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ゲルマニウムトランジスタ スーパーヘテロダイン方式FMラジオの製作~その1~ [ラジオ]

2018年4月11日の日記

先月,米国バンドのFMラジオを日本バンドに変更するのがうまくいったのに気をよくして,自作のFMラジオを調整したいと思います。

iruchanはゲルマニウムトランジスタが大好きで,本ブログでも,Cherryの4石レフレックスラジオキット6石8石スーパーをゲルマニウムTrで作ったり,完全にプリント基板から自作したラジオも2種類作りました。ひとつは国産Trを使ったもので,もう一つは英Mullardのガラス封止の砲弾型Trを使ったものです。

どれもうまくいきました。お気に入りはMullardのTrを使ったもので,OC44OC71を使っています。それこそ,トランジスタ黎明期の本当に初期のTrで,そんなTrが今も使えるのに驚きましたし,感度もよいし,音もよいのにびっくりしました。今もそのラジオでNHKニュースなんかを聴いています。

さて,今日はいよいよFMラジオを作っていきます。フルディスクリートで,しかもゲルマニウムTrを使ったスーパー式のものです。

残念ながら,やはりFMは難しく,過去の製作記事をさんざん探したのですが,ゲルマニウムのスーパーFMラジオの記事は2つの記事しか見つかりませんでした。ひとつは無線と実験に載っていた,カーステレオのクラウンFM-100型と,単行本の "ラジオの組み立て"(吉本猛夫著,元文社1965年刊行)です。

クラウンのは自社の新製品を紹介するための記事ですが,詳しい設計手法や回路も載っていて参考になります。また,"ラジオの組み立て" の方は著者が東芝の柳町工場勤務と奥付に書かれていて,これもどちらかと言えば,東芝のFMラジオの設計記事,みたいな感じです。いずれにしてもプロの技術者が測定器を使って組み立てた内容で,あまりアマチュアが一から作るための記事,という感じではありません。やはり難しいのですね。

おそらく,TrのFMラジオは作るのも調整するのも難しいので,測定器を持たないアマチュア向けの製作記事としては敬遠されたのだと思います。それに,iruchanも記憶が薄れているのですが,ディスクリートのFMラジオキットというのはなかったと思います。AMだとCherryのほか,ACEやHOMERのキットがありましたね~。今,売られているFMラジオのキットはICを使ったものですし,肝心のフロントエンド部分は事前にコイル類を調整してあって,無調整でFM局が受信できる,と言うものですよね。

さすがにFMともなるとSGやディップメータなど,測定器がないと調整できません。おそらく,製作記事もほとんどないし,実際にTrを使ってスーパーのFMラジオを作った人も少なかったと思います。真空管のFMラジオというのはわりに製作記事があるのですけどね。

それに,日本の場合,FM放送の開始は1969年で,すでにTrと言ってもシリコンが当たり前になっていた時代ですから,余計にゲルマニウムの記事が少ないのだと思います。

とはいえ,試験放送は1960年に始まっていたし,69年までにはほぼ全県でNHKの放送が実施されていたので,HiFiマニアの人は作ることを考えていたし,先の記事や本も出たのは60年代に入ってすぐくらいのことですから,実際に作ろうとした人はいたようです。

iruchanはシリコンTrが実用化されてからの生まれなので,ゲルマニウムTr世代じゃないんですが,本にはたくさんゲルマニウムTrの記事が出ていたし,実際,メーカ製のラジオもかなり遅くまで外観はとてもモダンなのに,中身はゲルマニウム,と言う時代が続いたので,とてもゲルマニウムTrには親しみが湧きます。中学になって初めて2SC372(懐かし~~)を使ったラジオを作ったとき,シリコンTrに驚いたことがあります。外形もゲルマニウムだと金属缶なのに,シリコンはモールドになっちゃっていて,例のシルクハットみたいな形状に違和感をおぼえたのを今も思い出します。

もう,あれから30年も経っていますが,ゲルマニウムTrを使ってFMラジオを作ってみたいと思います。

さて,まずは使用するゲルマニウムTrなんですが......

NEC transistors-1.jpg NECのゲルマニウムTrたち

部品箱をひっくり返してかき集めました。黒いNECのTrは河童さんからいただいた中古のものですが,全部生きていました。黒いのはたいてい通信用で,普通は市販されていないものです。通信用=電電公社用と考えてよく,VHF帯の中継器などに使われたものだと思います。

規格を載せておきます。

       VCEO(V)  IC(mA)  Pc(mW)  hFE  fT(MHz)

2SA56    -15     -50     150    40   300  

2SA213    -15     -2       15    -    140

2SA244    -25     -30     200    -    400

2SB101    -30     -50     125    -    1.2

2SB163    -30     -100     125    70    0.8

FM用のTrだと松下の2SA71が有名です。太めの金属缶ケースで,シールド電極を持った4本脚になっています。もとは蘭PhilipsのOC171です。FM用のTrを開発するのに各社苦労していた時期に欧州からカネで技術導入して作ったので,ちょっと反則という気がするのですけどね.....。ということで,2SA71も持っているのですが,反体制派のiruchanはブルジョワは嫌いなのでFA選手は2軍落ちです。実際,2SA71ってデブでおいしいもの食べ過ぎて太った,という感じがしてあまり好きになれないんですよね........(^^;)。

結局,NECのTrを使うことにし,スタメンは2SA56(RF,conv)+2SA244(IF)+2SB101(LF)+2SB163(output)のラインナップで臨みます。ちょっと2SA213は定格が心細く,うっかりすると飛ばしてしまいそうで,ベンチで代打要員です。

さて,次はバリコンやコイル類です。

幸い,まだポリバリコンのFM用は入手可能です。2連の最大20pFくらいのものです。国産のミツミやTWDのものも入手できると思います。黒いプラでできた韓国製のが最近,秋葉で売られていますが,どうも絶縁のポリエチレン樹脂が弱くて破れる,と言う話を聞きました。

問題はコイルやIFT。

コイルは数μHのものが必要です。発振コイルだと0.1μHくらいですので,ほとんどが空芯となります。普通は市販されていないので,エナメル線で自作しないといけません。

これ,大変なんですよね~。

やはり,FMはこれが最大の問題だと思います。

自作すると巻数や直径,線径によりインダクタンスが大幅に変わるので,うっかりすると(しなくても)とんでもないところで発振して,まったく局が受信できない,と言うことになります。せめてオシロか周波数カウンタがあると,発振している周波数が確認できて,調整できるのですけど。

ということで,メーカ製のラジオなどに使われている,コア入りでねじで調整できるやつが入手できると楽ですし,実際,東光やミツミのカタログには載っていたり,メーカ製ラジオには使われているので,こういったのが入手できるといいのですが,市販されていることはほとんどありません。

幸い,熊本のFCZ研究所が長年,ハムバンド用のコイルを販売していて,FM用に使える80MHz帯と144MHz帯のコア入り可変インダクタがありますので,使わせていただきます。アンテナコイルやバンドパスフィルタには80MHzを,発振コイルに144MHzを使うとよいと思います。また,10.7MHzのIFTもあるので,ありがたく使わせていただきます。

ただ,FCZのコイルはもう10年くらい前に製造中止になっています。iruchanもあわてて買いだめしたものです。現在は中国製の互換品が手に入るようですが,品質の面でやはりFCZの方がよいようです。

FCZ 10S10.7.jpg FCZの10.7MHz IFT

非常によくできていて,壺型コアを上からかぶせるようにして調整します。実測したところ,インダクタンスは4.79μH,Q=8.09でした。内蔵されているコンデンサは51pFのようです。

なお,FCZ製じゃなく,ジャンクなどで古いFM用IFTを使う場合はいくつか問題があります。また書きたいと思います。

Ge Tr FMラジオ基板.jpg 基板が完成しました

プリント基板は100×75mmです。ちょっと無理で,もう少し大きな基板にすべきでした。一応,これで低周波部分も入っていて,スピーカを直接つなげます。

次回は調整編です。

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ディスクリートFMラジオ

ディスクリートFMラジオはほんとにむずかしいようですね。 

丹羽和夫氏は書籍でもFMのディスクリートは難しくて断念したみたいなことを描かれていた。数年前に別府伸耕氏が情熱のディスクリートFMで完成させていたようです。
by ディスクリートFMラジオ (2022-08-01 18:06) 

iruchan

どうもコメントありがとうございます。丹羽さんの記事は読みました。
by iruchan (2022-08-01 19:07) 

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