再びFMバンドの変更について [ラジオ]
2018年3月14日の日記
このバンドを変更しました。大体,この位置が80MHzです。
6年前に,海外製のFMラジオを国内バンドに変更する方法について書きました。
どうもたくさんお読みいただいているようで,"FMバンド変更" なんて簡単なキーワードでググってみるといきなりトップに表示される始末。ありがたいことですが,前回は簡単にできる方法を書いたので,本当にきちんとFMのバンド変更をやることは書いていないのでちょっとヤバいな......とiruchanは思っていました。どうも申し訳ありません。
前回はFMのバリコンの局発側に15pF程度のコンデンサをパラに接続する,と言うものでした。ごくおおざっぱではありますが,ちゃんと国内のFM局に対応し,今もそのカナダ・Magnasonic社製のFMラジオはiruchanの机の上に鎮座していて,毎日使っています。
ただ,通常の日本のFMバンドに大体,対応していますが,最近はじまったAM局のワイドFMには対応しておらず,改造して受信できた範囲は77.5~90.9MHzです。このように,局発コイルにパラにコンデンサを接続する方法は,日本のFMバンドをほぼカバーできますが,ワイドFMは入りません。
そこで,やはりきちんとトラッキング調整をやり直して海外のFMバンドを日本のバンドに変更する方法について書きたいと思います。ついでに,ワイドFMにも対応させたいと思います。
さて,今回,バンドを変更するラジオは.....
iruchanが20年ほど前に米国へ行ったときに買ってきたもの。GE製のAM/FM2バンドラジオで,アラームクロックが付いています。アナログチューニングのものは日本でもAMだけなら使えますしね。ちなみに,デジタルチューニングのものは米国はAMが10kHzピッチなので,バンドはほぼ同じなんですが,日本では使えませんのでご注意ください。
でも,実を言うと,AMバンドも米国は少し違うのです。
上が1605kHzじゃなくて,AM expanded bandといって1705kHzまでです。1992年に拡大されました。このラジオもダイヤルに1700の表示があります。日本だと上限の表示は1600ですね。大昔は警察無線の帯域で,戦前のRCAのラジオなんかにAMの一番上にPoliceと書かれたところがありました。これって,警察無線が普通のラジオで聴けちゃたの? 犯人が逃げちゃうじゃん。
まあ,当時,FMはあまり聴かないし.....と思ったのですが,時計つきは便利で,今も実家のベッドに置いてあります。AMはさすがに米国製のラジオは音がよいのです。かなりAMも気をつかって設計しているようで,米国でラジオを買うと,AMの音のよいことや感度のよいことに感心させられます。日本製はノイズが多いし,高音が出なくて音が悪いですよね.....。
でも,ワイドFMがはじまったし,日本のFM局が聴けないのも残念なので,これを改造します。
米国の電気製品らしく,やはりMade in Chinaです。ただ,驚いたことに,AM/FMチューナICは東芝のTA2003Pが使われていますし,出力はTA7368Pです。
これ,よくあることなんですけどね.....。
さすがに,もっと前だとMade in Japanなんでしょうが,この時代,部品だけ日本製で組み立てが中国製,と言うのが多かったです。とはいえ,今だとスマホの中身なんか,日本製はカメラとチップのセラミックコンデンサだけ.......なんて状況なんじゃないでしょうか.......orz。
TA2003Pは今も入手可能で,規格表も手に入るので楽です。使われていたのはDate Codeが9604Uで,M'siaとあるので,1996年のマレーシア製のようです。そういえば,たぶんその頃,このラジオを買った記憶があります。東芝の規格表も2002.10の日付があるものがネットに出ています。
例によって,局発の部分をいじります。問題はどれが局発コイルか.....と言うことです。AMはコア入りでしかも赤と決まっていますので楽です。FMは空芯コイルが普通ですが,大体,2個か3個,空芯コイルがあります。本機は3個ありました。このうち,どれが局発コイルかが問題です。
でも,この点,意外にメーカ製は楽なんですよね。たいてい,基板の裏側,バリコンのトリマにFM OSCなどと書いてありますので,それにつながっているコイルが局発コイルです。高周波の回路なので,すぐ近くに設置してあります。
バリコン周辺。←→の部分にコイルが入っています。
まあ,こういうアナログチューニングのラジオの場合,最終的に調整しないとラジオとして使えないので,最後に調整をする人がやりやすいよう,必ずシルク印刷してあります。
ここで顔を出しているのがバリコンのトリマで,AM/FM2バンドなので,4個あります。
このうち,いじるのはFM OSCとFM RF(普通のラジオだとFM ANTと書いてあると思います)ですが,主にいじるのはFM OSCです。FM RFは最後の最後までいじりませんのでご注意ください。もちろん,AM側はまったくいじらないので,絶対に触らないようにしてください。
さて,前回はこのFM OSCのところにつながっているFM OSCコイルに15pFのセラミックコンデンサをパラってやってバンドを変更していました。こうすると日本のFMが聞こえるようになります。
局発コイルは最初の状態です。これだけ開いていました。
さて,ここでスーパーヘテロダイン方式によるFMラジオと,FMのバンドについて復習しておきませう。
AMもFMも原理的にはスーパーなので,ブロック図は同じです。FMの場合,不要電波輻射防止のため,高周波増幅をつけることが義務づけられているので,必ず混合の前に高周波増幅(RF)がついています。TA2003PもRF増幅がついています。AMはディスクリートの場合は面倒なのでRF増幅はつけませんが,ICの場合はたいてい,ついています。ICラジオが高感度なのはこのためです。
TA2003PはFM検波はクォドラチャ検波のようですが,本機はブロック図にあるとおり,セラミックディスクリミネータじゃなく,LCの同調回路になっているようです。
スーパーのラジオは内部で別の発振器(局部発振器)を用意し,中間周波数に変換しています。AMの場合は455kHz,FMは10.7MHzというのが世界的に決まっています。
局発の信号を混合器で入力の電波信号との積を取り,例の高校で習う三角関数の積→和の公式に基づいて,出力に中間周波数と,元の信号±中間周波数の信号が出てくるのをフィルタで中間周波だけ取り出して増幅します。
このとき,局発の周波数が元の電波より高い場合を上側ヘテロダイン,低い場合を下側ヘテロダインと言います。
FMは当然VHF帯を使うのですが,日本だけと言っていいくらい変な周波数バンドで,76~90MHzとなっています。海外では,米国など,88~108MHzのところが多いです。
なんで,日本だけこうなのか......いまだによくわからないのですが,すぐ上にアナログTVの1~3ch.があったから,というのが理由ですけど,そもそもそこになぜTVがあるのか,というのもおかしな話で,米国だとすぐ上はTVじゃありません。
どうも,日本は占領の影響を受け,ずっと上に米軍用の周波数があって,TVがかなり下に移動せざるを得ず,とも連れでFMも世界標準より低い位置になった,らしいです。そういえば,最初は日本のTVは6ch.しかなかったのに,12ch.になったのはやはり使用中の米軍向けの周波数帯が開放されたから,だったですよね。
まあ,欧州ではFMやめちゃってデジタル放送に移行する,というくらいですから,いまさら世界標準にする,なんて話もありません。
AMの場合はバリコンの製作上の問題から上側ヘテロダインしかなく,局発は 電波の周波数+455kHz で発振するわけですが,FMの場合はこれも日本だけなんですけど,下側ヘテロダインになっていて, FM電波の周波数-10.7MHz となっています。米国は上側です。
これはなんでか,というと日本の場合はすぐ上にTVのチャンネルがあって,上側ヘテロダインだとTVの映像信号や音声信号を受信してしまって,FMが聴けないとか,FMのアンテナから局発が漏れて周囲のTVに妨害が出る,などの問題を避けるためです。
ということで,結局,▲の図のように,局発が発振しています。
さて,いよいよ米国製のFMラジオを日本のバンドに対応させる場合ですが.....
米国製のFMラジオは今も書きましたとおり,上側ヘテロダインなので,98.7~118.7MHzで発振します。
これを日本のFMに対応させる場合,下側ヘテロダインとしてしまうと,局発は65.3~69.3MHzとなってしまいますから,かなり周波数を下げないといけません。こうなると局発コイルを交換しないとダメだと思います。
しかたないので,上側ヘテロダインのまま,周波数を約10MHz下げてやれば日本のFM局が受信できます。
まあ,アナログTVはもう終了してしまったし,上側ヘテロダインでも問題ないと思います。
でも,これでも実際にやってみると非常に大変なんですけどね.....。テストオシレータは必須ですし,技術がないと大変難しい作業ですので,自信のない方はやめておいた方が無難です。
今回はワイドFM対応,ということなので,局発を86.7~100.7MHzで発振させます。
☆ ☆ ☆
さて,作業に取りかかりましょう。
まず,FMのバリコンを左一杯回し,一番低い周波数に合わせます。
当然ですが,まだ何もしていないので,この場合は88MHzしか受信できません。
次に,局発の周波数を下げるわけですから,局発コイルのインダクタンスを増やします。
この場合,コイルを交換するのが一番ですけど,それをやっちゃうとあとが大変なので,最後の手段とします。FMはVHF帯を使っていますが,局発コイルは数μHしかなく,ちょっとした寸法の違いで,とんでもないところに同調して変な周波数で発振します。となると,もちろん,まったく放送が入りませんし,テストオシレータやディップメータがないと調整できなくなってしまいます。
まずは,元のセットのコイルをいじります。
インダクタンスを増やせばいいので,巻数を増やすといいのですが,それはできないので,局発コイルを密にします。
ピンセットでコイルをつまんで,縮めます。なお,トリマを回すドライバ同様,ピンセットも非金属製でないとまずいのですが,セラミックのピンセットはとても高いので,iruchanはステンレスのピンセットでやりました。こうすると,調整中は音が出ませんので,一度,縮めては外し,を繰り返します。
それと,もちろん,一気に縮めてしまうと泥沼にはまっちゃいますので,ちょっとずつです。
テストオシレータで,同調する周波数を確認しながら,ちょっとずつコイルを縮めていきます。うまい具合に,少しずつ,下に下がっていくのがわかります。
ところが....。
残念ながら,もうこれ以上縮められない,と言うくらいにしても受信する周波数は80MHzくらいです。これで,NHKも入ったのですけど,まだ足りません。
困ったな~~~。
でも,iruchanは知っていました。
実は,たいていの場合,メーカ製のFMラジオの局発コイルにはパラにコンデンサがついているんです。
これ,なんでだかわからないのですが,たいていのメーカ製ラジオにはパラに入っています。もし,これがついていれば,前回と同様,このコンデンサを少し,容量upしてやればもっと周波数を下げられます。
案の定,このラジオもバリコンの周辺に22pFのセラミックがあり,局発コイルにパラになっていました。
普通,自作する場合はバリコンとコイルだけで作ってしまいますし,教科書にもこんなコンデンサについては書いていないんですが,メーカ製ラジオには入っていることが多いです。なお,▲の東芝のTA2003Pの規格表にはコンデンサがコイルにパラに入っているように描かれていますが,これはバリコンのトリマのことだと思います。
残念ながら,もしこのコンデンサがない場合は,同様に小容量のセラミックコンデンサをパラにしてやってみてください。
一杯に縮めても80MHzまでしか受信できませんでした。隣の22pFを交換します。
理論上,コンデンサの容量は周波数の2乗に比例しますので,約10%周波数を下げるためには30pFくらいになりそうですので,30pFに交換してみました。ついでに,さっきのコイルを少し伸ばして,調整しろを作っておきます。再び,徐々にこのコイルを縮めながら調整します。
ようやくこれで76MHzが受信できるようになりました。
今度は上限が下がってしまいますので,バリコンを一番右に回して,上限をチェックします。当然,108MHzからは下がっているはずです。
この状態で95MHzが受信できるかどうか,確認します。
このようにセラミック製の調整ドライバで調整すると楽です。セラミックコンデンサは試験中のもので,あとで撤去しました。
iruchanの場合は93MHzくらいでしたので,今度はバリコンのFM OSCと書かれたトリマコンデンサを回して95MHzが受信できるようにします。
その後,再び,下限を調整するため,またコイルを少し伸ばしたり,縮めたりします。
さらにまた上限を......と言う具合で,何回もバリコン,トリマ,コイルを調整します。
まあ,正直なところ,AMラジオの場合も同じなんですが,完全に調整できることはなく,ある程度で妥協しないといけませんけどね.....。
iruchanの場合,大体,76MHz~95MHzとなったはずなんですが....。詳しくはまたあとで。
ここまで来て,ようやくFM RFのトリマを少し調整して,一番音量が大きくなる位置で止めます。
まあ,FMはVHF帯なので,コイルのQが非常に低く,せいぜい10とか20くらいしかないので,同調はシビアじゃなく,このトリマは調整しなくてもいいと思います。AMだと大きく違うんですけどね。
これでいいでしょう。ようやくNHK FMが聴けてゴキゲンです。今もこのラジオで "ミュージックライン" を聴きながらブログを書いています。今日は久しぶりに "ラジオ深夜便" をFMで聴いてみようかな~
ついでに,ケースをばらしたので,ツマミなんかのグリスを洗浄剤で落としてから塗り直してやりました。
特に,このラジオは某国産メーカがよく使っていた黄色いグリスを使っています。これ,経年で固まってしまって,そのうち動かなくなりますので,きれいに落として新しいグリスを塗りました。
2018年3月17日追記
ようやく完了したと思ってラジオを聴いていますが,どうにも変な感じ.....。
FMワイドはガンガンはいりますが,どうも通常のFM局が感度が低いです。特に,NHK FMはザー,ザーとノイズが入ります。
やはり可能性としてはトラッキング。
再び調整することにしました。
やはり,上側に少しずれていて,上限が97MHzくらいになっていました。
実は,▲のテストオシレータのダイヤルに頼っていて,周波数カウンタをつながずにやっていました。
残念ながら,ダイヤル自体はあとで調べたらずれてはいなかったのですが,きちんとカウンタかオシロで正確な周波数を確認しながらやらないとまずいですね。
いつも使っているテクトロのオシロをつないで,周波数を見ながら再調整しました。
結局,受信範囲は77.4MHz~94.5MHzくらいとなりました。AMもそうなんですけど,完全にトラッキングをあわせるのは難しい感じです。どうしても下限を合わせると上限が大きくずれてしまいますし,今度は上限を合わせると下限が合わない,という感じで,ある程度で妥協せざるを得ません。
さて,これできちんと合ったはず.......なんですが.....。
これでもNHKの感度が低く,かなりノイズが乗ります。
こういう場合,疑うのは▲のTA2003Pのブロック図にあるとおり,入力にあるバンドパスフィルタ。
自作する場合はほとんど入れたりしないんですけど,メーカ製のものには入っていることが多いです。特に,カーステではノイズが多いので必ず入っていると思います。
ただ,これが実は大きな問題。
メーカ製のセットに入っているのはセラミックフィルタを使ったバンドパスフィルタ。残念ながら,これが手に入らないんですよね~。
閉店した,秋葉のお店で米国向けの88~108MHzというのは買ったことがありますが,国内バンドのものは見かけたことがありません。
幸い,本機をよく見てみると,入力には単なるLCの同調回路が入っているだけで,バンドパスフィルタ,というよりはハイパスフィルタ。バンドパスならあと2個,コイルが必要なはずです。
残念ながらコイルは空芯コイルなので,外してインダクタンスを調べない限り,インダクタンスがわかりませんが。おそらく,80MHzより下をカットするようになっているはずです。それで日本のFM局が入りにくいと考えました。ただ,これじゃ,減衰率はそれほど高くはないし,このカットオフを下げてもあまり変わらないのでは,と予想しました。
結局は予想どおり,コイルにパラに入っている30pFを少し大きくしてみましたが,現象は変わりません.....orz。
奥のRFコイルと結合しないよう,向きを変えてありますね。
しかたないので,奥の手を......。
米国製のラジオはよく,AC電源コードがアンテナ代わりになっていて,そこから電波を取り込むことが多いです。電灯線アンテナですね......。あ,今はそんなこと言わないか~。
iruchanが使っているBOSEのWave Radioもそうなっています。もっとも,Wave Radioは外部アンテナ端子もついていますけどね。
なんでだかわかりませんが,国内のFMラジオはAC電源を使うものでもたいていはアンテナ線が別についていて,たらりと電線を垂らすものが多いです。これ,邪魔で,いつもWave Radioみたいに電灯線から取りゃいいじゃん,と思っていました。
でも,うちで使っているWave Radioも電灯線じゃ感度が足りず,別にアンテナをつないでいることを思い出し,本機にも▲のLC同調回路のところに電線をつないでみました。
やはり,大正解。感度大幅向上でした。NHKも雑音なく,きれいに聴けます。
いろいろやったけど,結局はアンテナが重要,という基本的なことを再認識して終わり,でした......。
2018-03-14 08:37
nice!(7)
コメント(0)
コメント 0