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JBL SG520もどきアンプの製作~その4~ [オーディオ]

2022年2月6日の日記

JBLのSG520型プリアンプを現代によみがえらせようと,オリジナルのTrを使って基板を作りました。キモとなるGEの2N508も入手したので,作ってみました。GEが作った最初のオーディオ用Trで,ゲルマニウムTrです。

SG520の音はこのTrの良さ,と言うことが言えますけど,SG520はオールゲルマじゃなく,フラットアンプは初段以外はシリコンTrの2N2712, 2N3638を使っています。SG520はオールゲルマ,という風説がまかり通っていますので,ご注意ください。特に,NPNのゲルマは作りにくかったので,NPN Trは大体,シリコンです。

それにしても前回の記事から9年も経っちゃってますね......(爆)。

どうも申し訳ありません。

部品としては,ほぼオリジナルと同じ半導体を入手できましたが,問題はCR類。特に,EQ素子が0.047μFと0.015μFとかなり大きな値です。

普通はEQ素子はマイカか,スチロールコンデンサを使うのですが,こんな大容量のものはないので,オリジナルはペーパーコンを使っているようです。

おまけに各段間のカップリングコンデンサは25μFや2μFなど,大きな値で,オリジナルのアンプではすべて電解コンデンサを使っています。

どうしてもバイポーラTrは入力インピーダンスが低いため,このようなシングルのアンプの場合は1段ずつ,大容量カップリングコンデンサを入れる必要がありますが,フィルムコンデンサはそう大容量のものは作れず,0.1μFくらいが関の山だったので,当時は音の悪い電解コンデンサを使わざるを得ませんでした。

これは半導体アンプでは最初から問題とされ,段間を直結する回路が工夫されますが,結局,1970年代後半にDCアンプが登場するまで,この問題は解決しませんでした。

と言う次第で,実を言うと,JBLのSG520は電解コンデンサの音を聴いているようなもの.....という気がするんですけどね。だから,オリジナルのPhilipsやMalloryの電解コンを探している方も多いと思います。といって,オリジナルと同じ年代の古いものは吸湿したりリークしてもうダメでしょう。

とはいえ,電源のフィルタやデカップリングコンデンサには電解コンを使わざるを得ません。iruchanは電解コンは日本製が一番,と思っているので,今回はニチコンのオーディオ用を使いました。

それと,オリジナルのEQ素子に使われているペーパーコンも吸湿してリークしているでしょうし,容量も経年変化してしまっていて,最初のオリジナルの音とはかけ離れてしまっている,と思います。

また,今はフィルムコンデンサでも20μFくらいのものがありますし,EQ素子も探せば大容量のディップマイカが手に入るはずです。

と言う次第で,iruchanはカップリングコンデンサに電解コンデンサを使いたくないので,今回,カップリングコンデンサは全部フィルムを使うことにします。お気に入りのニッセイ電機のフィルムコンデンサを使います。

EQ素子用には米軍用のディップマイカを使うことにしました。軍では何か,こんな大容量のマイカコンデンサが必要なんでしょうか。経年劣化や温度による変化がほぼない,という信頼性の高さが目的でしょうか。米国製だし,JBLのアンプにはぴったりでしょう。0.047μFと0.015μFがありました。SEコンほどじゃないけど,結構高かったですけどね.....。

と言う次第で,完成した基板はこんな感じになりました。

EQアンプ基板1.jpg 完成したEQアンプ基板

巨大なディップマイカに驚かされますけど.....。今にして思えば,無理してディップマイカ使わなくてフィルムコンでもよかったんではないかと思います。

カップリングコンは青いのがニッセイで,赤はニチコンのフィルムコンだと思います。

EQアンプ基板2.jpg 2N508です。

NJSとありますので,製造中止品を作っているNew Jersey Semiconductor製と思います。オリジナルのGE製も入手しましたけど,ちょっと怖いので,とりあえず,NJS製で試験してあとで交換するつもりです。しかし,それにしても今どき,2N508なんて古いTrの需要があるんでしょうか.....。

なおEQアンプは出力だけ,2N508じゃなく,2N2614を使っていますが,これは耐圧が足りないためです。2N508だとVCEO=-18Vですが,2N2614は-40Vです。

さて,ようやく基板が完成したので,通電して試験します。

こういうときに,昨年作ったトラッキングレギュレータが便利です。可変電圧出力ですし,マイナスも出力できますからね。SG520は-21Vが電源電圧です。

まあ,単に+出力の電源装置でも+と-を逆に接続すればいいだけの話なんですけどね....。

出力にオシロをつないで通電し,入力端子に指を触れてみるとオシロの波形が動くのでうまくいったようです。

sg520 1khz.jpg きれいな1kHzが出力されてひと安心です。

1MHzまでスイープしてもスムーズに出力波形が減衰し,高周波でのピークや発振もなさそうです。ホッ[晴れ]

特にノイズもなく,発振もしていないようなので特性を測ってみました。

基板テスト.jpg 基板テスト中。

☆EQアンプ特性

まずはEQアンプから。

EQ特性1.jpgEQアンプ特性です。

────が実測結果で,──がSpiceによるシミュレーション結果です。………は偏差です。

spice eq.jpg Spiceシミュレーションです。

最初,2N344を使ったら,ゲイン不足で,低域のEQ偏差が数dBにもなり,こちらで作った2SB54のモデルに代えてみたら正常です。実際に,実機も2SB542SB56で作ってみても面白いかもしれません。

Spiceのシミュレーション結果とほぼ一致していました。

実測結果はJBLの公式データとほぼ同じで,1kHzのゲインも32dBと,MMカートリッジ用としては妥当なところです。

低周波は偏差が小さいですが,高い方はどんどん離れていき,最大1.8dBもずれてしまいます。

iruchan的にはNGですけど,まあ,シングルのTrを使った回路ですし,何より古いTrを使っているので,こんなものか,とも思います。また,Spiceの結果とも一致しているので,設計上の問題のようです。特に,NF型イコライザでは,高域では100%負帰還がかかるので,こういう傾向があります。これは黒田徹氏の本にもあるとおり,CR1段のLPFで改善できますが,SG520の個性と思って,放置しようかもと考えています。

☆フラットアンプ

flat特性.jpgフラットアンプ特性です。

こちらはもっと驚き。-1dBでも600kHzくらいまで伸びていて,びっくりしました。普通,ゲルマニウムTrはfTが低くて,よくても数MHzなので,全然ダメだろう,と思っていました。ちなみに2N508でfT=2.5MHz,出力のエミッタフォロアに使われている,2N3215なんてfT=300kHzなんですけどね.....。2N27122N3638は不明ですけど,後者はシリコンですからずっとよいはずです。

ただ,ちょっとゲインが不足気味。フラットアンプなら20dBくらいは必要です。Spiceでも24.6dB@1kHzありますから,ちょっとゲイン不足です。

         ☆         ☆          ☆

ようやくこれでアンプ部はうまく動作することが確認できました。それに,とても特性は良好ですし,オシロで見ても非常にきれいで,動作も安定しています。

これはいい音がする予感.......悪寒かもしれませんけどね......[曇り]

と言う次第で,次回は電源のリップルフィルタを試験します。また,ケースもなんとかしたいと思います。


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