いるちゃんパリへ行く [紀行]
2019年9月22日の日記
今週,ゐるちやんはかやうなところへ行つてをりました。
やっぱり,サマータイムなのでパリも8時を過ぎないと完全に明るくなりません。塔に登るには9時以降でないと登れません。仕事なのですぐに退散しましたが,朝焼けのエッフェル塔というのもきれいです。月がきれいでした.....。
シャルル・ド・ゴール空港からパリ市内へはRERという近郊電車が便利です。料金は€10.30です。B線に乗ればパリ北駅など,パリ市内に行けます。切符は市内までで,地下鉄に乗り継いで最初に下車するまで有効なのも便利です......が,土,日は運転していませんのでご注意ください。
何を考えとるんじゃ.....。
実はiruchanは帰国便は土曜だったので,結局,帰りはパリ北駅からタクシーにしました。実際,タクシーから見ていましたが,線路の上に保守用車が載っていたので,土,日は線路の補修をしているようです。また,CDG~パリ北駅間はTGVも走っていて,ユーロディズニーやベルギー,ロンドンへ行けるのですが,この区間のみは乗れません。
なお,タクシーはガイドブックによれば,€50(セーヌ川右岸),€55(セーヌ川左岸)の定額制と書いてあるのですが.....土,日やイベントのある時期などは€80~100を請求されることもあるようで,ご注意ください。Uberの普及もあり,タクシー業界も厳しいようです。
なお,外務省からはB線のCDG行きの車内で強盗が発生したりするようなので,できるだけ急行や快速に乗ってください,と警告が出ています。iruchanは夕方,各停で北駅に行きましたけど.....。ロンドンでもヒースローからは地下鉄ピカデリー線に乗ることが多いのですが,今までトラブルはありません。
と言っても.....。
どれが快速なんだか.....。この時間帯は全部各停のようです。
エッフェル塔からの帰り,RERのC線で帰ると速いのですが,なぜか駅のホームが閉鎖されていたので,メトロ1号線のBir-Hakeim駅から乗って,Denfort Rochereau駅でB線に乗り換え,パリ北駅へ帰ろうとしたら,トロトロとしか走らないし,ほとんどの駅で10分以上停車します。英語では "This train is currently delayed." としか放送がないので何で停まっているのかわかりません。挙げ句の果て,Gare de I'Est駅(パリ東駅)で運休となっちゃいました.....orz。
そのとき.....,
この電車から降りてください。
と,仏,英,西の各言語の後に女性の声できれいな日本語で自動放送が流れたのには大びっくり。
こんなこともあるのですね......。
☆ 工芸・技術博物館
まあ,たぶんよほどパリに何度も行った人でもここを訪れる人は少ないと思います。パリ地下鉄3号線にarts-et-metiersという駅があるので気になっていました。Googleマップやwikipediaはパリ工芸博物館となっていますが,同館の公式日本語パンフには工芸・技術博物館となっていて,むしろフランスの科学技術の進歩を展示する博物館です。
日本語パンフレットもありました! 工芸・技術博物館と書いてあります。
ちょっと,フォントが中華フォントだし,表はいいのですが,裏は結構,日本語が怪しく,おかしな表現が使われています。その点,ルーブルの日本語パンフや,ロンドンのウェストミンスター寺院のはきれいな日本語でしたけどね......(^^;)。
ところが,実は驚き! ここにはこんなものが.....。
iruchanは昔から飛行機や鉄道に興味があったのですが,中でもライト兄弟以前の研究には興味があり,クラウチ(Tom D. Crouch)のサイン本(というより買ってみたらサインが書いてあった)"A dream of wings" という本も読みました。ライト兄弟の前に,飛行機の開発に取り組んだ人は世界中にいるのですが,フランスのクレマン・アデール(Clement Ader 1841~1925)もその一人です。
ライト兄弟の有名なキティホークでの成功(1903.12.17)の13年前,エオール "Eole" と命名した飛行機で,1890年10月9日,パリ近郊の友人の所有する平地で50mを飛行した,とされています。もっとも,高度は20cmほどであり,飛行したとはされていません。
さらに,1897年には改良版のアヴィオン(Avion) Ⅲで,270m飛行したと主張しています。ただ,実際に立ち会った陸軍省役人の公式記録でも,ジャンプした,という記述になっていて,飛行したとはされていません。
また,上昇することを考えていただけの英国のマキシムと違い,機体の水平を維持するためのフラップや昇降舵などの機能はワイヤーで翼をよじって持たせたようですが不十分です。もし,十数mでも上昇していたとしたら,彼は死んでいたかもしれません。その点,安定を保つため,機体を制御することを最初から検討し,風洞実験やグライダーで実験を繰り返して,安全に上昇・飛行,前後・左右の安定を保って着地することまで考えていたライト兄弟とは次元が違うと思います。
フランス政府はライト兄弟の飛行の後,最初に飛行に成功したのはアデールであると主張しはじめますし,今もフランス語の飛行機という単語はAvionであることはよく知られていますね.....。エアメールにPar Avionと書いてあるのもそれです。
それに,最近知ったのですが,ドイツ生まれのホワイトヘッド(Gustave Whitehead 1874~1927)が世界初の動力飛行だと主張する人がいるようです。1901年8月にボストンで高度15mで距離800mを飛行した,とされていますが,一切の公式記録や写真はありません。一昨年,NHK BSで独,仏,豪の各局が製作した,"First Flight: Conquest of The Skies" というドキュメンタリーをやっていて,先ほどのクラウチが出ていたのには驚きました。もちろん,クラウチも否定していました。
とはいえ,どうも最近,ライト兄弟の初飛行にも疑問が出ていて,特に有名な弟のオーヴィルが腹ばいになって操縦し,脇に兄のウィルバーが立っている,初飛行の写真も別の日の撮影ではないかとか,最後に大破した260mの大飛行についても疑問が呈されてようです。
ちょっと向きが悪いですね。後ろ側にピストンとシリンダーがあるのですが....。
よくこんなものが残っているな......と感心します。Eoleのエンジンは50kgで,2気筒,20psの出力がありました。1897年製作のこのエンジンは重量が不明ですが,出力は同じ20psですから,おそらく同じエンジンと思われます。これを2基搭載して2つのプロペラを動かしました。
しかし,どう見てもこれが50kgとは思えません。シリンダとピストンなどのモーターと呼ばれる部分だけではないかと思います。ボイラーや復水器などを含めるともっと重かったのでは,と思います。手前のタンクは石油タンクでしょうか? 左右のフィンがついているのはボイラーと言うより,復水器のように見えます。実際,エンジンを搭載した状態だと,▲のAvionⅢの写真からも分かるとおり,この部分が翼の上に設置してあり,これじゃ,抗力が増えてあかんやろ,と思いますが,何らかの冷却が必要な部分のため,翼の上に設置していたようです。
ちなみにライト兄弟のエンジンはもちろんガソリンエンジンで,重量91kg,12HPでした。彼らは5HPもあれば浮揚し,飛行できると考えましたが,大きすぎると速く飛びすぎて危険と考え,出力は抑えています。
有名な,キュニョー(Nicolas-Joseph Cugnot 1725~1804)の蒸気自動車です。保存されているのは1770年,前年の1号車に続いて製作された2号車で,試運転中に壁にぶつかり,交通事故第1号となったことでも知られていますね.....。
前輪に重いボイラーを積んでいて,旋回がしにくいのは明らかです。当時は舗装もしてないでしょうしね....。
何でこんなアホな設計をしたのか,と思ったら大砲を載せて運ぶように考えられていたためのようです。
やっぱり,これじゃ無理があり,単なる大砲の牽引車として動力車専用にして後輪駆動にしておけば,という気がします。
ルノワール(Jean-Joseph Étienne Lenoir 1822~1900)が1860年に発明した内燃機関です。世界初の内燃機関として知られていますが,当時,すでに多くのガス機関が製造,販売されていて,必ずしも第1号ではないようです。それらの中で,最も売れて有名になった,と言うことでしょう。とはいえ,L. Cumminsの "Internal Fire" (Carnot press, 2000)によれば,フランスのみならず,英,米などでもライセンス生産されたようですが,総数は600台程度でルノワールも金持ちになったようではありません。
出力は0.5,1.5,4HPなど,何種類かあったようです。
まだ蒸気機関のアイデアから抜けられていなくて,機構もはずみ車や調速機を備えて蒸気機関そっくりですし,ガスも左右のシリンダに交互に注入して点火する,と言う仕組みは蒸気機関そのものです。また,圧縮の重要性に気がついていなくて,非圧縮エンジンとなっており,熱効率は低かったと思います。
アデールの飛行機やキュニョーの自動車,ルノワールのエンジンなんて,子供の頃に図鑑でしか見たことがなかったのですが,実物が見られて本当によかったです。
シャップ(Claude Chappe 1763~1805)の腕木式通信機の実物を見るのも初めてでした。
彼は1793年,パリ~リール間の通信に成功します。フランス革命後のナポレオンの時代,部隊間の通信に活用されたのはよく知られています。ナポレオンが強かったのは,通信の速さにもあったでしょう。
シャップの発明は通信史上,画期的な発明のひとつとされています。世界各国でのろしを使った通信が使われていますが,伝達速度が遅く,情報も少ないので,腕木式通信は画期的でした。日本では少し前,大坂から米相場を地方に伝えるため,旗振り通信が実用化しますが,これも速度と情報量の点で,優れたシステムだったと思います。ただ,このシステムじゃ,遺物はありませんね.....。
シャップは天才発明家にありがちな中傷に遭い,最期は自殺しているそうです。お墓にこの腕木式信号の彫刻があり,"休止" を意味する符号になっているのは知られています。
☆ルーブル美術館
iruchanは何度かパリに行きましたけど,いまだにここに行ったことがありません......(^^;)。
地下鉄1号線か,7号線のPalais-Royal Musée du Louvre駅で下車します。
iruchanは朝,10時頃に着いたのですが,結構な列。失敗はやはり,事前にチケットを購入しておくべきで,オンラインで買えるので買っておいた方がよいです。
もっとも,チケットを買うと言っても30分くらいで買えましたし,オンラインの人も結構,待たされていました。また,入るときに行列しても,中は広いので,十分余裕で鑑賞できます。
まあ,周囲はこれくらい人だかりしていますが,写真が撮れないほどではないし,ほかの人気スポットとして,サモトラケのニケなどは高いところにあって,鑑賞するには十分です。
ダヴィッドの "ナポレオンの戴冠式" の画(ものすごくでかい!)やドラクロワの "民衆を導く自由の女神" のほか,iruchanはジェリコーの "メデューズ号の筏",同じくドラクロワの "サルダナパールの死" を見て,大感激でした。
放蕩が過ぎて,国民に反乱を起こされて城を包囲された古代アッシリアの王様サルダナパールは,いまわの際に愛していた女達を部下に殺させ,城に火をつけて果てました.......。
サルダナパール自身は頬杖ついて "フン,クソ面白くない" ってな格好で高見の見物をしていますが,彼もこのあと,死が待っています......。
中学の頃,美術の教科書で見て,びっくりしました。一度,実物を見てみたい,と思っていました。
ただ......。
モナ・リザとフェルメールの "レースを編む女" を見損ねました....orz。
実は,モナ・リザさんは普段ならシュリー翼の711号室にいらっしゃるのですが,今はなぜか801号室にお引っ越しされていて,こちらはリシュリュー翼です。なーにが気に入らないのか,女はわがままだな~。
建屋がつながっているはずなのに,どうしても行けないので係の女性に聞いたら,入口から入り直さないといけないらしく,仕方なくB1Fへ戻ったら行列.....45分待ちと出ていて,そんなにたいしたことないんですが,時間の都合であきらめました。大好きなフェルメールもリシュリュー翼なのでこちらもあきらめます。
モナ・リザの人気が高く,行列になってしまうので,建物ごと入口を替えてしまったようです。後でよく見たら,シュリー翼とリシュリュー翼の接続部分は進入禁止の看板が立っていました。
☆ ☆ ☆
再び,シャルル・ド・ゴール空港から帰途につきました。
帰りの機内で思い出すのは人々の顔.....。
どの人たちも優しく,特に会議中に頭痛がして,昼にオフィスで寝ているとどうしたの? と声をかけてくれて,ハーブ茶を作ってくれた金髪のおばさん。地下鉄の車内にいた,松重豊を女にしたみたいなおばさん。なぜか,私を見つめていて(よく外国に行くとこんなことがありますよね),おそらく変な東洋人,と思っていたに違いないと思いますが,単によくあることなのでしょうけど。第1次世界大戦時のフランス救国の英雄ガリエーニにそっくりなフランスのエンジニア.....。ミロのヴィーナスの彫刻(sculpture)を買う,と言ったら,彫像(statue)と言い直した,ルーブル美術館の土産物屋のおばさん。
みんな話しかけるときちんと英語で返事をして笑顔で応対してくれた。
今まで,iruchanはフランスがどうにも好きになれず,親英米派を自称していて,イギリスばかり称賛していたけど,フランスが大好きになりました。
う~~ん,最近は宮脇俊三ばかり読んでいるので,"台湾鉄路千公里" のエンディングみたいになっちゃいました....(^^;)。
2019-09-26 00:00
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コメント(2)
パリ
いいですねー。私も行ってみたい。メトロとか乗られました?
by hideta-o (2019-10-11 21:40)
hideta-oさん,いつもご覧いただき,ありがとうございます。
パリは20年ぶりです。
メトロは何度も乗りました。
また書きたいと思っていますが,小さい上,ゴムタイヤ走行の路線も多いので,いまいち,好きになれないんですけどね。
パリもNavigoという非接触ICカードが導入されていましたが,1週間単位で€27.80と高いのと,日曜終了固定なので,週末に近いと損で,買いませんでした。
それに,普通の券売機でクレジットカードを使おうとしたら,ICチップ付きのカードでないと使えないし,非常に面倒でした。
その点,ロンドンのICカードは日本のSuicaと同じ感覚で,使いやすいです。
また,街もロンドンの方が安全だし,きれいですが,パリもまたよいところだと思いました。
by iruchan (2019-10-11 22:37)