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New! ファンレスPCの自作 [パソコン]

2019年12月30日の日記

fanless PC.jpg こんなに小さいです[晴れ]

   壁紙は9月にパリに行ったときのミロのヴィーナスです[黒ハート]

とうとう,現在使用しているパソコンがやばそうで,突然死するようになりました。

なんの前触れもなく,画面が真っ暗になり,再起動します。

もうこの記事を見てみると6年も使ったPCと言うことになります。本当は今年の夏に作り替える予定だったのですが,いろいろ忙しくて,冬に延ばしていましたが,この状況では早く作り直さないとまずいです。

直前にフリーズすることも,また,一瞬でもブルー画面になったりすることはないし,イベントビューアを見ても "予期しないシャットダウン" と記録されているだけで,ソフト的なエラーが出ているようには見られません。突然,画面が真っ暗になるので,おそらく原因は電源のトラブルと思われます。

そういえば,Athlonを使っていた前々作はある日,まったく電源が入らなくなり,BIOS画面すら表示しなくなりましたが,これも電源のトラブルだと思います。電解コンがパンクしたか,液漏れでリップルが増えて,起動しなくなったのだ,とあとから思いました。実際,結構,PCの電解コンを取り替えておられる人も多いようですね。

ただ,今のPCはほとんど電解液を使った昔ながらの電解コンデンサを使用しなくなり,導電性高分子固体電解コンデンサを使っていると思います。iruchanの現用機もそうですし,今回のも本来は産業PC用と思われるので,基板上のコンデンサは固体電解でした。とすると,電解液漏れではなさそうです。

と言って,固体電解コンデンサは導体が固体になっている分,一度,ショートすると極めて危険なので,もしその故障だったら火を噴く,と思いますから,そうでもなさそうです....。

まあ,こういう状況だったらあっさりメーカ製だったら買い換え,自作品だったらマザボの修理なんてことを考えずに作り直した方がよさそうです。

それに,iruchanのPCはA4 5300なんてしょぼいCPU(AMDではグラフィックが一緒になっているので,APUと言っていますけどね)を使ったのがたたり,ここ数年は遅くて腹が立つ,と言う状況でしたから,そろそろ作り替えようかと思っていました。それに,bluetoothがどうにも使いづらく,せっかくFILCOのワイヤレスキーボードを持っているのに,2回に1回は認識しない,と言う問題があって,いろいろドライバをいじったりしても直らないので,あきらめて有線のキーボードを使っていたりしました。

☆マザボ&CPU

PCの自作,というのはそもそもマザボ選びであるわけですが,今回,とにかくiruchanは小さいものが好きなのでmini ITXにしました。これ,最小170mm×170mmなので,非常に小さいです。

マザボのサイズを決めちゃうと,次はCPUですが....。

iruchanはいつもならAMD派なので,AMDから選びたいんですけど...。

実は,Amazonでマザボを見ていたら,ファンレスものがあるではないですか!

これにしよ,と思いました。

iruchanは仕事でファンレスのPCを使っているんですけど,何より小型だし,ファンがないので静かなのにはいつも感心しています。いつか,自作してみたい,と思っていましたが,まだ本来は産業用のPCなので,民生用としては販売されていません。そんなに値が高いものではないのですけど.....。

JR東日本の電車など,車内に液晶モニタがついている電車が増えてきましたけど,これ,ほとんど,産業用の組み込み型PCというのを使っていて,台湾AAEON社の産業用PCを使っています。

性能は低くてもよいが,とにかく安定して動作してほしい,というニーズがありますけど,電車などはまさにこれで,振動も激しいし,特に温度条件は厳しく,高温に耐える必要があるのに,ファンがあるとそれ自体が寿命があるため,信頼性が低くなってしまいます。

そこで,筐体自体を放熱器にして,CPUや内部の熱を筐体で放熱しよう,と言うアイデアに基づいて設計されています。また,記憶媒体も動く部分があると故障の原因になるため,SSDを使っている場合がほとんどです。

温度的には驚くべきもので,周囲温度60℃でもWindowsが動く,なんてものもあります。

実際,iruchanも実験しましたけど真夏の炎天下にノートPCなんかを持ち出した日にゃ,5分と安定して動作しませんけど,こういう産業用のPCはちゃんと動きます。

と言う次第で,1台欲し~な~と思っていましたが,自作することは難しく,あきらめていましたが,すでにファンレスのマザボが市販されているようです。HTPCと言って,ホームシアター用に静かなPCとして使われているそうです。そう言うニーズがあるんですね。確かに,CPUのファンはうるさく,それがブンブン言っている環境では落ち着いて映画も見られませんよね.....。

と言う次第で,何社か出しているファンレスマザボを使いました。条件としては,VGAがついていることと,できればWiFiがついていることです。iruchanの液晶モニタは古くて,CPRM非対応なので,VGAがないと地デジDVDのディスクを見られませんので.....。といって,mini ITXだとHDMIのみ,というのも多いので注意が必要です。

候補はいつも使っている,AsusのPRIME J4005I-Cにしようかと思いましたが,CPUがCeleron Dual-core J4005のため,クアッドコアのJ4105を使った,ASRockのJ4105-ITXにしました。ASrockは一度も使ったことがないので不安ですが.....。

ASrock J4105-ITX.jpg ASrock J4105-ITX

ファンレスなので,CPUを覆うように大きな放熱器がついています。オーディオ部にはELNAのオーディオ用コンデンサをおごっています。リチウム電池も日本製でした。

残念ながら,AMD派なので,AMDのGPUを使ったファンレスマザボを探しましたが,ありませんでした。あるかも。

CPUオンボードなので,CPUで悩むことはありません。また,値段はマザボとCPU別々に買うより断然安いです。この組み合わせだと15,000円以上するでしょう。それに,途中でCPUを載せ替えることはできませんけど,iruchanは過去,1回しかやっていません。CPUを載せ替えるくらいなら,マザボごと交換しようと考えています。

メモリはDDR4ですが,ASrockのマザボはノートPC用のを使うので間違えてはいけません。Asusのはデスクトップ用でした。買ったのはTranscend製の8GB1枚もの。mini ITXだとメモリスロットが1カ所しかないものもあるので,4GB×2という具合にはいきませんので,お気をつけください。

残念ながらWiFiはついていないのですが,M.2スロットはついているので,後付けしたいと思います。また,ファンレスPCは産業用に使われることが多く,少なくなってきているVGAがついているものがありますし,今回のASrockのは驚いたことに,もはやノートPCにもついてない,COMポートがついていました。

☆ケース

さて,やはり小さいPCと言うことなので小さなケースを探したいと思います。

前作はmini ITXケースなのに,巨大で,机の下に置いているんですが,邪魔でしようがありません。当時はこれでも小さかったのですが,やはりキューブ型はでかいです。

最近はAmazonなんかを見ても、弁当箱くらいの結構小さなケースが出ていますね。

といって,あまりに小さいものはHDDが1台しか積めないのがほとんど。最低,ケースの高さ(幅)は60mmくらいは必要です。

iruchanは,必ずデータ用に,C:ドライブとは物理的に別なドライブを用意することにしているのでHDD2台収容可能というケースが必要です。別に外付けでもいいんですが,それじゃ,また邪魔ですしね.....。

こうしておくと,C:ドライブがクラッシュしても,データは助かるし,OSの再インストールをするときでも,データ用HDDの電源を抜いておけば,間違ってデータ用をフォーマットする,なんて間抜けなトラブルも防げます。

ということで,iruchanはC:ドライブは125GBのSSD,データ用はE:ドライブとして500GBを積んでいます。いずれ,2TBくらいにしようと思っていますが,今回はドライブ類は前作を流用するので,コスト低減ができました。こういう点,PCを自作するメリットのひとつですよね。

今回,ケースは中国製の全アルミ製の弁当箱くらいのサイズのものにしました。大きさは197×197×60 mmです。

これでもiruchan的にはまだ大きいのですが,HDD2台を収納できるもの,と言うとこれが最低サイズくらいだと思います。

SSD+HDD.jpg こうやってHDDを2台,内蔵できます。

結構,シルバーのカッコよいもので,届いてみると,メッキがしてありました。アルミだから,アルマイト加工してあるのか,と思いましたけど....メッキの方がアルマイトより安いんでしょうか。多少,縁にバリがあるのが気になりますが,ダイカスト製のボディはとても丈夫だし,格好もよいです。

こう言うの,Amazonでも売っているんですが,残念ながら,フロントパネルにUSBがないものがほとんど。これは困りますね~。挙げ句の果て,縦型になっていて,てっぺんについているものもあります。

買ったのは正面にUSBスロットがあり,残念ながら,USB2.0なのは残念ですけど,ないよりマシです。

電源はHTPC電源なので,DC12V入力のものです。

マイクロATXなどのケースと異なり,mini ITXだと電源非内蔵というものも多く,これもそうなのでACアダプタ仕様です。

仕方ないので,ACアダプタを買わないといけないんですけど,12Vのアダプタなら手持ちがたくさんあるし,それでいいや,と思って買わなかったのですが.....。

ここで落とし穴にはまっちゃいました。

本機は5Vの電源も必要なため,別途ACアダプター電源キットを購入し,ATX電源と同じ機能を持たせる必要があります。5VのDC/DCコンバータを内蔵しています。これはAmazonで2,000円ほどでした。それをマザボの電源ソケットに差し込んで使います。SATAなどの電源も出力してくれ,コネクタもついています。

ところが.....。

電源キット.jpg 電源キット

この電源キットはDC12Vを入力としているのですが,ACアダプタのプラグが外径5.5mm,内径2.5mmセンタープラスのものが必要です。

非常によく見かける,ごく普通の5.5mmのプラグなんですけど.....。内径はφ2.5mmでした[雨]

以前も書きましたけど,φ5.5mmのプラグは2種類あり,内径が2.1mmのものと2.5mmのものの2種類があります。

まあ,iruchanはどちらも半々くらい,と思っていたのですが.....なんと,12Vはほとんどが2.1mmのようです。

秋月電子やマルツも,12VのACアダプターはすべて内径2.1mmのものでした。iruchanの手持ちも全部,2.1mmです。

これじゃ,この電源キットに入りません。

DC plug.jpg 夫の○○○が入らない.....ってか!?

今,このタイトルの本がベストセラーになっていますね。来年,映画化もされるようです。まあ,確かにそんなに簡単に入らないものだし,よく,離婚理由として,性格の不一致といわれますけど,実際には性器の不一致というのも多いと聞きます。中学生が1回セックスしただけで妊娠する,なんてよく聞きますけど,そんなに簡単に入るものじゃなく,ちょっと信じられないのですけど.....。

しかたないので,ACアダプタのプラグの不一致,というのもシャレにならないので,手持ちが結構あるのでプラグだけつけかえてもいいのですが,余ったのは全部実家に置いてあるし,1個,買うことにしました。

といって,わざわざ内径が2.5mmのものだけ買うのも馬鹿らしいので,各サイズのプラグと,電圧が変えられるタイプのものを買いました。

出力電流は2Aなので,ちょっと心細いのですけれど.......でも,なんともありませんでした。Windows10もちゃんとインストールでき,起動してからも突然電源が切れる,と言うことはありません。ACアダプターもまったく発熱していませんし,問題ないと思います。ただ,基本的には60VA(12V,5A)級以上のものが必要だと思います。

universal adaptor.jpg 使用したuniversal adaptor

  中央の赤いロータリーSWで、出力電圧を切り替えられます。

☆パイロット&HDDランプについて

さて,ケースはAli Expressに注文しました。よく似たものは売っていますが,同じものはAmazonでは売っていません。やはりAliの方が安いし,なによりAmazonばかりで買うのもなんだし,Aliも驚いたことに大部分,送料無料なので助かります。今度のもケースは$45でしたが,送料無料で,深圳から送られてきて,11日で届きました。

そういえば,昔はネット上にもパーツ屋さんがたくさんあって,部品買うのに,お店を選ぶだけでも苦労するくらいでしたけど,改めてネットを探しても部品屋さんがありませんね。Two Topもパソコン工房に買収されて,部品も中古部品ばかりです。だから結局,Amazonばかり....ということになっちゃうんですよね~。

あとは,普通だったらメモリを取り付けたマザボをケースに取り付け,電源キットを取り付けて,HDDやドライブをSATAケーブルで接続し,フロントパネルのLEDや電源スイッチの配線をして終わり,なんですけど,本機はちょっと工夫しました。

電源SWは周りにLEDがついていて,照らされるようになっています。

ところが....。

予想通り,LEDはやはり青色。青色LEDは好きじゃないので,これは電球色LEDにしようと思いました。青色LEDははっきり言って,趣味が悪いと思っていますが,中国製品はこれ見よがしについていますね~。中国の人は青色が好きなんでしょうか。

ついでに,電源用のパイロットランプと,HDDのアクセスランプ用のLEDをつけようと思います。C:ドライブはSSDなので,ランプがないとSSDが動いているかどうかわかりませんからね。ところが,残念ながら,マザボにはHDD LEDのピンヘッダがついていますが,ケースにはLEDがついていません。

じゃ,まあ,どうせアルミ製だし.....ということでφ3.0mmの穴を2つ開けて,これらのランプにしました。

pilot LED.jpg 点灯テストです。

   基板だけの状態なら,ちゃんと点灯するんですが......[雨]

またまたところが.....。

ちゃんと基板だけの時は3つのLEDが点灯するのに,ケースに取り付けると点灯しません。

どこか,電源ラインがケースに触れているかと調べてもそうはなっていません。

よくアンプを作っているとありますけど,プリント基板をねじで固定したあととか,フタを閉めた途端,音が出なくなることがありますが,たいていは,こういう場合,どこかでハンダミスがあったり接触不良があったりするのが原因なのでいろいろ調べてみたのですが.....。

どこにもこうにも原因箇所が見つかりません。

ようやく,電源用のLEDをアルミパネルにはめると点灯しなくなる,と言うことに気がつきました。

なんで~~~ぇ~っ!!

そもそもLEDは樹脂でできているし,完全に絶縁しているので,パネルに固定すると点灯しなくなる,というのはあり得ないと思います。もう,まるで超常現象。電子工作しているとこういう現象に遭遇しますけど,まさかパソコンの単にLEDを点灯するだけの回路でこういう現象に遭うとは思いもしませんでした。それも,もし,ハンダ付け不良なら,パラにほかのLEDが接続しているので,全部点灯しなくなる,と言うのもわかりません。

HDD LED.jpg こういう具合に配線しました。
 
オレンジのLEDはHDD表示用です。別に何色でもいいんですけど,iruchanは暖色系のLEDが好きなのでオレンジにしました。マザボ上のHDD LEDというヘッダーピンに差せばOKですが,やはりそのままじゃ,明るすぎるので,3.3kΩを挿入しています。

しかたないので,そのまま,パネルに点灯する状態で少しだけ挿入しました。原因がよくわかりません。一応,これらのLEDはマザボに端子がついているので,何らかのノイズを拾ってCPUが点灯しないよう,端子の電圧を制御しているのか,と想像しています。

ということで,これで半日潰れちゃいました。

fanless PC 1.jpg ようやく点灯しました。

  電源はピンク,HDDはオレンジにしました。とてもきれいです。

☆OSのインストール

ここまで来たら,いよいよモニタとキーボード,マウスをつないで,電源を入れています。

無事にBIOS設定画面が出たのでひと安心です。

日本語BIOS.jpg 

    それにしても "出口" ってなんだよ~~

驚いたことに,ASrockのBIOSは日本語にできます。日本語のBIOSというのは初めて見ました。

さて,C:ドライブは,前作からの流用で,PLEXTORのSSDを使います。

あわよくば,同じC:ドライブなので,Windowsの修復セットアップでいいか,と思ったのですが,これはダメで,最初から,領域確保→フォーマットに進まないといけないようです。WindowsXPや8だと,修復セットアップ画面が出て,そこから再インストールでしたけど....。

また,旧C:ドライブをつないだだけでは,OSインストール画面に進みません。起動ドライブと呼ばれる,USBメモリが必要です。

iruchanは別にDVD-Rでもいいんですけど,Windows10のセットアップディスクのイメージをUSBメモリにコピーして起動しました。Microsoftのホームページの,Windows10のダウンロードというページにあります。

これ,すでに何回かやりましたけど,非常に速いですね.....。ものの10分ほどでWindowsのインストールが終わっちゃいます。かつてはHDDのフォーマットに数時間,OSのインストールで2時間,という感じで,遅かったですけど....。ずいぶんと速くなったものです。

これで通常通りWindowsが起動しますが,特にビデオのドライバがMicrosoftのデフォルトのドライバなので,解像度が低いです。ASrockのマザボの箱に入っているDVD-ROMでグラフィックほかのドライバを入れて何度か再起動してOKです。

         ☆          ☆          ☆

こうしてようやく新しいPCが起動です。なによりファンレスだし,HDDも1個はSSDなので,たまにデータドライブがカリカリ言うくらいで非常に静かです。もう,動いているかどうかわからないくらい,静かなのは感激です。やはりファンレスはいいな~と思っています。それに結構,速い。会社のPCより速い,と思えるくらいなのでストレスはありません。特に,ネットを見ていても,Chromeの応答が速く,いいです。それにしてもChromeって重いんですね~。前のPCでも,本機でもCPU100%になっちゃうのはどうかしていると思います。ほかに,前作では再生できなかった,Bluerayも再生できて満足です。再生ソフトもPCも対応しているはずなのですが,どうしても再生できませんでした。

いろいろトラブって,結局,きちんと起動するまでに2日かかりましたが,ようやくファンレスPCが完成です。来年からはがんばってもらうことにしませう。

最後になりましたが,本年もご愛読,大変ありがとうございました。iruchanは今年は喪中なので,新年の挨拶は欠礼させていただきます。皆様よいお年をお迎えください。

        ☆          ☆          ☆

2020年8月3日追記

LEDをパネルに取りつけたら点灯しない,という現象,原因がわかりました。

なんと,LEDのチップ部分がモールドの外に出ていて,アノードがパネルに接触していました!!!!

モールドの中に閉じ込められてないといけない部分なんですけど....。完全に絶縁されているどころか,ショートしています。

あきれちゃいました。

これ,秋月電子で売っている,OSK5DK3131Aという香港Optosupply社の製品ですが,深圳で作っているようです。同社のLEDは安いし,秋月でたくさん売っているのですが,この会社の製品はどれも調べてから使う必要があるようです。オレンジや青色のも触ってみると露出しているようです。

親切に秋月にメールで教えてあげたのですが.....返事はありませんでした......orz。またクレーマーか,と思われたのでしょうか。

と言う次第で,同社のLEDは一度,調べてから使うことをお薦めします。

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SHURE STEREO PREAMP M64について~その2~ [オーディオ]

2019年12月7日の日記

SHURE M64 stereo preamp.jpg 音を聴いてみました....。

さて,今日は前回,ご紹介した米SHUREのM64ステレオプリアンプを聴いてみたいと思います。1960年代初めに米SHURE社が自社のMMカートリッジ用に開発した,2石(片ch.)のディスクリートEQアンプです。80年代末頃まで発売されたようです。非常に息の長い製品で,音もよいとされ,特にSHURE V15やM44などの同社製カートリッジの愛好者には人気があるようです。

iruchanもジャンクで音が出ない,というものを入手しました。驚いたことに新品未使用で元箱入りでしたが,音が出ない,と言うことで安く入手できました。

前回,f特を測ってみましたが,カタログとおりの40Hz~15kHzで±2dB偏差に収まっており,特に問題はなさそうなので,今週,音を聴いてみます。ただ,偏差は大きいですね。±2dBなんて,自作のアンプだったら再調整,というレベルです。初期の半導体アンプは有名なJBLのSG520もそうですけど,EQ素子にセラミックコンデンサを使っていたり,EQカーブの誤差は大きいと思います。

さて,家のプリアンプにつないで聴いてみます。現在,iruchanは長年愛用したMarantz#7プリアンプはお休みで,オクで入手して,自分で修理したPioneerのC-21を使っています。自作マニアなんで,自分で作ったプリアンプが何台かあるのですけど,どうにも使いにくく,やっぱりメーカ製で聴いちゃいます......orz。

さて,音出しをしてみます。なんの問題もなく,すっと音が出ました。ハムなどの雑音もありません。

聴いてみて正直,こんなものか.....と思っちゃいました。

特にC-21と変わった感じはしません。

と言うことはC-21自体,古いプリアンプですけど,初段が2SA906(三菱),2段目が2SC1775A(日立)を使った近代的な2段差動アンプになっていて,それほど古い回路ではないので,M64はそれなりにいい性能を持っている,と言うことが言えると思います。S/Nが悪いし,ひずみも多くてあまりいい音がしないのでは,と思っていたので逆に言えば,非常にいい音だと思います。

高音が美しいのは特筆ものでしょうか。トライアングルやトランペットが明るくきれいに音が出てくるのがいい感じです。

と,思っていたのですけれど....。

しばらくすると,ch. R(ch.1)だけ,音が小さくなります。あれっという感じで,しばらくすると戻ります。

う~~ん,こういう故障が一番困るんですよね.....。

でも,iruchanは前回,測定中に気がついていました。だったら直しておけよ。

どうもプリアンプの真ん中にある,PHONO, FLAT, TAPEの切り替えをするスライドSWが接触不良のようでしたから,ちょっと不安に思ってはいました。

やはり現象再発で,仕方なく持ち帰り修理となりました。

スライドSWはこういうことが多く,iruchanは基本的に使いませんが,ちょっとはまってしまいました。

早速,箱を開けてチェックします。

スライドSWをばらして,接点を磨かないといけないと思いますが,さすがにiruchanのM64は新品元箱入り,と言うことで買っているので,それほど接点は汚れていない,と思います。となると,接触片の接触圧不足ですね。

これは厄介で,一度,スライドSWをばらして接触片のばねを伸ばさないといけません。

散々苦労してスライドSWをばらしました。

SHURE M64 preamp7.jpg

  それほど接点は汚れていない,と思っていましたが.....。

固定接点側は割にきれい,と思ったのですが,#4000のペーパーで磨いてみるとこの通り。結構,汚れているんですね。

簡単には,接触不良の場合,接点復活材をシューッとやれば解決しますが,一時しのぎにしかならないし,将来,ノイズの原因になったり,周辺のプラなどを侵すのでiruchanは使いません。やはり,きちんと接点をばらして磨く必要があります。できれば新品に交換したいのですけど,スライドSWがハトメで留めてあって,交換は容易じゃありません。

SHURE M64 preamp8.jpg 組み立てたあとの状況

そのほか,簡単に修理する方法としては,▲の固定接点の左右それぞれ一番上とすぐ下の端子をジャンパ線でショートするとPHONO固定となります。

可動接点の隣青銅のばねを伸ばして接触圧を高めておきました。接点を磨いたあと,タミヤの導電グリスを塗ってから再度,組み立てました。

オシロで波形を観測しながらスライドSWを何度動かしても出力が0になったり,小さくなったりすることはなくなったので,修理完了のようです。やれやれ。

        ☆          ☆          ☆

Prokofieff for fun.jpg プロコフィエフ交響曲No.1 "古典"(XWN 18701)

iruchanは1950年代の初期盤と呼ばれるLPが好きです。中でも英DECCAのffrr録音は音がよいのでとても好きです。

でも,米WestminsterのHIFIシリーズの録音はffrrをしのいでいる,と思っています。マイナーレーベルでしたけど,優秀な録音が揃っていますし,演奏者もシェルヘンやロジンスキー,Vn.のエリカ・モリーニなど,名盤揃いですよね。なかでも一番有名なのはペーター・リバール(Vn.)のタルティーニのヴァイオリン協奏曲のレコード(XWN 18192)でしょうね。まぼろしの名盤とされています。

iruchanはクラシックファンですが,中でもオケものが好きなので,やっぱり交響曲と言うことになりますが,好きな指揮者はフルヴェンやオランダのベイヌム。そして,Westminsterのロジンスキーも大好きです。

最近,国内でロジンスキーのWestminster盤を安く入手することができました。某放送局の放出品のようです。銀座の某有名楽器店のはんこが裏にあり,65年ほど前,そこから購入したものでしょうけど,もう再生することもないだろうし,ということで中古盤屋さんに売却されたのだと思います。

放送局放出盤はiruchanも学生時分に見つけたことがありますが,結構,当たり! です。

iruchanは基本的に国内で古いLPは買わないことにしていますが,理由は盤質が悪いと言うこと。とにかく国内の古いLPはジャリジャリなんですよね~~~[雨][雨]

おそらく,1枚4,000~5,000円ほどとLPは非常に高かったので(大卒の初任給が1万円くらいの時代です),1枚のレコードをそれこそすり切れるまで聴いていたのだと思います。それに,カートリッジも軽針圧のMC型やMM型なんてなく,針圧の重いセラミックカートリッジを使っていたのですから,当然です。

そういうわけで,特にこういう古いレコードほどひどく,音楽なんて聴いていられないほどのノイズに悩まされることが普通で,基本的に国内でこのようなレコードを見つけてもパス! なんですが,今回は放送局放出品だったのでゲットしました。

予想通り,ほとんどノイズがしない,良質な盤面でした。海外からの中古輸入盤と同様です。放送局だから,DL-103やオルトフォンなどの高級カートリッジを使っていたでしょうし,こういうクラシックのレコードだと,ほとんどかけることもなかったでしょうしね。

ロジンスキーのプロコフィエフ "古典" はすでにCDになっていますけど,やっぱレコードはいいですね~~。それに,B面の "ピーターと狼" はCDになっていない,と思います。"古典" はとても好きな曲で,高校生の時にFMラジオから流れるこの曲に笑い転げた,というエピソードがあるバーンスタイン盤が一番だと思いますが,ロジンスキーのもなかなかよいです。

と言うわけで,久しぶりにレコードを聴いて大満足でした[晴れ][晴れ]

        ☆          ☆          ☆

北陸の実家でレコードを聴いて,しらさぎから米原駅で新幹線に乗り換えるときに昼飯用に井筒屋さんの "おかかごはん" を買ってこちらも大満足でした。最近一番のお気に入り駅弁です。このお弁当,新鮮なおかかがご飯に載っていて,ぬたや黒豆やたらこがおかずで,非常においしいです。ぜひ,一度お試しください。

おかかごはん.jpg 米原駅の "おかかごはん"


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ソニーFM/ラジオNIKKEI/AMポータブルラジオ ICF-EX5~その1:電源の修理&改造~ [ラジオ]

2019年12月1日の日記

ICF-EX5.jpg ソニーICF-EX5

  いまはアナログTVが放送終了になったので,mk2となっています。

どうにも寒くなりましたね~。皆様お身体ご自愛ください。

さて,iruchanはどうにもここのところ忙しく,なかなか趣味に割く時間ができませんが,今日はちょっとラジオの修理をしました。

高感度で有名なソニーの多バンドラジオICF-EX5の修理です。

このラジオ,とても人気がありますね。何より感度がよいし,もうひとつ,大きな特長として,同期検波が可能なラジオなのです。

同期検波って何? って人も多いかと思います。確かに,この言葉を知っている人はラジオマニアでもごく限られた人だけでしょうし,知っているのはアマチュア無線に詳しい人だけでしょう。

AMラジオは,ご存じのとおり,もちろん,振幅変調なのですが,その中でも全搬送波両側波帯変調方式であり,それこそ最初の音声放送である,AMラジオの中核技術であるわけです。

簡単に,ダイオード(Di)1個で検波(復調)できるのが特長ですが,帯域幅が広いため電波の有効活用ができないことと,ノイズが多く,混信も多いのが欠点です。短波で用いられるSSB(搬送波抑圧単側波帯変調方式)だと帯域幅は半分で済みます。昔は短波も全搬送波両側波帯方式だったのですが,2015年から全面的にSSBに移行することとなっていて,受信機も専用のものでないと受信できなくなるので大騒ぎでしたが,取りやめとなり,いずれデジタル放送へ移行することとなっています。

中波はもちろん,全搬送波両側波帯なのですが,この場合,簡単にDi1個で検波(エンベロープ検波)できる代わり,帯域幅全部の周波数が検波されて音声になる関係で,どうしてもノイズが増えます。また,混信があるとそれも検波してしまうため,混信は防げません。

それに反し,同期検波は,受信機内部で入力周波数に完全に周波数,位相が一致した信号(基準搬送波)を作り,それと積を取ることによって音声信号を取り出そう,と言うものです。高校で習う,三角関数の積→和の公式からわかるとおり,入力周波数に一致した成分とその和の周波数成分に分けることができ,LPFをつかって前者のみ取り出すと音声が検波されます。ついでに,検波する信号は上側側波帯(USB)と下側側波帯(LSB)を選択できます。もちろん,USBはuniversal serial busの略じゃなく,upper side bandの略です。

同期検波は目的とする信号と異なる周波数の信号は出力されないのはもちろん,仮に同じ周波数でも位相がずれていれば出力されません。こうして混信が防げるわけですね。ノイズについても,完全に入力周波数の位相と一致した部分にノイズが乗っていなければ,出てきません。

さらに,同期検波だとA級動作の2個のTrが乗算動作をすることにより検波するので,エンベロープ検波の場合はDiがもつ非直線性がないため,ひずみが少ない,と言うメリットもあります。確かに,同期検波のラジオは非常にHiFiです。

とはいえ,同期検波は内部で基準搬送波を作るのが難しく,PLL(位相同期ループ)技術が必要で,基本的にはICがないとできません。昔はカラーTVで色信号の復調用に同期検波が必要で,APC(自動位相制御)というPLLがカラー検波回路に使われていました。ドットシーケンシャルのカラーTVを開発したのは米RCAで,1953年のことですが,真空管しかない時代ですから大変で,iruchanも経験がありますけど,真空管時代のカラーTVというのは非常にご機嫌が悪く,うっかりすると真っ赤になったり,白黒TVになったりして,きれいなカラー映像を見るのは難しかった.....んですけど,そんなこと覚えている人はもう少ないでしょうね。

ラジオでも同じで,同期検波を搭載したラジオ,というのはほとんどない上,あっても結構値段が高いのです。短波は混信が多いので,アマチュア無線家をはじめとして,同期検波式の受信機が必要とされるのですが,これも高級機でないとついていない機能です。

その点,ICF-EX5は同期検波がついていて,とてもいいラジオです。USB,LSBの選択もできて,どちらかノイズの少ない方で聞く,なんて芸当ができるのは素晴らしいです。

ICF-EX5-1.jpgSYNCが同期検波です。NORMALはエンベロープ検波です。

 上側側帯波と下側側帯波の選択できます。どちらかノイズの少ない方で聴けます。

ところで,iruchanがこのラジオを買ったのは,実は親父が病気で入院し,割に親父はラジオが好きなので,病室でラジオを聴こうとしたら,普通のラジオが使えない,と言ったためです。

病室に行ってみてびっくり。確かに普通のラジオは聴けません。ダイヤルのすべての位置でものすごいノイズで,まったく放送なんて聴けません。FMは大丈夫なんですが,さすがに親父も爺なので,AM以外は聴いていません。どうやら,病室は当然鉄筋コンクリート構造なので電波が入りにくい上,なにか,ものすごいノイズ源があるようです。

仕方ないな~[雨][雨][雨]

でも,iruchanはこのラジオなら大丈夫,と思いました。

速攻でネットで発注,このラジオを病室に持っていったら見事! ちゃんとNHKなどのAMラジオがいい音で聴けるではないですか[晴れ][晴れ][晴れ]

さすがに同期検波を搭載したラジオなら大丈夫では,と思っていましたが,実際に体験してみて,iruchanもびっくり。さすがです。また,▲の切替SWでNORMALにするとやはりまったく放送は聞こえませんでした。

と言う次第で,やはりAMラジオは同期検波が必要だし,実際,米国ではFCCが1980年代にAMステレオを導入するついでに,すべてのAMラジオに同期検波機能を義務づけようとしたらしいのですが,これがうまくいっていたら,という気がします。

いまだに,高性能のICラジオでも検波はエンベロープ検波方式で,ノイズに弱いのは残念です。ICだと,内部にDiを作るのが面倒なので,Trで検波しているものが多いのですが,結局は同じことです。

ただ,親父も無事に退院したのはいいのですが.....。

それからがまずい。

久しぶりに家で聴こうと,この前,スイッチを入れたら臭いがして煙が出てきたと思ったら,ラジオが聴けなくなった,と言うではないですか!!

一体,何やっているんだと思いましたが,何をやったか,事情聴取してみると,家で聴こうと,ACアダプタをつかったらしいのです。

すぐに原因判明

おそらく,親父は適当に手近にあった,どこのかわからないACアダプタを突っ込んだため,壊れたのだと思います。

もちろん,こんなこと絶対にやってはいけません。実際,ラジオの説明書に,"本機専用のACアダプタをお使いください" と書いてあるのはダテじゃないんです。必ず,使用する前にアダプタの極性と出力電圧を確認しませう。電圧については,テスターで実際に測ってください。古いアダプタは表示されている電圧よりかなり高い電圧を出力するものがあります。ICF-5900など,貴重なBCLラジオを入手したけれど,ACアダプタがないからと手持ちのACアダプタを突っ込んで壊してしまう人がいますが,ACアダプタに6Vと書いてあっても,9Vくらいの電圧が出るものがありますのでご注意ください。昔のトランス式のACアダプタは非安定化電源のタイプが多く,こういうことが多いです。といって,現在のスイッチング電源タイプはAMラジオではノイズが多くて使えません。

そもそも,このラジオは電池で聴くことができるので,何で電池で聴かんかったんや,という気がするのですが.....。

特に,このラジオは原設計は1985年で,それから30年以上も販売されている長寿命のラジオなのですが,ソニーの古いラジオはセンターがマイナスのアダプタが多いのです。

ICF-EX5-6.jpg ソニーの80年代のラジオはセンターマイナスです。

外径はφ5.5mmでごく普通のACアダプタなのですが,極性は各社バラバラで,ソニーの場合はセンターピンがマイナスなのです。松下など,他社はプラスの場合が多く,特に最近のものは普通はプラスです。

何でこうなのか,よくわかりませんが,ソニーのはセンターピンがマイナスのものが多いのでご注意ください。

こういう問題があったため,1989年にEIAJが極性統一プラグというのを提案して,現在は日本製の機器はほぼこのプラグを使用しています。このプラグはセンタープラスですが,残念ながら,もはや日本の電機メーカは世界市場から全面撤退中( "転進" ではありません)なので,昔のように世界標準となることはないでしょう......orz。実際,中華製品は昔ながらのφ5.5mmのプラグを使っています。

しかし,iruchanはピンときました。おそらく,親父はセンターがプラスのACアダプタを突っ込んだため,直後の電解コンデンサがショートして,パンクしたのだと思いました。それなら修理は簡単だと思います。

幸い,電池を入れるとラジオは機能しているので,内部のICなどは壊れていないようです。ホッ。

早速裏蓋を開けて調べてみます。

ICF-EX5-2.jpg 外部アンテナのねじも外します。

 ほかに,チューニングツマミを外すとそこにツメがあり,押してやるとフタが外れます。

ソニーのラジオはいろいろ言われますけど,修理がやりにくいものが多く,困るのですが,本機は割に簡単で,裏蓋も簡単に外れました。

ICF-EX5-3.jpg 立派なバーアンテナです。

 30cmくらいのバーアンテナが使われています。どおりで感度がいいわけです[晴れ]

ただ,外部アンテナのねじが裏蓋の固定も兼ねているので,このねじも外してください。また,ソニーの場合はしょっちゅうですけど,たいてい,電池ボックスの中にもねじが隠れています。本機もそうでした。

さて,なんとか裏蓋を外して調べてみると.....。

なんと,ACアダプタの直後に入っていると思った電解コンデンサはなく,これがパンクして故障したわけではなさそうです。ソニーのラジオはACアダプタと電池が単にパラに配線されているだけで,特にフィルタ用の電解コンデンサなどは接続されていないようです。となると,原因は別のところです。

う~~~んと......。

よく見てみると,ありました。

チップのTrが1個,真っ黒焦げになって,基板も周囲が焦げているではないですか。あちゃ~~......[雨]

▲の写真で,〇 の部分です。

ICF-EX5-4.jpg ご臨終? です[雨][雨]

原因はこれですね。逆極性の電圧がかかって,Trが1個,焼死してしまったようです。基板上ではQ19の表記があります。ところが,実はあとで,このTrは生きていたことがわかったんですけどね......。真っ黒焦げなんですけど。けなげにも,全身大やけどを負いながら仕事をしていたようです。さすがは日本製。キグチコヘイは死んでもラッパを手から離しませんでしたとさ......。

あとは簡単,おそらく,故障したのはこのTr1個だけで,これを取り替えれば正常に戻るはずです......が,表面実装のTrのため,そもそも型番が不明です。

これ,困りますよね~~[雨][雨]

TO-92などのリードタイプのTrだと表面にC1815なんて書いてあるので,すぐに型番が判明しますが,チップタイプの場合,表面にLやAなどの意味不明なアルファベットが1個書いてあるだけで,数字もほとんど書いていません。型番が書いてあることなんてなく,一体,このTrがなんてやつなのか,まったくわかりません。

この場合,セットメーカの部品表や回路図がない限り,Trの型番は不明です。

せめて,iruchanはPNPかNPNか,それだけでもわかれば何とかなるんですけど.....。別に,電源部のTrだし,増幅をしているわけじゃなく,単にon,off動作をしているだけでしょうから,最大定格さえ守れば,PNPかNPNか間違えなければ,何でもいいはずです。

ともかく真っ黒焦げになったTrを外しました。パッケージがぽろっと割れて外れたりして,完全に死んでいる,と思いました。

ところが,どうやらこのTr,生きていたらしく,このTrを外したら電池でもラジオは動作しなくなりました。

外したTrを調べれば,PNPか,NPNかくらい,すぐにわかったのですけれど....もはや捨てちゃったあとなので,もうわかりません[雨]

とりあえずサービスマニュアルでもネットに転がっていないかと考えましたが......これは望み薄です。

というのもICF-EX5は国内専用モデルなので,こういう場合,ネット上でサービスマニュアルを探すのは絶望的です。海外に輸出したモデルだと,米国などはさすがに自社でサービス網を構築するのは無理なので,外注せざるを得ないのですが,そう言う外注先に配布したサービスマニュアルが現在,ネット上で入手可能だったりするのですが,国内専用モデルだとそれはありません。

iruchanも散々,探しましたが,本機のサービスマニュアルは入手できませんでした。

とりあえず,基板をたどっていくと,エミッタに+Vccがかかるようになっているので,件のQ19はPNPだろう,という推定ができました。

ということで,とりあえず,手持ちの2SA1586(東芝)でテストしてみます。もし,NPNだったら,このTrは壊れるかもしれませんが,まあ,そうなってもほかに影響が出なければOKだと思います。

結果はビンゴ!でした。一発でラジオから音が出ました。Trの発熱もなく,何時間も連続運転しても大丈夫のようなので修理完了だと思います。

ただ,あとで別ルートでこのQ19を調べたら,オリジナルは2SB815(三洋)であることがわかりました。やはりPNPでした[晴れ]

VCEOは15Vしかありませんが,意外にIC=0.7A,PC=0.2Wと大きなTrです。2SA1586だと50V,150mAなので,ちょっと小さいです。

まあ,150mAでも十分大きな値だし,そもそも電池式のセットで100mA以上も電流が流れる,と言う設計はしないはずなので,2SA1586でも十分かと,思っています。本来はもとのTrより小さい定格のTrを使う,というのは御法度ですけどね.....(^^;)。

おまけに2SA1586だとパッケージがSOT-323なので小さすぎます。基板のパターンに合いません。

今なら,秋月でも売っている,2SA1313(50V,500mA)がSOT-346と一回り大きいのでいいと思います。

さて,これで修理完了,なんですけど......。

と,思っていたんですけど.....。

後日,本ブログを見て実際に修理をされた方から,隣りのQ18も壊れていた,とご報告をいただきました。

確かに,iruchanのも電源SWをoffにしてもかすかにスピーカーからノイズが聞こえて,低周波アンプ部分のみ,動作しているようです。

どうもRF部分には電源は供給されていませんが,AF部分には電源が供給され,かすかにノイズが聞こえる,という状況のようです。この場合,電池から10mAほどの電流が流れっぱなし,でした。

改めて,調べてみると,Q18も死んでいました......[雨]

外観は何ともないんですけどね.....[雨]

Q19は焼死寸前まで行っているのにもかかわらず,瀕死状態で生きていたのに,Q18は外見はなんの外傷もないのに,死んでいる[台風],と言う状況のようです。

Trの不良を見るには,接合面の順方向電圧を見ると大体わかります。はんだづけを外さなくても,おかしな値を示すので,ある程度,目星をつけることができます。

このQ18のテスターをDiチェックモードにして,ベース~エミッター間に順方向に電圧をかけ(PNPなので,エミッタに赤,ベースに黒のテストリードを接続します)てみると,電圧が0.2V程度を示します。ついでに逆方向に接続すると,普通は3V以上の電圧を示しますが,やはり0.2Vくらいです。

これ,おかしい証拠です。普通は順方向で0.6V,逆方向で3Vくらいの数値を示します。正確にははんだづけを外して単体で調べないといけませんけど,ある程度,目安にはなります。

と言う次第で,Q18も交換しました。

ICF-EX5-27.jpg Q18,Q19を交換します。

Q18はベースのところのパターンが剥がれちゃったので,ジャンパ線でR44につないでいます。

うまく壊れた2SB815が外せたらそのまま2SA1313をはんだづけしてOKです。

ソニーのサービスマニュアルには,Q18もQ19も同じ三洋の2SB815が使われていますので,2SA1313でOKだと思います。

と言う次第で,ICF-EX5に逆向きのACアダプターを挿して壊してしまった,というばあいはこのQ18とQ19の両方を交換してください。

        ☆          ☆         ☆

ついでに,せっかくだから、もうちょっと工事しておこうと思います。

そもそも,ソニーのACアダプタがセンターマイナスだからこういう間違いが起こるので,センタープラスのものでも使えるよう,改造しておきたいと思います。

この前,KATOの鉄道模型用コントローラKC-1をACアダプタ仕様に改造したときにやりましたけど,逆極性のアダプタをつないでも壊れないよう,Diを1個,挿入しておくのも手ですが,この場合は,逆極性の場合は本体が壊れないようにするだけで,使用できません。ソニーも,せめてこのDi1個をアダプタの端子に直列に入れておいてくれれば,壊れずに済んだと思います。

ついでに,ACアダプタ端子は電池とパラになっているだけ,と言うのもいただけません。普通,こういう場合,電池の方だけに直列にDiを1個入れます。こうしておかないと,電池が入ったまま,ACアダプタを挿すと,電池に電流が流れて危険です。一応,説明書には "電池とACアダプタを併用しないでください" とどこのメーカも書いているんですけど,ユーザはうっかりやっちゃうものなので,Diを1個,入れておいてほしい,と思います。

今回は,センタープラスのACアダプタを使った場合でも使えるようにします。

具体的には,ACアダプタの出力に,ブリッジDiを挿入しておけば,どちらの極性のアダプタでも使用できます。

といって,電池式のラジオにACアダプタを使う場合,当然,電池の場合と同じ電圧でないとまずいので,本機も6Vのアダプタが指定されています。

こういう場合,ブリッジDiを挿入すると,往復で2回,Diを通りますから,シリコンDiだと順方向電圧降下のため,1.2Vも低下します。

そこで,順方向電圧降下の小さいショットキーDiを使います。ショットキーだと電圧降下は1個で0.2V程度なので,ブリッジDiだと,0.4V程度の電圧降下で済みます。ゲルマDiでもいいですけど,今時売っていませんしね.....。1N60なども最近はチップはショットキーになっています。

ICF-EX5-5.jpg 工事完了です[晴れ]

部分でパターンをカットし,そこにチップのDiとアキシャルリードタイプのDiでブリッジを構成しました。使用したチップのDiは秋月で売っている,東芝のU1GWJ44とリードタイプは日本インターの11EQS04で,どちらも定格40V,1Aです。残念ながら,ブリッジDiを挿入するようにパターンが考えられていないので,表面実装のDiだけでは無理で、▲のような感じで配線しました。

ICF-EX5-7.jpg 順方向電圧です

ハンダ付けが完了したら,テスターの導通テスト or DiテストモードでDiが接続しているはずのパターン同士で導通を調べます。この東芝のチップDiは順方向電圧はかなり小さいです。

これでなんとか修理完了です。ACアダプタはどちらの極性のものでも使えます。親父も喜んでくれるでせう。

        ☆          ☆          ☆

さて,無事に動作したので,改めて音を聴いてみると,何よりSPが大きいだけあって,低音も十分だし,センターコーンがアルミのせいか,高音も伸びていて,とても音がよいです。肝心のAMラジオも,ちょっとオーバーですけど,まるでFMかと思うくらい,ノイズも少なく,クリアーな音質で満足です。また,FMもAMもやはり非常に感度がよく,と言ってAMの場合は高感度だとノイズも多くて困るのですが,本機はそのようなことはなく,とてもいいラジオだと思いました。


2019年12月4日追記

やっぱり,電池とACアダプタの接続部分に,電池側だけDiを1個挿入しました。逆流阻止Diです。

こうしておかずに,ソニーのオリジナルのままだと,ACアダプタと電池が完全にパラに配線されているので,電池が消耗して電圧が低下してくるとACアダプタから電池に電流が流れて電池が発熱します。だから,"ACアダプタを使用するときは電池を抜いてください" とACアダプタと電池を使う,どんな製品の説明書にも書いてあるんですけど,説明書をちゃんと読んで,こんなこと守っている人はいないと思います。iruchanもうっかり電池挿したまま,こんなことやっちゃうので,安全のため,やっておきました。

ICF-EX5-8.jpg 電池側にDi()を追加しました。

センタープラスのACアダプタを挿しても無事に動作することを確認して修理完了です。ご覧になっていただき,ありがとうございました。

       ☆          ☆          ☆

このラジオにバックライトと,周波数カウンタを取りつけられるように工事しました。ご興味ありましたら,続きをどうぞ。



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