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金田式CR型超シンプルプリアンプの製作~その1 さよならSEコンデンサ & Spiceシミュレーション~ [オーディオ]

2021年5月23日の日記

先週,ようやくオールメタルキャンTrを使ったスーパー・ストレートプリアンプを完成し,音を聴いたばかりです。

このアンプ,記事はMJ '91.6月号に載ったものですが,そのときに作ろう,と思って部品集めをしていたので,実に完成まで,30年かかったことになります......(爆)。

確かに,非常に音がよく,メーカー製のPioneer C-21を使っていましたが,これを駆逐し,今後はこれが主役となります。

ただ,完成して音を聴いてみると,まず,第一印象として,非常にクリアーな音がするアンプだな,ということを感じたのですが,次の感想として,どうにも地味な音がする,という印象を受けます。

今まで,iruchanは古いメタルキャンパッケージのTrやOPアンプが好きで,アンプをよく作りますけど,メタルキャンの半導体の音として,非常に高音まで澄み切った明るい音がする,と思っていました。実際,中華デジアンのLepyのLP-2020AではナショセミのLME49720Hを,LP-2024AではLF355Hを使いました。また,モノラルLP用のCR型プリアンプではLME49720Hを使っています。

これらのデジアンでは,もうもとのモールドのOPアンプには戻れないな~~と思うくらい音がよく,気に入っています。

ただ,今回のスーパー・ストレートプリアンプではちょっと印象が異なります。クリアーな音だけれど,何か地味な音がする,と言う印象です。まあ,LEPYのアンプはOPアンプだし,こちらはバイポーラTrという違いがありますけど.....。

金田氏は件の記事の最後で,

"やはりメタルキャンTrの音楽表現力がものを言ったのだ。予想はしていたものの,この音が出るのに何年かかったろう"

と書いておられます。

実際,この文章を読んで,本機を作った人はたくさんいる,と思います。

でも,金田氏は続いて,"今度は気の遠くなるほど多くのアンプの改良作業が始まる...." と書いていて,すべてメタルキャンTrにするおつもりだったのだと思いますが,その割にそのような改造はしておられないようですし,オールメタルキャンTrのプリやパワーの記事はその後,出ていません。

やはり音が少し違ったからか....という気がします。金田氏もこのように書いてから,その後の改造を止めてしまったのだ,と思います。それとも,その当時ですら,2SA606や,特に,2SC959が高くなっていて,入手が難しくなりつつあったので,編集部から続編は不要,という要望があったのかもしれません。入手できない高価な真空管や半導体を使った記事が出ると,編集部に抗議の電話がかかってくる,と言う話を昔,聞きましたけど,そういう事情もあったのでは,と推察しています。

まあ,現在は今からアンプを作ろう,などという人はいなくなって,昔からのマニアしか雑誌を読まないし,そういう人はデッドストックがあるのであまり抗議がこなくなった,と言うこともあるのか,最近はMJもラ技も大昔の真空管の記事ばかりですね.....。

と言う次第なんですが,iruchanも実を言うと,本機より,先ほどのLME49720Hを使った,モノラルLP用のEQアンプの方が音がよいように思えます。このプリはステレオLPも再生できるよう,RIAAは2チャンネルで作っていますしね。

その理由は,メタルキャンのOPアンプを使ったこともありますけど,やはりEQアンプがCR型であることにあるんじゃないか,という気がします。

iruchanはアンプ作りをはじめた中学生の頃から,ずっとCR型に憧れていました。あの頃,生意気にもMJ(当時は "無線と実験" でしたけどね)やラジオ技術を読んでいて,時折,CR型は音がよい,なんて書いた記事が出るのでずっと憧れていました。

そういうこともあり,実際にOPアンプ仕様ですけど,初めてCR型を作ってみて,やはりそうか,と思った次第で,今度はちゃんとディスクリートでMC専用プリを作ってみたい,と思いました。この前のアンプはMM型用ですし,OPアンプICを使っていますからね。

ということなんで......。

DCアンプ教の信者? としては,ぜひ金田氏の設計のCR型プリアンプで作ってみたい,と思うんですけど.....。

といって,iruchanはプリント基板を使っているし,指定部品は半導体以外はほとんど使わないので,信者と言っても異端審問会にかけられて間違いなく火あぶりの刑に処せられますね.....怖っ[雷]

それはともかく,そもそも金田氏は最初からNF型オンリーで,一度もCR型の記事は書いたことない,と思っていました。

でも,どこかで見た記憶があります.....

といって,DCアンプシリーズの一覧表を見てもそんな記事はありません。おかしいな~~。

よく調べたら通常のDCアンプシリーズの記事じゃなく,例の完全対称アンプを発表したあと,MJで論争があり,その後,スーパー・サーキット講座と称して完対アンプに至るまでの研究成果の解説をした一連の記事の中にありました。

MJ '97.3月号のスーパー・サーキット講座 No.15 ”CR型イコライザーの解析” ですね。また,この記事は2003年3月に出た,単行本 "オーディオDCアンプ製作のすべて" にも載っています。

オーディオDCアンプ製作のすべて上巻.jpg もう絶版で,amazonで5,000円以上します....[雨]

ようやく見つけました。▲の本は持っていたのに,ほとんど読んでなかったので,気がつきませんでした....信徒が教祖様の本を読まないなんて,やっぱり火あぶりだな.....[雨]

どこかで見た記憶がある,と思ったのはこの記事ですね。早速,GW中に実家に帰ってコピってきました。

しかも,中の記事は2種類あって,ひとつは超シンプルな回路で,簡単に作れそう(失礼)と思いました。もうひとつは広ダイナミックレンジの高級版です。

残念ながら,半導体はオールJ-FETなのですが,東芝の2SJ72が肝心かなめの2段目差動アンプに使われていて,これはiruchanもあと4個しか手持ちがありません。オールFETプリメインアンプ(No.136 MJ '92.9)のメイン部分のみを作ったときのあまりです。

あの頃ですら,2SJ72は入手難で,国内では見つからず,iruchanも欧州の部品屋から通販で買ったものです。まだ,あの当時は中国の部品屋が暗躍? してなくて,海外から取り寄せてもまずにせ物はなく,正真正銘の本物が入手できました。日本から直接半導体を輸出したり,輸出した機器の保守用だったりしたのでしょう。

そのときの残りをここで使っちゃおう,と思います。残念ながら,プリにしちゃうと片ch.分しかないので,EQアンプに使い,フラットアンプはデュアルの2SJ75(シングルは2SJ74)とにするつもりです。

まあ,2SJ752SJ72じゃ,gmが22mSと40mSで,倍ほど違うのですが,フラットアンプならそうゲインはいらないし,問題ないのでは,と思います。そもそも2SJ75だって,もう入手難ですしね.....。おまけに2SJ75はメタルキャンですしね.....違うか。

超シンプルCR型プリアンプ使用半導体1.jpg 使用半導体

    東芝の2SJ72はこれで手持ち最後です。

          ☆          ☆          ☆

さて,春頃に衝撃的なニュースが出回りました。

金田式ファン必須の双信のSEコンデンサが製造中止になる,と言うものです。

ついに来るものが来たか,という気がします。そもそも,SEコンって,海底ケーブルの中継器用に開発された,と聞いていますし,そもそも今時アナログで中継するわけはないし,本来の用途としてはもう使われていないだろ,と思っていました。

内部に使われているガラスペースト材料の製造中止に伴い,来年3月で製造終了,とのこと。どうも鉛が原料に含まれていて,例のRoHS指令に引っかかるため,のようです。

iruchanはあまりにもこのコンデンサは信者にとっては多額のお布施が必要で,やっぱ 宗教 オーディオはカネがかかるな~~という代物です。それでiruchanも,オールメタルキャンプリとか,WEのMT管DCプリなど,ここぞ,と言うプリ以外には使っていないのですが,今回,CR型プリを作ろうと思ったのは,特に,CR型だとEQ素子のコンデンサが主役だから,最後にSEコンを使おうと思ったんですよね~。

といって,SEコンは熱に弱く,あるとき破裂するらしいので,WEの真空管プリからは撤退させようか,と考えているのですけど.....。

おそらく,iruchanも今回のプリアンプがSEコンを使う,最後のプリアンプになると思います。

早速,某通商会社に行ってみると,1500pFや5100pFなど,よく使う値のものはやっぱり在庫切れ.....orz。

しかたないので,追加発注したので,ということで100日待ちです。

当面,スチコンで我慢するしかないようです。

SEコン.jpg さよなら Goodbye, forever!

やはり最後なので,高くてもお布施をしておきました。

          ☆          ☆          ☆

さて,いつも通り,LTspiceでシミュレーションして動作を確認してみます。最近は本の記事をコピーする場合でも,必ずLTspiceでシミュレーションしてから作ることにしています。下手するとMJの回路図にはミスがありますからね......。

超シンプルCR型プリアンプ(金田氏オリジナル)1.jpg 

  LTSpiceシミュレーション回路(金田氏オリジナル)

東芝の2SJ722SJ74のSpiceデータはCQ出版の付録で入手しました。

ちゃんとSpiceで動くので,問題なさそう.....と思ったら,前回のオールメタルキャンTrスーパー・ストレートプリアンプ同様,EQ偏差が意外に大きいです。

オリジナルの金田氏の定数ではやはり偏差が最大0.4dBもあります。

RIAA偏差original.jpg

     LTspiceでのシミュレーション結果

金田氏は件の記事で実測結果を出していて,▲の結果通り,偏差のカーブは同じような形状で,最大+0.47dBと報告しておられて,LTspiceのシミュレーション結果とぴったり一致しています。

う~~ん,ちょっと悩んじゃうんですが.....。

金田氏のCR型EQ素子の回路はちょっと変わっていて,融合型と称しておられます。

RIAA素子.jpg左:通常,右:融合型

左が一番一般的なCR型EQ素子の回路で,右が金田氏の融合型です。

通常型はちょっと問題なのは,入出力端子が直流的に浮いてしまうことで,前回のモノラル用EQアンプの場合は,前段がOPアンプで,その出力と直結するので,次段のOPアンプも直流的に0Vになるからいいのですが,真空管アンプも含めてACアンプの場合,次段の初段バイアスが不定になってしまいます。まあ,考えようによっては直結回路にすれば問題ないので,メリットかもしれませんが.....。

そこで,通常はEQ素子の前か後に抵抗で接地し,直流的に0Vとするのが普通です。この場合,後に接続するタイプだとEQカーブに影響が出ますので,極力大きな抵抗値とします。

一方,金田氏の回路も同じなのですが,困ったことにいくらDCアンプと言っても,EQアンプの出力にカップリングコンデンサは避けられないので,やはり直流的に浮いてしまい,問題になりますが,金田氏の回路は前段に820kΩがGNDとの間に入っていて,接地されていますので,直流的に0Vとなります。

でも,何かこの回路は変。定数的にもちょっと偏差が大きいようです。

ということで,iruchanは以前,CR型EQ素子の計算用にExcelのシートを作りましたが,それを使ってEQ素子だけ変更しました。このシートはRIAA以外のEQカーブの素子の定数計算に使い,Spiceや実測で検証しましたけど,正確でした。

今回,EQ素子の回路は通常版とし,R1=1.22MΩ,R2=175kΩ,C1=1800pF,C2=620pFとしました。

DCアンプ教のエセ信者のiruchanは多額のお布施を払いたくないのと,1500pFが在庫なしなので,時定数は抵抗で稼ぐことにし,コンデンサは容量を小さくしました....(^^;)。R1が小さい方がいいのですが,そうするとコンデンサの容量が大きくなってしまいます。

RIAA偏差iruchan.jpg

iruchan版です。偏差は±0.08dBです。CR型だと0.1dB以内に収めることは可能です。

結局,iruchan版超シンプルCR型プリアンプはこうなりました。

超シンプルCR型プリアンプ(iruchan).jpg2N5462を使います。

金田氏ご指定の2N5465は入手難なので,耐圧が低い2N5462で代用します。特性は同じだし,2N5465はVDS=60Vなのに対し,耐圧が低いと言っても2N5462は40Vだし,本機はLTspiceでシミュレーションしても18V程度しかかかりませんのでOKです。

と言うことですけど,長くなりましたので続きはまた次回です。次はプリント基板の製作に取りかかります。


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