-s.jpg Steam railroading under thundering skies

結構,有名な盤らしく,人気があります。CD化もされたようですけど,CDは高いです。もっとも,今はストリーミングで安く聴けるようですけど.....。

米南部,Bonhomie and Hattiesburg Southern鉄道を走っていた,1925年Baldwin製ミカド(D51と同じ2-8-2配置)の咆哮と雷鳴が大迫力の素晴らしい音響だと思います。このシリーズはほかにもたくさんありますけど,中でも1960年録音のこの盤は,自然の荒々しさとSLの力強さが相まって,名盤とされています。

ちなみにこの鉄道はGulf Mobile & Ohio鉄道の支線で,全線27マイルの路線です。1925年開通のようですから,このミカドもそのときに購入されたものでしょう。木材輸送のため建設されましたが,大部分の米国のSLは本線用は1940年代,残るものも1950年代には姿を消していて,この鉄道はマニアのメッカになったようです。日本で言えば,寿都鉄道のような存在だったかもしれません。

1961年に整備士の死去に伴い,蒸機運転を終了し,1972年にはIllinois Central鉄道とGulf鉄道の合併に伴い,会社は消滅していますが,路線自体はその後,買収された現在のCanadian National鉄道の一部として存続しているようです。実際,Googleマップを見ると単線の鉄道がヘロヘロ~~っとアラバマ州Mobileのかつてのターミナルまでのびていますし,空撮画像を見ると途中の駅か信号場で貨物列車が停まっているので,今も使われているようです。余談ですけど,カナダ国鉄が米中部の路線を経営しているのは知っていますけど,驚きますね。また,B&HS鉄道の機関車は保存されているようです。一度,見に行きたい.....。



次はジャズ。

Curtis CounceのLPを聴いてみます。amazonで安く買いましたけど,今見てみると1万円近い値がしています。びっくり!

You get more bounce-s.jpg Contemporary C7539

ちょっとエロいジャケットですけど,曲はスイングしてとてもよい演奏ですし,何より録音もナローレンジだけれど,ノイズもなく,とてもよい録音だと思います。

スタンダードナンバー "Stranger in Paradise" を聴いてみませう。


まず,1956年という非常に古い録音なのに,HiFiなのは驚き!

レンジは狭いですけど,ノイズもないし,昔の録音はよかったなー。レコードとは思えない,クリアーな音質だと思います。プリの再生能力もなかなか高そうです。
 
最後はアナ雪!
 
前回,FrozenIIの Show yourself! を聴きましたが,今日はもち,Let it go!
 
Frozen LP.jpg 海外版だけ,LPが出ています。
 
う~ん,やっぱ松たか子さんのをアナログで聴きたいな~~~[晴れ][晴れ]

スーパーストレートプリアンプ竣工.jpg ようやく完成しました[晴れ][晴れ]

   下はPioneerのC-21。これでお役御免です。

ケースは昔からやってみたかった1Uのケースに収めて,超薄型です。

音はハッとするような表現力と優れたS/NでHiFiなことに驚かされます。特に,iruchanが作ったプリアンプは全部MM型用なのですが,どうしてもヴェールをかぶったような,なにかボケた印象がありますけど,このプリアンプはどこまでも澄み切った印象がします。やはりMC専用でないとダメなのでしょうか。


では,またよろしくお願いします。


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メタルキャントランジスタを使ったスーパー・ストレートDCプリアンプの製作~その5・発振対策編~ [オーディオ]

2020年9月28日の日記

前回,フラットアンプの超高域発振があるのを発見しました。金田式DCアンプではよくあることですよね。

もっとも,発振自体はそれほど強いものではなく,オシロで観測していて,どうにも輝線が太いので発見した,という程度でした。

周波数的には200kHzくらいで,たいていは2段目の差動アンプの位相補正で収まります。

ということで,前回,2段目の位相補正を20pFにして止めたところまででした。

ところが.....。

f特を見てみると,やはりまだ,200kHz付近にピークが残っていて,4dBくらいあります。

まあ,個人的には1dB以内なら許容しよう,と思うのですが.....。

ということで今週は対策をします。

いくつか対策があるのですが,先ほどの2段目の差動アンプの位相補正コンデンサを増量する,というのが普通ですが,前回,47pFまで増やしてみても変わりませんでしたので,原因は初段にあるようです。

そのほか,一番簡単なのは,真空管アンプでよくやる,微分型位相補正と呼ばれるもので,帰還回路の抵抗にパラに数pF~数十pFのコンデンサを取りつける,というものです。

フラットアンプLTspice.jpg位相補正箇所

ちゃんとTrは8月に作った,2SA6062SC959のモデルを使っています[晴れ][晴れ]

ただ,この場合,帰還抵抗と位相補正用のコンデンサが構成する時定数以上の周波数全体が下がってしまいます。

ピンポイントに特定の周波数だけ下げる,という場合は,初段の差動アンプのコレクタに入っている,2つの抵抗をショートしちゃいます。金田氏もよくこの手を使っています。

と言う次第で,まずはLTspiceで確認してみます。

フラットアンプLTspice f特(位相補正全部なし).jpg 位相補正なし

まずはすべての位相補正コンデンサがない状態です。やはりピークが出ています。

ただ,LTspiceでの結果は600kHz付近にピークがあり,実際にiruchanが組み立てたアンプでは200kHzですから,これくらいずれるんでしょうか。LTspiceだと,配線の浮遊容量などは考慮に入れていませんので。

フラットアンプLTspice f特(2段目位相補正のみ).jpg 2段目位相補正のみ

差動アンプの2段目に位相補正用のコンデンサを入れます。金田氏の原設計どおりの場合です。やはり,かなりピークが抑えられますが,完全には消えません。

フラットアンプLTspice f特(位相補正初段のみ).jpg 初段の位相補正後

最初,600kHzのピークだから,ということで計算上,R14に2.7kΩを使ったのですが,ダメで,どんどんカットオフを下げて,160kHzくらいにしたら,最良でした。少しピークが下がります。

ただ,これでもピークが残ります。

しかたないので,これをあきらめ,やはり微分型位相補正にすることにします。

フラットアンプLTspice f特(微分型位相補正).jpg 帰還抵抗+47pF

見事にピークが消えます。また,200kHz付近に第1ポールがあることもわかります。

ということで実装してみます。

まずは,初段の位相補正を試してみたのですが......。

確かにピークは下がりましたが,まだ3dBほどのピークが残ります。いくつか定数を変えてみてもあまり変わらなかったし,基板上のスペースも厳しいので,早々にあきらめ,帰還抵抗に47pFをパラにしてみました。

flatアンプ特性(実測, cnf=47pf).jpgフラットアンプ位相補正後

予想どおり,見事に200kHzのピークは消えました[晴れ]

ただ,WEの真空管式DCプリに劣ります。-1dBで80kHz,-3dBで100kHzといったところです。半導体プリなんだから,もう少し広帯域でよいし,せめて100kHzまでフラットと行きたいものです[雨]

要は薬の効きすぎ.....という状態なんですね。もう少し位相補正用のCは小さくてもよさそうです。

と言う次第ですが,この宿題はまた後で,ということにしたいと思います。ほかにもいくつか宿題がありますので......。

ただ,宿題をひとつ,片付けました。今回,電源を増強しました。往年の名石2SA5662SC1161を使った超高速プッシュプルレギュレータです。もう,これらのTrはたぶん,製造されてから40年以上経っていると思います。

±10.5Vレギュレータ基板1.jpg フィルタCを増量しました。

今回,1Uという非常に背の低いケースにした関係で,フィルタのコンデンサはRubyconの35V,3300μFを使いました。非常にコンパクトで助かっています。モノラルLP用CR型EQアンプでも使いました。

ただ,フラットアンプもついたプリアンプ用としては,ちょっと少ないのではないかと....。トータル電流は40mAくらいなんですが。

金田氏の第1号プリでもフィルタコンデンサは4700μFです。オリジナルのスーパー・ストレートプリアンプは電池仕様だったので,フィルタコンデンサの値は不明です。

もっとも,第1号プリは1974年のことだし,使用しているケミコンは日ケミのCEWだと思いますが,ブロック電解の50V,4700μFなので非常にサイズがでかくてこのケースには入りません。

ということで,もう1個ずつ,追加しました。合計6600μFなら十分でしょう。それに,ESRの点から考えても,大容量のコンデンサ1個より,小容量のコンデンサを複数パラにした方がESRは小さくなるはずです。

と言う次第で,ようやく完成としましょう。来週は実際に音を聴いてみたいと思います。


     ☆          ☆          ☆

2020年10月3日追記

やはりフラットアンプのf特をもう少し広帯域にしたいと思います。

微分補正用のコンデンサが47pFでは大きすぎるので,LTspiceでシミュレーションすると,10pFくらいでも十分です。また,微分型位相補正が効くことがわかったので,2段目の差動アンプのB-C間に接続した位相補償用のコンデンサは金田氏のオリジナルの5pFに戻しました。

でも......。

フラットアンプLTspice f特(微分型位相補正10pF).jpg CNF=10pFのとき

制御理論から,位相が180゜回ったときに,アンプの閉ループゲインが0dBより上だと発振することがわかります。LTspiceでのシミュレーションでは,-1.06dBでしたので,発振しないはずですが,ゲイン余裕はこれでは少し足りません。回路の実装状況では発振することもあり得ます。

実際,やってみたら,発振はしなかったものの,200kHzでのピークが1dBほど出ました。

ということで,結局,最終的にCNFは15pFにしてみました。

flatアンプ特性(実測, cnf=15pf).jpg最終f特です。

これでも,ch. Rには0.6dBほどのピークが残りますが,ch.Lはピークは消えました。まあ,これくらいでいいとしましょう。

f特は大幅に改善され,-1dBで400kHz(ch. R),200kHz(ch.L),-3dBでそれぞれ,500kHz,400kHzとなりました。100kHzまでは,完全にフラットです。半導体アンプなら,これくらいは必要だと思います。

いよいよ,これで音楽が聴けますね。

最終版の回路をのせておきます。ピンクの部分は改造部分です。音量調整は金田氏の原設計では,β回路に入れていますけど,音量が0にできないこともあり,通常の方法です。それに,β回路に入れたから,といって音声信号がそこを通るわけなので,結局は同じなのでは,と思っています。

スーパー・ストレート・プリアンプ回路(最終版).jpg最終版回路

☆          ☆          ☆

半年以上が過ぎてしまいましたけど,続きはこちらです。音を聴いてみました。

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黎明DCプリアンプの製作~金田式DCプリアンプ第1号・その2:プリント基板~ [オーディオ]

2020年9月20日の日記

黎明DCプリアンプ基板1.jpg プリント基板が完成しました[晴れ]

前回から3ヶ月が経ちました。ようやくモノラルLP用のEQアンプオール・メタルキャンTrを使ったスーパー・ストレートプリアンプも完成したので,こちらを再開します。

さて,まずはプリント基板を作ります。

iruchanも散々苦労しましたけど,ようやく感光フィルムを使った方法でプリント基板がうまくできるようになりました。残念ながら,サンハヤトが売っている最近,また感光剤が変わった欠陥感光基板の使用はあきらめました。失敗ばかりで,とてもうまくいく,とは思えません。失敗してもやり直しができないし,それに値段もとても高いですしね。こんなもの,とても一般消費者に売るものとは思えません。今まで,同社には散々貢がせていただきました。どうもありがとうございませんでした......[雨][雨][雨]

感光フィルムの方もかなり苦労しましたけど,要はコツとしては,うまくマスクの遮光性を確保するため,マスクを2枚重ねにしないといけないということと,現像時の温度も重要で,炭酸ナトリウムの1%溶液を温めながらやらないといけない,というのが最大のコツのようです。だいたい,iruchanは40℃くらいの温度が必要では,と思っています。ほかの方のブログなどを見ると30℃くらい,という感じなのですが,もっと高い方がよい感じですし,とにかく,常温ではダメです。特に冬だとヒーターかコンロが必須で,加熱しないとダメでしょう。

さて,iruchanもそれなりに苦労しましたけど,ようやく一発でプリント基板を作ることができるようになりました。iruchanのやり方はこちらをご覧ください。なにより,この方法は安価な生基板を使えるし,失敗してもまたフィルムを貼って何度でもやり直しができます。もう決してサンハヤトの欠陥感光基板は使いません。

黎明DCプリアンプ基板.jpg 

    エッチングするとこんな感じです。

まだ,サンハヤトの感光剤が変わる前の旧感光基板ほどではありませんが,文字もエッチングできるくらい,きれいにできるようになりました。ただ,まだDIPのパターンなど,隣とつながってしまうところも出てきちゃうので,チェックは重要です。

☆2段目差動Trの差し替え

金田氏は,無線と実験1973年8,9月号では,2段目は東芝の2SA493GRで,'74.1月号の本機で2SA640に代わっています。

金田氏は'91.6月号のスーパー・ストレートプリアンプの記事のところで,第1号は'74.1月号と書いておられますが,'73.8月号のは失敗作と考えておられたのか.....そのあたりはiruchanもよくわかりません。

ただ,さすがにiruchanも東芝の2SA493じゃね.....って感じなので,回路は'74.1月号としました。

この場合,2段目は2SA640なんですけど.....。

iruchanも中坊のとき,半導体パワーアンプ第1号はこのTrで作りましたし,それで,ちょっと愛着のあるTrなんですけど....。

なんかあまりいい音がした,という印象はないですし,金田氏もいつの号かわかりませんが,三菱から2SA726が出るとすぐに交代させています。

ということで,本機は2SA6402SA726が差し替えられるように考えました。

マニアの皆さんはよくご存じだと思いますが,三菱のTO-92のTrは一般のTrと電極配置が異なります。

なぜか,一般的には左からECBなのに,三菱の2SA726はBCEと反対です。

理由は三菱電機が提携していたのが米Westinghouseで,そこから技術導入したから....と言われているのですが,確かにWestinghouseは真空管もTrも作っていましたけど,それほどメジャーじゃなく,すぐに製造を止めてしまって,他社からの購入に切り替えたと思います。

Westinghouseは鉄道の自動ブレーキを発明した,George Westinghouseが創始者で,テスラと組んで,交流の発送電システムを開発したことでも知られていますね。エジソンと電流戦争を戦って,勝利を収めました。米国の総合電機メーカとしてGEと並んで大企業に成長し,半導体やコンピュータも作っていて,原発も作っていましたけど,1990年代には米国の製造業の衰退と歩調を合わせてどんどん事業を売却し,最後まで残った原子力事業を買収した東芝が大やけどして危うく潰れかけたのはご存じのとおりです。今もブランドは残っていますが,RCAやZenith同様,ブランドだけで,製造業としての会社の実態はありません。ちなみに,よく,同社のブランドで6BQ512AX7などの球が秋葉などで売られていますけど,ほとんど日本製です。

トランジスタについても,Westinghouseのトランジスタラジオ,というのが1950年代には売られていましたが,日本メーカの集中豪雨的輸出でRCAやPHILCOなど米国ブランドが駆逐されてしまう中,Westinghouseもラジオの製造もやめちゃいます。Tr自体もあまりWestinghouse製,というのは見かけないのですが.....。問題はいつまで半導体をWestinghouseが作っていたか.....1986年にはPowerexという会社をGE,三菱電機と合弁で設立し,半導体部門を分離しているようです。Westinghouseは最後はパワー半導体を作っていたようです。

そもそも,米国じゃ,GEにしたって,RCAにしたって,早々にどこも半導体製造の看板は下ろしてしまって,半導体はFairchildやMotorolaやNational Semiconductorなど,専業メーカーの独壇場になります。初期の頃でも,RCAとGE以外はほとんど半導体はダメ,という状況だったのですけど....。

そういや,これらの半導体メーカーも今はもうないな.....orz。

Fairchildは今もRSコンポーネンツなんかで売られていますけど,ショックレー研を飛び出したロバート・ノイスたちが設立した,Fairchild Semiconductorとは歴史的につながっているんでしょうか.....。ノイスもここを飛び出してインテルを作るわけですが.....。

と言う次第で,ちょっと脱線しましたけど,理由はよくわかりませんが,2SA726をはじめとして,三菱のTrは電極は位置が異なることがあるので,要注意です。

それで,プリント基板は結構面倒くさく,簡単には2SA726だけ,背中合わせで熱結合すればパターンはそのままで差し替えられるんですけど.....それは格好悪いですよね。

散々考えて,DIP10ピンのソケットを使って,差し替えできるようにしました。DIP8ピンでもできなくはないのですが,どうしてもジャンパー線ができてしまうので,2ピン分追加してジャンパー線なしのパターンを考えました。

2SA726周辺.jpg こんな風に差し替え可能にしました。

これならうまくいきそう......って思ったのですが.....

なんと,DIP10ピンなんてソケット,売っていないんですね.....[雪][雪]

8ピンの次は12ピンになっちゃいます。14ピンならロジックICでよく使いますが,12ピンのICなんてあったっけ,という気もするんですけど。

散々探したら,RSコンポーネンツでDIP10ピンのソケットを売っていました。面倒なら12ピンのソケットでもよいと思います。2ピン分,遊ばせておけばOKです。

でも,iruchanは1列だけ遊ばせておくのはなんかなぁ~って思っちゃいました。

2SA640装着時.jpg 2SA640ほかのとき

一般的な,ECB配置のTO-92Trの時はこの位置に挿します。

2SA726装着時.jpg 2SA726のとき

2SA726の時は下側に挿します。COPALのλ13T半固定が懐かし~~~~。2SK30Aも後の2SK30ATMなどのTO-92より小さい,モールドタイプの旧型です[晴れ] なぜかドイツから輸入しましたけど.....。金田氏が設計した頃はこのタイプだったと思います。できるだけ,オリジナルに近いTrや部品を使おう,と思いましたが,残念ながら抵抗はニッコームばかり......[雨][雨]

     ☆          ☆          ☆

さて,ようやくプリント基板が完成したので,次回は電源からテストしていきたいと思います。



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モノラルレコード用CR型イコライザーアンプ(EQアンプ)の設計と製作~その4:試聴編~ [オーディオ]

2020年9月3日の日記

CR型EQアンプ2.jpg ようやく完成しました[晴れ]

プリはPioneer C-21です。ついでに,LPをソニーのMZ-RH1でリニアPCM録音します。

前回,まだEQカーブのおかしいところを調整していました。どうも肝心のRIAAカーブが少しずれていて,再調整でした。

ようやく今日は音を聴いてみます。

ということで,まずはやはりお目当ての英DECCAのffrrカーブから.....。

第2次世界大戦中,英海軍の対潜哨戒システムのひとつとして開発された技術を英DECCAが応用した,といわれています。おそらく,ソナーシステムの受信側のシステムのひとつで,より広帯域の反射音を捉えよう,とするものだったと思いますけど,詳しいことが全然わかりません.....orz。

一体,ソナーの中のどういうシステムだったのか,ということもありますけど,オーディオとしてはどういう機材を使って,広帯域録音を達成したのか....詳しく知りたい,と思っています。

ただ,やはりDECCAのffrr録音はクラシック界ではHiFi録音の代名詞のようなもので,もう,定番中の定番,という感じですね~。特に,ステレオになってからのffssも有名で,アンセルメの一連のCDなどはいまも愛聴されています。

☆Grieg Piano Concerto, Pf:Clifford Curzon, DECCA LXT2657

DECCA LXT2657.jpg

クリフォード・カーゾン演奏のグリーグのピアノ協奏曲を聴いてみます。英DECCA LXT2657です。オケはロンドン交響楽団(LSO)で,指揮はフィストラーリです。

グリーンの紙ジャケットが印象的です。1952年1月の発売のようです。レコード自体は,国内で安く買いました。あまり人気のない盤のようです。まあ,クラシックマニアの間じゃ,英国オケ,というと独墺のオケに比べれば,格下,と思われていますから.....。

盤はいわゆるフラット盤で,ディスクグルーブを保護するためのグルーブガードと呼ばれるへこみがない最初期の盤なんですけどね。普通は結構な値段がしますが,1,000円以下で買えました。

まだ,終戦から間もない時代で,印刷技術もいまいちだったのか,この時代のジャケットは写真を使っていることはまずないし,カラー印刷にはなっていても,せいぜい2色か3色刷のものばかりです。

また,なぜ,この曲かというと,シューマンのピアノ協奏曲と一緒に,最近よく聴くから,ですけど,以前,RIAAで再生して録音したデータがあるので比較しやすいからでもあります。何よりピアノが一番,録音やセットの性能を把握しやすい楽器だと思います。ピアノだと音が悪いとすぐにわかるように思います。

余談ですけど,iruchanは80年代のデジ録盤は買いません。明らかにピアノの音が変です。最近の録音になってようやくピアノの音が聴けるようになった,と思います。やはり,16bit,44.1kHzのサンプリングじゃ,足りなかったのでは,と思います。

シューマンの方は,ウルトラセブンの最終回で使われた曲で有名ですよね。ところが,iruchan,この最終回の曲はずっとグリーグだ,と思っていました.....。確かに,よく似た曲ではあるんですけど.....。大人になってから最終回を見直してみて,気がつきました。

ちょっと比較してみませう。平均音量は揃えてあります。

ffrrで再生した場合

 

RIAAで再生した場合

 

さすがにso-netブログはwavは再生できないので,mp3に変換していますけど.....。

さて,聴いてみてびっくり。やはり全然違います。RIAA再生だと,かなり音がおかしく,こんな音じゃない,っていつも思っていました。変な表現ですけど,ffrrで再生すると,いかにもピアノの音がします。こうだよな~って,改めて思っちゃいました。

さすがに古い盤なのでスクラッチ音が結構しますけど,まあ,初期盤と呼ばれるような古いレコードはこんなものです。でも,この盤は英国盤ですからいいですけど,基本的に国内で発売された初期盤は避けることにしています。まあ,プレスの技術が低かった,とは思いたくないのですが,とにかくスクラッチノイズがひどいものばかりで買いません。おそらく,LPは高かったので,それこそすり切れるまで聴いていたんだろう,と思います.....。

☆Schumann Piano concerto, Pf:Joerg Demus, Westminster XWN 18290

Demus Schumann.jpg

今度は正真正銘?,シューマンのピアノ協奏曲を聴いてみましょう。iruchanは最近,この曲に凝っていて,古いレコードを集めています。

ソリストはオーストリア出身のイェルク・デムスです。1928年生まれで,1956年のブゾーニ国際コンクールで優勝しています。オケはウィーン国立歌劇場管弦楽団で,指揮はロジンスキーです。録音は1956年ですから,同コンクールで優勝した年のようです。新しいので,▲のカーゾンより,こちらのWestminster盤の方が音がよいはず,と思っていましたが,改めて聞き比べてみるとカーゾンの方が音がよいですね~~。何より録音レベルがかなり低く,8dBほど低いです。音も低音は伸びていますが,高音があきらかにDECCAより劣っています。おそるべし,DECCA。

デムスは驚いたことに,亡くなったのは去年4月なんですね~。親日家としても知られ,多くの演奏家がキャンセルした,2011年の東日本大震災の直後にも来日してシューマンを聴かせてくれたそうです。歌手のシンディ・ローパーやレディ・ガガもそうでしたけど,すぐに日本に来てくれて,応援してくれました。本当にありがたいことです。ご冥福をお祈りします。

ウルトラセブンの最終回で使われたのはディヌ・リパッティとカラヤンのEMI盤ですが,一応,スクラッチ音がほとんどしないので,テープ録音のようですが,まだLPが登場する前のSP向けの録音のせいもあり,音が悪く,よりHiFiなLPの方がよかったと思います。でも,演奏自体はリパッティのはすごいですね。なお,先ほどのリンクに書きましたけど,青山通氏の本には,いろんなシューマンのレコードが出ていますが,この盤は出ていません。ウルトラセブンの音楽担当だった冬木透氏はこの盤のことはご存じだったと思いますが,採用されたのはもっと古いリパッティ盤でした。


レコードは放浪の名レーベルWestminsterです。強い米ドルにものを言わせ,欧州の名演奏家のレコードを多数出しました。なにより,録音技術も素晴らしかったようで,今聴いても非常に音はよいです。でも,今回,比較して気がつきましたけど,米国からエンジニアが出張して録音したので,いまいち,機材に不足があったのかもしれません。戦前,TELEFUNKENがSP盤の最高とされていましたし,実際,iruchanが今,聴いてもそのように思いますが,メンゲルベルクのSP盤はベルリンからアムステルダムまで出張して録音していたので,音がほかのTELEFUNKENに比べ,悪い,と言われていたのを思い出しました。

Westminsterはマイナーレーベルだったため,レコードの生産自体は米Columbiaに委託していたこともあり,RIAA制定前のカーブはColumbiaです。また,生産がColumbiaだったので,VOXやRemingtonなどの弱小レーベルと違って,盤質は格段によいです。今回,Columbiaカーブも備えていますので,万全です。

なお,Westminsterはマイナーレーベルでしたが,演奏や録音がよかったため,国内外でCDがたくさん出ていますが,本盤は出ていないようです。レコード自体,eBayでイスラエルの中古盤屋から買ったのですけど,いまいち盤質が悪く,ノイズが多いです。宛名や郵便局のシールがヘブライ語で書いてあって,読めませんでした.....。

       ☆          ☆          ☆

さて,本機はiruchanはモノラル盤用と書いていますけど,RIAAとffrrはステレオで聴けるように,2ch.で作ってありますので,一応,ステレオ盤も聴いてみたいと思います。CR型のEQアンプ,というのも初めてですしね~。

☆Rachmaninov Piano Concerto No.2, Pf:Sviatoslav Richter

richter rachmaninov.jpg

今度はリヒテルのラフマニノフの2番を聴いてみます。やはりロシアの曲はロシア人の演奏家,ですよね~~。

オケはワルシャワ・フィル,指揮はヴィスウォツキです。録音は1959年と古いですが,ステレオ録音になっています。鉄のカーテンの向こう側にすごいピアニストがいるってんでDGGのエンジニアがワルシャワまで乗り込んで録音したらしく,この曲の最高の名演のひとつ,とされていますね。


このディスク自体はどこが作ったのか,わからないのですが,Made in EUと書いてありますので,EUのどこかでしょう。一昨年,HMVで買った最新盤で,最近,LPを買うと,やはり今どきLPを作るとコストがかかるのか,とんでもなく高いですけど,これは1,700円と格安でした。でも,盤質はとてもよいですし,クラシックファンなら1枚持っていても損はない1枚だと思います。

録音もとてもよく,ノイズやひずみはありませんし,なにより初期のステレオ録音は結構,試行錯誤だったのか,うまくステレオ感の出ていないものも多いのですが,これはなかなかよい録音です。

演奏自体はとても遅く,浅田真央さんがソチで滑った曲で有名ですけど,この演奏じゃありませんね。これでは踊れんやろ~~[雨]

クラシックファンはこのように,好きな曲でも,これじゃない,ということで結局,自分の気に入った演奏が見つかるまで,延々と同曲異演盤を探し続ける.....と言うことになりますね。ウルトラセブンの本の青山氏も同じで,結構,この本は面白かったです。また,普通は同曲異演ということは異なる演奏者ですけど,フルトヴェングラーなんかは同じ人物なのにまるで違う演奏がたくさんあるので困っちゃうんですけど.....。

☆Frozen II

さて,お楽しみ.....。

実は,アナと雪の女王のサントラは海外ではLPでも発売されています[雪]

FROZEN II LP.jpg 歌詞カードもきれいです。

結構,値段が高いんですけど,レコードで ”Let it go!" が聴けるのはうれしいです。残念ながら,海外盤なので,英語の歌ですけどね.....。松たか子さんと神田沙也加さんの日本語盤がLPで出てるとなおうれしいんですけどね....。

今回は,アナと雪の女王2のサントラを聴いてみます。

CDと違って,収録曲が少なく,エンディングの "Into the unknown" は入っていません。まぁ,これは歌っているのがオッサンだから要らないや.....。

やはり,今回の目玉は "Show yourself" (見せて,あなたを)だと思います。"Into the unknown" より,こっちの方がよっぽど感動的な曲だと思うのは私だけでしょうか.....。

FROZEN II LP-1.jpg 

 レーベルもかわいい~~。B面はもちろん,アナですけど。

Garrard 301とDL103でアナ雪のレコードを聴いているのはiruchanだけだと思います....(^^;)。

ただ,聴いてみてびっくり。残念ながら,盤質はよくありません。そもそもセンターの穴が小さすぎて,スピンドルにはまらんちゅ~~の~~orz。おまけに結構大きなスクラッチノイズがして,ところどころ傷があるようで,大きなノイズが出ます.....。波形を見ていても,ノイズフロアが高く,さっきのリヒテルのLPと比べてみても,おかしいです。まぁ,今どきLPを高い品質で作れるところは少ないのでしょう。

PDVD_132-1.jpg ♪I'm dying to meet you....


う~~ん,断然,松たか子さんの方がいいや......。

       ☆          ☆          ☆

聴いてみて,やはり音のよいアンプだと自分ながら,そう思いました。超低ひずみOPアンプのLME49720Hを採用したこともあるのでしょうけど,EQアンプはやっぱ,CR型だよな~~って思いました。本当はLCR型がすごいらしいですけど.....。専用のタンゴのEQ-2Lは中古価格がこちらもものすごいことになっていますけど.....orz。

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メタルキャントランジスタを使ったスーパー・ストレートDCプリアンプの製作~その4・調整編~ [オーディオ]

2020年8月13日の日記

スーパー・ストレートプリアンプ1.jpg 完成しました[晴れ]

前回,電源部のテストをしました。秋月で売っている中国製の欠陥LEDのせいで1日棒に振ったり,やはりトラブル続出でした.....orz。

さて,今日からEQアンプとフラットアンプの2つの基板に電気を通して試験していきます。

EQアンプ基板.jpg 完成したEQアンプ基板。

EQ素子には双信のSEコンをおごっています。カップリングは旧ソ連軍用の0.4μFのスチコンです。大きいですが,基板にも載ります。オリジナルはSE33000pFです。これより大分小さいのですが,お値段は10倍以上......。

今回使ったのはスチコンなので音はよいですし,なによりスチコンでこんな大容量のものはない,と思います。初段はソニーの2SK97です。懐かし~~~。2SC959は表面に2SC959と書かれた旧ロット品です。1973年の製造と思われます。もう半世紀近く前なのか......。2SA606A606と書かれていて,新ロットで,1978年製造のようです。

フラットアンプ基板.jpg 完成したフラットアンプ基板。

こちらは初段はソリトロンの2N3954です。電源のパスコンは双信のV2Aじゃなくて,シーメンスのMKHにしちゃってます。V2Aはでかくてまいっちゃいます......(^^;)。

スーパー・ストレートプリアンプ内部1.jpg 内部写真です。

トロイダルトランスを採用したり,電源のフィルタコンデンサの高さを抑えたので1Uのケースに収まりました。

もちろん,配線ミスがないか,しっかりチェックします。特に,部品をはんだづけした際に,隣のパターンと接触していたりするので,テスターでよくチェックしておきます。特に,+Vccと-VccがGNDと導通していないかはまずチェックします。

と.....やはり何カ所か,パターンが接触していました。おまけにフラットアンプの-VccがGNDにショートしています。絶対やっちゃいけないのに.....!!

やべ~~~~。

何でか,と思ったら基板をケースに取りつけるスペーサの金属製の埋め込みねじがショートしていました....。

ここまでチェックしたら,電源を入れます。

EQアンプの方は無事に動作完了。

すぐに,トータル電流もチェックしておきます。

前回,レギュレータの制御Trに,エミッタ抵抗として1Ωを追加しました。この両端の電圧を測定すればトータル電流がチェックできます。今回の金田式スーパー・ストレートプリアンプはトータル電流(EQアンプ+フラットアンプ)は45mAくらいのようです。調整中はここまでの間に収まっていることを常に確認します。特に,オリジナルの回路の場合はレギュレータに保護回路は入っていないので,過電流が流れると貴重な2SA5662SC1161を飛ばしちゃうので,ご注意ください。iruchanは100mAのポリスイッチを入れて保護しています。

オフセット調整用の200Ωの半固定を回してみて,オフセット電圧が変化するようなら成功です。

ただ,それにしても金田氏も書いていますけどEQアンプのオフセット調整はすごくシビア。

±8Vくらいまでのオフセットが出ますが,なかなか0V付近に止められません。-2Vくらいからすぐに+2Vへ飛んじゃいます。3回転タイプのコパルのTM-7Pを使っていてもこんな調子なので,非常にシビアです。なんとか50mV以内に収めて調整終了です。

ついでにテストオシレータから正弦波を入力してオシロで見てみるときれいな正弦波が観測されますし,周波数を変えると振幅がきれいに変化するので,うまくいったようです。

さて,次はフラットアンプ。こちらの方が簡単なはずなんですけど.....。

EQアンプは低周波で50dBくらいのハイゲインなのでオフセット調整が厄介ですが,フラットアンプは今回,iruchanは20dB固定で作ったので,簡単なはずです。

でも,どうしても-8Vくらいに貼り付いてしまい,動きません。

こういうときはやばいです。すぐに電源を切って,パターンをチェックします。

案の定,パターンに1カ所ミスがあり,2段目の2SA606の差動アンプの共通エミッタ抵抗47ΩがGNDにつながっていました......orz。

すぐ隣にGNDのパターンがあるので間違えちゃったようです。

気を取り直して抵抗の配線を直して再びスイッチon!

今度はオフセットが変化します......。

でも,-4.5V~-2Vくらい,といったところで0Vになりません。

困ったな~~~。

これ,結構遭遇するトラブルですよね~~。初段の2N3954のバランスが悪く,オフセットとなってしまっています。

金田氏は音の悪い半固定をやめて,ドレインの抵抗を調整することで対処しておられます。ドレイン抵抗3.9kΩにどちらかに直列に500Ωの半固定を入れてオフセットを0にし,その後,その半固定に応じた固定抵抗と入れ替える,という手段なのですが,やってみると非常に面倒なので,iruchanは横着して通常のオフセット調整として,共通ソース抵抗を可変するやり方です。

いつの頃かわかりませんが,金田氏はこの方法はやめちゃっています。

今回,この半固定抵抗の調整範囲を超えちゃっていますので,この半固定抵抗を取り替えます。EQアンプだと200Ωどころか,50Ωでも十分調整範囲だったようなのですが......さすがはソニーの2SK97と思っちゃいましたが,ソリトロンの2N3954は200Ωじゃ,ダメなようです。

しかたないので,1kΩに交換してやってみますが,それでもダメ。オフセットは最小でも-1V台になっちゃいます。決してプラスにはなりません。

さらにしかたないので,オフセットが最小の時に,半固定抵抗のスライダーは0Ω位置になっていますが,その反対側に固定抵抗を入れてみます。

ようやく2kΩを追加したらオフセットが0になりましたけど......これじゃダメです。

共通ソース抵抗は電流帰還抵抗となりますので,この場合,反転入力(NFB側)のソースに3kΩもの抵抗がつながっていることになりますから,初段のゲインはほとんど0dBになっちゃいます。

まあ,DCアンプに限らず,初段の差動アンプはゲインが取れませんし,特にDCアンプの場合は初段がFETですから,余計にゲインが取れません。特にローμのNutubeなんて使った日にゃ,減衰器になっちゃっうくらいで,実際にはアンプと言うより,インピーダンス変換器として動作しているようなものですけど....。

ようやくここまで来てiruchanは何かおかしい,と気づきました。今ごろかよ,アホちゃうか.....。

実を言いますと,金田氏の原設計では初段はFD1840です。ここをiruchanは2N3954を使っています。

ご存じのとおり,FD18402N3954の選別品で,2N3954とは同特性です。時代的にも2N3954が先に出ていて,iruchanはFD1840は漏れ電流の選別品だ,と思っていました。

ただ,どうやらそうではないらしく,2N3954のIDSSが1mAくらいのものの選別品のようです。

う~~ん,とすると,iruchanが使用している2N3954はIDSSが大きいのでは,と思いました。

規格表を見ると,2N3954のIDSSは0.5~5mAの間のようです。ただ,残念ながら,国産の2SK302SK43などの接合型FETはIDSSによりランク付けされていて,ユーザは使用するIDSSのものをチョイスできますが,どうも2N3954は規格表を見てもそんなことは書いていないし,ユーザが選別するもののようです。しかし,選別すると言っても,iruchanが中坊の頃でも1個,3,000円くらいしたと思いますから,選別なんて無理で,回路で調整するしかありません。でも,それじゃさすがに不便だろうから,というので低IDSSのものを選別してFD1840として売っていたようです。

金田氏も最初は2N3954を使っていたのに,あとからFD1840に変わっています。やはり低IDSSのものの方が使いやすいようです。

iruchanは20年ほど前,海外からソリトロンの2N3954をまとめ買いしたのですが,さすがにランクに分かれていませんでしたし,今回,測定してから使用するべきでした。ただ,当時でもFD1840は入手難で,今ではオクの世話にならない限り,入手は無理だと思います。

もっとも,2N3954自体,2SK30で代用できることはよく知られていますし,今回,低IDSSのもの,ということならOランクがぴったりで,IDSS=0.6~1.40mAですから,2SK30A-Oで代用しようか,とも思ったのですけれど......やめました。2SK30はモールドですからね....。手持ちがある限り,2N3954を使おうと思います。

余談ですけど,2SK30は一番IDSSが小さいもの(0.3~0.75mA)がRランクとして売られているはずですが,見たことがありません。

今回,測定し忘れたので,おそらく,規格表から考えてみても,使用している2N3954のIDSSは大きいのだろう,と思いました。

ちなみに,第2回でSpiceでシミュレーションをしていますが,LT社のモデルに2N3954があるので,IDSSを調べてみると,3.8mAのようです。

2N3954 ID-VGS特性.jpg VGS=0VのところがIDSSです。

ということは,初段の差動アンプの動作点はID=1/2 IDSSに選ぶのがよいわけですから,もっとドレイン電流を増やしてやればよいのでは,と思いました。金田氏の原設計ではID=0.23mAのようです。FD1840のIDSSは1mAくらいのようですから,適切な値でしょう。

ところが......。

定電流回路の2SC1775Aのエミッタ抵抗RE(10kΩ)を2.7kΩに小さくして,ID=1.2mAくらいを狙ったのですが.....。

2N3954 ID(RE=2.7kΩ).jpg ID=1.2mAを狙いました。

見事に撃沈.......orz。

オフセットは-8.5Vくらいで,しかも半固定VRを回してもびくともしません。-Vccに貼り付いちゃっているんですね.....。

これは,逆だったようです。おそらく,使用した2N3954はIDSSが小さく,もっとドレイン電流を小さくしないとダメなようです。

しかたないので,RE=24kΩにしたらようやくオフセットが+にまで変化し,0Vにすることができました。やれやれ.....。

実測してみると,ID=0.1mAくらいです。小さすぎて不安になっちゃいますが,問題ないようです。ただ,少し半固定VRのスライダーの位置が偏っている感じなので,最終的に18kΩとしました。

進RJ抵抗.jpg いにしえの抵抗たち.....。

部品箱を探したらにスと書いた,古い抵抗が出てきました。RE55の前身のようです。RE55より少し厚みがあります。一番右はニッコーム。音の点では進の方がよい,と言うことになっていますね。でも,こちらもとうに製造中止。昔はよかったな~~~~orz。

そういえば,初段の定電流回路の設定値によりオフセットが変わるのはWEの真空管式DCプリで経験済みでしたけど,差動アンプの共通ソースに定電流回路を挿入した場合,どうして左右の差動アンプの出力が変化するのか....ちょっとわかりません。

        ☆          ☆          

ようやくオフセットが0Vになったので,ここまで来たらf特を調べてみます。

まずはフラットアンプから.....。

と思ったのですが,1kHzの正弦波を流してみると,どうにも輝線が太い.....。

どうやら超高域で発振しちゃっているようです。

拡大してみると.....,

超高域発振.jpg 1kHz正弦波を入力しています。

ピークの数を数えると,だいたい,200kHz付近で発振しているようです。

2段目の差動アンプに3pFと5pFの位相補正用のコンデンサがついていますが,EQアンプはそれぞれ5pFと10pFなので,ちょっとやばいのでは......と思っていたので,予想どおりでした。

結局,2個の位相補正コンデンサのうち,5pFを10pFにしたら発振が止まりました。ついでに,10kHzの方形波応答を見ておきます。

10kHz方形波応答(10pf位相補正後).jpg 10kHz方形波応答です。

金田氏に限らず,半導体アンプじゃ,こういうことはやらないみたいですけどね。

オーバーシュートとリンギングが少し残っていますが,3波ほどなのでOKとしましたけど.....。やはりあとでf特を見て修正となりました。いつも,真空管のパワーアンプだと肩が丸くなってしまって,オーバーシュートなんてしないのが普通ですけど,Trアンプはやはり優秀ですね。

EQアンプ特性(実測).jpgEQアンプ特性です。

Spiceのシミュレーション結果 ━ ……と結構一致しているので驚いちゃいます。ただ,10kHz以上は眉唾もので,iruchanが使用している低周波発振器がお粗末で,かなりノイズが乗っちゃっているので,本当にこうなのか,ちょっと疑問です。ただ,Spiceのシミュレーションにも出ていますが,10kHz以上では金田氏の設計は超高域の帰還量増大を警戒して,EQ素子の1500pFに直列に3.6kΩが入っているせいで偏差が大きくなります。撤去するかどうか,悩むんですけどね.....。

一度,高級な発振器を使って確認したいと思います。

概ね,20Hz~10kHzの間で,±0.5dBに収まっています。

flatアンプ特性(実測).jpgフラットアンプ特性です。

ちょっとこちらは問題。なぜか200kHzにピークが来ちゃっています。▲でも書きましたけど,位相補正用に,2段目の差動アンプに5pFの位相補正コンデンサが入っていますが,少し増量して20pFにしてもこんな結果です。

さすがに4dBのピークはまずいよな,という感じなのですが,30pFにしてもピークは変わらなかったので,問題は2段目ではなく,初段に位相補正をしないといけないようです。一番簡単に直すには,帰還抵抗(18kΩ)にパラに47pFのマイカを接続してやればいいのですけどね。でも,それは真空管アンプではよくやる方法ですけど,半導体ではやりませんね。なんでだか,iruchanも素人なのでわかりません。

また,トータルゲインも20dBを狙いましたが,チャンネル間で1.6dBほど差があります。VRのギャングエラーのように思います。

と言う次第で,もう少し,調整が必要なようです。

続きはこちらへ.....。


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メタルキャントランジスタを使ったスーパー・ストレートDCプリアンプの製作~その3・電源編~ [オーディオ]

2020年8月3日の日記

スーパー・ストレートプリアンプ電源部.jpg 電源部のテスト中です。

前回から3ヶ月が経ちました。その間,モノラルレコード用のEQアンプを作っていましたが,無事に完成し,ただいまテスト中です。もちろん,こちらの方はステレオLP専用なので,イコライザカーブはRIAAのみですけどね.....。モノラルLP用金田式EQアンプ,というのも面白いかもしれません......(^^;)。

さて,前回は基板製作まででしたが,今回はケースを加工して電源のテストをします。

ケースは,実は,昔から本機を作るときは1Uのケースにしよう,と思っていました。

EIAの規格で標準のケースがあり,高さを1 3/4インチ(44.45mm)の倍数で表します。幅は19インチ(482.5mm)ということで決まっています。日本では幅が広すぎで邪魔,ということでステレオのアンプはだいたい430mmくらいのものが多いです。

また,これらはプロ用のオーディオ機器でよく採用されたサイズで,今は使われていないのでは,と思ったらラック型サーバーや業務用のスイッチングハブがこの規格ですね。うっかりしていました。今でもたくさん使用されているわけですね。

ということですけど,今回のアンプは1Uなので,一番薄いケースなんですけど......。

昔,中坊の頃買った,初歩のラジオ別冊の "ステレオ・アンプ製作集" という本にDCプリアンプの記事が載っていて,筆者はもちろん金田氏じゃないのですが,同様の2段差動アンプで,使っていたケースが1Uでとてもかっこよく,憧れました。

それにしても,初歩のラジオの別冊,ということなので対象は中学生以降のはずですけど,自分でプリント基板を作ったりできるよう,感光基板用パターンもついていたり,実体配線図やイラストで作り方が説明してあったり,昔はいい本がたくさんありました。でも,UV-211Aシングルアンプなんてのが載っていたりして,とても中学生で作れるレベルじゃないんですけど......。

でも,結局その本の回路では製作せず,結局,このスーパー・ストレートプリアンプになっちゃったんですけどね.....。

ケースはEIA規格の1Uケースと言うことだとタカチのERH44-16Sがあるのですが,やめました。

何より,タカチのケースだとアルミ押出形材仕様なので,皆さん,すでに体験済だと思いますけど,よほど事前にCADなんかでしっかり検討したりしておかないと,いらないところに型材の出っ張りがあって,部品が取りつけられない,ということで泣かされますのでパス! それと,今回は1Uということで内寸が厳しいんですよね.....。タカチのケースだと,高さ32mm(内寸)しかありません。

ということで,今回は奥澤のRE-1U-15を使いました。従来のプレス加工タイプのケースなので,内寸は少し余裕があり,38mmです。この6mmの差は大きいです。特に,電源の平滑用電解コンとEQアンプの出力のカップリングコンが最大の問題になりそうですから,少しでも内寸が大きい方がいいです。おまけにお値段はタカチの半分以下なので助かります。

一応,電源はこの前のEQアンプでも使ったルビコンの小型の3,300μF,35Vを使いますし,カップリングは旧ソ連軍用のスチコンを使う予定なのですが,なんとか収まりそうです。タカチのだと無理です。

金田氏は平滑コンは日ケミのCEW 4,700μFが指定部品なんですが,さすがにでかすぎてこれは収まりません。それに,このようなラグ端子型ブロック電解コンデンサはとうに製造中止です......orz。

ということで,CADで図面を描いて,それから加工しました。

       ☆          ☆          ☆

さすがに1Uということで裏のRCAピンプラグはベーク板に固定されたタイプは使用できず,千石で買った,クロームメッキ品にしました。金メッキ品は中国製ばかりなんですけど,クロームメッキのものは日本製でした。クロームメッキと言ってもきれいなメッキがされていますし,何より安心の日本製なのはとてもありがたいです。中国製の金メッキ品をWEの真空管式DCプリアンプで使用しましたが,バカでかい上に,コールドのラグが簡単に折れてしまうので,もう使わないことにしました。

さて,加工が終わったらトランスを取りつけて,まずはトランスの配線チェック。さすがにパイロットLEDくらいはつけておきますけどね......。

トランスはAC電源の場合,金田氏指定のものはRコアなのですが,TK-P1だと収まりそうにありません。iruchanは共立電子のHDB-8というトロイダルトランスを使いました。トロイダルだとほぼ漏洩磁束は根絶できて,前回のモノラルレコード用のEQアンプもハムは皆無でした。2次側に9V,15Vの巻線が出ています。驚いたことに,前回のEQアンプはインド製のRSコンポーネンツのやつを使いましたが,同じ7VAなのに,RSコンポーネンツの方はずっと小さいです。まあ,トランスのサイズは大きい方が音がよいように思えるので,こちらでいいと思います。

なお,電源の試験のとき,レギュレータ基板をつないでから試験する方も多いとは思いますが,うっかりトランスの配線を間違えてレギュレータを壊してしまってもしょうもないので,まずは2次側のAC出力電圧のテストを兼ねてトランスだけで試験します。もちろん,それだけじゃつまらないのでパイロットのLEDだけ,配線しておきました。

ところが......。

なんとパイロットが点灯しません!!

えぇ~~~って感じなんですけど....。こんな簡単なところでつまずいちゃうようじゃ,先が思いやられます......orz。

念のため,トランスの出力電圧を確認しますが,問題ありません。ちゃんとAC15Vが出ています。

ただ,LEDの端子電圧を見ると0Vになっていて,これじゃ,点灯しませんね。

散々,回路をチェックしてもなんでLEDが点灯しないのかわかりません。

あきらめてLEDを外してみて,LED単体でチェックしてみますが,壊れているようではありません。

う~~~ん,なんでや~~~??????

それで,LEDをもう一度,パネルから外した状態で配線してみると,点灯するではないですか! また真夏の夜の怪談かぁ~~って思っちゃいました。

ようやくここまで来て,パネルに取りつけると消える,ということに気がつきました。すぐに,昨年末に自作したPCのLEDでも同じ現象が出たことを思い出しました。そのときは原因がわからなかったんですけど......。

ひょっとして.....たぶん,LEDの不良では....,と気がつきました。

最初はP-N接合部に何らかの圧力が加わると点灯しなくなるのか,そんなことが物理的にあったっけなんて思いましたが,何のことはない,製作不良で,外部に電極が露出しているのでした.....orz。

エッシェンバッハのルーペでよぉ~く見てみると......

OSK5DK3131A-2.jpg まさか,アノードが露出しているとは....。
 
部分がモールドの外に出ています。テスターでも確認できました。なんか,パイロットにピンク!なんてあわない感じですが,真空管アンプに使ってもいい感じです。昔はオレンジにしていたのですけどね。半導体プリアンプにはどうもオレンジはあいませんしね。

ところでこいつ,なんと,アノード部の電極がモールドの外に露出していました。おもわず唖然としちゃいました....。開いた口が塞がらない.....。

当然,シャシーはGNDなので,アノードが接地してしまうので,LEDが点灯しないんですね。

それにしてもこんな不良ははじめて。φ3mmの砲弾型LEDですが,普通はちゃんとモールドの中に電極やリード線は隠れていて,外部とは絶縁されていますが,さすがのチャイナクォリティ! って思っちゃいました。これ,秋月電子で売っている,OSK5DK3131Aという香港Optosupply社の製品ですが,深圳で作っているようなので中国製ですね。今回,使ったものも,自作PCで使ったものも,ほかにも点灯しなかったものがあり,かなりのものが不良ではないかと思います。

手持ちのピンクのLEDはもうないので,しかたなくシャシーを多少加工して点灯するようにしましたが,今後はマルツで売っている,ピンクのLEDにします。

ようやくパイロットの問題が解決して,レギュレータを取りつけてテストします。

なお,今回,制御TrにはNECの2SC1161のほか,日立の超貴重品2SA566を使うので,保護回路をいろいろ考えましたけど,結局,ポリスイッチを使うことにしました。金田氏のレギュレータ回路には保護回路が入っていないので,うっかりショートするとこれらのTrを飛ばしてしまうので困っちゃうのですが,ポリスイッチが入っていれば安心です。100mAでトリップするレイケムのRXEF010を使いました。

コンデンサインプット電源部'.jpg整流部,平滑部の回路です。

本当言うと,トロイダルトランスは2次側のコモンが接続されていなくて,バラバラに出ているので,金田氏のように,+と-で,別々にブリッジ整流した方が音がよいのですが,30DF2がもったいないので,通常どおり,4個で整流しています。

でも,この+と-で別々に整流する方法,最近亡くなったY氏の発見ではないかと.....。MJで最初に出た記事を覚えています。タンゴのTrアンプ用トランスではできませんでしたが,2次側が独立している巻線のものではやることができました。

±10.5Vレギュレータ基板.jpg 完成した±10.5Vレギュレータ基板

出力コンデンサは双信の4端子型V2Aなんですけど,入手は無理なのでWIMAにしちゃいました。

制御Trは+側は日立の2SA566,ー側はNECの2SC1161です。ともにコンプリの2SC6802SA653はなぜか使われていません。まあ,2SA653はドライバの名石で,初期の金田式アンプで重用されていますが,すぐに入手は絶望的になって2SC960に代わったのはご存じのとおりです。一方,今でも割に入手は容易な,2SC680の方はまるで無かったかのように扱われていてかわいそう。全くの継子扱いですよね~。たしか,何号だったか,金田氏のコメントを見た記憶があるのですけどね。iruchanは2SA566を見つけたときにペアの2SC680も買ってあるし,VCEO=100Vの規格は真空管用としても使えそうなので,いずれ使いたいと思います。iruchanも会社じゃ,とうに継子扱いですしね......orz。

さて,レギュレータをつないで,電圧を確認してみると.....

-側は-9.8V位なのでOKですが,+側は4.5Vくらいしか出ていません!

ありゃりゃ!?

どこかに配線ミスがあるはずなので散々調べてみますが,ミスがわかりません。部品の取り付けミスやDiの向きを間違えたかと調べても間違いはありません。パターンミスや,パターンタッチもないようです。

とりあえず,基準電圧はどうかと,05Z7.5Xの電圧を見ると,やはり3Vくらいしか出ていません。これはおかしいです。7.5Vにならないといけませんね。どうやら原因はこの05Z7.5Xの周辺だ,ということはわかります。

どうしてもわからないので,打つ手としては.......最近はiruchanはこういうときはSpiceで調べることにしています。わざとどこか配線を間違えてみて,同じ現象が出ればそれが原因です。実際の基板じゃ,こんなテストはできませんよね。MJの記事の誤記も多いので,うまく動作しないときはSpiceで確認してみるとよいです。

やはり,すぐに原因がわかりました。

05Z7.5Xから,誤差増幅用の2SC1583とカスコード接続されている,2SC1775Aのベースとの接続がない場合に同じ現象になることがわかりました。▼の×部分です。

+10.5Vレギュレータ配線ミス.jpg レギュレータのシミュレーション

早速,実際の基板を調べてみると,確かにこの部分の導通がありませんでした。

ようやく,はんだづけをやり直してテストしてみると,+10.5Vレギュレータは+10.8Vで,-10.5Vレギュレータはー11.9Vくらいの出力電圧となりました。やれやれ......。

と言う次第で,LEDのトラブルとレギュレータのトラブルで1週間かかっちゃいました。

でもそれにしてもこの±10.5Vという電圧は低いですね。OPアンプでも±15Vが普通ですから.....。この当時の金田氏は電池式なので,本機もNational Neo Hi-Top(懐かし~~)を10個ずつ接続して,15Vからレギュレータを通して±10.5Vを得ているのですが,AC電源式ならもう少し高くてもよいはずです。本機が完成したら,±15Vくらいに昇圧してみよう,と考えています。実際,レギュレータを通す前の平滑コンデンサの電圧は±20Vくらいになっていますしね。

いよいよ次週はEQアンプ,フラットアンプを接続してアンプのテストです。

       ☆          ☆          ☆

2020年8月4日追記

ちょっとおかしなことに気がつきました。

しばらく,レギュレータを無負荷のまま,運転していたのですが,2SA566に触ってみると少し発熱しています。2SC1161も少し温度が上がっています。

まあ,大した温度じゃなく,触ってみると温かい程度なんですけど.....。

でも,シリーズレギュレータの場合,無負荷なら発熱しないはずなのでおかしいです。

最初,発振を疑ったのですが,よく回路図を見てみると,出力段はPPになっていて,そのバイアス電圧は2個のDi(1S1588)をシリーズ接続して,そのP-N接合電圧を利用しています。

つまり,この金田氏の超高速PPレギュレータというのは,出力段はA級動作していて,アイドリング電流が流れているんですね。そのアイドリング電流は2SB716を介してGNDに流れています。

うっかり,通常のシングル出力のシリーズレギュレータと混同してしまっていました。また,金田氏も,このスーパー・ストレートプリアンプのDCアンプシリーズNo.121(MJ '91.6)で,「2SB7162SD756は......これらのTrは出力コンデンサー(2.2μF)に溜まった余分の電荷を放電させる働きしかしていない」と書いているので油断しちゃいました。

改めて,2SA5662SC1161のコレクタ電流を調べてみると,それぞれ28.0mA,31.8mAも流れています。これだとコレクタ損失は本機の場合は0.15Wくらいになって,少し発熱するわけです。

それに,ちょっと心配なのはPP出力段のエミッタ抵抗がないことで,これは金田氏の半導体アンプの出力段ではよくあることなんですけど,これはバイポーラTrの温度係数が+であることを考えると非常に危険です。

もちろん,本PPレギュレータでも,制御Trが熱暴走すると+VccをGNDにショートする結果となりますから,オリジナルの回路のままでは保護回路が入っていないので,制御Trを飛ばしてしまいます。まあ,先に2SB7162SD756が焼けちゃうとは思いますけど....。

もちろん,アンプもPPレギュレータも温度補償のため,2SB7162SD756にシリコンDi(1S1588)を熱結合して,バイアスが減るようになってはいるのですが.....。

また,iruchanは▲の平滑回路にポリスイッチを挿入したので,制御Trが飛ぶようなことはないのですけど....。

一応,エミッタ抵抗を入れておくことにします。こうするとコレクタ損失も減るはずです。

       ☆          ☆          ☆

ということで,またSpiceでシミュレーションしてみました。

+10.5Vレギュレータ損失.jpg オリジナル回路

制御Trの2SA5662SB716には186mAも流れます。

ちょっとこれは大きすぎで,そもそも2SB716はIc=50mAなので,これじゃ,壊れちゃいます。2SA566のコレクタ損失も1.8Wもあります。

このあたり,Spiceの限界で,制御Trの2SA566のモデルがないので標準Trで代用しちゃっている結果ですが,ともかく,かなり大きなコレクタ電流が流れることは間違いなさそうです。

そこで,エミッタ抵抗として1Ωを入れてみます。部分です。

+10.5Vレギュレータ損失1.jpg RE=1Ω

こうすると,Ic=72mA,Pc=654mWとなりました。

実測してみると,それぞれ22.3mA,110mWです。これならいいか,と思いました。

       ☆          ☆          ☆

いよいよ完成し,調整しています。ご興味のある方はこちらへ.....。


2020年9月8日追記

冒頭で,金田式モノラルEQアンプって書いちゃいましたが,ちゃんとMJ '99.5月号にNo.154として発表されています。すっかり忘れてしまっていました。しかもEQアンプ専用ではなく,フラットアンプもついたプリアンプになっています。

回路自体は,金田式DCプリアンプで,EQアンプはWE 310Aを使った,シングル2段の5極管仕様となっています。フラットアンプは3極管のWE 262B×4のはずだったようですが,Eh-k耐圧が低いため,最終的に310A(T)×4となっています。

310Aはiruchanもちゃんと持っているんですけど,300Bのシングルアンプ用なので手持ちの余裕はありません。モノラルとは言っても,さすがに6本も必要なのはかなわんな~~......ってところです。

さすがに,金田氏もコストを気にしていて,6C6でもOK,とはされているんですけど.....。

6C6は逆に安物過ぎて使う気がしません。こんなの,ラジオ球でしょう。これのバリμ管が6D6なのはよく知られています。iruchanも45のシングルアンプで使った球なので愛着はあるのですけど.....あまりにも安物だし,出来もいまいちなので,ちょっと金田式EQアンプには使う気はせんよな.....って感じです。先生自身,"やはりWEは違う" ということをおっしゃっているようですから,なおさらですね。

というところで,とても作る元気はないのですが,どうも中国製? の310Aの同等管があり,しかも,今も製造されているようです。

PSVANEというブランドで,見てみるとものすごくきれいで,仕上がりが素晴らしいです。これなら使ってもよいかな.....という気はするのですが,絶対にWEの球と同じ音はしないでしょうし,何より値段がペアで$200以上,っていうんじゃ,驚いちゃいます。まあ,今どき高品質で真空管を作ろうとすると,こういう値段になっちゃうのでしょうけどね。

もっとも,日本のCZ-501Dもそうでしたけど,各国でWEの310Aの互換球,というのは作られていて,おそらくはWEや米国メーカ製の電話用機器の保守用でしょう。1950年代のソ連でも製造されていたらしく,10Ж12Сというのがそれで,ローマ字表記だと10J12Sです。サンクトペテルブルクの旧Svetlana製のようです。現在,売られているSvetlanaとは関係ありません。ただ,ものすごく古いもののようだし,すぐに製造を打ち切ったようで,あまり市場に出回っていません。

6C6でいいんなら,776J76SJ7などの真空管が同じ特性ですが,ST管やGT管だとだとハウリングがひどいようだし,6AU6や,もしWEにこだわるなら,408AなどのMT管で作る方がよさそうです。

それにしても現行の互換球ですら,310Aは高いし,オリジナルのWEだと1本,3~4万円位します。昔はさすがに1万円はしなかったし,よかったよな~~~[雨][雨]


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モノラルレコード用CR型イコライザーアンプ(EQアンプ)の設計と製作~その3:測定編~ [オーディオ]

2020年7月12日の日記

CR型EQアンプ1.jpg ようやく竣工しました[晴れ]

中国製のケースのサイズは132×42×169mmです。とても小さいです。〒込みでも$20ほどでしたけど,なかなかかっこよいです。

前回から3ヶ月が経ちました。

もう,世の中すっかり変わってしまい,まだ前回の時はコロナはそれほど拡散していなくて,緊急事態宣言が出たばかりでしたが,まったく先の見えない長いトンネルを皆さんと歩んでいきたいと思います。

最近,iruchanも小松左京の "復活の日" を今ごろ読んだばかりなんですが,驚くほど似た状況が描かれていました。さすがに有名なカミュの "ペスト" は,学生時代,"異邦人" は読んだんですけど,こちらは読んでいません。というより,最近まで,全然本屋さんにありませんでしたね....って言い訳しています。

さて,この間,ケースを手配して,加工していました。

ケースはAli Expressで買った中国製です。押出形材とt6のアルミパネルを使ったかっこいいものです。

ただ,さすがに6mmのパネルの加工は大変。プロの方にNC加工を頼んだ方がよかった感じです。5,000~1万円くらいでやってくれますけど。

なんとか穴開けも終わり,まずは電源からテストします。

電源はバッテリー式にしてもよかったのですが,どうにも電池の消耗が気になって音楽が楽しめない,と言うことがあるので,いつもAC電源式です。

とはいえ,やはり漏洩磁束が心配なので,昔だったら,カットコアか,Rコアか,って感じですけど.....。

でも,今はRSコンポーネンツなどで産業用のトロイダルトランスが簡単に手に入るので,トロイダルにしたいと思います。これだと漏洩磁束はほぼ完璧に低減できるはずです。レギュレーションもよいし,理想のトランスだと思います。

かといって,真空管用はむずかしく,高圧用とヒータ用の低圧巻線が必要なので毎回苦労します。まださすがにトロイダルの真空管用は品種が少ないですね~~。

サブミニDCプリアンプ用にはオランダから直輸入したばかりです。

まあ,さすがに今回はOPアンプ仕様なので,±15Vの電源が用意できればよいので,2次側に15V前後の電圧があるトランスであればOKです。

RSコンポーネンツで,124-3858という品番のトロイダルトランスを買いました。7VAで,2次側は15V×2です。ただ,1次が115Vなので,2次側は13V前後です。3端子レギュレータを使いますが,その場合,最低2Vくらいは余裕がないとうまくレギュレータが動作しませんので注意が必要ですが,整流直後で18Vくらいにはなりそうなので,十分使えそうです。実際,あとで確認してみたら,平滑前の電圧は20VほどありましたのでOKです。

最初,共立電子のHDB-8というトランスにするつもりでしたが,ちょっとサイズが大きいのでこれにしました。基板用なので,少々,取り付けが厄介ですが.....。トランス取付用の基板を別途,作りました。ついでにヒューズホルダもハンダづけしちゃいました。

CR型EQアンプ内部1.jpg 内部です。

青いのがRSコンポーネンツのトロイダルトランスです。プラ製ですけど,放熱のためか,フィンがついています。7VAの容量があるので,全然熱くなりませんけどね。ちなみに全体の消費電力は0.6W程度です。

逆に,LME49720Hは動作中はあっチッチ!

びっくりして規格表を見ると,無信号時の消費電流は10mAなので,消費電力は0.3Wです。これなら意外に熱くなります。表面温度は50℃くらいと思われます。

もちろん,温度についてはメーカの保証範囲ですし,規格表には何も書いていないので,放熱器は不要です。

といって,あまり半導体は熱くなると音がよくない,とiruchanは思っていて,実際,半導体のA級アンプがダメなのも温度のせい,と思っているので,余っている2SC960の放熱フィンをつけておきました......(^^;)。

ケースが小さいので,背の高い部品は要注意です。一番の問題は電源のフィルタコンデンサでしたけど,ルビコンの35V 3,300μFがぴったりでした。

パイロットは,いつものピンク色の高輝度LEDにします。

LEDの点火には,普通だと整流後の直流を使ったり,3端子レギュレータの出力から点灯したりする,と思いますが,これをやっちゃうと,切ったときにボ~~~ッと消えます。

 ボ~~ッと消えてんじゃね~~よ!(チコちゃんの声で!)


って,いつも思ってます.......(^^;)。

これ,iruchanはとても嫌いなので,AC点火します。これだとスパッと消えて気持ちいいです。

ただ,この場合,AC電圧が6Vを超える場合は逆耐圧保護用のシリコンDiを逆向きに接続しないと,LEDが壊れますのでご注意ください。

というのは百も承知なので大丈夫なんですけど......変な現象が出ます。スイッチを切ってもLEDが消えません!

真夏の夜の怪談かぁ~~~~って思っちゃいました。地下鉄に乗るのに,階段を上らないといけない四ッ谷駅というのもチョ~怖いですけど......四谷階段ってこれのことかぁ?

電源を切って,テスターで導通を見てみると,スイッチを切ったら,ちゃんと導通がなくなります。それで,トランスの1次電圧を見てみると,スイッチを切っても95Vくらいあります.....。

何で~~っ?

って思っちゃいましたけど,スパークキラーのいたずらでした。

スパークキラーは接点保護のため,CとRが直列に入っていますが,今回,トランスが小型すぎ,励磁電流を流すくらいのことをしてしまうんですね。

しかたないので,スパークキラーを外したらLEDが消えました。やれやれ......。

CR型EQアンプ.jpg パイロットはピンク色LEDです。

STEREO⇔MONO切り替えSWも設けました。モノラルの時は,入力部でLとRを合成し,出力はch. Rの信号をch. Lにも出すようにしました。

ここまで来たらまずは電源のテスト。無事に±15Vがでました。前回,iruchanが中坊の時に買った,古いモトローラ製の3端子レギュレータを発掘した,と書きましたけど,無事に動きました。でも,モトローラはなくなっちゃいました......。

半導体の名門,モトローラは創業が自動車用ラジオの製造だったので,ブランドがMotorolaなんですけど,1999年,衛星携帯電話事業の失敗から,オンセミに分社化されて消えました。

さて,ここまで来たら電源をアンプにつないで,テストします。

特にヒューズも飛ばないし,また,±Vccをチェックしてもちゃんと±15Vでていますので,大丈夫なようです。

次に,1kHzの正弦波を加えて出力をオシロで見てみますと......こちらも無事に正弦波が出力されますし,周波数を変えると,EQアンプなのでちゃんと振幅が変化しますから,成功のようです。やれやれ~~~~。

☆特性チェック

さて,ここまで来たらf特を測ります。ここまで,長い道のりでした......。

負荷抵抗に100kΩをつなぎ,テストオシレータとオシロで特性を調べます。

☆RIAA

まずは,RIAAから。

RIAA実測1.jpgRIAA再生特性です。

ステレオなので,ch.LとRがあります。

でも.....。

測定してみてがっかり。左右で1dBのゲイン差がある上,偏差もかろうじて±1dBに収まる,と言う程度です。

残念ながら,左右のレベル差はプリアンプを自作するとだいたいこれくらいはあるものですし,NF型はこれを調整しようとすると,すべてのEQ素子の定数が変わっちゃうので,調整は厄介ですが,本機はCR型なので,比較的簡単なので,あとで調整したいと思います。

もう少し,偏差が小さいとよかったのですけどね......orz。

☆ffrr

ffrr実測.jpgffrrです。

英DECCAのffrr特性です。クラシックファンなら必要なカーブだと思いますけど,各社から出ているモノラルレコード用のEQアンプでは搭載してない場合が多いですね。

レコードを聴く人はジャズマニアの方が多いらしいですけど,クラシックマニアはスクラッチノイズが我慢できないんでレコードはやめちゃった,と言う人が多いのだと思います。

また,一応,ステレオLPはRIAA特性が出てから開発されたので,RIAAに統一されているはず.....,なのですが,巷間,ffrrやColumbiaなどのカーブのまま,発売されたステレオLPがあるとの噂が流布していますので,今回,ffrrのみ,ステレオで作ってみました。

こちらは左右のレベル差はほとんどなく,また,偏差も40Hz~20kHzで0.5dB以内に収まっていますので,合格です。

50Hz付近から下の低域はIEC規格のRIAA特性もそうですけど,サブソニックフィルタ特性を持たせる目的で,偏差がマイナスになっても問題ない,と考えています。

☆Columbia

columbia実測.jpgColumbia特性です。

ここからはモノラル専用なので,ch.Rのみです。

米Columbiaや,製造を委託していたWestminsterはこのカーブなので,iruchanには必要なカーブです。こちらもほぼ偏差は-0.4dBくらいまでなのでOKです。iruchanはロジンスキーやWestminsterレーベルが好きなので必須です。

☆NAB

NAB実測.jpgNABカーブです。

米国の放送事業者が策定したカーブで,もとはテープ用のEQカーブだし,欧州系のレーベルでは関係ないのですけど,米国のジャズ系のレーベルでは採用したところが多いです。iruchanは特に使うことはないだろう,と考えているのですが,念のため,つけておきました。

事前の予想どおりで,これが一番偏差が小さく,いい曲線となりました。

さて,ようやく完成したのですけれど,残念ながら,肝心のRIAAカーブがあまりよくないので,次週,調整したいと思います。

       ☆          ☆          ☆

2020年7月19日追記
 
先週,モノラルレコード用のEQアンプを完成させ,まずは特性を調べてみました。
 
ほぼ,英DECCAのffrrや米Columbia,NABのカーブは設計どおりでしたが,どうしてもRIAAだけ偏差が1dBくらいあり,少し不満な結果となりました。今日は少し修正したいと思います。
 
CR型はNF型より音がよいと言われていますし,昔からコアなマニアが自作して楽しんでいましたし,本機もステレオのLPはステレオで再生できるよう,RIAA位置はステレオで楽しめるようにしてあるので,やはりちゃんと調整しておこうと思います。
 
CR型EQアンプのフィルタ回路については,第1回に説明しています。Excelで十分計算できます。
 
まずは,定数が正しいかどうか,Spiceで検証してみます。
 
CR型EQアンプのフィルタ部分は,下記の通りです。
 
CR型EQ素子.jpgCR型EQフィルタ部
 
LTspiceでシミュレーションした結果は▼のとおりで,ほぼ設計どおりです。
 
どうしてRIAAだけ,実際の設計どおりにならないのか,ちょっとわからないのですけど.....。
 
ch.Rは200Hz付近で0.6dBほど下げてやらないといけませんし,ch.Lはおなじく0.8dBほど,逆に上げてやらないといけません。高域も0.5dBほど上げてやらないといけません。
 
どうもロールオフの設定が少し悪いようです。
 
これらの目標値にするため,もう一度,Spiceでシミュレーションしてみました。
RIAA LTspice.jpg
    Spiceでのシミュレーション結果です 
 
が設計値ですが,Spiceで見ても,間違ってはいないようです。30Hz以下で落ちているのはサブソニックフィルタの効果を期待してわざと落としてあるせいです。
 
結局,各定数は,
 
        C1        C2
ch.R    8200pF→9200pF 2800pF→2700pF
ch.L                  7200pF                2700pF
 
としました。ターンオーバー側は2700pF+100pFで設計値の2800pFにしていましたので,100pFを撤去しました。なんか,ロールオフ側が大幅な変更で,ちょっと心配なのですけど.....。
RIAA実測2.jpg調整後です。
 
ようやく40~20kHzの範囲で,ほぼ±0.5dBに収まるようになりました。やれやれ。これでようやくレコードが楽しめます[晴れ][晴れ][晴れ]
  
まだ続きが読みたい,というご奇特な方はこちらへ.....。完成して何枚かレコードを聴いてみました。

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