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さよならAMラジオ~送信所めぐり~その4:CBC長島送信所,東海ラジオ七宝送信所 [ラジオ]

2023年10月21日の日記

前回,名古屋港南部のNHK鍋田ラジオ放送所を訪ねました。

今日は木曽川の対岸にある,CBCの長島送信所と,ちょっと北にある東海ラジオの送信所を訪ねました。

どれもそう遠くはない立地なので,がんばれば1日で回れますが,港や河口近くの人口が希薄なところのため,公共交通はとても不便で,レンタカーでも借りないと1日では見て回れそうにありません。

☆CBC長島送信所

CBC長島送信所.jpg 

稲刈りが終わって,まるで荒野に建つ送信所......アメリカみたい。

iruchanは特急しらさぎで名古屋へ出て,そのまま 省線 で長島駅へ。関急 でもいいのですが,ちょっと関急名古屋駅は地下なので,省線があればそっちの方が便利です。

きしめん.jpg けふの朝飯はきしめん。どぇりゃ~,うみゃーてかんわ[晴れ]

ただ,それにしても関西線って,いまだに木曽川鉄橋前後の区間を除けばほとんど単線で,これじゃ,近鉄と勝負になりませんね.....。それに,路線もほとんど並行していて,JR長島駅と近鉄長島駅は目と鼻の先です。

CBCの長島送信所へは,桑名駅から三重交通バス53系統長島温泉行きがほぼ1時間に2本,出ていますし,名古屋の名鉄BCからは名鉄や三重交通の高速バス・長島温泉行きが出ていて,割に便利です。バス停は松中が近いです。

が,iruchanは長島駅から,桑名市のコミュニティバスK-バスに乗りました。料金はたった100円です。

とはいえ,1日2本しかありません[台風]

おまけに,かつてはバスは3本あったらしいのですが,朝の1本はデマンドタクシーに変わっていて,1時間前に電話で予約しないといけないらしい。

ちょっと驚きました。

バスは,お客さんはiruchanただ1人。

このあたり,やはりコミュニティバスの問題点ですね.....。せっかく,公共交通の過疎地帯をカバーしようと,自治体が努力しても,1日の本数がたった3本程度では,正直,利用したくても利用できないのではないでしょうか。近所のお医者さんに行って,帰ろうとしたら3時間後とか,下手すりゃ,今日は終わり,というダイヤでは利用のしようがありません。こういった過疎地帯の公共交通は無人の自動運転バスまで待たないといけないか,という気がします。

バス停は野亨寺前が近いです。ここから少し東に歩くと,北側に鉄塔が見えます。

ここは開局以来使用していた鳴海送信所から,1978年11月23日に移転したものです。周波数1053kHzは最初からで,この日に日本を含むアジア地域の置局間隔が従来の10kHzから9kHz間隔に変わりました。このおかげで,海外で買ったラジオが日本で使えない理由になっているんですけどね.....。PLLシンセサイザ式のラジオの場合,アメリカで買ったりすると日本では使えません。

CBC長島送信所1.jpg 立派な銘板

 TBS戸田送信所同様,真鍮で作られているのでしょうね。緑青が吹いていました。

CBC長島送信所2'.jpg 出力は50kW,鉄塔の高さは130mです。

CBC(中部日本放送)は日本の民放のパイオニアで,1951年9月1日,旧鳴海放送所から,日本の民放の第一声を上げています。


ところが,どういうわけか,一般には大阪の新日本放送(現毎日放送)が1番目,とされていて,CBCは同着みたいな感じに言われています。

時間的にはCBCの方が早く,6:30に第一声を上げていて,新日本放送は正午です。CBCの方が早いのに,第1号は新日本放送,と言われることが多いのは不思議です。

鉄塔は日本のAM局に多い,支線式で鉄塔もごく一般的な円管柱です。

ただ,頂冠部は容量環らしいものがあるにはあるのですが,どうにも小さい。普通はNHK彦根中継放送所のように,8m以上あって,意外に大きいものですし,鍋田送信所のもやはり足場があって,その周りに容量環がついている,と言う構造です。

ここは,NHKの送信所みたいに大きなものではないようです。機能的に容量環としても機能しているのかもしれませんが,頂冠部の避雷針を点検する足場のような感じです。

CBC長島送信所4.jpg 頂冠部

人が1人,通れるだけの穴が開いているところを見ると,容量環にしては小さすぎ,容量環と言うより,点検用の足場のような感じです。

局舎はTBSの戸田送信所みたいに,臨時のスタジオなんかも設けられているようで,かなり大きな局舎です。

CBC長島送信所8.jpg 大きな局舎です。

CBC長島送信所3.jpg 

県道側(東)にサインがあります。夜はネオンが光って,きれいでしょう。非常用発電機の煙突も見えますね。八木アンテナはVHF帯のSTLアンテナでしょうか。

CBC長島送信所7.jpg 県道と反対側(西)です。
 
1Fに配電盤が見えますね.....県道側の写真から分かるとおり,鉄塔はかさ上げされていますが,配電盤は地上と同じレベル。これでは津波の時,どっかの発電所みたいに,浸水して停電して炉心溶融 [雨] しちゃうのでは?
 
局舎の入り口はこちら側で,先ほどの銘板もこちら側にありました。

CBC長島送信所5.jpg STL用パラボラです。

CBC長島送信所6.jpg 鉄塔基部です。かさ上げされています。

帰りは近くの松中バス停から八風バスで桑名駅に出ました。

ちょうど昼なので,駅前のエンシュウヤさんでおいしいランチをいただいて再び省線電車に乗りました。エンシュウヤさんは昔ながらの洋食屋さん。とても安くてボリュームもあり,食後にコーヒー頼んだら,ロールケーキと梨がついていてびっくり[晴れ]でした。


エンシュウヤ.jpg おいしいメンチカツとコロッケの日替わりランチ。

みそ汁は赤だしです。おまけにたった750円でした[晴れ]やっぱ名古屋はで~れ~ええがね....ここは桑名だけど....。

桑名から,弥富へ移動し,そこで名鉄尾西線・普通須ヶ口行きに乗り換えました。この電車に乗るのは久しぶりです。

弥富駅.jpg もちろん,国鉄で一番低い駅です。

 素敵な木造駅舎。末永く残ってほしいものです。なんと,1894年建築だそうです。

弥富駅1.jpg 金魚のステンドグラスがきれいでした。

☆東海ラジオ七宝送信所

七宝送信所4.jpg

1332kHz,出力50kWの送信所です。1332~~東海ラジオ っと。

 2012年の録音です。

それにしても,AM廃止したら,このジングルはどうなるんでしょう。▲は自作のAMステレオチューナーで録音しました。ちゃんとステレオです[晴れ] やっぱステレオはええでよ~~。

津島から名古屋・栄行きのバスに乗り,下田バス停で降りればすぐ北です。iruchanは木田駅まで行って,そこから健康のため? 南に3kmほど歩きました。

ただ,この送信所,NHKの鍋田送信所と同じで,非常に写真が撮りにくいです。三方は私有地で囲まれ,周囲は民家が建て込んでいて,また,西側の蟹江川の堤防道路はどうもずいぶん前から除草しなくなり,通れなくなっているので,アクセス&写真撮影は結構大変でした。

と言う次第で,鉄塔基部の写真はかろうじて撮れる程度でした。近くの公園から望遠レンズで撮影しました。

七宝送信所1.jpg 頂冠部には容量環がないタイプです。

日本では大体,容量環がついていますが,AFN同様,容量環がないタイプでした。ステーはすぐに取付部で絶縁されています。

七宝送信所.jpg 局舎

入り口から撮影しました。塀の中の道路はきちんと舗装されていますが,取付道路は未舗装でした[雨]

七宝送信所3.jpg 鉄塔基部。

残念ながら,鉄塔基部はうまく写真が撮れません。近所の公園から望遠レンズで撮影しました。航空障害灯のオースチントランスが見えますね。

七宝送信所2.jpg 珍しく県道に看板があります。

一般市民が行くところではないし,納入業者向けなんでしょうけど,立派な看板です。普通は送信所って,軍事施設なので,場所を秘匿しておくべき,と思いますけど.....。

2014年に▲の局舎が建て替えられているので,その目印だったんじゃ,ないでしょうか。

七宝送信所5.jpg 蟹江川を渡る橋から。

この堤防上の道路が冬は草が枯れて歩けるようです。送信所へ行くのは冬なんですね......。

ここは,1960年4月,新設の東海ラジオ放送の送信所として開業しました。東海ラジオの設立の経緯は複雑で,いつもお世話になっている,河童さんに教えていただきました。河童さんは真空管ラジオをずっとつくっておられ,また,民放ラジオ草創期のQSLカードをお持ちで本当にすごいです。

中日新聞が親会社のCBCと違い,東海ラジオはもとは三重のKTB近畿東海放送(JOXF,860kc)と,岐阜のRTCラジオ東海(JOOF,1460kc)が合併してできた会社です。近畿東海放送の前身はRMCラジオ三重で,また,ラジオ東海は前身はGHK岐阜放送(現在の岐阜放送とは無関係)です。送信所はそれぞれ津と岐阜にありましたが,統合後,廃局になっています。この2社が合併して名古屋に進出し,七宝町に送信所を設けました。周波数は1490kHzでしたが,周波数が高いほど,エリアが狭くなる傾向があるため,1962年に1330kHzに変更が認められました。CBC同様,9kHz化に伴い,現在の1332kHzに変わっています。このとき,50kWに増力しています。

初期の民放ラジオ局はCBCみたいに送信所を途中で移転していることが多いので,ここは貴重です。

       ☆          ☆          ☆

これで名古屋近郊の送信所はすべて訪れることができました。iruchanは都会のラジオ,と言うと名古屋の放送局を聴くことが多いので,一度,行ってみたい,と思っていました。残念ながら,うちでは大阪の民放はほとんど入りません[雨]

帰りはまた名古屋駅からしらさぎで帰りました。お土産に大須ういろを買いました[晴れ]

しらさぎ発車標.jpg この発車表示が見られるのもあとわずかです。


2024年2月20日追記

両局からカードをいただきました[晴れ]

名古屋からだとサービスエリア内なので,ちょっと申し訳ないので,上京した折に聴取して報告させていただきました。

残念ながら,両局とも,日中は東京では聴けません。夕方から,朝,7時頃まで聴くことができます。久しぶりに名古屋の放送が聴けてよかったです。

いずれも20年ほど前に一度,カードをいただいていますが,全く違うデザインで,本当にありがとうございます。

CBCs.jpg CBC

おぅ~~,ここ行ったぞ,って感じですね......[晴れ]

右は瀬戸市の三国山FM放送所ですね。ワイドFMはここから送信しているみたいです。

東海ラジオs.jpg 東海ラジオ。名古屋城ペーパークラフトが笑えます[晴れ]

東海ラジオさんからは,ドラゴンズのクリアファイルと番組表をいただきました[晴れ]


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さよならAMラジオ~送信所めぐり~その3:NHK鍋田ラジオ放送所 [ラジオ]

2023年9月25日の日記

今日は名古屋の送信所を訪ねました。ここはNHKだから,2028年以降も存続すると思いますが,AMラジオの送信所はとても興味深いので行ってみます。

iruchanは名古屋で暮らしていたことが長いので,NHK名古屋やCBCや東海ラジオをよく聴いていました。それに,もともと北陸からだと大阪の放送局はNHK大阪以外,ほとんど入らないので,名古屋のこれらの放送局を聴くことが多かったです。

また,名古屋って,美味しいものがたくさんあって,とても好きです。一番好きなのはあんかけスパ!よくもまあ,パスタにピリ辛のソースかけて食べよう,なんて考えたものだ,と思いますが,ウィンナーやフライが載っていてボリュームもたっぷりで大好きです。きしめんも名古屋らしく,関東みたいに醤油ベースなのに,かつおだしがすごく効いていて,和洋折衷ならぬ,東西折衷で,とても好きです。

☆NHK鍋田送信所

鍋田ラジオ放送所.jpg

NHK名古屋の送信所です。1983年に木曽川河口の弥富町(現弥富市)に建設されました。1955年までは鍋田村で,今も町名として残っていますが,この送信所の所在地は隣りの上野町となっています。

このとき,名古屋市南部の桶狭間にあった送信所は廃止されています。

ちょっと失敗だったのは,この桶狭間送信所は2008年3月まで局舎が現存していたらしいので,見に行けばよかった,と思います。

桶狭間放送所(鳴海 '71.6.30)'.png 桶狭間放送所(1/25000 鳴海 '71.6)

一時期,鉄塔が4本もあった時代があるようです。今は戸建ての住宅地になっています。今昔マップ on the webから。1935年の地図にも載っていますが当時は鉄塔は2本のようです。

ここはNHK名古屋第1(729kHz)と,NHK名古屋第2(909kHz)の送信所で,空中線出力はそれぞれ50kWと10kWです。iruchanの住んでいる北陸からだとNHK第2は名古屋が一番,感度よく受信できますが,ノイズが多く,困っていましたけど,出力が10kWでは納得。夜だと秋田のNHK第2大潟ラジオ放送所の方がきれいに入りました。500kWですから当然かも。ただ,ここはNHK第2だけだから,廃止になる可能性があり,一度,見に行きたいと思います。

鍋田送信所へは 関急 弥富駅前から,弥富市営コミュニティバスきんちゃんバスがあります。このあたりは低地のため,金魚の養殖が盛んですから,きんちゃんです。

最初,googleさんに名古屋駅からのルートを教えてもらおうとしたら,「乗換案内ルートを計算できませんでした。」と答えるので焦りました.....[台風]

NHK鍋田送信所地図.png えっ!

なんとか,弥富市のホームページでコミュニティバスがあるのを知って行くことができました。ただ,残念ながら,ここへ行くには1日3本しかありませんのでご注意ください。

きんちゃん.jpg きんちゃんです[晴れ]

どう見てもおよげたいやきくんなんですけど......。古っ!

と思って調べたら,やはり同じデザイナーの作品でした。どおりで。

バス停はいこいの里で,ここから東に700mほど行ったところにあります。

ただ,せっかく苦労して行ってみたのですが........。

残念ながら,送信所の南側はうっそうとした森の中にあり,ほとんど写真を撮れる場所がありません。局舎へは広い敷地の中に道路がありますが,入り口からかなり遠く,しかも折れ曲がっているので,局舎の写真も撮れません。

鍋田ラジオ放送所1.jpg 頂冠部。容量環が取りつけられています。

鍋田ラジオ放送所3.jpg 

STL用のマイクロ波アンテナ。栄の放送センターを向いているのでせう。

鍋田ラジオ放送所4.jpg 看板

鍋田ラジオ放送所2.jpg なんとか局舎の写真が撮れました。

幸い,隣りに下水処理場(日光川下流浄化センター)があり,そこの駐車場越しに写真が撮れました。

周囲は伊勢湾台風で大被害を被ったところで,危険な場所のため,民家やレストランなどはなく,その代わりにゴミ焼却場やこの下水処理場や火葬場や霊園など,いわゆるNIMBYとよばれる迷惑施設のオンパレードでした。NIMBYとはNot in my backyardの略で,「オレの裏庭はダメ!」の意味です。AMの送信所もある意味,迷惑施設でしょう。

伊勢湾台風と言えば,この送信所も今後,地球温暖化に伴い,伊勢湾台風級の巨大台風の襲来が予想されますし,南海トラフ地震では名古屋は最高3.6mの津波が襲う,と予想されています。そこで,この送信所も予備の送信所として,刈谷市内に建設が進められている? はずですが詳しいことがわかりません。NHKの経営委員会の議案では来年,運用開始となっていますが,どうなっているのでしょう。どうも場所は依佐美送信所のすぐ近くのようで,つくづく通信に縁のある場所なんですね。

名四国道(23号)がすぐ近くを走っていますし,最近は伊勢湾岸道が開通し,インターもできたことから,IKEAを初めとした巨大な物流倉庫がずらりと並んでいます。1日中,トラックが出入りするので,これも迷惑施設ですね.....。

帰りは,コミュニティバスは本数が少ないし,弥富駅まで1時間以上かかるので,名古屋競馬場で少し遊んでから,そこの無料送迎バスで名駅へ出ました。

といって,ここから炎天下を名古屋競馬場まで3km近く歩きましたけど......[台風]

正直,この送信所は労多くして成果はほとんどありません.....[雨]

おまけにここへ行くにはとても時間がかかるので,レンタカーでも借りない限り,CBCの長島送信所や東海ラジオの七宝送信所とは一緒に回れません。▲のgoogleさんの地図でのところで,近くなんですけどね。周辺は名古屋港南部の埋め立て地や木曽川河口の中州で,人があまり住んでいない場所のため,公共交通はとても不便です。

名古屋競馬第3R1 '23.9.25.jpg おウマさんがかわいかった.....。

なぜか,ヒマな文系女子大生となった娘が競馬にはまったらしく,そんな子に育てた覚えはない! 結構,かわいいよ,と言うので見てみました。なるほど,結構,見ていると楽しいですね。

なお,どういうわけか,名古屋競馬場の開催日は平日のみなので,注意が必要です。

帰りに大須ういろのういろうと,カエルまんじゅうを買って帰りました。どちらも子供らの好物です。東京や博多がひよこまんじゅうなら名古屋はカエルまんじゅうだぎゃぁ~[晴れ]

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さよならAMラジオ~送信所めぐり~その2:NHK彦根ラジオ中継所,KBS京都・滋賀放送局~ [ラジオ]

2023年10月1日の日記

NHK彦根.jpg 美しい夜景です。

ちょっと,iruchanは最近は鉄道なんか止めて鉄塔にはまっています。

だって~,iruchanが追いかけてきた国鉄型車両はあらかたなくなってしまい,もはや追いかけるものがない,という状況になっちゃいましたからね.......。国鉄は遠くなってしまいました。今どきの若い人に国有鉄道なんて言ったって,ちんぷんかんぷんなんでしょうね......[台風]

なによりJRになって,各社,個性を出してきて,まったく統一したデザインじゃなくなった,と言うこともありますが,個性が出始めた割に,大手私鉄のように確固たる個性があるわけでもなく,ひとつの会社でもバラバラなデザインで,一貫した個性を確立するまではまだまだ長い年月がかかりそう....。挙げ句の果て,某デザイナーの魔の手[台風]にかかってしまった会社もあって,正直,支離滅裂,奇妙奇天烈な車両ばかりでまったく興味ありません。

また,国鉄型車両だとマニアの間で共通の話題にできましたけど,それがなくなってしまった,と言うのも面白くない理由。やはり鉄道車両というものは普遍的で,かつ虚飾を排した合理的なものでなくてはならない,と思います。

さて,AMラジオもとうとう,民間放送がほとんど撤退することが決まり,2028年以降はNHK第一のみ,と言うことになりそうです。TVもそうですけど,コマーシャルに頼る民間放送のビジネスが大きな曲がり角を迎えていることは事実。視聴者の方も,今どき決まった時刻に決められたものを見る,と言うのは面倒だし,コマーシャルを見るのもバカバカしいし,ドラマすらも展開の早いものでないと時間のムダ,と言う感覚なんじゃないでしょうか。

それにiruchanはいつも思うのですが,今,民放のTV番組って,見る価値あるのか,と。タレントを何人か集めてYou Tubeの動画を見て笑いこけてる,なんて番組ばかりですけど,誰が見るんでしょう.....[雨]

さらに,ネット広告の方がTV CMより収入が大きくなってしまった,と言う現状では,より収入の少ないラジオは斬り捨てざるを得ない,と言う状況なのでしょう。特にAMラジオは設備に膨大な費用がかかるので,余計,廃止圧力がかかってしまうのだ,と思います。特に,TVとの兼営局はともかく,AMだけの放送局は死活問題でしょう。

とはいえ,災害に強いラジオを簡単に捨ててしまっていいものか,と思います。電池だけで相当長時間,聴くことのできるラジオは非常に重要だとiruchanは思います。

さて,AMラジオ廃止のひとつの理由でもある,送信塔の姿を記録に残しておきたい,と思いました。これから,見かけたらマメに写真を撮っておこう,と思います。

今日は前回のTBS,AFNに引き続いて,子供の頃からよく知っている,琵琶湖岸の送信所を再び見に行きたい,と思います。

☆NHKラジオ彦根中継所,KBS滋賀放送局

彦根市南部の琵琶湖岸に赤い送信塔が建っています。

たまたま北陸の家から,琵琶湖に水泳に連れてきてくれたのか,鮎釣りに連れてきてくれたのか,分かりませんけど,子供の頃,何の塔か分からなくて,父に「あれはなに?」って聞いた記憶があります。

TVや電話のマイクロ波中継アンテナだとパラボラアンテナがついていたりして,すぐにアンテナ,と分かりますが,AMのアンテナは単なる棒? で何なのか,さっぱり分かりませんよね.....[雨]

高校の物理で,電気力線とか電界強度とか,習わないとどうなっているのか,さっぱり訳が分からない,と言う代物だと思います。

でも,再び見に行ってみて,夕日に照らされた送信塔はとてもきれいでした....。

NHK彦根1.jpg 琵琶湖の夕日がきれいでした。

ここは,NHK大津第一(945kHz)とKBS滋賀(1215kHz)を1kWで送信しています。KBSと言っても京都放送で,韓国 ではありません。日本の民放のパイオニアのひとつです。また,NHKはTBS(954kHz)とすぐ近くなので,このあたりで夜,TBSが聴けない理由になっています。ニッポン放送は割によく聞こえて,中坊の頃,オールナイトニッポンをたまに聴きました。

NHK彦根2.jpg 局舎

NHK彦根, KBS滋賀.jpg NHKとKBSの共用施設です。

てっぺんには容量環を備え,高さは108mと低めです。鉄塔高さは1/2波長にするのが効率がよいので,そこから考えると,KBSにあわせてあるようです。民放の中継局だったらこの出力だと半分の高さ(1/4λ)でもいいはずですが,NHKと共用なので,立派な施設です。

NHK彦根9.jpg 容量環。直径8mもあるそうです。

また,どういうわけか,普通,ステーのアンカー部分も含め,放送局の土地ですが,ここは局舎のみのようで,局舎周辺だけフェンスで囲まれていて,送信設備を近くで詳しく観察することができました。

NHK彦根5.jpg オースチントランスです。
 
60m以上の高さの構造物には設置を義務づけられている航空障害灯用の電源を供給するトランスです。内部はトロイダルコアになっているそうです。鉄塔には高圧がかかっているので,絶縁しつつ60Hzの低圧電源を供給するのが目的です。

周囲は田んぼ。すぐ東にある曽根沼は琵琶湖の内湖で,米原駅西側の入江内湖同様,戦後干拓された農地です。

このあたりもそうかな~という気がしますが,田んぼなので,接地もよく,アンテナの性能としてはとてもよいでしょう。

NHK彦根3.jpg 普通はかういふ看板が建つてゐます。

KBS滋賀.jpg 残念ながらこの看板は5年後撤去されるでせう。

NHK彦根7.jpg STL回線用のアンテナ。荒神山を向いています。

湖岸道路をはさんで1.6kmほど南東の荒神山(こうじんやま)山頂にTV用の中継局があります。そこにSTLのアンテナもあるのでしょう。スタジオは大津にあるので,そこからSTLで荒神山に飛ばして,そこからさらにAMはここに飛んでいるようです。

明治政府が意地悪[台風]して,滋賀県の県庁所在地は大津になってしまい,放送としては県中央部の彦根にある方が電波の伝播状況もよいようです。そういや,福島だって,会津若松の方が中央だし,iruchanの北陸にある金沢もさすがに,一応,県庁所在地として残りましたけど,県の名前は石川県なんて,隣の町の名前を冠しています。

NHK彦根6.jpg 南側はキャベツ畑でした.....[晴れ]

たまたま,農作業に見えたおばさんと話をしましたが,いつもだと中継局の周りに彼岸花が咲いて,きれいだそうですが,今年はまだ咲いていないのでヘン,とのことでした。おばさんもラジオ深夜便を聴いているそうです。また,年に4回,中継局の周りの草刈りをするそうです。どうも大変ありがとうございます。

NHK彦根8.jpg 左は月です。星がきれいでした[ぴかぴか(新しい)]

  60秒も露出しました......。もう,真っ暗なんですけどね。

トンビがたくさん飛んでいて,iruchanは子供の頃,トンビが魚を捕まえるのをよく見ましたが,琵琶湖の魚を狙っているようです。さすがに暗くなってきて,ねぐらに帰らんとまずいのでは......と思ったら,容量環に留まったやつがいて,まさか,そこがねぐらか,と思ったら,そのうち山の方に飛んでいきました。

周囲は畑か田んぼで,琵琶湖を背景に美しい写真の撮れる場所でした。雪が降ったらまた行ってみたいです。


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さよならAMラジオ~送信所めぐり~その1:NHK新開放送所,TBS戸田送信所,AFN和光送信所 [ラジオ]

2023年9月18日の日記

TBS戸田送信所9.jpg TBS戸田送信所('23.9.16撮影)

とうとう,2019年3月,民放連は2028年にAM放送を終了し,FMに移行することを表明しました。2028年以降,中波帯にはNHK第1と,北海道放送(HBC),札幌テレビ放送(STV),秋田放送(ABS)の3局が残るだけになりそうです。これらの局はエリアが広く,また,人口も少ないところが多いので,現状のAM放送を継続する方がよい,との判断に基づくもの,と思います。

一方のNHKは,と言うと,2021年にAM一波とすることが経営方針に盛り込まれており,その後,音沙汰ないのですが,FMで基礎英語やっていたりするとこ見ると,やはりAMは一波にする予定のようです。

う~~ん,ラジオ大好きなiruchanとしては,非常に残念なのですが.....。まあ,音声放送はデジタル化することに決めた欧米と違って,FMは残すことになったので,その意味ではマシなのかもしれませんが.....。

FMのデジタル化は意味ないでしょう。別にradikoやストリーミングで聴けばいいわけですし.....。

と言う次第で,iruchanは今のうちにAMの送信所や送信塔の写真を撮っておこう,と思いました。

そう,なぜか,iruchanはAMラジオの送信塔に惹かれるんですよね......。

天高く,1本だけそびえていて,電波だけとは限らない何かが空に吸い込まれていき,世界に伝わっていく.....というイメージがするからなのでしょうか。

それとも,東京タワーや名古屋や札幌のテレビ塔のように,TVだとかっこうよいタワーが建っていて,それこそスターのような存在ですけど,AMの送信塔は地味で,人里離れた人家もまばらなところに建っていて,それこそ,地元の人でもよく知らない,と言うような存在に惹かれるのか,という気もします。ラジオ局の送信塔って,東京タワーみたいに観光名所になるわけでなし,展望台どころか,お店はもちろん,そもそも無人で,中には普通は誰もいないという設備のところばかりです。

iruchanの生まれたところにも10kmほど離れたところに1本,建っていて,子供の頃,父に「あれはなに」って聞いた記憶がありますけど,その頃から興味があったのかもしれません。父は「放送局」と答えたように思います。

ということもあり,久しぶりに上京したので,レンタル自転車借りて回ってきました。

☆NHK新開放送所

新開送信所.jpg 朝は曇っていて[曇り],あとで晴れるようです[晴れ]

ずっと,しんかい放送所と思っていましたが,しびらきと読むそうです。さいたま市桜区にあります。駅は武蔵野線・西浦和駅が最寄り駅です。

NHK東京第1(594kHz)およびNHK東京第2(693kHz)の予備送信所です。本送信所は久喜市にある菖蒲久喜ラジオ放送所(300kW)で,そこが核攻撃で破壊された場合の緊急設備となっています。ただ,予備としても10kWじゃ出力小さすぎ[曇り]。その割に立派な局舎には驚きます。普通は掘っ立て小屋みたいなのが建っているだけです。
 
NHKなのでここが消えることはないはずですが,一度も行ったことがないので見学させていただきます。
 
よく,第2放送が「減力放送のため,聞きにくい場合があります」と放送している場合は200kWに減力されているのですが,久喜で送信装置を切り替えて放送しているだけで,ここが使われることは試験以外はほとんどないだろう,と思うのですけどね。
 
西浦和駅から1.6kmで,比較的,駅から近いのですが,歩くと結構しんどいです。
 
新開送信所6.jpg 局舎と鉄塔取付部
中波の送信塔は支線式基部絶縁型アンテナ多く,地面に近いところに基部碍子があります。ここから上は高圧がかかっているので危険です。
 
頂冠部には日本では容量環(capacity ring)がついていることが多く,対地容量を増やして共振周波数を下げることで鉄塔高を下げる効果があります。ちなみに,この鉄塔の高さは130mのようです。
 
新開送信所1.jpg 容量環と呼ばれる搭頂部
 
 
新開送信所5.jpg 途中のSTLアンテナ
 
  
放送音声を受信するSTLのパラボラアンテナです。ひとつは渋谷を向いているはずですし,もうひとつは久喜を向いてんのか,と思ったのですが,NHK堂平無線中継所を向いているそうです。
 
新開送信所4.jpg ステーのアンカー部
 
新開送信所3.jpg 立派な碍子
 
たぶん,向かい合った小さな電極は放電ギャップですね。
 
ステーから電波が放射されるとよくないので,鉄塔からすぐのところで絶縁されています。
 
ただ,それにしてもここ,本来あるべきものがない[台風]
 
どこにもNHKラジオの送信所であることを示す看板はありません。それに,驚いたのですが,ほかの方のWEBを見ると,局舎の壁に大きく,例の玉子をかたどったNHKのロゴが設置してあるのですが,iruchanが見たところ,撤去されているようです。
 
普通はNHKに限らず,どこの送信所の局舎も放送局のロゴを壁に設置してあるはずです。
 
これじゃ,何の設備かはまったく不明......[台風]
 
いったい,撤去した,というのは,どういう理由によるものなのか.....。
 
NHKのプロパティであることを隠しておく必要があるのか......。
 
 
新開送信所2.jpg なんとも威圧的な看板......[台風]
 
  皆様のNHKなんじゃあ,ないんですか。
 
新開送信所7.jpg NHKのロゴ看板は撤去されています。
  
正面の局舎の壁にNHKのロゴ看板があったようなのですが.....。拡大して見たら,撤去した跡がありました。
 
一応,浸水に備えて高床式になった局舎の入り口ドアの横に日本放送協会 新開ラジオ放送所という銘板があります。
 
中波の送信所はアンテナの他にアースも重要で,接地抵抗を少なくするため,河川敷や海沿いにあることが多いのですが,ここも荒川河川敷にあり,国有地を借りているのだと思います。
 
それにしてもここは堤防の内側。別に核攻撃じゃなくても,荒川が増水すれば浸水して送信不能.....になるんじゃないでしょうか。大丈夫ですか,NHKさん。
 
アナログTVやBSアンテナもあり,中で生活? できるようになっているようです。たぶん,スタジオもあるのでしょう。
 
ますます,某国営放送の謀略施設......という気がします。中国語に堪能な美人アナウンサー使って対中謀略放送をしているんじゃないでしょうか。東京ローズ かよ。
 
まあ,放送設備と言えば,戦前なら完全に機密施設で,カメラなんて持ってうろついていようものなら憲兵につかまってスパイ容疑で尋問される,と言うところでしょうし,電波は武器とされ,対外謀略のためのプロパガンダをしていましたよね。
 
iruchanが子供の頃も,モスクワ放送や北京放送が中波帯でも強力に受信できましたし,今でも北朝鮮の朝鮮の声放送なんかありますよね。
 
昔はモスクワ放送や北京放送なんか,散々,日本やアメリカの悪口をずっと話していて,非常に気持ち悪かったですけど,よく覚えていますけど,ここも普段は使われていないし,そういう謀略放送をしているのか......なんて勘ぐっちゃいました......[台風]
 
実際,無人なんですが,機器は稼働しているようで,空調装置の轟音が外まで聞こえていました。
 
☆NHKさいたまFM & TV埼玉 平野原送信所
  
平野原送信所.jpg う~~~~ん[台風]
 
新開放送所にすぐ近くに,もうひとつ,タワーが建っています。すぐに分かると思います。
 
こちらはFM用で,1970年,NHK埼玉放送局のFM送信用として建てられ,1979年にはTV埼玉,1988年にはFM埼玉(Nack 5)が利用するようになりました。FM埼玉は1998年には本送信所は移転し,現在,ここは予備となっているようです。局舎もあったようですが,現在は撤去されています。
 
新開放送所から300mくらいと近いので,一緒に見学してきました。
 
ただ,申し訳ないのですけど,笑っちゃうくらいかっこ悪い....[台風]
 
東京タワーや重要文化財の名古屋のテレビ塔を設計した,搭博士と呼ばれる内藤多仲ならこんなデザインにはしなかっただろう,と思います。
 
もう,まるでウルトラセブンかなにか,SF映画,それも完全にB級映画にでてきそうなダサいデザイン[台風]
 
もう少しなんとかできなかったのか.....。
 
ちなみに内藤多仲はこの塔が着工した年に亡くなっているようです。
 
平野原送信所3.jpg スーパーターンスタイル型アンテナ
 
一番上はTV埼玉の送信アンテナで双ループアンテナ,真ん中はVHF帯に特有のスーパーターンスタイル型アンテナと思いますが,複雑に絡んでいて,何が何だかよくわかりません。よく見るとバタフライ型のようなんですけどね。東京タワーなんかに張り付いているアンテナはバットタイプウィングアンテナと言って,wikiを見ると,なんとRCAの開発のようです。
 
平野原送信所1.jpg 手前にTVS,奥にNHKの局舎があります。
 

平野原送信所2.jpg 普通はかういふ看板が建つてゐるものだと思ひます。

☆TBS戸田送信所

TBS戸田送信所.jpg 立派な銘板。

普通はかういふ銘板があったり,無人局でも放送局の看板が建つてゐます。

 

TBS戸田送信所1.jpg 立派な局舎

民放の場合,本局が核攻撃で破壊されても,放送が継続できるよう,送信所にもスタジオを設け,核戦争が始まっても放送ができるやうになってゐます。う~~ん,やっぱ放送局は軍用設備だ~~~。

とはいえ,近くの電柱に津波浸水高5mとありました。鉄塔の基部が浸水しちゃいますけど,TBSさん,大丈夫ですか~~[曇り]

実際,ここは常駐している人がいるようです。行ったときに荷物が配送されてきていました。

TBS戸田送信所3'.jpg 鉄塔は2本あります。

新開放送所から7kmほどのところにあります。割に近いのですけれど,地下鉄や公共交通機関はバスだけなので,自転車の方が便利です。とはいえ,至るところに高速道路があり,交通量も多く,自転車で移動するのは危険だし,しんどいです。本当に日本は自動車社会なのだな~と実感させられます。かういふ社会にしちやいけなかったのに.....。

こちらの方は住宅街のど真ん中にあり,周囲が田んぼだった新開送信所とは趣が異なります。鉄塔もAMのはすごく高いので,よく目立つのですが,マンションの影に隠れて近くまで行かないと気がつかない,と思います。

1951年9月1日に新日本放送(毎日放送)および中部日本放送(CBC)が開局したのを皮切りに民放が誕生します。どちらが第1号か,と言うと一般には新日本放送と言われますが,CBCの10年史 "東海の虹" を読むと,朝6時半に放送を開始していて,毎日放送は正午だったようなので,CBCが第1号です。"民間放送30年史" も同様の記述があるので,間違いないと思います。

TBSは12月25日に放送を開始し,民間放送の先駆けのひとつです。同じ日に京都放送(KBS京都)も開局しています。

戦前は日本放送協会だけだったのですが,若い人は知らない人が多いんですね。つい最近も,某掲示板で「TBSって戦前はなかったの」なんて書き込みがありました......[台風] 

情報統制のため,戦前は日本放送協会だけで,政府のプロパガンダを担っていました。戦後,放送の民主化を目指して,GHQが民間放送の設立を促した,と言われることが多いですが,実際は,NHKの民主化を進めただけでお茶を濁し,一方で純粋な民間放送は占領政策の妨げになるため,設立を遅らせた,と言うのが実態のようです。実際,冷戦下において,ソ連や中共の影響で日本の左傾化を恐れた,というのが実際のところでしょう。

送信塔は戸田競艇場の北側にあります。やはりAMの送信所のため,接地面積を稼ぐため,広いグランドが必要で,広い草っ原に2つ,鉄塔が建っています。1本は予備とのことですが,どう考えても,構造が違うし,トラス構造で,古そうで,おそらく,1951年の開局時のものなんではないでしょうか。昔は大きな鋼管柱が作れず,こういう板材を組み合わせたトラス構造のものが多かった,と思います。

本鉄塔は高さ150mで,一般に送信用鉄塔は1/2波長で作るのが効率がよいので,TBSが954kHzとすると波長は318mなので計算が合います。とはいえ,これだけの高さの鉄塔は高コストなので,小出力の地方局だと1/4波長のところが多く,ここも予備の鉄塔は57mらしいので,これもほぼ1/4波長になっています。

と言う次第で,やはりこの予備鉄塔は開局時の鉄塔で,1971年11月に50kWから100kWに増力したときにお役御免となり,その後は予備となったんじゃ,ないでしょうか。違っていたらごめんなさい。

TBS戸田送信所2.jpg さすがに民間施設なので,警告も温和です[晴れ]

TBS戸田送信所5.jpg 本鉄塔基部。

周囲に放射状に接地線が埋設してありますので,AMの送信所は広大な敷地が必要です。 

TBS戸田送信所4.jpg 予備鉄塔基部。

やはり古めかしい構造です。もし,予備として同じ時期に建てたのなら鋼管鉄塔でしょうし,基部の構造も同じでしょう。



TBS戸田送信所8.jpg本鉄塔頂部。

TBS戸田送信所7.jpg 予備鉄塔頂部

 よく見ると容量環も構造が異なります。

 


TBS戸田送信所6'.jpg チョークコイルつき碍子。

 

新開放送所でも使われていましたが,碍子にパラにチョークコイルが取りつけられています。高周波電流がステーを伝わって地面に流れないようにするためと,雷電流を逃がすためです。

残念ながら,ここは2028年以降,取り壊されてマンションでも建つんじゃないでしょうか......。

☆戸田送信所の変遷

TBSの最初からの送信所ですが,同じ場所で何度も鉄塔は移転しているようです。地図は今昔マップon the webから拝借しました。

戸田送信所(赤羽 '47.7).png 1947年7月

           なにもな~~い。

けど,戸田ボートレース場はこの頃からあったのですね。戸田市は市制前で,埼玉県北足立郡戸田町です。 市制施行は1966年です。

戸田送信所(赤羽 '67.10).png 1967年10月

残念ながら,肝心の開局当初の1950年代の地図がないのですが,ほぼ建設当初と思います。鉄塔の南に小さな局舎が見えます。

戸田送信所(赤羽 '78.1).png 1978年1月

鉄塔が南に1ブロック移動し,北側に新局舎ができています。この鉄塔は時期から見て,100kW用ですね。

戸田送信所(赤羽 '87.4).png 1987年4月

再度,鉄塔が移動します。新たに建設されたのか,移動したのか,不明ですけど,現在の鉄塔だと思います。局舎はもとのままです。東北新幹線&埼京線が開業しました。田んぼ⇒工場⇒宅地と周囲の環境が変わっていきます。

戸田送信所(赤羽 '94.9).png 1994年9月

予備の鉄塔が建設されました。開局当初の鉄塔ではないか,と思うのですが,増力時から13年経っていますし,保管していたのを再度,建てたようにも思えないですけど......。でも,今の予備鉄塔はちょっと古そうですよね。

戸田送信所(赤羽 現在).png 現在。

現在の局舎が建設されました。旧局舎の部分の土地は売却され,現在は別の建物が建っています。 

☆AFN和光送信所

こっちはマジで軍事設備です.......[台風]

カメラで写真撮っていて,米兵に撃たれても,MPに拘束されて極東軍事裁判所で「人道に対する罪」で裁かれてもiruchanは関与しません.....。

AFN.jpg 鉄塔は2本あります。

  驚いたことに,この鉄塔は2006年に建て替えられているようです。

TBSの戸田送信所のように,1本が予備,と言うわけではなくて,2本同時に使って指向性を持たせています。特に神奈川方面へ飛ぶようにしているらしいです。

国内では他にもニッポン放送の木更津送信所やラジオ関西の淡路送信所が指向性を持たせるため,鉄塔が2本あります。この場合,両方の鉄塔に送信機をつなぐ双給電方式と,片方にはつながない単給電方式があります。おそらく,どれも双給電方式だと思いますが,確信はありません。

1945年,日本が敗戦すると米軍が日本に進駐し,各地に散在した米兵の慰問,情報伝達のため,英語の放送局が各地にできました。Far East Network: FENですね。

現在はAMは岩国,三沢,佐世保,那覇にあります。終戦直後は各地にたくさんありました。

1997年にAmerican Forces Networkとなり,AFNと呼ばれています。

iruchanは英語の仕事が多いんですけど,ここはほとんど聴きません。なによりあまりに話すのが早くてとても聞き取れないのと,ロックばかり流していて,あまりに文化的にアメリカンでとてもついて行けません。

同僚が,「これからFEN聴く」なんて言っていましたけど,あんた,ジジイ!!

戸田送信所から6kmほどなんですけど.....しんどかった[曇り]

川や首都高があるし,その上,地形も丘陵地帯で,結構,和光市内ってアップダウンが激しいんですね.....。ここへ行くならレンタカーの方がよさそうです。

AFN3.jpg 警告文

周囲の柵は高いし,非常に頑丈です。上の方は有刺鉄線です。中は地雷原かも......[台風]

また,日本の送信所は草刈りこそしてありますけど,芝生じゃありません。やっぱ,アメリカだな~~。

AFN2.jpg 鉄塔頂部

日本の鉄塔のように,容量環はありません。容量環があると,高さを稼げる(鉄塔が低くてもよい)のですが,さすがアメリカは容量環なしでも大丈夫なようです。といって,建て替え費用は日本が出したんじゃ,ないでしょうか。

旧鉄塔は,皆さんの写真を見るとTBSの予備鉄塔同様,トラス式のようです。

残念ながら,局舎を見てみたい,と思いましたが,どういうわけか,気がつきませんでした。道路に沿って,送信塔の南側にあるようですが,なぜか見落としちゃいました。理化学研究所の敷地内にあるのか,と思ったのですけど,そもそも,なんでこんなところに理研があるのか......。

理研って,戦前の日本の科学研究の最先端を担っていました。今,この組織がどういう研究をやっていて,どういう収益を得ているのか,知っている人は少ないでしょう。ひょっとして,今も政府から委託を受けて ニ号研究 をやっているのかも......[台風]

C12 85.jpg C12 85

送信所となりの和光市第四小学校で保存されているC12 85。iruchanはすらっと細長い煙突のC12が好きなので,写真を撮りました。

でもこの機関車,前照灯と煙突の間にヘンなものが.....なんと,ベルがついています。

もとは野牛などを追い払う目的で,米国製蒸機ばかりでなく,機関車には取りつけられています。踏切や構内走行時などに鳴らされますね。でも,なんでC12についているのか......。

和光市にはFENの放送局ばかりじゃなく,南側は米陸軍第8軍団の基地である,キャンプ・ドレイク(朝霞キャンプ)がありましたので,米兵のご機嫌を取るためベルを取りつけたのか,と思いましたが,どうも晩年は大宮工場の入換機として活躍していたらしく,構内走行時の警報として使用されていたようです。

さて,ここから16kmほど先,川口市の文化放送送信所を訪ねたかったのですが,あまりに暑いし,車も多く,アップダウンも激しいのでギブアップ!

また,次回,です。

         ☆          ☆          ☆

☆おまけ~名寄ラジオ中継放送所~

名寄ラジオ中継放送所'.jpg となりのパラボラはSTLですね。

以前,北海道のラッセル車を撮りに行ったときに,道道252号線を走っていたら,名寄の中継施設があったので,写真を撮っておきました。このとき,今はなき,北星駅へ行く途中でした。

ここから北にはラジオ放送の送信所は稚内の他,オホーツク海側の中頓別,日本海側の遠別にあるだけです。

NHK旭川第1(837kHz),第2(1125kHz)の中継放送所です。いずれも出力は1kWです。

STVラジオ(1197kHz)はTVと共用で,名寄市砺波に,北海道放送(1494kHz)は名寄市緑丘にあります。今度,ラッセルを撮りに行ったら見に行こう,と思います。

名寄ラジオ中継放送所2'.jpg 

   普通,かういふ風に,NHKのロゴがあります。

名寄ラジオ中継放送所1'.jpg 立派な銘板

名寄ラジオ中継放送所3.jpg 容量環です。

       2020年2月2日撮影


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ソニーSRF-A300のAM広帯域化&ワイドFM対応改造ほか~その2:ワイドFM対応&スイッチ不良,AMステレオインジケータ取付~ [ラジオ]

2023年9月9日の日記

先週に引き続いて,ソニーが1993年に発売した,AMステレオ対応SRF-A300の修理&改造をします。

☆ワイドFM対応工事

FMは従来どおり,76~90MHzで,ワイドFMには対応していませんので,FMバンドを再調整します。

すでにたくさんの方がやっておられるようですが,iruchanはまだやっていませんでした。なお,本調整はテストオシレータや周波数カウンタなど,測定器が必要ですし,後戻りできない部分もあるので,あまりお勧めしません。

FMラジオはスーパーヘテロダインなので,局発の周波数をラジオの受信周波数よりIF分(10.7MHz)だけ低く発振させます。AMの場合はIF(450kHz)分高く発振させますし,海外のFMラジオも同様に高い方にしますが,日本ではFMバンドのすぐ上にTVの放送帯があったため,下側ヘテロダインとなっています。

そのため,76~95MHzを受信するためには,65.3MHz~84.3MHzで発振させればよい,と言うことになります。

もっとも,ギリギリだとすべての局が受信できるとは限らないので,多少,幅を持たせてありますし,実際,上限が90MHzのFMラジオでも,TBS(90.5MHz)くらいは受信できますね~。TBSはこれを狙ったのか......。

詳しくはこちらの記事もご参考になさってください。

さて,FMのバンド変更の場合,バリコンのトリマと,発振コイルを調整する,と言うことになります。トリマが上限,コイルが下限周波数を決めています。また,トリマコンデンサはスーパーの場合,2つありますので,あくまでも局発コイルに並列に入っているトリマをいじりますので,ご注意ください。

SRF-A300バリコン周辺.jpg 調整個所。コイルLOSCとトリマCOSCです。

の位置に黒いマジックの印をつけておきました。これが元の位置です。かなりずれていることが分かると思います。

基本的には,

 ①トリマの容量を減らす‥‥‥‥羽根の重なり具合を小さくする。

 ②コイルのインダクタンスを増やす‥‥‥コイルを詰める

という方向で調整します。コイルはFMの場合,空芯コイルであることが多く,一度,調整すると測定器がないと,後戻りはできなくなりますので,注意が必要です。

FMフロントエンド(CX20111).pngFMフロントエンド

バンド調整には,局発のバリコンのトリマと発振コイルをいじります。入力側(RFやANTの記号がある)はいじりません。日本ではFMでは不要電波輻射防止のため,高周波増幅(RF)がついています。RFコイルやトリマはいじりませんのでくれぐれも間違えてこちらをいじらないようにしてください。

さて,バンド調整には......

FMバンドワイドFM対応.pngバンド変更の状況

スーパーヘテロダインのラジオでは,トリマで fが決まり,コイルで fが決まります。最初に,トリマで fを決めると,fが上がってしまうので,コイルを調整して下げる⇒再度,トリマを調整⇒コイルを調整⇒.....を繰り返します。

この調整を何度も繰り返して,76MHzと95MHzがちゃんと受信できるようにします。

なんですが.......。

今回,驚いたことに,①で95MHzを受信できるようにしただけで,おしまい,にしちゃいました。

というのも,ちゃんとダイヤルの下の方で76MHzがほぼ元の位置で受信できましたので....[晴れ]

おそらく,もとのソニーの調整担当の方が,▲の←→のように,75.5MHzくらいまで受信できるように調整していたため,と思います。

最初に書きましたとおり,ある程度,局発の発振周波数は幅を広げておかないとギリギリの局は受信できないためで,下限が少し,余裕があったのだ,と思います。

と言う次第で,あえてコイルは調整せず,このまま,としました[晴れ]

iruchanは完成品を再調整する場合はできるだけ,故障したり,劣化して不具合がある場合を除き,オリジナルの状態をいじらないようにしています。特に,fはコイルをいじらないといけないので,こちらをいじっちゃうと元に戻せませんのでできるだけいじらない方が無難です。

これで無事にワイドFMが聴けるようになりました。

なお,当然ですけど,▲の図からもおわかりの通り,もとのダイヤルの90MHzのところで95MHzが受信できるようにするので,指針はダイヤルの下の方にずれちゃいますので,ご注意ください。これはダイヤルを作り直さない限り,直せません。

☆電源SWの不良

次に,電源を切っても,かすかに音が出ているという怪談 を退治したい,と思います。これ,よくある現象ですけど,気持ち悪い[台風]ですよね~~。

おそらく,内部の端子が汚れていると思います。

一番よいのはSWを交換しちゃう,と言うのがいいですが,問題は同じスライドSWを入手できるかどうか不明です。6Pの双極双投のタイプで,ごくありふれたSWですけど,まったく同じサイズ,と言うのを見つけるのは大変そうです。

電源SW.jpg このSWです。

と言う次第で,カバーを外して接点を磨くことにしました。

スライドSW'.jpg うえっ~~[雨]

やっぱり,接点が黒く汚れていて,アルコールで拭いてきれいにし,タミヤの導電グリスを塗っておきました。

簡単には接点復活材を使えばいいのでしょうけど......うっかり,バリコンにかかったりしたら大変ですので,使わないようにしています。言うまでもないですが,接点復活材は導体ですので,これをバリコンにかけるとラジオが使用不能になりますので,ご注意ください。

これで,無事にスキッと電源がoffできるようになりました[晴れ] 

夜中にボソボソとラジオがしゃべってる,という 怪談  はまっぴらですので......[曇り]

☆AMステレオインジケータ

SRF-A300-7'.jpg

   苦労してここにステレオインジケータLEDをつけたのですが......。

ソニーのAMステレオラジオは,ステレオ受信時にLEDが点灯する,という仕組みになっていません。せっかく,AMもステレオになった,というのに,ちょっと,これは残念。AMステレオが普及しなかった理由のひとつかも.....[雨]

前回,本機のAMステレオデコーダは,CXA1657MCXA1758である,と書きました。Motorolaや東芝と違って,ソニーのAMステレオデコーダは2つになっているのが特徴で,AMステレオラジオ第1号のSRF-A100でもCX857CXA1017Mの組み合わせになっています。前者がPLL同期検波用で,後者がステレオマトリクスとなっています。

そう,ソニーのAMステレオICはモノラル時でも同期検波をするようになっていて,Motorolaなど他社のAMステレオICと異なります。だから,モノラル受信時でもひずみや雑音の少ない良好な音質となっているはずです。

実際,Motorolaや東芝のICはL+Rは通常どおり,エンベロープ検波をして出力しており,L-Rの差信号はPLLで同期検波して出力しています。

やはりエンベロープ検波ではひずみが多いし,何より同期検波じゃないので,雑音や混信に弱くなります。

ソニーのAMステレオラジオは同期検波しているので,モノラルの局を受信するときでも音がよい,と思います。

さて,ステレオインジケータですが,Motorolaや東芝のAMステレオデコード用のICはステレオインジケータがついています。

ソニーのも同じで,インジケータ機能があるだろう,と思っていました。

ただ,確認しようにも,残念ながら,CXA1657MCXA1758の規格表が入手できません。

困ったな....[雨]

ただ,米国向けのSRF-42が同じICの組み合わせで,サービスマニュアルを入手することができました[晴れ]

すると......

SRF-42 AM stereo decoder.jpg

         SRF-42のAMステレオデコーダ回路

CXA1657M.png

   同じサービスマニュアル中のCXA1657Mのブロック図

CXA1657Mに,ST INDというピンがあるではないですか!。ラッキー[晴れ]

ところが,このピン,どうもステレオインジケータではないようです[雨]

SRF-A300では,この#12のピンは基板を確認したところ,GNDに接続されています。

と言うことはオープンコレクタか,と思います。これだったら,このオープンコレクタがonのときに外部から電流を吸い込むので,LEDを接続できるはずですし,使わないときはGNDに接続しても,ICは故障しないはずです。

と考えて,実際に配線してみたのですが.....。

ダメでした[晴れ]

確かに,バンド切替SWをAMにし,モードをstereoポジションにしてみると,このLEDが点灯するのですが,点きっぱなし[雨]

FMにしたり,モードをmonoにすると消えるので,配線は間違っていません。

残念ながら,このCXA1657MというICのST INDという#12ピンは,"AMステレオを受信する準備ができました" と言うだけのピンのようです.....[雨]

はつかりがっかり。

SRF-42のCXA1758には,#4ピンにINDというピンがありますが,残念ながら,これを利用するのもダメなようです。

と言うのも,CXA1758は同期検波用のICで,このピンは内部のPLLが動作し,VCOがロックしたことを示すインジケータのようで,ラジオとしては,ステレオであろうが,モノであろうが,局に同調してVCOがロックすると点灯するので,ステレオインジケータにはならない,と思います。

残念ながら,結論として,ソニーのデコードICにはその機能はないようです。だから,ソニーのAMステレオラジオにはインジケータがないのです。

残念ながら,ステレオインジケータは失敗でした.....[台風]

なんとか,リベンジしたい,と思います。


2023年9月14日追記

今日,とうとう阪神タイガース優勝しました[晴れ][晴れ]

いや~~よかったです[晴れ]

クソ巨人[台風] 破って甲子園で胴上げ,なんて最高でした[晴れ][晴れ]

早速,改造後のSRF-A300でAMステレオで録音しました。

ちょっと録音はノイジーですけど,選手の方は全然打たんしあかんな~,やはりAMステレオはいいですね~。

セラミックフィルタも広帯域のものに交換したので,オリジナルとは全然違う音質です。最後の表彰式の女声アナウンスなんて,いい音でしょ。


阪神優勝ショウアップナイター '23.9.14-1s.png ちゃんとステレオです。

    PCのラインイン入力を使って録音しました。

それにしても次,阪神が優勝するときはニッポン放送もAMステレオどころか,AMやめちゃってるだろうな......[曇り]


2023年10月2日追記

ちょっと,▲の阪神優勝の時はノイジーだったので,今朝,ニッポン放送の開始放送を録音しました。


Enyaの曲が美しいですね~。君が代を流すのは民放ラジオではニッポン放送だけのようです。

できるだけ長く,AMステレオの音が聴けるようにお願いします。

 

2023年11月5日追記

とうとう,阪神タイガース38年ぶりに日本一になりました[晴れ]

iruchanはちょっと怖くて,とてもTVは見ていられないので,ずっとニッポン放送を聴いていました。

4回のノイジーの3ランホームランは本当に値千金でした。

といふことで,けふは六甲おろしをSRF-A300で録音したので,お届けします。



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ソニーSRF-A300のAM広帯域化&ワイドFM対応改造ほか~その1:セラミックフィルタ&ダイヤルバックライトLED交換~ [ラジオ]

2023年9月3日の日記

残暑お見舞い申し上げます。それにしても暑いですね~~[晴れ]

SRF-A300-6.jpg 

 ただいま,ワイドFM受信中。バックライトも明るくしました[晴れ]

iruchanもすっかり夏の間はぐったりで,なにもする気がせず,ブログの更新もできませんでした。地球はもうすでに,point of no return(もう引き返せない点)を通り過ぎてしまった,と思います。将来どうなることでしょうか.......[台風]

さて,先日,実家へ行って,ソニーのSRF-A300を聞いていたら,ちょっと故障気味なので持って帰ってきました。

症状としては,

電源SWをoffにしていても,音が聞こえる.......[雷]

マジかよ.....[雨]

それこそ,誰もいない部屋でラジオが鳴っているのを聞いたら,真夏の夜の怪談 って思っちゃいますよね......[雷]

これ,よくあることで,電源SWの接触不良で,接点が微妙にoffにできず,多少,抵抗値を持っていても導通してしまっている状態,です。

そのほか,たまにTVが夜中に突然,onするっていう恐ろしい怪談 もありますのでご注意ください。

怖っ~~~[雷]

TVの場合,たいていはリモコンの電池が古くなってきて,電圧低下して誤動作している場合が多いです。

と言うことなんですが,ソニーのSRF-A300もいずれ,ワイドFM対応改造をしよう,と思っていたし,他にもやりたいことがあったので,この際,修理ついでに改造しちゃいます。

        ☆          ☆          ☆

ソニーのSRF-A300は1993年10月,ソニーが発売した,AMステレオ対応スピーカーつきポータブルラジオです。

AMステレオ放送は1992年3月に始まっていますが,当初,ソニーはSRF-M100やSRF-AX51Vなどを発売しましたけど,いずれもヘッドホンで聴く,と言うラジオだったので,本格的なスピーカーつきラジオを待っていました。

iruchanは速攻で1台買いました。

何より音がよいし,AMステレオにも対応しているので,愛用しています。FMは76~90MHzで,日本の従来のFMバンドラジオです。

惜しいのは,TV 1~3ch.にも対応して,108MHzまでだったら,ワイドFMにも対応していたのですけどね.....。

残念ながら,AMステレオはもはや風前の灯火で,国内ではニッポン放送,ラジオ大阪,和歌山放送がやっているだけになりました。

TBSなんかは大相撲中継なんかもやっていて,NHKで聴くより断然,臨場感がよく,とてもよかったのですけどね....。TBSは2011年にAMステレオから撤退しています。

それどころか,とうとう2028年には民放各局はAM放送から全面的に撤退するようで,2027年以降はNHK以外はごく一部の民放がAMバンドに残るだけ,と言う状況になりそうです。

ラジオ大好きなiruchanはとても残念なんですけど.....。

さて,SRF-A300ですが,音がよいのにとても感心しているんですが,まだちょっと不満が残っています。

なにより,ミョ~~に図体が大きいのもちょっと残念で,ソニーにしては図体が大きすぎます。ソニーだったら,米国向けのSRF-A100くらいのかっこよい小さなラジオを発売してほしかった,と思います。

大相撲中継もステレオでやっていたし,ポータブル,据置両方で使える,ということで高齢者向けに大きくしたようです。PLLシンセじゃなくて,アナログチューニングなのもそのためのようです。AC100Vが直接使えるようになっているのもこのためか,と思うんですが,必要だったのか......電池とACアダプタでよかったんじゃ,ないでしょうか。

また,音がよいと言ってもAMについては,iruchanは少し,不満を持っていました。

例の帯域病です[雨]

日本のAMラジオって,アジア各国の強力局からの妨害がひどいため,帯域幅が異常に狭くなっています。特に,1978年11月に,アジア地域の置局間隔が9kHzに変わってから余計ひどくなりました。帯域幅±3kHzなんてラジオも多く,高音がまったく出ないため,「AMは音が悪い」というイメージが定着する原因にもなっています。

SRF-A300はAMステレオ対応,と言うこともあり,広帯域のセラミックフィルタを使っているようですけど,これでもまだ狭い,と思っています。もう少し高音が出てもいいのでは,と買ったときから思っていました。

今回,分解するついでに,もっと広帯域のセラフィルに交換してやろう,と思っています。

さらに,

ダイヤルにバックライトがついていて,暗いところでチューニングするのに便利なんですけど,これが暗い[曇り]

緑色のLEDを使っていて,ダイヤルが緑に光るようになっていますが,かなり暗い。

まあ,当時は青色LEDも発明されていないし,LEDはありましたけど,まだ輝度が低く,暗いです。

ソニーのチューナーはどれも確かに,バックライトが暗く,iruchanが持っているST-5000Fなんて点いているのか分からないくらい,暗いんですが,SRF-A300も暗いので,最近の高輝度LEDに交換したい,と思います。

最後にもうひとつ。

AMステレオ対応,って言っているのに,AMステレオのインジケータがありません......[雨]

ソニーのAMステレオラジオはどれもついていなくて,SRF-M100もついていません。かろうじて,米国向けのSRF-42だけはAMステレオ時に同調用のLEDが明るく光るのですが,これくらいです。

せっかくのAMステレオラジオなのに,なんでステレオインジケーターがないんでしょ。

ということで,iruchanもずっと昔から疑問に思っているので,この際,ステレオインジケーターをつけられないか,検討することにしました。

さて,まずは分解。

図体がミョーに大きいことが幸いし,分解は簡単です。⇒と印のついた場所のプラスねじを全部外すと簡単にケースが離れます。電池箱の中にも1本,ありますので,ご注意ください。

SRF-A300-2.jpg 裏ケースを外したところ

プリント基板は両面基板で,上面にはパワーアンプのCXA1522Pがつけられています。

SRF-A300-3.jpg 基板(上)

下面にラジオ関係のICがついています。

フロントエンドはCX20111で,AMステレオデコーダはCXA1657MCXA1758が使われています。後者はシールドで覆われていて,見られません。


ただ,残念ながら,CXA1657MCXA1758のデータシートは見つかりません。ステレオインジケータがつけられるかな.....。ちょっと,困ったな.....。

SRF-A300-4.jpg 基板(下)

シールドをめくってみると.....
  
CXA1758.jpg やはりCXA1758でした。

セラフィルはムラタのSFP-450Gでしたが,残念ながら,iruchanが持っている当時のムラタのデータシートに記載がなく,詳細な規格は不明ですが,末尾の文字は帯域幅を表していますので,Gということは-6dB帯域幅で±4.5kHz以上,ということを表しています。

う~~ん,やっぱまだ狭いよな~って思いました。

AMステレオ用としては,SFG-450Dと言うのが有名で,AMステレオ開始時に秋葉原でなんとか入手可能でしたので,iruchanもエレキットのJE7514や自作チューナで使っています。これは帯域幅は±10kHzです。これに交換するとかなり音がよくなるはずです。

SFP-450G, SFG-450Ds.jpg AMステレオ用セラミックフィルタ

SFG-450D.jpg 交換しました[晴れ]

幸い,ピン間隔も同じで,簡単に交換できます。

次に,ダイヤルライトも交換しておきます。

オリジナルは小型のリードタイプの緑色LEDです。非常に小さく,当時,最小のLEDではないか,と思います。

ただ,取り外して調べてみると,やはり暗~~い[雨]

現行の高輝度LEDに交換しよう,と思います。

ただ,こんなに小さなLEDは今じゃ,表面実装のものばかりです。はんだづけできなくはないですけど,何かいいものはないか,と秋月のWEBを見ていたら,いいものを見つけました。

OSG5212411C.jpg本当?

驚いたことに,形状がソニーのオリジナルとぴったりなんですが,驚いたのは輝度。12000mcdです[晴れ]

最近のLEDはとても明るくて,逆に明るすぎて苦労するくらいですが,それでも輝度は1000mcdくらい。こいつは一桁違います。最初,何か間違っているんじゃ,と思いました。同じ形状の赤や青だと4200mcdなので,どうも緑色は非常に明るいLEDが作れるようです。

台湾OptoSupply社のLEDですが,リード線もついているし,何か便利そうなので,他に白色も買いました。

やはり非常に明るい~~[晴れ]

LED比較.jpg オリジナルとの比較

ソニーのオリジナルのは9V電池と1kΩの抵抗を直列に入れた状態で,これでも点灯しているかどうか分からないくらい,暗いです[雨]

LED比較1.jpg 実装状態

左はまだソニーのオリジナルのLEDです。これくらい輝度が違います。30年でこれだけ進歩したのか.....と。もっとも,オリジナルは東芝製だと思いますが,新しい方は台湾製ですけどね.....[雨]

反対にOptoSupplyのは明るすぎる[晴れ]くらいで,SRF-A300は▲の写真から分かるとおり,直列に220Ωが入っていますので,これを2.2kΩくらいにしないと明るすぎるか,と思いましたが,面倒なのでそのままLEDだけ交換しました。

結果オーライですけど,これで十分明るく,また,明るすぎる,と言うこともない感じなので,このままにしました。

SRF-A300-5.jpg バックライトのLEDを交換しました。

オリジナルの状態を撮り忘れましたけど,それこそ,点灯しているかどうか分からないくらい,暗かったです[雨]

やっぱ,非常に明るい~~[晴れ]

思わず,

♪ 明る~い○○○○○,明る~い○○○○○

 みんな~~,うちじゅう~~,なぁ~んでもソニー~~......♪  

っと。

この歌が歌える人はもう相当なおじさん,おばさんだと思います。よく,水戸黄門見ていたな~~。やっぱ,水戸黄門はiruchanは東野英治郎なんですよね~~(古っ!)。西村晃は許せるけど,里見浩太朗や石坂浩二は許せないな~~[雨]

iruchanはソニー党で,昔から○○○○○の製品はもちろん,真空管や半導体は嫌いなので,ラジオやオーディオ,TV,HDDレコーダはすべてソニーです[晴れ]

この状態で,ラジオを聴いてみましたが,やはりAMはセラフィル交換しただけあって,びっくりするくらい,非常に音がよくなりました。冗談じゃなく,FMと遜色ない音質です[晴れ]

ちょっと長くなりましたので,ワイドFM化工事はまた次回,とさせていただきます。お読みくださいまして,ありがとうございました。


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電源同期式デジタル時計の周波数変更 [ラジオ]

2022年7月7日の日記

先週,ハワイで買ってきた,JENSENのCR-208と言うクロックラジオのFMバンドを変更し,日本のFM局が受信できるようにしました。

残念ながら,日本だけと言っていいと思いますけど,FMラジオの周波数が世界標準と異なり,外国で買ってきたラジオは日本では使えません。

おまけに,このラジオ,7セグメントのLED表示で時刻を表示してくれるのですが,60Hz専用になっていて,東日本では使えません。

まあ,iruchanは北陸に住んでいるので,50Hzなんて関係ないんですけど......。

以前は東京に住んでいたこともあり,周波数変更しようと思います。

デジタル時計は1970年代に7セグメントのLEDやクロックLSIが実用化され,市販されるようになりました。

最初,その斬新なデザインにビックリしたことを覚えていますけど,いまでも結構,よく使われていますよね。やはりひと目で時刻がわかる,と言うのは便利だし,LEDだと暗いところでも見やすいので便利です。

デジタル時計は水晶発振式と電源同期式があり,最近だと電波時計になっているものも多いか,と思います。

問題は電源同期式。

欧州では50Hz,米国では60Hzに対応しないといけませんし,なんたることか,日本は国の中で周波数が共存している,と言う世界でも相当,珍しい国なので,周波数切り替えが必要です。

まあ,これはもとはといえば,東電の元祖の会社と,明治のアホ役人のせいだ,と思っているのですが.....。

周波数なんて言われても,何のことか,さっぱりわからなかったのでしょう。

iruchanは今からでも遅くないから,いっそのこと60Hzに統一したら,なんて思っています。変圧器などは50Hz用なら60Hzに対応できるはずだし,問題になるのは工作機械など,誘導電動機を使った機械でしょうが,今だとインバータ式も多いはずなので,問題ないのでは,と思っています。

脱線しちゃいましたが,電源同期式のデジタル時計の周波数変更について考えてみます。

日本で販売されているこのような時計は必ず切り替えスイッチがあります。また,時計によっては自動切り替えになっているものもあります。

もちろん,水晶発振式だと電源の周波数は関係ありません。とはいえ,水晶発振式がいくら正確とは言っても,意外に狂いますよね。日本の電力会社は周波数管理が厳しいので,下手な水晶式より正確だと思います。

最初,iruchanは60Hzの発振器を作って,このラジオのクロックICの入力に使ってやろうか,と思いました。

実際,西村昭義著 "楽しく作る電子時計とカウンタ" (CQ出版1978)には,沖のMSM5562を使ったアダプタが紹介されていますし, 今だとPICなどのマイコンで水晶発振を分周して60Hzを作ることも可能です。

でも,ちょっと面倒だよな~~[雨]

と思っていたら,そもそもクロックLSIは周波数切り替え機能があるんじゃないか,と思い出しました。

結果はビンゴ!

一番ポピュラーなナショセミのMM5309や沖のMSM5509RSなどもその機能があります。LSIの何かのピンをHにするかLにするかで,簡単に切り替えできるはずです。

要は,入力の周波数を50回カウントして1秒とするか,60回カウントして1秒とするか,の違いだけで,カウンタの進数を変えるだけです。

蛇足ですけど,これらのLSIはもう貴重品で,入手困難ですが,いまだにこういうデジタル時計などの内部で使用されているのを見かけます。マイコン使うより,安いのでしょうか。MSM5509RSを使った秋月のキットも,つい最近まで販売されていましたしね。

と言う次第で,件のJENSENの時計つきラジオのフタを開けて調べてみます。

使われているクロックLSIは怪しげな中国製.......[雨][雨]

无锡硅动力微电子技术有限公司なる会社 読めへん SP8560NというLSI。英語のブランドはSi Powerというらしいです。

SP8560N-1.jpg SP8560N

データシートも簡単に見つかりましたが中国語......[雨][雨]

それでも,#26ピンが周波数変更用とわかります。このピンの電位をHにするか,Lにするかで周波数が変わるはずです。

なぜか,#26ピンと#28ピンは▲のように上に跳ね上げてあって,はんだづけしていません。

SP8560N.jpgSP8560N

ただ,そもそも中国がオリジナルでこんなLSIを作っていた,とはとても思えないので,もう少し調べてみると,もとは三洋のLM8560NというLSIだったようです。なぁんだ。

今は東芝など,日系半導体メーカ製の古い半導体のOEMを手がけている台湾UTC社が作っているようです。

三洋のデータシートを見ると,#26ピンをLにすると50Hzで,Hにすると60Hzのようですが,このピンは内部抵抗でプルアップされていて,オープンのままだとHになって,60Hzになるようです。

50Hz/60Hz切り替え1.jpg 雑な工作.....orz

CR-208も見てみると#26ピンはオープンになっています。

ここにスライドSWをはんだづけして,GND(VSS)と接続できるようにしておきます。

工事は簡単。1時間ほどでケースに穴開けして,スライドSWを取りつけて配線をはんだづけして終了。

50Hz/60Hz切り替え.jpg 周波数切り替えSWです。

ようやくこれで50Hzでも正確に時刻を表示するようになりました[晴れ]



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米国バンドのFMラジオのバンド変更 [ラジオ]

2022年7月3日の日記

ずっと以前,ハワイで買ってきた,クロックつきFMラジオのバンド変更をしようと思います。さすがに88~108MHzじゃ,NHK FMだって入りませんからね。

iruchanはラジオが好きなので,海外へ行ったときにお土産で買って帰ることもあるのですが,世界的に,FMラジオは上記のバンドなのですが,日本ではどういうわけか,76~90MHzになっていて,海外で買ってきたFMラジオは日本では使えません。

ということで,今回もバンド変更をします。

今回のターゲットは

Jensen JCR-208.jpg 

  LEDの輝度が低くて何時か,写真じゃ,わかりませんけどね....[雨]

米JENSENのCR-208というクロックつきラジオです。JENSENはスピーカーの名門ですね。でも,今ブランドを持っているのは赤い金満国の会社でしょうね.......。

LED式のクロックつきラジオは便利で,ベッドの横に置いておけば,夜,寝る前にラジオ聴きながら本読んだりできるし,夜中にふと目が覚めたときに今,何時だ? と思っても,LED式だとすぐに時間がわかりますからね。これが液晶だとバックライトを点灯しないと時刻がわからないので不便です。

さて,FMバンドを日本バンドにするには,電子工学的にはFMの局発の周波数変更,と言うことになります。

詳しくはこちらで解説していますので,ご覧ください。

なお,前回同様,ワイドFMも聴けるようにしたいので,受信周波数は76~95MHzに変更したいと思います。

ただ,実を言うと,結構難しいのです。76~90MHzの従来のFMバンドでも,意外に難しく,完全にきちんと国内バンドに合わせることはできないこともありますので,ご注意ください。というのも,局発コイルの取り替えが本来,必要なせいです。

とはいえ,コイルを作り直す,と言うのはとても大変です。インダクタンスは数μHといったところで,コイルはせいぜい,3~4ターンくらいなので,どんなに計算通り,正確に作ってもとんでもない周波数で発振し,測定器がないと調整できなくなります。

と言う次第で,コイルはもとのラジオのまま使用します。

また,目標とする局発の発振周波数は,前回も書きましたとおり,86.7~105.7MHzとなります。上限受信周波数が90MHzでよい,と言う場合は上限は100.7MHzでOKです。

まずはフタを開けて,使われているICがなんなのか,確認します。

Jensen JCR-208-1.jpg 内部です。

なんと,ラジオICは前回と同じ,東芝のTA2003Pでした......[晴れ]

ただ,なんかマークが変で,どうも東芝製ではなく,どこかのOEMのやうです。

TA2003Pならデータシートが簡単に手に入りますし,それを見ると#13ピンが局発なので,このピンにつながっているコイルを調整する,と言うことになります。

もうひとつあるコイルはRF(高周波増幅)の出力で,局発からの信号と混合器でミックスし,IFを作ります。いわば,入力のコイルなので,こちらはまずはいじらず,放置プレイです。

Jensen JCR-208-1(ラジオ基板オリジナル).jpg 見たことのないマークです。

低周波増幅はSTマイクロエレクトロニクスのTDA2028のようです。2ch.のアンプを内蔵し,出力0.65Wで,モノラルの場合はBTL接続もできて,その場合は1.35Wも取れます。ラジオ用としてはとても便利なICです。

ところが,実はこいつがクセモノで,あとでものすごくトラブることになるのですが.......[雨]

FMバンドの変更には,FMの局発コイルを探さないといけません。

なお,FM用のコイルは本機もそうですけど,先に書いたとおり,2つ以上あるので,ご注意ください。正式には4つ,コイルが必要なんですけど,いまは4つもあることはないでしょう。また,調整するコイルを間違えると,大変なことになりますので,技術のある人でないと勧めません。また,たいていはAMもついているので,AM用のコイルやトリマをいじっちゃうと大変なので気をつけます。

FM frontend.jpgFMラジオのフロントエンド回路

入力部は,昔は▲のように,アンテナ接続用に,トランス形式のコイルが1組入っていましたが,今はコイルを止めて,セラミックフィルタを用いたバンドパスフィルタになっている場合が多いかと思います。また,ポータブルラジオだと,トランス形式じゃなく,2次側のみで,そこにロッドアンテナがついていることが多いです。

また,混合器(ミキサ)出力は,昔だとIFTになっていて,IF段につながっていましたが,今はセラミックフィルタ仕様がほとんどでしょう。この場合ですら,セラフィル特有のスプリアスを抑えるため,IFTと併用することが多かったのですが,最近はいらないようです。

バンド変更で重要なのは,局発コイルLOSCで,このインダクタンスを大きくし,発振周波数を低くすればよいのです。

と言う次第ですけど,理屈としては,受信周波数の下限をこの局発コイルで決め,上限は,バリコンについているトリマCTOSCで調整する,と言うことになります。

蛇足ですけど,もし,国内バンド(76~90MHz)のラジオがあって,ワイドFMに対応させたい,と言う場合はこの局発側のトリマをいじるだけです。その場合はこちらの記事をご覧ください。

問題は,このコイルのインダクタンスが意外に大きくなるので,普通は専用コイルで,TA2003Pに限らず,国産のFMラジオ用ICには必ず,国内用,海外用ということで局発コイルのデータも記載してあるのが普通ですけど,TA2003Pは書いていませんでした.....[雨]

といって,書いてあったとしてもスミダや東光などのメーカ製品で,アマチュアには手に入らない部品だったり,φ4mm,4T(0.5UEW)とか書いてあって,この通り作ったとしても,想定したインダクタンスには決してならないので,うまくいきません。

それなら,と言うことでコイルはラジオについているものを利用し,あとで調整することにして,iruchanはまずは▲の図のように,パラに10~15pFくらいのセラミックコンデンサをパラにして,一気に局発の周波数を下げちゃいます。

こちらで書きましたとおり,簡単にやっちゃうには,15pFをパラっちゃうだけで,まあ,国内のほとんどのFM局は受信できる,と思います。これだと失敗は少ないですし,お勧めです。

Jensen JCR-208-1(ラジオ基板FMband変更後)1.jpg まずはコンデンサをパラにはんだづけします。

ただ,その記事にも書きましたが,この方法は簡便法で,完全には国内バンドのカバーは無理です。

そこで,さらにもう一手間,二手間かけて,きちんとワイドFMまで対応させようと思います。

まずは予定通り,15pFをパラってみますと......。

NHK FMが受信できますので,やはり局発の周波数は下がったようです。

ただ,テストオシレータを使って調べてみると,大体,下限は80MHzくらいで,全然足りません。

ここまで来たら,バリコンを最大容量(下限)にし,局発コイルを縮めてみます。ピンセットで少し(もちろん,少しだけ,ですよ~~~)はさんで縮めてみます。

徐々に,受信周波数が下がってくるはずなので,76MHzくらいになったら,いったん止めます。

今度はバリコンのトリマを調整します。

バリコンを最小容量(上限)にし,オシレータで受信周波数を確認します。

iruchanは大体,90MHzくらいでした。

トリマを回して,95MHzくらいにならないか,と調整しますが,無理です。

と言うことは今度はもう一度,バリコンを最大にし,今度はコイルを少し伸ばしてみます。

さらに次はバリコンを最小にし,トリマを調整して.....。

と言うことを延々と繰り返します。

なんとか,76MHz~93MHzくらいにするのがやっとでしたけど,ここまで来れば,国内のFM局やワイドFM局が受信できるはずなので,確認してみます。

実際,うまく各局が入感しましたので,やれやれです。

で,ここで止めちゃってもいいのですが,今度は入力側にコイルLRFがあるのでこちらも調整します。

FMの場合,コイルのQは低く,10~20程度なので,このコイルの同調周波数はそれほど神経質にならなくても結構ですけど,ここはアメリカ用に88~108MHzにあわせてあるはずなので,こちらも10pFをパラにし,さらにトリマを回して調整しておきました。

やはり,こちらも調整した方がよく,結構,トリマを回すと感度が変わりました。

Jensen JCR-208-1(ラジオ基板FMband変更後).jpg 調整後の状態

最初の状態と比較してもらったらわかりますが,コイルはずいぶんと狭くなっています。

もし,一杯まで狭めてもダメ,ということだとコイルの交換,と言うことになります。

と言うことで,これで終わり,のはずだったんですが......。

どうも音がおかしい

局間はザーッとFM特有のノイズがしているのですが,受信するとビーッと言う音がします。

まあ,ラジオだし,こんなものか......と思ったのですが......。

やはり聴いているとかなり気になってきました。

どうもおかしい,と思って,このラジオは珍しく,AUX端子があるので,そこにパソコンから音楽を鳴らしてみると....。

やはりビーッと言う音がして,それに,音量が大きいとビリ,ビリと大きなひずみが出ます。

う~~ん,どうも発振しているらしいです。

うっかり,ラジオだからこんなものか,と思っちゃったのですけど,やはりおかしい。音が悪いのは我慢できないので原因を調査します。

これは最初からで,どうもこのラジオはメーカで調整しても放っていたようです。こんな音のラジオを平気で売っているなんて驚きます。PASSEDのQCシートが貼ってありましたけど,おそらく中国の工場でろくに調整もせず,出荷しているんでしょう。それに,基板の作りも雑。電解コンは斜めにはんだづけされているし,そもそも,AUX端子からの配線もセラミックコンデンサを片方のみ基板にはんだづけし,電線を直接,残りのセラミックコンデンサの脚にはんだづけしてある,と言う始末。

それに,例によってボリウムの質が悪く,ガリオームになっているし,ところどころで音が聞こえないと言う状態。摺動子がうまく接触していないんですね.....。

あまりのロークォリティにがっかり。よっぽど,前回のGEのラジオの方が中身はきれいでしたし,作りも丁寧でした。

しかたないので,ボリウムの交換から。

よく見かける基板取付タイプなんですけど.....。

国内では手に入りそうにないですが幸い,iruchanは部品箱を探したら100kΩ(B)というのが出てきたので交換しました。昔,何かから取り外したのだと思います。Bカーブですが,まあ,しかたないでしょう。

代替VR 100kB.jpg 交換用VR

これでようやくガリオームも解消しましたが,発振は続いています。

一度,データシートを見直してみます。

TDA2822回路.jpgSPにパラに発振止めが入っています。

やはり,データシートには,SPとパラにCとRが接続されています。

STマイクロの規格表にはなにも書いていませんが,これは発振止めで,アンプの自作派ならよくご存じだと思います。金田式には入っていませんけど。高周波でインピーダンスを下げて発振しないようにします。セカンドソース? らしい,日本無線のNJM2073Dの規格表には,使用上の注意として,発振の防止として明記してあります。やっぱり,こういうあたり,日本のメーカはとても親切です。

ということで,1Ω+0.22μFを接続したら,発振は止まりました。やれやれ~~~[晴れ]

発振止め.jpg 発振止めを入れました。

        ☆          ☆          ☆

ようやくこれで国内のFM局が聴けるようになりました。残念ながら,上限は93MHzくらいですが,iruchanの近所のワイドFM局は全部聴けたので,これでよし,としましょう。



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ケーブルTVのFM再送信について [ラジオ]

2022年6月28日の日記

SRF-A300.jpg ソニーのSRF-A300です。

父が亡くなって1年が過ぎました。正直,まだどうにも心にぽっかり穴が空いたような感じです。主のいない家の掃除や,庭の草刈りなどをしに,しょっちゅう帰省していますけど,いるはずの人がいない,というのはなんともいえず寂しく,また,どうにも空しく,空疎な感じがして憂鬱です。

と言うこともありますが,元気を出して,実家でFMラジオを聴こうかと父が愛用していたICF-EX5なんかを出してみますと.....。

AMはよいのですが,FMがまったく入りません[雨][雨][雨]

ご存じの通り,EX5はAM用としては最強と言っていいくらい,性能のよいラジオで,同期検波もできるし,そのメリットとして,上側側帯波と下側側帯波でどちらかで検波することも可能なので,ノイズや混信の少ない方を選んで受信できる,と言う優れものです。

FMも感度がよく,音質もよいラジオなので,このラジオでうまく受信できない,ということは電波状況に大いに問題がある,と言えそうです。

原因はわかっています。

父の家のすぐ近くにビルがあり,その電波障害です。そのため,iruchanの実家では,早くから共同アンテナになっていました。

でも,iruchanが子供の頃でもちゃんとNHK FMくらいは受信できましたし,EX5を使ってもまったくどこのFMも入らない,と言う状況は異常です。

念のため,とりあえず,別のラジオで調べても同じ状況ですから,ラジオのせいじゃありません。

実を言うと,そのビルが最近,取り壊しになり,周辺の土地を買い占めてさらに大きなビルやマンションが建ったせいのようです。

それに,車で走ってみると,iruchanの実家の周辺,200mくらいはNHK FMも含め,全FM局が聞こえませんから,かなり大規模な電波障害です。

この場合,建設業者がTVやFMなどの受信障害に対応する責任があり,だから,iruchanの家も昔は共同アンテナになっていました。

とはいえ,まずはNHKに相談してみようか,ということでメールで問い合わせてみました。

しかし.....。

どうにもあまりよい返事が返ってきませんでした。昔はNHK FMが入らない,と言うような場合,現地へ飛んできて,電界強度を調べ,原因となる建物の所有者と相談してくれたり,場合によっては都市部用の補助送信機を取りつけてくれたりしたはずですが.....。

「ラジオの場合、電波特性上の反射や回り込みが発生するため、特定の建物と受信障害の因果関係を確かめにくい場合があります。

ご相談の件とは違いますが、FM放送についてはPCやスマートホンを使った「らじるらじる」でもお聞きいただけますので、是非ご利用をご検討ください。」だって!

あの~~~~[雨][雨][雨]

そんなこと聞いてんじゃないんですけど......。

困ったことに,天下のNHKさんも,今はこんな返事のしかたをするんですね~。

らじる★らじるがどう関係しているんでしょうか。そもそも,NHKなのに,らじるらじるって書いちゃっていますしね.....。

皆様のNHKなら,らじる★らじる聴けない人のことも考えないといけないんじゃないでしょうか! こちらは電波障害のことを聴いているんですけど.....[雷][雷][雷]

iruchanはらじる★らじるは毎日聴いていますが,ラジオマニアだし,ちゃんとラジオで聴きたいのです。

と言うことですけど,確かに,そのビル建設業者がケーブルTVを導入し,iruchanの家もTVはケーブルで見ることになりました。

ただ,FMのことはよくわからないので,件のケーブル会社に聞いてみると,最寄りのFM局5局を再送信しています,とのこと。FMまで再送信してくれていて助かりました。普通はTVの送信所とFMの送信所の場所が異なるはずなので,FMは関係ない,ということで再送信していないところも多いと思います。iruchanのところはどちらも送信所が同じで,TVもFMも受信できないからでしょう。

残念ながら,ワイドFM局はやっていないようなので,「将来は対応お願いします」と連絡しました。

よっぽど,そのケーブル局の方が親切な対応でした......[雨]

ただ,しかし,これはこれで問題。

チューナーのようにアンテナ端子があるものならいいけど,ラジオじゃ,アンテナ端子は普通はついていませんからね。

まあ,5C-2VなどのケーブルTVの芯線に電線をつないで,それをラジオのロッドアンテナに巻きつけておけば,きれいに受信できるんですけど,それじゃ, "ひも付き" になっちゃいますからね......。できれば,普通のラジオ同様,自由な状態で聴きたいと思います。

と言う次第で,結局,iruchanはケーブルからFM電波を室内に再送信することにしました。

FMチューナーを買うとついてくる,T型フィーダーアンテナを受信じゃなく,送信で使えば,室内でFMが聴けるはずです。amazonあたりでFM受信用の室内アンテナが売られているので使ってみてもよいか,とは思いますが,iruchanはチューナー何台も持っているので,フィーダーアンテナが余っています。これを活用しない手はない,と思います。

ただ,ご存じの通り,T型フィーダーアンテナは特性インピーダンスが300Ωで,ケーブルTVは5C-2Vなどの75Ωのケーブルで送られてきますから,インピーダンスのマッチングを取る必要があります。また,フィーダーは平衡(バランス),ケーブルは不平衡(アンバランス)になっていますから,直接接続するとロスが大きいので,平衡⇔不平衡の変換もかねて,整合器を使います。中に高周波バランという,早い話,高周波用のトランスが入っています。

整合器2.jpg 整合器.jpg 整合器です。

  高周波バランと呼ばれるフェライトコアに巻かれたコイルが見えます。

ところが.....。

昔は普通の電器屋さんやDIYの店でどこでも売っていた,整合器が手に入りません[雨]

しかたないので,iruchanは部品箱をひっくり返して,2個,整合器を見つけました。よかった~~~[晴れ]

まあ,今どきTVをフィーダーで接続する人はいないし,整合器も過去の遺物になってしまっているんでしょう。おまけに高周波バランも手に入りにくいようです。

と言う次第で,iruchanは整合器があったので,これを使って配線しました。

家の中に分配器があり,父も母も別々にTVを見ていましたが,もうTVは1台でいいので,片方の配線を外してそこに整合器を介してT型フィーダーアンテナをつけました。

分配器.jpg 右側は外したTV用配線です。


T型フィーダーアンテナ.jpg T型フィーダーアンテナをつなぎます。

結果は良好。

今まで,どこのFM局も入りませんでしたが,多少,ノイズはあるものの,きれいに受信できるようになりました。

ラジオはEX5でもいいんですけど,FMがモノラルなのは面白くないので,SRF-A300を持ち出してきました。ご存じ,AMステレオの名機ですよね......。

残念ながら,iruchanの住んでいるところじゃ,AMステレオはもう聴くことができませんけど,大きなスピーカーを持っていて,いい音でラジオを聴くことができます。FMは当然としても,AMもステレオじゃなくてもデコーダが同期検波をしてくれるし,広帯域のセラミックフィルタを使っているので,AMは非常にノイズが少なく,いい音で聴けます。

        ☆          ☆          ☆

これでようやく問題解決。iruchanは手持ちの部品を使ったので,1円もお金かけませんでした。FMがきれいに聴けるので,今度はちゃんとFMチューナーにケーブルを直接つないでみようか,と考えています。


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ソニーFM/ラジオNIKKEI/AMポータブルラジオ ICF-EX5~その1:電源の修理&改造~ [ラジオ]

2019年12月1日の日記

ICF-EX5.jpg ソニーICF-EX5

  いまはアナログTVが放送終了になったので,mk2となっています。

どうにも寒くなりましたね~。皆様お身体ご自愛ください。

さて,iruchanはどうにもここのところ忙しく,なかなか趣味に割く時間ができませんが,今日はちょっとラジオの修理をしました。

高感度で有名なソニーの多バンドラジオICF-EX5の修理です。

このラジオ,とても人気がありますね。何より感度がよいし,もうひとつ,大きな特長として,同期検波が可能なラジオなのです。

同期検波って何? って人も多いかと思います。確かに,この言葉を知っている人はラジオマニアでもごく限られた人だけでしょうし,知っているのはアマチュア無線に詳しい人だけでしょう。

AMラジオは,ご存じのとおり,もちろん,振幅変調なのですが,その中でも全搬送波両側波帯変調方式であり,それこそ最初の音声放送である,AMラジオの中核技術であるわけです。

簡単に,ダイオード(Di)1個で検波(復調)できるのが特長ですが,帯域幅が広いため電波の有効活用ができないことと,ノイズが多く,混信も多いのが欠点です。短波で用いられるSSB(搬送波抑圧単側波帯変調方式)だと帯域幅は半分で済みます。昔は短波も全搬送波両側波帯方式だったのですが,2015年から全面的にSSBに移行することとなっていて,受信機も専用のものでないと受信できなくなるので大騒ぎでしたが,取りやめとなり,いずれデジタル放送へ移行することとなっています。

中波はもちろん,全搬送波両側波帯なのですが,この場合,簡単にDi1個で検波(エンベロープ検波)できる代わり,帯域幅全部の周波数が検波されて音声になる関係で,どうしてもノイズが増えます。また,混信があるとそれも検波してしまうため,混信は防げません。

それに反し,同期検波は,受信機内部で入力周波数に完全に周波数,位相が一致した信号(基準搬送波)を作り,それと積を取ることによって音声信号を取り出そう,と言うものです。高校で習う,三角関数の積→和の公式からわかるとおり,入力周波数に一致した成分とその和の周波数成分に分けることができ,LPFをつかって前者のみ取り出すと音声が検波されます。ついでに,検波する信号は上側側波帯(USB)と下側側波帯(LSB)を選択できます。もちろん,USBはuniversal serial busの略じゃなく,upper side bandの略です。

同期検波は目的とする信号と異なる周波数の信号は出力されないのはもちろん,仮に同じ周波数でも位相がずれていれば出力されません。こうして混信が防げるわけですね。ノイズについても,完全に入力周波数の位相と一致した部分にノイズが乗っていなければ,出てきません。

さらに,同期検波だとA級動作の2個のTrが乗算動作をすることにより検波するので,エンベロープ検波の場合はDiがもつ非直線性がないため,ひずみが少ない,と言うメリットもあります。確かに,同期検波のラジオは非常にHiFiです。

とはいえ,同期検波は内部で基準搬送波を作るのが難しく,PLL(位相同期ループ)技術が必要で,基本的にはICがないとできません。昔はカラーTVで色信号の復調用に同期検波が必要で,APC(自動位相制御)というPLLがカラー検波回路に使われていました。ドットシーケンシャルのカラーTVを開発したのは米RCAで,1953年のことですが,真空管しかない時代ですから大変で,iruchanも経験がありますけど,真空管時代のカラーTVというのは非常にご機嫌が悪く,うっかりすると真っ赤になったり,白黒TVになったりして,きれいなカラー映像を見るのは難しかった.....んですけど,そんなこと覚えている人はもう少ないでしょうね。

ラジオでも同じで,同期検波を搭載したラジオ,というのはほとんどない上,あっても結構値段が高いのです。短波は混信が多いので,アマチュア無線家をはじめとして,同期検波式の受信機が必要とされるのですが,これも高級機でないとついていない機能です。

その点,ICF-EX5は同期検波がついていて,とてもいいラジオです。USB,LSBの選択もできて,どちらかノイズの少ない方で聞く,なんて芸当ができるのは素晴らしいです。

ICF-EX5-1.jpgSYNCが同期検波です。NORMALはエンベロープ検波です。

 上側側帯波と下側側帯波の選択できます。どちらかノイズの少ない方で聴けます。

ところで,iruchanがこのラジオを買ったのは,実は親父が病気で入院し,割に親父はラジオが好きなので,病室でラジオを聴こうとしたら,普通のラジオが使えない,と言ったためです。

病室に行ってみてびっくり。確かに普通のラジオは聴けません。ダイヤルのすべての位置でものすごいノイズで,まったく放送なんて聴けません。FMは大丈夫なんですが,さすがに親父も爺なので,AM以外は聴いていません。どうやら,病室は当然鉄筋コンクリート構造なので電波が入りにくい上,なにか,ものすごいノイズ源があるようです。

仕方ないな~[雨][雨][雨]

でも,iruchanはこのラジオなら大丈夫,と思いました。

速攻でネットで発注,このラジオを病室に持っていったら見事! ちゃんとNHKなどのAMラジオがいい音で聴けるではないですか[晴れ][晴れ][晴れ]

さすがに同期検波を搭載したラジオなら大丈夫では,と思っていましたが,実際に体験してみて,iruchanもびっくり。さすがです。また,▲の切替SWでNORMALにするとやはりまったく放送は聞こえませんでした。

と言う次第で,やはりAMラジオは同期検波が必要だし,実際,米国ではFCCが1980年代にAMステレオを導入するついでに,すべてのAMラジオに同期検波機能を義務づけようとしたらしいのですが,これがうまくいっていたら,という気がします。

いまだに,高性能のICラジオでも検波はエンベロープ検波方式で,ノイズに弱いのは残念です。ICだと,内部にDiを作るのが面倒なので,Trで検波しているものが多いのですが,結局は同じことです。

ただ,親父も無事に退院したのはいいのですが.....。

それからがまずい。

久しぶりに家で聴こうと,この前,スイッチを入れたら臭いがして煙が出てきたと思ったら,ラジオが聴けなくなった,と言うではないですか!!

一体,何やっているんだと思いましたが,何をやったか,事情聴取してみると,家で聴こうと,ACアダプタをつかったらしいのです。

すぐに原因判明

おそらく,親父は適当に手近にあった,どこのかわからないACアダプタを突っ込んだため,壊れたのだと思います。

もちろん,こんなこと絶対にやってはいけません。実際,ラジオの説明書に,"本機専用のACアダプタをお使いください" と書いてあるのはダテじゃないんです。必ず,使用する前にアダプタの極性と出力電圧を確認しませう。電圧については,テスターで実際に測ってください。古いアダプタは表示されている電圧よりかなり高い電圧を出力するものがあります。ICF-5900など,貴重なBCLラジオを入手したけれど,ACアダプタがないからと手持ちのACアダプタを突っ込んで壊してしまう人がいますが,ACアダプタに6Vと書いてあっても,9Vくらいの電圧が出るものがありますのでご注意ください。昔のトランス式のACアダプタは非安定化電源のタイプが多く,こういうことが多いです。といって,現在のスイッチング電源タイプはAMラジオではノイズが多くて使えません。

そもそも,このラジオは電池で聴くことができるので,何で電池で聴かんかったんや,という気がするのですが.....。

特に,このラジオは原設計は1985年で,それから30年以上も販売されている長寿命のラジオなのですが,ソニーの古いラジオはセンターがマイナスのアダプタが多いのです。

ICF-EX5-6.jpg ソニーの80年代のラジオはセンターマイナスです。

外径はφ5.5mmでごく普通のACアダプタなのですが,極性は各社バラバラで,ソニーの場合はセンターピンがマイナスなのです。松下など,他社はプラスの場合が多く,特に最近のものは普通はプラスです。

何でこうなのか,よくわかりませんが,ソニーのはセンターピンがマイナスのものが多いのでご注意ください。

こういう問題があったため,1989年にEIAJが極性統一プラグというのを提案して,現在は日本製の機器はほぼこのプラグを使用しています。このプラグはセンタープラスですが,残念ながら,もはや日本の電機メーカは世界市場から全面撤退中( "転進" ではありません)なので,昔のように世界標準となることはないでしょう......orz。実際,中華製品は昔ながらのφ5.5mmのプラグを使っています。

しかし,iruchanはピンときました。おそらく,親父はセンターがプラスのACアダプタを突っ込んだため,直後の電解コンデンサがショートして,パンクしたのだと思いました。それなら修理は簡単だと思います。

幸い,電池を入れるとラジオは機能しているので,内部のICなどは壊れていないようです。ホッ。

早速裏蓋を開けて調べてみます。

ICF-EX5-2.jpg 外部アンテナのねじも外します。

 ほかに,チューニングツマミを外すとそこにツメがあり,押してやるとフタが外れます。

ソニーのラジオはいろいろ言われますけど,修理がやりにくいものが多く,困るのですが,本機は割に簡単で,裏蓋も簡単に外れました。

ICF-EX5-3.jpg 立派なバーアンテナです。

 30cmくらいのバーアンテナが使われています。どおりで感度がいいわけです[晴れ]

ただ,外部アンテナのねじが裏蓋の固定も兼ねているので,このねじも外してください。また,ソニーの場合はしょっちゅうですけど,たいてい,電池ボックスの中にもねじが隠れています。本機もそうでした。

さて,なんとか裏蓋を外して調べてみると.....。

なんと,ACアダプタの直後に入っていると思った電解コンデンサはなく,これがパンクして故障したわけではなさそうです。ソニーのラジオはACアダプタと電池が単にパラに配線されているだけで,特にフィルタ用の電解コンデンサなどは接続されていないようです。となると,原因は別のところです。

う~~~んと......。

よく見てみると,ありました。

チップのTrが1個,真っ黒焦げになって,基板も周囲が焦げているではないですか。あちゃ~~......[雨]

▲の写真で,〇 の部分です。

ICF-EX5-4.jpg ご臨終? です[雨][雨]

原因はこれですね。逆極性の電圧がかかって,Trが1個,焼死してしまったようです。基板上ではQ19の表記があります。ところが,実はあとで,このTrは生きていたことがわかったんですけどね......。真っ黒焦げなんですけど。けなげにも,全身大やけどを負いながら仕事をしていたようです。さすがは日本製。キグチコヘイは死んでもラッパを手から離しませんでしたとさ......。

あとは簡単,おそらく,故障したのはこのTr1個だけで,これを取り替えれば正常に戻るはずです......が,表面実装のTrのため,そもそも型番が不明です。

これ,困りますよね~~[雨][雨]

TO-92などのリードタイプのTrだと表面にC1815なんて書いてあるので,すぐに型番が判明しますが,チップタイプの場合,表面にLやAなどの意味不明なアルファベットが1個書いてあるだけで,数字もほとんど書いていません。型番が書いてあることなんてなく,一体,このTrがなんてやつなのか,まったくわかりません。

この場合,セットメーカの部品表や回路図がない限り,Trの型番は不明です。

せめて,iruchanはPNPかNPNか,それだけでもわかれば何とかなるんですけど.....。別に,電源部のTrだし,増幅をしているわけじゃなく,単にon,off動作をしているだけでしょうから,最大定格さえ守れば,PNPかNPNか間違えなければ,何でもいいはずです。

ともかく真っ黒焦げになったTrを外しました。パッケージがぽろっと割れて外れたりして,完全に死んでいる,と思いました。

ところが,どうやらこのTr,生きていたらしく,このTrを外したら電池でもラジオは動作しなくなりました。

外したTrを調べれば,PNPか,NPNかくらい,すぐにわかったのですけれど....もはや捨てちゃったあとなので,もうわかりません[雨]

とりあえずサービスマニュアルでもネットに転がっていないかと考えましたが......これは望み薄です。

というのもICF-EX5は国内専用モデルなので,こういう場合,ネット上でサービスマニュアルを探すのは絶望的です。海外に輸出したモデルだと,米国などはさすがに自社でサービス網を構築するのは無理なので,外注せざるを得ないのですが,そう言う外注先に配布したサービスマニュアルが現在,ネット上で入手可能だったりするのですが,国内専用モデルだとそれはありません。

iruchanも散々,探しましたが,本機のサービスマニュアルは入手できませんでした。

とりあえず,基板をたどっていくと,エミッタに+Vccがかかるようになっているので,件のQ19はPNPだろう,という推定ができました。

ということで,とりあえず,手持ちの2SA1586(東芝)でテストしてみます。もし,NPNだったら,このTrは壊れるかもしれませんが,まあ,そうなってもほかに影響が出なければOKだと思います。

結果はビンゴ!でした。一発でラジオから音が出ました。Trの発熱もなく,何時間も連続運転しても大丈夫のようなので修理完了だと思います。

ただ,あとで別ルートでこのQ19を調べたら,オリジナルは2SB815(三洋)であることがわかりました。やはりPNPでした[晴れ]

VCEOは15Vしかありませんが,意外にIC=0.7A,PC=0.2Wと大きなTrです。2SA1586だと50V,150mAなので,ちょっと小さいです。

まあ,150mAでも十分大きな値だし,そもそも電池式のセットで100mA以上も電流が流れる,と言う設計はしないはずなので,2SA1586でも十分かと,思っています。本来はもとのTrより小さい定格のTrを使う,というのは御法度ですけどね.....(^^;)。

おまけに2SA1586だとパッケージがSOT-323なので小さすぎます。基板のパターンに合いません。

今なら,秋月でも売っている,2SA1313(50V,500mA)がSOT-346と一回り大きいのでいいと思います。

さて,これで修理完了,なんですけど......。

と,思っていたんですけど.....。

後日,本ブログを見て実際に修理をされた方から,隣りのQ18も壊れていた,とご報告をいただきました。

確かに,iruchanのも電源SWをoffにしてもかすかにスピーカーからノイズが聞こえて,低周波アンプ部分のみ,動作しているようです。

どうもRF部分には電源は供給されていませんが,AF部分には電源が供給され,かすかにノイズが聞こえる,という状況のようです。この場合,電池から10mAほどの電流が流れっぱなし,でした。

改めて,調べてみると,Q18も死んでいました......[雨]

外観は何ともないんですけどね.....[雨]

Q19は焼死寸前まで行っているのにもかかわらず,瀕死状態で生きていたのに,Q18は外見はなんの外傷もないのに,死んでいる[台風],と言う状況のようです。

Trの不良を見るには,接合面の順方向電圧を見ると大体わかります。はんだづけを外さなくても,おかしな値を示すので,ある程度,目星をつけることができます。

このQ18のテスターをDiチェックモードにして,ベース~エミッター間に順方向に電圧をかけ(PNPなので,エミッタに赤,ベースに黒のテストリードを接続します)てみると,電圧が0.2V程度を示します。ついでに逆方向に接続すると,普通は3V以上の電圧を示しますが,やはり0.2Vくらいです。

これ,おかしい証拠です。普通は順方向で0.6V,逆方向で3Vくらいの数値を示します。正確にははんだづけを外して単体で調べないといけませんけど,ある程度,目安にはなります。

と言う次第で,Q18も交換しました。

ICF-EX5-27.jpg Q18,Q19を交換します。

Q18はベースのところのパターンが剥がれちゃったので,ジャンパ線でR44につないでいます。

うまく壊れた2SB815が外せたらそのまま2SA1313をはんだづけしてOKです。

ソニーのサービスマニュアルには,Q18もQ19も同じ三洋の2SB815が使われていますので,2SA1313でOKだと思います。

と言う次第で,ICF-EX5に逆向きのACアダプターを挿して壊してしまった,というばあいはこのQ18とQ19の両方を交換してください。

        ☆          ☆         ☆

ついでに,せっかくだから、もうちょっと工事しておこうと思います。

そもそも,ソニーのACアダプタがセンターマイナスだからこういう間違いが起こるので,センタープラスのものでも使えるよう,改造しておきたいと思います。

この前,KATOの鉄道模型用コントローラKC-1をACアダプタ仕様に改造したときにやりましたけど,逆極性のアダプタをつないでも壊れないよう,Diを1個,挿入しておくのも手ですが,この場合は,逆極性の場合は本体が壊れないようにするだけで,使用できません。ソニーも,せめてこのDi1個をアダプタの端子に直列に入れておいてくれれば,壊れずに済んだと思います。

ついでに,ACアダプタ端子は電池とパラになっているだけ,と言うのもいただけません。普通,こういう場合,電池の方だけに直列にDiを1個入れます。こうしておかないと,電池が入ったまま,ACアダプタを挿すと,電池に電流が流れて危険です。一応,説明書には "電池とACアダプタを併用しないでください" とどこのメーカも書いているんですけど,ユーザはうっかりやっちゃうものなので,Diを1個,入れておいてほしい,と思います。

今回は,センタープラスのACアダプタを使った場合でも使えるようにします。

具体的には,ACアダプタの出力に,ブリッジDiを挿入しておけば,どちらの極性のアダプタでも使用できます。

といって,電池式のラジオにACアダプタを使う場合,当然,電池の場合と同じ電圧でないとまずいので,本機も6Vのアダプタが指定されています。

こういう場合,ブリッジDiを挿入すると,往復で2回,Diを通りますから,シリコンDiだと順方向電圧降下のため,1.2Vも低下します。

そこで,順方向電圧降下の小さいショットキーDiを使います。ショットキーだと電圧降下は1個で0.2V程度なので,ブリッジDiだと,0.4V程度の電圧降下で済みます。ゲルマDiでもいいですけど,今時売っていませんしね.....。1N60なども最近はチップはショットキーになっています。

ICF-EX5-5.jpg 工事完了です[晴れ]

部分でパターンをカットし,そこにチップのDiとアキシャルリードタイプのDiでブリッジを構成しました。使用したチップのDiは秋月で売っている,東芝のU1GWJ44とリードタイプは日本インターの11EQS04で,どちらも定格40V,1Aです。残念ながら,ブリッジDiを挿入するようにパターンが考えられていないので,表面実装のDiだけでは無理で、▲のような感じで配線しました。

ICF-EX5-7.jpg 順方向電圧です

ハンダ付けが完了したら,テスターの導通テスト or DiテストモードでDiが接続しているはずのパターン同士で導通を調べます。この東芝のチップDiは順方向電圧はかなり小さいです。

これでなんとか修理完了です。ACアダプタはどちらの極性のものでも使えます。親父も喜んでくれるでせう。

        ☆          ☆          ☆

さて,無事に動作したので,改めて音を聴いてみると,何よりSPが大きいだけあって,低音も十分だし,センターコーンがアルミのせいか,高音も伸びていて,とても音がよいです。肝心のAMラジオも,ちょっとオーバーですけど,まるでFMかと思うくらい,ノイズも少なく,クリアーな音質で満足です。また,FMもAMもやはり非常に感度がよく,と言ってAMの場合は高感度だとノイズも多くて困るのですが,本機はそのようなことはなく,とてもいいラジオだと思いました。


2019年12月4日追記

やっぱり,電池とACアダプタの接続部分に,電池側だけDiを1個挿入しました。逆流阻止Diです。

こうしておかずに,ソニーのオリジナルのままだと,ACアダプタと電池が完全にパラに配線されているので,電池が消耗して電圧が低下してくるとACアダプタから電池に電流が流れて電池が発熱します。だから,"ACアダプタを使用するときは電池を抜いてください" とACアダプタと電池を使う,どんな製品の説明書にも書いてあるんですけど,説明書をちゃんと読んで,こんなこと守っている人はいないと思います。iruchanもうっかり電池挿したまま,こんなことやっちゃうので,安全のため,やっておきました。

ICF-EX5-8.jpg 電池側にDi()を追加しました。

センタープラスのACアダプタを挿しても無事に動作することを確認して修理完了です。ご覧になっていただき,ありがとうございました。

       ☆          ☆          ☆

このラジオにバックライトと,周波数カウンタを取りつけられるように工事しました。ご興味ありましたら,続きをどうぞ。



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