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FMバンドの変更 [ラジオ]

2012年2月11日の日記

先週,カナダMagnasonic社の時計つきAM/FMラジオを米アマゾンで買いました。ベッドの横に置いておくラジオが必要なのと,やはり時計付だと目覚ましにもなりますし,便利なので買いました。アナログチューナだとアメリカ大陸向けのものでもAMは日本で使えます。

ただ,どうしてもFMだけは日本以外の大部分の国では88~108MHzなので,バンドが違い,聞くことができません。でも,PLLシンセサイザチューナじゃなければ何とかバンド変更ができます。PLL式のものでも,最近のものはマイコン制御なので,裏コマンドがあって,何かと何かのボタンを一緒に押す,などの操作をすると日本国内バンドに変更できるものがあるようです。ただ,PLLシンセサイザチューナのものは大部分ハードウェア制御のタイプですので,バンド変更は無理と考えた方がよいと思います。ソフト制御式のもソフトがそういう風にバンド変更可能なソフトになってなきゃいけませんね。

さて,今回買った,Magnasonic社のMM176Kというクロックラジオはチューニングがダイヤル式だったのでアナログであることを確認して米アマゾンから買いました。ただ,前回も書いていましたが,チューナはバリキャップだと思ってしまいました。しかし,ダイヤルを回してみると180゜で止まりますし,これならバリコンです。バリキャップだと電圧で容量を変化させるので,基本的にボリウムを使用するので回転角は300゜くらいのはずです。

ということでバリコンであることがわかったので,何とかなりそうです。もちろん,バリキャップ同調の場合でも,日本バンド用のバリキャップに交換すれば可能なはずです。

と言うことでFMラジオの復習をします。

スーパーヘテロダイン方式のチューナはAM,FMにかかわらず,IF周波数だけ,高いか,低いかの周波数で局発を動作させます。AMの場合は高い方で発振させますので,900kHz~2MHzくらいで発振させます。これを上側ヘテロダインと言います。AMの場合は下側ヘテロダインは不可で,逆にすると80kHz~1.2MHzという非常に幅広い範囲の発振器が必要になります。15倍もの周波数を変化させないといけない,と言うことになりますね。これだと途中で何回もバンド切り替えが必要になります。上側ヘテロダインだと2倍強の周波数変化,と言うことなので1個のバリコンで何とかなります。

FMの場合は基本的に米国も含め,諸外国ではこれも上側ヘテロダインなのですが,日本ではFMのバンドのすぐ上にTVの1~3ch.がある(あった)ため,下側ヘテロダインとしています。つまり,FMのIFは10.7MHzと決まっていますので,局発を65.3MHz~79.3MHzで発振させればよいわけです。スーパーの唯一と言っていい欠点がイメージ妨害で,もし,日本でFMを上側ヘテロダインとすると,TVの電波がFM帯で受信できることになり,まあ,単純にTVの音声だけ聞こえれば問題ないと言うことになりますが,映像信号も受信してしまい,その場合,ブーッと言うだけの音が聞こえますので,その周辺のFM局が受信できなくなります。

ということで,日本ではFM受信機は下側ヘテロダインで設計してあります。しかし,米国では,FMバンドの上限の108MHzからすぐ上にはTVの放送はないので,上側ヘテロダインで設計してあり,局発は98.7MHz~118.7MHzで発振するようにしてあります。

と言うことで,米国向けのFM受信機を日本国内向けに変更するには局発の発振周波数をざっと33MHzくらい下げてやればよいことになります。

ただ,もうアナログTVの放送は終了していますし,こんなに周波数を下げなくても上側ヘテロダインと言うことで12MHzくらい下げてやれば日本のFM局が聴けることになります。

で,これをどうやってやるかと言うことなのですが.....。とりあえず,分解します。写真はすべてクリックすると拡大します。

MM176K-4.jpg 内部の様子

やはり,内部はバリコンでした。こんなに小さな2バンドのバリコンというのは珍しいですね。このバリコンほしい~。バリコンチューナなら比較的簡単にバンド変更できます。ICは*D2003GPと言うのが1つと,LS2822Lというのが使われています。*の部分は字が読めません。どちらも知らない型番ですが,調べてみると後者は中国紹興市の半導体メーカの製品のようで,LM386みたいなパワーアンプのようです。出力は1Wです。AM/FMチューナらしいD2003GPとか言うICはどうも東芝のTA2003のよう。同じ16ピンDIPのパッケージです。

さて,基板上に3つ,空芯コイルが見えますが,これらがFM用です。普通はコイルは2つで,1つはアンテナ同調用,もう1つは局発用です。3つ目が不思議ですが,バリコンから離れたところにあるコイルはディスクリ(FM検波)用だ思います。FM検波はいろんなやり方がありますが,ICではクォドラチャ検波を使うことが多く,セラミックディスクリミネータが使用されます。もっとも,IFに同調したLC回路でもいいので,IFTの片側や空芯コイルとコンデンサ,と言う組合せもあります。

局発用のコイルをいじってやれば受信バンドを変更できます。米国では上側ヘテロダインなので,コイルのインダクタンスが小さい方(すなわち巻数の少ない方)が局発用です。日本のFMラジオだと局発コイルの方が巻数が多くなっています。バリコンのすぐ横に2つ並んでいるコイルのうち,↑ の写真で言うと,下側のコイルをいじってやればOK,と言うことになります。

ただ,ここで注意したいのは空芯コイルなので,一度いじってしまったらもうおしまい,と言うことです。だから,接着材で固めてあるんですね。つまり,失敗したらもう元に戻すことができません。東光などからコア入りのコイルも発売されているので,これを使ってくれていれば,コアを調整すればよいので簡単ですが,空芯コイルの場合は一度いじってしまったらもう元に戻すことができなくなります。

ということで,コイルじゃなく,コンデンサの方をいじってやります。局発の周波数を12MHzほど下げてやればよい,と言うことなので,局発コイルにパラに10数pFを接続してやればOKです。局発コイルはFM用の2連のバリコンにパラについていますから,4つあるバリコンの端子のうちの1つにパラに接続すればOKです。 ↓ の写真の左側の2つの端子がFM用です。

MM176K-8.jpg 局発コイルにパラに15pFをつなぎます。

発振器を持っていなければカットアンドトライで10pF前後のセラミックコンデンサをつないでやります。最初に,10pFをつなぎましたが,最低受信周波数は80.7MHzで,ちょっと高めだったので,次に15pFにしました。このとき,77.1MHz~91.1MHzとなりました。まあ,これでいいかと思いました。もし,下側ヘテロダインとして33MHz程度,局発の周波数を下げる,と言うことになるとコイルをいじらないといけなくなりますので,上側ヘテロダインでバンドを替える,と言う方法は簡単だと思います。厳密に言うと,きちんとFMのバンドの上限(90MHz),下限(76MHz)を一致させるにはコイルとバリコンのトリマと両方いじらないといけません。正式に下側ヘテロダインとすると,この上限,下限の周波数を一致させるのがむずかしいと思います。多分,コイルそのものを日本バンド用のインダクタンスの大きいものに交換しないといけないと思います。

MM176K-7.jpg 無事に日本バンドに変更できました

もう少し,大きな容量の方がよいようですが,一応,表示も80MHz以下に下がるようになり,無事にNHK FMを聞くことができました。NHKさえ聞ければよいのでこのままとしました。驚いたことに,表示はマイコンで(局発の周波数-10.7)MHzを表示するようになっているのか,ちゃんと数字も低くなりました。最寄りのNHK FMにあわせてみると,ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲をやっていました。例の "ウルトラQ" (古っ!)のオープニングに似た曲ですね。ご機嫌です。あと,今このブログを書いているとN響演奏会でシューベルトの"ザ・グレート" をやっています。ただ,なぜか最近,NHKはこの曲,交響曲第8番なんて言ってますね。それは "未完成" じゃないんかいっ!,といつもオヤジは怒っています。まあ,"ザ・グレート" も昔は7番でしたから,最近,何かわかったのでしょう。

あと,本当言えば,バリコンについているトリマを局発側,アンテナ側の両方を調整してやらないといけません。しかし,例によってバリコンもどこのメーカのものかわからないので,間違ってAM側をいじってしまったりすると後が大変です。アンテナ側はもともとVHF帯はQが小さく,せいぜい10とか20程度の値しかなく,いじってみてもそんなに感度は変わりません。大体,FM受信機ではバンドの中心周波数に,日本では80MHzくらいに同調するようにあわせてあるだけで,そんなにシビアなもんじゃないので,放っておきます。

また,デエンファシスの時定数も米国は75μs,日本は50μsなので変更しないといけませんが,こんな小さなスピーカのラジオですので,音で聞いてもわからないし,そのままとしておきました。

あと,分解してみてわかったのはAMのセラミックフィルタはムラタのSFU450Bでした。これは3dB帯域幅で10kHzと比較的広帯域のものです。周波数特性で言うと,5kHzで-3dBというわけです。まあまあAM用としては広い方だと思います。日本のラジオはこの部分にもっと狭帯域のセラミックフィルタを使うので,ものすごくAMの音が悪くなっていると思います。AMステレオがはやった頃,15kHzくらいの帯域幅を持ったフィルタが使われて,モノラルの局でもかなりHiFiで聞くことができましたが,相変わらず日本のラジオは狭帯域のものが多く,高音が出ず,電話みたいな音のするラジオが多いです。その意味で,海外のラジオは結構広帯域のフィルタを使っているので音がよく,こういう点で海外のラジオを買う理由になります。もっとも,米国のAM局は日本で言えば,コミュニティFMのようなものでその市だけをエリアとするような数kWの出力の局が多いので,混信の問題も少なく,広帯域のフィルタでも問題ないというのがあるとは思いますが,もっと日本のAMラジオも音について気を使ってほしいと思います。

それにしてもこのカナダMagnasonic社の時計つきラジオ,とても使っていて楽しいです。プロジェクターになっている時計は天井に時刻を表示して,意外に面白いです。それに,とても機能に関して気を使っている感じで,温度表示も出ますし,カレンダー機能もあるので,曜日も自動的に出ます。どちらも時計用LSIやPICに標準で備わっている機能とは言え,よくできています。また,基板をみても,コネクタを使ってちゃんと修理ができるようになっていますし,整流用のダイオードにはパラにコンデンサをハンダ付けしてあります。これ,半導体のアンプなんかで問題になりますが,ツィータからジーッとか,チーッとか音がすることがあります。ダイオードのスイッチングノイズなのですが,この対策はコンデンサをパラにするか,ファーストリカバリDiにするか,ですが,このラジオ,ちゃんとコンデンサをパラってあります。よく気を使っているなと感心しました。かつてはこういう細かい気の使い方をするのが日本製のものだったのですが,すっかりお株を奪われてしまった感じです。日本製品が売れないのも納得,という感じがしました。

2018年3月14日追記

きちんと単一調整をして,正式に日本のFMバンドに合わせる方法について,ここで書きました。最近のワイドFMにも対応しています。 


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たける

始めてコメントさせて頂きます。
鉄コレ制御器のNゲージ化をさがしていてブログを拝見させて頂きました。
不躾ながら自分もNゲージ対応にしたいのですが宜しければ質問とかをさせて頂いても大丈夫でしょうか?
by たける (2012-02-15 23:50) 

iruchan

たけるさん。どうもコメントをありがとうございます。

どうぞ,どうぞ。ご質問いただければ幸いです。

ただ,このページは全然関係ないページですので,下記にコメントしてください。

http://iruchan.blog.so-net.ne.jp/2011-01-16-1
by iruchan (2012-02-16 10:38) 

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