餅つきをしました。
2022年12月28日の日記
初めて餅つきをしました。
今までは,ずっと父が餅つきをしていました。ただ,その父も一年前に亡くなり,その前にもう,体力がなくなって数年ほど前から餅つきをしていませんでしたから,かなり久しぶりです。
父は餅がとても好きでした。日本では,ある程度の年齢以上の人は餅というととても大切な,年始の行事であると同時に,米作りの豊穣を祝うごちそうで,特別な意味合いを持っていて,年に一度の楽しみ,と言う人が多かった,と思います。
幸い,iruchanの生まれたところは餅を家でつく習慣があり,毎年,美味しいお餅を食べていました。そういや,家に餅つき器やたこ焼き器があるのは当たり前,と言うところなので,それらが家にない,と言うのが普通だ,と言うのを知ったのはずっと後のことで,かなり驚いた記憶があります。iruchanはスーパーで売っている切り餅はとても我慢がならないので,今年こそ,自力で餅をついてみよう,と思いました。
でも,やってみてわかったのですが.......餅つきって,本当に大変なんですね.......。
時間的にも丸3日くらいかかるし,もち米を運ぶのも餅つき機に入れるのも,また,できた餅を切るのにものすごく力もいるし,本当に大変,と言うことがよくわかりました。
父は,自分で食べるのが楽しい,と言うこともあったのでしょうが,家族の喜ぶ顔が見たくて毎年,餅つきをしていたのだろう,と思い,少ししみじみしました。
iruchanはまだ母が健在なので,いろいろ聞いて初めて餅つきをしました。
まずはもち米の準備。
買ってきたもち米を研いで,その後,まる一晩,冷たい水につけておきます。
母によると,毎回,もち米1.5升にうるち米5合をまぜて蒸していたらしいので驚き。
普通のうるち米を混ぜて餅にすると,つぶつぶのお米が混じって美味しいのですが,合計で2升ともなると研ぐだけでも大変。
さすがに今回は初めて,と言うこともあって,もち米1升にしましたけど,これでも量が多くて大変でした。
なんとかもち米を研いで,冷たい水に一晩つけておきました。
1升でもこれくらいの量になるので,大変です。
翌日は餅つき機を準備します。
まずは蒸さないといけないので,水を餅つき器に入れておきます。説明書によるともち米1升の場合は水400mlなので,それを入れて「蒸す」と言うボタンを押してフタをすればおしまい。
30分ほどで蒸し上がります。
このあと,「つく」,と言うボタンを押して,大体,10分ほどできれいなお餅ができあがります。やり過ぎるとコシのない餅になっちゃうので,早めに切り上げます。
横に,寿司桶みたいな箱とビニールシートを敷いて準備しておきます。ついた餅をここに広げます。
普通だと,このときに鏡餅を作って,父はきなこ餅を作ったりして,その場で食べていましたが,iruchanはそこまでやらず,雑煮用に餅を固めてしまいました。実は,あんまりきなこ餅は好きじゃないんですよね.....。
やはりもち米一升では小さいです。父はこの倍をついていました。
餅は軟らかいので,広がってしまい,薄くなってしまうので,なにかで▲のように押さえておきます。
☆ ☆ ☆
こうしてあとまる二晩,餅を冷やして固まるのを待ちます。固まったら包丁で切ってできあがり,です。
今年はようやく美味しい雑煮が食べられそうです。iruchanの生まれたところではすまし汁に四角いお餅です。
では,皆様,よいお年を。
サブミニチュア管DCプリアンプの製作~その8・ノイズ対策~ [オーディオ]
2022年12月25日の日記
いよいよ年も押し詰まってきました。例年になく,去年もそうでしたが,年末に大雪でびっくりです。やはり地球はおかしくなっているようです。
さて,前回,ほぼ調整を終えたので,いよいよ実際に音を聴いてみたい,と思っています。
ところが....。
もう,気がついているのですが,結構ノイズが多いです。特に,少しハムが出ます。
まあ,ネットを見ても,金田式真空管DCプリアンプはハムが出る,というのは半ば常識なんですけどね......
オシロで出力波形を観察してみると120Hzなので電源のリップルが原因のようです。
また,phonoの時はかなりのホワイトノイズが出ます。VRが12時くらいの位置で,結構,シャーッと大きな音が出ます。
半導体プリアンプでもVRを最大にするとやはりシャーッという音がするので,それほど問題ではない,と思いますが,12時くらいの位置でこれほどノイズが出るとマズいです。
と言う次第で,ホワイトノイズとハム対策を考えます。
☆ハム対策
金田式真空管DCプリはハムが出る,というのは某掲示板にも出ていて,常識のようです。
確かに,特にEQアンプは407Aや717A,EF86といった5極管を使っていますが,スクリーングリッドの使い方が特異で,直接,+Bに接続するようになっていて,Esg>Epという状態になっています。
普通,5極管のスクリーングリッドはEsg≦Epという状態で使うものです。逆にして使うのは,意図的に真空管に大電流を流そうとした,FuttermanのOTLアンプなど,特殊なアンプです。また,パスコンで接地して使うもので,スクリーングリッドは直流的には高圧,交流的には0Vという状態で使いますが,金田氏のような使い方だと交流的に浮いてしまう可能性があります。
電源の出力コンデンサに2.2μFが入っているので,交流的には接地されている,っていえば,そうなんですけどね....。
配線中のインダクタンスや直流抵抗分があるので,必ずしも実際には交流的には接地されません。また,パスコンと直列抵抗の時定数でフィルタを形成してスクリーングリッドにリップルが行かないように設計するのですが,金田氏の設計ではこれができません。
スクリーングリッドは,グリッドなので,当然,増幅作用があり,スクリーングリッド用電源は厳重にリップル対策しておかないと,リップルを増幅しちゃいます......。
ということですが,金田氏の設計はスクリーングリッドに時定数を入れられないので,EQアンプ用レギュレータを2重にし,リップルを減少させています。
ただ,レギュレータ2段は必要ない,とiruchanは考えました。
さすがに,大げさですよね~。
と言うことで,iruchanは一段目はリップルフィルタで代用し,ついでに,フラットアンプにもリップルフィルタ経由で給電しています。
これなら大丈夫,と思ったのですけれど.....。
実は,何のことはない,ハムが出るのはphonoだけじゃなく,CDやAUXなどでも出ます。ということは原因は電源ですけど,EQアンプに問題があるのではない,と言うことがわかりました。
本機の電源回路は前回のWEのMT管を使ったDCプリアンプを踏襲していて,金田氏は整流に412Aを使っていますが,そこに2200μFもの大容量コンデンサを投入していて,ちょっと整流管がかわいそう,ということでiruchanは定石通り,47μFにしました。その後にリップルフィルタを投入し,大容量のフィルタ回路にしています。
本機はセレン整流器を使ったので,もっと大容量のものでいいはずですが,共通の基板を使ったので,47μFです。
やはりこれが少し少なすぎたようです。残念ながら,リップルフィルタは優れた回路だと思いますが,入力のコンデンサはやはり大きめの容量のものが必要です。このコンデンサである程度,リップルを低減しておいてやらないと,あとのフィルタも十分に機能しません。
ということで,今回,47μFだった入力のコンデンサをスペースが許す限り大容量のものにしよう,ということでニチコンの160V,330μFにしました。φ18mmなのでギリギリですけどね。
と言うことで,実際に調べてみます。
オシロで47μFの電圧波形を見てみると.....。
47μFの端子電圧です。
なんと,やはり11Vp-pくらいのリップルが出ています。
これだけリップルが残っていると,あとでリップルフィルタで平滑化しても多少,リップルが残ってしまいます。
LTspiceで確認してみます。
iruchan版真空管DCプリアンプ電源部です。
EQアンプ用レギュレータは100Vレギュレータのみにしています。その代わり,前にリップルフィルタを入れて,フラットアンプもそこから供給するようにしています。
入力コンデンサを47⇒330μFにしてシミュレーションしてみます。整流はシリコンDiを使ってみます。
整流直後はほぼ実測値通り,13.7Vp-pものリップルが残っています。また,フィルタ直後にも2mVp-pくらいのリップルが残ります。EQアンプ用には,18μVp-pくらいなので問題ないレベルだと思います。だから,phonoの時だけハムが出る,ということがなかったようです。
今度はさすがにかなりリップル電圧が下がり,フィルタ直後で150μVp-pとなり,EQアンプ用は半分になりました。
今回,iruchanはSiemens製のセレンブリッジを使っています。ちょっとLTspiceで遊んでみました。セレン整流器のモデルもネットに出ていました。
セレンを使うとやはり出力電圧が低下します。リップルフィルタ出力で30Vくらい下がってしまいますが,残留リップルは1/3になります。実際には,出力電圧は120Vくらいでしたから,Siemensのセレンは効率がよいようです。
ちなみに時間軸全体を見てみるとこんな感じです。
リップルフィルタを使っているので,立ち上がりは非常に遅いです。実際にはレギュレータ出力は真空管6J1B-Vを使っているので,さらにもっと遅くなります。LTspiceは真空管の立ち上がりまでシミュレーションしていません。
それにしても,セレンを使うと音がよい,なんて言われますけど,残留リップルの値を見ても,その通りかもしれません。なお,レギュレータ出力の残留リップルは差はありませんでした。
iruchan版の電源でも,リップルフィルタを使っているので,これなら問題ない,と思います。
ちなみに,金田氏のオリジナルの回路でもシミュレーションしてみました。
整流管412AのSpiceモデルはこちらです。
こちらはさすがで,2200μFもの入力コンデンサを入れると,リップル電圧は109mVp-pです。これをフラットアンプに給電しています。ただ,これだと,ちょっとフラットアンプ用としても,リップルが大きすぎる気がします。iruchan版はこのあとにリップルフィルタを入れて,フラットアンプに給電しています。
EQアンプの方は,コンデンサインプット整流⇒105Vレギュレータ⇒100Vレギュレータと2段階でレギュレータを経由して給電していますが,最終的なリップル電圧は1.05mVp-pあります。
ちょっとおかしいので,調べてみたのですが,2段目レギュレータの入力と出力の電圧差が小さすぎるようです。
リニアレギュレータは入出力の電圧差はある程度,大きく取らないとリップルが残りますのでご注意ください。3端子レギュレータでも,低電圧ドロップタイプというのがありますけど,リップル除去性能が劣りますので,注意が必要です。
ちなみに,2段目レギュレータの出力電圧を90Vに変更してみると,リップル電圧は7.6μVp-pとなり,iruchan版と同等になりました。
もし,phonoだけハムが出る,と言う場合は2段目の出力電圧を下げて,90Vくらいにするとよいと思います。その場合は,▲の回路の分圧抵抗R13を12kΩにすればよいです。
ほかに,ネットを見ると,レギュレータの誤差増幅管5702のヒータ電源をACではなく,DC点火するとハムが消えた,という話もありますので,念のため,iruchanも6N17B-Vなどの点火用の-12V(h-k耐圧を考慮してマイナスで点火しています)のDC電源から抵抗で電圧ドロップさせてDC点火してみました。
☆ホワイトノイズ対策
残念ながら,原因として考えられるのは抵抗や真空管の熱擾乱雑音や電源ラインがノイズを拾っている,ということです。
前者は低雑音抵抗,すなわち金属皮膜抵抗にするとか,抵抗値をできるだけ小さくするとかの対策や真空管の選別がありますけど,いずれもそう簡単にできることではありません。抵抗値なんて決まってしまっていますしね。昔はできるだけ抵抗の温度を下げるようにして,1Wとか2Wとかの大型の抵抗を使う,なんてことが本に書いてありました。
真空管については,残念ながら,同じ形式のものを大量に丸1日くらい,通電してチェックすればよいのでしょうけど,そんなこと,やっていられませんしね.....。昔はソニーのC-37AやNeumannのU-87など,真空管式マイクロホン用の真空管はそのようにして選別された真空管を使っていました。TELEFUNKENの◆マークのECC83なんかは心電図用で,そのリジェクト品が秋葉原で出回っていたという話です。
後者は対策としてはシールド線にするくらいしかなさそうなので,シールド線に交換しました。
ついでに,今回,iruchanはEQアンプの6J1B-Vのスクリーングリッドを0.1μFのフィルムコンで接地してみましたけど,そう効果はないようです。ちなみに,Raytheonの5702も持っているので,ノイズも調べてみたい,と思います。でも,余り出来がよくなさそうな感じで,旧ソ連製の方がノイズは少ないんじゃないか,という気がしますけどね。
ただ,電源のシールド線化は効果があるようで,12時の位置でもホワイトノイズは聞こえなくなりました。さすがにVR最大だとシャーッと音がしますけどね。ずいぶん小さくなりました。
☆ ☆ ☆
これでようやくノイズ退治ができました。新年はこのプリアンプでこけら落とし,といきませう
2022年12月29日追記
☆セレンの整流特性
ネットを探してみるとセレン整流器のSpiceモデルが載っていましたので利用してみました。RCAの6枚フィンの#752652というセレンのモデルのようです。
.SUBCKT seleniumrectifier P K
BP P K I=(12.42276354/1.0e4)*uramp((V(P,K)*0.55)+(-2.938702085))**2.4
.ENDS
これをサブサーキットとして登録しました。
ついでに,オンセミのWEBにiruchanがいつも使う,ファーストリカバリのUF4007のSpiceモデルが出ていたのでありがたく利用させていただきました。
.MODEL UF4007 D (N=3.97671 IS=3.28772E-006 RS=0.149734 EG=1.11 XTI=3 CJO=2.92655E-011 VJ=0.851862 M=0.334552 FC=0.5 TT=1.84973E-007 BV=1000 IBV=0.2 KF=0 AF=1 mfg=Vishay)
412Aは先ほどのiruchan自作モデルです。
それにしてもUF4007の優秀なことに驚き。思わず,氏ね! と思いました.....
驚いたのはセレンには不感帯がある,ということ。
もちろん,よく知られているとおり,半導体はP-N接合面で0.6Vほどの不感帯があり,その間の電圧では動作しませんが,セレンの場合は,数Vもあります。本モデルだと5.5Vくらいのようです。
それは知っていたので,少し不感帯の電圧が高すぎるような気もしますが......まあ,セレンだと2~5Vくらいの電圧範囲は動作しません。
もちろん,半導体としてはこれは不利で,この分,損失となって発熱しますので,それでセレンはフィンがついています。発熱が大きいとセレンは破裂し,有害なセレン蒸気を発生しますので,もし,動作中に破裂したらすぐに部屋の窓を開けて換気してください。
こういうこともありますが,不感帯が数Vもある,と言うことは逆に言えば,ノイズに強いわけで,オーディオには適しているのかもしれません。
WEの555レシーバーの励磁電源にセレンを使う人がいますけど,アンプのB電源だけじゃなく,フィールドスピーカの励磁電源としてもよいのかもしれません。
サブミニチュア管DCプリアンプの製作~その7・EQアンプの調整~ [オーディオ]
2022年12月4日の日記
泥沼にはまっています.......
前回,ようやくフラットアンプの調整が完了し,EQアンプの調整を始めたのですが,いくつも問題が出ちゃいました。
まずは,こちらのグラフのように,100Hz以下の低域で,EQ偏差が大きく,最大+2dB近くあります。
おまけに,どういうわけか,ch. Rだけ,逆で,100Hzくらいからダダ下がりで,偏差も20Hzで-2dBくらいにもなります
それに,最初からわかっていたことですけど,1kHzのゲインは40dBくらいで,MCカートリッジ用としては不足気味です。
まあ,金田式プリアンプではよくあることで,オールメタルキャンTrのスーパーストレートプリアンプでも43dBほどです。MMカートリッジ用としても十分なくらいで,通常,レコードを聴くボリウムの位置は2時くらいになってしまって,他のCDやチューナーとは大きくずれてしまいます。
まあ,金田氏はレコードしか聴かないから,いいのかもしれませんが......。
と言う状況で,いくつか宿題が残っちゃいました。
☆ゲイン増大
まずは,1kHzのゲインを50dBくらいにしたいと思います。
半導体プリアンプなら簡単で,反転入力(NFB)側のゲート抵抗を小さくするだけです。こちらでも書きましたように,EQカーブにも影響しませんので楽勝.....なんですけど.....。
今回は真空管プリアンプというのが問題になります。
真空管DCプリアンプの場合,初段はシングルになっています。差動アンプにしたいのですが,ノイズの点でシングルになっています。
この場合,初段のカソードに帰還することになりますが,ゲイン増大のため,この抵抗をいじると,初段の真空管のバイアス電圧が変わり,動作点が移動しちゃいますので,ひずみが増えないかどうか,確認する必要があります。
こういう場合,真空管アンプのときは帰還抵抗とバイアス抵抗を分割し,バイアス抵抗にパスコンをパラって動作点は変わらないようにするんですけど,DCアンプはこれは御法度でしょう。
ということで,Rk=160Ωで問題ないか,確認します。
本当なら,歪率計で実測しないといけないんでしょうけど......。
簡単にLTspiceで済ませちゃいました.....
こちらで書きましたけど,LTSpiceでtransient analisysを実行し,フーリエ分析のオプションをつけるとひずみ率が計算できます。
真空管のモデルは,5702だとMT管の6AK5と同特性なので,6AK5でシミュレーションしないといけませんが,前回,電極電圧がおかしかったので,6AU6でシミュレーションしました。
ところが.....。
ひずみは2%にもなり,しかも普通は右肩下がりでひずみ率は下がってきて,クリップすると急増する,というグラフになるはずですが,ずっとフラット
こんなはずはありません。
まあ,右肩下がりになるのはノイズのせい,と教科書には書いてあって,LTspiceはノイズのシミュレーションまではしていないので,こんな風になるのは当然なのか,と言う気もするんですけど,いくらシングルのアンプと言っても2%のひずみ,というのは異常です。
おっかし~~な~~~
どうなっとるんや,と思いました。しばらく悩んじゃったのですが,ようやく出力された波形を拡大して判明しました。
どう見ても,左右非対称の波形になっていておかしいです。
ひずみというのは高調波が基本波形に重畳されて,上下対称(奇数次)または非対称(偶数次)にひずんでくるはずで,左右非対称とは普通,ならないはずです。
よ~く見てみると,サンプリング点数が少なくて,その間を直線で補間している,ように見えます。
ということで,おそらく,LTspiceの時間刻みが粗そう,と言うことに気がつきました。
時間刻みをデフォルト(空白)でやるとこんな波形です。
ここを空白ではなく,10μsとしてみます。
ようやくこれできちんとひずみ率が出るようになりました。
カソード抵抗は金田氏の設計では560Ωですが,160Ωでも問題ないようです。
ゲインが50dBになり,また,そのせいでクリップ入力電圧は1/10くらいになりますが,これは当たり前ですので問題ありません。
ひずみ率は560Ωのときより,最低レベルの領域が広まっているようですし,問題なさそうです。
しかし,こんなシミュレーションだけのレポート出したら電子科の先生は赤点でしょうね......。
☆2SK170の発振対策
さて,お次はなぜ,ch.Rだけ100Hzからダダ下がりなのか......と言う問題です。
おそらく,ATRが動いていないから,と言うのは想像できますが,動いていない理由がわかりません。
基板を取り出して,ルーペやテスターで確認しても,イモはんだはありませんし,どこもブリッジしていません。
しばらく悩んじゃいましたが,やはり原因はATRに使われている2SK170の発振のようです。入力容量が30pFもある上,ゲート回路は数MΩとハイインピーダンスで動作しているので,発振しちゃっているようです。
これは簡単にゲートに10~100Ωくらいの抵抗を入れてやればOKです。
LTspiceでシミュレーションしてみても発振しないので,むりやりゲートに0.2μHを挿入したら見事に発振しましたので,やはり発振しやすいようです。
2SK170はJ-FETですけど,MOS-FETの場合は必ず挿入しますよね。
金田氏の原設計ではここにはなにも入っていないので,iruchanは75Ωを挿入しました。
これで,ATRは無事に動作したようですけど,20Hzで0.8dBくらいのピークが出ます......
こうなると,前回,ATRのLPFの時定数が足りず,ATRの影響が出ている,と書きましたが,それだけではなさそうです。
☆EQカーブ補正
NR型イコライザの難しいところですが,こうなると,EQ素子の定数の変更が必要です。
NF型イコライザはアンプの裸のゲインが密接に関係していて,EQ素子の計算はかなり煩雑です。実際には完成後,測定して微調整,と言うことになることが多いか,と思います。
NF-CR型超シンプルオールFETプリアンプで経験しましたが,820kΩの抵抗を少しいじってやります。
前回は低域不足だったので,1MΩにしましたけど,今回は750kΩにして低域を減衰させます。
これで大体,ch.Lは予想通りのカーブになったんですけれど.....。
ch.Rはダメで,相変わらず100Hzからかなり急激に減衰します.....
散々調べた末,ようやくLTspiceでシミュレーションして原因がわかりました。
やはりATRが悪さしていました。
ch.RはどうもATRの動作点が悪く,分圧抵抗の分圧比を変えないといけないようです。
原因がわかっちゃうと簡単ですけど,iruchanはこれで1ヶ月以上,悩んじゃいました
分圧抵抗のGND側は金田氏の設計ではR9=680kΩで,ch.Lはこれでよかったのですけれど,ch.Rはこれだと低域ダラ下がりになっちゃって,少し,抵抗値を下げて,620kΩにしないとだめでした。
こうすると,初段のスクリーングリッド電圧が変わっちゃうのですが.....やむを得ません。
今度は逆にch.Rは低域で最大0.5dBの偏差が出ますから,650kΩくらいの値が最適値のようです。でもそんな中途半端な抵抗はE24系列じゃ,無いしな~。
これでiruchanは10回以上,調整したのであきらめることにします。まあ,iruchanはフルレンジで聴いているし,もともと低域不足気味なのでいいか......と思いました。
それにしてもATRの回路の調整のシビアなことに驚き。LPFのコンデンサはもちろん,分圧抵抗のGND側でもEQカーブに影響が出てしまうのにビックリです。
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つづきはこちらへ.....。