メタルキャントランジスタを使ったスーパー・ストレートDCプリアンプの製作~その5・発振対策編~ [オーディオ]
2020年9月28日の日記
前回,フラットアンプの超高域発振があるのを発見しました。金田式DCアンプではよくあることですよね。
もっとも,発振自体はそれほど強いものではなく,オシロで観測していて,どうにも輝線が太いので発見した,という程度でした。
周波数的には200kHzくらいで,たいていは2段目の差動アンプの位相補正で収まります。
ということで,前回,2段目の位相補正を20pFにして止めたところまででした。
ところが.....。
f特を見てみると,やはりまだ,200kHz付近にピークが残っていて,4dBくらいあります。
まあ,個人的には1dB以内なら許容しよう,と思うのですが.....。
ということで今週は対策をします。
いくつか対策があるのですが,先ほどの2段目の差動アンプの位相補正コンデンサを増量する,というのが普通ですが,前回,47pFまで増やしてみても変わりませんでしたので,原因は初段にあるようです。
そのほか,一番簡単なのは,真空管アンプでよくやる,微分型位相補正と呼ばれるもので,帰還回路の抵抗にパラに数pF~数十pFのコンデンサを取りつける,というものです。
ちゃんとTrは8月に作った,2SA606,2SC959のモデルを使っています。
ただ,この場合,帰還抵抗と位相補正用のコンデンサが構成する時定数以上の周波数全体が下がってしまいます。
ピンポイントに特定の周波数だけ下げる,という場合は,初段の差動アンプのコレクタに入っている,2つの抵抗をショートしちゃいます。金田氏もよくこの手を使っています。
と言う次第で,まずはLTspiceで確認してみます。
まずはすべての位相補正コンデンサがない状態です。やはりピークが出ています。
ただ,LTspiceでの結果は600kHz付近にピークがあり,実際にiruchanが組み立てたアンプでは200kHzですから,これくらいずれるんでしょうか。LTspiceだと,配線の浮遊容量などは考慮に入れていませんので。
差動アンプの2段目に位相補正用のコンデンサを入れます。金田氏の原設計どおりの場合です。やはり,かなりピークが抑えられますが,完全には消えません。
最初,600kHzのピークだから,ということで計算上,R14に2.7kΩを使ったのですが,ダメで,どんどんカットオフを下げて,160kHzくらいにしたら,最良でした。少しピークが下がります。
ただ,これでもピークが残ります。
しかたないので,これをあきらめ,やはり微分型位相補正にすることにします。
見事にピークが消えます。また,200kHz付近に第1ポールがあることもわかります。
ということで実装してみます。
まずは,初段の位相補正を試してみたのですが......。
確かにピークは下がりましたが,まだ3dBほどのピークが残ります。いくつか定数を変えてみてもあまり変わらなかったし,基板上のスペースも厳しいので,早々にあきらめ,帰還抵抗に47pFをパラにしてみました。
予想どおり,見事に200kHzのピークは消えました
ただ,WEの真空管式DCプリに劣ります。-1dBで80kHz,-3dBで100kHzといったところです。半導体プリなんだから,もう少し広帯域でよいし,せめて100kHzまでフラットと行きたいものです
要は薬の効きすぎ.....という状態なんですね。もう少し位相補正用のCは小さくてもよさそうです。
と言う次第ですが,この宿題はまた後で,ということにしたいと思います。ほかにもいくつか宿題がありますので......。
ただ,宿題をひとつ,片付けました。今回,電源を増強しました。往年の名石2SA566や2SC1161を使った超高速プッシュプルレギュレータです。もう,これらのTrはたぶん,製造されてから40年以上経っていると思います。
今回,1Uという非常に背の低いケースにした関係で,フィルタのコンデンサはRubyconの35V,3300μFを使いました。非常にコンパクトで助かっています。モノラルLP用CR型EQアンプでも使いました。
ただ,フラットアンプもついたプリアンプ用としては,ちょっと少ないのではないかと....。トータル電流は40mAくらいなんですが。
金田氏の第1号プリでもフィルタコンデンサは4700μFです。オリジナルのスーパー・ストレートプリアンプは電池仕様だったので,フィルタコンデンサの値は不明です。
もっとも,第1号プリは1974年のことだし,使用しているケミコンは日ケミのCEWだと思いますが,ブロック電解の50V,4700μFなので非常にサイズがでかくてこのケースには入りません。
ということで,もう1個ずつ,追加しました。合計6600μFなら十分でしょう。それに,ESRの点から考えても,大容量のコンデンサ1個より,小容量のコンデンサを複数パラにした方がESRは小さくなるはずです。
と言う次第で,ようやく完成としましょう。来週は実際に音を聴いてみたいと思います。
☆ ☆ ☆
2020年10月3日追記
やはりフラットアンプのf特をもう少し広帯域にしたいと思います。
微分補正用のコンデンサが47pFでは大きすぎるので,LTspiceでシミュレーションすると,10pFくらいでも十分です。また,微分型位相補正が効くことがわかったので,2段目の差動アンプのB-C間に接続した位相補償用のコンデンサは金田氏のオリジナルの5pFに戻しました。
でも......。
制御理論から,位相が180゜回ったときに,アンプの閉ループゲインが0dBより上だと発振することがわかります。LTspiceでのシミュレーションでは,-1.06dBでしたので,発振しないはずですが,ゲイン余裕はこれでは少し足りません。回路の実装状況では発振することもあり得ます。
実際,やってみたら,発振はしなかったものの,200kHzでのピークが1dBほど出ました。
ということで,結局,最終的にCNFは15pFにしてみました。
これでも,ch. Rには0.6dBほどのピークが残りますが,ch.Lはピークは消えました。まあ,これくらいでいいとしましょう。
f特は大幅に改善され,-1dBで400kHz(ch. R),200kHz(ch.L),-3dBでそれぞれ,500kHz,400kHzとなりました。100kHzまでは,完全にフラットです。半導体アンプなら,これくらいは必要だと思います。
いよいよ,これで音楽が聴けますね。
最終版の回路をのせておきます。ピンクの部分は改造部分です。音量調整は金田氏の原設計では,β回路に入れていますけど,音量が0にできないこともあり,通常の方法です。それに,β回路に入れたから,といって音声信号がそこを通るわけなので,結局は同じなのでは,と思っています。
☆ ☆ ☆
半年以上が過ぎてしまいましたけど,続きはこちらです。音を聴いてみました。
2020-09-28 00:00
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