KATO ED71 2次形の整備~スナバ回路設置~ [模型]
2023年5月7日の日記
いよいよゴールデンウィークも終わっちゃいますね~~
今日は残念ながらだし,久しぶりに模型工作することにしました。
KATOが2018年4月に発売したものです。もう5年も経っちゃったのか......と言う気がします。
好きな機関車で,地元のED70より好きなくらいなんですが,発売直後に買ったものの,今まで整備せず,でした.....。
今日は分解して常点灯対応&反対向き前照灯点灯防止のため,iruchanが考案したスナバ回路を設置するとともに,ナックルカプラー,ナンバーを取りつけたいと思います。
スナバ回路というのはモータやソレノイドなど,インダクタンスを持った誘導性負荷の逆向きのサージ電圧を抑えてインバータのスイッチング素子やその他の回路を保護する目的で挿入されます。サイリスタやMOS-FETなどのスイッチング素子のアノード,カソード間にパラにCとRを挿入し,素子が電流遮断するときに逆向きのサージ電圧がかかって素子が破壊されるのを防ぐ目的があります。
もっとも,新幹線など,インバータ制御の電車ではスナバ回路が本来必要なのですが,ほんの数μF以下のコンデンサと言っても耐圧が高く,かつ数MHzの高周波に対応するためフィルムコンデンサが必要になるので,重量が馬鹿にならないため,今はスナバレス回路になっているのが普通です。
モータの入った回路にインバータやチョッパなどのパルス性の電圧をかけると,カットオフ時に逆向きに鋭いパルス性の電圧が出て,鉄道模型では,耐圧はまったく問題にならないのですが,尾灯や反対側の前照灯が点灯しちゃいます。
これを防ぐ目的で,KATOやTOMIXなど,LEDにパラにコンデンサを入れているのですが,このせいで,停車中には前照灯が点灯しなくなってしまいます。
昔はこれらは豆電球で,これらは熱時定数が大きいので,こんな瞬間的なパルスには反応せず,点灯しなかったのですが,LEDになっちゃうと,このコンデンサを撤去すると常点灯になる代わり,反対向きの前照灯が点灯してしまい,結構気になります。
そこで,iruchanがスナバ回路で逆向きの電圧を吸収することを思いつき,ブログで公開してます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
☆ ☆ ☆
実車は国鉄が東北本線電化用に1955年から59年にかけて,総計55両を製造したものです。北陸本線用のED70は実際にはED45の量産機,というような機関車で,試作的要素が多く,また,出力が小さすぎたため,あらためて2000kW級として開発されています。
トランスのタップを切り替えて速度制御を行うとともに,タップ間は水銀整流器にグリッドを設け,格子位相制御をしているのはED70と同様ですが,トランスのタップは高圧側(1次側)を切り替えるようになっているのが違っています。
国鉄はこのあと,しばらく高圧タップ切替をEF70,ED74まで使いますが,ED75からは低圧タップ切替に変わっています。新幹線0系も低圧タップ切替ですね。
一般的に高圧側の方が電流が小さくて電流を遮断しやすく,やりやすいと思いますが,それでもスイッチから火花が出て,金属粉が発生し,絶縁破壊するので,絶縁油にフィルターを入れるなど,苦労が多かったようです。ED75や0系で低圧切替になったのは気中切替(空気中で切り替える)ができるようにしたかったのでしょう。
デザイン的にもED60などと同じ小型D形機関車と同じスタイルになり,なかなか好きな機関車です。
まずはボディをバラします。
運転席の窓ガラスのパーツにツメがあるので,ガラスとウェイトの間につまようじを入れてボディを外します。
スナバ回路の定数としては,R=22Ω,C=0.1μFとしました。モータのインダクタンスにより,定数は変わりますので,試行錯誤が必要かと思います。
金属製のHOゲージキットの組立などに使う,塩化亜鉛を塗るとはんだが固まらず,スーッと広がるので,少し塗るとよいかと思います。プリント基板用のフラックス,と言うのは逆で,はんだが広がらないようにするものなので,ご注意ください。ハンダが膨らんで固まるとボディがはまらなくなります。
この状態で,PWM式のコントローラでテストします。逆側の前照灯が点灯しなければ成功です。スナバ回路がないと,反対側が全開くらいの勢いで点灯し,お前はどっち向きに走るんだ? っていう状態になります。
今回,iruchanはPFM式コントローラを使いました。PFM式の方が低デューティ時の性能がよく,鉄道模型用としてはPWM式より優れている,と思います。それに,PFMだとパルスが出っぱなし,と言う状況になるので,ボリウムを一番左まで回しても前照灯が点灯したままです。
あとはナックルカプラー,ナンバーをつけて完成。
ナックルカプラーはとてもつけにくいのですが,ボディをバラしちゃうのであれば,連結器スカート部分を外せるので,簡単です。
それにしても屋根上配管を真鍮製にしたり,本当に手のかかった模型です。やっぱ,Made in Japanだな~と感心するできばえです。
走行性能は言うまでもありません。スムーズに,静かに動きます。
ぜひ,KATOさんには1次形をお願いしたい,と思います。田の字型にルーバーがついている1次形はとても好きです。
こんな小さな機関車がコキ5000やク5000などの長大貨物を牽いていたのは驚きですね。EF210なんかが牽いているより,ずっとかっこよかった,と思います。
コアレスモータ対応鉄道模型用コントローラの開発~その17・PIC版KATO KC-1~ [模型]
2019年1月15日の日記
今日は前回に引き続いて,KATOのKC-1コントローラと同等の機能を持った自作のPIC版KC-1を作っていますが,今日は過電流保護機能を組み込んでみます。
実物のKC-1はサイリスタを使った電流遮断型保護回路となっていて,負荷電流が1Aか2Aの選択ができますが,これらの値を超えるとサイリスタが動作して出力電流を0にします。
一般的に定電圧電源など,電源装置の保護回路としてよく使われるのは電流制限型で,iruchanも鉄道模型のコントローラとしてはこの電流制限形をずっと使っていました。最近よく使われるポリヒューズも動作としてはこういう動作をします。なお,ポリスイッチという別名もありますけど,スイッチのように,完全に電流を切ってくれるものではありません。
電流制限形の保護回路の場合,保護動作としては,一定の電流以上は流れない,と言う保護動作になります。こうすると制御用の素子(バイポーラTr,MOS-FETなど)を保護することができます。
ただ,この場合,負荷から見ると一定の電流を流してしまう,と言うことになるので,結構危険な保護動作です。Nゲージの場合,モータに1Aも流すと結構発熱し,危険です。ボディがプラですから,ボディが変形することもあり得ます。HOゲージのようにボディが金属製なら大したことはないですし,HOゲージだとモータも大きいので,それほど発熱しないのでマシですけどね.....。
また,ポリヒューズはUSBコネクタの保護素子としても多用されていて,USBは最大1A流すことができますが,その保護用としてポリヒューズが入っています。よく,USBに接続したのに認識しない,と言うトラブルがありますが,こういう場合,このポリヒューズが物理的に断線して故障していることがあります。過電流で壊れちゃったんですね。普通は壊れないんですけどね。また,ポリヒューズも保持電流が大きすぎ,1Aでトリップするものでも,保持電流は0.5Aです。これじゃ,せっかく動作しても0.5Aの電流を流し続けるのは困ったものです。半導体を使った電流制限形の保護回路も,より安全なホールドバック形,と言うものもありますが,これも最大負荷電流が1Aで,保持電流が0.1Aと言う保護回路は設計できません。
ということで,やはり鉄道模型用としては,過電流を検知したら電流を完全に0にする,電流遮断型が安全です。
でも,これを簡単に電子回路で実現しようとすると......,意外に大変なのです。KATOのKC-1もサイリスタを使っていますし,教科書を見てもかなり複雑な回路が解説してあります。何個もTrが必要となり,回路は複雑です。あることをきっかけとして,なんらかの状態を保持する,というのは意外に電子回路ではめんどくさいのです。サーキットブレーカを使えば簡単ですけど,これはこれで値段が高いですしね。
それに......。
電流遮断型だと,電流制限形のように,自動的に復帰する,と言うことができません。あくまでも何か別のスイッチを設けてリセットする,という動作が必要になります。まあ,実際の電車でもこうだし,普通,過電流が流れた,というのは事故なわけですから,自動で復帰する,というのは本来はおかしな話です。ちなみに,ポリヒューズは過電流が解除され,素子の温度が下がったら自動的に抵抗が0になるので,自動復帰します。
前回のハードウェア版KC-1改ではR-Sフリップフロップを使った回路にしました。R-Sフリップフロップだとある状態を記憶してくれるわけですから,電流遮断型の回路に応用できます。
過電流を検知するとR-Sフリップフロップが動作し,電流遮断動作を保持します。リセットするには別のスイッチでR-Sフリップフロップをリセットします。
今回,PICを使っていますから,ソフトウェアでこういうことをやろうと考えています。
ソフトウェアでやるなら,こんなこと簡単なわけです。OCR_flagというような変数を設けておいて,過電流を検知したらその変数を1にし,リセットするまで出力をoffにすればよいわけです。
とすると,回路も非常に簡単になります。
出力部分と保護回路だけを描くとこのようになります。
MOS-FETのソースに挿入した0.22Ωで過電流を検知します。仮に1Aとすると,この抵抗の両端の電圧が0.22Vを超えたら過電流と判断すればよいのです。
回路は複雑に見えますが,0.22Ωとリセットスイッチ,プルダウン抵抗27kΩがミソです。
10kΩと10μFはハイパスフィルタで,今回,PWMコントローラですからノイズが多いので,誤って保護動作をしないよう,フィルタで動作を緩慢にしておきます。なくてもよいと思いますが念のため,入れておきました。
それをAN3ポートに入力し,その電圧をPICのソフトで監視します。
リセットはA3ポート(#7ピン)をhighにすることにより解除します。27kΩでプルダウンしておきます。
PICのAN3ポートに乾電池をつないでテストしてみます。
赤色のOCR LEDが点灯し,出力がoffとなります。電池を外してもこの状態を維持します。
う~~ん,こうしてみるとこの赤色LEDもほとんどオレンジだな......。最近はLEDも中国か台湾製ばかりで,どうもかなり波長が短めで赤色LEDと言ってもこのようにオレンジ色に近いものばかりです。
リセット用のタクトスイッチを押すと,A3ポート(#12ピン)がhighとなり,リセットされます。PWM出力が再開されるので,出力モニター用のオレンジ色のLEDも点灯します。
ついでに,遊びでリセット信号モニタ用の青色LEDをつけちゃいました......(^^;)。
秋月で売っている,アイスブルーという青色LEDです。普通の青色LEDはギラギラと原色でどうにも好きになれませんが,これは上品な青色だと思います。
☆ ☆ ☆
実を言うと,PICのソフトを変更し,OCR動作時でも,たとえば1秒おきに10msくらいの瞬間的なパルスを出力させ,そのとき,先の0.22Ωの電圧を測定して0.22V以下なら出力を再開させる,という自動復帰動作も可能なんですけど.....。
一応,やはりリセットは手動で入力するようにしました。
以上でソフトウェアの開発は完了です。次回はケースに入れて完成させたいと思います。
鉄コレを買ひに~鉄道コレクシヨン・京浜急行旧600形冷房車~ [模型]
2018年12月27日の日記
とうとう年も押し詰まってまいりました。これで今年最後の更新です。本年もどうもご愛読ありがとうございました。
今年は年の最後にiruchanにとってはビッグなプレゼントがありました
なんと,大好きな京浜急行の旧600形の冷房改造車の鉄コレが出るんです
5年前に冷房改造前のオリジナルの鉄コレが発売されています。それを冷房改造しようかとも思っていたのですが,いずれ冷改車が出るだろう,と読んでそのままお蔵入りになってしまっていました。
ようやく冷改車が出ることになりました。
実は,非冷房車から冷房改造をするのはこの車の場合,かなり難しい話になります。特に,非冷房車は換気口つきのモニター屋根になっていて,もとの非冷房車の屋根が使えません。それに,車体の方も運転台部分の屋根に切欠きが設けられ,屋根の形状も変わってしまっています。一時はGMの600形キットの屋根板を使って改造しようかとも思ったのですけど......。
面倒だな,と思っているうちにとうとう,冷改車の鉄コレが出ました。
一応,早めに情報はつかんでいたのですが,ちょっと心配したのは販売個数。普通は鉄コレは1万個なんですけど,これは5000個。ちょっと少ないんじゃ,と思いましたが,最近の鉄コレの販売数はこんなものなのでしょうか。明らかにこの前の京阪1900系冷改車など,ほかの鉄コレも事業者限定のものでも行列が短くなっているし,値段が上がったこともあり,以前ほどは売れなくなっているようです。
さて,iruchanは発売当日,前回同様,北陸から新幹線に乗って上大岡の京急百貨店へ向かいました。まだ開店前から並ぶ人が多いので,早速,社員の方がエレベータに案内してそのまま7Fのフェア会場へご案内いただきました。屋外で並んでちゃ寒いし,本当にありがたいです。7Fでも,"トイレに行く方はご連絡ください" と会場のお姉さんが呼びかけていますし,至れり尽くせりのサービスには感激です。ありがとうございました。
ただ.....。
前回の非冷房車や,iruchanは買いに行きませんでしたけど,並んでいた人の話だと昨年の1000形冷改車に比べるとかなり並んだ人は少なかったようです。
う~ん,iruchanもちょっと残念ですけど,京急の旧600形はもう,生前の姿? を覚えている人も少なくなり,人気のある車種じゃなくなってきているのでしょう。それに,並んでいる人の年齢を見てみるとどう考えても平均年齢は50を超えている感じ.....。もうそんな時代なんですね....。だから京急百貨店さんも販売台数を減らした,と言う具合なのでしょう。
まあ,鉄コレに限らず,鉄道マニア自体もずいぶんと平均年齢が上がっているし,iruchanもやっているオーディオや電子工作なんかもすっかりおじさんの趣味となり,若い人はスマホにSNSなんでしょうね~。それにどんどん,若い人は減っているわけですから.....。
と言うわけですが,気を取り直してあこがれの旧600形冷改をゲットできました。本当にうれしいことです。今回はプレミアム仕様ということでブックレットつきも発売されましたので,往年の600形快速特急の姿も楽しめます。
色もなかなか深みがあって,いい感じです。やはり前照灯は点灯化工事をすることにしませう。
台車は東急製TS310を履いています。ちょっと600形はOK台車,と言うイメージがあるのでiruchanは2本目をOK台車で改造しようかと考えています。
残念ながら,冷房改造時に屋根も大幅に改造され,この前の非冷房車の鉄コレを冷改するときも屋根板の交換が必要なのであきらめました。
さて,年が明けたらじっくりとNゲージ化に取り組んでみたいと思っています。
☆ ☆ ☆
iruchanの嫁はんが珍しく今年はクリスマスプレゼントをくれました。
嫁さんは手芸が趣味で,いろいろなにやら作っていますが,今年はアナ雪の生地を使ってざぶとんと背もたれカバーを作ってくれました。背もたれの生地は夜は☆が光ります!
では,皆様本年もどうもありがとうございました。よいお年を。
コアレスモータ対応鉄道模型用コントローラの開発~その16・PIC版KATO KC-1~ [模型]
2018年12月22日の日記
やっと走行試験にこぎ着けました
難敵? のKATO C12をテスト中です。コアレスモータ搭載なので,2%程度のデューティでも走行してしまい,通常のコントローラでは常点灯になりませんが,本機では無事に成功です。停車中に前照灯も点灯しています。
☆ ☆ ☆
さて,先週,KATOの名コントローラKC-1のPIC版をご紹介しました。今週はデバッグして試験します。
まず,先週はKC-1の特徴である,高低2波のPWM波を発振させるため,まずは低周波PWMを動作させました。
PICに限らず,普通,DCモータは20kHz以上の高周波でスイッチングするのが当たり前なので,PICにはPWM発生機能がありますが,使用しているPIC用BASIC言語の Great Cow Basic のデフォルトの発振周波数が38kHzであることからもわかるとおり,KC-1のように50Hz前後という低い周波数で発振させるのはとても難しかったです。
最初,iruchanはこれはできない,と考えていました。GC BasicではハードウェアPWM制御用にHPWMというコマンドがありますが,設定周波数の単位はkHz単位となっていて,1kHz以下の周波数は設定できません。
でも,何のことはない,ちゃんとPWM波設定用のレジスタをきちんと設定すれば可能であることがわかったので,先週,無事に60Hzくらいの周波数で発振させることができました。
次はいよいよ常点灯用の高周波PWM波の発振をさせることができれば無事に成功! というわけだったんですが......。
これも結構,茨の道.....。
またまたドツボにはまってしまいました。
何度やっても20kHzくらいのPWM波が発振できません......
なんとか,発振させることができた,と思ってもほとんどデューティが0か100か,という感じでスムーズに発振させることができません。
いったい,どうなっとるんや.....。
と言うことでまた1週間つぶしてしまいました。今まで,何度もPICのPWM制御をやりましたけど,発振周波数で苦労したことはありませんでした。
よ~~く,考え直してみると,PWM波というのはPICのクロック周波数を分周して作っているので,低周波PWMの時に苦労しましたけど,クロックと密接に関連しているので,やはり簡単なはずの高周波PWMの方もきちんと計算しないといけません。なまじ,GC Basic は簡単にひとつのコマンドでハードウェアPWMができちゃうだけに,なめちゃっていました。
☆PICによるPWM周波数の決定
16F18325のデータシートを見ると,PWMの発振周波数の計算が載っています。データシートは周期になっているので,周波数に書き換えると,
となります。ここでfoscはクロック,TMRpreはプリスケーラの倍数の逆数(×8,×16など),PR2はPRレジスタの値です。タイマーが4の場合はPR4レジスタとなります。今回,低周波はタイマー2を,高周波はタイマー4を使います。resolutionは分解能です。
これで,なんとか,60Hzと20kHz前後の周波数が設定できるよう,PR2とプリスケーラ,クロックの3つを決めます。3つもあるので大変です。
結局,上記の式をExcelで計算し,適当な値を決めました。クロックは1MHzで動作させます。
fPWM 62.5Hz 17.9kHz
PR2 &hFF &h0C
プリスケーラ 1/16 1/1
分解能 10 5.8bit ※ fosc=1MHz
本当はなんとか高周波を20kHz以上にしたかったのですけれど.....。17.9kHzがやっとでした。20kHz以上にすると今度は低い方の発振周波数が上がっちゃいます.....orz。
まあ,ほぼ18kHzともなるとほとんどの人は聞こえないと思いますので,大丈夫だと思います。
さて,ようやくこれで高周波の方のPWMも動作するようになりました。
☆コアレスモータ対応のためのドライブ段の設計
さて,お次は高周波を出力して常点灯に対応させるのですが,これには条件がつきます。
従来のコアつきモータの場合は問題ないのですが.....。
コアレスモータはこの記事にありますとおり,2%台のデューティでも発進してしまい,常点灯に対応しなくなってしまいますので,最低デューティを1%台にしたいと思います。まあ,何とか,2%台前半に収まれば合格,と思っていますけど......。
でも,これ,むちゃくちゃ大変なのです.....。
仮に,スイッチング周波数を20kHzとして,デューティ1%と考えると,パルス幅は0.5μsです。目標として,2%未満と考えても,1μsの幅しか許されない,と言うことになります。
そんなの楽勝じゃん! と考えてはいけません。
バイポーラTrなら絶対に無理な数値なのです。高速スイッチング可能なMOS-FETでなら楽勝,と言う数値ではあるのですが,MOS-FETも前提条件があります。
たとえば,バイポーラTrとして,鉄道模型用のコントローラでよく使用されたNECの2SD560ダーリントンTrの場合,規格表には次のような数値が出ています。
出力されるパルス幅は ターンオン時間+蓄積時間+下降時間 以下にはできません。
とゆ~ことは,2SD560の場合,5.7μs以下のパルス幅は出力できない,と言うことになります。ほれじゃ,あかんやん......。そもそも,NECの規格表もパルス幅50μsに対して実験したものだし.....。
ただ,バイポーラTrでも,iruchanが使っている2SD409などで実験してもなんとか1μs台のパルスを出すことは可能なようです。おそらく,Nゲージなんかの軽い負荷の場合,コレクタ電流はせいぜい0.1Aくらいなので,このように小さな電流の場合は比較的高速にスイッチングできるのだと思います。
一方,MOS-FETの場合はこのうち,蓄積時間は0なので,非常に高速です。
同じNECの2SK2412の場合ですけど,単位がμsじゃなくて,ns なのに驚きます。
tonとtoffがパルス幅の限界と考えられますが,両方足しても0.085μsにしかなりません。
もちろん,MOS-FETは電界で動作する素子なので,バイポーラTrのように蓄積時間というものはありません。
蓄積時間というのはベースに外部から電子を供給すればonしますが,今度は蓄積された電子が抜けないとoffにならないので,その電子を抜くまでの時間です。MOS-FETだと電界で動作するので,この部分がないのです。
じゃ,MOS-FETの方が断然いいじゃん,と思っちゃうのですが.....
実はここに落とし穴があり,MOS-FETは入力容量Cissがバカでかいのです。バイポーラTrの場合はベース~エミッタ間を導通させて使用するので,この部分の容量は元から非常に小さいのですけど,MOS-FETはこの間が絶縁されており,金属酸化物がコンデンサとなって容量を持っちゃうのです。
CissはMOS-FETのCg-sとCg-dの和なのですが,これが入力容量として作用します。また,FETは電圧制御素子なので,ゲート電流は流れない,と思われていますが,この容量分を充電するための電流が流れます。
外部から電流を流すと,まずはこのコンデンサに充電され,FETのしきい値電圧Vthに達するまで,FETはonしません。また,offするときはこのたまった電荷を抜くまでoffしません。
iruchanも愛用している,80年代の開発で非常に古い2SK442はCissが小さく,330pFですが,90年代の2SK2412でもCissが小さく,860pFなのに(これでも非常にでかい!),あとでLTspiceでシミュレーションする,東芝の2SK2466の場合,3250pFもあります。最近のMOS-FETほど,Cissが大きくなっています。8000pFなんてあるものもあります。もう,天文学的数字だとiruchanは思っています。その点,同じ電圧制御素子である昔の真空管だとこの値は数pFですし,ソケットなども含めた実装時の容量は100pFくらいだと思いますから,MOS-FETは入力容量がでかすぎます。もし,2A3なんかでコントローラを作ったら非常に高速なものができるんじゃないかと......iruchanは考えています......(^^;)。
ということで,MOS-FETを使って高速スイッチングさせるには,やはりドライバ段が必要となります。大容量のコンデンサの充放電のため,大きな電流を流してやる必要があるからです。▼のように,かなり大げさな回路をつけ足してやることが必要です。
まあ,せっかくありがたい仏様がいらっしゃるのに,脇に立っている小僧さんに多額のお布施をしないと御利益が得られない,というわけです.......orz。しかも,最近のものほどCissが大きく,まるで本物の宗教みたい....なんてことは言ってはいけません。
☆PICによるMOS-FETドライブ回路
さて,じゃ,ドライブ回路というのはどうすりゃいいんだ,と言うことになりますが,こちらでも書いていますが,次のようなものです。
コンプリメンタリーTrをプッシュプルで動作させます。プラスの時は上側のNPN TrがMOS-FETのCissに電荷を低インピーダンスで注入します。パルスが0Vになると,下側のPNP TrがonしてCissに溜まった電荷を急放電します。
ちなみに,はき出す方をソース,吸い込む方をシンクなんて言ったりします。ついでに,日本語だと吐き出し電流,吸込み電流と言ったりします。ほのまんまやないか~。
RGはMOS-FETの発振防止のため挿入します。10~100Ωくらいです。大きくしちゃうとCissの充放電の時定数となるので,あまり大きくできません。なくても構いませんが,オシロで見て発振するようなら入れないといけません。
一方,なにげない抵抗なんですけどRsが実は大問題で,値によって大きく性能が左右されるばかりか,場合によっては,▼に示すように,使用するICの規格表によっては入っていません。
▲のようなプッシュプルドライバなら不要なのですが,シングルドライバの場合は絶対必要です。後で詳しく書きます。
プッシュプルドライバの場合は,下側のPNP Trが放電してくれるので,不要です。
抵抗は全部なくても大丈夫です。ただ,この場合,ドライバに瞬間的に結構大きな電流が流れるので,注意が必要です。RB1,RB2はベース電流を制御してコレクタ電流を抑えます。
ただ,実際,このようなドライバ回路を挿入してある場合はほとんどないと思います。iruchanも実際の回路では見たことがありません。
理由は単にコストの問題でしょう。それに,1μsのパルスが必要,なんて場合がおそらくほとんどないからなのでしょう。モータをPWM制御することは今は非常に多いのですが,普通は数十%というような大きなデューティで動作させるので,わずか1%とか,2%とかといった低いデューティのパルスを出すことはほとんどないからです。その意味で,鉄道模型というのは直流モータを駆動する場合としては特殊だと思います。
なお,NPN(プッシュ)側は▼の説明にもありますとおり,ICの中でエミッタ出力となっていることが多いので,こちらの方ははるかに楽です。それで,単純にDiのP-N接合で代用してしまう場合も多いです。iruchanも前回のKC-1改ではこのようにしました。
さて,実際にPICなどのマイコンでMOS-FETをドライブする場合,ドライバ段を使っていない場合がほとんどなのですが,この場合,注意が必要です。実は2種類あります。
これ,どう違うんや? ってことなんですけど......。
ICの出力部分がどのようになっているかによって回路を変えないといけないのです。よく,PICなどマイコン関係の本に書いてあるのは下の回路です。東芝のMOS-FETの資料にもこう描いてあります。
ただし,この場合,ICの出力回路がプッシュプルになっている必要があります。C-MOSのICはたいてい,プッシュプルになっていると思います。PICの場合も普通はプッシュプルになっています。ところが,驚いたことに16F18325なんかそうですけど,ODCONAレジスタのビットによってプッシュプルかシングルか選択ができるようになっています(デフォルトはPP)。何の意味があるんだろ,と思いますけどね.....。
TTLのロジックICや,KC-1のオリジナルで使用されているTL494などのICの場合,出力がシングルのTrになっていて,エミッタで出力されている場合が多いです。特に,70年代や80年代の頃の設計のICはこうなっている場合が多いです。
このとき,Rsを挿入しておかないと,MOS-FETのCissに溜まった電荷を逃がすことができません。
よく,ちゃんとICがパルスを出力しているのに,出力がデューティ100%となって出力全開となるトラブルがありますけど,原因はこれです。この場合,必ず100~1kΩくらいの抵抗でMOS-FETのゲートを接地してください。Rsは小さい方が高速でスイッチングできますけど,ICの出力電流の制限がありますから,あまり小さくしないでください。
いずれにしろ,MOS-FETをドライブするためには接続するPICなどのICの出力回路がどのようになっているか,確認が必要です。また,この場合,最大出力電流(ソース,シンク電流)の値を確認する必要があります。KC-1改で使ったTL494は250mAもありましたが,PICの場合はせいぜい20mAのようです。これでも十分大きい値なのですけど,大容量のCissを持ったMOS-FETをドライブするには不足であると考えています。
もう一つ,▼の回路のR3も結構,問題があります。最初,10kΩにしておいたら,パルス幅が2μsくらいとなってしまいました。これじゃあかんやんか,と言うわけで小さくしてみます。この抵抗は下側のPNP Trのベース電流を決めます。ベース電流を大きくしてやらないとCissの放電電流が小さくなって,パルス幅が大きくなってしまいます。
さて,ちょっと,シミュレーションで確認してみませう。
教科書や,東芝のwebにある,MOS-FETの記事などに載っている回路です。ドライブ回路として,PNP-NPNのコンプリメンタリTrを使ったプッシュプル回路です。パルスが出ているときは上側のNPN Trがonし,反対にパルスがないところでは,下のPNP Trがonして電荷を充放電します。
ただ,シミュレーションしてみるとわかりますが,プッシュプル回路と言っても,プッシュ側の方がやたら大きな電流を流し,下手すると最大定格を超えて壊れてしまうので,ベース電流を制限するため,抵抗を入れてあります。反対にプル側のPNPの方は不足気味なくらいです。
では,R3の大きさによるパルス幅の違いを見てみませう。クリックすると拡大します。
R3が1kΩの時はパルス幅は1.4μsです。パルスの立ち上がりにNPNのTrのエミッタ電流が増え,逆に立ち下がりはPNP Trのエミッタ電流が流れてCissに充電された電荷を逃がしていることがわかります。PNP側の方が電流が小さく,立ち下がりをいかに速くするか,が課題だというのがよくわかります。
ただ,10kΩにすると,やはりこれらの充放電電流が小さくなり,パルス幅も大きくなります。2μsくらいになっちゃいますね。
結局,基板を作って実際にはR3は470Ωまで小さくしました。100Ωくらいにするともっと高速になりますが,PICのピーク電流定格を超えちゃうのであきらめます。
回路を載せておきます。2つのPWMチャンネル出力をスイッチングDiと抵抗でミックスしています。本来ならORの論理ICを入れるべきですけどね~~。面倒なのでアナログ合成です。
もっとも,16F18325は論理回路も作れます。この2つのPWMのORを取るくらいできるので,そうするともっと回路をシンプルにできますが,ソフトをいじらないといけないので,このままです。
出力部分にスナバ回路を入れています。こうしておくと,波形の立ち下がりが緩くなり,車両側にスナバ回路を入れなくても常点灯+逆向き前照灯の点灯防止ができるはずです。
75×35mmの大きさです。基板上に出力信号のモニタ用のLED(オレンジ)を取りつけました。これをつけておくと,テストの時も,運転中も便利です。
☆ ☆ ☆
さて,ようやくこれでうまくいくようになりました。波形を載せておきます。
ちゃんと,低周波の大きなパルスの間を埋めるように高周波のパルスが出ていることがわかります。
周波数は16.5kHzです。若い人だと聞こえちゃうな~。
でもパルス幅は1.1μsですし,最低デューティは1.83%で2%を下回っていますから合格です。
大きくオーバーシュートしているのが気になりますけど.....。ピーク電圧は15.8Vになっています。瞬間的なので全然問題ありませんけど,おそらく,ゲートに挿入する抵抗RGをなくしちゃっているからだと思います。やはり10Ωくらいは入れてみて,ピークを抑えた方がよいと思います。
12月23日追記
さて,ようやくKATOのC12の試運転にこぎ着けたのですが.....なんと,最低デューティ1.8%でも動いちゃうじゃないですか!!
こちらで,C12の最低起動デューティを調べていますが,そのときは2.7%でした。同じくKATOのコアレス機D51ギースルエジェクタでは4.6%でしたけど,その時はC12は大変だ~っと思っていました。
ところが,本機でテストすると,本機の最低デューティは1.83%なのに,非常に低速なんですが,動いちゃいます。
困ったな~~~
手としては,デューティをもっと下げればよいので,
☆スイッチング周波数を低くする
☆最低出力パルス幅を狭くする
しかありません。
ただし,現状,スイッチング周波数は16kHzなので,これ以上,下げちゃうと完全に音として聞こえてしまいますので,この手は使えません。
となると,次の手は最低出力パルス幅をもっと狭くして,現状,ほぼ1.1μsなので,この半分で0.5μsだったら大丈夫,という気がします。
しかしなぁ~~。
今までの議論でおわかりいただけると思いますが,これは非常に大変なのです。PIC直結のドライブ法だと無理だと思います。
一応,本機は高速プッシュプルドライバを入れているので何とかなる,と思いましたけど....。
とりあえず,ソフトを再検討します。
でも,何度やっても1μs以下のパルスが出てきません。
なんでや~~!?
頭を抱えちゃいましたが,やはり,PICのPWMコントローラの周波数分解能の問題だと思います。今までの話でおわかりいただけるように,PWMの周波数やデューティはPICのクロックと密接に関係しているので,もう一度,クロックから考えてみます。
結局,何のことはない,現状クロックを1MHzにしていたのですが,2MHzにしないと最低パルス幅は1μsより下がらないのです。16F18325のデータシートをよく読んでみると,CCPR4L(タイマー4の場合)レジスタで最低パルス幅が決まっちゃいますが,最低の1にしておいてもクロックが1MHzではパルス幅は1μsにしかならないことがわかりました。
となると,クロックを2MHzにしてやればOKのはずですが.....。
今度は低周波のPWMが当然パルス幅2倍になっちゃうので,スイッチング周波数も120Hzくらいになっちゃいます。
こちらの方はプリスケラを現状,1/16なのを1/32にしてやればええやろ,と思ったのですけど....。
残念ながら,プリスケラは1/16の次は1/64でおしまいです......orz。
結局,クロックは4MHzにしてようやく一件落着でした。高周波側のプリスケラは1/4にしました。
こうしてなんとか,高周波スイッチング周波数を20kHz,低周波はそのままで63Hzにすることができました。
最低デューティは1.4%です。C12はこれでは動きません。
最低パルス幅は0.363μsでした。こんな狭い幅のパルスを出力するのはきわめて困難です。やはり高速プッシュプルドライバとMOS-FETの出力段が必要です。
なんとか,C12が止まったままで前照灯を点灯させることができました
本機の高周波パルスはVR全周で0~5%の範囲で可変できるようにソフトを組んでありますので,非常に常点灯の範囲も広く,楽勝でこのように機関車が止まった状態で前照灯だけ,点灯させることができました。なお,コアレス機の場合は最大デューティにしちゃうと動き出しちゃいますので,ご注意ください。通常のコアつきモータだと調光用のVRを最大にしても動くことはないのですけど....。
次回はソフト制御の電流遮断型保護回路についてソフトを開発します。
コアレスモータ対応鉄道模型用コントローラの開発~その15・PIC版KATO KC-1~ [模型]
2018年12月15日の日記
とうとう年も押し詰まってきました。先週までは夏みたいな気温だったのに,急に真冬並みの気温となり,皆様,体調管理にお気をつけてください。
さて,前回から1年経ちました。
ずっと宿題になって残っていたことを解決したいと思います。
KATOのKC-1コントローラはNゲージ用パワーパックの傑作だとiruchanは思っているのですが,マニアの中でもそう思っておられる方が多いと思います。1980年代の製品なのでとても古いのですが,非常に速度制御がスムーズで,特に最新のコアレスモータ搭載車両でも十分にスムーズに動き,最新のパワーパックをしのぐ,という評判もあるくらいです。
実際,iruchanも中古品をオークションで仕入れて性能を調べてみましたが,やはり今のパワーパックと比べても遜色ないどころか,きわめて低速もスムーズでだし,優れたコントローラだと思いました。
ただ,中古市場では結構値段が高いし,また,電源が別ユニットの上,本体もサイズも大きいので,場所を取ります。それに,工作マニアとしてはこれと同等の機能のコントローラを作ってみたい,と思いました。
そこで,iruchanは内部の回路を多少モディファイして簡略化し,サイズも大幅に小型化して現代によみがえらせたKC-1改を作りました。実際には順番は逆で,iruchanは先に自作して,あとからオリジナルを入手したんですけどね......(^^;)。
KC-1改は本ブログでも評判がよく,実際に何人かの方が作っておられるようで,性能がよいとお褒めいただきました。
ただ,残念ながら回路はテキサスのスイッチング電源用IC TL494(KC-1オリジナルではこれのセカンドソースのNEC製μPC494Cを使っています)を2個も使い,また,保護回路として一般的な電流制限形ではなく電流遮断型としたのでかなり複雑なものです。特に,リセット可能な電流遮断型の保護回路は安全なのはいいのですが複雑で,このあたりをポリヒューズで代用して作られた方も多いようです。KC-1のオリジナルはサイリスタを使った非常に複雑な保護回路だったので,iruchan版は比較的,簡単な方だと思ったのですけれど.....。
で,宿題というのはこの回路をPICを使って再現できないか,ということです。PICを使えば,もっと回路は単純で済みますからね!
それを,実は最初から考えてはいたのですが.....。
やはりPICだとソフトウェア制御なので,かなり難しく,昨年は作るのをあきらめていました。
原因は2つ。
ひとつはKATOのKC-1は低周波のPWMと高周波のPWMを組み合わせた2周波PWMコントローラなのですが,PICでは2つの周波数のPWM波を作ることができない,と考えていました。
もうひとつは低周波のPWMで,普通はモータ制御は20kHz以上の高周波でPWM制御します。PICは産業用のマイコンなのでモータ制御も得意で,一部には内部の回路にPWM制御回路を持ち,ハードウェアPWMができますが,KC-1のような低周波でのPWM波は作れない,と考えていました。
☆2周波PWMについて
いつもiruchanが使っている12F1822というPICは8ピンDIPという小さなパッケージなのにアナログ入力が4つ,PWMチャンネルが2つあるという,非常に模型のコントローラに好都合なPICですが,残念ながら,PWMが2チャンネルあっても,2つ別々の周波数で動作させることができません。
実は,複数のPWMチャンネルを持っていても,12F1822のように,別々の周波数で動作できるPICというのは少ないのです。iruchanは ない と思っちゃっていました。
☆低周波PWMについて
KC-1は走行用(モータ用)の低周波PWMのスイッチング周波数は50Hzほどですが,低周波PWMというのはこちらでも書きましたように,モータの損失が増え,また,循環電流が流れない領域が広く,振動がひどいので普通は使いません。低周波PWMをすると,一見,低速でスムーズになりますが,これはモータが瞬間的に起動,停止を繰り返しているためで,モータが振動し,大きな音を出します。これをKC-1は高周波のPWMと併用することによって常に循環電流が流れるようにして避けていて,巧みな設計となっています。
高周波でスイッチングをするとは言っても,10kHzくらいだと,かなり高い周波数なのに、まだモータからピーッという高い音がするので,普通は人間の耳に聞こえない20kHz以上の周波数でスイッチングします。実際の電車でも古いインバータ車がうるさいのは鈍足なGTOサイリスタを使っていて,スイッチング周波数が1kHz程度と低いためです。いまはIGBTなどの高速スイッチング素子を使うので電車も静かになりました。
一方,PICは自動車でも広く使われているように,機械の制御用マイコンなので,モータの制御用としても使われるせいでPWM機能がついていますが,さすがに50HzというようなPWM制御は考えていないらしく,このような低周波PWM波は出せません。
と思っていたのですが......実はできるのです。そういうことが最近,わかりました。
また,低周波PWMについては,たとえば,iruchanが使っている Great Cow Basic というフリーのPIC用BASICには,HPWMというコマンドがあり,PWM制御ができるようになっていますが,周波数はkHz単位になっています。また,実際に周波数を0.05kHz(=50Hz)としてコンパイルすると,一応,コンパイラは通っちゃうのですが(これも問題!)PICは動作しません。
まあ,それならソフトウェアPWMと言って,どのPICでもできるのですが,デジタル出力のポートをソフト的に決められた時間だけon,offしてやればいいのですが.....。
でも,なんかこんなことやるのは爺臭い! もっとかっこよくやりたいものです。そもそも,12F1822などの一部のPICにはハードウェアPWM機能があり,ソフト的にもさっきのHPWMコマンドのように,たった1行でPWM出力できるようになっているのですから......。
ところが,よく調べてみると,低周波PWMはそのPWM発生回路の中に,プリスケラと呼ばれる分周回路があり,その倍率を決めてやればできる,と言うことがわかりました。仮にPWM波を1kHzで設定し,プリスケラで1/16にしてやれば62.5Hzが発振できるはずです。
また,PWM波はPICのクロックを分周して作るので,出力したいPWM波の周波数を考慮してクロックも決める必要があります。適当なクロックで動作させると目的のPWM波が出ませんのでご注意ください。
今回,1MHzで動作させます。
ようやく,Great Cow Basicのフォーラムで低周波PWMを質問している人がいて,スレッドを読んでようやくやり方がわかりました。何か,サーボ回路などで50HzのPWMが必要になる場合があるようです。16F18325の場合,TxCONレジスタでプリスケラや使用するタイマーの設定を決めます。プリスケラを1/16とし,PWMチャンネルが5で,タイマーが2の場合,
T2CON=0b '0000110'
とすればOKです。こうすれば,最初にPWMのスイッチング周波数を1kHzと宣言したら,その1/16で62.5Hzで発振できることになります。これならKC-1と同等と言っていいでしょう。
それと,複数のPWM周波数を設定できるPICもあることがわかりました。
クロックを利用して決められた周波数で発振させるためのプリスケラを制御するタイマーが2つあればよいのです。12F1822はタイマーが1つしかないので,発振周波数は1つになってしまうのです。
このことに気がつくのに時間がかかっちゃいました。
ただ,実を言いますと,2つ以上の発振周波数が可能なPWM機能付のPICというのは自分で調べてもわからず,Microchip社に問い合わせてわかった,と言う次第なんですけど.....。
同社に問い合わせたところ,翌日には丁寧なメールが来て,16F1769というPICなら可能です,とのこと。10bitのADCもついていて,PWMも4チャンネルもあります。入出力ポートは18個もある,という盛りだくさんなPICです。
余談ですけど,こういう場合,やはり外資系の半導体メーカというのは本当に親切だな~と思います。アマチュアからの質問も丁寧に応対していただき,ありがとうございました。テキサスやモトローラ,ナショセミ(どちらも,もう,ない)にも以前,問い合わせしたことがありますが,分厚いデータブックを送っていただいたりして,本当に外資系は親切だと思っています。
また,Microchips社のサポート担当の方も,おそらく,このPICが秋月電子で売られていることをご存じだったのだと思います。立場上,そうとは書かれてはいなかったのですけれど,このPICなら簡単に手に入りますよ,という意味でご推奨だったのではないかと思います。本当に親切な対応だと感激しています。
それに引き替え,日系の半導体メーカの対応と言ったら......何でこんなこと聞いてくんだ? と言わんばかりの対応で,無視するところすらありますし,困ったものです。以前は驚いたことに手紙で問い合わせたのに電話がかかってきて,目的を聞いてくるところもありました......これじゃ,世界から取り残されるわな~~。
でも,16F1769をせっかく教えてもらったのに......う~~ん,ただ,なぁ~~~っ?。
と思っちゃいました。
というのは16F1769というPICは20ピンDIPとちょっと大きすぎるのです。それに,PWMは2つで十分だし.....。
と言うわけで,せっかく教えてもらったのに悪いですが,ほかにも複数の周波数を出せるPICがあるはず,と思って調べてみると,この16F1769と同じ機能でピンが14ピンの16F1765というPICがあるではないですか!
実はこういうPICは結構多くて,中の機能は同じなのにピン数が違う,というのがあり,さっきの12F1825もピン違いの12F1823と言うPICがあります(14ピン)。もちろん,ピン数が違う分,入出力のポート数も違うので便利です。
ところが.....。
16F1765は入手難なんですね~。1769だと秋月電子で売っているのですけれど.....。
そもそも16F1765のDIP版はRSコンポーネンツはそもそも全パッケージ取り扱いなし,Digi-KeyもSMD以外在庫なし,と言う具合でMOUSERでしか売っていないようです。しかも1ロット5,000個!! ほんなににいらんちゅ~~の~~!! ほかはどれもSMD版しかありません。秋月の16F1769はDIPなんですけどね.....。
と,思ってブログを書いている間に改めてMOUSERのホームページを見たら最低発注数量は1で,単価¥195となっています。この前は在庫なしで,5,000個注文しろ,ということだったんですけど......。こちらの方はデータシートが日本語だし,▼の16F18325より使いやすいと思います。実は18325は製造中止らしく,今は秋月で安く手に入りますけど,あとで困りそう。iruchanも買いだめしておくつもりです。
TSOPやTSSOPなどのSMD(表面実装)タイプだとやはり基板にはんだづけしてしまって,基板上にデバッグ用のピンヘッダを取りつけてPICkit3などでデバッグする,と言うやり方になってしまいます。これじゃ,やりにくいですよね~。
しかたなく,ほかを探してみると,16F18325というPICがよさそう。これだとPWMは2つですし,パッケージはDIP14ピンと小型です。おまけにお値段も@100円と激安!!
ただ,これはドはまりでした........。
結局,無事にソフトが動作するようになるまで2週間もかかっちゃいました。やはり不慣れなPICというのは大変です。特に,番号からもわかるとおり,断然,16F18325の方が12F1822よりも新しく,機能満載のため,設定が大変でした。特に,PPSレジスタが加わり,これ,Peripheral Pin Selectという機能で,今まではAD入力やPWMなど,各機能別にピンが分かれていたのですが,このレジスタの各ビットを変更することでいろんなピンにこれらの機能を割り当てることができる,と言うスグレものです。
PPSレジスタ(16F18325データシートから)
ただ.....。
この設定は非常にやっかいです。もちろん,うまく設定しないと予定している機能が出ません......orz。
まず,入力か出力か,アナログ(ADC)かデジタルか,を決めて,さらに出力の場合はPWMやCCP,OSCなどの出力信号のソースを決めないといけません。Great Cow Basicだと読込まれるヘッダファイルにこれらの変数が決められているので,
#define USE_HPWM5 TRUE
などと宣言して設定します。Microchip社の統合開発環境だとCを使いますが,その場合はそれぞれレジスタをビット単位で設定して決めます。
おまけに,PPSレジスタはロックされているので,一度,ロックを解除してから設定し,再度ロックする,と言う操作が必要です。こんなの初めて!
と言う具合で,いろいろやっているうちにトラブル!!
何回,PICkit3をつないでも接続できません!
"Target Device ID(0x0) is an Invalid Device ID" と出ます。
これ,皆さんも経験していると思いますが,しょっちゅう出ますよね~。たいていはケーブルの接続が緩くてデータがうまく通信できない,と言うだけのトラブルです。
ところが,今回は何をやってもダメ.....。どうやらPICを壊しちゃったようです......。
あまりに何回もデバッグのため,電源を入れたり,切ったり,PICkit3を接続するためにアダプタに取りつけたりしてたので,PICが壊れちゃったようです。特に,本機は基板の中で12Vを使っていますから,おそらくどこかのピンに12Vが印加されたのだと思います。
PICはC-MOS構造なのでやはり過電圧には弱いです。皆さんお気をつけてください。
ようやく低周波のPWM波形が出てくるようになりました。ほぼ0%から100%までスムーズに変化します。出力周波数は63Hzでした。
低速でスムーズに起動するためには最低デューティが重要です。さすがに低周波PWMなので,最低デューティは0.9%です。コアレスモータ機は2%台のデューティで発進してしまいますから,本機は合格です。
こうしてやっと,本当にようやくでしたけど,低周波PWMが実現できました
ということで,次回は過電流保護などのルーチンを組み込んでテストしてみたいと思います。回路については次回,詳しく解説します。
☆ ☆ ☆
けさ,iruchanは自分と子供らの朝食を作るために目玉焼きを作ったら,1個,黄身が2つ入っていました
珍しいので,子供らに見せました。嫁はんはまだグ~グ~寝てます......orz。
京阪鉄コレ1900系 Nゲージ化 ~その5~ [模型]
2018年11月10日の日記
ようやく,先週,京阪1900系鉄道コレクションの先頭車をNゲージ化できました。なんとか,旧1810系の1905の砲弾型ヘッドライトも点灯化できました。ただ,2つ目玉の新1900系の方はLEDを1つまたは2つ使用するものを試験しましたが,やはり後者の方が明るく,こちらの方がよかったです。今後,改造するときはこの方式で行いたいと思います。
さて,今日はようやく動力化に取り組みます。
動力を組み込む車両は悩みましたが,先頭車に組み込むと前照灯の点灯化も容易なのですが,プッシュ運転となる時は脱線しやすいため,やはり中間車に組み込みたいと思います。
その場合,1905か,1956か,と言うことになります。
iruchanは1956を選んじゃいました。1905だと旧1810系で,一応,鉄コレ京阪電車1900系特急電車3両セットBではAセットとの組み合わせで中間車になっているのですが,やはりこれも先頭車ですし,純粋な中間車と言うことで1956にしました。
ただ,結論から先に言いますと,1905の方がよかったです。その理由は後から.....。
☆1956の動力化
動力はTM-06を使いますが,今だと改良型のTM-06Rが出ていますので,そちらをおすすめします。実際,最初の1900系鉄コレが出たときはTM-06が推奨されていましたが,3両セットの時は後者が推奨されています。
これ,何が違うかというと......,
いろいろ改良されているようなのですが,最大の改良点はTNカプラーと動力台車が干渉しなくなった,ということでしょうか。TOMYTECはTomixの子会社なのに,なぜか,設計の互換性がうまくとれてなくて,よく苦情が出ていますけど,鉄コレ用のTOMYTEC製動力を使うとTNカプラーが使えない,と言う問題がありました。そこで,iruchanも苦労してKATOのNカプラーなんかを使ったりしていますし,ほかの方はアーノルトで我慢する,ということも多いようです。
と言う次第なんですが,iruchanはTM-06の手持ちがあるので,旧製品で我慢します。
ただ,幸いなことに,京阪から1900系2両セットが発売されたときは動力台車用のKS-70台車枠がなかったのに,今回の3両セットでは付属していることです。これは助かりますね~。以前だとBトレ1900系用台車やGMのKS-74台車を切って使用したりする必要がありました。
といって,実はこの台車枠を使わないことになっちゃうのですが......。
最初にKS-70台車枠を取りつけてみてびっくり!
鉄コレ動力台車の横梁? が丸見えなんです。
KS-70は下揺れ枕を廃止したインダイレクトマウント台車なので,下揺れ枕部分がなく,割に枕ばねの下が空いています。そのせいで,丸く2つ穴の開いた動力台車の中央部分が丸見えになってしまいます。まるで豚鼻みたい
まあ,鉄コレ動力の動力台車は黒く塗られているので,それほど目立たないっちゃ,そうなんですけど.....。
そこで,前回も使用した阪急2800系用のFS345の活用を考えます。これだと,軸距が違ったり,枕ばねが金属ばねか,空気ばねかという違いはあるのですが,京阪のFS347とよく似ています。それに,FS347は従来通り,上下の揺れ枕があり,その間に空気ばねが入った構造なので,枕ばね部分はずっと下の方まで延びていて,鉄コレ動力の横梁部分を隠してくれます。
ただ,問題は車号。1956だとKS-70を履いています。自由にあとでインレタか何かで車番を入れる方式だったら問題なかったのですが.....。
目をつむって1956のままFS345としちゃうか,我慢してKS-70で行くか,迷いましたが,なんと,1956は新造当時はFS347を履いていたことが判明しちゃいました
なぁんや,問題ないんやんか。
倶楽部2600さんのブログに書いてありました。大変貴重な情報をありがとうございました。どうやら,本来T台車用だったFS347を翌年,予備を確保しておくため,KS-70を製造し,それと履き替えたらしいのです。
そういうことで,1956の製造当初はFS347だった,ということでFS345でも問題なさそうです。FS345の台車枠はTM-12に東武用? としてついていたものを活用します。
もともと,1956はT車なので,FS347でよかったわけです。ホッ。
組み立ててから気がついちゃいましたけど,FS347とFS345ではボルスタアンカの向きが微妙に違います。京阪のFS347の正確な向きがわからないのですけど.....。ほかにも軸距が違うし,そもそも枕ばねがFS347だと空気ばねなのに,FS345だと金属ばねだとか,いろいろ違いはあるのですけど.....。まあ,当時はダイヤフラム型の空気ばねはまだ難しく,ベローズ形空気ばねが多くて,ぱっと見,模型じゃ金属ばねに見えちゃうので問題ないと思います。
ただ,やはりT車なので,床下がスカスカでモータ部分が丸見え。これだったらやはり1905を動力化した方がよかった感じです。1905だと,1810系なので,中間車を作ったら1810系で運転できそうですしね.....。
☆カプラー交換
残念ながら,さっきも書きましたけど,今回使用したTOMYTECの動力TM-06をはじめとして,これとTNカプラーの相性が悪く,そのままでは取りつけられません。試しに手持ちの#0337密連タイプをつけてみると......
TNカプラーの復元ばねの取付部分が←部分で動力台車と干渉し,TNカプラーを取りつけることができません。
それで,今まではKATOの密連Nカプラーなんかを使ったりしていました。今回もその予定だったのですが,京阪は18m車なのが災いし,車間の調整が厳しいです。
TM-06などには車間距離調整用のカプラー治具が入っていますけど,構内試運転をしてみるとどうしてもこの部分が外れてしまい,うまくいきません。結局,今回はあきらめてやはりTNカプラーにします。
この場合,どうしても復元ばねの取付部分が邪魔になってしまうので,あきらめてカットしてしまいます。こうするとカプラーが収納されず,また,まっすぐ向かなくなっちゃうのですが,手で正面に向けてやればなんとか連結できますので,こうして取りつけます。
復元ばねはしかたないので外してしまいます。ばねの取付部分をカットし,さらに▲の写真のように少し斜めにカットしてやると動力台車と干渉しなくなります。本チャンは#0375密自連タイプを取りつけました。
☆京阪1900系パンタの謎
前回は台車の謎でしたが,今日はパンタ。
実は何をつけたらよいのか,迷っていました。
というのも写真を見ると,ホーンが2つになった,国鉄のPS16に似たパンタをつけているものが大部分ですが,初期の頃はホーンが1本のものが多く,PT-42などのパンタに似ています。
なんで,こうなっちゃっているのか.....。
おそらく,途中でパンタを付け替えたのだと思います。あるいは,スリ板やホーンがついている部分はひっくり返すと舟みたいな格好をしているので,舟体と言いますが,それだけ交換することも可能なので,その部分だけ取り替えたのかもしれません。ボルトで簡単に外せるようです。つけるときにそのボルトを締め忘れて走行中に舟体を吹っ飛ばしちゃったJRもありますけどね......。京阪1900系は製造当初はホーン1本タイプで,割に早い段階でホーン2本タイプに取り替えられているようです。
私鉄だとホーン1本,国鉄だとホーン2本,というのがiruchanのイメージで,できれば京阪もホーン1本のものにしたいと思います。
と言う次第で,鉄コレの箱にはPG16が推奨されているのですが,天邪鬼のiruchanはPT-42Fをつけてみました。
ところが,旧1810系の1905は困ったことに,PT-42Fはもとから取りつけられません。碍子のピッチが異なるようですし,そもそもTomixパンタ用の前後の四角い穴が開いていません。
しかたないので,これはGMのPT-43をつけることにしました。例によって真ん中の2つの穴はごそごそなので,裏からセメダインのSuper Xで固定しました。
新1900系にはTomixのPT-42Fをつけてみました。1両だけ,PG16にしています。旧1810系の1905にはGMのPT-43をつけてみました。
精密さではPG16のようです。断然,繊細にできています。
余談ですけど,やはり京阪はパンタ多いですね。今回の5両編成でもパンタがないのは1956のみと言う状態。2600系なんかもそうですけど,もとは600V時代の車が多く,MM'ユニットじゃなくて1Mとなっている電車が多いためでしょう。架線電圧が600Vだとモーターの端子電圧は150Vで済みますが,1500V電化のところだと375V耐圧のモーターを用意しないといけないので絶縁が難しく,京阪が高性能電車第1号なのはこのせいもあります。
さて,ようやくこれで1900系5両編成の完成です。Aセットを買うと6両編成にできるんですけど.....。1963年4月の淀屋橋延長開業後,大部分は5両編成でしたし,オール6両編成化は1970年11月の天満橋~野江間の複々線開業後のようです。鉄コレBセットはこの頃の時代を再現しているものなので,iruchan版は少し早くて淀屋橋開業直後の頃です。
いずれ,中間車をもう1両作って6両化したいと思います。さらに,1971年に3000系が登場すると1900系も7両編成が登場します。これも完成できたら運転会などで受けそうですね......
でも,1900系がスターだったのはあとわずか2年ほどのことです。1973年7月には全特急の3000系化が完了します。ありがとう,さようなら1900系。
2018年11月17日追記
TOMYTECの鉄コレ用旧動力TM-06の動力台車とTNカプラーが干渉する件ですが,親切な方から解決策をご教示いただきました。
復元ばねの取付部分が動力台車の軸と干渉するので,カットせざるを得ないのですが,こうすると,復元ばねを固定することができなくなってしまい,iruchanもカプラーがブラブラという状態で放置してしまいました。一応,まっすぐに向ければ他の車と連結はできるのですが......。
こんな状態で元には戻らなくなります。
下記のようにすると,復元ばねを活かすことができます。
まずは,カプラーの根元部分をカットした後,残ったリブ部分に穴を開け,真鍮線で復元ばねが固定できるようにします。
復元ばねのフック部分をφ0.3mmの真鍮線に通してリブに固定します。瞬着でもいいのですが,iruchanは透明エポキシで真鍮線を固定しました。
カプラー本体は▲の位置で上からフタを取りつけます。一番奥まで本体を押し込むと動かなくなっちゃいますのでご注意ください。
どうもご教示いただいたkimaroki9600さん,ありがとうございました。
京阪鉄コレ1900系 Nゲージ化 ~その4~ [模型]
2018年10月21日の日記
新造1900系 旧1810系編入車
前回からなんと,8年も経ってしまいました......orz。
京阪の1900系特急電車を模型化しています。2010年4月に鉄コレで事業者限定で2両セットが出ていますが,そのときからNゲージ化に取り組んでいるのに,いまだに完成していません......。
実は,中間車がないのが問題で,モデラで作ってみたり,何セットか買ったので,切り接ぎを考えてみたのですが,塗料がいいものがなく,せっかくスクラッチして工作しても色合いが合わないとおかしいですし,と言う具合でいろいろ悩んでいるうちに月日が過ぎてしまいました。
まあ,それからいろいろあって,2016年3月にはとうとう定番として中間車込みで3両セットが,しかも旧1810系先頭車も含めたセット(Bセット)が発売されています。
ということでいよいよ完成させたいと思います。
それに,13日には冷改後の5両セットが事業者限定鉄コレで発売され,iruchanもそのときたまたま仕事の都合で前日から東京にいたので,一足早くゲットしちゃいました。関西地域での発売は27日なので,未入手の方には大変申し訳ありません。
当日,まあ,さすがに値段も8,000円もするし,そう簡単に売り切れないだろう,とは思いつつ,やはり10:00には京浜線の有楽町の駅でおんぼろモハ63を降りて,南口を出て,GHQの横を通りすぎたところ.......GIに "Hey, you!" ってSuicaじゃなかった,誰何されてしまいました。よほど怪しげな格好をしていたようです。
"I'm a.......railway enthusiast!"(私は鉄道ファンです.....)って言ったらニコリと笑って解放してくれましたけど......。ホッ......。
ようやくGHQの横をすぎて,日比谷交差点で背の高い大きな白人のGIがかっこよく交通整理をしている横でチビの日本の警官が申し訳なさそうに同じまねをしているところをすぎ,ヤミ市の広がる日比谷公園に行きました.....。
あたりは一面の焼け野原.....。
現地はスゴい人。すいとん 鉄コレや進駐軍放出品 鉄道グッズを求めて阪急の バラック コーナーがすごい列で,3重くらいに列が並んでいました。一体どれくらいの人が並んでおられたのでしょうか......。
一方,京阪の方は バラック 売り場ブースの台の前にはほとんど人が並んでいなくて,やはり高くて売れないのか,と思ったらずっと離れたところに列ができていて,そこに誘導されました。いったい,今は何年だ......。
実際には日比谷公園は占領中は進駐軍に接収され,Doolittle Fieldと命名されてGHQに勤務する高級将校の宿舎やテニスコートなどの遊戯施設が設けられていたようです。Doolittleって,1942年4月に日本を空襲したドーリットル中佐にちなんだものでしょう。
☆ ☆ ☆
確かに,自社ブース前にたくさん並んじゃうと,ほかの通行の人に迷惑ですしね。一度に,5人ずつ,ブース前まで誘導してきて,ブースの前は広く開けてありました。
まあ,列と言っても大したものじゃなく,せいぜい50人,という感じでした。30分ほど並んでゲットできました。あとで某ちゃんねるを見たら大体,列はそれまでの時間だったようで,昼からはマタ~リと買えたそうです。
といって,今日はその冷改車の改造記事じゃなく,従来の特急車の改造の話です。
申し訳ないんですが,通勤色はあまり興味がないので.......。将来,特急色冷改3扉が出るのではないかと考えていて,そのときは改造しようかと考えています。
さて,久しぶりに工事を再開します。
いつも通り,前照灯の点灯化改造をします。
表面実装(SMD)タイプのLEDを2個直列に配線したタイプです。かまぼこ板に両面テープを貼りつけてそれにLEDを固定してφ0.3mmの隣青銅線ではんだづけしました。
結構,面倒な配線で,はんだの熱でやはりLEDを1個,溶かしてしまいました.....。
LEDの逆耐圧は5V程度ですので,逆向きパラにシリコンDiをはんだづけします。電極の向きは▲の写真の通りです。電球(ランプ)と同様,LEDと直列にDiを入れる方が多いですが,逆耐圧の保護はパラに入れますのでご注意ください。
SMDのLEDのはんだづけは難しいので,もう1両はこうしてみました。φ3mmの電球色LEDを使います。遮光用に熱収縮チューブをかぶせます。
ただ,導光材はφ1mmのアクリル棒を使いましたが,結構堅く,工作はやりにくいです。また,うまくアクリル棒をまっすぐ前照灯のレンズに向けないと左右の明るさが違ったりして,▲のSMD LEDを使う方が簡単だと思いました。それに,LEDを挿入した場所はパンタの真下!うまくやらないとパンタの脚と干渉します。
さて,次なる問題は旧1810系からの編入車。これは旧型国電みたいに砲弾型の前照灯を使っています。これの点灯化は至難の業です。
ダミーの前照灯を外した後,KATOの485系用補助灯を取りつけます。
どういうわけか,買い忘れたのか,レンズがなく,しかたないのでTAVASAのφ1.2mm前照灯レンズを加工してはめ込みました。
φ1.0mmのアクリル棒を屋根に貫通させ,それを補助灯に埋め込みました。接着は透明エポキシです。透明なので光も通すし,便利です。
そのアクリル棒の断面を照らすようにSMDタイプのLEDを点灯させます。やはり保護用Diを逆向きパラにはんだづけしておきます。
やはりどうしても導光材を使う関係で,新1900より暗くなってしまいましたが,十分な明るさです。
さて,お次は台車の集電化改造ですが,そもそも台車をどうするのか......と言う問題があります。
☆1900系台車の謎
京阪の1900系は1960年の淀屋橋乗り入れに際して新造されたグループと,1956年に製造された,わが国初のカルダン駆動高性能電車である1810系を編入したグループがあります。
そもそも新造グループですら台車形式は大きく2つある,と言う次第で,おかげで台車は非常にややこしく,面倒です。
旧1810系は汽車会社製がKS-15,KS-51,KS-56で,KS-15は金属ばねですが,後の2つは空気ばね台車です。いずれも円筒案内式シンドラー台車です。
一方,住金製のFS310,FS317を履いたグループもあり,いずれもアルストム台車です。
鉄コレのBセットに入っている,1905は旧1815で,台車はKS-51のようです。
新造の1900系もややこしく,汽車会社のKS-70と住友のFS347です。KS-70はシンドラー台車ですが,FS347はミンデン台車で,特異な形状をしています。Bセットの1918はKS-70ですし,事業者限定で発売された2両セットは車番の表記がないですが,どちらもKS-70仕様のようです。
一応,iruchanは全部,KS-70で行こうかと思ったのですけど.....世の中いつも斜めに見ているわがままなiruchanはできれば1両くらいFS347を履かせたいと思いました。
といって,FS347は発売されていないので,クロスポイント限定で発売されているFS345が手元にあったので使いました。
この台車は阪急2800系用の台車です。同じミンデン台車なので形状が似ています。ただ,軸距は2100mmで,京阪は2300mmなので少し無理がありますが.....。
阪急2800系というと,京阪の1900系のライバルだったのですが,ご存じの通り,京阪のKS-70の乗心地がよいことから,2800系も後期のものがKS-70とほとんど同じKS-74を履いているのは有名ですね。
なお,京阪の1900系でFS347を履いているのは1914, 1915, 1916のほか,1984~1986も履いていて,意外に数は多いのです。
やはりFS345を使うとずいぶん雰囲気が変わりますね.....。
さて,集電台車ですが,いつもの通り,Tomixの旧集電板とGM車輪の組み合わせです。うまく集電板を曲げないと集電できなかったり,車輪が回転しなくなってしまうので,注意が必要です。
ようやくこれで点灯化改造は終了です。次回は動力の組み込みを行って試運転をしたいと思います。
コアレスモータ対応鉄道模型用コントローラの開発~その14・ハードウェアPFM方式の改良~ [模型]
2017年9月9日の日記
前回,第13回で今回のコアレスモータ対応コントローラの成績を発表し,まとめたつもりですが,ひとつ宿題が残っていました。
第9回で,PFM式コントローラを開発していますが,これはタイマIC555を用いたハードウェア方式です。その後,PICマイコンを用いたソフトウェア方式を開発したので,iruchanはこちらを使っています。
ソフトウェアを使うので,かなり高度な制御ができ,PIC版はデューティを10%まではPFM,それ以上はPWMとして,起動時の低いデューティ時の変化を緩やかにしてスムーズな起動とスロー走行を実現しています。
と言う次第で,PFM式コントローラはソフトウェア方式をおすすめしたいのですが,やはりPICは難しいので,ハードウェア方式の改良のご希望がありました。
確かに,PICはソフトをおぼえないといけないし,また,書き込みのためのライターの準備や,そのライターを動かすためのソフトもマスターしないといけないので結構ハードルが高いです。その分,回路は簡単になるという特長はありますが,iruchanもなかなかPICに取り組めなかったし,やはりPICは難しいと思います。
と言う次第で,再びハードウェア方式のPFMコントローラを改良したいと思います。
いくつか宿題が残っています。
まずはソフトウェア方式のものはさっきも書きましたように,PFM&PWMのミックスモードがあり,デューティ10%まではPFM,それ以降はPWMになるモードと,0~100%までフルにPFMの2つのモードがありますが,ハードウェア方式のPFMコントローラはPFMモードオンリーです。
この場合,コアレスモータ機には都合がよく,コアレスモータ機でも非常にスムーズに起動しますし,スロー運転も可能なのですが,従来のコアつきモータ搭載機の場合は起動時のつまみの位置が非常に高い位置となります。実際,コアレスモータだと時計で言えば,10時くらいの位置で起動するのに,コアつきモータ機だと2時くらいの位置になってしまいます。
これは当然と言えば当然の結果で,第4回でも書きましたとおり,コアレスモータ機は起動デューティが4%くらいなのに対し,コアつきモータ機は調子のいいものでも15%くらいですが,普通は30~50%と言ったところです。これじゃ,起動時のつまみの位置が大きく異なっちゃいます。
これをなんとかしたい,と思ってPIC版はPFM&PWMモードのミックスモードが設けてあって,コアレス機でもコアつきモータ機でもそれほどずれはありません。
しかし,このミックスモードをハードウェアで実現しようと考えると大変です。簡単な回路ではとてもできそうにありません。
と言うことで,今回はフルPFMモードと,フルPWMモードの2つのモードが同時にできるコントローラを作りたいと思いました。
つまり,コアレス機はPFMモード,コアつきモータ機はPWMモードで使用するよう,スイッチで切り替えられるようにしたいと思います。
これなら何とかなるのではないかとiruchanは考えました。
この回路については,またあとで解説します。
もう一つ,改良したいのは回路をもっと簡単にしたい,ということです。できれば,ICを1石にしたいと思います。
ちなみに,ハードウェアPFMは次のように実現しています。
可変周波数の発振器と,それをトリガとして一定幅のパルスを発生する回路を組み合わせています。
まあ,さすがに可変周波数発振器と言っても,今どきアナログ回路でやることはほとんどないですし,そもそもパルスが出力されればよいので,デジタル回路的にやればよいので,電子工学ではマルチバイブレータで発振させます。
前者は非安定マルチバイブレータ,後者は単安定マルチバイブレータという名称の回路を使えば,実現できます。
ということで,タイマIC555を2個使って実現したのが前回の報告です。
タイマICの555は非常に便利なICで,開発されたのは70年代だと思いますが,今でも大量に生産されています。本当に長寿のICだと思います。
ただ,どうしてもこれじゃICが2個になっちゃいますね。
で,最初に戻って,昔,iruchanがPWM式コントローラを作った頃の回路は555で一定周波数の三角波を発振して,コンパレータで三角波をスライスする感じで可変幅の方形波を作っていました。
もし,コンパレータのレベルを固定し,逆に555を可変周波数の発振器とすればPFMができるな,と考えたのですが.....。
これだと昔から作りなれているし,基板のパターンも変わらないのでいいか,と思ったのですが....。
これはダメなのです。一応,PFMに近い感じではあるのですが,正常なPFMじゃありません。
周波数は変わるのですが,一緒にデューティ,つまりパルス幅も変わっちゃうのです。たとえば,周波数を高くしていくと,パルス幅もどんどん小さくなっていき,永遠にデューティ100%にならなかったりするんです。だから,もし,この方式でPFMをやろうとすると,やはりコンパレータのスライスレベルも変化しないといけないのです。
そのほか,入力の直流電圧に比例した周波数の方形波を発生させる,V-FコンバータというICが世の中にはたくさんあるので,これも調べたのですがダメ。
これも一応,出力のデューティを可変できないとダメなのですが,こういう機能を持ったV-FコンバータのICがほとんどないんですね。わずかにそのような機能があるICもあるのですが,やはり周波数と一緒にデューティも変化しちゃいます。
PFMコントローラの場合,周波数とデューティは独立していて,別々に設定できるものじゃないといけませんが,世の中,そういうICはないようです。
もちろん,最近はスイッチングレギュレータのICがたくさん登場し,普通はPWM制御なのですが,低消費電力の時にPFMで動作するICが増えてきています。こちらの方が低消費電力で,ケータイなどの充電回路には適しているようです。
ところが,こういうICはPFM⇔PWMのモードは出力電流で決まるようになっていて,外部から制御できるようにはなっていませんので使えません。
う~ん,やはりうまくいきませんね~。
と言う次第でさんざんいろいろ考えたあげく,やっぱりもとの555に戻っちゃいました。やっぱ,それだけ555は優秀なICと言うことですね。
で,いろいろいくつか図面も引いて考えてみたのですが,PFMだけならいいんですけど,PFMとPWMの両方のモードで動作するコントローラと言うことだと555では問題が出てきます。
555は大変優秀なICですが,これもひとつ問題があり,周波数とデューティを独立して設定できません。
それで,従来のPFMコントローラは別々に2個のICを使っていてこの問題をクリアしたのですが,今回,PWMモードをつけようとすると,問題が出てきます。
2段目の単安定マルチバイブレータをPFMで使う場合は,たとえば,パルス幅1μsの一定パルスを出力できるように,CとRを決めればよいのですが,PWMで使う場合は,0%~100%のデューティでパルスを出力できないといけないのですが,仮にスイッチング周波数20kHzで動作させた場合,0~50μsの幅のパルスを出力させないといけません。でも,これが555はできません。
なお,素子の特性により最低パルス幅には限界があり,0.5μsくらいが限界です。ですから,PWM式の場合,完全にデューティを0%にすることはできません。なんとか,最低,1~2%くらいにできれば合格と考えています。
もっとも,PFM方式はそもそもデューティ0%というのはできないのですけど。ただ,PFMだと無限に0%に近づけることはできるので,これを逆手にとって最低デューティを1~2%くらいに設定し,つまみを0にしてもパルスが出るようにしてあり,停車中に前照灯が点灯するようにしています。
ということで,2段目の単安定マルチには555は使えません。初段の非安定マルチは20kHzのスイッチングをさせればよいだけなのでこちらは楽勝なんですけど.....。
う~ん,やっぱあかんな~。
と思ったのですが,いいことを思いつきました。
専用の単安定マルチのICを使えばよいのです。
こうすれば,約1μs~50μsのパルス幅を作ることは容易でしょう。ICはTTLなら74LS123が昔から定番ですね。トリガ信号の幅はでたらめだけど,一定の幅のパルスを作りたい,というときによく使うICです。iruchanも昔からよく使っています。まあ,今回は12Vの電源を使うので,C-MOS版の74HC123を使えば,直接12Vで動作できて便利だと思いましたが間違いで,通常,C-MOSのロジックICは電源電圧が15~20Vくらいまで使用可能ですが,74HC123は7Vまでですのでご注意ください。と言う次第で結局,74LS123用に5Vのレギュレータを使っていただければ74HC123と共用できます。
と言う次第で,初段の非安定マルチにLMC555を使い,2段目の単安定マルチに74HC123を使うことにしたいと思いました。
つまり,目標としては,
LMC555 74HC123
PFM 15kHz~600kHz 1μs固定
PWM 20kHz固定 1.5μs~50μs
と言う具合に動作させることにします。
と思って,図面を引いたのですが,ちょっと変だと思いました。
74HC123は単安定マルチバイブレータのICですが,2個組になっていて,初段に555を使う,と言うことだと1個,マルチバイブレータがあまっちゃいます。
なんかもったいないよな~。
せっかく,マルチバイブレータが2つあるのなら,1個目を非安定マルチ,2個目を単安定マルチで使えたらええのになあ,と思っちゃいました。555だって,2個組みの556というICもありますからね。これなんて豚まんかよ,と思っちゃいますけど。それは551だってば。
でも74HC123はテキサスの規格表を見てもdual monostable multivibratorとあるように,単安定マルチバイブレータ専用のICです。非安定動作については書いていません。
でも,555は両方できますし,74LS123だってたぶんできるはずだよな~,と思って調べたら同じテキサスの別の資料に,74LS123の低消費電力発振器の回路が載っていました。やた~
ということでありがたくこの回路をパクらせてもらって図面を描きました。どうもテキサスさん,ありがとうございます。
う~ん,余談ですけど,こういうところ,やはり海外メーカは親切なんですよね~。日本のメーカの規格表を見てもあまりこういう裏ワザ的なことは書いていません。いらんことすんな,ウチは責任取らへんで,と言うことなんでしょうけどね.....。
そればかりじゃなく,そもそも規格表はどこだ,と探してもなかなかホームページの中で見つからないところも多いですよね。下手すりゃ,登録しないとダウンロードできなかったり,製造中止になるとすぐにダウンロードできなくなりますし。もちろん,自社の半導体のSpiceモデルを公開しているところもほとんどありません。世の中,グローバル化が進んで,とにかくサービスをよくしないと使ってもらえない,と言う時代なのに,日本の半導体メーカはこれで大丈夫か?と思います。
Texas Instruments "Designing with the SN54/74LS123" より
なお,▲の回路は74LS123の2つのバイブレータを2つとも使っていますが,今回,単に発振すればよいので,1個目のみ使うことにします。
さてと,昔だったらここまで来たらあとはプリント基板を起こして.....,と言うところなんですけど,やはりSpiceで検証してからにしたいと思います。というのはあとで書きますけど,PFMの設計は非常に面倒なのです。Spiceで事前にテストしておく方が無難です。
Spiceでうまく動作するようなら,実際に回路を作ってもうまく動くと思いますし,失敗するリスクが減りますからね。逆に,Spiceでうまく動かないのに,実際に回路を作ったら動いた,ということは絶対にありませんので。
ところが.....。
なんたることか,Spiceには標準ロジックICのモデルがありません......orz。
iruchanが使っているフリーのLTspiceはもちろんのこと,テキサスもロジックICのSpiceモデルは提供していません。
まあ,ロジックICなんだから,LTspiceでもNOTやAND,R-Sフリップフロップなどの基本的なモデルはついているので,74LS123などはこれらのモデルを使って組み立てればいいと思いましたが,やはりちゃんと74LS123のモデルがあればきちんとシミュレーションできますね。
ということで,まずはネットで捜索します。以前,KATOのKC-1を自作したときに同じテキサスのTL494Cのモデルが必要だったので探したところ,なんとかあったのでシミュレーションができました。今回もまずはネットで探してみます。
と,やっぱりありました
米国のYahoo! GroupにLTspiceのグループがあり,そこのメンバーが74HCシリーズの標準ロジックICのLTspiceモデルを載せていました。
ただ,残念ながらこのグループのメンバーにならないとブツはゲットできません。***@yahoo.comのアドレスでなくても,自分のメールアドレスでも登録できますので,メンバーになってください。
無事にメンバー登録ができると,モデルを探すことができます。Filesのタブで74HC.ZIPというファイルと,74HC.libというファイルを探してください。前者が74HCシリーズのロジックICのシンボルファイルで,後者がそのライブラリです。この2つがあればLTspiceでシミュレーションできます。
74HC.LIBも同じように探してください。
2つのモデルファイルをゲットできたら,LTspiceがインストールされているホルダのLIBホルダに74HC.libを,また,さらにその下のSymホルダに74HC.zipを解凍してできたすべてのモデルファイルをコピーします。ごちゃごちゃになってしまうとわかりにくいので,74HCというような名前のホルダを作っておいてもOKです。
ここまでくると,74HCシリーズのICがシミュレーションできます。もちろん,74HC123もありました!!
でも......。
ここまで来たのに,実際に回路を組んで走らせてみるとエラーが出て動きません。sub-circuitがない,といって怒ってきます。
実を言うと,予想していたのであわてず,ライブラリファイルを調べてみます。これは,シンボルは表示されていますが,肝心の中の回路を記述するライブラリが読込まれていないためです。
まずはエラーが出た74HC123をクリックして,"Open Symbol" ボタンをクリックして編集します。
案の定,このModelFileという欄が空欄でした。これではライブラリを読み込みません。さきほどの¥libホルダにあるなら,単にファイル名("74HC.lib")を入力するだけです。どこか,別のホルダに入れちゃった場合はそのホルダをパスを入れて記述すればOKです。
ついでに,SpiceLineのところで,デフォルトがVcc=5となっていましたが,今回12Vで動作させるので,Vcc=12と書き直しておきます。こうすると12Vのパルスが出力できます。
こうすると無事に74HC123が使えます。
と言う次第で,LTspiceで回路を入力し,実際にシミュレーションしてみます。
74HC123は単安定マルチ専用のICでしたが,ちゃんと非安定マルチの動作もできることが確認できました。
なお,PFM式は非常に設計が面倒で,まずは一定幅のパルスをいくつにするかを決めないといけません。次に,最初のスイッチング周波数を決めます。ここから,PFMですのでどんどんパルスの数が増えて,すなわち周波数が上がっていってデューティが高くなっていくのですが,最終的にパルスの間隔が0になってデューティ100%となるように設計しないといけません。
これ,やってみるとわかるのですが,非常にめんどくさいんです。
と言う次第で,まずはスイッチング周波数20kHz,最低デューティ1%ということで,パルス幅0.5μsを目標としてやってみますが,さすがにこれは厳しく,せいぜい1μsをなんとか下回れるくらいかと思います。まあ,最近買った,KATOのC12の起動デューティが2.7%でしたから,これ以下だったらOKです。
まず,決まるのが2段目の単安定マルチの定数。C=1500pF,R=10kΩで1μsとなったのですが....。
今度は初段の非安定マルチの定数がうまくいきません。どうしてもデューティ100%にならないとか,最低デューティが1%にならないとかの問題が出てきます。
それになにより,2つのマルチバイブレータの定数をうまい具合に決められても,今度は出力段の速度が問題になり,パルス幅が太くなってしまって,最低デューティが大きくなったりしてしまいます。最低デューティは2%台にしておく必要がありますが,なかなかこのようにできません。
これでうまくいかなかったらまた最初に戻って,最初のスイッチング周波数を変えてみたり,パルス幅を変えてみたりして,と言う具合に何回も試行錯誤が必要です。
結局,最初のスイッチング周波数13kHz,パルス幅1μsでいくと,デューティ1.5%~100%と可変できることがわかりました。これでも出力段の速度でパルス幅が1.5μsくらいになることが予想されます。Spiceでのシミュレーションもそんなくらいでした。でも,実際にはそんなにうまくいかず,大変苦労することになるのですが,このときはわかっていませんでした.....。
やはり,74HC123の出力信号は非常にシャープで狭い幅のパルスが出力されますが,実際に出力されるパルスは太くなってしまいます。PPドライバを挿入してあるので,かなり狭くなっていますが....。
あとはもう,ともかく実際に作ってみて確かめるしかありません。これでもまだうまくいかなくて,設計のやり直しもあり得るんですけどね。
いつものようにプリント基板を作ります。iruchanは万能基板は失敗のもとと考えているので使いません。それに,見た目も汚いですしね.....。あまり汚いとやる気がなくなっちゃいますので。やはり,何事もそうだと思いますけど,うまく行くものは見た目もきれい,と思っています。それに,よくアンプなんかで万能基板を使って作る人がいますけど,本当に器用だな~と思いますが,iruchanはやりません。アンプだと失敗すると被害甚大ですからね.....。少しでも失敗のリスクを低くしておいた方がよいと思います。
一応,テスト版の回路図は▼の通りです。これでプリント基板を作りました。
ちょっとややこしいので,システムのブロック図みたいにわかりやすく描くと次の通りです。あわせて,▲のSpiceのシミュレーション回路もご参照ください。
▲のように74HC123に内蔵されている単安定マルチバイブレータを使ってPFM波とPWM波を作ります。可変抵抗も2個必要ですし,実際にはPFM⇔PWMと切り替えないといけないので切替SWも必要です。
なお,74HC123が入手できなかったので,同等品の74HC423を使いました。東芝の規格表を見ても,何が違うのか,まったくわかりませんでしたので,差し替え可能です。
回路は相当,工夫してあります。特に可変抵抗は本当だったら▲のブロック図のように,PFMとPWMで別々の可変抵抗になっちゃうのですが,単連の100kΩで済ませました。おまけに,ブロック図をご覧いただいたらおわかりいただけると思いますが,加減速時のボリウムの回転方向がPFMとPWMで逆なんです!!。
これは,難問です。でも,ひとつ手があって,74HC123の出力にはQじゃなくて反転Qをつかえば,逆の動きをしますので,PWM時は出力を反転Qから取ればOKです。
でも,これじゃ,切替SWは3連のものが必要です。普通ならロータリーSWになっちゃいますね。そこで,ボリウム付近の回路をかなり工夫して,PFM時とPWM時で抵抗値の変化が逆になるようにしました。これ,かなり頭をひねりました。
と言う次第で,iruchan設計の回路では切替SWもロータリーSWじゃなく,トグルSWのDPDT(双極双投)のものでOKです。今回,iruchanは本機はケースに入れず,プリント基板までで済ましてしまうつもりなので,本当だったらトグルスイッチで作らないといけないのですが,基板上にスライドスイッチを設けました。これだとテストも容易です。
なお,出力段はMOS-FETで考えてありますが,バイポーラTr(NPNダーリントン)でも使えます。バイポーラの方が速度は遅いのですが,入力容量は小さいのでドライバ段は不要ですし,また,今回,パルス幅は1.5μsと広いので,過去の経験からもバイポーラの使用は可能だと思います。むしろ,バイポーラの方が回路が簡単になるのでええやん,という気がしますが,速度の問題以外にバイポーラは発熱しますので,実際に使用するときは放熱器をつけてください。iruchanもこんな風にケースに取り付けています。MOS-FETだと1Aくらいなら放熱器は不要ですが,もし,非飽和領域でドライブしていると発熱します。テスト時に発熱していないか,確認してください。
MOS-FETの場合は入力容量が最近のものは2000pFを超えていますので,かなり大きな充放電電流が流れます。▲のシミュレーションで ━ で描いてあるのがその充放電電流です。充電時は30mAくらいですけど,放電時は10倍以上流れます。これでもまだ出力されるパルス幅はもとのゲートドライブ電圧より広くなっちゃいます.....orz。ドライバは少し大きめのTrが必要で,2SA1015/2SC1815では力不足で,1ランク上のものを使います。IC=2Aで手持ちの2SA1020と2SC2235(IC=800mA)を使いました。本当は2SA1020のコンプリは2SA2655ですけどね。
と言うことで実際にプリント基板を作ってテストしてみたのですが......。
残念なことに....まったく動きませんでした。ちゃんとSpiceでは動いたんですけどね......。
まあ,よくあることなんですが,Spiceで動いたからと言って,実際の回路が動くとは限りませんので,気を落とさず,じっくり考えてみます。
そもそも,初段の非安定マルチが動いていないようで,ピンクのLEDが点灯しません。こりゃあかん~~。
でも,よく観察してみると,電源を投入するときに,たまに点灯します。なんやこりゃ。
実は,Spiceのシミュレーション回路にもあるとおり,74HC123は内部にR-Sフリップフロップがあります。ということは,何かの入力がない限り,出力は変化しません。たまにLEDが点く,ということはノイズか何かで信号が入って,このR-Sフリップフロップがセットされるようです。
ちなみに,この状態でオシロを見てみても,OS1はDCのままで,変化しません。やはり初段の非安定マルチは動作していないようです。
ということで再び東芝の74HC123の規格表を見て考えます。
ようやく,原因がわかりました
▲の信号タイミング図をハッタとにらみつけていたら気がつきました。
B入力がlowとなって,highになる立ち上がりがトリガとなってQ出力が反転し,コンデンサが充電されます。
ということは,B入力が今はhighになったままで,一度もQ出力が反転しないから非安定マルチが動作しないわけです。それで,B入力を一度,一瞬でいいからlowにしてやればええんとちゃうか,と思いました。
と言う次第で,B入力にコンデンサをかましてやって,起動時はコンデンサなので電位は0になりますので,B入力をlowにすることができるはずです。
答えは備後落合じゃなかった,備後庄原でもないし.....あ,ビンゴでした。
これで,ようやくピンクのLEDも点灯するようになり,なんとか動作するようになりました。件のコンデンサは#2. 4ピンに入っているC3 0.01μFです。これがないと動作しません。
ただ,まだここからも大変でした。
パルス幅と周波数が全然違います。想定ではパルス幅1.5μs,周波数13kHzくらいだったんですけどね.....。
大体,パルス幅は倍,周波数は半分と言ったところで,6kHzくらいになっています。これじゃ,音が聞こえてしまうし,面白くありません。
さんざん,CとRの値を変更し,それぞれ470pFと100kΩくらいでパルス幅1μs,周波数20kHzにして,デューティ2%~100%とすることができるようになりました。これ,丸1週間かかっちゃいました。やれやれ......。
あとはオシロの写真を載せておきます。
最低デューティは2.7%以下にする必要がありますが,これなら大丈夫です。
PFMはパルス幅一定で,数が増えてデューティが増加していきます。
最後はきれいな直流にならず,このように高周波が乗っていますが,ほぼ直流といっていいと思います。
今回はPWMモード時でも最低デューティは0%とせず,少しパルスが出るようにしました。こうしておくと,つまみを完全に0にしてもパルスが少し出ているので,前照灯が明るく点くはずです。
PWMでは,パルス幅が広くなってデューティが増えていくので,正常な動作です。パルスの周波数は変わりません。すこし,おしりの部分が斜めになっているのは出力に取り付けたスナバ回路(100Ω+0.01μF)のせいです。これでモータのインダクタンス分による逆起電力を小さくできます。
う~ん,でも,方形波の立ち上がりのところにリンギングが出ているのが気になりますね~。アンプならアウト!ですけど.....。ゲートに入っている10Ωを大きくすれば消えるんですが,そうすると応答速度が悪くなります。
残念ながら,最大デューティは100%となりませんでしたが,ほぼ100%と言っていいと思います。
ようやくこれでハードウェア版のPFMコントローラができました。PWMモードにも切り替えられますので,コアレスモータ搭載機を運転するときはPFM,通常のコアつきモータ搭載機を運転するときはPWMモードで運転するとよいと思います。
なお,走行中にPFM⇔PWMの切り替えをしないでください。特に,PFM→PWMの切り替えをすると,PFMの方がデューティが低いので,PWMに切り替えると急加速してお客様がケガをしますのでご注意ください。
先日購入したKATOのC12です。起動デューティは2.7%でしたから,非常に厳しいですが,つまみを0にしたら停止していました。前照灯はさすがにこんなに低いデューティでは明るく点灯しません。でも,起動は非常にスムーズですし,やはりPFMコントローラは低速に非常に強いです。
2018年11月11日 追記
回路図にミスがありました。74HC423の#9ピンは接地するのが正しいと思います。LTspiceのシミュレーションでは接地してあります。以前の回路図はオープンになっていました。iruchanはそのまま作って,正常に動作していますが,OSCのLEDが点灯しない場合(初段の発振回路が動作していない)こともあるようですので,接地してください。回路図は修正しておきました。
KATO C12入線 [模型]
2017年8月13日の日記
EF10 24関門タイプと一緒にC12も買っちゃいました!!
C12はとても好きな機関車で,細身のボイラーに明治時代の英国製蒸機みたいなすっと背の高い煙突を持ち,とても戦時設計とは思えない優美さがあって,好きな機関車です。以前,マイクロエースから出て,こちらも買っています。マイクロエースのは炭庫側の前照灯が点灯しない仕様だったので,こちらも改造して点灯するようにしました。
実機は1932年から登場し,40年まで作られていますが,戦後の1947年にも製造されているのに驚きます。まだ工業の復興が進まず,とりあえず持っている図面や資材で作った,と言うところなのでしょう。
もとより簡易線区向けで,そんなに牽引定数は稼げませんが,小型で小回りの利く車体は重宝されたことでしょう。実際,九州から北海道まで,日本中で使われていますし,台湾や樺太に渡ったものもいます。蛇足ですが,樺太は日本が作ったので狭軌ですが,現在,ロシア標準のゲージに改軌中です。いずれ日本の遺物も消えていくことでしょう。
さて,KATOからは今年3月に発売されています。評判の高い,コアレスモータを搭載し,非常にスムーズに走行するのが驚きです。
EF10 24と一緒に改造します。
やはり,オリジナルの状態では機関車が停止しているときに前照灯を点灯させておくことができません。もちろん,国鉄時代の話なので,昼間は点灯しないのが当たり前なんですけど,やはり模型の場合は点灯しないのは不満が残ります。
そこで,前照灯基板を改造します。
といって,普通の機関車だと前照灯のLEDは煙突付近に設置されていると思います。
ところが,このKATOのC12はキャブの屋根に設置されています。
ある意味,ボディをばらさなくて済むので簡単なんですけど,やはりこんなところに設置してあるのか,とびっくりしちゃいます。さすがにコアレスモータを搭載しているとは言っても,コアレスモータは細長いので,前照灯を組み込むにはスペースがここしかなかったのでしょう。
キャブを外すだけなので,簡単です。キャブの下部につまようじを入れて,キャブを少し,クニ,クニとひねってやると外れます。発電機の配管が屋根に刺さっていますので,ご注意ください。発電機は最初に取り外しておいた方がよいかもしれません。炭庫部分も一緒に外れちゃいますが,組み立てるときはまずはキャブと炭庫を組み立ててからでないと組み付けできませんのでご注意ください。
この積層セラミックコンデンサを撤去すれば,一応,常点灯にも対応し,停車中に前照灯を光らせることができます。
以下はあまり意味がありません。きわめて細かい工作が必要な割にそんなに効果はないので,ほとんどの人にはお勧めしません。
一応,スナバ回路の設置を考えますが,もとより後ろ向きには走らせないつもりですし,また,蒸機なので炭庫側のライトがちらちら点灯してもそんなに気になりませんので,自信のない方はしなくても十分だと思います。
あまりにも基板が小さいので,スナバ回路を設置しようにもスペースがありません。
なんとか,2つのLEDの間にスペースがあるので,そこにチップのコンデンサと抵抗をはめ込みました。抵抗値は22Ωで,コンデンサは0.1μFとしました。さすがに前後の部分が長さが足りないのでラッピングワイヤで追加しました。ハンダ付けがやりにくいので,レールの文鎮に両面テープを貼って基板を固定しています。
基板の "べろ" の部分はウェイトに挟まれるので,あまりここにはんだが流れ込んじゃうと今度は基板が挟み込めなくなりますのでご注意ください。iruchanも結局,やすりで修正しました。
そのほか,▲のキャブの屋根部分にいろんなリブがあって,当たりますのでルーターで削りました。
むしろ,こんなに厄介だったら普通のアキシャルリードタイプのCとRを使って,基板後方に飛び出す形式でもよかったと思います。そんなに見えるところじゃありませんしね。
配線が終わったら,9Vの乾電池で点灯テストです。
さて,ようやくスナバ回路付の基板を組み込んだら実機でテストします。
ところが.......。
最新鋭のPFMコントローラではつまみを0に絞っても機関車が動いちゃいます
本機は最低デューティ3.2%で作ってあるので,非常に低いデューティのパルスを出力できるのですが,恐ろしいことにこのC12はこのデューティでも動いちゃうんです
しかたないので,KATOのKC-1を現代によみがえらせた自作のKC-1改コントローラを引っ張り出してきました。
さすがに,本機は最低デューティ2.45%でしたのでC12は止まったままでした。
KATOのD51だと最低起動デューティはこのブログでもご報告しましたとおり,4.6%だったのでよかったのですが,このC12はさらに低いデューティで起動してしまうようです。たぶん,D51に比べて質量も小さいので,起動抵抗も小さく,動いちゃうのでしょう。貨車を連結して起動抵抗が大きければ止まっているんでしょうけど......。でも,やはり単機の時でも止まっていないといけませんね。
頭にきてデジタルストレージオシロで起動時のデューティを調べてみると2.7%でした。これ以下のデューティのパルスを出力させないと,KATOのC12は止まらないようです。自作のKC-1改だとこれ以下のパルスが出力できるので,C12でも使用可能なわけです。
と,言うことで,今まで作ったコアレスモータ対応PWMコントローラの最低デューティをもう少し低くしないといけないようです。
ようやく停止しました。ホッ。
テストしたらC12も止まっていますので,大丈夫です。ソフトはそれぞれの▲のリンクをクリックしてください。
ただ,さすがに2.7%と言うような低いデューティのパルスだと,前照灯は明るく光りません。▲の写真でも暗いです。
まあ,C12はキャブの屋根にLEDが搭載されていることもあり,そこから導光材で光を引っ張ってくるのでさらに光量が減ってしまうのでしょうけど,やはりモータの性能がよすぎることが問題だと思います。たとえ,EF10 24のような普通の機関車の場合でも2.7%というデューティでは暗いです。
KATOのホームページのC12は前照灯が明るく点灯していますが,そもそもKATOの機関車は停車中には前照灯は点灯しないし,iruchanのスナバ回路をつける改造をしてもあまり明るくは点灯しないので,このホームページの写真はおそらく,モータの回路を切って,モータが回転しないようして撮影したのでしょう。こんなに明るく光ることはありません。
ナンバーは42・46・51・67号と付属している中で,今は某JRの子会社になっちゃった某車輌製造会社製なのでパスしたかったのですが,遠軽機関庫に配属されていた42号にしました。普段は湧網線や名寄本線で活躍したんでしょうけど,常紋にも行ったかもしれません。46号は関東,51号は関西,67号は長野で活躍し,今は茅野駅前に保存されているようです。以上は機関車データベースを参考にさせていただきました。ありがとうございます。
ただ,それにしてもコアレスモータの性能には驚かされますが,今回のC12も非常に走行がスムーズで驚きます。また,ディテールも大変なもので,キャブ内の装飾まで施されているのには驚きます。炭庫側の石炭取出口なんかも表現されていて,これなんか分解しないとわからないのですが,驚きました。
KATO EF10 24関門タイプ入線 [模型]
2017年8月13日の日記
6月に発売されたKATOのEF10関門タイプが届きました!
旧型電機はとても好きだし,何よりステンレスボディがとてもかっこよくて,昔,マイクロエースから出た24号機は予約して買っています。これは瞬殺だったらしく,今でもオークションで高値で取引されていますね。
KATOからも茶色の3次形が2014年に出たときにひょっとしたら出るのでは,と思っていましたのでとてもうれしかったです。
ただ,何より正確な24号機をモデル化したものじゃなく,細かいところに違いがあるのであくまでもタイプ,ということですし,ブランドも通常のKATOブランドじゃなく,ラウンドハウスブランドになっています。
どうも,前照灯の設置位置やデッキの手すりの色や避雷器の有無など,細かいところで実車と異なるようですが,細かいことは全く気にしない(というよりそろそろ老眼で細かいところが見えない.....orz)iruchanは放置です。
さて,例によって停車中に前照灯が点灯しないのが気に入らないので,常点灯化改造をします。コンデンサを撤去した上,iruchanが考案したスナバ回路を設置します。改造自体は前回のKATOの3次形と同じですのでこちらもご参照ください。
ボディの分解は面倒ですが,▼の写真にある付近のガラスにツメがありますので,その部分を狙ってボディとの隙間につまようじを差し込んでボディを外します。
さて,お次は最新鋭のコアレスモータ対応PFM式鉄道模型用コントローラでテストします。
ただ.....。
iruchanはこのところ,自作のコントローラの出力部分には必ずスナバ回路を入れることにしています。定数的には100Ω+0.01μFとあまり強力なものじゃないのですが,これを入れることによってコントローラ自身の出力波形がすこし "なまって" 立ち下がりが緩くなります。こうなるとモータのインダクタンス分で発生する逆起電力が小さくなるため,早い話,車両側にスナバ回路を搭載しなくてもよいのでは,と思っています。
コンデンサを撤去しただけの状態ですが,後ろ側は点灯しません。
実際,今回テストしてみると予想どおり,ほとんど反対側の前照灯が点灯しません。今までの普通のPWM式コントローラだと,コンデンサを撤去しただけの状態だとこんな風に両方とも全開!という感じで点灯しちゃうんですけどね......。
ただ,テストして走らせてみると,確かに後ろ側の前照灯が点灯しないのですが,全く点灯しないわけじゃなく,レールのギャップ部分などではわずかにちらちらと点灯しちゃいます。
まあ,普通のPWM式コントローラの出力にはスナバ回路はついているわけじゃありませんし,運転会や貸しレなどで運転するときに使うコントローラにはないわけなので,やはり車両にも搭載しておこう,と思いました。
また,電気的にもスナバ回路というものはインダクタンスの直近に設置するもので,離れてしまうと今度は回路中のインダクタンスが邪魔するため効果が下がります。ですから,やはり車両に搭載するのがよいと思いますが,コントローラに搭載しておくだけでもかなり効果があるので,コントローラを自作される方は出力部分につけておくとよいと思います。
ただ,今回,スナバ回路の定数はちょっと悩んじゃいました。
最新のPFMコントローラは周波数が高く,PICを使ったものでは最高100kHz,タイマIC LMC555を使ったハードウェア版では500kHzくらいにもなります。スナバ回路はモータのインダクタンスや抵抗分などにより最適な値が変わりますが,コントローラの周波数にも依存するので,最適値は実験で決めないといけません。
と言う次第で,ボディを載せない状態でテストします。
今回は33Ω+0.1μFにしました。これでも少しちらつくのですが,無視できる範囲だと思います。なお,抵抗値は小さい方が効果が高いですが,その分損失が増えますので,できる限り大きい値の方が無難です。
また,いつも思うんですけど,KATOの前照灯基板に搭載されている電流制限抵抗は560Ωで,これはちょっとLEDの最大定格ギリギリです。場合によっては明るすぎると思います。今回も基板だけの状態だと明るすぎ。直視できないほどまぶしいです。
ちょっと心配になったので2.2kΩにしましたが,それじゃ,ちょっと暗かったので,少し値を戻して,1kΩにしました。
ここまで来ればあとは普通にボディを載せてナンバーつけてナックルカプラーに交換して終わりです。
ナンバーは24・27・35・37・41がステンレスボディです。模型には21・22・23・24が付属していましたが,24しか使えません。ご注意ください。また,ステンレスボディと言っても戦後になって,外板だけ張り替えたもので,骨組みは鉄のままです。こういう構造だと鉄との接続部で電位差が生じますので,いくらステンレスとは言え腐食するので,24号機以外は茶色に塗られていました。24号機だけステンレス無塗装のままだったのは海水による腐食の影響を見るためだったのでしょう。
走行性能は言うまでもなく,ディテールも素晴らしいKATOの電機でした。