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メタルキャントランジスタを使ったスーパー・ストレートDCプリアンプの製作~その4・調整編~ [オーディオ]

2020年8月13日の日記

スーパー・ストレートプリアンプ1.jpg 完成しました[晴れ]

前回,電源部のテストをしました。秋月で売っている中国製の欠陥LEDのせいで1日棒に振ったり,やはりトラブル続出でした.....orz。

さて,今日からEQアンプとフラットアンプの2つの基板に電気を通して試験していきます。

EQアンプ基板.jpg 完成したEQアンプ基板。

EQ素子には双信のSEコンをおごっています。カップリングは旧ソ連軍用の0.4μFのスチコンです。大きいですが,基板にも載ります。オリジナルはSE33000pFです。これより大分小さいのですが,お値段は10倍以上......。

今回使ったのはスチコンなので音はよいですし,なによりスチコンでこんな大容量のものはない,と思います。初段はソニーの2SK97です。懐かし~~~。2SC959は表面に2SC959と書かれた旧ロット品です。1973年の製造と思われます。もう半世紀近く前なのか......。2SA606A606と書かれていて,新ロットで,1978年製造のようです。

フラットアンプ基板.jpg 完成したフラットアンプ基板。

こちらは初段はソリトロンの2N3954です。電源のパスコンは双信のV2Aじゃなくて,シーメンスのMKHにしちゃってます。V2Aはでかくてまいっちゃいます......(^^;)。

スーパー・ストレートプリアンプ内部1.jpg 内部写真です。

トロイダルトランスを採用したり,電源のフィルタコンデンサの高さを抑えたので1Uのケースに収まりました。

もちろん,配線ミスがないか,しっかりチェックします。特に,部品をはんだづけした際に,隣のパターンと接触していたりするので,テスターでよくチェックしておきます。特に,+Vccと-VccがGNDと導通していないかはまずチェックします。

と.....やはり何カ所か,パターンが接触していました。おまけにフラットアンプの-VccがGNDにショートしています。絶対やっちゃいけないのに.....!!

やべ~~~~。

何でか,と思ったら基板をケースに取りつけるスペーサの金属製の埋め込みねじがショートしていました....。

ここまでチェックしたら,電源を入れます。

EQアンプの方は無事に動作完了。

すぐに,トータル電流もチェックしておきます。

前回,レギュレータの制御Trに,エミッタ抵抗として1Ωを追加しました。この両端の電圧を測定すればトータル電流がチェックできます。今回の金田式スーパー・ストレートプリアンプはトータル電流(EQアンプ+フラットアンプ)は45mAくらいのようです。調整中はここまでの間に収まっていることを常に確認します。特に,オリジナルの回路の場合はレギュレータに保護回路は入っていないので,過電流が流れると貴重な2SA5662SC1161を飛ばしちゃうので,ご注意ください。iruchanは100mAのポリスイッチを入れて保護しています。

オフセット調整用の200Ωの半固定を回してみて,オフセット電圧が変化するようなら成功です。

ただ,それにしても金田氏も書いていますけどEQアンプのオフセット調整はすごくシビア。

±8Vくらいまでのオフセットが出ますが,なかなか0V付近に止められません。-2Vくらいからすぐに+2Vへ飛んじゃいます。3回転タイプのコパルのTM-7Pを使っていてもこんな調子なので,非常にシビアです。なんとか50mV以内に収めて調整終了です。

ついでにテストオシレータから正弦波を入力してオシロで見てみるときれいな正弦波が観測されますし,周波数を変えると振幅がきれいに変化するので,うまくいったようです。

さて,次はフラットアンプ。こちらの方が簡単なはずなんですけど.....。

EQアンプは低周波で50dBくらいのハイゲインなのでオフセット調整が厄介ですが,フラットアンプは今回,iruchanは20dB固定で作ったので,簡単なはずです。

でも,どうしても-8Vくらいに貼り付いてしまい,動きません。

こういうときはやばいです。すぐに電源を切って,パターンをチェックします。

案の定,パターンに1カ所ミスがあり,2段目の2SA606の差動アンプの共通エミッタ抵抗47ΩがGNDにつながっていました......orz。

すぐ隣にGNDのパターンがあるので間違えちゃったようです。

気を取り直して抵抗の配線を直して再びスイッチon!

今度はオフセットが変化します......。

でも,-4.5V~-2Vくらい,といったところで0Vになりません。

困ったな~~~。

これ,結構遭遇するトラブルですよね~~。初段の2N3954のバランスが悪く,オフセットとなってしまっています。

金田氏は音の悪い半固定をやめて,ドレインの抵抗を調整することで対処しておられます。ドレイン抵抗3.9kΩにどちらかに直列に500Ωの半固定を入れてオフセットを0にし,その後,その半固定に応じた固定抵抗と入れ替える,という手段なのですが,やってみると非常に面倒なので,iruchanは横着して通常のオフセット調整として,共通ソース抵抗を可変するやり方です。

いつの頃かわかりませんが,金田氏はこの方法はやめちゃっています。

今回,この半固定抵抗の調整範囲を超えちゃっていますので,この半固定抵抗を取り替えます。EQアンプだと200Ωどころか,50Ωでも十分調整範囲だったようなのですが......さすがはソニーの2SK97と思っちゃいましたが,ソリトロンの2N3954は200Ωじゃ,ダメなようです。

しかたないので,1kΩに交換してやってみますが,それでもダメ。オフセットは最小でも-1V台になっちゃいます。決してプラスにはなりません。

さらにしかたないので,オフセットが最小の時に,半固定抵抗のスライダーは0Ω位置になっていますが,その反対側に固定抵抗を入れてみます。

ようやく2kΩを追加したらオフセットが0になりましたけど......これじゃダメです。

共通ソース抵抗は電流帰還抵抗となりますので,この場合,反転入力(NFB側)のソースに3kΩもの抵抗がつながっていることになりますから,初段のゲインはほとんど0dBになっちゃいます。

まあ,DCアンプに限らず,初段の差動アンプはゲインが取れませんし,特にDCアンプの場合は初段がFETですから,余計にゲインが取れません。特にローμのNutubeなんて使った日にゃ,減衰器になっちゃっうくらいで,実際にはアンプと言うより,インピーダンス変換器として動作しているようなものですけど....。

ようやくここまで来てiruchanは何かおかしい,と気づきました。今ごろかよ,アホちゃうか.....。

実を言いますと,金田氏の原設計では初段はFD1840です。ここをiruchanは2N3954を使っています。

ご存じのとおり,FD18402N3954の選別品で,2N3954とは同特性です。時代的にも2N3954が先に出ていて,iruchanはFD1840は漏れ電流の選別品だ,と思っていました。

ただ,どうやらそうではないらしく,2N3954のIDSSが1mAくらいのものの選別品のようです。

う~~ん,とすると,iruchanが使用している2N3954はIDSSが大きいのでは,と思いました。

規格表を見ると,2N3954のIDSSは0.5~5mAの間のようです。ただ,残念ながら,国産の2SK302SK43などの接合型FETはIDSSによりランク付けされていて,ユーザは使用するIDSSのものをチョイスできますが,どうも2N3954は規格表を見てもそんなことは書いていないし,ユーザが選別するもののようです。しかし,選別すると言っても,iruchanが中坊の頃でも1個,3,000円くらいしたと思いますから,選別なんて無理で,回路で調整するしかありません。でも,それじゃさすがに不便だろうから,というので低IDSSのものを選別してFD1840として売っていたようです。

金田氏も最初は2N3954を使っていたのに,あとからFD1840に変わっています。やはり低IDSSのものの方が使いやすいようです。

iruchanは20年ほど前,海外からソリトロンの2N3954をまとめ買いしたのですが,さすがにランクに分かれていませんでしたし,今回,測定してから使用するべきでした。ただ,当時でもFD1840は入手難で,今ではオクの世話にならない限り,入手は無理だと思います。

もっとも,2N3954自体,2SK30で代用できることはよく知られていますし,今回,低IDSSのもの,ということならOランクがぴったりで,IDSS=0.6~1.40mAですから,2SK30A-Oで代用しようか,とも思ったのですけれど......やめました。2SK30はモールドですからね....。手持ちがある限り,2N3954を使おうと思います。

余談ですけど,2SK30は一番IDSSが小さいもの(0.3~0.75mA)がRランクとして売られているはずですが,見たことがありません。

今回,測定し忘れたので,おそらく,規格表から考えてみても,使用している2N3954のIDSSは大きいのだろう,と思いました。

ちなみに,第2回でSpiceでシミュレーションをしていますが,LT社のモデルに2N3954があるので,IDSSを調べてみると,3.8mAのようです。

2N3954 ID-VGS特性.jpg VGS=0VのところがIDSSです。

ということは,初段の差動アンプの動作点はID=1/2 IDSSに選ぶのがよいわけですから,もっとドレイン電流を増やしてやればよいのでは,と思いました。金田氏の原設計ではID=0.23mAのようです。FD1840のIDSSは1mAくらいのようですから,適切な値でしょう。

ところが......。

定電流回路の2SC1775Aのエミッタ抵抗RE(10kΩ)を2.7kΩに小さくして,ID=1.2mAくらいを狙ったのですが.....。

2N3954 ID(RE=2.7kΩ).jpg ID=1.2mAを狙いました。

見事に撃沈.......orz。

オフセットは-8.5Vくらいで,しかも半固定VRを回してもびくともしません。-Vccに貼り付いちゃっているんですね.....。

これは,逆だったようです。おそらく,使用した2N3954はIDSSが小さく,もっとドレイン電流を小さくしないとダメなようです。

しかたないので,RE=24kΩにしたらようやくオフセットが+にまで変化し,0Vにすることができました。やれやれ.....。

実測してみると,ID=0.1mAくらいです。小さすぎて不安になっちゃいますが,問題ないようです。ただ,少し半固定VRのスライダーの位置が偏っている感じなので,最終的に18kΩとしました。

進RJ抵抗.jpg いにしえの抵抗たち.....。

部品箱を探したらにスと書いた,古い抵抗が出てきました。RE55の前身のようです。RE55より少し厚みがあります。一番右はニッコーム。音の点では進の方がよい,と言うことになっていますね。でも,こちらもとうに製造中止。昔はよかったな~~~~orz。

そういえば,初段の定電流回路の設定値によりオフセットが変わるのはWEの真空管式DCプリで経験済みでしたけど,差動アンプの共通ソースに定電流回路を挿入した場合,どうして左右の差動アンプの出力が変化するのか....ちょっとわかりません。

        ☆          ☆          

ようやくオフセットが0Vになったので,ここまで来たらf特を調べてみます。

まずはフラットアンプから.....。

と思ったのですが,1kHzの正弦波を流してみると,どうにも輝線が太い.....。

どうやら超高域で発振しちゃっているようです。

拡大してみると.....,

超高域発振.jpg 1kHz正弦波を入力しています。

ピークの数を数えると,だいたい,200kHz付近で発振しているようです。

2段目の差動アンプに3pFと5pFの位相補正用のコンデンサがついていますが,EQアンプはそれぞれ5pFと10pFなので,ちょっとやばいのでは......と思っていたので,予想どおりでした。

結局,2個の位相補正コンデンサのうち,5pFを10pFにしたら発振が止まりました。ついでに,10kHzの方形波応答を見ておきます。

10kHz方形波応答(10pf位相補正後).jpg 10kHz方形波応答です。

金田氏に限らず,半導体アンプじゃ,こういうことはやらないみたいですけどね。

オーバーシュートとリンギングが少し残っていますが,3波ほどなのでOKとしましたけど.....。やはりあとでf特を見て修正となりました。いつも,真空管のパワーアンプだと肩が丸くなってしまって,オーバーシュートなんてしないのが普通ですけど,Trアンプはやはり優秀ですね。

EQアンプ特性(実測).jpgEQアンプ特性です。

Spiceのシミュレーション結果 ━ ……と結構一致しているので驚いちゃいます。ただ,10kHz以上は眉唾もので,iruchanが使用している低周波発振器がお粗末で,かなりノイズが乗っちゃっているので,本当にこうなのか,ちょっと疑問です。ただ,Spiceのシミュレーションにも出ていますが,10kHz以上では金田氏の設計は超高域の帰還量増大を警戒して,EQ素子の1500pFに直列に3.6kΩが入っているせいで偏差が大きくなります。撤去するかどうか,悩むんですけどね.....。

一度,高級な発振器を使って確認したいと思います。

概ね,20Hz~10kHzの間で,±0.5dBに収まっています。

flatアンプ特性(実測).jpgフラットアンプ特性です。

ちょっとこちらは問題。なぜか200kHzにピークが来ちゃっています。▲でも書きましたけど,位相補正用に,2段目の差動アンプに5pFの位相補正コンデンサが入っていますが,少し増量して20pFにしてもこんな結果です。

さすがに4dBのピークはまずいよな,という感じなのですが,30pFにしてもピークは変わらなかったので,問題は2段目ではなく,初段に位相補正をしないといけないようです。一番簡単に直すには,帰還抵抗(18kΩ)にパラに47pFのマイカを接続してやればいいのですけどね。でも,それは真空管アンプではよくやる方法ですけど,半導体ではやりませんね。なんでだか,iruchanも素人なのでわかりません。

また,トータルゲインも20dBを狙いましたが,チャンネル間で1.6dBほど差があります。VRのギャングエラーのように思います。

と言う次第で,もう少し,調整が必要なようです。

続きはこちらへ.....。


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