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6G-A4シングルパワーアンプの製作~その3・製作編~ [オーディオ]

2016年6月14日の日記
 
中学の頃からあこがれていた,東芝の6G-A4を使ったシングルアンプを今ごろになって作っています。また,タンゴのトランスを作っていたアイ・エス・オーさんもとうとう解散してしまったので,長年の感謝の念を込めてタンゴのトランスを使ってアンプを作っています。
 
さて,今回は前回にひきつづいて製作編です。
 
シャシーは小坂井電子のKS-270にしました。これを見つけたから作った,という感じがするくらい,本機にぴったりだと思いました。
 
昔,伊藤喜多男氏が自作のアンプに用いられていたような天板がアルミ,フレームが鉄というシャシーで,大きさは270mm(W) x155mm(D)x40mm(H)と非常に小さいです。
 
KS-270.jpg 小坂井電子のKS-270 
 
iruchanはどうにもだだっ広いシャシーにまばらにトランスや真空管が載っている,というアンプが嫌いです。作りやすいし,放熱の観点からは大きい方がいいんですけど,ただでさえ真空管のアンプは大きくなるので,小さく作りたいと思っています。
 
このシャシーはとてもデザインがよく,気に入りました。
 
ただ,残念ながら普通のシングルアンプには小さすぎると思います。実は,チョークコイルを載せられません。
 
iruchanはリップルフィルタを使うことにして,もう,チョークコイルは使わないことにしたので,いいんですけどね。普通にチョークコイルを使ったフィルタ回路を用いたアンプは作れません。
 
と言う次第で,本来ならこのシャシーは6BQ5シングルとか,6V6プッシュプルのモノラルアンプとか,そういった小型アンプ用のシャシーです。
 
なお,フレームが鉄なので頑丈なのはいいんですが,やはり工作は大変です。丸穴なら何とかなりますが,角穴を開ける,となると大変です。ということで,四角い穴を開ける必要のない部品を使います。
 
その割に天板はアルミ製なんで加工が楽なのはいいですけど,板厚が薄すぎ。t1.2mmでなく,最低でもt1.5mmはほしい感じです。加工中に変形しちゃいますので,気をつけて加工します。
 
さて,まずは図面を描いて部品配置を検討します。本来ならCADのソフトを使うべきなんでしょうが,本格的な2次元CADはとても高く,買うと大変です。むしろ3次元CADの安いのを買った方がいいくらいだと思います。
 
そんな感じなのでiruchanはいつも花子で図面を描いています。ちゃんと実寸で描けるので花子で十分です。プリントアウトしてシャシーに貼れば,それだけでけがきしなくてもポンチが打てますので正確に穴開けができます。よく,トランスの四隅の穴がうまく合わなくて苦労しますけど,こんな風にやれば一発でOKです。
 
6G-A4シングルアンプシャシー加工図.jpg シャシー加工の検討
 
蛇足ですけど,PH-100とPH-100Sは寸法が異なりますので,気をつけてください。単にシールドがついただけと思っていましたが,形状が違うようです。すぐに気がついてよかったです。 
 
さて,ここまで来て問題発生!
 
フューズホルダ用の穴が開けられません。
 
普通,フューズホルダにはφ16mmの穴をシャシーパンチを使って開けますが,フレームが鉄のため,シャシーパンチが使えません。まあ,無理すりゃ使えないことはない厚さなんですけどね......。
 
困ったな~と考えていたところ,ひょっとしたら海外製は大丈夫なんじゃないか,と思い調べてみたら米国製はφ1/2"ということで,φ13mmの穴でいいことに気づきました。これならボール盤で開けられますね!
 
米Littelfuse社のフューズホルダを使いました。米軍用ですから頑丈です。困ったときの米軍頼みどっかの国と同じですね......(^^;)。 
 

Littel fuse.jpg 米Littelfuse社のフューズホルダ 

ついでに,米国製の部品でそろえようと,トグルスイッチもArrow Hartにしました。ハンドルの頭がボールみたいに丸くなっているアンティークなスイッチが手に入りました。ついでにこれも米軍用です。結構,気に入っています。

Arrow Hart.jpg Arrow Hartのトグルスイッチ

pilot+power switch.jpg こんな感じです。

パイロットはこのところ気に入っているマルツで売っているピンクのLEDにしました。往年の名CDプレーヤPhilipsのCD104でも使いました。 ピンクなんて真空管アンプに合わないんじゃないの~? って思ってましたけど,意外にきれいでよくマッチしました。 

さて,これでトランス1次側の配線用部品がそろっちゃいましたので,さっそく,トランスの1次側とヒータ回路だけ配線しちゃいます。

ここまで来たらヒータの点灯テストです。真空管アンプの場合,必ずこれをやりましょう。 

6G-A4, HP 6AX5GT.jpg ヒータ点灯テストです。

整流の6AX5GTは国産はないのか,米Hewlett Packerdのものにしました。国産だと5G-K20くらいですかね。いずれ差し替えたいと思います。

この会社は今でこそパソコンメーカですが,以前は計測器メーカでした。自社のオシロなんかに使っていたのでしょう。もちろん真空管までは製造していませんでしたから,RCAやGEのOEMだろうと思ってみてみたら,Manufactured by RCAと書いてありました。 

すべての真空管を挿し,コンセントにつないで点灯テストをします。全部の真空管が無事に点灯したら,以後,ヒータ関係の配線には一切,手を加えないことにしておきます。

あとは残りの配線を片付けちゃいます。シングルアンプなので2日あれば終わっちゃうでしょう。 

全回路図を▼に示します。基本的に武末数馬氏の "パワーアンプの製作" 上巻に載っている6G-A4シングルアンプの回路です。ただ,電源は原設計はチョークコイル使用のLCπ型フィルタですが,iruchanはTrを使ったリップルフィルタにしています。これだと前回のブログにもある通り効果絶大で,ハムを根絶できます。

6G-A4シングルアンプ.jpg全回路図です。 

また,原設計は前段はMT管の6AU6ですが,オールGT管にしよう,ということで前段は6SH7にしました。そのほか,原設計はモノラルですが,本機はステレオなので,ドライバ段用の供給回路の抵抗など,いくつか定数を変更しました。

位相補正用の400pFは完成後,調整する必要がありますね。また,6G-A4のグリッドに入っている1kΩは寄生発振防止用で,MOS-FETでもよく使われます。これはできるだけ真空管のグリッドに近接してはんだづけする必要があります。

ところで,この回路,どうも変だと思いました。

MLF回路になっていて,NFBループが二重になっているんですが,内側の6G-A4のプレートから6SH7(原設計では6AU6)のカソードに還る回路にストッピングコンデンサが入っていません。最初は誤植か,と思いましたが後半の多極管シングルアンプの解説のところ(p.436)に解説があり,ない方が低域の位相回転がなくなり特性がよくなるとのことです。 直流成分もフィードバックされちゃいますが,分圧されて小さな電圧になってしまうので問題ありません。

なお,6G-A4は放熱のため,g1の#1と#5ピンを太めの銅線でつないでおく必要があります。iruchanはついでに5mmの銅板をはんだづけして放熱フィンとしちゃいました........(^^)。

放熱板加工.jpg 6G-A4のグリッド放熱用銅板

放熱板加工1.jpg こんな風に取りつけました。

鉄道模型で使う,幅5mm,t0.5mmの銅板をはんだづけしました。フラックスを塗ってヤニなしハンダではんだづけするときれいに行きます。 鉄道模型ではヤニは使いません。

実は,秋葉原などでヤニなしのハンダを買おうとすると結構大変で,どのお店も電子工作用のヤニ入りしか置いていませんでした。模型屋さんか,Amazonで買った方が早いと思います。模型屋さんだとほんのちょっとの長さのやつしか売っていなくて,巻のやつを探していたらHAKKOがヤニなしの缶を売っています。 

ついでに,6SH76SJ7の#1ピンは必ず接地しておきます。これはメタル管だと金属外被,ガラス管だと内部シールドにつながっていて,内部の電極をシールドします。まあ,オーディオ回路だと接地しなくても少しノイズが出るくらいで問題なく動作しちゃいますし,製作記事でも接地するようになっている回路図は少ないです。でも,高周波回路では接地しないと動作しません。以前,ラジオに使ったとき,接地を忘れて発振しちゃったので忘れたことに気がついたことがあります。また,#3ピンと#5ピンも接続しておきます。g3とKですが,6SH7は内部接続されているので本来は接続不要ですが,6SJ7は外部接続なので,接続しておかないといけませんし,最初から接続しておくと6SJ7と差し替えができます。

6SH7.jpg 6SJ7.jpg 

    6SH7         6SJ7 

なお,メタル管の場合は#1ピンを接地しておかないと静電誘導で高圧が生じ,梅雨時などビリッときますのでご注意ください。静電気と同じなので死んだりすることはないですけど.....。  

コンデンサはカップリングのフィルムコンはASCのもの,電源の電解コンデンサはニチコンやルビコンなど国産を使いました。

なお,6SH7のカソードに入っている100μFは音のよいOSコンにしましたが,6G-A4の方はニチコンのファインゴールドにしました。

というのも,OSコンは正式名称は導電性高分子アルミ固体電解コンデンサというのですが,内部に電解液がなく,固体のポリマーを使っているため,故障時に普通のケミコンだとオープンモードですが,ショートモードで故障することが多いためです。タンタルコンデンサも同じです。OSコンを真空管の自己バイアス回路のパスコンに使用して,故障するとカソード抵抗をショートすることになりますからバイアスが0Vになっちゃいます。危険なので普通の電解コンデンサにしました。前段の6SH7のパスコンの場合はNFB用にまだ470Ωがもう1個入っていますし,そもそも6SH7では大きな電流は流れないので安全です。

やはりコンデンサは適材適所で,音質よりも安全性の高いものにしておく方がよいと思います。カップリングコンデンサはフィルムコンが最適で,オイルやペーパーコン,MPコンなど,ペーパー系コンデンサは長年の間に吸湿してリークしますので不可です。 

内部.jpg 内部の配線の状況 

6SH7周り.jpg 6SH7周りの配線

そのほかの電解コンデンサはPhilips BCコンポーネンツや米Illinois Capacitor製のものにしました。抵抗はA&Bです。Philipsの電解以外は昔,米国の部品屋のバーゲンで買ったものです。 


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コメント 2

てにえ

大きな径の穴を開けるのに、ステップドリルがあると便利です。アマゾンなどで検索してみて下さい。
by てにえ (2016-06-15 21:12) 

iruchan

てにえさん,どうも情報をありがとうございます。

タケノコ状のドリルのことは知っていました。今までとても高いと思っていましたが,Amazon見てみると安いんですね。

φ35mmとφ40mmの大穴を開けたいと思ってホールソーを検討していましたが,これでやってみます。

どうもありがとうございました。
by iruchan (2016-06-16 07:53) 

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