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ソニーFM/ラジオNIKKEI/AMポータブルラジオ ICF-EX5の修理 [ラジオ]

2019年12月1日の日記

ICF-EX5.jpg ソニーICF-EX5

  いまはアナログTVが放送終了になったので,mk2となっています。

どうにも寒くなりましたね~。皆様お身体ご自愛ください。

さて,iruchanはどうにもここのところ忙しく,なかなか趣味に割く時間ができませんが,今日はちょっとラジオの修理をしました。

高感度で有名なソニーの多バンドラジオICF-EX5の修理です。

このラジオ,とても人気がありますね。何より感度がよいし,もうひとつ,大きな特長として,同期検波が可能なラジオなのです。

同期検波って何? って人も多いかと思います。確かに,この言葉を知っている人はラジオマニアでもごく限られた人だけでしょうし,知っているのはアマチュア無線に詳しい人だけでしょう。

AMラジオは,ご存じのとおり,もちろん,振幅変調なのですが,その中でも全搬送波両側波帯変調方式であり,それこそ最初の音声放送である,AMラジオの中核技術であるわけです。

簡単に,ダイオード(Di)1個で検波(復調)できるのが特長ですが,帯域幅が広いため電波の有効活用ができないことと,ノイズが多く,混信も多いのが欠点です。短波で用いられるSSB(搬送波抑圧単側波帯変調方式)だと帯域幅は半分で済みます。昔は短波も全搬送波両側波帯方式だったのですが,2015年から全面的にSSBに移行することとなっていて,受信機も専用のものでないと受信できなくなるので大騒ぎでしたが,取りやめとなり,いずれデジタル放送へ移行することとなっています。

中波はもちろん,全搬送波両側波帯なのですが,この場合,簡単にDi1個で検波(エンベロープ検波)できる代わり,帯域幅全部の周波数が検波されて音声になる関係で,どうしてもノイズが増えます。また,混信があるとそれも検波してしまうため,混信は防げません。

それに反し,同期検波は,受信機内部で入力周波数に完全に周波数,位相が一致した信号(基準搬送波)を作り,それと積を取ることによって音声信号を取り出そう,と言うものです。高校で習う,三角関数の積→和の公式からわかるとおり,入力周波数に一致した成分とその和の周波数成分に分けることができ,LPFをつかって前者のみ取り出すと音声が検波されます。ついでに,検波する信号は上側側波帯(USB)と下側側波帯(LSB)を選択できます。もちろん,USBはuniversal serial busの略じゃなく,upper side bandの略です。

同期検波は目的とする信号と異なる周波数の信号は出力されないのはもちろん,仮に同じ周波数でも位相がずれていれば出力されません。こうして混信が防げるわけですね。ノイズについても,完全に入力周波数の位相と一致した部分にノイズが乗っていなければ,出てきません。

さらに,同期検波だとA級動作の2個のTrが乗算動作をすることにより検波するので,エンベロープ検波の場合はDiがもつ非直線性がないため,ひずみが少ない,と言うメリットもあります。確かに,同期検波のラジオは非常にHiFiです。

とはいえ,同期検波は内部で基準搬送波を作るのが難しく,PLL(位相同期ループ)技術が必要で,基本的にはICがないとできません。昔はカラーTVで色信号の復調用に同期検波が必要で,APC(自動位相制御)というPLLがカラー検波回路に使われていました。ドットシーケンシャルのカラーTVを開発したのは米RCAで,1953年のことですが,真空管しかない時代ですから大変で,iruchanも経験がありますけど,真空管時代のカラーTVというのは非常にご機嫌が悪く,うっかりすると真っ赤になったり,白黒TVになったりして,きれいなカラー映像を見るのは難しかった.....んですけど,そんなこと覚えている人はもう少ないでしょうね。

ラジオでも同じで,同期検波を搭載したラジオ,というのはほとんどない上,あっても結構値段が高いのです。短波は混信が多いので,アマチュア無線家をはじめとして,同期検波式の受信機が必要とされるのですが,これも高級機でないとついていない機能です。

その点,ICF-EX5は同期検波がついていて,とてもいいラジオです。USB,LSBの選択もできて,どちらかノイズの少ない方で聞く,なんて芸当ができるのは素晴らしいです。

ICF-EX5-1.jpgSYNCが同期検波です。NORMALはエンベロープ検波です。

 上側側帯波と下側側帯波の選択できます。どちらかノイズの少ない方で聴けます。

ところで,iruchanがこのラジオを買ったのは,実は親父が病気で入院し,割に親父はラジオが好きなので,病室でラジオを聴こうとしたら,普通のラジオが使えない,と言ったためです。

病室に行ってみてびっくり。確かに普通のラジオは聴けません。ダイヤルのすべての位置でものすごいノイズで,まったく放送なんて聴けません。FMは大丈夫なんですが,さすがに親父も爺なので,AM以外は聴いていません。どうやら,病室は当然鉄筋コンクリート構造なので電波が入りにくい上,なにか,ものすごいノイズ源があるようです。

仕方ないな~[雨][雨][雨]

でも,iruchanはこのラジオなら大丈夫,と思いました。

速攻でネットで発注,このラジオを病室に持っていったら見事! ちゃんとNHKなどのAMラジオがいい音で聴けるではないですか[晴れ][晴れ][晴れ]

さすがに同期検波を搭載したラジオなら大丈夫では,と思っていましたが,実際に体験してみて,iruchanもびっくり。さすがです。また,▲の切替SWでNORMALにするとやはりまったく放送は聞こえませんでした。

と言う次第で,やはりAMラジオは同期検波が必要だし,実際,米国ではFCCが1980年代にAMステレオを導入するついでに,すべてのAMラジオに同期検波機能を義務づけようとしたらしいのですが,これがうまくいっていたら,という気がします。

いまだに,高性能のICラジオでも検波はエンベロープ検波方式で,ノイズに弱いのは残念です。ICだと,内部にDiを作るのが面倒なので,Trで検波しているものが多いのですが,結局は同じことです。

ただ,親父も無事に退院したのはいいのですが.....。

それからがまずい。

久しぶりに家で聴こうと,この前,スイッチを入れたら臭いがして煙が出てきたと思ったら,ラジオが聴けなくなった,と言うではないですか!!

一体,何やっているんだと思いましたが,何をやったか,事情聴取してみると,家で聴こうと,ACアダプタをつかったらしいのです。

すぐに原因判明

おそらく,親父は適当に手近にあった,どこのかわからないACアダプタを突っ込んだため,壊れたのだと思います。

もちろん,こんなこと絶対にやってはいけません。実際,ラジオの説明書に,"本機専用のACアダプタをお使いください" と書いてあるのはダテじゃないんです。必ず,使用する前にアダプタの極性と出力電圧を確認しませう。電圧については,テスターで実際に測ってください。古いアダプタは表示されている電圧よりかなり高い電圧を出力するものがあります。ICF-5900など,貴重なBCLラジオを入手したけれど,ACアダプタがないからと手持ちのACアダプタを突っ込んで壊してしまう人がいますが,ACアダプタに6Vと書いてあっても,9Vくらいの電圧が出るものがありますのでご注意ください。昔のトランス式のACアダプタは非安定化電源のタイプが多く,こういうことが多いです。といって,現在のスイッチング電源タイプはAMラジオではノイズが多くて使えません。

そもそも,このラジオは電池で聴くことができるので,何で電池で聴かんかったんや,という気がするのですが.....。

特に,このラジオは原設計は1985年で,それから30年以上も販売されている長寿命のラジオなのですが,ソニーの古いラジオはセンターがマイナスのアダプタが多いのです。

ICF-EX5-6.jpg ソニーの80年代のラジオはセンターマイナスです。

外径はφ5.5mmでごく普通のACアダプタなのですが,極性は各社バラバラで,ソニーの場合はセンターピンがマイナスなのです。松下など,他社はプラスの場合が多く,特に最近のものは普通はプラスです。

何でこうなのか,よくわかりませんが,ソニーのはセンターピンがマイナスのものが多いのでご注意ください。

こういう問題があったため,1989年にEIAJが極性統一プラグというのを提案して,現在は日本製の機器はほぼこのプラグを使用しています。このプラグはセンタープラスですが,残念ながら,もはや日本の電機メーカは世界市場から全面撤退中( "転進" ではありません)なので,昔のように世界標準となることはないでしょう......orz。実際,中華製品は昔ながらのφ5.5mmのプラグを使っています。

しかし,iruchanはピンときました。おそらく,親父はセンターがプラスのACアダプタを突っ込んだため,直後の電解コンデンサがショートして,パンクしたのだと思いました。それなら修理は簡単だと思います。

幸い,電池を入れるとラジオは機能しているので,内部のICなどは壊れていないようです。ホッ。

早速裏蓋を開けて調べてみます。

ICF-EX5-2.jpg 外部アンテナのねじも外します。

 ほかに,チューニングツマミを外すとそこにツメがあり,押してやるとフタが外れます。

ソニーのラジオはいろいろ言われますけど,修理がやりにくいものが多く,困るのですが,本機は割に簡単で,裏蓋も簡単に外れました。

ICF-EX5-3.jpg 立派なバーアンテナです。

 30cmくらいのバーアンテナが使われています。どおりで感度がいいわけです[晴れ]

ただ,外部アンテナのねじが裏蓋の固定も兼ねているので,このねじも外してください。また,ソニーの場合はしょっちゅうですけど,たいてい,電池ボックスの中にもねじが隠れています。本機もそうでした。

さて,なんとか裏蓋を外して調べてみると.....。

なんと,ACアダプタの直後に入っていると思った電解コンデンサはなく,これがパンクして故障したわけではなさそうです。ソニーのラジオはACアダプタと電池が単にパラに配線されているだけで,特にフィルタ用の電解コンデンサなどは接続されていないようです。となると,原因は別のところです。

う~~~んと......。

よく見てみると,ありました。

チップのTrが1個,真っ黒焦げになって,基板も周囲が焦げているではないですか。あちゃ~~......[雨]

▲の写真で,〇 の部分です。

ICF-EX5-4.jpg ご臨終? です[雨][雨]

原因はこれですね。逆極性の電圧がかかって,Trが1個,焼死してしまったようです。基板上ではQ19の表記があります。ところが,実はあとで,このTrは生きていたことがわかったんですけどね......。真っ黒焦げなんですけど。けなげにも,全身大やけどを負いながら仕事をしていたようです。さすがは日本製。キグチコヘイは死んでもラッパを手から離しませんでしたとさ......。

あとは簡単,おそらく,故障したのはこのTr1個だけで,これを取り替えれば正常に戻るはずです......が,表面実装のTrのため,そもそも型番が不明です。

これ,困りますよね~~[雨][雨]

TO-92などのリードタイプのTrだと表面にC1815なんて書いてあるので,すぐに型番が判明しますが,チップタイプの場合,表面にLやAなどの意味不明なアルファベットが1個書いてあるだけで,数字もほとんど書いていません。型番が書いてあることなんてなく,一体,このTrがなんてやつなのか,まったくわかりません。

この場合,セットメーカの部品表や回路図がない限り,Trの型番は不明です。

せめて,iruchanはPNPかNPNか,それだけでもわかれば何とかなるんですけど.....。別に,電源部のTrだし,増幅をしているわけじゃなく,単にon,off動作をしているだけでしょうから,最大定格さえ守れば,PNPかNPNか間違えなければ,何でもいいはずです。

ともかく真っ黒焦げになったTrを外しました。パッケージがぽろっと割れて外れたりして,完全に死んでいる,と思いました。

ところが,どうやらこのTr,生きていたらしく,このTrを外したら電池でもラジオは動作しなくなりました。

外したTrを調べれば,PNPか,NPNかくらい,すぐにわかったのですけれど....もはや捨てちゃったあとなので,もうわかりません[雨]

とりあえずサービスマニュアルでもネットに転がっていないかと考えましたが......これは望み薄です。

というのもICF-EX5は国内専用モデルなので,こういう場合,ネット上でサービスマニュアルを探すのは絶望的です。海外に輸出したモデルだと,米国などはさすがに自社でサービス網を構築するのは無理なので,外注せざるを得ないのですが,そう言う外注先に配布したサービスマニュアルが現在,ネット上で入手可能だったりするのですが,国内専用モデルだとそれはありません。

iruchanも散々,探しましたが,本機のサービスマニュアルは入手できませんでした。

とりあえず,基板をたどっていくと,エミッタに+Vccがかかるようになっているので,件のQ19はPNPだろう,という推定ができました。

ということで,とりあえず,手持ちの2SA1586(東芝)でテストしてみます。もし,NPNだったら,このTrは壊れるかもしれませんが,まあ,そうなってもほかに影響が出なければOKだと思います。

結果はビンゴ!でした。一発でラジオから音が出ました。Trの発熱もなく,何時間も連続運転しても大丈夫のようなので修理完了だと思います。

ただ,あとで別ルートでこのQ19を調べたら,オリジナルは2SB815(三洋)であることがわかりました。やはりPNPでした[晴れ]

VCEOは15Vしかありませんが,意外にIC=0.7A,PC=0.2Wと大きなTrです。2SA1586だと50V,150mAなので,ちょっと小さいです。

まあ,150mAでも十分大きな値だし,そもそも電池式のセットで100mA以上も電流が流れる,と言う設計はしないはずなので,2SA1586でも十分かと,思っています。本来はもとのTrより小さい定格のTrを使う,というのは御法度ですけどね.....(^^;)。

おまけに2SA1586だとパッケージがSOT-323なので小さすぎます。基板のパターンに合いません。

今なら,秋月でも売っている,2SA1313(50V,500mA)がSOT-346と一回り大きいのでいいと思います。

さて,これで修理完了,なんですけど......。

ついでに,せっかくだから、もうちょっと工事しておこうと思います。

そもそも,ソニーのACアダプタがセンターマイナスだからこういう間違いが起こるので,センタープラスのものでも使えるよう,改造しておきたいと思います。

この前,KATOの鉄道模型用コントローラKC-1をACアダプタ仕様に改造したときにやりましたけど,逆極性のアダプタをつないでも壊れないよう,Diを1個,挿入しておくのも手ですが,この場合は,逆極性の場合は本体が壊れないようにするだけで,使用できません。ソニーも,せめてこのDi1個をアダプタの端子に直列に入れておいてくれれば,壊れずに済んだと思います。

ついでに,ACアダプタ端子は電池とパラになっているだけ,と言うのもいただけません。普通,こういう場合,電池の方だけに直列にDiを1個入れます。こうしておかないと,電池が入ったまま,ACアダプタを挿すと,電池に電流が流れて危険です。一応,説明書には "電池とACアダプタを併用しないでください" とどこのメーカも書いているんですけど,ユーザはうっかりやっちゃうものなので,Diを1個,入れておいてほしい,と思います。

今回は,センタープラスのACアダプタを使った場合でも使えるようにします。

具体的には,ACアダプタの出力に,ブリッジDiを挿入しておけば,どちらの極性のアダプタでも使用できます。

といって,電池式のラジオにACアダプタを使う場合,当然,電池の場合と同じ電圧でないとまずいので,本機も6Vのアダプタが指定されています。

こういう場合,ブリッジDiを挿入すると,往復で2回,Diを通りますから,シリコンDiだと順方向電圧降下のため,1.2Vも低下します。

そこで,順方向電圧降下の小さいショットキーDiを使います。ショットキーだと電圧降下は1個で0.2V程度なので,ブリッジDiだと,0.4V程度の電圧降下で済みます。ゲルマDiでもいいですけど,今時売っていませんしね.....。1N60なども最近はチップはショットキーになっています。

ICF-EX5-5.jpg 工事完了です[晴れ]

部分でパターンをカットし,そこにチップのDiとアキシャルリードタイプのDiでブリッジを構成しました。使用したチップのDiは秋月で売っている,東芝のU1GWJ44とリードタイプは日本インターの11EQS04で,どちらも定格40V,1Aです。残念ながら,ブリッジDiを挿入するようにパターンが考えられていないので,表面実装のDiだけでは無理で、▲のような感じで配線しました。

ICF-EX5-7.jpg 順方向電圧です

ハンダ付けが完了したら,テスターの導通テスト or DiテストモードでDiが接続しているはずのパターン同士で導通を調べます。この東芝のチップDiは順方向電圧はかなり小さいです。

これでなんとか修理完了です。ACアダプタはどちらの極性のものでも使えます。親父も喜んでくれるでせう。

        ☆          ☆          ☆

さて,無事に動作したので,改めて音を聴いてみると,何よりSPが大きいだけあって,低音も十分だし,センターコーンがアルミのせいか,高音も伸びていて,とても音がよいです。肝心のAMラジオも,ちょっとオーバーですけど,まるでFMかと思うくらい,ノイズも少なく,クリアーな音質で満足です。また,FMもAMもやはり非常に感度がよく,と言ってAMの場合は高感度だとノイズも多くて困るのですが,本機はそのようなことはなく,とてもいいラジオだと思いました。


2019年12月4日追記

やっぱり,取り替えたTrの定格が少し小さいのが気になるので,大きいのと取り替えました。また,Diを1個,追加して安全性を高めておこうと思います。

故障した,Q19に2SA1586を使いましたが,IC=150mAと小さいので,2SA1313と取り替えました。VCEO=50V,IC=500mAです。これでもまだオリジナルの2SB815より小さいですが,問題ないでしょう。実を言うと,秋月で2SA1298(VCEO=30V,IC=800mA)も売っているんですけど,こちらは高いので......。

2SA1586はサイズも小さくて,プリントパターンと合っていませんでしたしね。2SA13132SB815と同じサイズでぴったりです。

2SA1313(50V, 500mA).jpg 

  故障したQ19を2SA1313と交換しました。Q18はオリジナルです。

ただ,それにしてもこんな小さなチップのTrなのに,500mAも流せるなんて,よく使う,TO-92の2SA1015/2SC1815でも50mAなのですから,技術の進歩に驚きます。

ついでに,電池とACアダプタの接続部分に,電池側だけDiを1個挿入しました。逆流阻止Diです。

こうしておかずに,ソニーのオリジナルのままだと,ACアダプタと電池が完全にパラに配線されているので,電池が消耗して電圧が低下してくるとACアダプタから電池に電流が流れて電池が発熱します。だから,"ACアダプタを使用するときは電池を抜いてください" とACアダプタと電池を使う,どんな製品の説明書にも書いてあるんですけど,説明書をちゃんと読んで,こんなこと守っている人はいないと思います。iruchanもうっかり電池挿したまま,こんなことやっちゃうので,安全のため,やっておきました。

ICF-EX5-8.jpg 電池側にDi()を追加しました。

センタープラスのACアダプタを挿しても無事に動作することを確認して修理完了です。ご覧になっていただき,ありがとうございました。


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遠距離受信用鉱石ラジオの製作~その2~ [ラジオ]

2019年5月25日の日記

さて,前回,ちょっとご紹介しましたが,iruchanは何を今,作っているかというと.....こんなものを作っています。

ハワイ在住のMike Tuggle氏が設計・製作したLyonodyne 17という遠距離受信用のゲルマニウム・ラジオです。

バスケットコイルがとても美しく,最初に見たのは,10年ほど前,iruchanも入っている,米Antique Wireless Association(AWA)の会報に載ったときです。なんて美しいんだろう,と思いました。

小林健二氏の "ぼくらの鉱石ラジオ" というすばらしい本がありますね。カラーの写真を見ても,氏の鉱石ラジオはとても美しく,魅了されますが,ちょっと工作レベルが高すぎ,素人には難しい感じです。でも,Lyonodyne17なら何とかなりそう,と思いました。なにより,遠距離受信用,とうたっていることからもわかるとおり,かなりの高感度ラジオで,米国でよくやってる,遠距離受信コンテストで2位になったそうです。

これを作ってやろう,と思った人は世界中にいるようで,結構,WEB上にも作った人がいるようです。

と言う次第で,iruchanもこれを10年ほど前から部品を集めて作っています。

なんで,10年もかかんだよ,と思われちゃいそうですけど.......実はこのラジオ,部品集めが大変なのです。

なお,Tuggle氏は感度最優先で最新の設計と称していて,鉱石検波器は使っていません。そういう意味で,本機を鉱石ラジオというのは誤りなのですが,英語ではGermanium radioとは言いません。普通はCrystal RadioまたはCrystal Setという用語を使います。なんか,ゲルマニウム・ラジオとか,ゲルマ・ラジオというのは日本だけ,という気がします。iruchanは方鉛鉱なんかの鉱石検波器もテストしてみるつもりなので,鉱石ラジオと称します。それに,ゲルマニウム・ダイオード・ラジオというのだったらわかりますが,ゲルマニウム・ラジオってなんか変,という気がします。でも,鉱石ラジオ,と言うのも変ですね~。鉱石検波器ラジオと言うべきでしょう。そういや,電気機関車でシリコン整流器って変じゃない,と言う人がいました.....(^^;)。

☆リッツ線について

なにより,印象的なバスケットコイルは昔からリッツ線を使うのが高級品で,特に1920年代,ラジオ放送が始まったばかりの頃,やはり真空管式は高いので,鉱石ラジオで我慢した人が多かったのですが,それだと感度が足りないので,リッツ線でコイルを作ったものが多いのです。と言って,いくら真空管式より安いと言っても,リッツ線を使ったものは高級品だったと思います。実際,後で書きますけど,リッツ線は今でも非常に高いのです。

で,なんでAMラジオのコイルにリッツ線を使うのか,というと.....そこが問題なのです。

もちろん,鉱石ラジオやゲルマニウム・ラジオは真空管やトランジスタなど,一切の能動素子を使わないので,高感度なラジオを作ろうとすると,大きなアンテナが必要なのは当然なんですが,米国ならともかく,日本ではそんな長いアンテナは張れないので,やはりコイルのQが問題となります。Qが高いほど,高感度なわけです。

と言う次第で,Qってなんや? っていうことなんですけど.....。

ラジオマニアの皆さんはよくご存じでしょうが,QはQuality Factorの略で,文字通り,コイルの品質を表す指標で,コイルの抵抗分とリアクタンスの比です。具体的には,

              Q.jpg

となります。つまり,Qが高いコイル,というのは抵抗分が低く,リアクタンスが大きい,つまりインダクタンスが大きなコイル,と言うことになります。

インダクタンス自体は使用するバリコンの容量で一意に決まっちゃうので,結局,いかに抵抗分の小さなコイルを作るか,と言うことにつきます。

ところが,やっかいなのはこの抵抗分R。実は周波数により変動するので,直流抵抗分とは異なります。実際,単に直流抵抗が低いコイル,と言うことだったら太い電線でコイルを作ったらええやん,と言うことになるのですが....。

ここで出てくるのがあの嫌らしい表皮効果というやつで,電線内部の電流密度は周波数が高くなるほど,電線の表面に移動し,1MHzくらいになると大部分の電流が表面だけで流れています。

なんでか,と言うと結構,物理的な説明は定性的にも難しく,iruchanもMaxwellの方程式を解くとこのような解が出てくるということくらいしか理解していませんけどね......orz。

でも,そのおかげか,表皮効果については割に古くからよく知られていて,ラジオの黎明期からリッツ線が使われている訳です。

ということで,できるだけR分の小さな電線と言うことになると.....とにかく断面積よりも表面積の大きな電線と言うことになります。まあ,断面積は直径の2乗に比例しますが,表面積は1乗に比例するので,表面積を増やそうとするとどんどん太い電線が必要になるわけです。

これでようやくリッツ線が登場します。

リッツ線は非常に細いエナメル線を束ねて絹で外被した電線のことです。非常に細い電線の集合体なので,表面積が非常に大きくなります。

普通は交流抵抗は周波数に比例するので,高周波ほど表皮効果が顕著に影響が出てくるのですが,オーディオ帯域でも多少は影響が出るので,たまにオーディオ用ケーブルと称して,リッツ線を使ったものが販売されますが,まあ,オーディオ帯域だったらLC-OFC電線なんかを使う方が音が良いでしょう。

高周波回路ではリッツ線が重要で,戦前は対欧無線通信基地として,戦時中は潜水艦への通信設備として使われた愛知県の依佐美送信所のコイル類にもリッツ線が使われていました。

で,このLyonodyneですけど,なんと,660/46というリッツ線と,100/44というリッツ線を使っています。iruchanはこの数字を見たとき,絶句しました.....[雨][雨][雨]

Litz wire 660/44.jpg 660/46リッツ線です。

    実際,実物はこんな感じです......。

米国の規格らしく,これらの番号はAWG46の電線の660本撚り,AWG44番の100本撚りと言うことを意味します。

AWGはAmerican Wire Gaugeの略で,よくAWG何番,と言う言い方をします。番号が大きいほど電線径は細くなります。

iruchanはオーディオのアンプなんかを作るときはたいてい,AWG20かAWG22を使います。これくらいがアンプの配線に適しています。ちなみにBS何番という表記もありますが,これは英国規格(British Standard)です。

AWG46番とか44番というと....。

なんと,0.03984mmと0.05023mmという細さです!!

まあ,米国なのでもとの単位がインチですから,こんな半端な数字になりますけど,ものすごく細い電線ですね~。ちなみにJISなどの言い方だと,0.04mm,660本撚りと0.05mm,100本撚りと言うことになりますね。

こんなリッツ線は見たことがありません。普通,日本で売られているものは0.1mm8本撚りくらいのもので,バーアンテナに使われているものはこれくらいのリッツ線です。

しかも,こんなリッツ線でも数mで1,000円くらいの値段で秋葉原では売られていますから,Lyonodyneで使っているリッツ線はいったい,いくらするのでしょうか。

Tuggle氏は値段のことは書いていませんが,米国ではリッツ線はKerrigan-Lewisというメーカのが有名で,ここのを使っていると思います。同社はイリノイ州にあり,1920年代の鉱石ラジオなどでも有名なブランドです。

ところが.....。

この会社,WEBはないし,電子メールもありません。手紙でしか注文受け付けないらしく,当然カード支払いやPayPalは使えません。いまどき郵便為替(Postal Money Order),と言うのもな~という感じです。ちなみに,郵政民営化で銀行協会からクレームがついたのか,米国向けだと郵便為替は手数料500円だったのに,今は2,000円以上の手数料を取られますので,iruchanはもう使っていません。10年前の時点ですが,もう,ネットは当たり前の時代でしたから,iruchanは困ってしまいました。

まあ,10年経って検索してみると,今はコロラドのRubadue Wireという会社に買収されちゃっているようですし,この会社のリッツ線がネットで買えるようです。

とはいえ,たぶん,純粋な米国製のリッツ線は高いと思います。

一応,iruchanも当時,入手に結構困ったのですが,なんと,eBayでは今もリッツ線が大量に売られていて,当時,結局,eBayで買いました。

もっとも,売られているのは中国製のものです。値段は安く,660/46のリッツ線が長さ120フィートで〒込86ドルという値段でした。それに,売り手は米加州在住でしたが,やはり中国系の名前でした。

今も売られているので,もし,Lyonodyneを作りたい,と思った方はeBayで買えばいいと思ったのですけど,eBayはやはり10年くらい前にポンと送料が高くなり,小さなものでも30ドルくらいは当たり前になっちゃいました。

なんでや,と思ったのですが,セキュリティのため,一度,北米各地の売り手の荷物はeBayのセンターに集荷され,そこから,UPSなどの民間宅配業者を使って航空便で送られてくるためのようです。一度,親切な売り手に送料まけてんか? もちろん,英語ですけど と聞いて判明しました。

ということで,Ali Expressをお薦めします。Aliだと日本向けの送料はタダか,せいぜい数ドルくらいです。中国なのでいろいろと心配なことが多いのですが,iruchanは今まで詐欺に遭ったことも,ものの品質が悪いこともありませんでした。これらのリッツ線も安くて便利だと思います。

実際,将来作る予定のバスケットコイル用に,追加で0.1mm 45本撚りというリッツ線を100m買いましたけど.....,送料込みでもたった30ドルほどでした。秋葉で買えば,何万円もすると思います。

litz wire 0.1×45.jpg 一度,巻で買ってみたかったんですよね.....。

さあ,リッツ線が届いたらコイルを巻きたいと思います。

普通はソレノイドコイルですが,これはどうしてもQが低くなってしまいます。

どうしてか,と言うと今度は近接効果というまたいやな効果があるせいです。ええ加減にせい!

近接効果とは電線が近接しているとお互いの磁界が邪魔をして,電流を減らす,すなわち抵抗が増える効果を指します。

ソレノイドコイルだと,隣接した電線の電流の向きが同じですが,こうなると電流が発生する磁界が反対向きとなり,電流を減じる方向に作用して抵抗となります。

それに,電線が近接しているので,浮遊容量が増え,これはインダクタンスを減らす方向に作用します。

と言う次第で,本当にラジオ用コイルは矛盾だらけになってしまいます。

要は,いかに密に巻いてインダクタンスを稼ぎつつ,お互いの電線を疎に巻くか,と言うことが必要になっちゃいます。

これを解決するための手段がバスケットコイルやスパイダーコイルです。隣り合った電線をできるだけ離すための巻き方です。Lyonodyneはバスケットコイルを使っています。

もっとも,ソレノイドコイルでもリッツ線を使って,できるだけ巻き径を大きくする,というのがQの高いコイルを巻くコツなんて言われていますね。昔から,コイルを横から見たとき,巻き径とコイルの長さの比が1くらいになると良いとか言われています。

さて,ようやくリッツ線が届いたら巻き枠を作ります。幸い,Tuggle氏は詳細にコイルの径などを書いていますから,何とかなりそうです。もちろん,単位はインチなのでmmに換算しましたけど.....。

巻き枠を作るのは大変で,花子でまず,図面を描いて,それをA4の紙に印刷して,t5mmのポリカ板に穴開けしました。支柱はφ5mmのベーク丸棒にしましたけど,やはり金属製がよいです。あとでφ5mmの真鍮製のものを作りました。

basket coil巻き枠図面.jpg巻き枠図面

完成するとこんな感じです。支柱はやはり金属製の方がよいです。

basket coil巻き枠.jpg バスケットコイル巻き枠です。

あとはこの巻き枠に巻いていきます。

Litz wire 660/44巻き.jpg 手袋をして巻いていきます。

すぐ気づきましたが,手袋をしないと手が切れますので,手袋をしました....(^^;)。

テンションを加えながら巻かないとコイルがユルユルになっちゃいますが,どうしても巻きはじめがユルユルになっちゃってなかなか難しいです。

さて,できあがったらインダクタンスを測定します。もちろん,コイルの共振周波数は

               LC共振.jpg

ですから,仮にバリコンが430pFのものだと205μH,360pFのものだと245μHくらいとなります。

Litz wire 660/44 inductance.jpg インダクタンス測定中。

☆バリコンについて

バリコンについては,2連のものと単連のものが3つ必要です。もっとも,Tuggle氏の設計では単連は2つはトラップ用なので,とりあえず1個あればラジオを聞くことができます。

Tuggle氏はC1は470pF,C2は495pFのものを使っています。C2は周波数直線形となっています。また,なぜか,非常に絶縁抵抗にこだわっていて,どちらも銀メッキで,絶縁抵抗20MΩ以上,なんて指定があります。また,バリコンの固定もセラミック製のインシュレータを介して台に取り付ける,なんて書いてあります。

まあ,周波数直線形のものは非常に入手が難しいですので,iruchanは通常の360pFの単連のものを使いますし,絶縁抵抗についても,通常はこれくらいはあります。また,絶縁も直接,木製の台に固定しました。それに銀メッキって? 感じですけど....。日本製のバリコンの場合は普通はクロームメッキされています。銀メッキだとすぐに硫化銀を生じて黒くなってしまいますから,今まで見かけたことはありません。

lyonodyne variable capacitor.jpg 使用予定のバリコンです。

トラップ用には米国製の安いものにする予定でしたが,CCW(反時計回り)のものだったので,クビにして,国産のものにする予定です。それに,等容量タイプだったのでダメです。

なぜか,20年ほど前,羽根が真鍮でできたとてもきれいな2連バリコンを見つけたので買いました。あまりにもきれいだったので,今回,採用しました。もう何個か,買っておけばよかった......。

☆マッチングトランスについて

コイルのQをダンプしないよう,できるだけハイインピーダンスで受ける必要があります。通常はここにクリスタルイヤホンを使いますが,これはあまりに音が悪いので,鉱石ラジオのマニアの人はハイインピーダンスのマグネチックヘッドホンを使います。これはバランスドアーマチュア形ともいい,通常のスピーカと違って,静止型のコイルに音声電流を流し,中の鉄片が振動して音を出します。

真空管時代はよく使われていて,タイタニック号の無線室や,東京裁判で東条英機などA級戦犯が耳につけていたものです。

ところで,バランスドアーマチュアって,今,ネットで検索するとたくさん出てきてびっくりしました。なんと,ハイレゾ用のカナル型ヘッドホンに使われているらしい。

正直,え~~って感じですけどね.....。バランスドアーマチュア型は1920年代に使われたもので,1925年にGEのRiceとKellogがダイナミックSPを発明して廃れた技術です。それまで,バランスドアーマチュア型ユニットにホーンを組み合わせてSPとして使っていたのを,コーンのみで再生できるシステムを発明し,今に至っているわけです。

まあ,小型のユニットだったらバランスドアーマチュア型の方がHiFiでいいのだ,ということなんでしょうけど,100年も前の技術をいまだに使っているって,びっくりです。

iruchanもそのWEのバランスドアーマチュア型ヘッドホンを1個,持っているんですけど,ヘッドホンは聴きにくいし,非常にクリスタルイヤホンに比べれば音も大きいし,音もいいのですが,今回はオーディオアンプにつないでスピーカで聞くことにします。

なんか,鉱石ラジオなのに,オーディオアンプを使っちゃうなんて,反則! って言われそうですけど.....。

でも,スピーカで聞くと非常に聞きやすいですし,鉱石ラジオの音がよさがよくわかると思います。You Tubeでもゲルマニウムラジオをきちんとしたアンプとスピーカにつないで再生している動画が出ていますが,音が良いですよね~。

といって,このようにアンプをつなぐ場合にしろ,ヘッドホンをつなぐ場合にしろ,やはりインピーダンスは10kΩ程度ですので,コイルのQを完全にダンプしちゃいますから,マッチングトランスをつなぐ必要があります。

Tuggle氏はUTCのA-27を使っています。

これ,1次側は100kΩで,2次側はタップがついていて,50,125,200,333,600Ωとなっています。f特は30~20kHz(-2dB)というトランスです。

UTCのカタログを見ると,もとはクリスタルピックアップを600Ωラインにつなぐためのトランスです。

eBayで探しましたが,結構高く,何のことはない,日本のオーディオショップで見つけました。特殊なトランスなので,日本では売れないようです。2次側が50Ωという出力もあるので,通常のヘッドホンも使えそうです。

ただ.....,なんと取付ねじが付属していませんでした[雨][雨][雨]

こんなくらい,つけとけよ.....と思いました。ただでさえ,面倒なインチねじなのですから.....。中古品なので,何かの機器から取り外して売っているはずですが,取り外したときにねじを捨ててしまっているのでしょう。

仕方ないので,UTCのカタログを見ると,UTCのAシリーズのトランスはユニファイねじの#40-4という規格のねじを使っているようです。長さ5mmくらいのを買って取りつけました。amazonでも手に入ります。

UTC A-27.jpg ねじはUNC #40-4というねじです。

もっとも,こんな高級品使わなくても山水のST-14(500k:1k)なんかをつかったらどうか,と言う話もあるかとは思いますが......。

ということで,次回はこれらの部品を使って組み立てていきたいと思います。


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遠距離受信用鉱石ラジオの製作~その1~ [ラジオ]

2019年5月12日の日記

けふはiruchanの家は1日中,シンナー臭かったです.......orz。

バリコン板塗装.jpg ただいま塗装中。

最近はiruchanも模型工作で塗装をしなくなりました。iruchanも年取ってすっかり根気がなくなり,面倒くさくなっちゃいましたしね......(^^;)。

まあ,最近はそういう方も多いのか,鉄道模型どころか,プラモでも塗装済というのが増え,最近は塗装しなくても組み立てられるものが増えているそうです。鉄道模型も実車があまりにも複雑な塗装をするようになり,手作業じゃもう塗れない車ばかりですしね......。

さて,この前の10連休は子供連れて田舎に帰ったと思ったら,今度はとうとう嫁はんに愛想尽かされて んなことねぇって 実家に帰ってしまい,子供の世話で追いまくられて何もできませんでした......orz。

今週は何とか嫁はんも機嫌直して帰ってきてくれたので工作再開です。やれやれ。

で,何を塗装していたか,というと,こういうものを作りたかったのです。

バリコン板.jpg バリコン固定板です。

単連と2連のエアバリコンを固定するための板を作っていました。アルミの板のままじゃ,錆びちゃったり,傷がついてみっともないので,グレーに塗装しました。

バリコンの固定板はラジオ作るときには重要なのですが,本当にめんどくさいですよね~。厄介なバーニヤダイヤルの穴は "花子" で図面描いてボール盤で穴開けしました。なんの修正もなしで取り付けられてホッとしました。トランスの4つの穴もなかなか一発では開けられませんが,きちんと図面を描いて紙に印刷してけがきするとうまくいきます。便利な時代になったものです。

ついでにコイルを巻きました。これも "花子" で図面描いて巻き枠を作りました。

basket coil1.jpg バスケットコイルです。

リッツ線を使ってバスケットコイルを巻きました。朝から丸1日がかりでした。疲れた~~[雨]

        ☆          ☆          ☆

詳しくはまた次回です。乞うご期待[晴れ] 誰も期待なんかしてへんやろって。


 

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ACE 6石スーパートランジスタラジオキットAR-606~ゲルマニウムTr版~の音質改善・NFBの利用 [ラジオ]

2019年4月6日の日記

先週,OPTを交換して高域のf特を改善しました。カットオフは2.5kHzから6kHzに改善でき,かなり音質もよくなりました。

もうひとがんばりして,高域を改善したいと思います。それに,低域も少し悪くなってしまったので,改善したいと思います。実際,聞いてみても,まだ音質は悪く,アナウンサーの声も少しひずんでいます。

もう,ドライバ段のトランスもOPTも交換してしまったので,あと,打つ手としてはNFBくらいしかありません。

前回,6dBほどのNFBをかけてやれば,80Hz~20kHz(-3dB)くらいになりそう,と予想したので,取り組んでみます。

☆LTspiceによるシミュレーション

まずは,回路シミュレーションソフトで確認してみたいと思います。

トランス類は今回使用したものをLCRメータで測定したインダクタンスなどを入力しました。残念ながら,ゲルマニウムTrのSpiceモデルは非常に少ないので,iruchanが以前作成した,2SB542SB56で代用します。

AM Tr super radio LF circuit.jpgNFBなし

f特はこんな風になりました。

AM Tr super radio LF f特 0NFB.jpg やはりかなり悪いです。

1kHzを基準として,帯域幅は-3dBで824Hz~1.34kHzと言ったところです。

OPTの2次側から,LFの2SB54のエミッタに帰還します。

AM Tr super radio LF circuit-1.jpgNFBをかけてみます。

AM Tr super radio LF f特 NFB.jpg かなり改善されます。

25dBものNFB量になってしまいますが,かなりf特は改善され,74Hz~5.4kHzとなります。

こんなに大量のNFBをかけることなんてできひんやろ,と思ったのですが,とりあえず,この定数で実験してみようと思いました。

☆実験結果

ただ,シミュレーションではちょっとNFB量が過大で,間に2つもトランスが入っているのに,こんな大量のNFBをかけることは実際には絶対無理,と思ったので,最初はもとのAR-606の回路のとおり,R5=1kΩのままとし,付加したNFループ内の抵抗はR10=1.6kΩ,R11=2.2kΩにしてみました。NFB量は▼から,7dBほどです。

ACE AR-606 NFB結果.jpg実測結果です。

かなりf特は改善され,-3dBで,180Hz~90kHzとなりました!!

ただ,残念ながら,SPの代わりに8.2Ωのダミー抵抗をつないで,両端の電圧をオシロで観測してみると,100Hz以下の周波数では▼のように発振しており,残念ながら,この定数はNGのようです。

低周波発振.jpg あちゃ~~[雨][雨]

こんな風に,100Hz以下の信号を入力すると,寄生発振しています。これだとNF量は過大で,減らさないといけません。

その後,いろいろ定数を変えて実験してみました。

やはり定数はかなりシビアで,驚いたことに,チューニング用のダイヤルを回すと所々で発振したり,放送を受信すると発振が止まったりする現象が出ます。それどころか,ボリウムを大きくすると発振する,なんて現象もあります。音量が小さいときはOKだけど,音量を大きくするとSPからビ~~ッと発振音が聞こえます.....。

また,実際に使用しているLFの2SB175のエミッタ抵抗は1kΩくらいでないとまずいようで,これまでの定数だと2kΩを超えるのですが,こうなるとコレクタ電流が小さすぎ,かなりひずむようです。

結局,あれやこれや変更してみて,ようやく▲のLTspiceの回路の定数としました。

ACE AR-606 NFB結果1.jpg最終f特です。

最終的に,このグラフで決着です。が実際の低周波部のゲインで, は1kHzを0dBとした相対レベルです。

NF量は5dBほどで,帯域幅は-3dBで300Hz~20kHzくらいとなりました。低周波の発振も消えましたし,今回はチューニングダイヤルの全帯域で発振するところはありません。まあ,40kHzにピークがありますが,やはりこのあたりの周波数は不安定のようですが,可聴帯域外なので問題ありません。

さて,実装の方は大変でした。AR-606は比較的基板も大きいし,部品も余裕をもって取り付けられているので楽そうなんですけど.....。ただ,低周波部は混み合っていて,CR類を取り付けるスペースはあまりありません。結局,基板の裏表を使い分けて実装しました。

ACE AR-606 NFB回路実装.jpg NFB回路の実装状況

ACE AR-606 NFB回路実装1.jpg 基板の表側です。

 写真では,抵抗は1.6kΩですが,あとで470Ωに交換しています。

OPT2次側から負帰還しますが,OPTの接続によっては正帰還になって,思いっきり発振しちゃいますので,気をつけないといけません。

残念ながら,オリジナルのOPTの接続状態では正帰還となってしまい,SPをつないでスイッチオンしたら,大音量でビ~~ッと発振しちゃいました。

慌てず落ち着いて,OPTの2次側の配線を逆にします。OPTの2次側のGNDを逆に配線しないといけないので,パターンを切って,▲の写真のように,ジャンパ線で2次側の配線を逆にしました。もちろん,2次側の電線を入れ替えてハンダ付けしてもOKです。

こうして発振音もせず,きれいに放送が聞こえればまずは成功です。▲の写真のチューブラ電解コンデンサ100μFをつけたり外したりしてみて,つけたときにSPの音量が小さくなれば,NFBがかかっています。オシロがあると,実際に波形が小さくなるのを観測できれば,ひとまず成功です。

あとはf特を測って検証しますが,今回,iruchanはチューニングダイヤルやボリウムの位置によっては発振したりしたので,その点も注意してチェックします。

1kHz(NFB 5dB).jpg1kHzの波形です。

低周波~高周波で全帯域に渡って発振しなければOKです。ひずみも改善され,きれいな正弦波が観測できました。

なお,NFBをかけると低周波部のゲインがその分,低下し,音量が小さくなります。AR-606は低周波のゲインには余裕があり,ボリウムを一番小さく絞ってもかなりの音量なので,前回まで,アッテネータ抵抗を入れていたくらいですから,NFBをかけても十分なゲインがありました。今回,その抵抗を撤去しましたが,一番絞っても音が聞こえないくらいになったので,逆に使いやすくなったと思っています。

         ☆          ☆          ☆

やはり,SPをつないでみると,非常に自然な音になり,HiFiとなりました。さすがにSPの口径が小さいので,低音があまり出ないので,やはりAMラジオだな,という音ではありますが,非常に音がよくなりました。オリジナルの状態とは劇的に改善され,聞きやすいです。いくら小型ラジオとは言っても,少なくともこれくらいの音質でなきゃ,という感じです。これなら長時間聞いていても疲れないし,自然な音で聞きやすいと思います。

小型Trスーパーラジオの音質改善にはやはりNFBが有効であると実感できます。今後,iruchanが作るTrラジオにはNFBをかけることにしたいと思います。

実際,AMラジオでも低周波部にNFBを使う,というのは古くからあり,iruchanが持っている,奥沢清吉著 "新しいトランジスタ製作集" (誠文堂新光社'67.3)では,7石スーパーの回路にNFBをかけています。TrラジオではNFBを使った記事は少ないようで,iruchanが持っている資料でもNFをかけたラジオの製作記事は見たことがありません。そもそも,Trのスーパーの製作記事はほとんどないし,あってもキットの製作記事であることが多いので,なかなか資料探しも大変なんですけどね。

そのほか,真空管時代のラジオもLPレコードが登場してHiFiがキーワードとなる1950年代末にはNFBをかけることが盛んに行われました。もっとも,5球スーパーでは検波に6Z-DH3A6AV6と言った球を使うのですが,これらは2極部と3極部のカソードが共通になっていて,NFBをかけると2極部の動作点が変わってひずみを生じてまずいので,これらのカソードを独立させた,6W-DH3S6AV6Sが発売されています。6Wとなっているのはカソードを分離してピンが1本増えてためですが,Sってなんや? という気がしますけど......。separateの略でしょうか? A電池の消耗を減らすため,フィラメント電流を小さくした,電池管の1T4-SFなどのSFも昔からイミフなんですが....。こちらのほうは,save filamentの略のようです。

もう,大昔の話ですし,こんなこと知っている人も少ないと思いますけどね.....。

    ☆          ☆          ☆

最後に,ACEのAR-606形トランジスタラジオキットの回路を載せておきます。残念ながら,オクで入手したAR-606キットは未組み立て品でしたけど,説明書がなかったので,回路は推定です。標準的な6石スーパーの回路なので簡単です。

ACE AR-606トランジスタラジオキット回路.jpgAR-606回路

丁寧に2段あるIFに中和がしてあるのに感心します。後期のTrラジオは中和してないことが多いのですが,本機は中学の技術家庭の教材としても使われることが多かったため,中学生が組み立てても,無事に動作するように設計されているのだと思います。

赤字部分が今回の改造部分です。オリジナルを尊重するのがiruchanの主義なんですけど,今回は大幅に改造しちゃいました.....(^^;)。

アンテナコイルとバリコンに直列に挿入されている5.6ΩはQダンプ用です。こうするとHiFiになりますし,同調もやりやすくなります。逆に,感度が下がってしまうので,低感度のラジオじゃNGですが,ACEのキットはとても高感度なので,十分利用できます。


以上で,ACEの6石スーパートランジスタラジオキットAR-606の記事は終わりです。どうもありがとうございました。


☆おまけ‥‥‥‥LTspiceによるトランスのシミュレーション

LTspiceにはトランスという部品はありません。

トランスのシミュレーションには,2つのコイルを用い,インダクタンスを設定するとともに,2つのコイル間の結合係数を追加します。結合係数は,LTspiceでは,ツールバーのEditメニューから,Textを選択すると追加できます。

1次巻線が発生した磁束が漏れることなく,2次側コイルに入れば結合係数は1です。実際には漏れや損失がありますので,若干小さくします。

と言うことなんですけど.....。

iruchanは今回ドはまりでした.......orz。

今回,NFBの効果を見ようかと,6石スーパーの低周波回路をシミュレーションしようとしたのですが,何度シミュレーションをチェックしても,出力は0です。

最初は初段のLFの2SB54の定数が悪くてカットオフしちゃって出力が0なのかと思いましたが,そうでもないし,いくら調べても原因がわかりません。

困ったな......。

結局,原因がわかるのに2ヶ月もかかっちゃいました。なんでそんなにかかるのか!

頭にきて,トランス単体にして,AC電圧源をつないでみて気がつきました。

やっぱり出力は0なのです....。

結合係数の設定・誤.jpg Commentになっていました。

ようやく,トランスの結合係数をきめる,コメントがフツーに,Commentとなっていて,単なるメモになっちゃってて,LTspiceは結合係数とは理解していないため,と言うことに気がつきました。なぁんだ,という原因なんですけど....。

結合係数の設定・誤1.jpg 出力は0です。

まるでこれじゃ,心停止!! 出力は直線のままです......。

先ほどの,結合係数の定義のテキストをCommentから,SPICE directiveに変更します。

トランステスト回路.jpg ようやく成功です。

ちゃんと,高校の物理でならったように,2次側は90゜位相のずれた波形が表示されればOKです。

こういうミスのないよう,最初から,ちゃんとトランスの部品が用意してあれば,問題なかったと思います。

こんなことに気がつくのに,かなり時間がかかっちゃいました。皆さんお気をつけてください。


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ACE 6石スーパートランジスタラジオキットAR-606~ゲルマニウムTr版~の音質改善・つづき  [ラジオ]

2019年3月31日の日記

このところ,オクで入手したACEの6石スーパーラジオキットに取り組んでいます。非常に感度もよく,近所のすべての民放も入りますし,夜になるとSTVラジオ(札幌)や大陸や朝鮮半島の局も入るので,なかなかよいラジオです。

ただ,どうにもポケット形スーパー特有のキンキンというかん高い音で,あまり音質はよくありません。もっとも,これはACEのこのラジオだけが悪いわけでなく,小型のTrスーパーラジオは全部,こんな音ですよね......orz。

その点,真空管式のものは結構音がよいし,iruchanも普段はオールロクタル管5球スーパーで放送を聞いています。FM同等とまでは言いませんけど,かなり聞きやすく,いい音で鳴ります。

で,Trラジオの音が悪い原因は,やはりスピーカの口径が小さいし,筐体も小さいので仕方ない,と思ってはいました。

ただ,以前作った,英Mullardの初期のTrを使った6石スーパーが音がよいので,ひょっとしてSPのせいばかりではないのでは,と思って調べてみたら,何のことはない,電気的な特性もかなりひどく,低周波部のf特は前回書きましたとおり,高域のカットオフ周波数(-3dB)が2kHz程度でした。これじゃ,音が悪いわけです。

前回はとりあえず,ドライバ段のf特を改善しましたが,今回は終段も改善したいと思います。実際,f特はOPTが決めてしまいますので,OPTを改良したいと思います。せめて,目標としてはカットオフを5kHz程度にしたいと思います。

じゃ,どうするんだ,と言うことなのですが......。

低周波部のf特が悪いのは,どうやらOPTのせいのようです。漏れインダクタンスも大きい上,線間の分布容量が大きく,カットオフが下がっているため,と考えられます。

そこで,改めて,6石スーパーTrラジオのOPTについて調べてみると....。

奥沢清吉氏の "新版 図解ラジオの作り方" を見ると,氏の設計した6石スーパーはなんとOPTが200Ω:8Ωとなっているではないですか!! 山水のST41です。

普通,ゲルマニウムTrの出力段の負荷インピーダンスは1kΩくらいが普通で,iruchanもいつも,ST-32(1.2kΩ:8Ω)を使っています。もし,1次インピーダンスが200Ωなら,巻数は平方根に比例しますので,1.2kΩのものの1/2.5になっているはずですから,分布容量も小さく,高域のカットオフ周波数も高くなっているはずです。

奥沢氏の他の記事を見るとやはり1kΩ程度のOPTを使っている記事もあるので,氏は高音の問題点をすでにご存じだったのかもしれません。

と言う次第で,もっと1次インピーダンスの低いOPTにしたいと思います。

現行品だと,ST-62が120Ω:8Ωと低いのですが,残念ながらコアのサイズが大きすぎ,ボツです。

小型のものだと,ST-83が400Ω:8Ωですので,比較的,1次インピーダンスが低いです。

山水ST-83-1.jpg 山水のST-83です。400Ω:8Ωです。

UT-32, ST-83 opt f特.jpg周波数特性です。

1次:2次の周波数特性を実測してみました。ST-83のf特は発表されていないので貴重だと思います。

ただ,実際にはドライバトランスと同じ,互換品がありましたので,そちらにしました。インピーダンスは600Ω:10Ωのものです。こっちの方が値段は半額ですし....。また,▲のf特を見ても,ST-83より広帯域です。UT-32は前回までのものです。

600Ω:10ΩOPT交換.jpg トランス周辺です。

OPTは600Ω:10Ωのものに交換しました。

600Ω:10ΩOPT10kHz.jpg 10kHzの出力波形です。

さすがに,レベルも低くなっていますが,きちんと正弦波を保っていますし,良好な波形です。

600Ω:10ΩOPT1kHz clip.jpg 1kHzクリップ時の波形

ちなみに最大出力は150mWとなりました。上側が先にクリップしちゃうので,プッシュプルのTrの特性にばらつきがあるようです。本来ならペアの石を使うべきですね~。

ACE AR-606 600Ω:10ΩOPTf特.jpg改良後のf特です。

-3dBで180Hz~6kHzというところで,前回だと60Hz~2.5kHzと言うところでしたから,ずいぶん改善できました。

それにしても全然フラットじゃないし,低音はほとんど出ませんね~。まあ,口径が50mmほどのSPを使っているので,これでも問題ないと思いますけど.....。

実際,放送を受信してみますと,非常に音質が改善され,自然な音質になりました。You TubeにAR-606や他の6石スーパーTrラジオの動画が出ていますが,残念ながら,やはり音が非常に悪いので,それに比べれば,大きく改善されています。

無帰還のB級トランス結合プッシュプル出力段のf特なんて,こんなものなのでしょう。▲のf特を見ると,6dBほどの負帰還をかけてやると80Hz~20kHzくらいになりそうですから,負帰還をかけてみる,と言うのも手だと思います。

ということで,今回のACEのAR-606形6石スーパーTrラジオの話はここまでとしたいと思ったのですが,前回までの特性だとNFBをかけてもむだ,という感じでしたが,今回は効果ありそう,なのでテストしてみたいと思います。

2019年4月7日追記

NFBをかけて実験してみました。こちらをご覧ください。

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ACE 6石スーパートランジスタラジオキットAR-606~ゲルマニウムTr版~の音質改善 [ラジオ]

2019年2月10日の日記

今日は先日,完成したACEの6石トランジスタラジオの音質について書いてみたいと思います。

残念ながら,せっかく完成したのに,音質はキン,キンと高音ばかり出て,また,かなりひずんでいて,聞きにくい音質でした。

とはいえ,これはACEのラジオが悪いわけじゃなく,Trラジオ全般に言えることですよね。そりゃ,Trラジオは何より小型なのが最大のメリットで,そのため,スピーカが小さいし,また箱も小さいので低音なんて出るわけがなく,音が悪いのも当たり前,という気がします。

ただ,そうは思っていたのですけど.....。

実を言いますと,以前作った,英Mullard社の最初期のOC70などのガラス製ケースに入ったTrを使ったラジオの音質が意外にいいのです。

これ,作った本人がびっくりするくらい音がよく,低音も豊かだし,Trラジオ特有のひずみっぽいキン,キンという音じゃありません。

スピーカだってφ57mmのアルニコSPですし,ACEとほとんど同じ口径です。何か,MullardのTrを使ったラジオはいい点があるようです。とはいえ,ごく普通の6石スーパーで変わったところはありませんが,まあ,ひょっとして例のBlack Bulletと呼ばれるガラス封止の黒いTrのせいかな,と言う気もするのですが....。

とはいえ,ACEのAR-606もごく標準的な6石スーパーの回路で,何も変わったところはないのですけど.....。

ということで,チョッとACEのラジオのf特を調べてみました。

オーディオ初段の2SB175のベースにテストオシレータをつなぎ,また,SPの代わりに8.2Ωの抵抗をつないで,オシロで観察してみました。

AR-606 低周波部f特測定.jpg f特を測定します。

すると....。

まずは驚いたのは100Hzの正弦波ですら満足に増幅していません。非常にひずんだ波形で,ACEの回路はごく標準的なものですから,標準の6石スーパーってこんなものなんでしょう。これじゃ,低音が出ないわけです。

100Hz.jpg 100Hzの出力波形

で,これは何が原因かというとおそらくアイドリング電流が不足しているためと思います。もともと,Trラジオは電池で動くわけですから,電池の寿命を延ばすため,極端に電流を絞った設計となっています。

一番に疑うのはB級の出力段です。HiFiオーディオアンプでも出力段のアイドリング電流はきわめて重要なファクターで,iruchanは100mA以上流すことにしています。もっとも,ラジオじゃ,そんなに流せませんけどね.....。

ところが,今回は出力段じゃなく,ドライバ段のアイドリング不足でした。

オシロで,出力の2SB172およびドライバの2SB175のコレクタの波形を観察してみると,▲のように波形がひずんでいるのはドライバ段でした。

う~~ん,ちょっと意外。

確かに,出力段は1mA程度のアイドリング電流が流れていますが,なんと,ドライバ段は測ってみると0.038mAと極端に小さいです。もう少し電流を流してやらないとやはりひずんでしまいます。

ということで,ドライバ段のバイアス回路を変更し,アイドリングを少し増やしてやります。

ACEのAR-606に限らず,Trラジオは電流帰還型バイアス回路となっています。ゲルマの時代は特にそうで,本機もこの回路になっていますから,少しいじって電流を増やしてやります。

この30kΩを8.2kΩに減少させました。ドライバの2SB175のアイドル電流は1.32mAと大幅増量です。

おそらく,Trラジオは,電池の消耗を防ぐため,ギリギリまで電流を下げる設計がしてあるため,ひずみが生じやすいのだと思います。当時の電池は性能も低いですしね~。今はアルカリ電池もありますから,ある程度,電流を消費する回路でもいいと思います。

100Hz-1.jpg 100Hzの波形です。

少しノイズが乗っちゃっていますが,きれいな正弦波になりました。ラジオなので,局発を止めて測定しないとこういう風に高周波のノイズが乗っかっちゃいます。

ここまで来て,f特を計り直してみます。

低周波部f特.jpg

    低周波部のf特です。1kHz=0dBとしました。

低周波が大幅に改善されて,3dBほど改善です。70Hzくらいまではフラットなので,まあ,こんなものかと思います。

ただ,やはり気になるのは2kHzからダダ下がりな特性ですね~。

それに,AMラジオの高音が出ず,HiFiじゃない,と言う問題は皆さんもご存じの通り,昔から議論されていて,それはIFTなど,高周波部分の通過帯域幅が狭く高音が出ない,と言う問題がもとからあるのですが,これは低周波回路のf特なので,高周波部分の問題じゃありません。

とりあえず,考えられるのはドライバのトランスのL分と,パラに入っているCが共振し,高周波にピークを持っていることですね。

実際,AR-606のOPT1次側には0.02μFのセラミックコンデンサが入っています。また,ドライバトランスにも同じ容量のコンデンサが入っています。

AR-606 低周波部回路.jpgAR-606の低周波部回路

これは工藤利夫著 "初等トランジスタラジオ教科書" (オーム社,1971年)によると,高音の改善のためらしいです。ただ,本の図は20kHzくらいにピークがあるので,本機は低すぎます。

結局,これらのコンデンサを撤去しました。

低周波部f特3.jpg修正後です。

若干,高音域が改善され,-3dBで高域カットオフが2.5kHzだったのが4kHzくらいとなりました。

これでもまだiruchanは不満で,もっと改善したいと思います。SP端で計測したらほぼ重なるので,高周波はドライバ段で決まっているようです。次なる手はドライバの2SB175を交換してみようかと考えています。CQ出版社のトランジスタ規格表にはfTの記載がないのですが,ネットには750kHzという値が出ています。もとはOC75なので,こんなはずはなく,もっと低いのでは,という気がします。

低域のピークも気になりますけど,まあ,こちらの方はスピーカが小さいので,低音の改善になるかと思います。

また,本機は感度がよすぎて,ボリウムを最小に絞っても結構な音量で鳴ります。夜中に1人で聞くには音が大きすぎ,という感じがしますので,▲の回路図のように,VRの前に2.7kΩを挿入して,音を小さくしました。

      ☆          ☆          ☆

それにしても,トランジスタラジオの周波数特性って,こんなものなのですね。これじゃ,音がよいわけありません。トランス結合増幅回路なのでしかたないか,と言う気もします。6dBくらいのNFBをかけてやればフラットになるのに,という気がしますが,一応,オリジナルを尊重してやめておきます。


まだつづきがあります。読んでみようという奇特な方はこちらへ.....。


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ACE 6石スーパートランジスタラジオキットAR-606~ゲルマニウムTr版~の調整 [ラジオ]

2019年1月28日の日記

さて,今週の休みは先週組み立てたACEの6石スーパートランジスタラジオキットの調整を行いました。

実を言うと,組み立てたままの状態でもほとんど調整なんてしなくてもよいくらい,高感度だったのですけど.....。

一応,iruchanもラジオマニアなので,無調整のまま放っておくわけにはいかないので,調整します。

スーパーのラジオは何カ所も調整する箇所があります。まずはIFTから調整をはじめます。

☆IFTの調整

スーパーのラジオの中間周波増幅回路は回路的には 同調増幅器+バンドパスフィルタ の組み合わせです。

Trラジオの場合はIFTの1次側が同調回路になっていて,2次側には同調用のコンデンサはなく,非同調となっています。真空管の場合は両方とも同調回路となっていて,複同調となっています。

Trラジオの場合は,Trの入力インピーダンスが低く,せっかく2次側を同調回路にしておいてもQが低くなって同調回路にしておく意味がないから,ですけど,初期のTrラジオは真空管ラジオ同様,複同調となっているものがあります。

複同調回路となっている場合は調整が面倒で,1次,2次ともに同じ周波数に同調させちゃうと,単峰特性と言って,通過帯域が狭くなっちゃうので適度に1次,2次の同調周波数をずらして,いわゆる双峰特性にする必要があります。

Trラジオの場合はそもそも同調回路が1次側にしかないので,単峰特性になっちゃいますが,もともとTrラジオ用のIFTのQは低いので普通は問題になりません。

調整は,3個あるIFTの同調周波数をIFに合わせればOKです。

で,問題はIFの周波数なんですけど.....。

一応,JISでは455kHzと決められているんですけど,iruchanはTrラジオの場合は450kHzで調整することにしています。

というのはPLLシンセサイザ式のラジオの場合は450kHzとなっていることが多いですし,AMステレオのラジオは450kHzで調整されているからです。昔のIFTは当然,455kHzで作られていますが,これくらいの同調周波数の変更は可能です。

さて,調整法ですけど,まずはテストオシレータに1mくらいの電線をつないで,アンテナにしちゃいます。ラジオと数十pFのコンデンサをつないで直結する人も多いようですけど,面倒なので横着しています。

テストオシレータを1kHzくらいで変調しておけば,スピーカからピーッと言う音がするので,それが最大になるように調整すればOKです。

一応,iruchanはオシロを持っているので,検波出力をモニターして最大になる位置に調整しました。▼の写真のように,検波用DiのカソードにプローブをつなげばOKです。IFTのコアは局発側から,,黒という順に並んでいて,最後の黒は検波用Diにつながっていて,これはインピーダンスが低いのでいちばんQが低く,逆に言うと帯域がブロードすぎて調整しにくいので,色のコアから調整します。

IFT調整.jpg IFTの調整

☆トラッキング調整

これが大変面倒です。真空管の時代は3点調整とか,単一調整なんて言いましたけど,要は,指定された帯域の電波がきちんと受信できるように調整することです。

日本を含むアジア地域では中波の放送波帯は531kHz~1602kHzと決められていますから,この周波数の範囲をきちんと受信できるようにします。

真空管の時代はバリコンがアンテナ側と局発側で等容量の430pFなり360pFなりの容量のものが用いられていて,この場合,局発側のバリコンにパディングコンデンサと呼ばれるトリマーコンデンサを直列につないでいます。このとき,きちんと 受信周波数-中間周波数 が455kHzとなるのは3点しかなく,この3点をきちんと合わせることから,3点調整と呼ばれました。普通は600,1000,1400kHzで一致するようにあわせます。

まあ,真空管の時代でも中波専用のものなどは親子バリコンと言って,アンテナ側と局発側で容量が異なるものを用いましたので,うまく調整すればほぼ全帯域に渡って455kHzとすることができます。

Trラジオではもう今じゃ,短波と組み合わせたラジオというのはほとんどありませんから,大部分,このようなバリコンを使っているし,さすがにTrラジオはエアバリコンなんて使わず,ポリバリコンを使いますので,そうなるとバリコンの羽根の数や大きさがパッと見,まったくわからないので,親子バリコンとは言わず,トラッキングレスバリコンと言います。ポリバリコンじゃ,等容量のものを見つけるのが難しいくらいで,2連のものはほとんどトラッキングレスだと考えてよいと思います。

と言う次第なので,結局,Trのスーパーラジオのトラッキング調整は,まず,局発を531+450で986kHzから,1602+450=2052kHzまで発振させればよいことになります。今だとオシロや周波数カウンタが手に入りますから,これらを使って調整するのが簡単です。

superheterodyne同調曲線.jpgAMスーパーラジオの局発

真空管ラジオや短波付ラジオの場合,アンテナ側と局発側で同じ羽根の大きさの等容量バリコンを使っているときはパディングコンデンサが必要となり,また,  の曲線は湾曲し,3点でしか同調周波数と局発周波数の差は455kHzとなりません。

Trスーパーラジオ局発周辺.jpgAMスーパーラジオの局発回路周辺

ただ,直接,局発コイル(LOSC:コア赤)の両端にプローブをつけるとプローブの容量が邪魔をして周波数が変化しちゃいますから,iruchanは局発のTrのコレクタにつなぎます。予め,ここにプローブをつなげるよう,テストポイント(T.P. ピン端子)を設けておきました。

osc, antコイル調整1.jpg トラッキング調整

まずはダイヤル(バリコン)をいちばん低い位置に合わせ,ここで986kHzくらいで発振するよう,色のコアを回します。次にダイヤルを高い位置に合わせて今度はバリコン背面にある2つのトリマのうち,局発コイルとパラに入っているCtOSCを回して2052kHzになるようにします。

これを何度も繰り返して986kHzと2052kHzで発振するようにあわせるのですけど,結構,周波数カウンタの表示はばらつきますし,コアやバリコンの種類によってはどうしても調整しきれないこともありますので,ある程度で妥協することも多いです。特に自作する場合は局発コイルもバリコンもバラバラに買ってくるのですからなおさらです。

ACEのCK-606は本当によくできていて,どちらもきちんとあわせることができました。

☆アンテナコイルの調整

さて,この次はバーアンテナについているアンテナコイルを調整します。

これをやらない人も多いですし,放っておいてもたいていはきちんと鳴るので,あきらめてもいいのですけれど,これをきちんと調整すると非常に高感度になりますので,きちんとやっておきましょう。

さて,先ほどのトラッキング調整で,一応,局発は指定された周波数範囲で発振するので一応,カバレージは合っているはずなんですけど,肝心のアンテナコイルとバリコンの同調曲線がうまく中間周波分だけ局発とずれていないとうまく受信できません。▲のグラフで言うと,  と の線が平行になっていないといけません。

よく,高い方の周波数の局はうまく受信できるけど,低い方はダメ,とか,その逆という現象がありますけど,これはこのアンテナコイルの調整がうまくいってないラジオです。高感度のラジオは全帯域に渡って非常に高感度です。

この調整はバリコンのアンテナコイル側トリマと,バーアンテナの外周に巻かれているコイルの位置です。指ではさんでずらすとボディエフェクトで調整がうまくいきませんので,セラミック製の調整ドライバなんかでずらします。

ANTコイル調整.jpg
  ボディエフェクトに注意してANTコイルをずらします。

テストオシレータで600kHzくらいの周波数を発振させ,ダイヤルも600kHzくらいにあわせます。

このとき,アンテナコイルを左右にずらしてみて,ピーッと言う音が最大になる位置に止めます。マスキングテープなんかで仮止めするとよいでしょう。


今度はダイヤルを高い方にして,1400~1500kHzくらいの周波数を出して,それがきちんと受信できるよう,バリコンのアンテナコイル側のトリマを回したり,アンテナコイル自体をまたずらしたりします。

これをまた何回も繰り返して,どちらもいちばん大きな音がする位置で固定します。

位置が決まったら接着剤で固定します。iruchanはセメダインの透明エポキシで固定しました。

こうするとようやくスーパーのラジオの調整が終わりです。

       ☆          ☆          ☆

改めて放送を受信してみると,やはり少し下側に移動しています。NHKもきちんと正規の位置で受信できるようになりました。低周波,高周波ともに感度がよく,こういうラジオの場合はノイズも多い傾向がありますが,本機はノイズは少なく,とてもいいラジオだと思いました。

続いて,f特を測定してみました。ご興味のある方はこちらへ。


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ACE 6石スーパートランジスタラジオキットAR-606~ゲルマニウムTr版~の製作 [ラジオ]

2019年1月20日の日記

ACE 6石トランジスターラジオキット7.jpg 長年,探していました.....

ACEの6石スーパーラジオキットを入手しました。

これ,iruchanが中学の頃,近所のラジオ屋さんで売られていて,ずっとあこがれていました。

ただ,たぶん値段は2,500円くらいだったと思うのですが中学生の小遣いじゃ,とうてい買えず,また,iruchanも電子回路の知識も不十分なのであきらめていました。

当時,ラジオ屋さんではいちばん,高価な品物だった,と思います。ガラスケースに入って麗々しく飾ってあり,少々,恨めしく思ったのも事実です。

その後,社会人になってからも秋葉の部品屋さんでよく見かけましたし,買っておけば,と思うのですが,一度も買ったことがありませんでした。もう,その頃には真空管のアンプやラジオも組み立てができていて,今さらラジオのキット? なんて思ったのも事実です。

でも,時は流れ,もはや6石スーパーのキットなんてなくなってしまいました。最後まで,明光電気のCherry CK-606が売られていましたが,2,3年前に製造中止となったようで,もう,市場で見かけることはなくなりました。今は中国製の粗悪な7石スーパーラジオが売られているくらいですね。iruchanはCherryのCK-606は,本当はシリコンTr仕様なのに,わざわざゲルマニウムTrで組み立てたり,後からオリジナルの通り,シリコンで組み立てたりしています。

国内でトランジスタラジオのキットというと,ACEのものが有名で,HOMERは1石や2,3石のレフなど,Trの少ないものが有名で,今でもオークションに出ますが,ACEも1,2石のものはありましたが,こちらはどちらかと言えば,6石や8石のスーパーがよく売られていた気がします。

実は,iruchanは最近まで,HOMERの6石スーパーはなかった,と思っていました。それほど見かけなかったわけですが,どうやら実際にはあったようです。

CherryのラジオはシリコンTr版しかなかったようで,どうもかなり後から製造されたようですが,ACEやHOMERはゲルマニウムTrのバージョンがあります。特に,ACEのはゲルマ版とシリコン版と2種類あるようで,回路が多少異なるので,基板が違うのはもちろん,ケースも少し,正面のデザインが異なるようです。

iruchanはやはり,ACEのラジオというとゲルマニウムTrがよく,なんとかゲルマ版が入手できないかと探していました。

オークションで入手しました。完成品でも4~5,000円はします。未組み立てのキットだと1万円くらい,という感じですが,多少安く入手できました。

ACE 6石トランジスターラジオキット1.jpg ようやく入手できました。

実を言うと,ゲルマニウムTrとシリコンTrじゃ,かなり音が違います。CherryのCK-606で両方作りましたけど,ゲルマの方が聞きやすい感じです。

と言うことでACEのAR-606のゲルマニウム版を探していたところ,なんとか未組み立てのキットを入手することができました。別に完成品でもよかったのですが,完成品の場合は組み立てた人の技量によって性能や配線が大きく異なるため,可能なら未組み立ての方がよいです。結構,キットの組立品って要注意で,アンプなども危険な配線がしてあったり,イモはんだで音が出なかったり,すぐに故障したりして,痛い目に遭うことがありますから,気をつけないといけません。

ACE 6石トランジスターラジオキット2.jpg 中身です。

残念ながら,ドライバ用の段間トランスがありませんでした。現行品で代用します。

    ☆          ☆          ☆

さて,ACEの6石スーパーのキットを組み立てたいと思います。Trのラインナップは

2SA102(conv.)-2SA101(1st. IF)-2SA101(2nd.IF)-2SB175(LF)-2SB172(out)

とオール松下のラインナップです.......orz。あまりこの会社の製品は昔も今も好きじゃないので.....。

ACE 6石トランジスターラジオキット3.jpg オール松下です.....[雨]

それぞれ,MC1022SA102),MC101(2SA101),OC752SB75), OC722SB72)という旧型番があります。いずれも蘭Philips傘下の英Mullardの開発です。松下電器はPhilipsと1952年に業務提携したので,技術導入して同規格のものを製造しました。こちらでも書いていますが,OC72が一番古く,1954年の開発です。もっとも,松下=Philipsの業務提携で半導体が含まれるようになったのは1956年の契約更改以降のようですから,松下版のOC72はその年以降の製造だと思います。

ただ,MCではじまる型番はPhilips系のTrの型番じゃありません。どうも,AF101と同特性の高耐圧版のようですから,松下独自のTrのようです。MC101の開発年はわかりませんが,高周波用は難しかったので,1958年以降だと思います。

もう,現在じゃ,2SA101以外は入手は困難でしょう。まあ,2SC1815のようなシリコンTrでもTO-92のTr自体が絶滅危惧種ですから,ゲルマニウムTrなんてもはや博物館入りですね。ちなみに,ACEのAR-606やCherryのCK-606のシリコン版はオール2SC1815のようです。ただ,おそらく,どちらも初期の頃のものは2SC372だと思います。CK-606は最後期は2SC3198でした。シリコンの時代になるとfTも向上し,Pcも大きくなって1つのTrで出力でも使えたりするので,オール2SC1815なんてラジオが多く,ちょっとつまらない感じです。ゲルマの時代は高周波,IF,低周波,出力で全部,違う石が使われていましたけど.....。

さて,AR-606の組み立てですが,Trに関してはiruchanも2SA101以外の手持ちはありませんので,キットのTrを使うことにします。手持ちのゲルマニウムTrを使おうかとも思いましたが,オリジナルを尊重したいと思います。

入手したキットはほぼ完品でしたが,なぜかドライバ段のトランスのみ入っていません。どこかで,昔,紛失してしまったのでしょう。

まあ,段間トランスは8kΩ:2kΩのトランスを使うのが普通なので,山水のST-22がぴったりです。

出力トランスはキットの付属品が入っていましたけど,あまりにコアが小さく,音が悪そうなので,段間と同じく,山水のST-32(1.2kΩ:8Ω)にしたいと思います。やはりコアボリュームが小さいとインダクタンスが稼げませんから低音が出ず,トランジスタラジオ特有のキン,キンという音になってしまい,聞きにくいので,できるだけ大きなトランスを使いたいものです。

なお,どちらも山水のは高いので秋葉のシオヤ無線さんで売っている互換品を使いました。値段も安いし,性能もよいです。ただ,いずれもキット付属品より大きいので,基板の取付穴を開け直しています。もっとサイズの大きなものもありますが,ケースに支えちゃいますので,ここで我慢します。

ACE 6石トランジスターラジオキット5.jpg トランスです。

いちばん右がオリジナルの出力トランスで,左が段間のSD-22(8kΩ:2kΩ)とSD-32(1.2kΩ:8Ω)です。山水のトランジスタ用トランスの互換品です。ずいぶんとコアボリュームが違います。

あと,改良点としては,アンテナコイルとバリコンの間に5.6ΩをいれてQダンプしています。こうすると同調がブロードになって,音もHiFiになります。

残念ながら,回路図はなかったのですが,基板上に記号がシルク印刷されていますから,簡単です。

全部で3時間ほどもあれば配線が終わります。

ACE 6石トランジスターラジオキット基板.jpg 完成基板です。

入念にチェックした後,電源を入れますが,その前に,本機はゲルマニウムTrを使っているので,Trのコレクタにはマイナス電圧がかかることを忘れちゃいけません。シリコンと同じように電源を配線すると逆に電圧がかかっちゃうので十分気をつけてください。

ACE 6石トランジスターラジオキット基板1.jpg 局発周辺です。

  やはりメタルキャンのゲルマTrはいいですね~~[晴れ][晴れ]

バリコンやIFTは純粋な日本製です。ケミコンもレトロでとてもいい感じです。Bellコンデンサと表記してありますが,どこの会社の製品だったのでしょうか。

驚いたことに,やはり信頼の日本製!

ACE 6石トランジスターラジオキット4.jpg ご覧の通りです。

まず問題ないだろうとは思いつつ,念のため,テストしてみると全部,ほとんど容量抜けしていません。やはり電解コンデンサは日本製がいちばんだと思います。

ACE 6石トランジスターラジオキット6.jpg ケースに入れました。

さて,スイッチON~~~!!

いきなり,カリ,カリと雑音が聞こえますので,一応,成功のようです。ウンともスンとも言わない場合はトラブルありです。

しずかにダイヤルを回すとなんと,すでにNHKが受信できちゃうじゃないですか!! おまけにかなりの感度で,大音量で鳴ります。ダイヤルの位置もほとんど同じですし,さらに高周波の方へ回してもいろんな民放がそれぞれ指定の位置で鳴る感じです。

う~~ん,おそらく,本機は事前にOSCコイルやIFTが調整してあって,ほとんど無調整でもちゃんと鳴るようになっていたんだと思います。

本機は中学の技術の授業などで使用されることが多かったので,中学生が配線しても必ず鳴るように,事前にメーカーで調整してあったのだと思います。せっかくはんだづけして配線しても鳴らなかった,じゃ,かわいそう,と思われたのでしょう。キットを作る会社として,責任を感じておられたのだと思います。

本当に頭の下がる思いです。OSCコイルやIFTはインダクタンスをあらかじめ設定された値に調整してから,箱詰めされたのだと思います。秋葉なんかでバラバラに部品を買ってきて組み立てたらこうは行きません。

    ☆          ☆          ☆

さて,ようやく配線は完了しました。ほとんど調整なんてしなくても高感度で動作する状況ですが,次回はじっくりトラッキング調整をしてみたいと思います。

それにしても念願のACEの6石スーパーのキットを入手できてよかったです。それに,おそらくは70年代の製造で,45年くらい前のものだと思います。実際に今でも動いてびっくりですけど,長年,寝てばかりいた貴重なゲルマニウムTrも働く機会を得て喜んでいるでしょう。


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中国製7石トランジスタラジオキットのゲルマニウムトランジスタ化~その2~ [ラジオ]

2018年8月11日の日記

完成基板2.jpg やっと,鳴るようになりました......。

さて,前回は中国製の7石(実際には6石ですけど)トランジスタラジオキットをAmazonで購入して,ゲルマニウムTrで作り始めました。

とりあえず,まずは低周波部から組み立てて,順次,テストしていきます。

案の定,ウンともスンとも言いません。それに,普通はスイッチが入ったとたん,ガリッと音がするのが普通ですが,それすら言わないので,これは悪い予感がします.....。

まず,ウンともスンとも言わないのは低周波部のトラブルが予想されます。

問題はやはり,低周波段の2SB171のバイアス回路にありました。

ここは前回も指摘しましたように,S9013Hという中国製Trを固定バイアスで使っています。これは危険な回路で,個々のTrの特性に依存しますので,このままだと簡単に他のTrと入れ替えることができません。おまけに温度的に不安定で,もともとTrという素子は温度係数が正のため,温度が上昇するとさらに電流が流れやすくなる性質があり,危険なのですが,この回路ではそれを防ぐことができません。

Tr固定バイアス回路1.jpg固定バイアス回路

このとき,コレクタ電流ICは次の通りとなります。また,Trは導通状態ではシリコンでVBE=0.6V,ゲルマで0.2Vとほぼ一定と考えてよいので,Vccが一定で,同じTrを使うなら,コレクタ電流はRBだけで決まっちゃうことになります。

          Ic計算式(固定バイアス).jpg       

問題はIChFEの関数になっちゃうことで,hFEというのはTrの品種によっても,また,同じTrでも製造時のばらつきが非常に大きく,平気で2倍や3倍くらいは変わっちゃうので,この回路にしちゃうとほかのTrと差し替えができません。おまけにTrは温度係数が正なので,温度が上昇すると際限なくコレクタ電流が流れてしまうことになります。熱暴走ですね。

そこで,こういうことがないように考えられたのが電流帰還バイアスで,エミッタに抵抗が入っているのが特徴です。特にゲルマの時代は電流帰還バイアスが定位です。▼の図の (a) が正規? の電流帰還バイアス回路です。

Tr電流帰還バイアス回路1.jpg電流帰還バイアス回路

ベースに分流回路を設け,そこにベース電流より多め(10倍以上)の電流を流してやれば,ベース電位はほぼ固定されちゃいますので,自動的にコレクタ電流も決まってしまいます。

          Ic計算式(電流帰還バイアス).jpg

さっきの固定バイアスと違うのは,分流回路にIBより十分大きな電流を流す,と言う条件がありますが,hFEが出てこないことで,Trのばらつきを抑えることができます。

この回路だと温度的にも安定で,仮にコレクタ電流が増えても自動的にエミッタ電位が上昇し,コレクタ電流を制限する方向に作用します。ちょっと負帰還みたいな感じなので,これを電流帰還というのですが,わかりにくい用語だといつも思います。ちなみに真空管の自己バイアスはこの作用があり,過電流が流れると自動的にカソードの電位が上昇し,バイアスが浅くなる(プレート電流が減る)ようになっていて安全です。

Trのパワーアンプに終段のTrのエミッタに0.22Ωや0.47Ωといった低抵抗が入っているのはそのためで,これを省略すると危険です。金田式アンプなんかでは省略してしまっているのですけどね.....。安全を考えたら入れておくべきです。

ただ,どういうわけか,シリコンの時代になると,R2を省略してしまった(b)の回路が増えてきます。Cherryの6石や8石のTrラジオキットもそうですし,シリコンTrを使った市販ラジオはほぼこれです。Trのばらつきが減ってきたからとか,ひとつでも部品を減らしたい,と言うこともあったのでしょうけどね.....。

なぜかこれも電流帰還バイアスの一種,と言うことになっているのですが,iruchanはこれは固定バイアスと言うべきだと思っています。やはり安定性の面では (a) の方が優秀なのは言うまでもありません。今回の中国製キットも高周波部はこの回路になっています。

先ほども書きましたが,低周波部は固定バイアスになっていて,最初,試しにそのままやってみたら思いっきり発振してスピーカから強烈な音がします。オシロで見てみると,4kHzくらいで発振していました。やはり固定バイアスはダメです。

しかたないので,エミッタに抵抗を入れ,きちんと電流帰還バイアスにしたら発振が止まりました。やはりゲルマニウムTrは電流帰還型バイアスでないとダメなようです。

そこで,まずは固定バイアスとなっている,低周波段の定数をLTspiceで決めて抵抗を変更しました。基本的にはA級シングルアンプなので,動作点はロードラインの中点に来るようにします。

今回,低周波用ゲルマニウムTrのSpiceモデルも作りました。東芝の2SB542SB56を作っておきましたので,ご利用ください。この2種類があれば,電圧増幅用と電力増幅用のTrモデルとして使えるでしょう。ゲルマのSpiceモデルはネットを探してもほとんど見つかりませんので,ご利用いただければ幸いです。高周波TrとしてはNECの2SA56のモデルを作りましたので,詳しくはこちらをご利用ください。

Here are the LTSpice models of Japanese low-frequency germanium transistors. 

.model 2SB54 PNP (IS=2.21785661056217E-10, BF=80, EG=0.67, VAF=67, RB=10, RC=1.53846153846154, TF=1.59154943091895E-07, CJC=42p, CJE=63p, MFG=TOSHIBA)

.model 2SB56 PNP(IS=5.28833988298141E-10, BF=56, EG=0.67, VAF=71, RB=10, RC=3.6231884057971, TF=1.59154943091895E-07, CJC=42p, CJE=63p, MFG=TOSHIBA)
 
この,.modelではじまる部分を,LTspiceのstandard.bjtファイルのどこかにコピペしておけば使えるようになります。

XH108-2 低周波部Spice.jpg LTspiceでシミュレーションです。

        ☆         ☆         ☆

ようやくこれで低周波部が動作するようになり,スピーカからもガリガリと音がするようになりました。

ただ,まだおかしい......orz。

どうにも音量が非常に小さいのです。

さんざん原因を調べたところ,やはり5kΩの可変抵抗が不良のようです。どう見てもチャチだし,壊れそうと思っていました。しかたないので,Alpsの基板用に交換しました。

また,出力段のバイアスは河童さんからいただいた基板についていた,SV31を使います。これはバリスタです。

ゲルマニウムTrの時代は,温度補償用によく用いられました。電気的にはDiですが,温度特性がTrと同じのため,出力段の素子の温度補償用に用いられます。オリジナルの回路も1N4118というDiを使っています。

SV31底面.jpg 三洋のバリスタSV-31底面

う~~ん,ひっくり返して底を見たら,ちょっと面白いことに気づきました。

実を言うと,バリスタというのはP-N接合面を持っていて,Diと同じ構造なのですが,出来損ないのTrを使っていた,と言う話があります。Trは初期の頃は非常に歩留まりが悪かったのはよく知られていますが,コストも高いので,ひとつP-N接合ができなかったとか,特性が悪くてリジェクトされたTrの脚を1本切って,バリスタにしていることがあります。SV-31ももとは3本脚だったようで,そういう感じです。英MullardのOCP70というフォトTrも,OC70の出来損ないだという話を以前書きましたけど,バリスタもそのようだったようです。

ところが....。

いつもはiruchanはここにサーミスタを使っているのですが,SV31を使ってみると厄介なことに気づきました。サーミスタだと動作電流でバイアスを自由に変更できますが,バリスタだとそうはいきません。使用してみたら出力段の2SB134に100mAくらいの電流が流れて,触ると熱くなっています。まずい......。

残念ながら,サーミスタだとサーミスタに電流を流すための抵抗を大きくするとバイアスが小さくなりますが,バリスタだと調整できません。しかたないので,ここはバリスタをあきらめ,いつもの通りサーミスタにしました。

さて,ようやくこれで低周波部はOKとなったので,次は局発から調べていきます。

残念ながら,こちらも動作していません......orz。

本機は高周波部(IF含む)はすべて電流帰還型バイアス回路となっていますが,シリコンTrの場合は,少々手抜き? の (b) のバイアス回路となっていることが多く,今回もオリジナルはこうなっています。

LTspiceで回路定数を決め,きちんと電流帰還型バイアスにしてようやく局発が動作するようになりました。

        ☆         ☆         ☆

さて,ここまで来たらトラッキング調整を先に済ませてしまいます。最後でいいんですけど,ゲルマニウムTrを使っているし,例によってカバレージでトラブるので先に調べておこうと思います。高い方で発振が止まる,なんてこともよくありますので.....。

局発はAMラジオの場合,受信周波数+IF分だけ高い周波数を発振させないといけません。今回,IFは450kHzで作ることにしますから,985kHz~2055kHzで発振すればOKです。

またまたところが.....。

予想してたんですが,上が厳しい~~!!

どうやっても1800kHzくらいにしかなりません。これじゃ,受信上限は1350kHzということになっちゃいます[雨][雨]

オリジナルのシリコンTrだと問題ないのかもしれませんが,バリコンを交換するしかなさそうです。

どー見てもチャチなバリコンだったし,これはアカンのちゃうか? と思っていたらやっぱりでした。

しかたないので,やはり日本製のミツミのPVC-20Yに交換したら楽勝で2200kHzくらいまで発振しますから,ちゃんとカバレージが取れました。

頭に来て,LCRメータで容量を調べました。

中国製7石Trラジオバリコン
OSC 5.5pF ~  63.8pF
ANT 5pF ~  144.7pF
 
ミツミ PVC-20Y
OSC 4.44 ~ 64.6pF
ANT 4.47 ~  145.3pF
  
なんだ,悪くないじゃないか,と思ってしまうのですが,トリマがおかしく,メインのバリコンの下限位置だとちゃんと調整が効くのですが,上限位置だとトリマを回してもほとんど変化しません。
 
局発上限.jpg 局発の波形
 
調整は,いつも通り,下限をOSCコイル(コア赤)で決め,上限はバリコンのトリマ(O)であわせます。このとき,局発のTr(2SA353)のコレクタにデジタルオシロや周波数カウンタをつなぐと調整ができます。
 
        ☆         ☆         ☆

次はIFTのコアの調整をしして,きちんとIFに同調させておきます。テストオシレータを450kHzで発振させ,適当な電線をつないでおくと,バーアンテナが受信します。テストオシレータは1kHzくらいで変調できるので,AM変調した正弦波を出しておいて音が最大になるようにコアを調整すればOKです。

ちなみに,iruchanは455kHzじゃなく,450kHzで調整することにしています。PLLシンセサイザのラジオは450kHzとなっていることが多いです。なお,どういうわけか,本機は465kHzのようです。中国はIFが465kHzなんでしょうか......。ちなみに,日本で455kHzと決められたのは1950年のことで,戦後初期のスーパーのラジオは463kHzです。

さて,ここまで来たら普通は放送が聞こえるはず.........なんですけど......。

まだ,ほとんど放送が聞こえません。ダイヤルを回すとかすかに放送が聞こえるところがありますが,ほとんどガーッと言っているだけです。

う~~ん,困ったな~~~

とりあえず,こうなったら疑うのはIFの発振。オシロをつないで各IFのコレクタの電圧波形を見てみます。

すると,やはりIFの1段目が2Vrmsくらいに強烈に発振していました......orz。周波数も480kHzくらいです。

IF1発振.jpg あちゃ~~~~[雨][雨]

まあ,これはよくあることで,今までiruchanも自作のラジオでは必ず経験すると言っていいくらいです。さすがにCherryの6石や8石のキットはそういうことはなく,やはり優秀なキットだと思いました。TrのスーパーのラジオでIF2段のものは必ずと言っていいくらい,発振してしまいます。

原因は,やはりゲイン過大,というのが最大の問題です。

hFEの低いTrに交換する,と言うのも手ですが,よほど初期のTrでない限り,hFEの小さなTrというのはありませんし,そもそも,普通のTrラジオはシリコンTrなんですが,これだったら最低でもhFEは100くらいはありますから,そんなTrを使っていてもメーカー製のラジオは発振したりしませんから,Trの交換は最後の手段と考えます。

手としては,負荷となっているIFTの1次側インピーダンスを下げることです。

具体的には,パラに100kΩくらいの抵抗を接続してQをダンプします。普通はこれで直ります。日立製ゲルマニウムTrを使った自作スーパーもこれで止まりました。

でも,これはダメでした。やはり強烈に発振します。

しかたないので中和を試してみます。

IFTの反コレクタ側のピンからベースに数pFのセラミックコンデンサをつないでみます。

いろいろと容量を変えてみましたが,やはり発振が止まりません。

次に疑うのはIFTとアンテナコイルが結合していること。場合によってはIFT同士が結合していることもありますが,たいていはバーアンテナがIFの漏れを拾って発振しています。

特に,今回の基板が小さいので,アンテナコイルが近接していて,これはあり得そうです。

でもこちらもバーアンテナの接続を外しても発振が止まらないので,IFTと結合しているわけではなさそうです。

ほかには,検波のDiのあとのフィルタの定数が悪く,AGC回路に高周波が漏れているというようなことが原因だったりします。特に,HiFi用ということでここのカットオフ周波数を高くしたり,負荷インピーダンスを小さくしているとこういうことがあります。

あとは,コレクタ電流が大きすぎると発振することがあります。IF段は最大でも1mAくらいが普通で,あまり大きな電流にしてはいけません。結局,本機は0.2mAくらいまで電流を下げました。-Vccからベースに入っている抵抗を最初は22kΩにしていたのですが,最終的に100kΩに上げています。ちなみに,CherryのCK-606は330kΩを使っています。

そこで,820kΩにしたら発振は止まったのですが,さすがにやり過ぎ,という感じで,結局,IF1のベース抵抗は100kΩとしました。

これでようやく局が入るようになり,高校野球中継が入るようになりました[晴れ][晴れ]

最終的な中国製7石Trラジオキットのゲルマニウム版回路は下記の通りとなりました。

7管式収音机回路GE版.jpg

まだ,感度不足で,NHKでもボリウム最大でようやく音が聞こえる,と言う次第なんですが,つづきはまた次回とします。


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中国製7石トランジスタラジオキットのゲルマニウムトランジスタ化~その1~ [ラジオ]

2018年7月17日の日記

急に猛烈な暑さとなりました。一昔前まで考えられなかったような最高気温が記録されています。皆様におかれましては,くれぐれもお身体ご自愛ください。

さて,このところゲルマニウムTrを使ったAMやFMラジオを作っていますが,どうにもうまくいかず,泥沼にはまってしまっているiruchanです。

きょうは,中国製の7石トランジスタラジオキットをゲルマニウム化したいと思います。

以前,国産のCherryの6石8石のキットをゲルマニウム化していますけど,さすがに国産なだけあって,部品の品質もよく,また,初心者向けの電子工作と言う目的もあってか,プリント基板も余裕を持って広々とわかりやすく作られているし説明書も詳しいので,何の苦労もなく,ゲルマニウムTrに置き換えることができました。

残念ながら,昔なつかしい,ACEやHOMERなどとともに,Cherryのキットも製造中止になってしまい,もう入手することが難しくなってしまいました。これじゃ,電子工作に興味を持った子供たちがラジオを組み立てることができないし,工作の楽しみを経験することができないじゃないか,日本はもう終わりだなぁ~~~!! と思っているiruchanです。大げさ?

と,思っていたら秋葉原にある,aitendoというお店で中国製のラジオキットが売られていました。結構,ネットにも載っていて,作った人がいらっしゃるようです。

いつもながら天邪鬼なiruchanはシリコンじゃね~って感じでこれをゲルマニウム化しようと思いました。ACEやCherryもシリコンTrになっていましたけど,それを2SA101なんかのゲルマニウムTr化しちゃいました。

買ったのはK-108Cという緑色の基板のもの。ほかに,K-108Bというケース付の黄色い基板(紙フェノール?)のものもあります。

K-108C基板.jpg K-108C基板

   ここまで作ったのですけれど......。

ただ,結論から先に言っちゃいますと,これらのキットのゲルマニウム化はあきらめた方がよいです.....。

もう,正直言って,えらい目に遭っちゃいました......。

なにより,aitendoのキットはほとんどが説明書も回路図もないのですが,やはりそれは大変困るし,それに,このキットの最大の問題点は基板が小さいこと。SMD部品じゃなく,普通のアキシャルリードの部品を使った基板としてはかなりの実装密度で,容易にはんだづけできません。特に,ゲルマニウムTrだと,金属缶のTO-1型のパッケージが多いのですが,これがギリギリ。IFTのケースに触れそう。TO-1型のTrは外被がコレクタになっているので,GNDに接続されているIFTのケースに接触するとVccをショートしちゃいます。おまけに,K-108Cのほうは両面スルーホール基板になっていて,部品の交換が容易じゃありません。さらに驚いたことに,キットとして売られているものなのに,パターンミスがあり,もとから動作しないんですね。おかげで貴重なゲルマTrを1個,飛ばしてしまいました.....orz。

両面スルーホール基板というのは,現在ではごく普通のプリント基板で,LepaiのLP-2024A+などのアンプでもよく使われています。もちろん,両面ですから,基板の表と裏にパターンがあり,それぞれのパターンを連結するため,金属製の丸い円筒形のスリーブが埋め込まれていて,上下のパターンを連結するようになっています。ま,今じゃ,上下両面どころか,16層なんて基板も出ていますけどね......。

そのスリーブのおかげで,一度はんだづけしたら終わり,という風に考えた方がよく,部品をつけ間違えて再度,加熱して部品をはずそうとすると一緒にそのスリーブも外れてしまうことが多いのです。

こうなったら厄介で,ハンダが載る,ランド部分がなくなっちゃうので,新しい部品のはんだづけができなくなっちゃいます。両面スルーホール基板で部品を取り外すときはこの金属スリーブまで外さないよう,気をつけないといけません。おまけに,パターンの銅箔の接着が弱く,そのうち,パターンもごっそりはがれてくる.....という始末で手に負えません。

さすがに,もとがシリコンTrの回路に,ゲルマニウムTrを使用した場合,バイアス電圧が異なるため,周辺の抵抗値をあとから変更しないといけないのですが,両面スルーホール基板のせいで,部品の交換が非常にやりにくいです。

また,パターンミスの問題のせいで,完成して電池をつないでみてもウンともスンとも言いませんでした。もちろん,このときはパターンミスがあるなんて思いもしません。

これ,たいていはスーパーの場合,局発が動作していません。

やはり,原因はそうで,コンバータのTrのコレクタにオシロをつないでも一直線のまま.....orz。

しかたないので配線をチェックしますが,おかしいところはありません。そこで,Trの各電極の電圧を測ってみてびっくり。局発のTrには松下の2SA101を使ったのですが,コレクタが-7Vくらいで,ベース電圧もまったく同じです。こんな高い電圧になるわけがありません!! おまけに,IF段は,というとどれもコレクタ電圧が-2Vくらいになっていて,異常に低いです。こちらの方はIF段のコレクタ電流が大きすぎることを意味しています。

それに,TrというものはVBEはゲルマTrで0.2V,シリコンで0.6Vくらいなので,ベースにこんな高い電圧がかかっていると,ベース~エミッタ間電圧は最大でも5VくらいでTrが死んじゃいますから,2SA101はお亡くなりになってしまっています。

回路をさんざん見直してみても原因がわかりません。クソ~~~っ!!

頭にきて,原因はベースがどこかで-Vccにつながっているから,と考えて手当たり次第にテスターで導通テストをしてみると,なんたることか,プッシュプル出力段となっているOPTの1次側と導通があります。

まさか.......。

と思って見てみると表側の細いパターンがOPT1次側の金属製スリーブと接触しているではないですか!! これじゃ,もろに局発のTrのベースに-Vccがかかっちゃいます!

基板不良箇所.jpg 基板パターン不良

こんなこともあるんですね~~。メーカ製の基板に欠陥があって,そんなものを売っている,とは思いもしませんでした。

結局あれやこれやで部品を交換しているうちに基板も傷んできたのですべてのTrを撤去し,名誉ある撤退をすることにしました。全将兵を無事に撤退させたキスカ奇跡の撤退と言いたかったけど,将兵が1名犠牲になっちゃってますから,ダンケルク撤退ですね~~~。

        ☆         ☆         ☆

そこで,今回はK-108Bの方にしようかと思いました。こちらは基板が片面基板だし,材質も紙フェノールのようで,色も黄色い色をしています。

ただ,このキットはAmazonでも安く売られていますし,もとは中国製なので,Ali Expressだと送料なしで$6くらいで売られています。iruchanは必要なのは基板だけと言ってもいいくらいなので,Amazonで買いました。Aliは少し不安がありますからね.....。

amazon画面1.jpg 7つチューブってなんだよ.....

そのほか,"週の真ん中では" とか," テストリポート","ケースが戻ってくることはありません" って何? ってな感じで,怪しげな日本語だらけだし,見れば見るほど怪しいことばかりですけど,一応,説明書もついているようだし,Ali Expressなどでも広く販売されていたり,また,You Tubeなどでも製作動画が出ているくらいなので,大丈夫だと思いました。 最近のAmazonで売ってる怪しげな工具や部品同様,注文したら中国から送られてきました。工具類は安くていいものがあるので,結構,利用しています。

とはいえ,このキットの場合,部品の品質には疑問点がつきます。特に,ボリウムとバリコンは捨てて,国産のものに交換しておく方が無難だと思います。IFTは大丈夫ですが,OSCコイル(赤)も国産に変更した方がよさそうです。一応,ディスクリートの半導体ラジオが売られていた時代,IFTもOSCコイルもゲルマ用とシリコン用で分かれていましたし,IFTもTrのインピーダンスにあわせて何種類もありました。

回路はほとんどK-108Cと同じです。説明書も中国語ですが,ついていて,回路図やプリント基板のパターン図もカラーで印刷されたものがついているので,親切です。

内容物.jpg キットの中身です。説明書も付属してます。

  ちょうど2週間で中国から届きました。

さて,ということでオリジナルはシリコンTrを使っていますが,これをゲルマニウムTrで作っていきたいと思います。

オリジナルはS9013HというTrと,S9018HというTrを使っています。どちらも2SC1815などと同様のTO-92型なので,使いやすいです。前者がハイhFEのため,高周波段に使用され,後者が低周波増幅と電力増幅に使用されています。

7つチューブというのは7石,と言うことらしいですが,驚いたことに検波までダイオード接続したS9018Hが使われていることで,ここはゲルマDiにしたいと思います。

S9018H.jpg S9013HS9018H

それにしても,普通,7石というと高周波増幅(RF)つきか,中間周波3段,あるいは他励式コンバータのことを指し,検波用のDiまでは含みません。6球スーパーは高周波つきなのを意味するのと同じで,マジックアイがついていても6球スーパーとは言いませんので,ご注意ください。

だから,本機は6石スーパーです。回路もごく普通の6石スーパーです。特に変わったところは見受けられません。

K-108-468-sch.jpg オリジナルの回路です。

それならゲルマ化は簡単.....と思っちゃったのですけれど......。

実はこれが茨の道。大変な目に遭っちゃいました......orz。

使用Tr.jpg 使用予定のゲルマニウムTr

すべて中古です。三洋のTrはいつもお世話になっている河童さんからいただきました。2SB171はもとはOC71で,松下が蘭Philipsから技術導入して作ったTrです。

どうも,問題は本機の回路がS9013HなどのTrに最適化して設計されているためのようで,Trを交換するととたんに機嫌が悪く,うまく動作しないのです。

S9013HS9018HというTrは中国独自の規格か,と思いましたがオリジナルはフェアチャイルドのようですし,相当昔のTrのようです。海外製もONセミなどがあります。だから,結構,信頼性が高いTrのようです。中国ではたくさんのメーカが作っているようで,ネットで規格表も簡単に手に入りました。末尾のHはhFEのランクのようで,HだとS9013Hが144~202,S9018Hが97~146のようです。

おまけに電極の配置が日本製のTO-92と違って,左からEBCという配置になっているのも好都合。Cherryの6石キットなどだと2SC1815の代わりに2SA49なんかを使ったりしたわけですが,電極の配置が2SC1815はECBなので,ベースだけアクロバティックにピンを曲げて配線しないといけなかったのですが,S9013Hなどだと,電極は同じ配置なんですね~~(^^)。

ただ,残念ながら,基板のパターンはTO-92型なら一直線で・・・となっていればよいのに,わざわざと三角形になっているのは問題で,おまけにベース位置は上下逆で,ゲルマのTO-1型用だとの穴でないとまずいのです。

まあ,多少,ベースのピンを少し逆に曲げてやればいいのですけどね....。

2SB270.jpg こんな風にはんだづけします。

それと,やはりゲルマとシリコンじゃ,バイアス電圧が異なるので,バイアス回路はいじらないといけないのですが,前回までのCherryのキットなどでは,出力段以外はいじる必要がなく,一発で動作しました。ただ,低周波のS9018Hの回路は固定バイアスとなっているため,最低限,変更が必要だとはすぐに気がつきました。

今回もまずはそれで.....と思いましたが,決定的にダメでした。やはりバイアス回路はいじらないといけないようです。

        ☆         ☆         ☆

次回はバイアス回路の変更と調整に入りたいと思います。


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