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ゲルマニウムトランジスタ スーパーヘテロダイン方式FMラジオの製作~その2・ゲルマニウムトランジスタのSpiceモデル~ [ラジオ]

2018年4月18日の日記

前回に引き続いて,ゲルマニウムTrを使ったFMラジオを作ります。

やはり,事前に予想したのですが.....すっかり泥沼にはまり込んじゃって膠着状態です。これじゃ,塹壕掘って西部戦線だな.......。

まずは,前回,基板の組み立てが終わったので,ひと通りチェックしてから通電します。回路については,前回も書いた,吉本猛夫著 "ラジオの組立て" に載っていたFMラジオの回路を踏襲("ふしゅう" じゃありません)します。Trはさすがに東芝の社員が書いただけあって,ラインナップは2SA240(RF,conv)+2SA433(IF)+2SB54(LF)+2SB56(output)とオール東芝です......(^^;)。

なお,低周波部は1段で済ませますし,検波もIFTの関係でレシオ検波じゃなく,フォスター・シーリーにする予定です。また,RF部は非常にクリティカルで,別のTrを使う場合は定数の変更が必要です。

FMラジオ配線図(ラジオの組み立て)1.jpg "ラジオの組立て" から

スピーカからかすかな雑音がすればひとまず安心なのですが.....。

ウンともスンとも言いません.....orz。

これは,低周波部分が動作していない証拠です。どこかに回路ミスがあります。普通は電池をつないだ瞬間にガリッと音がするはずなんですが.....。

ようやく,LFの2SB101のエミッタ配線にミスがあり,ちゃんとGNDにつながっていないことに気がつきました。

はんだづけし直して電池をつないでみるとかすかな雑音がしますし,Trのケースなんかに指を触れてみるとスピーカからビ~ッと音がしますので,低周波部はOKです。

ついでに,出力の2SB163のアイドリング電流を調べておきます。数mAだったらOKです。

ただ,予想していましたけど,FM特有のザーッというホワイトノイズみたいな雑音は聞こえません。

これはやはり高周波部分が動いていない証拠。まだ成功とはとても言えない状況です。

次にチェックするべきは局発。

ここから長い戦いが始まります。

局発コイルの両端にオシロのプローブをつなぎ,波形を観測してみると真っ平ら.....orz。

スーパーヘテロダインのラジオの生命線はやはり局発です。これが動作しないことにははじまりません。

AMでも同じで,局発が動作しているかどうかチェックするところからはじまりますが,比較的,AMは楽で,トランジスタ式はもちろんのこと,真空管式でも変換管に6BE66SA7を使った場合は楽勝です。配線間違いでもしない限り,ちゃんと発振するはずです。

でも,FMはそういうわけにはいきません。特にTr式の場合は大変です。ちょっとした配線のしかたやTrのばらつき,コイルの作り方で発振しないことが多いのです。

さぁ,困ったな~~~[雨][雨][雨]

原因はいくつか考えられます。

まずは帰還コンデンサ。これの容量が足りないと発振しません。今回4pFを使っていましたが,これを10pF程度まで増やしてみますがダメ。

次は,負荷となっているIFTと発振コイルの間のセラミックコンデンサ。小さいと発振が止まりますが,これも容量を変えてみますがダメ。

あとは,発振回路ですから,クローズドゲインが1(0dB)を超えていないと当然,発振しません。ゲインはTrのhFEに依存しますので,できるだけ高hFEのものが望ましいのですが,2SA56は40~80と規格表に書いてありますので,普通は問題ないはずです。

次に疑うのは動作点。

うっかりカットオフするくらいバイアス電流が小さかったり,サチってしまうくらい大きいと当然,発振しません。

一応,局発の2SA56の各電極の電位を調べてみると,コレクタ -8.24V,エミッタ -1.169V,ベース -1.438Vですから,あまりよくありません。もっとベース電位が高くないと,つまりアイドリング電流が大きくないとダメです。

この動作点はベースにつながっている2つの抵抗で決まります。いわゆる電流帰還型のバイアス回路ですね。

これをいろいろいじってみて,ベース電位を-3Vくらいにしてみましたがダメ。

う~~~ん,ここまでくると2SA56をあきらめるしかなさそう,という結論になります。ここで代打登場となります。

FM RF Tr'.jpg FM用高周波Tr

iruchanは東芝の2SA240も2個,持っていました。これでもいいのですが,やっぱりNECにします。

代打はNECの2SA213にしました。前回もスタメン入りしていますね。ベンチで待機していました。

ところが.....。

2SA213の代打は空振り三振。まったく発振しません.......orz。

あとでわかったのですが,2SA213はゲルマニウムTrなのに,VBEが高く,0.5Vくらいありました。そのせいで動作点が狂ったのかもしれません。

        ☆        ☆        ☆

とうとうこちらももう打つ手がない,という感じです。どうして発振しないんだろと頭を抱えてしまいます。

が,やはり困ったときのSpice頼みという諺ほんなもん,あらへんを思い出しました。回路シミュレータSpiceで動作を調べてみたいと思います。リニアテクノロジー社が無料版のLTspiceを出していますので,これで調べてみます。

FMの局発はコルピッツ型が使われます。AMだとハートレー型ですね。ハートレー型の方が可変範囲が広いのですが,高周波ではコルピッツが使われることが多いです。まずはこのコルピッツ発振回路の動作を確かめてみます。

さっそく,今回の回路をLTspiceでモデル化してみます。とりあえず,TrはPNPのデフォルトのTrで実行してみます。

FM局発回路(ラジオの組み立て).jpg ベース接地コルピッツ発振回路

ありゃま,発振しません。本に載っているような回路が動かないようじゃ,問題なんですが.....。

原因はデフォルトのTrがシリコンであることもありますが,やはり特性がオリジナルの2SA240とは違うためと思われます。あとでモデルを作りますが,2SA56だとちゃんと発振しました。

まあ,普通はたいていの回路ではデフォルトの素子でOKなんですけど,MOS-FETなどは個別の素子を指定してやらないとうまく動かないことが多いです。

と言う次第で,2SA56のモデルは.....と思っても,絶対にあるわけありません。

せめてゲルマニウムTrのモデルがあれば....と思ったのですが,これもネットをさんざん探しても2N344AC127があるくらいでした。これじゃ,真空管のモデルの方が多いくらいで,世の中,ゲルマニウムTrのモデルなんて作っている人はいないのですね

でも,真空管に比べれば,比較的TrのSpiceモデルの作成は楽だと思います。

トランジスタ技術2017年9月号に "基本動作から温度テストまで! トランジスタSpiceモデルの作り方" という記事がありますので,参考にさせていただきます。

まずは,LTspiceのトランジスタモデルなんですが,

standard.bjt.jpg standard.bjtの場所

LTspiceをインストールしたホルダ(デフォルトのままだとマイドキュメント¥LTspiceXVII¥lib¥cmp)にある,standard.bjtのファイルに記述します。拡張子が.bjtなんてことになっていますが,単なるテキストファイルなのでメモ帳で編集できます。

standard.bjt-1.jpg 

 2N344AC127はこのようになっています。

このファイルを編集し,次のような文を追加するとLTspiceで使用できます。

.model Tr型番 PNP or NPN(パラメータ1,パラメータ2,パラメータ3......)

複数行に渡る場合は行頭に+をつければOKです。

で,問題はこのパラメータをどのように求めるか,なんですが.....。

とにかく,各Trの規格表,特に特性曲線が必要となります。残念ながら,CQ出版社が出しているトランジスタ規格表のデータだけではモデル化できません。

ところが.....。

2SA56なんて古いTrのデータシートなんてありません[雷][雷]

そりゃ,そうですよね,今どきこんな古いTrを使おう,なんて人はいませんから。ネット上で,真空管やTrなどのデータシートが公開されていますが,どこを探しても見つかりません。古い本に載っているかと図書館も探しましたが見つかりません[雨][雨]

う~~ん,困ったな~~~[雨][雨]

と,思っていたら北陸の実家に帰って本棚を見てみると, "NECハンドブック'64・'65" という本があるではないですか。

なんと,ちゃんと2SA56も載っていました[晴れ][晴れ]

灯台もと暗しとはこのことですね~~。iruchanは割に古い本を持っているので,そこに載っていました。せっかくなので,PDFを載せておきます。


これを見てちょっと気がつきました。2SA56なんて,えらい古いTrだな,と思いましたが,まだAM用のTrですら高周波のものは少ない時代なのに,番号が若すぎます。また,製法もメサ型となっているのでやはり新しいです。FM用の初期のものはドリフト型か合金拡散型のはずです。メサ型はこのあとです。

この規格表を見ると2SA126と同特性で,2SA56は耐圧が高いということがわかります。

おそらく,最初に開発されたのは2SA126の方で,あとから耐圧が高い2SA56を開発したのだと思います。普通は番号は126のあとになるはずなんですが,何かの都合で空いていた56をつけたのでしょう。ちなみに2SA54も同じ理由でこんな若い番号のようです。2SA54も同じ構造ですし,特性もよいので使えます。

2SA56 Vce-Ic特性.jpgエミッタ接地特性

  VCE-IC特性です。これはたいてい載っています。

2SA56のコレクタ電流特性は▲のようなものでした。意外に大きな電流が流れますし,右の方でコレクタ電流が急に跳ね上がって変なことになっています。これは降伏領域と言って,この領域は使用してはいけません。シリコンTrだと,ずっと右の方なので規格表にも載っていないことが多いので,珍しい特性です。

は今回,計算に使用した点です。

LTspiceでモデル化して,この特性曲線を描いてみて比較します。

まず,Trのモデルなんですが,件のトラ技の記事によると,パラメータの数は33も載っています。おそらく,もっとあると思います。

しかし,そんなにたくさんの数のパラメータを決める必要はありません。たいていはデフォルトのままでOKだと思います。特に,逆バイアス時の特性を記述するパラメータなんかもあったりして,真空管だとグリッド電圧がプラスの領域まで記述するようなものですから,使用しない領域であればデフォルトのままでいいと思います。

さて,iruchanはこれらのパラメータのうち,次の3つを決めればあとは何とかなると思っています。

BF  順方向DC特性。いわゆるhFEのことです。

IC  伝達飽和電流。▼の式で求めます。

EG  バンドギャップ電圧。シリコンTrは1.11(eV),ゲルマニウムTrは0.67(eV)です。

そのほか,飽和特性を決めるパラメータがあります。シリコンTrだとデフォルトでいいと思います。

VAF  アーリー電圧。飽和領域のICを決めます。

RB  ベース直列抵抗。デフォルトの10ΩでOKです。

RC  コレクタ直列抵抗。5極管で言うと肩特性を決めます。飽和電圧の大きい古いTrだと結構重要です。VCE(sat)/IBで計算します。

それと,高周波Trだとスイッチング特性が必要なので,次の電極間容量なども決めておきます。

CJC  0バイアス時のCB-CCJC=1.2~2.4×Cob

CJE  0バイアス時ののCB-ECJE=1.5~2.0×CJC

TF  順方向通過時間 TF=1/2πfT

        ☆        ☆        ☆

これくらいでなんとかなるでしょうか。そのほか,MFGというパラメータもあり,製造会社名です。MFG=NECと書いておくと,あとで素子を選択するときにメーカが表示されて便利です。

上記のうち,問題はIC。これの計算はちょっと厄介です。ある特定のVBEのときのICのデータが必要です。

普通のTrだと,IC-VBE特性が載っていますので,そのグラフからどこか1点読み取ればいいのですが,2SA56の規格表には記載されていません。

ただ,なぜか飽和電圧の特性が載っていて,そこから,VBE=-0.4V,VCEsat=-0.35Vの点を読み取りました(点)。

2SA56 Vce_sat-Ib特性.jpgこんなグラフを見るのは初めてですけどね。

先ほどのVCEsatの時のICは▲の図から-10mAですので,これを計算に使います。

Trのコレクタ電流は下式で表されますので,このISを先の数値を使って計算します。

              IS計算式.jpg

ここで,順方向DC特性NFは1です。また,しきい値電圧VTは,

               VT計算式.jpg

なんですが,Kはボルツマン定数,Tは絶対温度,qは電子の電荷ですから,結局は定数で,常温ではVT=0.0258(V)となります。ところで,知りませんでしたけどボルツマンは最後,自殺しているようです。天才なのにとても惜しいことです。天才も悩むことがあるのですね。

また,ICは下記のアーリー電圧VAFにも影響されます。理想的にはIC-VCE特性は飽和領域では水平になるので,SpiceでもほとんどのTrモデルが水平なんですが,初期のTrやゲルマニウムTrではこの部分でも電流が増えます。▲の特性を見ると2SA56なんてそうですよね。シリコンTrや5極管ではほぼ水平なんですけどね。

              VAF.jpg

コンプリメンタリのTrでもPNPのものだけ,この傾向があったりしますのでご注意ください。

と言う次第で,決定したゲルマニウムTrの2SA56のSpiceモデルは,
 
.MODEL 2SA56 PNP(IS=8.91383E-08 BF=68.632 EG=0.67 VAF=12 RB=7
+ RC=20 CJC=12p CJE=12p TF=5.305e-10 MFG=NEC)
 
です。
 
これを先ほどのstandard.bjtのファイルに追加しておきます。
 
こうすると,LTspice上でデフォルトのPNP Trを配置したあと,Pick New Transistorというボタンを押すと選択することができるようになります。

pick new transistor.jpg 使用するTrを決めます。

select bipolar transistor.jpg 2SA56が出てきます。

次に,コレクタ特性曲線を描いて確認します。必要に応じて,先のパラメータを書き換えて何度も修正します。LTspiceで過渡解析を実施します。コレクタ電圧とベース電流を下記のようにスイープして描画します。

PNP Tr特性曲線Spiceモデル.jpgコレクタ特性を描くための回路

2SA56 Vce-Ic特性Spice.jpg2SA56の特性曲線

ちょっと,PNPなので見にくいですね。どうしてもLTspiceはグラフの上限は下限より数値が大きくないといけないので,規格表のグラフと天地が逆になってしまいますが,こんな感じです。▲の規格表のグラフと比較すると似ていると思います。

さて,いよいよLTspiceで今回の回路をシミュレーションしてみます。


ベース接地コルピッツ発振回路.jpgシミュレーション回路

なんと,驚いたことにデフォルトのPNP Trはもちろん,ほかのTrではかなりのものが動きません。2SA562N344とか,シリコンの2SA1015ではちゃんと動くんですけどね。やはり,きちんと周囲の定数を設計しておかないといけませんね。

局発出力(R4=1kΩ).jpg ちゃんと発振しました。

局発出力(R4=1kΩ)-1.jpg 拡大するとこんな感じです。

発振条件としては,閉ループ中のゲインが1(0dB)以上であることが必要ですが,ちゃんとf特を見ると20dB以上のゲインがあることがわかります。そんなに取れるとは思えないんですけどね......。

FM局発f特.jpg 76MHzで20dB以上あります。

LTspiceでいろいろいじれるので調べてみると,やはり帰還コンデンサC5は結構シビアです。2pFでは発振しません。また,IFTと局発コイルの間のC6も20pF以下では発振しません。

そのほか,Trの動作点を決めるR2とR4は重要です。Trのベース電位を見て,ほぼ1/2Vccくらいになるように決めました。原設計とはかなり異なる値になりました。

こうして,再び,基板上の抵抗やコンデンサを取りかえ,発振するかどうか見てみます。

局発波形.jpg なんとか発振しました。

LTspiceではシミュレーションでは9VP-Pくらいの出力となるんですが,せいぜい400mVP-Pくらいと小さいですし,基点もふらふらと移動していて不安定です。もう少し定数を見直してみたいと思います。それに,発振周波数も45MHzくらいと低すぎます。これは発振コイルのインダクタンスが大きいためですが,これも小さくしないといけません。

それにしても2SA56は1950年代末の製品だと思いますが,よくこんな古いTrが動作するものだと感心しました[晴れ][晴れ]


2018年4月30日追記

▲の局発の周波数をもっと高くして,また,波形ももっときれいにしたいと思い,調整を再開しました。

ところが.....。

再度,完全に局発が停まってしまいました。あ~~ぁ.......orz。

こういうの,よくあるんですよね。ほんのわずか,何かをいじったら回路が動作しなくなった,ってよくありますよね~.....。ケースのふたを閉めただけで動かなくなった,なんてのもしょっちゅうですけど.....。

再び泥沼にはまってしまいました。

気を取り直して,いろいろ調べてみますが,うまくいきません。LTspiceでR1の820Ωを大きくすると発振が安定することがわかりましたが,やってみてもダメ。全然,局発は動作しません。

ようやく,再度,"ラジオの組立て" を読み返してみますと.....初段のコンバータ用のIFTの同調コンデンサがないことに気づきました。

実は,気がついていたのですが,てっきり誤植だと思ってしまっていました。この回路,検波段に誤植があり,レシオ検波なんですが,ダイオードの向きが逆でした。それで,これも誤植だろう,と思ってしまいました。

でも,改めて,クラウンのFM-100型ラジオの回路や東光のカタログを見てみると.....,

なんと,やはりコンバータ用のIFTだけ,同調コンデンサがないんです。

Crown FM-100 schematic.jpgクラウンFM-100型回路

やはり,コンバータ用のIFTだけ,同調コンデンサがありません。IF段はついています。

東光FM用IFT結線図.jpg東光カタログ'71から

    中間周波用        コンバータ用

うっかりしていました。FMはすべて同調コイルがついていると思っていました。TV用の場合,真空管やTrの電極間容量を利用して同調コンデンサがないものがありますが,FMもコンバータ用のものだけ,つけられていないんですね。

さすがに同調コンデンサのない,コンバータ用のIFTなんて持っていないので,FCZ研究所の10.7MHzIFTを改造します。同調コンデンサのリード線を切って外しちゃいます。

FCZ 10.7MHz局発用改造.jpg  部分のリード線を切ります。

FCZ 10.7MHz局発用改造1.jpg 同調コンデンサを外しました

ようやくこうやって再度,基板に取りつけてみると発振しました。

今まで,LTspiceでシミュレーションしたときはすべて同調コンデンサがついていましたが,ちゃんと発振していました。

ただ,Spiceで動いたからと言って実際の回路が動くわけじゃありません。この逆は,まずないと思って間違いないんですけど。

この部分は並列共振じゃなく,直列共振になっているんですね。失敗でした。IFTと局発コイルをつなぐコンデンサは10.7MHzに共振しないといけないのでちゃんと容量を決める必要があります。並列にコンデンサが入っているとうまくいかないようです。

局発コイル周辺.jpg 局発周辺

コイルはφ0.5mmのUEW(ポリウレタン)線で何度か試作しました。これはコイル径5mmで,6回巻が適当でした。

局発上限.jpg ようやくきれいに発振するようになりました。

        ☆        ☆        ☆

1914年9月,英仏の宣戦布告から1ヶ月後,事前に入念に策定したシュリーフェン作戦の想定どおり,ベルギーを蹂躙し,パリへ向けて快進撃を続けていた最右翼のドイツ第1軍を率いる将軍クルックは40年前の皇帝ナポレオン3世を捕虜にしたセダンの戦いの大勝利の再現をもくろみ,敵の第5軍を包囲殲滅するべく,東に向きを変えます。
 
その隙を突いて,パリ防衛を任されていた老獪なフランスのガリエニ将軍は敵の右側面と伸びきった補給線を突き,攻撃します。戦況は一進一退を繰り返しますが,とうとう,タクシーまで使って援軍を送り続けたフランスが勝利し,ドイツ軍は越えたばかりのマルヌ川を渡って一気に100kmも後退し,パリを目前にしてドイツ軍は敗北します。有名なマルヌの戦いですね。フランスはガリエニのおかげで危機一髪の窮地を逃れました。一方,補給の軽視はドイツ陸軍ばかりでなく,我が帝国陸軍の悪いところです。
 
シュリーフェンの後任で参謀総長を務めていたモルトケ(普仏戦争の勝利の立役者の大モルトケの甥)は国王のヴィルヘルム2世にこう言ったと伝えられています。"陛下,この戦争は我々の負けです"。
 
こうして1918年11月の休戦にいたるまで,4年にわたる長い塹壕戦が始まることになりました。26年後,この教訓を生かし,今度は独仏国境の森林地帯を機甲部隊が突破してパリが陥落します。フランスはここからは来ないだろう,と高をくくっていました。シュリーフェンは6週間の計画を立てていましたが,今回はわずか1ヶ月でした。1940年6月,ヒトラーがさも愉快そうにエッフェル塔を見上げている映像が残っていますね。
 
        ☆        ☆        ☆
 
iruchanは無事に局発の作動に成功して泥沼の西部戦線を脱出してパリに向けて前進再開です。さっそく,参謀本部に打電します。
 
          "西部戦線異状ナシ"  .......か?       
 
                              つづく かな

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