Panasonicシェーバーの電池交換 [電子工作]
2022年11月3日の日記
このところ,嫁はんや娘の自転車のスポーク交換やパンク修理をしています。
ようやく一段落ついたので,ほっと......したいのですが,また壊れました。
今度はPanasonicのシェーバー。いくら充電してもウンともスンとも言わなくなりました。残念ながら,充電できない場合は寿命です。
本体にニッカド電池のリサイクルについて注意書きがありますので,充電池はニッカドのようです。
残念ながら,充電式の電池には寿命があり,最大充電回数が決まっていますし,また,困ったことに長年充電せずに放置していると死んでしまうことがあります。特に,最近はやりのリチウムイオン電池は充電せずに0Vまで放電しちゃうと死んじゃいます。過放電というのですが,困ったものです。
と言う次第で,修理に持ち込んで,電池の交換が必要です。
でも,iruchanが使っているシェーバーはES4820Pというやつで,2009年に買ったものです。
まあ,普通なら買い換えなんでしょうけど.....。
iruchanはそれほどヒゲが濃い方じゃないし,普段は風呂でカミソリ使っているので,本機はほとんど使っていません。状態もきれいだし,捨てちゃうのはもったいない。
と言う次第で,電池を交換することにします。
幸い,電池は鹿児島のでん吉さんで売っていました。495円でした。ありがとうございました。
ポチッと注文。4日ほどで届きました。
昨日届いたし,今日は休みなので,早速,朝から取りかかります。
驚いたことに,ニッカド電池はリサイクルが必要なので,説明書に分解図が載っていて,簡単に分解できました
分解しても修復は可能でした。
さて,分解します。
本体カバーのねじを外し,外刃フレームを外すとねじが2本あるので,どちらも#0のドライバーで外します。
ここからはかなり面倒。内刃を動かすためのリンク機構はまるで鉄道模型並みの精密さです。ヘタにバラして部品なくしたりすると動かなくなるので要注意です。
モーターの横に単三くらいのニッカド充電池がありますが,基板裏ではんだづけされているので,30W位のはんだごてで外します。
続いて新品のニッカド充電池をはんだづけし,組み立てて終了です。電池の極性にはくれぐれも気をつけてください。間違えると大変なことになります。古い電池はリサイクルに出します。なんせカドミウムが含まれているので有害です......
これで無事に直りました。
なお,ニッカド電池に限らず,充電式の電池は保存するときの残容量が決まっていて,ニッカド電池もある程度,充電した状態で保管する必要があります。また,ニッカド電池はメモリ効果があり,ちょっと充電しただけ,と言うのを繰り返すとその容量しか使えない,と言う現象がありますので,ご注意ください。また,使用開始時は,まずフルに充電しないといけません。
説明書には8時間以上,とありますので,まずはフルに充電します。
スイッチを入れてみるとブーンとモータが回転し,きちんとヒゲも剃れますので,内刃もちゃんと動いているようです。
これでひと安心です。買い直さずに済みました
実験用定電圧電源の設計と製作~その3:完成しました~ [電子工作]
2021年10月7日の日記
このところ取り組んでいたトラッキングレギュレータが完成しました
OPアンプ回路やHiFiアンプの実験用に,±3~±22Vまで可変できる両電源となっています。5Vや9V,12Vなどの固定出力も設けました。
最高出力電圧は±35Vくらいにできると金田式にぴったり,と言う気もするのですが,さすがに使用したOPアンプNJM2147Dの耐圧が28Vで,あきらめました。
可変出力もつけたので,プリアンプの基板のテストの時など,様子を見ながら,徐々に加圧して,と言うこともできそうです。
ケースはタカチのSYH-110Bを使いました。サイズは110(W)×76(H)×140(D)mmです。コンパクトなサイズで,なかなか機能的ですが,ちょっと小さすぎました。もう少し大きなケースにして,電流容量も500mAくらいにしてもよかったかもしれません。
一応,回路的にはTrを使った電流制限型保護回路をつけていますが,念のため,ポリヒューズも入れておきました。
こういう電源装置があると何かと便利です。これから本機を使っていろいろ実験してみます。
☆ ☆ ☆
2021年10月24日追記
いよいよ完成したので,早速,今取り組んでいる,金田式IVCイコライザアンプ基板のテストをしてみようと思います......,っと思ったのですが,やっぱりトラブル。
多少,基板自体は問題があったものの,無事に動くようになりました。
ただ,どうもオシロで見てみるとスゴいノイズ.........。
最初はイコライザアンプ基板が発振しているか,ノイズを拾っているかと思ったのですが,どうも変。
単純に,電源の波形を見てみるとかなりのノイズ。これが原因です。
270Hzくらいのノイズが載っています。p-p値で220mVもあるのでびっくり
それに波形もおかしく,普通,シリーズレギュレータが発振したり,ノイズを拾っている場合でもこんな風にはなりません。
と言うことで怪しいとにらんだのは台湾製のデジタル電圧計。
こういうのは内部にマイコンを持っていて,そいつがクロックを持っているし,そもそもこいつは電源は被測定回路から取る,という,まあ,配線が簡単,と言う利点はありますけど,どう考えてもこれは横着。被測定回路の電圧は何Vか,決まっていないから,内部にDC/DCコンバータが入っているはず。DC/DCコンバータはスイッチングレギュレータですから,ノイズが出ないわけがありません。
実際,電圧計の配線を外すときれいなDCになりますから,やっぱり原因はこいつ!
ということで内部を見てみると,確かに,測定線が引き出されている部分に怪しげな空き端子があります。
ネットを見てみるとすでに研究した方がおられて,この配線を変更して別電源とするとよいらしいです。
そもそも,3V以下になると表示が消え,何Vかわからなくなる.....という欠点もあるので何とかしよう,と思っていましたけど,ノイズの点でもこれは解決策になりそうです。
また,内部に中国・Shanghai Mingda Microelectronics製の3VレギュレータMDX7133H(こいつはスイッチングタイプでなく,リニアタイプです)を使っています。
どうもこれが発振しているのは間違いありません。出力にセラミックコンデンサ(C3)がついているので,オシロのプローブを当ててみると激しく発振していて,完全に容量不足のようです。
データシートも入手できるので調べてみると出力コンデンサは最低10μF必要のようですが,セラミックなので足りないのかもしれません。3端子レギュレータはどれも同じで,出力コンデンサが小さいと発振しますので,ご注意ください。
ここに手持ちの10μFを追加してみましたが,かなりまだ発振しているので,470μFをつけたら静かになりました。
ただ,結局,このICの発振を止めても現象は同じで,やはりノイズが載っています。
と言うことで,測定するときはメータをカットしようかとも思ったのですけれど,電源を別にする,と言うアイデアを親切な方からコメント欄でご連絡いただいていて,JH1NDMさんのWEBに出ているとご教示いただいていたのですが,ノイズ対策にも使えそうなので試してみました。
▲の写真のように,DE-2645の電源線(赤)を隣に移設し,電圧の測定線を空いている,inと書かれたところに配線します。たぶん,この切り替えのため,ジャンパ線(0Ω)の表面実装抵抗があるので,これも撤去します。
ようやくノイズも消え,きれいな直流になりました。まだ少しノイズが載っていますが,これは誘導によるものでしょう。
やれやれ,これで大丈夫と思ったら,なぜかマイナス側の電圧が低く,どうも過電流保護回路が動作してしまうようです。
結局,これは松下の2SD317のはんだづけ不良と判明し,脚が短くて酸化していて,はんだづけ不良になったようです。新品の2SC5171に変更しました。2SD317は以前,fTが低いのでコアレスモータ対応コントローラからリストラしましたけど,そのときに捨てておけばよかったです。
IVCイコライザアンプの基板から,きれいな正弦波が出力されるようになりました。
実験用定電圧電源の設計と製作~その2:トラッキングレギュレータの製作~ [電子工作]
2021年9月20日の日記
さて,今回は最終的に設計を完了し,プリント基板を作ってテストしてみたいと思います。
前回,LTspiceでシミュレーションをして,回路の定数を決めました。最終回路は下記の通りです。
基本的にはシリーズレギュレータなんですが,±電圧が出力できるよう,トラッキングレギュレータとしています。また,整流は両波倍電圧整流とし,平滑用コンデンサの中点で接地し,±出力としています。よく,真空管のOTLアンプで用いられる回路ですが,一般的なブリッジ整流とすると2次側巻線が倍になり,トランスが大きくなるので止めました。
トラッキングレギュレータについては,前回の解説をご覧ください。
今回,出力電圧は5段階+可変出力とし,出力電圧範囲は3V~22Vとしました。3Vや5VはC-MOSやTTLのテスト用,9Vは006Pの代わり,15VはOPアンプ用,可変出力はDCプリアンプの実験用です。これだけ広範囲に電圧可変ができて,±出力できるものはないと思います。
最大電流は200mAくらいにしようかと思いましたが,小型化のため,100mAで保護回路が動作するようにしました。まあ,OPアンプの実験用なら十分すぎる容量ですし,もし,被測定回路に誤配線があっても,最大でも流れる電流は100mAで制限されるので,助かる確率が高いと思います。前回紹介した,中国製の大容量可変電源は5Aとか,10Aのものも多く,かえって危険だと思います。
また,単なる可変定電圧電源としてではなく,DCプリアンプの実験用にノイズ対策も考えてあり,整流はファーストリカバリ,また,基準電源はテキサスのTL431を使い2.5Vとしました。これは最低出力電圧を3V以下にするためです。かつ,この前紹介した本の通り,出力にπ型フィルタを入れてみました。
さて,いつものようにプリント基板を作って試験します。本では万能基板を使っていますけど......これだけ複雑な回路なのに,万能基板を使う人が特に特注測定器を作るプロの方には多いようなんですが,よくやるよな~~って,いつも思います。iruchanは正直,失敗や故障のもとだと思っています。金田氏も昔から万能基板なんですけど.....。
感光フィルムを使った自作基板です。きれいにできました。
制御素子は部品箱に眠っていた,東芝の2SB753,2SD634にしました。同じTO-220ですが,コンプリじゃありません。どちらも定格はVCEO=80V, Ic=7A, Pc=40Wと大きなものです。あらためて規格表を見てみると今ごろ見てるんかい2SD634はダーリントンです。特に問題ないと思います。
東芝のPチャンネル素子が緑色だった頃のもので,懐かしいです。昔はよかったな~~~
さて,基板をチェックしたあと,慎重にスライダックで加圧しました。特にケミコンがパンクしたり,抵抗から煙が出たりすることもなかったのでまずはひと安心
すぐに出力電圧を調べてみますが,12Vくらいが出ており,-側も同じ値なので,問題なさそうです。VRを変化させると電圧もスムーズに変化するので,成功のようです。
ただ,最大出力電圧は22Vくらいになるはずなのに,12Vしか出ません。ちょっとまずいです。
調べてみると,VRに50kΩを使っていました。103と書かれていないといけないのに,503と書いてあり,部品箱から取り出すときに間違えたようです.....orz。
気を取り直して10kΩにして正常に動作しました。
☆ ☆ ☆
ケースはタカチのSYH-110Bを使いました。サイズは110(W)×76(H)×140(D)mmで,やはり少し小さすぎました。トランスは東栄のJ2403にしました。24V,0.3Aの容量があります。
可変出力もあるので,メータをつけようと思い,秋月で売っている,台湾DER社製のDE-2645を使いました。有効数字3桁なので,6.35Vなどと表示してくれるのはありがたいです。
ただ......。
電源は電圧測定端子から取るので,測定する電圧によってLEDの輝度が変わります.....
まあ,輝度が変わると言ってもそれほど変化は大きくないのですが,さすがに3VくらいではLEDの輝度が低く,見にくいです。また,2.5V以下だと完全に消えてしまいます。
一体,なにを考えて設計しているのか......。
と言う次第ですけど,一応,試験もOKそうなので,次回はケースに収めて完成,としたいと思います。
2021年9月29日追記
しばらくテストしていたんですけど.....30分ほどしておかしなことになりました。
出力電圧が22Vくらいになり,調整できません。
う~~ん,何か壊れたな......
まあ,普通,こんなことはあまりなくて,壊れるならすぐに壊れるものですけど....。
OPアンプを触ってみるとあっチッチ
NJM2147Dが壊れたか,と思いました。
確かに,規格表を見ると最大定格500mWと書いてあり,LTspiceでも400mWくらいの消費になっているので,ちょっとギリギリです。
でも,NJM2147Dを取り替えても現象は同じなので,OPアンプが壊れたわけではなさそうです。
次に疑うのは制御Trですが,2SB753/2SD634とも問題ありません。
なにが原因かわからなくなってしまいました。
ただ,オシロをつないでみるとOPアンプが不安定で,やはり発振気味のようです。OPアンプの入出力間に入っている100pFを大幅容量upで0.1μFにして発振が止まりました。
と言うことで,なにが原因かわからないのですが,どうもインバーテッドダーリントンに使っている2SC1815が怪しいと思い,交換してみると直りました。
と言う次第で,若干パワーアップして,2SC2655と交換しました。ついでに,2SD634もダーリントンTrなので,もったいないので松下の2SD317Aにしました。
これ,LEDの調光器に使っていたんですが,fTが25kHzと鈍足で,リストラした余りものです。レギュレータなら問題ないでしょう。2SC2655もオリジナルは東芝ですが,部品箱にあった台湾UTC製のいらない子を使いました。
OPアンプはやはり多少発熱するので,何か放熱器を,と考えて秋月で売っているラテパンダ用のヒートシンクをエポキシでくっつけちゃいました。LF356HなどのメタルキャンOPアンプなら,TO-5用の放熱器が使えますが,DIP8ピンのOPアンプだといいものはありませんが,これはなかなかよさそうです。
と言う次第で,ようやくテスト終了です。制御Trに取りつけた放熱器もほんのり熱くなるくらいで問題ありません。
実験用定電圧電源の設計と製作~その1:トラッキングレギュレータの設計~ [電子工作]
2021年9月4日の日記
最近,いくつか金田式DCプリアンプを製作中です。
こういう半導体式のアンプの場合,プリント基板で作ることになるのですが,そういうときにいちいちそのアンプ専用の電源を作るのは面倒なので,とりあえずアンプ基板だけ作っておいて実験するのに何種類か電圧の設定がある電源装置を作っておこうと思います。
また,その昔,TTLで回路を組んでいたときなど,5Vの定電圧電源を用意しておく,なんてことをやっていましたよね~~。また,バッテリーの充電なんかにも12Vの定電圧電源があると便利です。
ということで,いつもこういう電源装置を作ろう,と思っていたのですが,なかなかこういうものを作るのは面倒で,元気がいります。でも1台あると便利ですね。
と言ってiruchanもさすがにこういうのを作るのはしんどいので最初は既製品を,と思いました。
でも,金田式DCプリアンプに限らず,オーディオ用の半導体アンプというのは,要はOPアンプなわけですから,±の電源が必要で,既製品にはこういう,+と-の両方の電圧が出力できるものはありません。
と思っていたのですけど......。
amazonを見てみると,中国製のなかなかよさげなのがたくさん出ているではないですか。
値段的にも1万円以下だし,容量的にも5A以上のもあり,まあ,実験用としては大きすぎるくらいですが,バッテリーの充電用にも使えるし,中にはUSBを持っていて,スマホの急速充電ができるものがあります。おまけに,単電源(+のみ)か,と思ったら,+V, ーV,GNDと書いたものがあるではないですか!!
でも,これはダメ。他にも結構,出力端子が3つあるものがあるのですが,これはーとあるのはあくまでもこれと+の間で電圧が出力されますよ,と言うだけのことで,GNDは筐体アースのようです。GNDが0Vで,±Vccを出力してくれるものではありません。
それに,まあ,DCアンプやOPアンプの実験用としては,5Aなんて出力は過大。0.1A程度に制限しておいてくれる方がうっかり誤配線していても助かる可能性が高いです。
と言うことで,やっぱり実験用として,自作しないとダメなようです。
回路としては,もちろん,OPアンプ用に±出力が必要ですが,+とーで別々に電圧設定するのは面倒です。
こういうとき,便利な回路があり,+とーでひとつのつまみで設定でき,絶対値は等しく符号が反対の電圧を出力できる電源装置があり,トラッキング電源と言います。
まずは,参考書として,CQ出版の下記の本を持っているので参考に調べてみます。2001年に出版されているので相当前ですけどね....。
本多平八郎著,トランジスタ技術 増刊 ハードウェアデザインシリーズ16 作りながら学ぶエレクトロニクス測定器
です。本当は歪率計を作ろうかと思って買った本ですけど,これに2種類載っていました。
例によって,LTspiceでシミュレーションして動作を確認します。残念ながら,金田氏の記事はもちろんのこと,この会社の出版物も含め,電子回路の本は誤植が多いので,最近は必ずチェックしてから製作することにしています。
と,やっぱり......
出力電圧は15Vに設定したのですが,出力電圧は7Vくらいにしかなりませんし,ー側は-3.4Vくらいです。また,+側と同じように変化するはずですが違います。おまけにリップルまで乗っていて,定電圧電源になっていません。
原因がちょっとわからなかったのですが,怪しいとにらんだのは制御Trのベースに入っている10kΩ(R2, R13)。
これは,以前,iruchanも鉄道模型用のコントローラを作ったときに入れた抵抗ですけど,普通は100kΩ以上の値です。このときは無負荷時に出力電圧が高くなるのを抑えるために入れていますが,10kΩという値では小さすぎると思います。
調べてみるとビンゴ!!
この抵抗に800mAも流れていて,ビックリ!! 出力電圧が大幅に低下してしまいますし,現実の回路じゃ,焼き切れてしまう値です。この抵抗は不要です。
また,この回路のままだと最低出力電圧は10Vくらいなので,iruchanはTTLのほか,PIC用の電源としても使いたいので,最低電圧は3Vを目指します。
最大電圧は22V程度あれば金田式DCプリアンプのほとんどの回路に対応すると思いますし,別に金田氏の規定電圧でなくても動作する回路は多いので,問題ありません。また,あまり高くすると定電圧出力時に損失が増えますので。
☆トラッキングレギュレータについて
さて,ここで,OPアンプを使った定電圧電源の原理と,トラッキングレギュレータについて,ネットを見ても,いい解説がありませんでしたので解説しておきます。金田氏も最初のDCプリアンプはμPC55Aを使ったOPアンプ定電圧電源でしたね。OPアンプが最先端の技術で,もてはやされた頃の技術です。今じゃ,オーディオ用の定電圧電源としては使うことはなくなっちゃいましたけど......。
まず,OPアンプを使った定電圧電源は次のような原理です。シリーズレギュレータのひとつですが,どれも考え方は同じです。最近はスイッチング電源が増えているので,リニアレギュレータ,と言う言葉もあるのですが,どうも違和感を覚えるんですけどね.....。
ここで,OPアンプの2つの入出力端子(V+,V-)はイマジナリショートと言って,ショートされていると仮定します。とはいえ,もちろん,ショートしているわけじゃなく,電流が流れるわけじゃありませんけどね。ということですが,当然,V+=V-と言うことになります。
OPアンプのシリーズレギュレータはV+にVrefという基準電源をつなぎます。普通はここはツェナーDiを使いますね。
とすると,上記のイマジナリショートの原理で,V-も同じVrefとなるようにOPアンプの出力が出ます。
と言う次第で,出力電圧Voutは,
となります。よく言われる,出力電圧は基準電圧の分圧比の逆数,と言うわけです。
別にOPアンプを使わないシリーズレギュレータも原理は同じで,このOPアンプの部分をディスクリートで作っていたりするだけです。
さて,トラッキングレギュレータの方はと言うと,+側はまったく同じです。
-側は同じ抵抗値で両出力間を分圧してあり,下側のOPアンプの非反転入力(基準電圧)V+はGNDとなっているので,先ほどと同じ原理でOPアンプはこの2つの抵抗の中点が0Vとなるように動作するので,+側と絶対値は同じで符号が反対となる電圧を出力する,と言う動作をします。
☆設計
さて,iruchanは下記の仕様で設計しました。
電圧範囲:3~22V
固定出力:3, 5, 9, 12, 15
可変出力:3~22V
実はこのように広い範囲で電圧可変とするのは難しく,OPアンプも▲の説明をお読みになってご理解いただけると思いますが,普通のOPアンプは電源が±15Vなので,最大電圧22Vという出力のレギュレータは設計できません。
ちなみに,先ほどのCQ出版の本の場合,OPアンプ出力に4.7VのツェナーDiを接続して,出力電圧をかさ上げしています。
その代わり,最低電圧はこの分だけ高くなってしまうので,この方式をやめ,最初から高耐圧OPアンプを使うことにしました。
新日本無線のNJM2147Dを使います。
最初,安価なNJM3404ADが使えるかと思ったのですが,これは単電源で,耐圧は36Vまでで,両電源で使用する場合は±18Vなので使えません。NJM2147Dだと±28Vまで使えるので十分です。高耐圧OPアンプは高価ですが,いつもお世話になっている秋葉原のサン・エレクトロさんで@200円でした。ありがとうございます。
シミュレーションでの回路と結果を示します。
制御Trは損失低下を狙ってインバーテッドダーリントン接続にしました。
出力電圧20Vを狙ったときの結果です。このように絶対値は等しく,上下対称の出力電圧となるのが正しい結果です。
最大負荷電流は100mAとしました。DCプリやOPアンプ電源用としては十分だと思います。制御Trの最大損失は2.3W(出力3V時)でちょっと厳しいですが,放熱器をつけておくこととします。
と言うことで,次回,実際にプリント基板を作って動作確認していきます。
マウスの修理 [電子工作]
2021年4月29日の日記
マウスの調子がおかしいので修理します。どうにも左クリックがうまく認識されません。
これ,iruchanが昔から使っているLogitechの光学式マウス。たぶん,10年以上使っていると思います......(爆)
以前,日立の炊飯器の予約ボタンが不良になりましたけど,おそらく,原因はその炊飯器同様,タクトスイッチの不良だと思いました。
やっぱ,どうもスイッチ部分の接点が汚れるのか,酸化するのか,タクトスイッチはそのうち動作しなくなりますよね。
ただ,分解してみてびっくり。
マウスはタクトスイッチを使っているものも多いのですが,これはマイクロスイッチを使っています。
まあ,接点としては,ごく普通のa接点で,モーメンタリー動作(押している間だけon)するものでOKですから,タクトスイッチで十分なはずです。
それで,最初,ALPSのタクトスイッチに交換したのですが.....。
残念ながら,確かにちゃんと動作するものの,少し音がうるさいです。押下力も結構必要で,割に強く押す必要があり,疲れます。また,左クリックだけがダメ,と思っていたのですが,右クリックもダメなようです。
と言うことで,やっぱり両方とも交換しないといけないし,ついでにオリジナル通り,マイクロスイッチにしました。
買ったのはオムロンのD2F-01Fというもの。秋葉では100円くらいで売っています。amazonだとこの3倍の値段になっています。そもそもなんでamazonで売っているんだと言う気もしますけど.....。
ピンはこのLogitechのマウスと同じく,3ピンで,それぞれa接点とb接点が1組ずつ入っています。マウスとしてはa接点のみ使用しています。
左は最初使ったALPSのタクトスイッチで,中央がLogitechのマウスのオリジナルです。取り外して接触抵抗を調べてみましたが,特に異常は見られないものの,マウスで使っているときはクリックを認識しませんでした。
規格としてはDC 30V,0.1Aで,押下力がD2F-01は1.47Nですが,01Fは半分の0.74Nです。iruchanはか弱いので01Fにしました......やはり軽く動作するのがよいです。
まあ,マウスくらいなら買い換えてしまう人が多い(と言うか当たり前ですよね)と思いますけど,iruchanは古いものは大事にしたいと思っているし,マウスやキーボードは毎日触れるものなので,慣れたものの方がよいと思います。
これで,クリックも百発百中で認識するやうになりました。
2021年5月13日追記
ほうれん草の花が咲きました。
ほうれん草の花は生まれて初めて見ました。こんな花が咲くのですね.....。
でも,ほうれん草がここまで育っちゃうととうが立ちすぎて硬くなるので,花が咲く前に食べるそうです。急いで刈り取ってうどんに入れて食べました。
海外旅行用ケトルを買いました [電子工作]
2020年9月13日の日記
去年,仕事でパリへ行ったときにちょっと困ったんですが.....。
驚いたことにたいていあると思っていた,湯沸かし用のケトルがホテルの部屋にありませんでした....orz。
帰ってきて調べてみると,欧州も大陸のホテルには置いてない場合が多いようです。同僚に聞いてみたら,パリにはないことが多いですよ,とのこと。
そういや,iruchanは対英米協調派? だったので,いつも行くのは英米ばかりでした。確かに,今まで,英国や米国のホテルでは必ずケトルが置いてあって,ホテルによっては日本のビジネスホテルみたいにインスタントコーヒーや紅茶のティーバッグが置いてあって,いつも飲んでいましたし,なくなると近所のコンビニでティーバッグを買っていました。
ということでその同僚に薦められて,ケトルを買うことにしました。彼は強者で,いつもパリのホテルじゃ,自炊しているそうです......
確かにiruchanもパンばかりじゃ飽きてしまって,この前はロンドンで寿司買って食べてましたね....。
シリコンゴムを使った,旅行用の折りたたみ式のケトルがあるらしいので,Amazonでポチってしまいました。
とにかく軽いのを,と思って,わりによさげなKONKAというあやしい中国製ですが,今どきどんなものも中国製だし,これはしっかりしていそうなので買ってみました。
買ってみて驚き,意外にいいではないですか
なにより,ケトルって,沸かすだけ,と思っていたのですが,こいつは保温機能があり,サーモスタットで15分くらい経つとまた沸かしてくれます。容量的にも十分で,マグカップ5杯分くらいは沸かせます。600mlくらいは入るようです。
電圧は100/200V切り替え式だし,プラグも日本や米国のA型,英国のBF型,欧州のB型,中国のO型がついているので,まず世界中どこへ行っても困らない,と思いました.....。
韓国は,米国系だったので,最近まで110Vだったのですが,220Vに昇圧し,プラグも変わりました。香港はまだ,BF型が多いと思います。
でも,デフォルトで本体についているプラグが中国のO型なのは残念。昔はあった,日本メーカのものだと,ちゃんとA型がついている,と思いますが....。もう,日本製はないでしょうしね。もちろん,中国製でも日本で売るなら,A型がついていないとダメ,と思います。ちなみにA型は日,米のほか,台湾やタイがそうだそうです。BF型は香港のほか,シンガポールはマレーシアなど旧英国植民地がそうです。インドはごちゃごちゃで,iruchanが行ったときはBF型だったように思いますけど,B型もあるようです。豪州やニュージーランドは行ったことないですけど,中国と同じ,O型だそうです。
と言う次第で,日本で使う場合でもいちいち,付属のアダプタを使わないのは不便。
それで,プラグを付け替えちゃおう....と思ったのですが,付属のケーブルが3芯のせいもあるのですが,太すぎて使いにくい。
そこで,ケーブルごと,JISの10A品に交換しました。消費電力は600Wなので,容量的には十分だと思います。
サーモスタットに幅4.5mmのタブが出ていて,ファストン端子で接続します。この幅のタブだと,#187が適当です。日本圧着端子製のが秋葉の千石電商で@15円でした。残念ながら,接地極は日本では不要なので,外しました。本来は接地極は必須だ,と個人的には思うのですけどね......。
ほんとうはこの10Aのケーブルにプラグがついていたのですが,どうも芯線がプラグのところで断線していたようだったので,プラグもやっぱり交換しました。
☆ ☆ ☆
これで,もうパリへ行っても大丈夫......と思ったのですが,コロナのせいでまだ当面行けそうにありませんね.......orz。
それにしても何でフランスのホテルはケトルぐらいないんだ
金田式DCアンプ用Spiceモデルの作成 [電子工作]
2020年8月24日の日記
電子回路シミュレータはとても長い歴史があり,今は無料で使えるLTspiceを使っておられる方が多いと思います。
iruchanも鉄道模型用コントローラやアンプ設計など,基本的な回路設計はLTspiceを使うことが多くなりました。
ただ,やはりたくさんの問題が.....。
シミュレーションと実際の回路の動作はどうしても違いますし,思ったように動作しないのはもちろんです。
まあ,実際作ってみると,理想状態であるシミュレーションに近い動作をすることも多いし,逆に,Spiceで動かない回路が実際に作ってみると動く,なんてことはないので,まずは設計が正しいかどうか,確認するのに使うのは非常に便利なツールだと思います。また,最近はiruchanはうまく動作しない原因を探るのに使ったりしています。マニアの皆さんには,MJの回路図の誤記を調べるのに使ったりしておられる方もいらっしゃるようです.....。なんか,本末転倒という気もするんですが,編集部が悪いんですよね~。iruchanも金田氏のWE真空管DCプリのレギュレータで誤記を見つけました。
ちょっと脱線しちゃいましたけど,LTspiceでなにより,一番困るのは必要とする部品のモデルがないことですね~。
以前,ゲルマニウムTrのSpiceモデルを作成しました。ゲルマニウムTrのspiceモデルなんて,マニアが作らない限り,世の中に存在しません。
それに,何より国産の半導体のモデルなんてほとんどありません。
1980年代にはそれこそ,世界を支配したと言っていいくらい,日本製の半導体は幅を利かせていたんですけどね.....。
LTspiceをインストールすると,デフォルトでstandard.bjtというファイルがあり,そこにバイポーラTrのモデルが入っています。ホルダは,デフォルトだと,マイドキュメントの中にあります。
C:¥Users¥(ユーザー名)¥Documents¥LTspiceXVII¥lib¥cmp
残念ながら,入っているものは2NやBCなどの頭文字がついた欧米系のものばかりです。ごくわずかに2SAなどの頭文字のついたものもありますけど.....。
基本的に,LTspiceでトランジスタをシミュレーションするなら,デフォルトのPNPやNPNのTrモデルがありますので,デフォルトのままで十分だと思います。
でも,アナログ回路だとそうはいきませんよね.....。単なるスイッチとして使っている回路ならともかく,活性領域で使うアナログ回路じゃ,そういうわけにはいきません。実際,世の中のTrの99.99....%は単なるスイッチとして使われているんでしょうけど.....。
ということで,前回,ゲルマニウムTrのモデルを作りましたが,改めて今回はシリコンTrのモデルを作りたいと思います。
国産のバイポーラTrについては,会員制ですけど,トランジスタ技術の姉妹誌だったエレキジャックのWEBに国産Trのモデルが出ています。iruchanも,以前,ダウンロードして使っています。▲のstandard.bjtに書き加えるだけですので,簡単です。
ただ,残念ながら,国産Trといっても東芝だけです。ほかに,トランジスタ技術の付録のCD-ROMに国産Trのモデルがついていた号があったと思います(何号だったか思い出せません....どうもすみません)。
でも,その付録のモデルだって,ほとんどが東芝だし,松下となぜかROHMのモデルがあるだけで,あまり当てになりません。オーディオじゃ,これらの会社のTrは使いませんよね~。
さいわい,接合型FETは国内じゃ,ほとんど東芝なので,エレキジャックのWEBにあるFETで用は足ります。2SK30もあるのでラッキーです。
iruchanはこれらを先ほどのstandard.bjtにコピーしたので,2SC1815や2SA1015などのモデルを使ってシミュレーションできます。オーディオ用も,かろうじて2SA872と2SB716があったので使うことができます。
ところが,2SA606や2SC959などのいわゆる金田石はモデルがありません。せめて,このTrくらいあれば,いろいろできるんですけどね......。
ということで,今日はこれらの金田式DCアンプで使われているTrのモデルを作りたいと思います。
☆ ☆ ☆
まずは準備から.....。
最低限,VCE-IC特性の図が必要です。真空管ではEB-IP特性ですよね。これがなきゃ,モデルの作成はおろか,作ったモデルが正しいかどうか,検証できません。
最初に,TrのVCE-IC特性はこんな感じです。
一番左側に飽和領域があり,アナログ回路ではここは使いません。ICが平行になっている,活性領域で使うのがアナログ回路です。MOS-FETの場合はここを飽和領域と言いますし,今度はTrの飽和領域を線形領域と言ったり,挙げ句の果て,非飽和領域などと言ったりしますから,非常にややこしいです。
一番右は降伏領域で,ここも使ってはいけません。Trが壊れます。もっとも,それ以前にPcの制限……がありますけどね。シリコンTrになってからは丈夫になったので,ゲルマニウムはともかく,シリコンではごく初期のTrを除いて,この領域はほとんど記載されていません。
LTspiceの各パラメータがどのように影響するか,簡単に書いておきました。
この特性図がないと,モデルは作れません。例えば,活性領域の平行になっている部分の傾きはアーリー電圧VAFで決まります。
と言う次第なので,CQ出版の "トランジスタ規格表" のような,表だけの規格表じゃ,モデルは作れません。それだけで作れれば簡単でいいんですけどね.....。
といって,実は,2SA606や2SC959の特性図は入手難です。
iruchanも散々探したのですが.....。
金田氏の "最新オーディオDCアンプ" (1978)に規格は載っているのですが,残念ながら,特性図は載っていません.....orz。
三菱の2SA726は載っているんですけどね......。
しかたないので,やはりNECの半導体データブックを探すよりほかありません。
NECは毎年,"エレクトロニクス・データ・ブック" というのを発行していて,iruchanも'64~65年度版を持っているんですが,さすがに古すぎてゲルマニウムばかりです。
シリコンTrは1960年頃の開発ですが,日本では本格的に量産がはじまるのは70年代に入る頃のようです。2SA606や2SC959も1971年頃の開発のようです。
ということで,1970年代以降のNECデータブックを探せばある,と思いました。
ようやく,1977年版を見つけたので,特性図をスキャンしました。
あのぉ~~,縦軸の単位が違うんですけど.....。
エミッタ-コレクタ電圧対コレクタ電流特性
これはさすがにたいていのTrの規格表にはこの特性が載っています。でも,2SA606/C959の場合はこれすら探すのが大変でした.....。
どうも通信用の○にSのマークのついた2SA606/C959もありますが,通信というのは国家が管理していて,放送は民間にも開放されている,というのはどこの国も同じで,法や規制はこの考え方で決められています。日本でTVのネット配信が遅れているのはこういう事情もあります。ネットは昔は電話線でやっていたから,通信の範疇なんですね。
どこの国も,通信=電話という時代が長くて,日本では逓信省⇒電電公社だったので,通信用というと主として,電電公社用というのが実際なんですけど,2SA606/C959の特性図はひょっとして国家機密だったのか.....。
ちなみに通信用じゃない普通の真空管は受信管といいますが,半導体の場合は受信用半導体なんて,言い方はありませんね.....。
ベース-エミッタ間電圧対コレクタ電流特性です。
こちらもspiceモデルを作るのに必要なのですが,こちらは2SA606/C959にかぎらず,あまり載っていません。
☆モデルの作成
モデルについては,前回,ゲルマニウムTrの時に書きましたが,次のパラメータが必要です。
BF 順方向DC特性。いわゆるhFEのことですが,実際のLTspiceのモデルには規格表に載っている値の倍から3倍くらいの数値を与えないといけないことが多いようです。
VAF アーリー電圧。飽和領域のICを決めます。デフォルトは∞です。VCE-IC特性でいうと,活性領域(ICが水平となる部分)の傾きを決めます。最近のシリコンTrはこの部分がかなり水平ですから,この数値はデフォルトのままでもよいと思います。
そのほか,
RC コレクタ直列抵抗。飽和領域(ICの立ち上がり部分。VCE-IC特性の縦軸IC=0付近の領域です。)の特性を決めます。デフォルトは0なんですが,飽和電圧の大きい古いTrだと結構重要です。一応,▲の2つの特性図から,VCE(sat)/IBで計算しますが,試行錯誤して決めます。最近のTrだと無視してもよいくらいです。
RB ベース直列抵抗。デフォルトの10ΩでOKです。
ということなんですが,やってみるとBFとVAF,RCのみでほぼVCE-IC特性は決まってしまうようです。面倒ならVAF以下はデフォルトのままでもよく,結局,必要なのはBFだけ,ということになっちゃうんですけど......。本当は温度特性などのパラメータも決められれば,温度補償の計算もできるのですけどね。一応,ISは温度に依存しますので,温度も計算に入れておきました。
以上で,直流的な特性は決められますが,スイッチング回路など,過渡特性を見るだけならともかく,オーディオではf特を見ないといけないので,次の電極間容量は極めて重要です。
CJC 0バイアス時のCB-C。CJC=1.2~2.4×Cob
CJE 0バイアス時ののCB-E。CJE=1.5~2.0×CJC
TF 順方向通過時間 TF=1/2πfT
なお,物性値として,
EG バンドギャップ電圧。シリコンTrは1.11(eV),ゲルマニウムTrは0.67(eV)という定数です。
を入力します。
このセルに規格表の数値などを入れて各パラメータを計算します。別途,LTspiceのシミュレーション結果をグラフ化するマクロも作ってあります。ボタン1発でグラフを表示して検証できます。
☆特性を求めるspiceシミュレーション
以上で,各パラメータを決めたら,LTspiceでシミュレーションします。
適当にエミッタ接地回路をシミュレーションし,パラメータとしてIBとVCEを変化させてICをプロットしてみます。
回路はこんなのです。問題はスイープで,NPNのときはどちらも0から増やしていけばよいですが,PNPの時は厄介で,0から減らすんじゃなく,-の方から増やすように設定しないと,あとでグラフデータを読み込むときにX軸用のデータがIBになっちゃうので要注意です。LTspiceの結果を見ているだけじゃ,わかんないんですけどね。
こんな回路でシミュレーションします。これのコレクタ電流をグラフ化します。
本当はTrのモデルはさっきのstandard.bjtファイルに書き込んで使うのですが,このように回路図中にモデルを記述しておいてもシミュレーションできますし,仮にstandard.bjtファイル中に同じTrがあっても,こちらが優先されますので試行錯誤するのに便利です。
さて,これでVCE-IC特性が求められるわけですが,これをiruchanはExcelのVBAマクロを使ってExcel上にボタン一発で表示できるようにしました。これ,結構面倒なんですよね~~~。そもそもLTspiceのグラフ出力データがCSV形式じゃなく,tabがデリミタになっているし,IBの各ステップごとにラベルが出てきて,マクロで読むのに苦労します。
でも,これをやっておくと,上記のパラメータを変化させながら,特性の変化を見ることができます。
何度もシミュレーションを繰り返して各パラメータを決めていきます。
☆2SA606,2SC959のLTspiceモデル
LTspiceでのシミュレーション結果
━━ や ━━が規格表の値で,‥‥や‥‥はLTspiceによるシミュレーション結果です。
ICの大きな領域で乖離していますけど,小電流領域では割に合っているでしょ
まさか,2SA606や2SC959でIC=50mAなんて動作をさせる人はいないと思いますので,小電流領域だけ合っていれば十分ではないかと思います。
求めたパラメータとLTspiceのモデルは下記の通りです。各パラメータは ","で,区切りますが,スペースでもOKです。
.model 2SA606 PNP (IS=9.39370961721484E-15, BF=80, EG=1.11, VAF=255, RB=10, RC=1, TF=3.18309886183791E-09, CJC=90pF, CJE=105pF, MFG=NEC)
.model 2SC959 NPN (IS=3.54129817885565E-16, BF=70, EG=1.11, VAF=255, RB=10, RC=1, TF=3.18309886183791E-09, CJC=90pF, CJE=105pF, MFG=NEC)
コンプリのTrなんですから,どちらか1個のモデルを作っておいて,PNPかNPNかを変えればOK,ということもあり得るんですが,意外にコンプリメンタリーと言ってもPNPとNPNじゃ,特性が違うことが多いので,今回,iruchanはまじめに別々に求めました。
そもそもキャリアがPNPとNPNじゃ,違うわけで,当然,質量が大きく違うので,高周波特性は異なるはずなんですが,NECの規格表は2SA606も2SC959もfTは同じ値になっています。これってなんかおかしくない?,っていう気がするのですが.....。これらのTrは官需が主だったようなので大本営発表とちゃうか.....,という気がするんですけど.....。といって,自分でfTを測ってみる,なんて気はしません。
NPNの方がキャリアが電子で軽いため,高周波特性が優れているのが普通で,こちらで書いたように,普通はNPNの方がfTが高いです。
一番ゲインが高く,音も決めてしまうので低ひずみで広帯域が要求される2段目の差動アンプに,初段用のJ-FETがNチャンネルしかないことからPNPを使わざるを得ない,というのがDCアンプに限らず,オーディオアンプの悲劇なんですが......。金田氏も書いていますけど,初段に2N5465を使って,2段目にソニーの2SC1124をつかったパワーアンプなんて作ったらよさそう,という気がします。
☆2SB716,2SD756のLTspiceモデル
次に日立のオーディオ用Trのモデルを作ってみます。2SA872/C1775のコンプリTrのモデルはトラ技の付録についていましたが,こちらはありませんでしたので作ってみます。iruchanも定電流回路などに2SD756が多用されているのですが,spiceモデルがないので困っていました。
カラーがLTspiceモデルでのシミュレーション結果です。●や●は規格表から読み取った値です。
モデルは次の通りです。
.model 2SB716 PNP (IS=4E-14, BF=420, EG=1.11, VAF=65, RB=50, RC=100, TF=1.06103295394597E-09, CJC=3.24pF, CJE=3.78pF, MFG=Hitachi)
.model 2SD756 NPN (IS=3.97281491040095E-14, BF=680, EG=1.11, VAF=90, RB=10, RC=470, TF=4.54728408833987E-10, CJC=2.88pF, CJE=3.36pF, MFG=Hitachi)
普通,RCは1Ω程度なんですが,これくらいの値にしないと飽和領域の立ち上がりが表現できませんでした。
それに,コンプリと言っても,▲の規格表の特性図を見ても,かなりずれていますね。
ちなみに,トラ技の付録に2SB716のモデルが載っています。同じようにLTspiceでVCE-IC特性を描いてみると.....
iruchanモデルの方がよく合っていますね......(^^;)。
☆2SA726のLTspiceモデル
三菱の名石2SA726のLTspiceモデルを作りました。金田氏は "特有の色がつくが,音楽的に最も優れたTr" と評していますね.....。
特性図は "最新オーディオDCアンプ" に載っています。iruchanは三菱の小信号用トランジスタの規格表を持っているので,またコピってきます。
でも,これ,LTspiceモデルを作るのは大変でした.....汗。
困ったのは,金田氏の本に小電圧領域の図が載っていて,これにあわせればいいや....と思ったのですが,どうしても合いません。
確かに,Trは大電流域と小電流域で特性が異なり,そのため,2つ,特性図を載せている親切な会社もあるのですが....。
どうしても小電流域でLTspiceのモデルを作ると,BFが25くらいの数値になってしまい,2SA726は高hFEのTrなのでおかしいです。
また,2SA726は,真空管でもよくありますけど,各特性曲線の間隔が上に行くほど詰まってきてしまっています。
真空管の場合だとこれは0バイアス付近で,グリッドエミッションの影響です。Trの場合は何でだったか,思い出せないのですが....。
どちらにしろ,この特性は正弦波のピーク値を抑える作用をしますから,偶数次のひずみを発生して,好ましくないのですが,真空管も半導体も避けられません。武末数馬氏の "パワー・アンプの設計と製作" にも,ロードラインを引いて最大出力電圧を求める際に,Eg=0Vの線との交点ではなく,Eg=ー1Vの線との交点で求める,と書いてあります。
この場合のLTspiceモデルはIKFを変更してモデル化します。普通は無視してもいいパラメータだと思います。
IKFは順方向高電流のパラメータで,高電流領域でhFEが低下するのをシミュレーションします。
何度もシミュレーションしてみて,IKF=60mAで決定しました。
.model 2SA726 PNP (IS=2.78097043728067E-14, IKF=60e-3, BF=470, EG=1.11, VAF=30, NF=1, RB=10, RC=20, TF=1.59154943091895E-09, CJC=5.4pF, CJE=6.3pF, MFG=Mitsubishi)
いかがでしょう? 割にIBが大きな領域でも合っているでしょ。
ところで,2SA726のコンプリはなかったんでしょうか? デュアルは2SA798なのはよく知られていますし,それのコンプリは2SC1583なんですが,シングルのがわかりません。たいてい,コンプリのTrはPNPが先に亡くなっちゃって,NPNが後家さんで残っちゃうのですけど.....。2SC1161なんかそうですよね.....。上記のNECデータブックでも,2SC1161は保守品種(新規採用を控える。製造はまだしているか,在庫がある)なのに対し,2SA653は廃品種(製造中止)に指定されています。
そのせいで,2SA653/C1161の特性図は未発見です。LTspice用のモデルはまだ作れていません。
逆に,NPNの方が需要が大きいので,製造中止前にたくさん作っておいてもPNPが残っちゃうパターンもあるのでしょうか。2SC959はほとんど入手不能なのに,2SA606がまだ入手可能,というのはこちらでしょうか。
金田氏も2SA726のペアはメーカが違うのに2SC1400を選んでおられましたが,そもそも,2SA726は後家さんだったのじゃなくて,もともと独身だったのか.....。
☆2SC1400のLTspiceモデル
2SA726の旦那さん? がこの人(Tr?)でした。残念ながら,岩崎家(三菱)の人じゃなく,住友家(NEC)の人でしたけど.....。
結局,2SA726が早々に市場から消え,2SC1400も後を追うように市場から消えると,日立の2SA872/2SC1775が後釜になるんですけどね.....。
LTspiceモデルは下記の通りです。
.model 2SC1400 NPN (IS=7.94562982080191E-14, IKF=0.012, BF=60.1, EG=1.11, VAF=128.5, NF=1, RB=10, RC=2, TF=1.59154943091895E-09, CJC=4.62000000079578pF, CJE=2.31000000159155pF, MFG=NEC)
☆2SA566のLTspiceモデル
レギュレータ用の名石,日立の2SA566のモデルです。残念ながら,コンプリの2SC680は出番がなく,継子扱いされています。iruchanもとうに会社じゃ,いらない子ですし,同じ立場の2SC680も使ってあげたいのですが......。
そもそもレギュレータ用ではそれほど,LTspiceのモデルを作っておいても意味はないのですけど....。
でも,一応,リップルフィルタなどでiruchanは使っているので,出力電圧を求める際に必要ですので作っておきます。
モデルは下記の通りです。
.model 2SA566 PNP (IS=1.87688803479349E-16, IKF=0.8, BF=77.7, EG=1.11, VAF=150, NF=1, RB=10, RC=7, TF=1.59154943091895E-09, CJC=45pF, CJE=52.5pF, MFG=Hitachi)
☆2SA640のLTspiceモデル
NECのオーディオ用ローノイズTrです。コンプリは2SC1222ですが,’77年版のデータブックにはその記述がありません。CQ出版の "トランジスタ規格表" には書いてあります。なんとも不思議.....。
金田氏は2段目の差動アンプに,無線と実験 '73.8, 9月掲載の第1号プリでは,東芝の2SA493GRを使っていて,'74.1月号には2SA640が使用されています。3号機は初段のFETが代わっただけで,引き続き2段目は2SA640です。今,iruchanはその2号機を作っています。
ただ,これは三菱の2SA726が出てくるまでの話で,2SA726が登場するとすぐに2SA640は離縁され,実家に泣く泣く出戻ってきます......。
ちなみに,第1号プリは初段が2SK30,出力が2SC1000のエミッタフォロアーとオール東芝構成です。以後,J-FET以外はNECという歴史がずっと続いていくわけですが,金田氏は東芝製のTrがお嫌いだった.....?。
iruchanは2SA640は最初に作ったA級パワーアンプの初段がこれで,少しなじみがあります。でも,初段がバイポーラであることからわかるとおり,ACアンプで,金田氏の設計でもないし,音もいまいちで,大学生になる頃に解体してしまいました。
それに,半導体のA級アンプって,やっぱダメ,という気がします。どうにも眠い音がしました。半導体はおそらく,熱を持つと音的にもダメなのではないかと思っています。
ACアンプだったためか,2SA640は熱結合していなくて,大丈夫か,と思いましたが,メーカ製のDCアンプは初段以外は熱結合してないことも普通で,問題ないのかもしれません。
2SA640の方がよっぽど2SA726よりきれいな特性なんですけど......。
.model 2SA640 PNP (IS=4.76737789248114E-14, IKF=12m, BF=822, EG=1.11, VAF=59, NF=1, RB=10, RC=3.4114707552527E-03, TF=1.59154943091895E-09, CJC=11.7pF, CJE=13.65pF, MFG=NEC)
☆ ☆ ☆
さて,こうやって金田式DCアンプの半導体のLTspiceモデルを作ってみました。今後,ここで追加していきたいと思います。
なお,誠に申し訳ありませんが,あくまでも個人的な非科学的シミュレーションですので,ご利用になる場合はあくまでも自己責任でお願いします。不都合な点があっても,責任は負いかねますので,ご了承ください。
タワー型扇風機の修理 [電子工作]
2020年7月20日の日記
ちょっとiruchanは怒っちゃいました
どうにもずっとが続いて困ってしまう,と言うのもあったのですが,室内で干していた洗濯物を晴れてきたので外に出そうかと持ち出したらうっかり▲の扇風機に引っかけてしまい,扇風機が倒れてしまいました.....。
まあ,倒れたくらいで壊れることはないし.....と思って立て直してスイッチを入れても全然風が来ませんし,中でカラカラ音がしますし,しまった,と思いました。どうもやっちゃったようです。
タワー型扇風機なので,中でシロッコファンが回っているのですが,そのシロッコファンの羽根が吹っ飛んで壊れてしまったようです。
と思ったのですけれど,しかし,そもそも▲のようなフローリングの床じゃなく,畳の上に倒しただけで壊れてしまう扇風機って.....と頭にきました。
去年の夏に買ったばかりの,山善という会社のYSR-WD90というタワー型扇風機です。実質,1年の寿命でした.....orz。
おそらく,倒した拍子に,中のシロッコファンが内部の突起かなにかにぶつかって羽根が折れ,連鎖的に何枚かの羽根を吹っ飛ばしてしまったようです。
なんの写真か,わけがわからない状態になっちゃってますが,6段ある,フィンのうち,最上段のほぼ2/3の羽根が飛んじゃってしまい,シャフトを支持する天板が外れちゃってます。
まあ,そのときは中のファンだけ替えればいいや,と思ったのですけれど.....。
メーカーの山善に聞いてみると,"別売部品での販売をさせていただいておらず、全て、お預かり修理対応iいたします。" とのこと。おまけに,修理代は7,000円くらいかかるから,修理するのも面倒くさいし,買った方が安いよ,という意味のことを言われました。
もう~~っ!! ファンだけ替えれば簡単に直るのに.....。
確か家電製品は経産省の指導で,製造中止後,8年は部品の保管をしておくことが義務づけられていますし,普通はサービス用として部品の販売もしないといけない,と言うことになっていると思います。
実際,iruchanは過去,何度もソニーのラジオやMDプレーヤのケースをへこましたり,割っちゃったりしたので,サービスセンターで部品を買っています。ソニーさんはいつも親切に対応していただき,部品もきちんと売っていただきました。
それなのに,この山善という会社は部品の販売をしないばかりか,修理すらも代理店経由,ということなので代理店の手数料も取られるわけで,これじゃ修理なんてしてもムダだから新しいの買ったら,という対応。
頭にきて,iruchanは自分で直すことにしました。捨てるにも粗大ゴミなので,500円くらいは払わないと持って行ってくれませんしね。
もちろん,もう,この会社の製品は二度と買いません。
そもそも,タワー型扇風機はこれも含め,もう1台,山善のもっと大きいのを買ったのですが,とにかくうるさい! ので頭にきていたのも事実。TVを見ていられないくらいなんですよね.....。
中のシロッコファンの取り付け,芯出しや動的バランスなどの設計・調整がうまくできていないんですね。振動が大きく,ケースが共振してガタガタとうるさいです。扇風機だから,シューッという風切音がうるさいにはしかたないと思うのですけど,ガタガタと機械的な騒音がするのは困ります。
もう山善のは買わない,と決めたので,あとで,日立製のタワー型HSF-DS500Aというのを買ったらあまりに静かで嫁はんもびっくり。最強にしても多少,風切音がするくらいで,まったく機械的な音はしません。値段はちょっと高いんですけど,さすが日立,と思っています。日立さんや,先のソニーさんの対応は昔ながらの日本のメーカらしい,優れた製品と誠意ある対応だと思います。なお,もちろん,iruchanは日立の関係者じゃありません。
山善は中国製だからしかたないとしても,日本のメーカが自分のところのブランドをつけて販売するのなら,もっとしっかりした製品を売って品質管理もしっかりしてほしいものだと思います。そもそもタワー型扇風機なんて,背が高いのだから,ユーザーが倒してしまうことくらい想定して耐久試験をやらないんですか? 思いっきりあきれています。
☆ ☆ ☆
ということで分解して調べます。タッピンねじでケースを留めているだけですから,分解も簡単です。
ファンは先ほどのような状態なので,まずは対応として,接着剤でくっつけることを考えますが,ABS樹脂の接着がむずかしいことはよく知っていますので,実は,最初から毛頭ダメ,と考えていました。
予想どおりで,材質はABS樹脂なんですが,某社のABS用という接着剤ではくっつきません。いつまでもネチャネチャとしているだけで,まったくくっつきません。
ABS用の接着剤としては,ブタノン(メチルエチルケトン)か,模型マニアではよく知られている臭化メチレンですね。どちらも割にくっつきます。ただ,先ほどのABS用接着剤はこのような薬剤は使っていないようです。
おそらく,家庭用として安全を考慮した接着剤なんでしょうね。
ブタノンは一度使いましたが,揮発性が高いし,毒物及び劇物取締法の規制対象物質です。臭化メチレンも危険な薬剤のようです。iruchanはこちらは使ったことがありません。
ということで,この接着剤ががダメなら接着することはあきらめた方がよさそうです。
となると,もう,機械的に接合するしかなさそうです。
でも,これも大変。
30mmのスペーサーで高さを確保したんですが.....。
シャフトは当然,1段減って長さが足りないので,延長シャフトを使ってみました。もとはボリウムやロータリーSWのシャフトを延長するための部品ですが,日本製のボリウムはφ6mmなので,ちょうど,ぴったりです。うまい具合に,ファンの軸と同じ径(6mm)でした。
予想どおり,さすがは日本製らしく,φ6mmの円形部分は精密で,軸受にぴったりと収まりますし,真円度も高いようです。スムーズに回転します。
でも.....完成して取り付けて回転させてみるとかなりの振動。危険なのですぐに止めました。
要は延長シャフトはよくできているんですが,どうしてもこのやり方だとスペーサーが直角につかないので,軸が曲がってしまい,アンバランスになっちゃうんですね。
しかたなく,1段目はあきらめてすべての羽根を取ってしまい,2段目にM3のねじで固定しました。これなら回転軸はほぼ直立位置で固定できると思います。センターも,軸がついている板と2段目の板が段差なく取りつけられればきちんと取れるはずですよね。
こうすると60mmほどフィンが短くなっちゃうので困っちゃうのですが,さいわい,延長シャフトは長いのがあるので,L=50mmの延長シャフトを買ってきて,それを使います。
なお,1段減っちゃったので,上か,下かどちらかでなくなった分のスペースを確保すればよいですけど,下で確保しました。さっきは延長シャフトをファンの上部につけたのですが,今度はモータ軸につけました。こうするとファン部分が上に移動した形になります。こうすると,風は一番上から吹きますよね。下の方はあまり吹かなくてもよいと思います。
ただ,これだとうっかり,ファン固定用のねじが緩んじゃうとファンが落ちて軸受から外れてまたバラバラになっちゃうでしょうから,φ10mmのアクリル製パイプをかぶせて上下方向を固定しました。
また,すべてのねじはLOCTITEのねじロックで固定しました。これなら安心です。
☆ ☆ ☆
ようやく修理完了。特に軸のぶれもなさそうで,振動も大したことありません。
iruchanはタワー型扇風機が気に入っています。何よりあまりスペースを取らないのと,なぜか,普通の扇風機に比べると非常に涼しい感じがします。
せっかく買ったのに,倒れただけで壊れてしまう扇風機にはブチギレしましたが,ようやく修理完了です。本来の寿命まで使いたいと思います。
2021年8月4日追記
これとは別に,山善のもっと大きなタワー型扇風機YSR-PD1101を使っていましたが,とうとう動かなくなりました。
タッチセンサがうまく働かないようです。一度,プラグを抜くと再度,動作するようにはなるのですが,買ったときからうるさくてたまらなかったし,大きくて邪魔なので,この際,捨ててしまうことにしました。
本機同様,運転するとガタガタと大きな音を立て,TVの横に置いていたのですが,うるさくてTVが聞こえないくらい
動的バランス調整ができていないのはもちろん,そもそも,組み立て時に芯出しすら,やっていないのではないかと思います。中国人の工員がファンの軸受部分を本体にネジ留めしておしまい,なんでしょう。
これでようやくお別れです。
ざま~~みろ。せいせいします。もうこんな会社の製品は買いません。よくもまあ,こんな製品を販売しているものだと思います。
代わりに日立のHSF-DS500Cを買いました。最近は500Aではなく,500Cとなっているようです。これは本当に静かでよくできた(というか日立さんには悪いけど,当たり前だと思いますけど)製品だと思います。
KOWA製LEDスタンド EK213用調光器+ファンレスPC用電源の製作 [電子工作]
2020年1月20日の日記
あかるい~~
年末に作ったファンレスPCの電源も兼用しています。
KOWAのLED製デスクライトEK213を使っています。面発光の優しい光がとても気に入っています。明るさという点ではGENTOSなどの製品の方が明るいと思いますが,明るいものほどLEDが1灯のものが多く,本を読むくらいだといいですけど,メモ書きしたり,iruchanみたいに工作をするには,どうしても手の影ができてしまって見にくいです。
かといって,今もデスクで使っている,インライン式のLEDランプの場合は,チップのLEDが多数並んでいて,影ができにくいのですが,今度は多数の薄い影が周囲にできてしまい,単灯式のものよりマシですけど,やはり見にくいです。
KOWAのLUPINASシリーズはアクリル板に反射させて,液晶モニタみたいに何枚かフィルタが入っていて,面で発光するようになっていて,こういう影ができにくく,本を読むには最適です。今時珍しい,Made in Japanというのもうれしいです。
ということで,本機を使っているのですが,ちょっと買うタイプを間違えて,普通のデスクライトのように,卓上型のタイプじゃなく,クリップ式を買っちゃいました。こっちの方が便利,と思ったのですけれど....やはり通常のデスクライトタイプの方が便利です。
今さら買い直すのもなんだし,やはりACアダプタが邪魔だな~と思っていたので,電源一体式のデスクライトに改造することにしました。
ついでに,調光機能があると明るさを変えられて便利なのでつけることにします。実際,市販のデスクライトにも6段階など調光機能がついているものがありますね。でも,これらはボタンを押して制御するんですが,簡単にVRを回して調整,と言う機能ではありません。いまはそういうものを作るとかえって金がかかるのでしょう。今回は昔ながらのアナログ制御? 式です。前回,インライン式のLEDランプの調光器を作った際に基板を量産していて,手持ちもありますしね。
それに......。
ここまでは以前から考えていたことだったのですが,年末にファンレスPCを製作したんですけど.....。
ファンレスPCの場合,電源はDC12VのACアダプタを使うことが多く,筐体の中で,ATX電源として機能するよう,DC-DCコンバータがついていて,12Vと5Vの電源を作るようになっています。
それで,前回はACアダプタを買って使っていたのですが,今回はLEDデスクライトと兼用で電源を作ろうと思いました。
☆電源
電源はスイッチング電源ですが,COSELのTUHS25F12を買いました。値段は通常の基板型のスイッチング電源の3倍位しますけど,フルモールドタイプの極めて小型なスイッチング電源です。容量は12V,2.1Aで,Nゲージのコントローラなんかに最適ではないかと思います。実はそれ用に買ったものですけど.....。今回,1個,流用することにします。
容量的には,今回自作したファンレスPCは12V,2AのACアダプタで快調に起動しているので,このスイッチング電源でも動作するはずです。
なお,TUHS25F12は外付けヒューズが必須です。基板式のものは基板上についていますけどね。定格は3.15Aのスローブロータイプと規格表に書いてあります。何でそんなに大きいのが必要なのか.....と思っていたら,かなりラッシュカレントが流れるためのようです。残念ながら,その定格のヒューズは入手できなかったので,通常タイプの3Aを使いました。
LEDスタンド用としては,ケースが問題なんですけど,Hammondの小型アルミダイカストケースがちょうどいい大きさなのでそれにしました。以前,たまに,メーカ製のパワーアンプなんかで音量調整用のボリウムがないものがありますけど,そう言うものをテストするときに便利なアッテネーターボックスを作るときに使って,なかなか具合がよいので再度,使います。赤の縮み塗装がとてもきれいです。
さて,早速,ケースを穴開けして作ります。ものの30分もあれば穴開けは終了です。電源SWは照光式ロッカーSWを使いますが,これでドツボにはまっちゃうんですけど.....
☆回路
LEDスタンド用の回路としては,PWM式調光回路となります。出力電圧は12V固定ですが,パルス式にして,パルス幅を可変してLEDの明るさを調整します。スイッチング周波数は20kHzにして,ちらつきを抑えるとともに,耳にスイッチング音が聞こえないようにします。
ファンレスPC用の電源としては,外径5.5mm,内径2.5mmのACアダプタジャックを設けて,そこから出力することにします。当然,こちらの方はSWは設けません。うっかり切ると大変なことになりますので.....。
なお,調光器内部の回路は,前回の調光回路と同じです。回路についてはこちらをご覧ください。
☆組み立て
さて,ケースの穴開けが終わったら,配線します。今回,調光器の基板は前回量産したものですし,買ったものはほとんどありません。手持ちの部品で済んじゃいました。
タイマ555で発振し,NJM2903コンパレータでPWM波を作ります。
さて,回路が間違ってないことを確認してスイッチオンします。
ん,あれ?
一応,KOWAのLEDライトの部分はちゃんと点灯し,調光することも可能なので成功のようです。ところが....。
ロッカーSWのLEDが点灯しません。あちゃ~~。
実は,最初にDC12Vの電源と,SWを配線し,その段階でテストしたときには点いていたのですが.....。
使用した日本開閉器(今はNKKスイッチズと名前を変えちゃったようですが.....。どうにもなじめません)製のロッカーSWは何度も使っていて,お気に入りなんですけど,照光式のLEDが別配線になっていて,必ずしもAC100Vではなくてもいろんな電圧で動作できるのがメリットです。むかしのネオンランプ式なんかだとAC100Vしか使えませんでしたけど.....。いい時代になりました。
ところが,おそらく,うっかり,LEDのところに直接12Vがかかっちゃったのだと思います。抵抗も介さずに12VもLEDにかけちゃうと壊れます......
困ったな~~~。
今からまたSW買いに行くの面倒だし.....と言うことでSWを分解して,LEDだけ,交換しちゃいましたようやるよな......
意外に簡単で,無事に幅3mmの角形LEDに交換できました。うっかり,スイッチの樹脂が緑色なので,LEDは白で,樹脂で色が緑になっているんだ,と思っていましたが,切れたLEDは緑色だったようです。日開のSWにはない,白色の照光式SWになっちゃいました.....。
ま,これも珍しくていいかと放置プレイです。
無事にLEDが点灯し,調光回路が動作すればOKです。VRで微妙な光量に調整できてゴキゲンです。
ケースの中身です。空いたスペースは電源です。
調光機能もつけました。
☆PC用電源のテスト
さて,いよいよ年末に作ったファンレスPCに接続してみます。
ところが.....。
なんとかBIOS画面までは立ち上がって,例のくるくる回るWindows起動中のアニメーションまでは出てくるのですが.....。そこまでで,やはりWindows10は立ち上がりません。途中でHDDが止まり,画面は真っ暗になりました。
といって,容量不足が原因ではなさそうです。もし,容量不足なら,スイッチング電源の保護回路が動作して,電源を遮断してLEDスタンドは消えてしまうはずですが,そうではありません。PCも画面が真っ暗ですけど,パイロットLEDは点灯したままですから,電源は入っているようです。
とすると......。
おそらく電源の質によるものだと思います。リップルが大きいとか,出力の変動が大きいとか,あと,根本的に微妙に電圧が12Vでないとか,そういうことが原因で,Windowsが立ち上がらないのだと思います。
困ったな.....
ということで,改めてCOSELの規格表を見てみると,+BC,ーBCの端子にコンデンサがいるようです。
うっかり,ちゃんと規格表を読んでなくて,この端子は空けてありました。この端子は平滑用の端子で,標準で120μFのコンデンサを接続しておく必要があるようです。ここになにもつながないとリップルが大量に出力されてしまい,PCは電源の変動を検知して起動しないんですね。電圧を測ってみると,80V以上の電圧がかかっています。コンデンサの耐圧は160V以上が必要です。
ようやく160V,100μFの電解コンデンサを接続したら無事に起動しました。やれやれ~~。
PCを起動してもスイッチング電源自体はほんのり温かくなるだけで,問題なさそうです。
またまた新しいプリント基板の作り方 [電子工作]
2019年7月1日の日記
娘のUVレジン用露光装置を借りました.....
工作マニアのiruchanは今もプリント基板を自作しています。
まあ,今の時代,ネット経由でガーバーデータと呼ばれるプリント基板用のデータを送れば,海の向こうの赤い大きな国から1週間もすれば完成したプリント基板が届く,と言う時代なんですけど......iruchanは今も昔ながらのエッチングでプリント基板を作っています。
ということで,この記事で紹介したとおり,今まではアイロンを使ってレーザープリンタのトナーを生の基板に転写してパターンを写し取っていました。
ただ,この方法,正直言って,まあ使える,と言う程度でしかないと判断しています。とにかく,やはり失敗する確率が高い上,仕上がりが汚い,というのがその理由。
そもそもなかなかトナーの転写がうまくいきません。
アイロンの温度や水分,使用している転写用紙,トナーを含めたレーザープリンタの性能などにも左右されますし,何より一番の問題はうまく紙からトナーが剥がれてくれないということなんですよね~。
いろいろ,iruchanも転写用紙を普通の紙や中国製のツルツルしたプリント基板製作用と称する転写用の黄色い紙など,試してみたのですが,やはりうまくいきません。紙を剥がすときにアセトンを使う,なんて方法がネットやYou Tubeなどに出ているのですが.....。アセトンの臭いには閉口しますね.....。
また,特殊な転写用紙がどうにもレーザープリンタと相性が悪く,中のドラムに張り付いてしまって紙詰まりしたりします。プリンタが故障しちゃ,まずいですし,やはりちょっと危ない感じです。
それに,なんとかうまく転写できた,としても仕上がりが非常に汚いんですよね~。
やはり元々紙に印刷されたものだけに,パターンの周囲がギザギザと汚いし,下手すると細い紙の繊維が残って隣のパターンとショートしていることもしばしばで,それも肉眼じゃわからないくらい細い繊維のため,完成してからテスターでいちいちチェックしないといけなくて,エッチング後,カッターでその細いパターンを切る必要がありました。
と言う次第で,せいぜい点数は70点といった感じ。この方法はあきらめようと思います。もっといい方法はないかと探していました。
やはり,もとの感光基板に戻ろうか,と言う気もしたのですけれど.....。
でも,サンハヤトのポジ感光基板は仕上がりはきれいだけれど,何より高い!!
それに,失敗したらもう二度と感光基板としては再利用ができないし,iruchanみたいに小型の基板を作る場合は余白がもったいない!!
ということで,昔から感光剤だけ入手できないかと考えていました。
実を言うと,20年ほど前まで,秋葉原でスプレー式の感光剤が売られていたのです。
でも,あるのは知っていましたが使ったことはありませんでした。
米オムニ社の感光スプレーというもので,秋葉でも売られていたようです。
これが今もあると便利なんですけどね......。
なぜだかわかりませんが,現在は市販されていません。売れなかったんでしょうね。
それで,今回,一応,海外のサイトを検索して似たのが売られていないか,確かめてみました。
と,やはり今でも似たのがあるんですよね.....。
こんなのもあるんですけど。
赤い国じゃなくて,独製で,ポジ感光タイプだし,輸入できればいいんですが。
でも,スプレー缶の輸出入は高圧ガス保安法に引っかかるので,輸入する場合は試験成績書が必要です。また,航空機内は1本だけ,500ml以下であれば持ち込み可能なようなのですが,もちろん,プロパンガスなど,可燃性ガスを使っているものは不可です。また,不燃性ガスのものでも,どう考えても保安検査場でもめそうだし,海外旅行のついでに買って帰る,と言うことも難しそうです。また,▲のものはそもそもExtremely flammable aerosol(高可燃性ガス)と書いてあるので,ダメです。
一応,ダメ元で海外のサイトにメールを出して聞いてみましたが,なしのつぶて。正直,向こうでも "何バカ言ってんだこいつは!" と言うところなのだと思います。どこの国もスプレー缶の輸出は面倒だと思います。
じゃ,オムニスプレーはどうだったんだよ,という感じなのですが....。
となると,スプレー缶はダメなので,感光剤そのものを購入することを考えてみます。
大阪の共立電子さんで富士薬品工業のポジ型フォトレジストという薬品が売られています。
ただ.....。
なにせ1本500ml入りのものが7,000円以上しますし,なにより賞味期限? が半年,と言う代物。
こりゃあかん......。
もうひとつ,iruchanはeBayやAli Expressで中国製の怪しげなどろりとした青色の感光剤が売られているのは知っています。アルコールで希釈して使えるそうです。これこそ本当に感光剤みたいな感じで,半導体工場などで実際に使われているような液体です。
といって,色から言って,ジアゾ系の感光剤と思いますけど,中身はまったく不明ですし,どうにも臭いらしいです。ちょっと,中国製と言うこともありますし,臭い,というのであれば,避けた方がよい感じです。
と言う次第で,八方塞がり,という感じなんですけど.....四面楚歌って,こんなもんなんでしょうね......そんなことあらへん。
で,photosensitive paint PCBなんてキーワードでネットを検索していると.......,なんと.......,
感光フィルムがあるではないですか!!!
しかも,すでにいろんな方がこの方法でプリント基板を作っておられるようです。
ちなみに英語でプリント基板って普通,PCBと言います。Printed Circuit Boardの略で,悪名高いPoly Chlorinated Biphenylではありません。
こりゃ,いいや,って感じです。フィルムなら臭わないし,なにより固体なので,皮膚についても問題ないでしょう。
現像時にはアルカリ性の液体が必要で,どうやら炭酸ナトリウムが必要らしいですが,それだったら薬局で簡単に手に入りますしね,何とかなりそうです。
実はこのフィルムはさっきの感光液を探しているときにAliで見つけました。
まだ海のものとも山のものともわかりませんから,とりあえず,1mだけ,試しに買ってみました。値段も安く,2ドル弱です。
来てみると非常に薄いフィルムで,色も薄い青色をしています。サンハヤトの基板と同じような色をしています。
なんかいけそう.....と思いました。今,調べてみるとamazonでも入手可能なようです。ただ,値段は倍以上するようです。また,一般的にはドライフィルム,と呼ばれることが多いようです。
☆ ☆ ☆
早速,試してみます。この感光フィルムは3層構造になっていて,上下に透明な保護フィルムが貼ってあるので,これを途中で剥がしながら作業する,と言うことになります。
感光膜は非常に薄く,Ali expressで業者の説明を読むと,1.5mil(mmではありません。また,ミリじゃなく,ミルです。1mil=1/1000インチで,25.4μmです)の厚みしかないようですが,パターンの厚さとしてはこれでも厚すぎると思っています。
まずは大まかな流れとしてはこんな感じです。クリックすると拡大します。
最初に,保護フィルムを1枚だけ剥がし,基板面に密着させます。このとき,温度と圧力が必要なので,アイロンやラミネータが必要です。
その後,紫外線ランプで露光し,炭酸ナトリウムの水溶液で現像すればOKです。
ところが.....。
でも,ここからまた茨の道でした.....。何ごとも成功するまでには時間と労力がかかるようです.....orz。
☆マスクの製作
次に,OHPシートでマスクを作ります。最大の問題点は,この感光フィルムはネガであること,です。
サンハヤトの感光基板はポジタイプなので,黒く塗ったところがパターンとして残りますが,これは逆で,透明な部分が黒く残るのです。
これは,事前に知っていたのですが,やはりパターンの製作は面倒です。
どうやら,ポジ感光剤はこのようにフィルムに加工することができないらしく,感光フィルムはネガタイプのみになるようです。
仕方ないので,いつも通り,"花子" でパターンを描いてから画像出力して,画像編集ソフトでネガ反転しました。
その後,OHPシートに印刷します。最近はレーザープリンタもOHP印刷ができないものが多く,困ったものなんですけどね....。
☆貼りつけ
さて,まずはフィルムを基板に貼りつけます。
基板の大きさにカットします。
感光フィルムは3層構造になっていて,中心に感光フィルムが入っていて,上下を保護フィルムが貼り付いています。
まずは基板に貼り付く側の保護フィルムを剥がして,基板に貼りつけます。
非常に薄いフィルムなので,保護フィルムを剥がすのも非常に面倒ですが,両面テープを机に貼りつけてやってみると剥がすことができます。
実は,後から気がつきましたけど......ここからが最大のヤマ場なんです。
一応,感光フィルムとまだ残っている保護フィルムを基板に貼りつけたらOKなんですけど,iruchanは最後の最後,現像する際に何度も失敗しちゃいました。
一緒に,露光,現像したパターン部分も剥がれちゃうんです......orz。
何でか原因がわからず,困っちゃいました。
どうやら,基板に貼りつけた際に,きちんと銅箔面に貼り付いていなくて,炭酸ナトリウムで現像した後のパターンも一緒に剥がれてしまうようです。
仕方ないので何度も実験しました。
どうやら,ポイントとしては,
銅箔面をきれいに磨いて乾燥させる
まあ,これはエッチングする場合は当たり前ですけど,やはり感光フィルムを貼る場合もきれいにしておかないといけないようです。水を使って貼りつけると言う場合もあるようですが,iruchanは水を使うとダメでした。ステンレスたわしで磨いたり,アルコールで拭いてみました。
低温のアイロンで密着させる
やはりトナー転写方式同様,アイロンでフィルムを密着させる必要があります。
ただ,この感光フィルムは非常に熱に弱いので,アイロンの温度は最低にし,しかも基板に押しつける際には一度,スイッチを切って,温度を下げてからにした方がよいです。
おまけに,中央の感光膜がさらに温度に弱いようで,保護フィルムは何ともないのに,感光膜だけ縮んじゃう,なんて現象も出ました。
You Tubeではラミネータを使う人がいるようですが,見ていると4,5回,ラミネータに通していますし,何度も熱を加えて圧力をかけて密着させないといけないようです。
その後,どうも数時間,放置した方がよいようですし,一晩放置する,と言う方もいるようです。すぐに露光させて現像をするとダメなようです。やっぱ,KATOじゃなかった,果報は寝て待てってか?
☆露光
次は紫外線を当てて露光します。天然光でもよい,と書いている人もいらっしゃいますが,太陽だと季節や時間,天気によって大幅に変動するので,やはりサンハヤトの感光基板同様,きちんと露光装置を買った方がよいです。
で,iruchanも昔から自作の紫外線ランプを使っていたのですが....。
なんと今はUVレジン用に,きれいな露光装置が,しかも安く売られていて,非常に便利です。amazonでもたくさん売られています。サンハヤトのちびライトは15,000円もしますけど.....。そんなに高いものは必要ありません。
実はiruchanも今回は娘が買ったやつを使わせてもらいました.......(^^;)。
amazonで,レジン液や型がついて,おまけに露光装置までついて2,000円ほどだったそうです。
残念ながら,露光装置は昔ながらの蛍光ランプ仕様で,グローランプで点灯するので,スイッチを入れてもすぐに点灯せず,2,3秒待たされるんですけど,まあ,十分です。と言うより,昔は蛍光灯というと,みんなこうだったんですけどね.....。蛍光灯式のものでも今じゃ,ほとんどがインバータ式なので,瞬間的にパッと点灯するので,点灯管式のものはなんか,久しぶり,という感じです。なお,UVランプは高級なものは紫外LEDを使っているようです。また,ネイルアート用というのも売られていますが,これは赤外線センサーがついていて,指を入れないとランプがonしないようになっているものは使えませんね。
さて,露光は結構,娘の買ったライトが明るいので,短時間で済みそうです。
iruchanは自作のライトだと5分以上やっていましたが,結局,娘のだと90秒でOKのようです。これ以上紫外線を当ててしまうと,余白部分も紫色に変色してパターンが残ってしまいますから,銅箔の色が見えるくらいにしないといけません。どうも▼の追記にも書きましたが,このとき,非感光部(余白)まで感光してしまうとまずいので,ポジ感光基板のときは過露光でもOKでしたが,ドライフィルムの場合は適度な露光時間にしないとまずいようです。
露光後の状態です。OHPシートがネガになっているのにご注意ください。でも,▲の写真はちょっと過露光の状態で,もっと薄い色の状態でOKです。
2枚目の保護フィルムをはがして現像します。
☆現像
さて,次は感光しなかった非パターン部分を除去します。
サンハヤトの感光基板同様,何らかの液体で除去するのですが,この感光フィルムの場合は炭酸ナトリウム(Na2CO3)が指定されています。薬局で入手可能です。だいたい,500g入りのものが600円くらいです。
ただ,炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)だったら重曹ですから,せいぜい100円ほどで安く手に入って助かるのですが,phが低すぎ,難しいようです。
また,amazonを見るとセスキ炭酸ナトリウムというのも売られていますが,これはNa2CO3とNaHCO3の混合物で,やはりph値が異なるので,使えるとは思いますが,未検証です。
これを200mlの水に溶かして0.5~1%程度の水溶液にして使います。
ただ,濃度にはシビアな感じ.....。濃すぎるとやはり▲のように,パターンごと剥がれてしまうのでご注意ください。たぶん,1%以下の方が安全な感じです。
また,サンハヤトの感光基板の時と違って,余白の部分は溶けて無くなるのではなく,どうにも感じとしては剥がれていく,という感じです。一応,溶けて薄くなってきて,モロモロになって剥がれていく....という感じなのですが,どうにも違和感があります。この点,サンハヤトの方がよさげです。
時間的には1分くらいで大丈夫,と書いている人もいるのですが.....iruchanは1時間くらいかかる,という気がします。とにかく,ゆっくりと気長に待つしかなさそうです。やっぱ,KATOは寝て待てってか?
と,このときは思っちゃったのですが,これは間違いだ,と言うことに気がつきました。詳しくは▼の追記をご覧ください。
時間を短縮しようと,炭酸ナトリウムを濃くしちゃうとダメなようで,パターンまで剥がれちゃいます。
実をいうと,iruchanは最初,アルカリならいいだろう,ということで,なぜか手持ちがある水酸化ナトリウム(NaOH)を使ってみました。一応,使えて,ちゃんと余白の部分がはがれてくれるのですが,一緒にパターンの部分もはがれちゃいました。化学に詳しい人に聞いたら,NaOHだとアルカリが強すぎるせいでは,とのこと。Na2CO3もアルカリが強すぎるとダメなようです。
モロモロと剥がれかけてきたら,歯ブラシでこすったりしてもOKです。これが終わると水洗いして完成です。
仕上がってみると,なかなかよい感じです。パターン部分もうまくいくとちょっとやそっとじゃ剥がれないくらい,強固に貼り付いていて,エッチングしてもきれいなパターンができそうです。
ただ.....。
やはりどうしてもトナー転写方式みたいに,パターンのエッジがギザギザで,汚いです。スカッときれいなエッジにしてほしいのですけど.....。フィルムの材質の影響が大きいようです。また,文字の転写も難しく,読める程度にはならない感じです。パターンもやはりところどころ剥がれてしまうので,サインペンで補修します。
☆エッチング
エッチングは通常通りです。iruchanはいつも,お湯で温めてやっています。
う~~ん,やっぱり,一番仕上がりがきれいなのはサンハヤトのポジ感光基板ですね~。やはり感光フィルム方式だと感光したパターンの残存膜が厚すぎるようで,剥がれるときにきれいに切れず,エッジがギザギザです。感光しなかった部分が溶けるように消えてくれれば,こんなことにならない感じです。どうも製造しているのは何社かあるようなので,試してみたいと思っています。
2020年4月29日追記
やはり,上記のようにドライフィルム方式はいまいち仕上がりが汚いので,100×100mmなどの定型の寸法の基板の場合は感光基板にしようかと,再びサンハヤトのポジ感光基板に取り組んでみました......。
以前,サンハヤトが感光剤を切り替える前までは,非常にiruchanもきれいな基板を作っていましたので。
結果は,やはり失敗。
現像時に一瞬だけ,パターンが浮いてきますが,その後,パターンともどもすべての感光皮膜が流れてしまい,基板はのっぺらぼうになっちゃいます......orz。
もうお~~~~っ!!
って訳で,普通だとこのまま不燃ゴミになっちゃうのですが,ドライフィルム方式に変更すれば再利用できます。
ネットにはっきり書いちゃいますけど,サンハヤトの感光基板は欠陥商品だと思います。アマチュア相手に商売をするのなら,もっと確実に成功する商品でないとまずいと思いますし,失敗してもやり直し(再利用)ができないわけだし,値段も高価で,大きな損害です。iruchanも今回,5枚も失敗し,3,000円もの損害です。前の感光剤の場合も苦労しましたが,今回の感光剤ほどは失敗しませんでした。正直,誰が成功するのか,と思っています。
と言うことで再びドライフィルムに戻りました.....。
でも,これも結構失敗します。
どう失敗するか,と言うと,現像後にうまくパターンが残らず,剥がれてしまう,ということです。
原因がよくわからず,悩んでいましたが.....。
どうやら,マスクの遮光性に問題があるようです。つまり,本来感光してはいけない非パターン部分まで感光してしまい,現像時に分解してしまう,と言うことが原因のようです。
ドライフィルムの動作原理としては,メーカのニッコー・マテリアルズさんのWEBがよくわかると思います。
このページを読むと,感光部分(パターン部)が紫外線により架橋反応を起こし,重合したモノマーが絡みついて硬化するようです。
架橋反応というと,天然ゴムの硫化が有名ですね。天然ゴムは弾力性があるものの,耐久力がなく,すぐに弾力を失ってバラバラに分解してしまったりするのを,硫黄を加えて硫化すると,架橋反応により多数の分子がつながって粘性が向上して固くなります。このドライフィルムも同じ原理で感光皮膜を形成するようです。
このあと,炭酸ナトリウムが,残っていたモノマー(非パターン部)を分解してそれが除去される,と言う仕組みのようです。
おそらく,iruchanが考えるに,パターン部が剥がれちゃう,というのは漏れてきたUV光によって非感光部(パターン部分)まで架橋反応を起こしてしまうせいではないか,と思います。そのため,非感光部分がなかなか分離しないため,長時間,現像しないといけなくなり,とうとう感光して重合したモノマーまでアルカリが分解してしまって剥がれてしまうのではないか,と思います。
成功した方のブログを読むと,現像は数分,と書いてあり,iruchanは今まで,30分~数時間かかっていました。
と言うことなので,まずは遮光性をきちんと確保しないとダメなようです。
サンハヤトの感光基板も同様で,なぜか,レーザープリンタはダメで,インクジェットプリンタを推奨しているし,マスク用紙も自社販売のインクジェット用紙を推奨しているのも,このマスクの遮光性を確保するためではないかと考えます。
まあ,自社販売製品を推奨するのはどこの会社も同じか,とは思うのですが,どうも,インクジェットプリンタの方がインクであるため,パターンを濃くでき,遮光性を確保できるからのようです。確かに,iruchanの使用しているインクジェットプリンタも設定で印字濃度を変更できます。
でも,正直インクジェットプリンタは使いたくないですよね~。それに,またまた,サンハヤトが販売しているインクジェット用のOHPシートは異常に高いと思います。10枚で6,000円という目が飛び出るような値段です。1枚で600円なんて......開いた口が塞がりません。
と言うことでiruchanは今までレーザープリンタ用のOHPシートを使っていたのですが,やはりこれはまずいようです。
黒い部分でも裏から光が透過してきてしまうことがわかります。
何がまずいかというと......,
レーザープリンタで印刷したOHPシートを光に賺してみるとパターン部が透けてしまっています。これじゃあかん.....。
と言うことで,先人の皆さんのブログを読むと,2枚重ねにするとよいらしいです。確かに,▲の写真を見ると2枚重ねだと確実に遮光してくれるようです。
ということで,マスクは2枚重ねということにします。
ちょっと面倒ですけど.....。
白い紙の上でマスクを2枚重ねてメンディングテープで固定しました。
やはり,90秒が最適のようでした。 スマホで90秒のタイマーを動作させます。
90秒だと,露光後の状態があまりはっきりせず,露光した部分がはっきりと青く変化しないので不安になってしまいますが,はっきりと青く変色するくらいまでやってしまうとやり過ぎのようです。おそらく,こうなってしまうと,非露光部分まで感光してしまっています。
次に炭酸ナトリウム水溶液で現像します。iruchanは0.5%が最適,と判断しています。
また,ほかの方のブログを読むと,どうも現像時の温度が重要なようです。30℃以上の温度が必要な感じです。
最適な温度はわかりませんでしたが,iruchanは▲の洗面器に熱湯を入れています。
それと,ニッコー・マテリアルズさんのWEBにありますとおり,現像時はこのように露光部が乳化して分解していく感じのようです。今まで,iruchanがやったときはパラパラと剥がれていく,という感じで,いつまでも時間がかかっちゃっていました。
このように,モヤモヤと乳化した状態で分解していく,と言うのが正しい状況のようです。実際,これだとほんの数分(5分程度)で,非露光部分が溶けて消えていきます。
ただ,▲のように,お湯で温める,と言う程度じゃダメ,という感じです。すぐに温度が下がってしまいますよね。何らかのヒーターで温めながらやらないといけない気がしています。
ということで,ポイントとしては,
☆マスクは2枚重ねにして遮光性を確保する。
☆露光時間は短めに。
☆現像時は温める。感光部分は乳化して分解していくのが正常。
というのが追加のポイントのようです。
なお,残った感光皮膜(パターン)を剥がすのはステンレスたわしで機械的にやっちゃう,と言うのも手ですけど,水酸化ナトリウムを使うときれいに数分で剥がれます。お試しください。
ようやくこれでうまくいきました。これでスーパー・ストレートDCプリアンプを作りましょう。