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黎明DCプリアンプの製作~金田式DCプリアンプ第1号・その1:プロローグ~ [オーディオ]

2020年6月13日の日記

このところ,金田明彦氏設計のサブミニ真空管プリアンプオールメタルキャンTrプリアンプを作っています。どちらも音がよいと有名な作品ですね。

その,メタルキャンプリアンプなんですけど,発表されたMJ 1991年6月号のDCアンプシリーズNo.121の記事はとてもいい記事であることはよく知られているのですが,その理由はメタルキャンTrを使った唯一のプリアンプということもありますが,過去の金田氏の歴代のプリアンプを振り返り,歴史的な経緯をまとめてあることにもあると思います。

iruchanは結構,共通一次(古~~~ッ!!)も工学部志望なのに世界史を選択したくらいで,歴史が好きなのですが,中でも技術史はとても好きで,こういうアンプの世界でも歴史を扱った記事はとても好きです。

この記事では,1974年1月号のDCプリアンプにはじまって,単行本の "最新オーディオDCアンプ" に載っている,PPエミッタフォロアを採用したものを経て,GOAまでのプリアンプの変遷がわかるようになっています。完全対称式に変わってからは載っていません。

今日は,その '74.1月号のプリアンプを再現したいと思います。

ただ,実を言うと,このプリアンプは2号機なんですけど.....。シリーズ番号もNo.6です。

DCアンプシリーズNo.2がプリアンプ第1号で,"無線と実験" '73.8,9月号に掲載されています。

第1号プリアンプMJ '73.9-1.jpg すべてはここからはじまった......。

iruchan所有の "無線と実験" 1973年9月号の製作記事です。8月号が設計編で,9月号が製作編になっています。最近のMJみたいに製作編には回路図が載っていない,なん意地悪せずに,昔のMJは必ず両方の号で回路図が載っているのは良心的ってゆ~か~,当たり前だと思うんですけどね.....。

なぜか,このアンプについては,そのメタルキャンプリアンプの記事では触れられていません。

どうも,この第1号は未完成,と考えておられたのか.....実質的な第1号は'74.1月号のもの,と考えておられるのかもしれません。

残念ながら,iruchanも生まれる前のことだし,'74.1月号は持っていないのですが,幸い,プリアンプ3号機の '75.3月号(設計編)は昔,先ほどの'73.9月号同様,オクで手に入れていて,その号に前号機が載っていました。

MJ '75.3.jpg 無線と実験1975年3月号

3号機は初段がおなじみの2N3954に代わってドリフトの改善が図られていますが,2段目はNECの2SA640のままです。出力段がプッシュプルエミッタフォロアになり,以後のDCプリアンプのスタンダードとなるのはもう少し後のことです。

ちなみに,1号機は2SK30GR2SA493GR2SC1000のシングルエミッタフォロア,と言う回路です。2号機は2段目が2SA640(NEC),エミッタフォロアも2SC984(日立)に代わっています。ちなみに,1号機はオール東芝です。

どうもDCアンプでは東芝の石の旗色が悪いのですが,この頃から金田さんは東芝が嫌いだったのか.....。iruchanも東芝は嫌いです。また,2段目が三菱の2SA726に代わると,定番のTrとなりますが,今の2SA872Aはこの2SA726の代役に過ぎない,ということはよく知られていますね。

さて,今回,実質? 1号機の '74.1月号のプリアンプを作りたいと思います。

本当だったら,"無線と実験" '73.9月号を持っているのだから,本当の第1号機を作ればええやんか,と思われると思いますが.....。

使用されているTrがオール東芝というのがどうにも盛り下がっちゃいますし,金田氏も'74.1月号のプリアンプを第1号とされていることも気になります。

ということで,"無線と実験" 1974年1月号の回路で初期のDCプリアンプを再現したいと思います。

なにより,きっかけは日立の2SC984を入手したこと。にSのマークがあるので通信用(電電? 用)ですね。

通信用は高信頼管と同じで,何らかの長寿命やばらつきの少なさなど,信頼性が要求される機械に使用されました。2SC984は規格表を見ると,AF, SWと書いてあるので,初期のコンピュータにも使われたのでは,と思います。国鉄のMARS-1やHITAC101などのコンピュータに使われていたのかも.....。

20年ほど前,まだネットが普及し始めた頃,海外の半導体商社を漁って2SC9592SA627/D188と言ったTrを買い集めましたけど,その中にこのTrがありました。

実はこのTr,DCアンプマニアの間ではよく知られていて,完対アンプの出力段に2SC959の代わりに使うとよいらしいです......。一度,やってみようと思っています。

当時,国内では珍しくなっていて,入手は意外にむずかしかったTrです。ゲルマニウムTrでおなじみのTO-1型とそっくりな形状で,メタル外被ですが,とてもシリコンTrとは思えない形状です。

これは,海外でも同じようで,初期のシリコンTrはゲルマTrと同じ外形,と言うのものがあります。英MullardのOC200なども同じ形状です。

2SA726, A640, A872, C984-1'.jpg 本機で使用するTrです。
別に,2SA493も今でも手に入るし,2SA493もテストしてみてもよいのですけど.....。

あとの2SK30はもちろん,2段目の2SA640も非常に古いTrですけど,今でも入手可能です。

となると作るっきゃない,と思いますね.....そんなのおまえだけだ

回路は▼の通りです。今から思えば,本当にシンプルな2段差動アンプです。

黎明DCプリアンプ回路1.jpgアンプ部です。

また,今回,ちょっと工夫をして,2段目は名石2SA726も使えるようにしたいと思います。

実は,初代の2SA493同様,2SA640もすぐに離縁されてしまい,三菱の2SA726後妻になっちゃうんですけど,音の差を確認してみたいと思いました。その後,完対プリアンプが登場するまで,不動の2段目差動アンプ用Trでした。2SA872はあくまでも代打です。と言って,今作っているオールメタルキャンTrを使ったプリアンプでは2SA606が使われていて,金田氏も絶賛しているのですけれど.....その後,二度と登板することはなかったのは何ででせう?

といって,よく知られた話ですけど,2SA726の電極配置はほかのTrと違うので,基板を共用するにはひと工夫必要なんですが,それはまた次回.......。

2SA726, A640, A872A.jpg 2SA726はピン配置が違います。

左側の2SA872Aは初期型で,銅脚で,表面にご丁寧にもECBの表示があるタイプです。

電源部回路'73.9月号1.jpg電源部('73.9月号)
残念ながら,電源部は'74.1月号を持っていないので不明ですが,プリアンプ第1号の'73.9月号を持っているので,それと同じだと思います。整流はオリジナルは10D-1ですけど,いまどき普通のシリコンDiはノイズが出て使う気がしないので,ファーストリカバリにします。今だとショットキーなんでしょうけどね.....。
トランスは今だとトロイダルにするんですが,タンゴのCT-10の手持ちがあるので活用するつもりです。なお,オリジナルはCT-20です。

残念ながら,'74.1月号を持っていないので,電源が不明ですが,9月号のプリと同じでしょうから,OPアンプ電源です。OPアンプはNECのμPC55Aです。ものすごく古いOPアンプですね。メタルキャンタイプのμPC55Aのほか,モールドタイプのμPC55Dをこちらもネットで入手できました。709と互換品で,すぐに金田氏も709を使った電源に移行します。やっぱ,米軍は強かった......?。

μPC55A, D.jpg μPC55A(左),μPC55D(右)

μPC55Aは現役の時は@2,000円くらいしたそうです。海外から不良在庫で買ったので,安く入手できました。

あとの部品は,抵抗は進のRE55とニッコームRP-24Cにしましたけど,実は金田さんはまだこの頃のアンプはアキシャルリードの普通の抵抗を使っていて,RE55を使うのはもう少し後のことです。

カップリングはゼウスのケースマイカ0.4μFですが,もう,こんなの入手は絶望的なのでスチコンにします。

黎明DCプリアンプ部品.jpg 部品類

20年ほど前,実際に作ろうと思って集めた部品類です。ELNAのsilmicは何に使うつもりだったのだろう.....。タンタルコンは電源のデカップリング用ですが,こいつはショートモードで壊れるので使わないつもりです。名機COPALのλ13Tも買ってありました。残念ながら,抵抗はぶどう色2号のはほとんどなくて,朱色4号ばかりだな.......orz。

次回はプリント基板を作って製作を開始します。

       ☆          ☆          ☆

2020年7月17日追記 ~ドイツから愛をこめて......~

初段のJ-FETには東芝の2SK30ATMを使うつもりだったのですが,よく考えてみると,金田氏が製作した頃はATMじゃなく,Aのはずで,形状も今とは違ってもっと小さく,キャラメルみたいな形をしていたはず.....と思いました。

2SK30A.jpg初期型2SK30A

記憶が薄れてきてしまっていますけど,確かにこんな形でした。このあと,一番右のよく見慣れたTO-92形状にになりますが,初期はモールドと言ってもエポキシ樹脂で固めただけで,どうも角が丸いし,体積も小さい形状でした。よく見るとピンも丸脚だし,銅製と思います。

実を言うと,これが最古の2SK30じゃないらしくて......▲の2SA493も同じですけど,中坊の頃,よく使った2SC372みたいに,シルクハットみたいな形をしていたらしいです。

この2代目の形状のモノは割に最近まで見かけましたし,オクなどで気長に探せばまだ手に入るか,と思ったんですけど.....,2SK30ATM自体,2012年3月にとうとう製造中止となり,お店でも置いているところは少なくなってオクで買うことが多くなってしまっていますから,早めに入手しておこう,と思いました。

eBayでドイツ人が売っていたので買いました。@3.3ユーロでした。ちょっと高いな....。

IDSSも揃っているので初段ペアに使えそうです。


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