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金田式CR型超シンプルプリアンプの製作~その5:EQカーブと録音用バッファアンプ~ [オーディオ]

2022年9月19日の日記

超シンプルCR型プリアンプ.jpg ようやく完成です。

前回から半年が過ぎました。ようやく電源もテストが終わり,ケースに基板を収めて完成させたいと思います。

もとは,MJ '97.3月号のスーパー・サーキット講座No.15に掲載された回路です。一応,単行本にも転載されていますが,DCアンプシリーズとしては発表されていません。

よほど金田氏はCR型がお嫌いなのでしょうね。本機も回路や特性は掲載されていますが,完成した写真が載っていませんし,試聴会でも公開されたように思えません。

また,最近のIVC型イコライザでも,途中でしばらくCR型無帰還タイプを発表しておられましたが,再び,最近は2段差動NF型に戻っています。

と言う次第なんですけど,iruchanはCR型の音のよいことに気がついたのと,また,MJ '91.9月号掲載のNo.122 "オールFET スーパー・ストレートプリアンプ" の回路(NF型)がほとんど同じなので,CR/NF型切り替え式で作っています。うまくいけば,1台のプリアンプでCR型,NF型EQの音の違いが確かめられますね.....[晴れ] 

ところが......。

前回までに基板をチェックし,f特なども測定し,無事に動作することを確認したのですが......。

よくあることなんですけど,いざ,ケースに収めて入出力のシールド線を配線するとうまく動かない,なんてことがあるんですけど,やっぱり今回もしっかりドツボにはまってしまいました......[台風][台風]

CR/NF型の切替は6回路2接点のロータリーSWで配線しましたが,やはり非常に面倒。どこかで間違えているようです。イコライザアンプなのに,オシレータの信号周波数を高くすると,どんどん振幅が大きくなったり,フラットだったり,信号が出たなかったりして大変でした。

超シンプルCR型プリアンプ(iruchan)2.jpg全回路図

      ピンクはオリジナルとの変更点です。

まあ,しっかり配線チェックしてない方が悪いんですけどね。

でも,ロータリーSW回りの配線はゴチャゴチャで,配線するだけでも大変なので間違えてしまったようです。

と言う次第で,なんとか,CR型,NF型ともにきちんとイコライザーカーブが出るくらい,ちゃんと周波数が高くなると振幅が小さくなって,10kHzで-13dBくらいになることをオシロで観測するところまで来ましたけど......。

ところが,どういうわけか,ch.Rとch.Lで10dBくらいゲイン差があります。ch.Rが1.6Vくらいの出力が出るのに,ch.Lは1Vくらいにしかなりません。

おっかし~~~な~~~[雨][雨]

なかなか原因がわからず,2週間が過ぎてしまいました。

ようやく原因判明。

初段のソースには,2N5462の定電流回路を入れてあり,ゲート~ドレイン間に抵抗を入れて初段FET 2SK43の電流を決めています。

金田氏のオリジナルはここには抵抗が入っていなくて,0Ωになっています。

ところがこれではどうしてもオフセットが0にできなかったので,iruchanは47Ωを入れていましたが,ch.Lのほうは0Ωのままでした。

これに気がついて47Ωを入れたのですが,どうもパターンがショートして0Ωのままだったようです。

見つけてみれば,なぁんだ,という不具合ですけど,見つけるまで大変でした。

ようやくこれで正常動作[晴れ]

        ☆          ☆          ☆

今度は,EQアンプの出力にバッファアンプを入れたいと思います。

この頃の金田氏のプリアンプはMC専用プリということなので,CDを聴くことは考えていません。

iruchanはCDやFMも聴きたいし,ハイレゾも聴きたいので,入力を切り替えたいのですが,金田氏の原設計のままでは無理です。

というのは,普通,CR型イコライザアンプは,アンプを2台用い,1台目と2台目の間にCRのフィルタ(EQ素子)を入れる構造になっていますが,金田氏の設計はこちらにあるとおり,2nd.アンプを省略し,フラットアンプと兼用する回路になっています。これはそもそもMC専用だからできる構造ですよね。

この場合,EQアンプとフラットアンプの間に切替SWを入れることも,録音出力を入れることもできません。

なんとか,レコード以外の場合は,ロータリーSWでイコライザとは切り離せるので,何とかなるのですが,ただ,この場合,2段目(フラットアンプ)のバイアス設定用の抵抗を挿入する必要があります。これがEQアンプの負荷になってはマズいので,EQアンプの負荷とは別に,個別に入力端子に抵抗を入れる必要があります。▲の回路図で100kΩがそれです。なお,これがない場合,2段目のバイアスが加わらず,大きなオフセットが出ます。

しかし,録音出力はどうしても無理です。

録音出力を入れると,レコードの録音の場合,録音機器の入力インピーダンスがEQ素子のあとに入ることになり,イコライザカーブが狂ってしまうからです。

プリアウトから録音する,と言う手もありですけど,信号レベルが大きすぎるし,ボリウムで音量が変わってしまうのも困りもの。

ということで,しかたなく,録音用にバッファアンプを入れることにします。

とはいっても,オールFETのディスクリートとする元気はありません。

そこで,LF356Hを使ってOPアンプによるボルテージフォロアにしました。残念ながら,ここはやはり入力インピーダンスの関係で,バイポーラ入力OPアンプは不可です。LME49720Hだと音がよいだろう,と思うのですけどね。

LF356Hはiruchanお気に入りのOPアンプで,中国Lepai社のデジアンLP-2024Aの改造の時にも使っています。

やっぱり,メタルキャンのOPアンプは違うんですよね......。1970年代にナショセミが出した,最初のJ-FET入力OPアンプですけど,iruchanもあとでNF型のEQアンプやパワーアンプを作って遊んでいます。

今回,仏SGSトムソン製のTDC0156CMを使いました。ナショセミのLF156Hのセカンドソースです。同社以外のLF356Hをつかうのは初めてですけど,これはLF356Hの広温度領域版で,LF356Hが推奨使用外気温度が0~70℃なのに対し,LF156Hは-55~125℃となっています。

う~~ん,おそらく軍用だろうな.... Aérospatialeのエグゾセミサイルなんかに使っていたのかも.....。いや,エグゾセは空対艦ミサイルだから,そんなに温度範囲は広くなくてもよいはずだから,ICBM用かな.....。成層圏飛んでいるときはこんな温度のはずだし.....。

ICBMで,モスクワ狙っていたんだろうな.....いや,ひょっとしてフランス人のことだから,実はベルリンロンドン狙っていたんだったりして......[雨]。エグゾセミサイルもフォークランド紛争の時にイギリスの駆逐艦沈めて大顰蹙でしたよね.....。

この前,ちょっとLF356Hの在庫が乏しくなってきたので,eBayでフランス人から買いました。10個買ったら,2個,おまけしてくれました[晴れ] 

Merci France!

回路はごく簡単なボルテージフォロアです。

buffer amplifier.jpgバッファアンプ回路図

buffer amplifier1'.jpg バッファアンプ基板

やっぱメタルキャンはいいな~~。製造は1984年と思います。

Vccが17Vと高めなので,3端子レギュレータを入れました。+側は東芝のTA78L15にしましたが,ぴったり15.0Vなのに驚き。マイナス側は部品箱から出てきた,モトローラのMC79L15にしましたが,こちらは-15.6Vくらいだし,TDC0156CMをつないだら-14.6Vに低下する始末。まあ,時代が30年ほど違うから,そんなものなのかもしれませんが....。

超シンプルCR型プリアンプ1.jpg 内部です。

        ☆          ☆          ☆

特性を確認しておきます。

特性はch. Lのみ示します。ch. Rも同様の特性でした。

【EQアンプ特性】

EQアンプの出力を▲のバッファーアンプ出力で測定しました。

Spiceのシミュレーション結果も示します。ほぼSpiceの結果に沿っているので,回路上も問題ない,と思います。

RIAA偏差iruchan EQ5.jpg

CR型はほぼ偏差もなく,OKかと思います。10kHz以上で乖離がありますけど,さすがにテストオシレータの出力が1mVくらいでは波形にノイズが乗っているため,これはネグってもよいかと思います。

ただ,NF型は問題。低域で2dBほどずれています。

う~~ん,これは困りました[雨]

これはEQアンプの裸のゲインが足りないためです。さすがにオールFETのため,ゲインが足りないようです。

バイポーラTrを使っていると,2段差動アンプなら120dBくらいはゲインがありますが,オールFETのため,本機の裸のゲインは80dBくらいです。低域でゲインの余裕が足りないようです。

【フラットアンプ特性】

flatアンプ特性.jpg

iruchanはいつもだと,EQアンプとフラットアンプの間にVRを入れて音量調整をしていますけど,今回,バッファアンプを入れたのと同様の理由で,ここにVRは入れられないので,金田氏がずっとやっているNF量可変方式にしました。

この場合,どうしても音量調整範囲が狭くなり,また,完全に音量を0にすることができません。

今回,iruchanは音量調整可変範囲は1.9~33.7dBとなりました。ミュートSWを設けていないので,完全に音量を0にすることができません。実際,使ってみて考えることにします。

なお,f特は-1dBでDC~300kHzとなりました。

と言う次第で,一応,完成したのですけれど,NF型EQは要調整です。また宿題が出ちゃいました......[曇り] 

          ☆          ☆          ☆
 
2022年9月24日追記
 
NF型イコライザですが,改良しました。
 
低域で,イコライザカーブからずれてくる理由ですが,裸のゲインが不足している場合が多いです。
 
残念ながら,▲のグラフにSpiceのシミュレーション結果を載せていますけど,2SK43のモデルは2SK117で代用していますし,2N54652N5462はLT社のモデルを使いましたが,ネット上に出ているモデルはいろいろあって,どれもバラバラです。
 
FETなので,IDSSが違うと特性も変わってしまうので当然ですけど......。
 
と言う次第ですが,一応,またSpiceで調べてみます。
 
無帰還時特性.jpg開ループゲインです。
 
Spiceで開ループゲインを見てみると,91.5dBあるので十分ですが,やはり実測してみると83dBくらいしかありません。
 
グラフがぐちゃぐちゃで驚いちゃいますけど,iruchanも開ループ特性は初めて測ってみました。オシロの輝線もフラフラと動いて非常に測定しにくかったです。
 
NF型EQは1kHzでのゲインをMCなので54dBにしましたが,それだと20Hzでは74dB必要なので,実際には10dB弱しか余裕がありません。
 
ということで,全体の閉ループゲインを下げてもよく,その場合は▼の100Ωを大きくすればいいのですけど,そうするとCR型の方も下がってしまうので,あまり具合がよくありません。CR型の方は1kHzのゲインが43.2dBと,メタルキャンTrを使ったスーパー・ストレートプリアンプ同様,MC型EQアンプとしては最低レベルです。
 
となると,別の一手として,EQ素子を少しいじって低域のNF量を減らすことにします。
 
EQ素子変更.jpg
 
RIAAだと500Hzのターンオーバー周波数を決める820kΩを1MΩにしてみます。幸い,ニッコームだと1MΩがあります[晴れ]
 
RIAA偏差NF spice1.jpgSpiceシミュレーション結果
 
Spiceだと大きく低域が持ち上がり,2dBほど上昇してしまいますが,実機は実測で,-2dBくらいになっているので,実機だとうまくいく,と思います。
 
NF型イコライザアンプの設計は難しく,特に,素子の値を決める式はいろんなものが提案されていて,簡略式と呼ばれるものもありますが,いずれも問題点として,裸のゲインが∞であることを前提としています。
 
実際には裸のゲインは無限大ではないし,本機のようにFETを使っていたり,特に,真空管式の場合はゲインがギリギリの場合が多いので,定数の決定は難しいのですが,上記の簡略式で計算を済ませてしまっている場合がほとんどです。なにより,MC型の場合はもっと条件は厳しいわけで.....。そのため,実際には完成後,実験で決めることが多くなり,このあたり,NF型イコライザアンプの難しいところです。
 
NF型イコライザアンプの設計については,黒田徹著 "基礎・トランジスタアンプ設計法" に詳しく載っています。
 
RIAA偏差NF(1MΩ).jpg実機の結果
 
うまくいきました。20~10kHzで最大偏差は±0.3dBといったところです。本来なら,ターンオーバーの抵抗はもう少し大きめで,1.1MΩくらいの方がよさそうですが,まあ,これならよいでしょう。
 
10kHz以上でずれてしまっていますが,数MHzのノイズが乗っているため,です。LF356Hのボルテージフォロアは規格表を見るとカットオフが10MHzにもなってしまい,広帯域過ぎるようです。100kHzくらいのLPFを入れておこうか,と考えています。
 
また,本機の開ループ特性を見るとカットオフは2kHzくらい。OPアンプとしてはごく普通のカットオフです。特に,本機は2段目にCissが185pFもある2SJ72を使っているので,第1ポールが非常に低くなっています。
 
OPアンプならば,100%NFBとしても発振はしないのが普通なので,これくらいカットオフが低い方が安定です。
 
金田氏はNo.122で,"いかに本機の安定度が高く,応用範囲が広いか,計り知れないほどだ。" といつものようにまたものすごく[雨] オーバーに書いていますが,これだけカットオフが低ければ安定なのは当たり前です。むしろ,安定している分,帯域が狭くなるわけで,NFBがなかったら実用化できない,半導体アンプの宿命みたいなものです。

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Garrard 301のオーバーホール~その1~ [オーディオ]

2022年9月11日の日記

大変申し訳ありませんが,本項のタイトルから誤解されるといけないので最初に書いておきますが,オーバーホールはプロの職人さんにお願いしました。

英Garrard社の301と言うターンテーブルに憧れていて,ずっと欲しかったので社会人になってしばらくして購入しました。

当時でもこのターンテーブルは高く,安いものでも7万円,高いものだと15万円,と言う感じだったと思いますが,iruchanはドイツから個人輸入しました。たった2万円ほどでした。

まだインターネットもないし,当時読んでいた米誌 "Vacuum Tuve Valley" に載っていた広告で知った業者だと思います。残念ながら,この雑誌,非常に内容が濃く,とてもよい雑誌でしたが,すぐに中絶してしまったのが残念です。

その後,キャビネットを英国の業者に頼んで作ってもらい,以来,20年以上,ずっと使っています。

もともとは英Garrardという会社は宝飾関係の貴金属製品を扱う会社で,英王室の王冠やティアラなども作っている会社です。

その後,1918年に第1次世界大戦が終結し,復員が始まると一般民生用の製品も手がけるようになり,特に西部のiruchanも行ったことのあるSwindonに工場を設置し,ゼンマイやモーターを作って時計や蓄音機の製造を始めたようです。SwindonにはGreat Western鉄道の工場もあり,技術者が多かったようです。

North Star.jpg Great Westerrn Museumにて

SwindonにはGWRの博物館があります。1837年にStephenson社で製造されたGWR第1号のNorth Starが展示されていました。ただ,この機関車,1926年に製造されたレプリカのようです。また,博物館もiruchanが行ったときは町中でしたが,今は移転して駅の西側にあるようです。

301 Transcription Motorは1954年に製造が始まります。アイドラー式で,ゴム製の大きな円盤を介してモーターとターンテーブルを回転させます。折から,ロングプレイのLPが登場し,それ用のプレーヤーとしてよく売れたのはご存じの通りです。

英BBCの制式プレーヤーとして採用されたのもご存じの通りです。

初期はグレーのハンマートーン仕上げになっていて,BBCのもこれです。

と言う次第で,日本ではグレーが人気があるのですが,これは潤滑がグリースで,メンテが大変なのと,プロ用なので酷使されているから避けた方がよい,とVTVにも書いてあり,iruchanは白にしました。これは潤滑がオイルです。

キャビネットは英語ではPlinthと呼ばれますが,日本で作ろうか,とも思ったのですが,英国で安く作ってくれるのがわかったので,注文しました。

ついでにここで落とし穴が......。

iruchanはドイツで301を買ったので......と言うことは周波数は50Hzです[雨]

iruchanは北陸に住んでいるので,60Hzなんです.......[雨]

困ったな.....と思ったら,その英国の兄ちゃんが60Hz用のプーリーも作ってくれました。

残念ながら,Platterとよばれるターンテーブル側面のストロボは50Hz用なので使えませんが,60Hz用のストロボディスクを載せて確認すると回転数調整用つまみのぴったり中央で33 1/3になり,非常によい出来でした。

その後,1965年に401が登場し,その頃製造中止になったものと思います。

Garrard 301-4.jpg iruchanのGarrard 301
  ところどころ塗料も剥がれてくたびれています。
 
Garrard 301-3.jpg モータ周辺

金属類は黄色い粉を吹いたように錆びています。また,すっかりリンクは固渋して動きません。
 
下にシャフトの軸受があります。これと,モータ下部の丸いフタを開けて注油することが必要です。奥の半円形の部品は回転数変更用のカムで,78,33 1/3,45回転に切り替えますが,リンクが固渋してもう,動きません[雨]

1969年には,松下が世界初のダイレクトドライブSP-10を発売し,BBCの制式機に採用されたのもよく知られていますね。

実際,Garrardの301はそもそもアイドラー式なんて原始的な回転機構ですし,内部も見てみるとあまりにも武骨なつくりで,モーターはシンクロナスモータと言えば聞こえはいいですが,隈取りコイルを持って疑似回転磁界を作って回転する隈取りモータです。これだったらDENONのACサーボモータの方がはるかに高級だし,扇風機だって進相コンデンサつきの誘導モータなので,こちらの方が高級です。回転数変換は機械的なリンクを用いてアイドラーとプーリーの接触位置を変えて行っていて,微調整に渦電流ブレーキを使っていたり,電源SWのon,off時に発生するショックノイズを低減するため,スパークキラーが使われている以外は電子的な回路はありません。

う~~~ん,さすがに英国は戦争に勝ったとは言っても,すでに技術的には日独の後塵を拝する状況だった,と言うことを実感するような作りで,まるで骨董品のように思えます。

でも,iruchanはずっとこの美しいデザインが好きで,憧れていました。これにSMEのアームをつけてSPUを使うと最高だろうな.....ってずっと思っていました。

さすがにOrtophoneのSPUは使いませんでしたけど.....。SMEの3007トーンアームも安く入手して使っています。

と言う次第で,ずっと20年以上使っていたのですが,さすがに重いので,実家に置いてあるのがネックで,やはり月に1回くらいしか使わなかったのが仇になり,何年か前から回転数切替のリンクが動かなくなってしまっていました[雨]

リンクが油切れで固渋しちゃっているんですね.....[雨]

早く注油しないと,と思っていたのですが,33 1/3回転で固定して(!)使っていました。

でもこんなこと長く放置していたらロクなことはない,と1月にターンテーブルのねじを緩めて外してみました。

案の定,リンクが固渋して,動きません。おまけに......。

何やら鉄製のリンクの表面に黄色い粉がびっしり.....[雨]

鉄が錆びていると考えても,色がおかしく,金色みたいな黄色みたいな色で,細かな粉を吹いたようになっています。

Garrard 301-1.jpg リンクは錆びています。

左上の方の四角い部品がスパークキラーで,これが容量抜けすると,on,off時にスピーカからショックノイズが出ます。iruchanのも昔は何ともなかったですが,最近,パチッと言うノイズがするようになりました。

黄色い粉については,ググってみてすぐに判明。

なんとカドミウムでした[台風][台風]

ええぇ~~~って思っちゃったのですが,妙に納得。

その昔,真空管式TVやラジオなど,鉄製のシャシーにカドミウムメッキが施してありました。もちろん,鉄のさび止め,と言う目的ですが,カドミウムだとはんだづけできたのも電子機器のメッキによく使われていた理由です。特に,TVやFMチューナだとニアバイアースということでシャシーに直接,はんだづけしてGNDに落とす必要があるので,TVのシャシーはカドミウムメッキしてあることが多かったのです。

他にも,iruchanが持っているTrで,NECの2SA653など,表面が妙に黄色いものがありますけど,これは金メッキじゃなく,カドミウムメッキです。

2SA653, C1161.jpg カドミウムメッキの2SA653とコンプリの2SC1161

まともな? 2SA653も持っているのですけど,今,手許にありません。

もちろん,カドミウムは腎臓障害などを引き起こし,有毒です。日本ではイタイイタイ病などの公害問題を引き起こしました。現在ではRoHS指令を初めとして,いろんな規制で使用禁止となっています。

おそらく,iruchanの301は鉄表面が酸化し,カドミウムメッキが剥がれてきているんだと思います。昔はこんなことになっていませんでした。

と言う次第で,結局,このせいでプロの業者にオーバーホールを任せることにしました。

リンクはカドミウムメッキを剥離し,防錆処理をして業者によっては再メッキしてくれるようです。ばね類やアイドラーなどのゴム製品も新品に取り替えてくれますし,モーターも分解して清掃,軸受の交換もしてくれます。シャシーももとの塗装を剥離して再塗装してくれるので,新品同様になります。まあ,iruchanもそう今後,長生きするわけじゃないし,死ぬまでレコードを聴きたい,と思っているので,オーバーホールすることにしました。

Garrard 301-2.jpg アイドラー周辺

アイドラー支持の金具はすっかり錆びています。銀色の板はアルミ製の渦電流ブレーキで,右下の馬蹄形の磁石でブレーキをかけ,回転数を微調整するようになっています。モータ軸についているプーリーは50Hz用と60Hz用があります。もちろん,▼のストロボも周波数によって違います。

Garrard 301-6s.jpg 左下のコーナーがへこんでいます。

買ったときに,すでに再塗装してある,と思いましたが,どうも下地処理がまずく,簡単に塗膜が剥がれてしまいます。固定用のネジ穴周辺も塗料がはげてしまいました。また,買ったときから,どうも以前,落としたらしく,左下のコーナーがへこんでいました[雨]

これも直してもらって再塗装してもらう予定です。

日本でも業者さんはいますけど,本当に日本で作業しているのか不明だし,米国にも業者はあるのですが,再塗装の際に色が選べるらしく,ピンクや紫なんてのもHPに出ていますけど.....。さすがにこんな色にする気はないし,やはりアメリカ人はなにを考えているのか,まあ,ウランが核分裂する,と聞いて爆弾作っちゃうくらいだから,彼らの感覚はさっぱりわかりません.......[雨]

と言う次第で,iruchanは製造元の英国の専門業者にお願いすることにし,3月にEMSで発送しました。

EMSって,昔からよく利用していますけど,テロ対策か,最近は非常に手続きが面倒になっており,手書きの伝票は原則,受け付けてくれません。郵便局のHPで必要なデータを入力し,プリントアウトして郵便局へ持って行きます。

なんとか梱包して,3月に英国へ発送しました。直前に独裁者プーチンがウクライナに侵攻し,無事に着くかどうか心配しましたが,無事に英国に届いたようです。

では,しばらくさようなら......。

        ☆          ☆          ☆

9月8日に英国のエリザベス女王がお亡くなりになりました。謹んでお悔やみ申し上げます。

前々日にiruchanは英語を勉強しているので,BBCのニュースを聞いていたら,医者の進言で公務を休む,と放送しているので,もしかして,と思っていました。とても残念です。

本来なら,父親(ジョージ6世)は次男なので,王位に就くことはなかったはずですが,兄のエドワード8世が例の米国人のバツイチ女と結婚するため,退位したので,弟が継いだために王位に就くことになりました。

エドワード8世は王冠より愛を優先した,と美談とされることも多いのですが,親ナチであったことも知られています。話題の? ○○協会じゃなくて英国のナチ党の集会に出席したり,退位後,ベルヒテスガーデンの山荘に招かれてヒトラーとも会っています。

反対に,弟のジョージ6世は生まれつき吃音の障害があったにもかかわらず,それを克服し,開戦時の放送は感動的で,"英国王のスピーチ" という映画にもなっていますね。

開戦の演説というと,チャーチルの "I shall never surrender." が有名すぎて,ジョージ6世の演説はあまりTVでも流れませんけど,この映画を見ても,とても感動的で素晴らしい名演説です。

ジョージ6世は戦時中は国民を鼓舞し,ドイツ空軍の空襲があった際もバッキンガム宮殿を離れませんでした。

反対に,エドワード8世が在位していたら,あるいは英国が負けていたら......ナチの傀儡として担ぐ動きがあっただろう,と思います。イギリスのペタンはエドワード8世だったかもしれません。実際,ナチスドイツが勝利した世界を描いた,ロバート・ハリスの "ファーザー・ランド" (文春文庫・絶版)もそう描いています。

エリザベス女王はそんな父の姿をよくご覧になっておられたのでしょう。戦後の苦しい時代,国民に寄り添い,常に勇気づけ続けました。

iruchanは親英米派なので,女王を尊敬していたので,とても残念です。

あの時代,日本でも少ないとは言え,対英米協調派がいましたが,彼らの声はかき消され,社会から抹殺されました。正しいことはなんなのか,視野を広く持ち,世界の大局を見て物事を考える,ということがかつても,また,今ほど重要なことはない,と思います。


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