サブミニチュア管DCプリアンプの製作~その7・EQアンプの調整~ [オーディオ]
2022年12月4日の日記
泥沼にはまっています.......
前回,ようやくフラットアンプの調整が完了し,EQアンプの調整を始めたのですが,いくつも問題が出ちゃいました。
まずは,こちらのグラフのように,100Hz以下の低域で,EQ偏差が大きく,最大+2dB近くあります。
おまけに,どういうわけか,ch. Rだけ,逆で,100Hzくらいからダダ下がりで,偏差も20Hzで-2dBくらいにもなります
それに,最初からわかっていたことですけど,1kHzのゲインは40dBくらいで,MCカートリッジ用としては不足気味です。
まあ,金田式プリアンプではよくあることで,オールメタルキャンTrのスーパーストレートプリアンプでも43dBほどです。MMカートリッジ用としても十分なくらいで,通常,レコードを聴くボリウムの位置は2時くらいになってしまって,他のCDやチューナーとは大きくずれてしまいます。
まあ,金田氏はレコードしか聴かないから,いいのかもしれませんが......。
と言う状況で,いくつか宿題が残っちゃいました。
☆ゲイン増大
まずは,1kHzのゲインを50dBくらいにしたいと思います。
半導体プリアンプなら簡単で,反転入力(NFB)側のゲート抵抗を小さくするだけです。こちらでも書きましたように,EQカーブにも影響しませんので楽勝.....なんですけど.....。
今回は真空管プリアンプというのが問題になります。
真空管DCプリアンプの場合,初段はシングルになっています。差動アンプにしたいのですが,ノイズの点でシングルになっています。
この場合,初段のカソードに帰還することになりますが,ゲイン増大のため,この抵抗をいじると,初段の真空管のバイアス電圧が変わり,動作点が移動しちゃいますので,ひずみが増えないかどうか,確認する必要があります。
こういう場合,真空管アンプのときは帰還抵抗とバイアス抵抗を分割し,バイアス抵抗にパスコンをパラって動作点は変わらないようにするんですけど,DCアンプはこれは御法度でしょう。
ということで,Rk=160Ωで問題ないか,確認します。
本当なら,歪率計で実測しないといけないんでしょうけど......。
簡単にLTspiceで済ませちゃいました.....
こちらで書きましたけど,LTSpiceでtransient analisysを実行し,フーリエ分析のオプションをつけるとひずみ率が計算できます。
真空管のモデルは,5702だとMT管の6AK5と同特性なので,6AK5でシミュレーションしないといけませんが,前回,電極電圧がおかしかったので,6AU6でシミュレーションしました。
ところが.....。
ひずみは2%にもなり,しかも普通は右肩下がりでひずみ率は下がってきて,クリップすると急増する,というグラフになるはずですが,ずっとフラット
こんなはずはありません。
まあ,右肩下がりになるのはノイズのせい,と教科書には書いてあって,LTspiceはノイズのシミュレーションまではしていないので,こんな風になるのは当然なのか,と言う気もするんですけど,いくらシングルのアンプと言っても2%のひずみ,というのは異常です。
おっかし~~な~~~
どうなっとるんや,と思いました。しばらく悩んじゃったのですが,ようやく出力された波形を拡大して判明しました。
どう見ても,左右非対称の波形になっていておかしいです。
ひずみというのは高調波が基本波形に重畳されて,上下対称(奇数次)または非対称(偶数次)にひずんでくるはずで,左右非対称とは普通,ならないはずです。
よ~く見てみると,サンプリング点数が少なくて,その間を直線で補間している,ように見えます。
ということで,おそらく,LTspiceの時間刻みが粗そう,と言うことに気がつきました。
時間刻みをデフォルト(空白)でやるとこんな波形です。
ここを空白ではなく,10μsとしてみます。
ようやくこれできちんとひずみ率が出るようになりました。
カソード抵抗は金田氏の設計では560Ωですが,160Ωでも問題ないようです。
ゲインが50dBになり,また,そのせいでクリップ入力電圧は1/10くらいになりますが,これは当たり前ですので問題ありません。
ひずみ率は560Ωのときより,最低レベルの領域が広まっているようですし,問題なさそうです。
しかし,こんなシミュレーションだけのレポート出したら電子科の先生は赤点でしょうね......。
☆2SK170の発振対策
さて,お次はなぜ,ch.Rだけ100Hzからダダ下がりなのか......と言う問題です。
おそらく,ATRが動いていないから,と言うのは想像できますが,動いていない理由がわかりません。
基板を取り出して,ルーペやテスターで確認しても,イモはんだはありませんし,どこもブリッジしていません。
しばらく悩んじゃいましたが,やはり原因はATRに使われている2SK170の発振のようです。入力容量が30pFもある上,ゲート回路は数MΩとハイインピーダンスで動作しているので,発振しちゃっているようです。
これは簡単にゲートに10~100Ωくらいの抵抗を入れてやればOKです。
LTspiceでシミュレーションしてみても発振しないので,むりやりゲートに0.2μHを挿入したら見事に発振しましたので,やはり発振しやすいようです。
2SK170はJ-FETですけど,MOS-FETの場合は必ず挿入しますよね。
金田氏の原設計ではここにはなにも入っていないので,iruchanは75Ωを挿入しました。
これで,ATRは無事に動作したようですけど,20Hzで0.8dBくらいのピークが出ます......
こうなると,前回,ATRのLPFの時定数が足りず,ATRの影響が出ている,と書きましたが,それだけではなさそうです。
☆EQカーブ補正
NR型イコライザの難しいところですが,こうなると,EQ素子の定数の変更が必要です。
NF型イコライザはアンプの裸のゲインが密接に関係していて,EQ素子の計算はかなり煩雑です。実際には完成後,測定して微調整,と言うことになることが多いか,と思います。
NF-CR型超シンプルオールFETプリアンプで経験しましたが,820kΩの抵抗を少しいじってやります。
前回は低域不足だったので,1MΩにしましたけど,今回は750kΩにして低域を減衰させます。
これで大体,ch.Lは予想通りのカーブになったんですけれど.....。
ch.Rはダメで,相変わらず100Hzからかなり急激に減衰します.....
散々調べた末,ようやくLTspiceでシミュレーションして原因がわかりました。
やはりATRが悪さしていました。
ch.RはどうもATRの動作点が悪く,分圧抵抗の分圧比を変えないといけないようです。
原因がわかっちゃうと簡単ですけど,iruchanはこれで1ヶ月以上,悩んじゃいました
分圧抵抗のGND側は金田氏の設計ではR9=680kΩで,ch.Lはこれでよかったのですけれど,ch.Rはこれだと低域ダラ下がりになっちゃって,少し,抵抗値を下げて,620kΩにしないとだめでした。
こうすると,初段のスクリーングリッド電圧が変わっちゃうのですが.....やむを得ません。
今度は逆にch.Rは低域で最大0.5dBの偏差が出ますから,650kΩくらいの値が最適値のようです。でもそんな中途半端な抵抗はE24系列じゃ,無いしな~。
これでiruchanは10回以上,調整したのであきらめることにします。まあ,iruchanはフルレンジで聴いているし,もともと低域不足気味なのでいいか......と思いました。
それにしてもATRの回路の調整のシビアなことに驚き。LPFのコンデンサはもちろん,分圧抵抗のGND側でもEQカーブに影響が出てしまうのにビックリです。
☆ ☆ ☆
つづきはこちらへ.....。
2022-12-05 00:00
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