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金田式DCアンプ用Spiceモデルの作成 [電子工作]

2020年8月24日の日記

電子回路シミュレータはとても長い歴史があり,今は無料で使えるLTspiceを使っておられる方が多いと思います。

iruchanも鉄道模型用コントローラやアンプ設計など,基本的な回路設計はLTspiceを使うことが多くなりました。

ただ,やはりたくさんの問題が.....。

シミュレーションと実際の回路の動作はどうしても違いますし,思ったように動作しないのはもちろんです。

まあ,実際作ってみると,理想状態であるシミュレーションに近い動作をすることも多いし,逆に,Spiceで動かない回路が実際に作ってみると動く,なんてことはないので,まずは設計が正しいかどうか,確認するのに使うのは非常に便利なツールだと思います。また,最近はiruchanはうまく動作しない原因を探るのに使ったりしています。マニアの皆さんには,MJの回路図の誤記を調べるのに使ったりしておられる方もいらっしゃるようです.....。なんか,本末転倒という気もするんですが,編集部が悪いんですよね~。iruchanも金田氏のWE真空管DCプリのレギュレータで誤記を見つけました。

ちょっと脱線しちゃいましたけど,LTspiceでなにより,一番困るのは必要とする部品のモデルがないことですね~。

以前,ゲルマニウムTrのSpiceモデルを作成しました。ゲルマニウムTrのspiceモデルなんて,マニアが作らない限り,世の中に存在しません。

それに,何より国産の半導体のモデルなんてほとんどありません。

1980年代にはそれこそ,世界を支配したと言っていいくらい,日本製の半導体は幅を利かせていたんですけどね.....。

LTspiceをインストールすると,デフォルトでstandard.bjtというファイルがあり,そこにバイポーラTrのモデルが入っています。ホルダは,デフォルトだと,マイドキュメントの中にあります。

    C:¥Users¥(ユーザー名)¥Documents¥LTspiceXVII¥lib¥cmp

残念ながら,入っているものは2NBCなどの頭文字がついた欧米系のものばかりです。ごくわずかに2SAなどの頭文字のついたものもありますけど.....。

基本的に,LTspiceでトランジスタをシミュレーションするなら,デフォルトのPNPやNPNのTrモデルがありますので,デフォルトのままで十分だと思います。

でも,アナログ回路だとそうはいきませんよね.....。単なるスイッチとして使っている回路ならともかく,活性領域で使うアナログ回路じゃ,そういうわけにはいきません。実際,世の中のTrの99.99....%は単なるスイッチとして使われているんでしょうけど.....。

ということで,前回,ゲルマニウムTrのモデルを作りましたが,改めて今回はシリコンTrのモデルを作りたいと思います。

国産のバイポーラTrについては,会員制ですけど,トランジスタ技術の姉妹誌だったエレキジャックのWEBに国産Trのモデルが出ています。iruchanも,以前,ダウンロードして使っています。▲のstandard.bjtに書き加えるだけですので,簡単です。

ただ,残念ながら,国産Trといっても東芝だけです。ほかに,トランジスタ技術の付録のCD-ROMに国産Trのモデルがついていた号があったと思います(何号だったか思い出せません....どうもすみません)。

でも,その付録のモデルだって,ほとんどが東芝だし,松下となぜかROHMのモデルがあるだけで,あまり当てになりません。オーディオじゃ,これらの会社のTrは使いませんよね~。

さいわい,接合型FETは国内じゃ,ほとんど東芝なので,エレキジャックのWEBにあるFETで用は足ります。2SK30もあるのでラッキーです。

iruchanはこれらを先ほどのstandard.bjtにコピーしたので,2SC18152SA1015などのモデルを使ってシミュレーションできます。オーディオ用も,かろうじて2SA8722SB716があったので使うことができます。

ところが,2SA6062SC959などのいわゆる金田石はモデルがありません。せめて,このTrくらいあれば,いろいろできるんですけどね......。

ということで,今日はこれらの金田式DCアンプで使われているTrのモデルを作りたいと思います。

          ☆          ☆          ☆

まずは準備から.....。

最低限,VCE-IC特性の図が必要です。真空管ではEB-IP特性ですよね。これがなきゃ,モデルの作成はおろか,作ったモデルが正しいかどうか,検証できません。

最初に,TrのVCE-IC特性はこんな感じです。

Tr 静特性.jpg

一番左側に飽和領域があり,アナログ回路ではここは使いません。ICが平行になっている,活性領域で使うのがアナログ回路です。MOS-FETの場合はここを飽和領域と言いますし,今度はTrの飽和領域を線形領域と言ったり,挙げ句の果て,非飽和領域などと言ったりしますから,非常にややこしいです。

一番右は降伏領域で,ここも使ってはいけません。Trが壊れます。もっとも,それ以前にPcの制限……がありますけどね。シリコンTrになってからは丈夫になったので,ゲルマニウムはともかく,シリコンではごく初期のTrを除いて,この領域はほとんど記載されていません。

LTspiceの各パラメータがどのように影響するか,簡単に書いておきました。

この特性図がないと,モデルは作れません。例えば,活性領域の平行になっている部分の傾きはアーリー電圧VAFで決まります。

と言う次第なので,CQ出版の "トランジスタ規格表" のような,表だけの規格表じゃ,モデルは作れません。それだけで作れれば簡単でいいんですけどね.....。

といって,実は,2SA6062SC959の特性図は入手難です。

iruchanも散々探したのですが.....。

金田氏の "最新オーディオDCアンプ" (1978)に規格は載っているのですが,残念ながら,特性図は載っていません.....orz。

三菱の2SA726は載っているんですけどね......。

しかたないので,やはりNECの半導体データブックを探すよりほかありません。

NECは毎年,"エレクトロニクス・データ・ブック" というのを発行していて,iruchanも'64~65年度版を持っているんですが,さすがに古すぎてゲルマニウムばかりです。

シリコンTrは1960年頃の開発ですが,日本では本格的に量産がはじまるのは70年代に入る頃のようです。2SA6062SC959も1971年頃の開発のようです。

ということで,1970年代以降のNECデータブックを探せばある,と思いました。

ようやく,1977年版を見つけたので,特性図をスキャンしました。

2SA606.jpg 2SA606特性図

2SC959.jpg 2SC959特性図

     あのぉ~~,縦軸の単位が違うんですけど.....。

     エミッタ-コレクタ電圧対コレクタ電流特性

これはさすがにたいていのTrの規格表にはこの特性が載っています。でも,2SA606/C959の場合はこれすら探すのが大変でした.....。

どうも通信用のにSのマークのついた2SA606/C959もありますが,通信というのは国家が管理していて,放送は民間にも開放されている,というのはどこの国も同じで,法や規制はこの考え方で決められています。日本でTVのネット配信が遅れているのはこういう事情もあります。ネットは昔は電話線でやっていたから,通信の範疇なんですね。

どこの国も,通信=電話という時代が長くて,日本では逓信省⇒電電公社だったので,通信用というと主として,電電公社用というのが実際なんですけど,2SA606/C959の特性図はひょっとして国家機密だったのか.....。

ちなみに通信用じゃない普通の真空管は受信管といいますが,半導体の場合は受信用半導体なんて,言い方はありませんね.....。

2SA606-1.jpg 2SA606特性図

2SC959-1.jpg2SC959特性図

      ベース-エミッタ間電圧対コレクタ電流特性です。

こちらもspiceモデルを作るのに必要なのですが,こちらは2SA606/C959にかぎらず,あまり載っていません。

☆モデルの作成

モデルについては,前回,ゲルマニウムTrの時に書きましたが,次のパラメータが必要です。

BF  順方向DC特性。いわゆるhFEのことですが,実際のLTspiceのモデルには規格表に載っている値の倍から3倍くらいの数値を与えないといけないことが多いようです。
 
VAF  アーリー電圧。飽和領域のICを決めます。デフォルトは∞です。VCE-IC特性でいうと,活性領域(ICが水平となる部分)の傾きを決めます。最近のシリコンTrはこの部分がかなり水平ですから,この数値はデフォルトのままでもよいと思います。 
 
そのほか,

RC  コレクタ直列抵抗。飽和領域(ICの立ち上がり部分。VCE-IC特性の縦軸IC=0付近の領域です。)の特性を決めます。デフォルトは0なんですが,飽和電圧の大きい古いTrだと結構重要です。一応,▲の2つの特性図から,VCE(sat)/IBで計算しますが,試行錯誤して決めます。最近のTrだと無視してもよいくらいです。
 
IC  伝達飽和電流。デフォルトは1×10-16というとんでもなく小さな値です。といって,0にしちゃうと特性がでたらめになります。ICは▼の式で求められますから,特性曲線上の1点からISを推定することができますが,シミュレーションしてみるとこの値でVCE-IC特性が変わることはないようです。
 
             IS計算式.jpg
 
RB  ベース直列抵抗。デフォルトの10ΩでOKです。
 
ということなんですが,やってみるとBFVAFRCのみでほぼVCE-IC特性は決まってしまうようです。面倒ならVAF以下はデフォルトのままでもよく,結局,必要なのはBFだけ,ということになっちゃうんですけど......。本当は温度特性などのパラメータも決められれば,温度補償の計算もできるのですけどね。一応,ISは温度に依存しますので,温度も計算に入れておきました。

以上で,直流的な特性は決められますが,スイッチング回路など,過渡特性を見るだけならともかく,オーディオではf特を見ないといけないので,次の電極間容量は極めて重要です。

CJC  0バイアス時のCB-CCJC=1.2~2.4×Cob

CJE  0バイアス時ののCB-ECJE=1.5~2.0×CJC

TF  順方向通過時間 TF=1/2πfT
 
なお,物性値として,

EG  バンドギャップ電圧。シリコンTrは1.11(eV),ゲルマニウムTrは0.67(eV)という定数です。

を入力します。

LTspice Trモデル作成Excelシート.jpgこんなExcelシートを作りました。

このセルに規格表の数値などを入れて各パラメータを計算します。別途,LTspiceのシミュレーション結果をグラフ化するマクロも作ってあります。ボタン1発でグラフを表示して検証できます。

☆特性を求めるspiceシミュレーション

以上で,各パラメータを決めたら,LTspiceでシミュレーションします。

適当にエミッタ接地回路をシミュレーションし,パラメータとしてIBとVCEを変化させてICをプロットしてみます。

回路はこんなのです。問題はスイープで,NPNのときはどちらも0から増やしていけばよいですが,PNPの時は厄介で,0から減らすんじゃなく,-の方から増やすように設定しないと,あとでグラフデータを読み込むときにX軸用のデータがIBになっちゃうので要注意です。LTspiceの結果を見ているだけじゃ,わかんないんですけどね。

2SA606 LTspice simulation circuit.png

 こんな回路でシミュレーションします。これのコレクタ電流をグラフ化します。

本当はTrのモデルはさっきのstandard.bjtファイルに書き込んで使うのですが,このように回路図中にモデルを記述しておいてもシミュレーションできますし,仮にstandard.bjtファイル中に同じTrがあっても,こちらが優先されますので試行錯誤するのに便利です。 

さて,これでVCE-IC特性が求められるわけですが,これをiruchanはExcelのVBAマクロを使ってExcel上にボタン一発で表示できるようにしました。これ,結構面倒なんですよね~~~。そもそもLTspiceのグラフ出力データがCSV形式じゃなく,tabがデリミタになっているし,IBの各ステップごとにラベルが出てきて,マクロで読むのに苦労します。

でも,これをやっておくと,上記のパラメータを変化させながら,特性の変化を見ることができます。

何度もシミュレーションを繰り返して各パラメータを決めていきます。

2SA6062SC959のLTspiceモデル

2SA606 VCE-IC特性.jpg2SC959 Vce-Ic.jpg

         LTspiceでのシミュレーション結果

━━━━が規格表の値で,‥‥‥‥はLTspiceによるシミュレーション結果です。

ICの大きな領域で乖離していますけど,小電流領域では割に合っているでしょ[晴れ]

まさか,2SA6062SC959でIC=50mAなんて動作をさせる人はいないと思いますので,小電流領域だけ合っていれば十分ではないかと思います。

求めたパラメータとLTspiceのモデルは下記の通りです。各パラメータは ","で,区切りますが,スペースでもOKです。

.model 2SA606 PNP (IS=9.39370961721484E-15, BF=80, EG=1.11, VAF=255, RB=10, RC=1, TF=3.18309886183791E-09, CJC=90pF, CJE=105pF, MFG=NEC)

.model 2SC959 NPN (IS=3.54129817885565E-16, BF=70, EG=1.11, VAF=255, RB=10, RC=1, TF=3.18309886183791E-09, CJC=90pF, CJE=105pF, MFG=NEC)

コンプリのTrなんですから,どちらか1個のモデルを作っておいて,PNPかNPNかを変えればOK,ということもあり得るんですが,意外にコンプリメンタリーと言ってもPNPとNPNじゃ,特性が違うことが多いので,今回,iruchanはまじめに別々に求めました。

そもそもキャリアがPNPとNPNじゃ,違うわけで,当然,質量が大きく違うので,高周波特性は異なるはずなんですが,NECの規格表は2SA6062SC959もfTは同じ値になっています。これってなんかおかしくない?,っていう気がするのですが.....。これらのTrは官需が主だったようなので大本営発表とちゃうか.....,という気がするんですけど.....。といって,自分でfTを測ってみる,なんて気はしません。

NPNの方がキャリアが電子で軽いため,高周波特性が優れているのが普通で,こちらで書いたように,普通はNPNの方がfTが高いです。

一番ゲインが高く,音も決めてしまうので低ひずみで広帯域が要求される2段目の差動アンプに,初段用のJ-FETがNチャンネルしかないことからPNPを使わざるを得ない,というのがDCアンプに限らず,オーディオアンプの悲劇なんですが......。金田氏も書いていますけど,初段に2N5465を使って,2段目にソニーの2SC1124をつかったパワーアンプなんて作ったらよさそう,という気がします。

2SB7162SD756のLTspiceモデル

次に日立のオーディオ用Trのモデルを作ってみます。2SA872/C1775のコンプリTrのモデルはトラ技の付録についていましたが,こちらはありませんでしたので作ってみます。iruchanも定電流回路などに2SD756が多用されているのですが,spiceモデルがないので困っていました。

2SB716.jpg2SB716-2.jpg


2SD756 VCE-IC.jpg2SD756-1.jpg

カラーがLTspiceモデルでのシミュレーション結果です。は規格表から読み取った値です。

モデルは次の通りです。

.model 2SB716 PNP (IS=4E-14, BF=420, EG=1.11, VAF=65, RB=50, RC=100, TF=1.06103295394597E-09, CJC=3.24pF, CJE=3.78pF, MFG=Hitachi)
 
.model 2SD756 NPN (IS=3.97281491040095E-14, BF=680, EG=1.11, VAF=90, RB=10, RC=470, TF=4.54728408833987E-10, CJC=2.88pF, CJE=3.36pF, MFG=Hitachi)

普通,RCは1Ω程度なんですが,これくらいの値にしないと飽和領域の立ち上がりが表現できませんでした。

それに,コンプリと言っても,▲の規格表の特性図を見ても,かなりずれていますね。

ちなみに,トラ技の付録に2SB716のモデルが載っています。同じようにLTspiceでVCE-IC特性を描いてみると.....

2SB716 トラ技モデル.jpg

iruchanモデルの方がよく合っていますね......(^^;)。

2SA726のLTspiceモデル

三菱の名石2SA726のLTspiceモデルを作りました。金田氏は "特有の色がつくが,音楽的に最も優れたTr" と評していますね.....。

特性図は "最新オーディオDCアンプ" に載っています。iruchanは三菱の小信号用トランジスタの規格表を持っているので,またコピってきます。

でも,これ,LTspiceモデルを作るのは大変でした.....汗。

困ったのは,金田氏の本に小電圧領域の図が載っていて,これにあわせればいいや....と思ったのですが,どうしても合いません。

確かに,Trは大電流域と小電流域で特性が異なり,そのため,2つ,特性図を載せている親切な会社もあるのですが....。

どうしても小電流域でLTspiceのモデルを作ると,BFが25くらいの数値になってしまい,2SA726は高hFEのTrなのでおかしいです。

2SA726-1'.jpg大電流領域の特性図です。

2SA726-3'.jpgVBE-IC特性です。

また,2SA726は,真空管でもよくありますけど,各特性曲線の間隔が上に行くほど詰まってきてしまっています。

真空管の場合だとこれは0バイアス付近で,グリッドエミッションの影響です。Trの場合は何でだったか,思い出せないのですが....。

どちらにしろ,この特性は正弦波のピーク値を抑える作用をしますから,偶数次のひずみを発生して,好ましくないのですが,真空管も半導体も避けられません。武末数馬氏の "パワー・アンプの設計と製作" にも,ロードラインを引いて最大出力電圧を求める際に,Eg=0Vの線との交点ではなく,Eg=ー1Vの線との交点で求める,と書いてあります。

この場合のLTspiceモデルはIKFを変更してモデル化します。普通は無視してもいいパラメータだと思います。

IKFは順方向高電流のパラメータで,高電流領域でhFEが低下するのをシミュレーションします。

何度もシミュレーションしてみて,IKF=60mAで決定しました。

.model 2SA726 PNP (IS=2.78097043728067E-14, IKF=60e-3, BF=470, EG=1.11, VAF=30, NF=1, RB=10, RC=20, TF=1.59154943091895E-09, CJC=5.4pF, CJE=6.3pF, MFG=Mitsubishi)
 
2SA726 spice model.jpg2SA726シミュレーション結果
 
  いかがでしょう? 割にIBが大きな領域でも合っているでしょ。
 
ところで,2SA726のコンプリはなかったんでしょうか? デュアルは2SA798なのはよく知られていますし,それのコンプリは2SC1583なんですが,シングルのがわかりません。たいてい,コンプリのTrはPNPが先に亡くなっちゃって,NPNが後家さんで残っちゃうのですけど.....。2SC1161なんかそうですよね.....。上記のNECデータブックでも,2SC1161は保守品種(新規採用を控える。製造はまだしているか,在庫がある)なのに対し,2SA653は廃品種(製造中止)に指定されています。
 
そのせいで,2SA653/C1161の特性図は未発見です。LTspice用のモデルはまだ作れていません。
 
逆に,NPNの方が需要が大きいので,製造中止前にたくさん作っておいてもPNPが残っちゃうパターンもあるのでしょうか。2SC959はほとんど入手不能なのに,2SA606がまだ入手可能,というのはこちらでしょうか。
 
金田氏も2SA726のペアはメーカが違うのに2SC1400を選んでおられましたが,そもそも,2SA726は後家さんだったのじゃなくて,もともと独身だったのか.....。
 
2SC1400のLTspiceモデル
 
2SA726の旦那さん? がこの人(Tr?)でした。残念ながら,岩崎家(三菱)の人じゃなく,住友家(NEC)の人でしたけど.....。
 
結局,2SA726が早々に市場から消え,2SC1400も後を追うように市場から消えると,日立の2SA872/2SC1775が後釜になるんですけどね.....。
 
LTspiceモデルは下記の通りです。
 
2SC1400-2.jpg2SC1400-spice.jpg
 
.model 2SC1400 NPN (IS=7.94562982080191E-14, IKF=0.012, BF=60.1, EG=1.11, VAF=128.5, NF=1, RB=10, RC=2, TF=1.59154943091895E-09, CJC=4.62000000079578pF, CJE=2.31000000159155pF, MFG=NEC)
 
2SA566のLTspiceモデル
 
レギュレータ用の名石,日立の2SA566のモデルです。残念ながら,コンプリの2SC680は出番がなく,継子扱いされています。iruchanもとうに会社じゃ,いらない子ですし,同じ立場の2SC680も使ってあげたいのですが......。
 
そもそもレギュレータ用ではそれほど,LTspiceのモデルを作っておいても意味はないのですけど....。
 
でも,一応,リップルフィルタなどでiruchanは使っているので,出力電圧を求める際に必要ですので作っておきます。
 
2SA566-1'.jpg2SA566 LTspice.jpg
 
モデルは下記の通りです。
 
.model 2SA566 PNP (IS=1.87688803479349E-16, IKF=0.8, BF=77.7, EG=1.11, VAF=150, NF=1, RB=10, RC=7, TF=1.59154943091895E-09, CJC=45pF, CJE=52.5pF, MFG=Hitachi)
 
2SA640のLTspiceモデル
 
NECのオーディオ用ローノイズTrです。コンプリは2SC1222ですが,’77年版のデータブックにはその記述がありません。CQ出版の "トランジスタ規格表" には書いてあります。なんとも不思議.....。
 
金田氏は2段目の差動アンプに,無線と実験 '73.8, 9月掲載の第1号プリでは,東芝の2SA493GRを使っていて,'74.1月号には2SA640が使用されています。3号機は初段のFETが代わっただけで,引き続き2段目は2SA640です。今,iruchanはその2号機を作っています。
 
ただ,これは三菱の2SA726が出てくるまでの話で,2SA726が登場するとすぐに2SA640は離縁され,実家に泣く泣く出戻ってきます......[雨]
 
ちなみに,第1号プリは初段が2SK30,出力が2SC1000のエミッタフォロアーとオール東芝構成です。以後,J-FET以外はNECという歴史がずっと続いていくわけですが,金田氏は東芝製のTrがお嫌いだった.....?。
 
iruchanは2SA640は最初に作ったA級パワーアンプの初段がこれで,少しなじみがあります。でも,初段がバイポーラであることからわかるとおり,ACアンプで,金田氏の設計でもないし,音もいまいちで,大学生になる頃に解体してしまいました。
 
それに,半導体のA級アンプって,やっぱダメ,という気がします。どうにも眠い音がしました。半導体はおそらく,熱を持つと音的にもダメなのではないかと思っています。
 
ACアンプだったためか,2SA640は熱結合していなくて,大丈夫か,と思いましたが,メーカ製のDCアンプは初段以外は熱結合してないことも普通で,問題ないのかもしれません。
 
2SA640'.jpg2SA640 LTSpice.jpg
 
   2SA640の方がよっぽど2SA726よりきれいな特性なんですけど......。
 
.model 2SA640 PNP (IS=4.76737789248114E-14, IKF=12m, BF=822, EG=1.11, VAF=59, NF=1, RB=10, RC=3.4114707552527E-03, TF=1.59154943091895E-09, CJC=11.7pF, CJE=13.65pF, MFG=NEC) 
 
          ☆          ☆          ☆ 

さて,こうやって金田式DCアンプの半導体のLTspiceモデルを作ってみました。今後,ここで追加していきたいと思います。 

なお,誠に申し訳ありませんが,あくまでも個人的な非科学的シミュレーションですので,ご利用になる場合はあくまでも自己責任でお願いします。不都合な点があっても,責任は負いかねますので,ご了承ください。


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