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オールWE真空管式DCプリアンプの製作~その4・AOC回路の調整~ [オーディオ]

2018年2月17日の日記

前回から2ヶ月が経ってしまいました。実はどツボにはまっちゃっていました。

一応,年末に電源部とEQアンプの通電試験を行い,無事に動作が確認できました。若干,リップルフィルタを採用したB電源の電圧がばらばらだったので調整したりしましたが,EQアンプも無事に動作しました。

ところが.....。

いざ最後のフラットアンプの調整をしようと通電してみたら,R ch.は無事に動作したのですが,どうしてもL ch.だけ,オフセットが25Vくらいにもなって,おかしいです。R ch.はAOC回路を採用したこともあって,最初からオフセットは10mVくらいで,調整用のVRを回したらほぼ0Vにできますので,正常です。

それにしてもオフセットが25Vとは異常です。おまけに,AOC回路に入っている調整用のVRを回してもまったく変化しません......orz。

とりあえず,やはりパターンミスが考えられますので,チェックしてみますと1ヶ所やはりミスが見つかりました。おまけに,何を間違えたのか,出力の407Aのカソードに接続されているツェナーDiが本来はRD33Fなのに,なんと,RD2Fがついていました......orz。

これじゃ,ツェナー電圧はわずかに2Vしかないので異常なのは当たり前,と思ったのですけれど.....。

パターンミスとこのツェナーDiを交換してみてもやはりオフセットは20V以上あります.....。

あとでわかったのですが,ここのツェナーDiを間違えていても,このフラットアンプは正常に動作するのです。恐るべし,AOC。

う~ん,困ったな~~[雨]

普通はこんなことなくて,調整前だったら100mVくらいのオフセットが出てもおかしくはないのですけど,それにしても20V以上のオフセットとはおかしいです。実際,ネット上でもオフセットが出る,と書いている方がいらっしゃいますが,それでも数百mVくらいのレベルのようです。

とりあえず,パターンは正常だと考えると真空管のばらつきが考えられますが,真空管を交換しても同じです。あとはAOC回路の2.2μFのフィルムコン(Audynを使っています)のリークや2SK170BLのIDSSのばらつき,などが考えられます。

そこで,このコンデンサを交換してみたり,2SK170BLを外してばらつきを調べましたが,IDSSはほとんどばらついていません。

原因をいろいろ考えましたが,わかりません。そうこうするうちに時間が経ってしまいました。

そこで,製作前にLTspiceでフラットアンプのモデルを作っていたのを思い出し,LTspiceで回路のシミュレーションをしてみます。

これでひとつわかったことがあります。

AOCの定電流回路で2SD756のエミッタに入っている抵抗に3.3kΩを使っていました。金田氏の原設計では3kΩです。

実を言うと,iruchanは進でもニッコームでも手持ちに3kΩがなかったので,3.3kΩで代用していました。某通商会社? ではどちらの3kΩもありません。まあ,2kΩや5kΩはE12系列の抵抗にはなく,使用する場合は2.2kΩや4.7kΩを使用するわけです。3kΩも同じで,普通は3.3kΩを使うので,ここに3.3kΩを使っていました。

でも,これはダメなのです。

ここに3.3kΩを使ってしまうと,LTspiceでシミュレーションすると,407Aがほぼカットオフしてしまい,アイドリング電流が0.1mA程度になってしまうのです。逆に,2.7kΩでも同様で,ここはやはり3kΩでないとまずいのです。非常にこの抵抗はシビアです。

それで実機に戻って,この抵抗をタクマン電子の3kΩ 1/4Wにしました。いつも使っている,非常に小さなアキシャルタイプの抵抗です。とても1/4Wとは思えない小ささです。KOAや利久電器のもあります。

さて,実際,3.3kΩの時にはアイドリング電流は0.12mAしか流れていませんでした。これじゃ,AOC回路は制御しようがありません。

でも,3kΩに交換してもアイドリングは1mAちょっとです。アイドリング電流が小さすぎますね。

原因は初段の407Aの共通カソードに入っている,これも2SD756の定電流回路の電流が小さいからです。これはすぐにわかりました。

原設計では2.7kΩとなっていて,最初,500Ωの半固定を入れておいて,調整後に固定抵抗に取り替えることになっています。ここはiruchanも規定どおりの2.7kΩを使っていました。

残念ながら,L ch.はこれではダメなようです。しかたなく,2.2kΩに変更してアイドリングを測ってみますと,ようやく4~8mAくらい流れます。設計値は5mAですので,そこで調整用の半固定抵抗を止めました。

やれやれ~。ようやくこれで出力段の407Aのプレート電流が設計どおり,5mA流れることとなりました。

ところが,これでもまだオフセットは数Vも出ています。全然,0Vになりませんし,AOCの半固定を回してもほとんど変化しません。

こうなると,AOCに入っている,半固定VRが200Ωなんですけど,原因はおそらくこの調整範囲に入らないため,と考えて500Ωに交換してみます。

ようやく,オフセットが調整できるようになり,オフセット電圧も変化するようになりました。

ただ,これでも2V以下に下げることができません。

業を煮やして,半固定の片側に220Ωを追加したら多少下がったのですが,まだ0V以下にならないので,結局,1.2kΩを接続したら0V以下になりました。

調整も可能で,数mVくらいになるように調整しました。

ようやくこれで実用化かと,思ったのですけれど.....。

やはり正常に動作するR ch.と比較すると挙動がおかしく,これでOKするには無理があります。

電源投入直後から観察すると,R ch.は確かに電源投入して412Aが暖まってくると,瞬間的に300mVくらいのオフセットが出ますが,速やかに数mVに下がります。

ところが,L ch.は一旦,4V以上のオフセットが出たあと,2Vくらいまで下がってきますが,その後,なかなか下がりません。3~5分くらいしてようやく数十mVくらいになる,と言う始末で,その後,徐々に下がっていき,今度はマイナスになっちゃいます。

その後もふらふらと変動しますので,やはり状況はおかしいです。

う~~ん,困ったな~~[雨][雨]

そこで,再び,LTspiceに戻って考えてみます。

今度はAOC回路のみ取り出してLTspiceでシミュレーションして考えてみることにします。

AOC 2SK170回路.jpgAOC回路(オリジナル)

±Vccはiruchanが現在製作中のB電源電圧です。ずれがあってもほとんど問題になりません。2.4kΩは前段の2SA1967のエミッタ抵抗です。

AOC回路は1段の差動アンプで,2つのFETのゲートはそれぞれフラットアンプの出力と,GNDにつながっています。フラットアンプの出力はLPFが入っていて,音声信号には反応せず,オフセットのみに反応するようになっています。

差動アンプなので,2つの入力間の電圧差に比例した電流を出力するようになっています。電流は,共通ソースに入っている定電流回路で和が一定になるように制御されますので,2つのドレイン電流はシーソーみたいに対称に変化します。普通はドレインに負荷抵抗が入っていて,電流の変化を電圧の変化として取り出して使うわけですが,AOCの場合は電流そのものを使います。2つの入力は片側がGNDですから,純粋にオフセット電圧に比例した電流を出力するわけです。

今,出力と書きましたが,実際には "吐き出し" ではなく, "吸込み" として動作します。

金田氏のDCプリアンプは初段が真空管,2段目がレベルシフトのTr,3段目が完全対称出力段という構成になっていますが,AOCは2段目のレベルシフトのTrのエミッタにつながっていて,最大,1.9mAの電流を吸い込めるように設計されているようです。

レベルシフトTrの動作電流は1mAのようですので,AOCは約1mAくらいを吸い込んで2SA1967が動作するように制御します。

LTspiceでの出力結果を▼に示します。入力のオフセット電圧として電圧源を挿入し,それを-3~+3Vの範囲でスイープします。

AOC 2SK170(VR200Ω).jpg ふ~ん,こうなるんだ。

2つX型に交差している線がそれぞれ2SC1775のコレクタ電流を示します。ちゃんと2つの電流が対称的に変化するのがわかりますね。最大,1.9mAまで吸い込むことがわかります。X型の範囲がAOC回路の制御範囲で,それを超えちゃうと制御不能になります。

このX型の制御範囲は非常に狭いようで,▲のグラフにもあるとおり,オフセットが-365mV~+370mVの範囲です。この範囲を逸脱してしまうとAOCがサチってしまい,オフセットを0Vにできません。

おそらく,現在のiruchanのフラットアンプのL ch.はオフセットがこの範囲を大きく超えてしまっていて,0Vに制御できない状況だと思います。

ということで,この範囲を少し広げてやれれば,と思いました。

2つの2SK170BLのソースに入っている可変抵抗が原設計では200Ωですが,これを1kΩにしてみます。

AOC 2SK170(VR1kΩ).jpg VRを1kΩにしたとき。

-1.16V~+1.13Vと広がりますね。可変抵抗を大きくするのは効果があるようです。

ただ,iruchanのアンプは観察していると,最大4Vくらいまでは出ています。まあ,ほとんどは±B電源の立ち上がりに出ているので,B電源が落ち着いてくると2Vくらいにはなっているようです。

とすると,iruchan製作中のアンプではVRを1kΩにしても制御できない,と思われます。それに,2SK170BLを使った原設計の回路では,この抵抗値を大きくしてもそれほど制御範囲が広がりません。

困ったな~~。

ちなみに,定電流回路の2SD756のエミッタに入っている抵抗を小さくしてやるとこの制御範囲が広がります。

しかし,これをやっちゃうとこれまた困ったことになっちゃいます。

3kΩが原設計ですが,2kΩにするとこうなります。

AOC 2SK170(VR200Ω,RE=2kΩ)'.jpg RE=2kΩの時

確かに,制御範囲は-509mV~+509mVと広がりますが,問題は2SC1775Aのエミッタ電流で,最大,2.86mAとなります。

で,これが何が問題かというと.....。

オフセットが0Vのところが1.4mAくらいになります。前段の2SA1967のエミッタ電流の最適値は1mAですから,AOC回路がほとんど電流を吸い込んじゃって肝心の407Aのバイアスが深くなりすぎてプレートに流れる電流がほとんど0になってしまいます。実際,フラットアンプのLTspiceモデルで実験してみますと,407Aのプレート電流は1mA以下になってしまいました。

ということで,この方法は使えません。

2SC1775Aを交換しても,ほかの抵抗値を変化させても制御範囲は変更できません。

しかたないので,やはり2SK170BLはあきらめざるを得ません。要は,もっとゲート電圧の変化に対してドレイン電流の変化の小さい,つまりgm(今はgmとは言わない......ってか?)の小さなFETにする必要があります。

2SK170BLはハイgmで,22mSもあります。普通はiruchanもgmの高いFETを好んで使うのですが,AOCにはローgmの方がよさそうです。

ということで......。

代打は2SK30にしました。これはgmが1.2mSしかありません。今どき,こんな低いgmのFETなんて使わんやろ,と思うのですけどね。iruchanも2SK30を使う回路には2SK117を使うことが多いです。

でも,今でも盛んに2SK30は使われていますし,とうに製造中止なんですけど,市中の在庫はまだありますし,やはり需要があるのだと思います。iruchanも中学の頃からよく使っているFETなのでなじみがあります。

ということで,AOCに2SK30を使うとこうなります。ついでに,可変抵抗も500Ωに変更しました。

AOC 2SK30回路.jpg2SK30

AOC 2SK30(VR500Ω).jpg 2SK30 AOCの特性

結果は見事で,可変範囲は-2.03V~+2.05Vとなります。もちろん,0Vのところは1mA程度で,十分,本機のAOC回路として使えそうです。

         ☆         ☆        ☆

さて,このあと,カスコード接続されている2SC1775Aの耐圧がギリギリなので,こちらの代打についても考えてみたいと思います。

カスコード接続はエミッタ接地増幅回路とベース接地増幅回路をシリーズに接続したものです。ベース接地アンプはそれほどゲインは取れませんが,何よりベースが接地され,エミッタとコレクタを交流的にシールドできるため高周波まで安定して使えるので,FMの高周波回路などで使われます。ゲインが取れないので,低周波では使いませんけどね。

TrやFETとシリーズにカスコード接続すると,例の悪名高いミラー効果を相殺できるため,さらに高周波特性が改善されますし,TrやFETがゲインを稼いでくれるので,ベース接地増幅回路の欠点を補ってくれます。ただ,ベース接地回路は教科書には載っていますけど,実際には単独で使用されることは初期のFMのRF増幅回路で用いられたくらいで,現在使用されることはほとんどないと思います。FMやTVのRF増幅回路もカスコードアンプであることが多いですよね。

また,AOC回路ではFETの耐圧不足を補うのが目的ですね。DCプリアンプでも初段がカスコードアンプになっていることがありますが,ほとんどはFETのゲートリーク電流を抑えるため,VDSを小さくするために設置されることが多いと思います。

実を言うと,▼の回路でもAOCは動作しちゃうのです。つまり,カスコード接続されたTrは不要なのです......。

AOC Trなし回路.jpg ありゃ~~?

本当はこんなことやると2SK30は即死しちゃうんですけど......(^^;)。

2SK30のVDSは最大50Vです。LTspiceは過電流や過電圧は無視します。だから,うっかり抵抗が燃えてしまうような大電流が流れていても画面上は何も表示されないので,実際に基板を作る前に1個ずつ,抵抗の損失を調べないとわいけません。LTspiceも過電流が流れると画面の抵抗が燃えるとか,過電圧がかかるとTrが吹き飛ぶとか,それくらいの芸をしてもいいんじゃない? って思ってます......(^^;)。

さて,元に戻って,2SC1775Aは耐圧が120Vであるため,ちょっと耐圧がギリギリです。AOC回路では最大115Vくらいまでかかります。

メーカの保証範囲ですが,ものによってはこの電圧までかけるとリーク電流が増えたり,壊れるものもあるでしょう。

金田氏もこの点,認識されたのか,あとの回路では2SC1775Aの代わりに2SC2230が使われていたりします。ただ,ご存じの通り,2SC1775A2SC1400が入手難になって代わりに使われるようになったのですが,2SC1400のVCEOは80Vなので仮に持っていたとしても使えませんのでご注意ください。

もうひとつ,2SC1775AではhFEが高すぎると思います。

2SC1775Aは本来はプリアンプの初段など,高増幅率の回路に使用されるもので,hFEは400から1200もあり,大きすぎます。あまりhFEが大きなTrというのはノイズに弱いですし,ばらつきも大きくなるので,もっと小さなhFEのTrがよいかと思います。

実際,LTspiceでシミュレーションしてみますと,2SC1775Aのベース電流はほんのわずかです。こんなに小さくてええんかいな~。

AOC 2SK170(2SC1775Aベース電流).jpg AOC回路の2SC1775Aのベース電流

そこで,いくつか,カスコードアンプ用の高圧Trを調べてみました。2SC2230は先ほども書きましたように,40KG6A DCパワーアンプ(No.207 MJ '10.4)などで使われていますね。

カスコードTr    ベース電流      VCEO(V)       IC(mA)  PC(mW)

2SC1775A     1.46μA   120     50    300 

2SC2230      4.97μA   180     100     800

2SC2240      4.98μA   120     100         300

2SC2551      11.42μA     300     100     400

2SC5201      1.73μA     600      50      900

本来はhFEが小さな2SC5201(hFE=80)が非常にIBが小さくて,2SC1775A並み,と言うのが変なんですけどね....。

LTspiceでシミュレーションしてもhFEの違いによる,特性の違いは見られなかったので,ここはもっと耐圧が大きくて,hFEの小さなTrでもよいと思います。2SC1775Aでは耐圧がギリギリですしね。もちろん,耐圧が90Vの2SC1775は使ってはいけません。ここはもっと耐圧の大きな,2SC22302SC2551などでよいと思います。

と言うことなんですけど,iruchanはとりあえず,2SC1775Aを使っているので,このままにしておきました。次は2SC2551にしようかと思っています。もう,なんか2SC1775Aなんて石でも非常に貴重なものになってしまいましたしね。次回,真空管DCプリアンプを作るときは別のTrにしてみます。

         ☆         ☆        ☆

さて,代打2SK30ですが,実際に基板に搭載してみます。すでに,可変抵抗は500Ωに交換してあります。

2sk30a pair.jpg 代打,川藤!!じゃなかった,2SK30A-GRです。

某店で買ったペア品が出ててきたので起用します。

起動後にすぐにオフセットは400mVに下がり,そこで止まっていますので,うまくいったようです。2SK170BLのときはオフセットは2V以下には下がりませんでしたが,2SK30は最初から1Vを下回っているので希望がもてます。それに可変抵抗を回すと変化しますから,何とかなりそう....。

しかし......。

やはり80mVくらいで止まってしまい,それ以下には下がりません.....orz。

ひと晩考えました。そんなにかかるんかぃ?

手としては,さっき,2SK170BLのときにやったように,可変抵抗の片側に抵抗を足してやる方法です。要は,可変抵抗の調整範囲からはずれっちゃってるからこうなるわけですので,この手があります。

あとはあきらめて初段の共通カソードに可変抵抗を入れちゃうか....とも思いましたが,定電流回路に可変抵抗が入れてあるし,もう1個,つけ足すにも基板のスペースがありません。

やはりここまで来たら407Aの交換しかないと思います。

といって,今まで差し替えをすでに試したのですが,いずれもオフセットは変わりませんでした。

でも,よ~く考えてみると,おかしいL ch.の2本の真空管を入れ替えただけで,正常に動作しているR ch.の真空管と入れ替えてみたわけじゃありません。

ということで,初段の407AをLとRで入れ替えてみました。

備後~~! じゃなかった,ビンゴ~~!でした。ATOKもアホだよな~~。

いつまでもオフセットの変わらなかったL ch.がすっとオフセットが下がり,可変抵抗で0Vにできるではないですか[晴れ][晴れ]

おそらく,L ch.は2本の407Aがともにバランス不良だったので,入れ替えても同じ現象だったのだと思います。

金田氏は "AOCのおかげですべての396A407Aの6.3V管)が使えるようになった" と書いておられますが,やはり選別は必要な感じです。

それと,調整の順番も,金田氏はAOCの調整をしてオフセットを0にしてから396A407A)のアイドリングを5mAにする,と書かれていますが,これは逆の方がよいです。先に396Aのアイドリングを5mAにしてからAOCの調整をするべきです。そもそも,iruchanも経験しましたが,アイドリングが5mAに達しない場合が多いと思います。これじゃ,AOCが動作しませんし,また,初段のアイドリング調整の半固定はAOCと連動していて,アイドリング電流に応じてオフセットも変化しますのでご注意ください。

オフセット調整.jpg ただいまオフセット調整中....。

ようやくオフセットの調整をして,1mV以下に下げることができるようになりました。

それにしても原因は407Aの両ユニットのアンバランスでした。とはいえ,AOCも元の2SK170BLのままでは調整できなかったと思いますし,2SK30のAOCは有効だと思います。やっぱ,川藤じゃなかった,ベテランが役に立ちますね!

さて,不良だった407Aですが,iruchanは本機用に20本ほど407Aを買い込んでありますので,別のやつと交換してもよいのですが,成績が悪いからと言ってリストラしてしまうのはかわいそう.....。iruchanだって会社じゃ,とうの昔に戦力外で同じ立場ですしね.......orz。

それに,407Aはそれほどでもないですが,396Aはとても高くなっていて,リストラしちゃうと退職金? が大変ですからね......。

これは初段では使えなくても出力段なら十分使えるはず,と思って出力段にまわってもらうことにしました。

ちゃんとこうしてもオフセットは0Vになりますので,十分使えると思います。まあ,多少のアンバランスが残っちゃうのでひずみ率なんかに影響が出るのでは,と思いましたが,問題ないと思います。そもそも,LTspiceで各真空管の電流や動作点を調べられますが,オフセットが0Vになった状態でも出力段の上下の真空管のプレート電流は同じではなく,ずれていますし,もとから完全対称出力段とは言ってもアンバランスな状態ですので。

初段407A選別外.jpg この子は両ユニットバランス不良でした。

一応,初段としては使えないので×印をつけておきました。出向先じゃなかった,出力段で頑張ってくれ~。

と言う次第で,ようやくこれでフラットアンプも完成です。次回は特性を測ってみたいと思います。


2018年2月24日追記

まだおかしな現象が残っていました。

ようやく,先週,AOC回路の素子を2SK170BLから2SK30Aに交換して,オフセットが0Vになるようにできましたが,よく見ていると一応,0Vに調整しても,ゆっくりですが,どんどんずれていきます。15分もすれば1Vくらいになる始末。オシロをつないで時間軸を最大まで延ばしてみると......

AOC 2SC1775A.jpg 左の方で0Vに調整しています。

こら,アカン~~~[雨][雨][雨]

最初は,初段の定電流回路に使っている,2SD756の周辺で温度特性の悪いのがあるのかと思いました。Trはもちろん,ツェナーDiも温度に敏感です。

金田氏の真空管式DCプリアンプは初段の定電流回路で出力段の真空管のアイドリング調整をするようになっていますが,同時にオフセットも変化します。AOC回路がついていてもこのVRをいじるとオフセットも動きますのでご注意ください。

おそらく,この定電流回路の電流が時間とともに変化しているのだと思いました。

でも.....。

この定電流回路に使われている2SD756のエミッタにつながっている抵抗の両端の電圧を測定しても全然変化しません。

と言う次第で,この部分はシロです。

となると,疑うのはやっぱりAOCの2SC1775Aです。

先週,このTrは古くて貴重なTrだからと交換しませんでした。

どうもやはりこの点があだになったようです。

オシロで観測してみると,どんどん,プラスの方にオフセットがずれていくのがわかります。それに,2SC1775Aに触ってみると輝線が少し下がって,水平になります。やはり温度により変化するようです。今は冬だから私の指の方が冷たいので,温度が下がるとオフセットが下がるようです。

R ch.の方はまったく変化せず,輝線は水平のままなので,やはりL ch.はおかしいようです。

しかたないので2SC1775Aの方にも代打を出さないといけないようです。おそらく,L ch.の方の2SC1775Aはどちらか1個,温度特性が悪いようです。

というしだいで,代打を何にしようか,と言うことなんですが.....,▲の表から選んでもよかったのですが,どうも温度の変化にシビアなようなので,思い切ってTO-92をあきらめ,TO-126かTO-220にすることにしました。これらの方が熱結合したときの接触面積が大きいし,ボリュームもあるので熱容量も大きく,温度変化に対しては強いかと思います。実際,金田氏もWEの421A(No.165 MJ'01.12)のときに三洋の2SC4578を使っておられます。

といって,部品箱を探してもそんなTrはないので,NECの2SC2752を起用することにしました。それに,2SC4578はレベルシフト用の2SA1967同様,あまりにもハイスペックだと思います。こんなに耐圧は高くなくてもよいですよね~。

カスコードTr    VCEO(V)       IC(A)  PC(W)      pin

2SC3421     120     1   10   ECB

2SC2752     400     5   10   ECB

2SC4578     900    50mA  1.75     BCE

実は,基板のパターンが2SC1775A用なので,これと同じピン配置でないとまずいのです。大体,2SC1775Aなど,TO-92は左からECBですが,TO-220だと逆で,BCEのものが多いのです。

ところで,余談ですけど,なんで日本製のTrは真ん中がベースじゃないんでしょ。昔から腹立つんですけど....。これだったら楽なのに~。FETだと割に真ん中がゲートという石が多いので助かるんですが。

おかげで,日本製のTO-92がほぼ絶滅して海外から代替品が入ってきていますが,海外のものは真ん中がベースのものが多いようです。

じゃ,これから便利だな~と思ったんですけど,いままでECBに慣れちゃったので,というか慣らされちゃったので,どうも真ん中がベースのTrは違和感ありまくりで,まだ使っていません。なんか変なんだよな~。


最初,東芝の2SC3421が出てきたので耐圧は2SC1775Aと同じなのでちょっとギリギリですが,2SC2752と違ってフルモールドだし,それにしようと思ったのですが,残念ながら1個しか見つからなかったのであきらめました。

ちょっと,2SC2752だとフルモールドパッケージのように見えて背面にコレクタが露出しているのでデンカシートが必要なのが残念ですが,NEC製だし,これにしました。

実を言うとiruchanはどうも東芝はあまり好きじゃないんですよね~。理由はいろいろあるんですけど,オーディオ用にはあまり使いたくない,という感じです。

2SC2752は本来は6G-A4シングルパワーアンプなど,パワーアンプのリップルフィルタ用として買ってあったものですが,フルモールドじゃないので,放熱器に取りつけるときにデンカシートが必要だし,面倒なので予備役? となっていたものです。iruchanも会社じゃ,とうの昔に予備役だしな~~[雨]

NEC 2SC2752.jpg 2SC2752(NEC)

ちょっと,ドレスの背中が見えすぎ....ロシアのメドベージェワみたいに女の人ならいいけど,トランジスタの背中が見えてもね~という感じなんですけどね.....(^^;)。

さて,とうとう2SC1775Aをお役御免にして,代打の2SC2752を起用した結果です。

成績優秀でした。オシロの輝線はずっと水平のままです[晴れ][晴れ]

AOC 2SC2752.jpg 代打2SC2752の成績です。

    よし,よし,いい子だ~~!!

AOC 2SC2752-1.jpg こんな感じになりました。

ようやくこれでオフセットの問題が解決しました。あとのシールド線の配線を済ませて特性を測りたいと思います。


2020年1月13日追記

ようやく完成しました。続きを読みたい,と言う奇特な方はこちらへ。

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