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ノートパソコンのHDD交換 [パソコン]

2018年4月29日の日記

とうとう,サブのノートパソコンのHDDがお亡くなりになったようです。

このノートパソコンはiruchanが単身赴任していたときに社員寮で使っていたもので,今は家族が使っています。スマホでネット見ているので,目を悪くするからネットするならノートパソコンでやれ,と言っています。やはりスマホは見にくいですよね。皆さんはどうしておられますか。

ところが,先週,嫁はんが,"画面が青くなって,何かメッセージが出て起動しない" って言ってきました。

やれやれ~,どうせまた何か,使い方間違えて起動しなくなっているんだ,と思いましたが,やはりiruchanが電源onしてみると,ずっとメーカのロゴが出ているだけで,全然Windowsが起動しません。そのうち,

       "問題が発生したため,PCを再起動する必要があります"

と出ます。あとは再起動ループに入っちゃって,結局,Windowsは起動しません。それに,時折,キーッというきつい音がします。

ところどころ,データが読み出せないのでヘッドがリトラクトしている音ですが,これ,非常にヤバいです。もう,HDDはすでにお亡くなりになっていると考えた方がよさそうです。

でも,一応,昔ならセーフモードで再起動して,ディスクのチェックをしようか,と思いますが....。

残念ながら,Windows8以降,電源投入後,F8キーを乱打してセーフモードに移行する,ということができなくなっています。これ,非常に困るんですけど。次回,復活して欲しい機能です。

昔だったらここでWindowsをセーフモードで立ち上げるか,それもダメならコマンドラインにしてチェックディスク  chkdsk /r をすると直ったのですけどね。以前は/rオプションで修復してくれました。起動のオプションすら表示されないのでこの手は使えません。

現在,Windowsをセーフモードにするには,

「スタート」ボタン→「設定」の順にクリックします。
「設定」が表示されます。 ...
「回復」をクリックします。
「今すぐ再起動」を選択。
 
なんて方法が書かれていますが,そもそもこれはWindowsが立ち上がってからの話なので,通常どおりWindowsが起動しているのにわざわざセーフモードにする人がいるの???? って感じなんですけど.....。
 
Windowsが起動しない状態でセーフモードにして起動するには正常に起動するWindows10のパソコンで修復ディスク(ディスクじゃなくてもUSBメモリでOKですけどね)を作っておいて,それで起動すると "スタートアップ修復" というメニューボタンが出てくるので,それで修復しよう,と考えますが,やってみるとこのボタンをクリックしても結局,元に戻ってしまって全然修復してくれません。

まいったな~~~[雨][雨]

しかたないので,HDDを外してハードディスクケースに取りつけて外付けHDDにして今使っているデスクトップにつないでみると.....。

一応,ドライブは認識しますが,プロパティは表示しませんし,もちろん,中のファイルも見られません。そのうち,このドライブは応答していません,と出ます。プロパティすら開かないので,ディスクのチェックもできません。

やはりご臨終のようです......[雨][雨]

    ♪リメンバー・ミー お別れだけど......  リメンバー・ミー 忘れないで....

ってか? 最近,アナ雪ファンのiruchanはアナ雪の続編を見に行くついで? に "リメンバー・ミー" を見てとても気に入ってます。

と言う次第で,結局,HDDを交換してWindowsを再インストールしないといけなくなりました。

ノートPCなので下手に自分でやると壊す可能性があるので,メーカに問い合わせてみると,HDD(500GB)交換で¥12,000,手数料で¥6,000ということで¥18,000くらいとのこと。他の部品が損傷していることも考えられるので,概算修理をお願いしますとも。あらかじめ少し高い金額で申し込んでおいて,あとで実費精算とのことのようです。

このノートPCはなかなか出来がよいし,今回の返答もすぐに来たし,金額的にもとてもリーズナブル,とは思ったのですけど.....。

修理に出してもHDD→HDDに交換するだけだし,いっそのことやはりSSDにしたいと思いましたし,自分でやればもっと安くできるはずです。手数料はいりませんからね。故障の観点から,やはり機械的な部分のない,SSDが安心です。2年前に自作のデスクトップ機もSSDに交換しましたしね。

ただ,おそらく,このメーカさんもSSDに交換してくれ,といえばやってくれるとは思ったのですけど,おそらく+1万円くらいにはなりそうだし.....ということでSSD交換の価格については質問しなかったのですけど,自分でSSDに交換することにしました。

SSDはWestern DigitalのWDS250GB0Aにしました。やっぱ,○○○○○gなんて使いたくないですしね....。容量はもとのHDDが500GBでしたけど,データの保存はデスクトップ機でやることにしていて,このノートPCはデータを保存しないので250GBもあれば十分と思って250GBにしました。やはりノートPCは発熱が多いし,落としたりするのでデータの保存はデスクトップの方がよいと思います。iruchanはデスクトップにはRAID1でバックアップするドライブもつけています。

このWDのSSDはいろいろ調べたけど,結局Amazonが一番安くて,¥8,291でした。う~~ん,やっぱAmazonになっちゃうんだよな~。

さっそく,ノートPCをばらします。デスクトップ機なら過去,何度もHDDが壊れて交換していますが[雨][雨][雨],ノートPCはメモリ交換をやったくらいで過去,あまりやったことがないので慎重にやります。

インターフェースはSATAなので簡単に交換できます。

SSD installation.jpg SSDを取りつけました。

また,OSは最近はやりのダウンロード版にしました。ライセンスキーがメールで送ってくるだけで,OS本体はMicrosoftからダウンロードします。

皆さん,こんなことやったことないのか,Amazonでもレビューの評価が低いですね。iruchanは先日,仕事でOffice2016をこの方法でインストールしたのでやり方はわかります。

usb起動ディスク.jpg USBでインストールします。

でも,今回驚きましたが,OSのダウンロードそのものは非常に時間がかかりますが(30~40分),インストールは驚くべき早さで終了します。今までだったら,HDDのフォーマットと領域確保で2,3時間,OSのインストールで1時間弱,結局,最低でも半日かかるという状況[雨][雨]でしたが,なんと,今回,たった10分でした[晴れ][晴れ]

MOUSE note PC.jpg ここまででたったの10分でした

Windows10はわざわざDVD-Rに焼く必要はなく,USBメモリでOKです。最低8GBのものが必要ですが,USBメモリにWindows10のイメージをコピーしておいて,それをノートPCに差し込んで電源を入れると,インストールがはじまります。

もし,不具合のあるHDDドライブが残っていて,それに再インストールする場合は,一度,BIOSを起動して,起動するドライブの順番をHDDより先にしておけばUSBドライブから起動します。

          ☆        ☆        ☆

先週,子供らを連れてディズニーの "リメンバー・ミー" を見に行きました。

実を言うと,iruchanはアナ雪の続編,"家族の思い出" が目当てで,"リメンバー・ミー" が目的じゃなかったのですけれど.....。

結構,映画館もアナ雪目当て,と言う人が多そうで,実際にアナ雪みたいな服を着た幼い姉妹が見に来ていたりしました。かわい~~。

アナと雪の女王・家族の思い出.jpg 

     エルサとアナがかわい~~[揺れるハート][揺れるハート][揺れるハート]

でも,今回は見て思ったのですけど,似たようなテーマなんですが,ストーリーは断然,"リメンバー・ミー" の方が上。最後はホロッとしてしまいました。

アナ雪の "家族の思い出" の方は,クリスマスにも何かやらなければならない特別の行事がない,と言うことに女王のエルサが気がついて探してみるのですが,家族というか王室の記録がありません。そもそも彼女たちの両親は船が難破して早く亡くなっているわけですから......。

でも,普通は王室があるくらいの国なら記録係がいて,きちんと王室の行事や祭祀など記録しているのでは? 勝手に公文書をあとで書き換えたり,軍隊が出動して現場の指揮官が日報を書くのは当たり前なのに具合の悪いことが書いてあるからと,なかったことにしちゃう国と同じじゃない? なんて思って見ていましたけど。アレンデールだって国境警備隊は日報をつけるでしょ......(^^;)。

と言うわけで王室の伝統を探してオラフ[雪]が大活躍,という物語でした。

"リメンバー・ミー" の方はちょっとキャラクターが骸骨だらけであまりにもキモいのをのぞけばこれじゃキャラクターが売れへんやろ,アナ雪みたいに歌が素晴らしいし,ストーリーもひいおばあちゃんの殺された父親の思い出をひ孫が取り戻す....という内容で感動的でした。

歌は感動的ですね~~。特に,主役の石橋陽彩君は歌もうまくてびっくり。今回も松たか子さんと神田沙也加さんの歌も素晴らしかったですけどね。それと,ハンスみたいなクソ野郎のデラクルスの橋本さとしさんも素晴らしいテノールで驚き。

リメンバー・ミー1.jpg 

 iruchanは工作マニアなので後ろの白黒TVがいいな~って思いました。真空管かな?

エンドソングは最初,日経の映画評で渡辺祥子が "歌も素晴らしい" と書いていて,その前の日にNHKラジオで "歌手は明かしませんが",なんて言って同じことを言っていました。一体誰だよ? 意地悪~~って思って娘に聞いたら "シシド・カフカでしょ" だって。最近の女子高生はよく知ってますね.....。

そのエンドソングも素晴らしいですね。この人,NHKの朝の連ドラ "ひよっこ" で主人公がボロアパートに住んで,まわりの住人は変なやつばかりって "めぞん一刻"(古~~~っ!!)みたいな話になってきて,そこの管理人さんか,朱美さんみたいな感じで出ていましたけど。なんて,このおばさん女優さん,美人なんだろってびっくりしましたけどね.....。

それにしても "リメンバー・ミー" の音楽はアナ雪と同じロペス夫妻の作ったもので,今回の "リメンバー・ミー" も "Let it go" みたいに名曲ですね~。早速,SSD買うついでにAmazonでサントラ買っちゃいました。

リメンバー・ミー.jpg あまりの美しさにびっくり。

それにしても映像がきれいなのに驚き。2014年のアナと雪の女王でも驚きましたけど,今回はさらにパワーアップした感じで,髪の毛の1本1本まで光の当たり具合や風に揺れる様を表現しているのとか,▲死者の国の俯瞰映像の美しさに驚きです。もはや2次元手描きアニメの時代じゃないな~,って思いました。


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ゲルマニウムトランジスタ スーパーヘテロダイン方式FMラジオの製作~その2・ゲルマニウムトランジスタのSpiceモデル~ [ラジオ]

2018年4月18日の日記

前回に引き続いて,ゲルマニウムTrを使ったFMラジオを作ります。

やはり,事前に予想したのですが.....すっかり泥沼にはまり込んじゃって膠着状態です。これじゃ,塹壕掘って西部戦線だな.......。

まずは,前回,基板の組み立てが終わったので,ひと通りチェックしてから通電します。回路については,前回も書いた,吉本猛夫著 "ラジオの組立て" に載っていたFMラジオの回路を踏襲("ふしゅう" じゃありません)します。Trはさすがに東芝の社員が書いただけあって,ラインナップは2SA240(RF,conv)+2SA433(IF)+2SB54(LF)+2SB56(output)とオール東芝です......(^^;)。

なお,低周波部は1段で済ませますし,検波もIFTの関係でレシオ検波じゃなく,フォスター・シーリーにする予定です。また,RF部は非常にクリティカルで,別のTrを使う場合は定数の変更が必要です。

FMラジオ配線図(ラジオの組み立て)1.jpg "ラジオの組立て" から

スピーカからかすかな雑音がすればひとまず安心なのですが.....。

ウンともスンとも言いません.....orz。

これは,低周波部分が動作していない証拠です。どこかに回路ミスがあります。普通は電池をつないだ瞬間にガリッと音がするはずなんですが.....。

ようやく,LFの2SB101のエミッタ配線にミスがあり,ちゃんとGNDにつながっていないことに気がつきました。

はんだづけし直して電池をつないでみるとかすかな雑音がしますし,Trのケースなんかに指を触れてみるとスピーカからビ~ッと音がしますので,低周波部はOKです。

ついでに,出力の2SB163のアイドリング電流を調べておきます。数mAだったらOKです。

ただ,予想していましたけど,FM特有のザーッというホワイトノイズみたいな雑音は聞こえません。

これはやはり高周波部分が動いていない証拠。まだ成功とはとても言えない状況です。

次にチェックするべきは局発。

ここから長い戦いが始まります。

局発コイルの両端にオシロのプローブをつなぎ,波形を観測してみると真っ平ら.....orz。

スーパーヘテロダインのラジオの生命線はやはり局発です。これが動作しないことにははじまりません。

AMでも同じで,局発が動作しているかどうかチェックするところからはじまりますが,比較的,AMは楽で,トランジスタ式はもちろんのこと,真空管式でも変換管に6BE66SA7を使った場合は楽勝です。配線間違いでもしない限り,ちゃんと発振するはずです。

でも,FMはそういうわけにはいきません。特にTr式の場合は大変です。ちょっとした配線のしかたやTrのばらつき,コイルの作り方で発振しないことが多いのです。

さぁ,困ったな~~~[雨][雨][雨]

原因はいくつか考えられます。

まずは帰還コンデンサ。これの容量が足りないと発振しません。今回4pFを使っていましたが,これを10pF程度まで増やしてみますがダメ。

次は,負荷となっているIFTと発振コイルの間のセラミックコンデンサ。小さいと発振が止まりますが,これも容量を変えてみますがダメ。

あとは,発振回路ですから,クローズドゲインが1(0dB)を超えていないと当然,発振しません。ゲインはTrのhFEに依存しますので,できるだけ高hFEのものが望ましいのですが,2SA56は40~80と規格表に書いてありますので,普通は問題ないはずです。

次に疑うのは動作点。

うっかりカットオフするくらいバイアス電流が小さかったり,サチってしまうくらい大きいと当然,発振しません。

一応,局発の2SA56の各電極の電位を調べてみると,コレクタ -8.24V,エミッタ -1.169V,ベース -1.438Vですから,あまりよくありません。もっとベース電位が高くないと,つまりアイドリング電流が大きくないとダメです。

この動作点はベースにつながっている2つの抵抗で決まります。いわゆる電流帰還型のバイアス回路ですね。

これをいろいろいじってみて,ベース電位を-3Vくらいにしてみましたがダメ。

う~~~ん,ここまでくると2SA56をあきらめるしかなさそう,という結論になります。ここで代打登場となります。

FM RF Tr'.jpg FM用高周波Tr

iruchanは東芝の2SA240も2個,持っていました。これでもいいのですが,やっぱりNECにします。

代打はNECの2SA213にしました。前回もスタメン入りしていますね。ベンチで待機していました。

ところが.....。

2SA213の代打は空振り三振。まったく発振しません.......orz。

あとでわかったのですが,2SA213はゲルマニウムTrなのに,VBEが高く,0.5Vくらいありました。そのせいで動作点が狂ったのかもしれません。

        ☆        ☆        ☆

とうとうこちらももう打つ手がない,という感じです。どうして発振しないんだろと頭を抱えてしまいます。

が,やはり困ったときのSpice頼みという諺ほんなもん,あらへんを思い出しました。回路シミュレータSpiceで動作を調べてみたいと思います。リニアテクノロジー社が無料版のLTspiceを出していますので,これで調べてみます。

FMの局発はコルピッツ型が使われます。AMだとハートレー型ですね。ハートレー型の方が可変範囲が広いのですが,高周波ではコルピッツが使われることが多いです。まずはこのコルピッツ発振回路の動作を確かめてみます。

さっそく,今回の回路をLTspiceでモデル化してみます。とりあえず,TrはPNPのデフォルトのTrで実行してみます。

FM局発回路(ラジオの組み立て).jpg ベース接地コルピッツ発振回路

ありゃま,発振しません。本に載っているような回路が動かないようじゃ,問題なんですが.....。

原因はデフォルトのTrがシリコンであることもありますが,やはり特性がオリジナルの2SA240とは違うためと思われます。あとでモデルを作りますが,2SA56だとちゃんと発振しました。

まあ,普通はたいていの回路ではデフォルトの素子でOKなんですけど,MOS-FETなどは個別の素子を指定してやらないとうまく動かないことが多いです。

と言う次第で,2SA56のモデルは.....と思っても,絶対にあるわけありません。

せめてゲルマニウムTrのモデルがあれば....と思ったのですが,これもネットをさんざん探しても2N344AC127があるくらいでした。これじゃ,真空管のモデルの方が多いくらいで,世の中,ゲルマニウムTrのモデルなんて作っている人はいないのですね

でも,真空管に比べれば,比較的TrのSpiceモデルの作成は楽だと思います。

トランジスタ技術2017年9月号に "基本動作から温度テストまで! トランジスタSpiceモデルの作り方" という記事がありますので,参考にさせていただきます。

まずは,LTspiceのトランジスタモデルなんですが,

standard.bjt.jpg standard.bjtの場所

LTspiceをインストールしたホルダ(デフォルトのままだとマイドキュメント¥LTspiceXVII¥lib¥cmp)にある,standard.bjtのファイルに記述します。拡張子が.bjtなんてことになっていますが,単なるテキストファイルなのでメモ帳で編集できます。

standard.bjt-1.jpg 

 2N344AC127はこのようになっています。

このファイルを編集し,次のような文を追加するとLTspiceで使用できます。

.model Tr型番 PNP or NPN(パラメータ1,パラメータ2,パラメータ3......)

複数行に渡る場合は行頭に+をつければOKです。

で,問題はこのパラメータをどのように求めるか,なんですが.....。

とにかく,各Trの規格表,特に特性曲線が必要となります。残念ながら,CQ出版社が出しているトランジスタ規格表のデータだけではモデル化できません。

ところが.....。

2SA56なんて古いTrのデータシートなんてありません[雷][雷]

そりゃ,そうですよね,今どきこんな古いTrを使おう,なんて人はいませんから。ネット上で,真空管やTrなどのデータシートが公開されていますが,どこを探しても見つかりません。古い本に載っているかと図書館も探しましたが見つかりません[雨][雨]

う~~ん,困ったな~~~[雨][雨]

と,思っていたら北陸の実家に帰って本棚を見てみると, "NECハンドブック'64・'65" という本があるではないですか。

なんと,ちゃんと2SA56も載っていました[晴れ][晴れ]

灯台もと暗しとはこのことですね~~。iruchanは割に古い本を持っているので,そこに載っていました。せっかくなので,PDFを載せておきます。


これを見てちょっと気がつきました。2SA56なんて,えらい古いTrだな,と思いましたが,まだAM用のTrですら高周波のものは少ない時代なのに,番号が若すぎます。また,製法もメサ型となっているのでやはり新しいです。FM用の初期のものはドリフト型か合金拡散型のはずです。メサ型はこのあとです。

この規格表を見ると2SA126と同特性で,2SA56は耐圧が高いということがわかります。

おそらく,最初に開発されたのは2SA126の方で,あとから耐圧が高い2SA56を開発したのだと思います。普通は番号は126のあとになるはずなんですが,何かの都合で空いていた56をつけたのでしょう。ちなみに2SA54も同じ理由でこんな若い番号のようです。2SA54も同じ構造ですし,特性もよいので使えます。

2SA56 Vce-Ic特性.jpgエミッタ接地特性

  VCE-IC特性です。これはたいてい載っています。

2SA56のコレクタ電流特性は▲のようなものでした。意外に大きな電流が流れますし,右の方でコレクタ電流が急に跳ね上がって変なことになっています。これは降伏領域と言って,この領域は使用してはいけません。シリコンTrだと,ずっと右の方なので規格表にも載っていないことが多いので,珍しい特性です。

は今回,計算に使用した点です。

LTspiceでモデル化して,この特性曲線を描いてみて比較します。

まず,Trのモデルなんですが,件のトラ技の記事によると,パラメータの数は33も載っています。おそらく,もっとあると思います。

しかし,そんなにたくさんの数のパラメータを決める必要はありません。たいていはデフォルトのままでOKだと思います。特に,逆バイアス時の特性を記述するパラメータなんかもあったりして,真空管だとグリッド電圧がプラスの領域まで記述するようなものですから,使用しない領域であればデフォルトのままでいいと思います。

さて,iruchanはこれらのパラメータのうち,次の3つを決めればあとは何とかなると思っています。

BF  順方向DC特性。いわゆるhFEのことです。

IC  伝達飽和電流。▼の式で求めます。

EG  バンドギャップ電圧。シリコンTrは1.11(eV),ゲルマニウムTrは0.67(eV)です。

そのほか,飽和特性を決めるパラメータがあります。シリコンTrだとデフォルトでいいと思います。

VAF  アーリー電圧。飽和領域のICを決めます。

RB  ベース直列抵抗。デフォルトの10ΩでOKです。

RC  コレクタ直列抵抗。5極管で言うと肩特性を決めます。飽和電圧の大きい古いTrだと結構重要です。VCE(sat)/IBで計算します。

それと,高周波Trだとスイッチング特性が必要なので,次の電極間容量なども決めておきます。

CJC  0バイアス時のCB-CCJC=1.2~2.4×Cob

CJE  0バイアス時ののCB-ECJE=1.5~2.0×CJC

TF  順方向通過時間 TF=1/2πfT

        ☆        ☆        ☆

これくらいでなんとかなるでしょうか。そのほか,MFGというパラメータもあり,製造会社名です。MFG=NECと書いておくと,あとで素子を選択するときにメーカが表示されて便利です。

上記のうち,問題はIC。これの計算はちょっと厄介です。ある特定のVBEのときのICのデータが必要です。

普通のTrだと,IC-VBE特性が載っていますので,そのグラフからどこか1点読み取ればいいのですが,2SA56の規格表には記載されていません。

ただ,なぜか飽和電圧の特性が載っていて,そこから,VBE=-0.4V,VCEsat=-0.35Vの点を読み取りました(点)。

2SA56 Vce_sat-Ib特性.jpgこんなグラフを見るのは初めてですけどね。

先ほどのVCEsatの時のICは▲の図から-10mAですので,これを計算に使います。

Trのコレクタ電流は下式で表されますので,このISを先の数値を使って計算します。

              IS計算式.jpg

ここで,順方向DC特性NFは1です。また,しきい値電圧VTは,

               VT計算式.jpg

なんですが,Kはボルツマン定数,Tは絶対温度,qは電子の電荷ですから,結局は定数で,常温ではVT=0.0258(V)となります。ところで,知りませんでしたけどボルツマンは最後,自殺しているようです。天才なのにとても惜しいことです。天才も悩むことがあるのですね。

また,ICは下記のアーリー電圧VAFにも影響されます。理想的にはIC-VCE特性は飽和領域では水平になるので,SpiceでもほとんどのTrモデルが水平なんですが,初期のTrやゲルマニウムTrではこの部分でも電流が増えます。▲の特性を見ると2SA56なんてそうですよね。シリコンTrや5極管ではほぼ水平なんですけどね。

              VAF.jpg

コンプリメンタリのTrでもPNPのものだけ,この傾向があったりしますのでご注意ください。

と言う次第で,決定したゲルマニウムTrの2SA56のSpiceモデルは,
 
.MODEL 2SA56 PNP(IS=8.91383E-08 BF=68.632 EG=0.67 VAF=12 RB=7
+ RC=20 CJC=12p CJE=12p TF=5.305e-10 MFG=NEC)
 
です。
 
これを先ほどのstandard.bjtのファイルに追加しておきます。
 
こうすると,LTspice上でデフォルトのPNP Trを配置したあと,Pick New Transistorというボタンを押すと選択することができるようになります。

pick new transistor.jpg 使用するTrを決めます。

select bipolar transistor.jpg 2SA56が出てきます。

次に,コレクタ特性曲線を描いて確認します。必要に応じて,先のパラメータを書き換えて何度も修正します。LTspiceで過渡解析を実施します。コレクタ電圧とベース電流を下記のようにスイープして描画します。

PNP Tr特性曲線Spiceモデル.jpgコレクタ特性を描くための回路

2SA56 Vce-Ic特性Spice.jpg2SA56の特性曲線

ちょっと,PNPなので見にくいですね。どうしてもLTspiceはグラフの上限は下限より数値が大きくないといけないので,規格表のグラフと天地が逆になってしまいますが,こんな感じです。▲の規格表のグラフと比較すると似ていると思います。

さて,いよいよLTspiceで今回の回路をシミュレーションしてみます。


ベース接地コルピッツ発振回路.jpgシミュレーション回路

なんと,驚いたことにデフォルトのPNP Trはもちろん,ほかのTrではかなりのものが動きません。2SA562N344とか,シリコンの2SA1015ではちゃんと動くんですけどね。やはり,きちんと周囲の定数を設計しておかないといけませんね。

局発出力(R4=1kΩ).jpg ちゃんと発振しました。

局発出力(R4=1kΩ)-1.jpg 拡大するとこんな感じです。

発振条件としては,閉ループ中のゲインが1(0dB)以上であることが必要ですが,ちゃんとf特を見ると20dB以上のゲインがあることがわかります。そんなに取れるとは思えないんですけどね......。

FM局発f特.jpg 76MHzで20dB以上あります。

LTspiceでいろいろいじれるので調べてみると,やはり帰還コンデンサC5は結構シビアです。2pFでは発振しません。また,IFTと局発コイルの間のC6も20pF以下では発振しません。

そのほか,Trの動作点を決めるR2とR4は重要です。Trのベース電位を見て,ほぼ1/2Vccくらいになるように決めました。原設計とはかなり異なる値になりました。

こうして,再び,基板上の抵抗やコンデンサを取りかえ,発振するかどうか見てみます。

局発波形.jpg なんとか発振しました。

LTspiceではシミュレーションでは9VP-Pくらいの出力となるんですが,せいぜい400mVP-Pくらいと小さいですし,基点もふらふらと移動していて不安定です。もう少し定数を見直してみたいと思います。それに,発振周波数も45MHzくらいと低すぎます。これは発振コイルのインダクタンスが大きいためですが,これも小さくしないといけません。

それにしても2SA56は1950年代末の製品だと思いますが,よくこんな古いTrが動作するものだと感心しました[晴れ][晴れ]


2018年4月30日追記

▲の局発の周波数をもっと高くして,また,波形ももっときれいにしたいと思い,調整を再開しました。

ところが.....。

再度,完全に局発が停まってしまいました。あ~~ぁ.......orz。

こういうの,よくあるんですよね。ほんのわずか,何かをいじったら回路が動作しなくなった,ってよくありますよね~.....。ケースのふたを閉めただけで動かなくなった,なんてのもしょっちゅうですけど.....。

再び泥沼にはまってしまいました。

気を取り直して,いろいろ調べてみますが,うまくいきません。LTspiceでR1の820Ωを大きくすると発振が安定することがわかりましたが,やってみてもダメ。全然,局発は動作しません。

ようやく,再度,"ラジオの組立て" を読み返してみますと.....初段のコンバータ用のIFTの同調コンデンサがないことに気づきました。

実は,気がついていたのですが,てっきり誤植だと思ってしまっていました。この回路,検波段に誤植があり,レシオ検波なんですが,ダイオードの向きが逆でした。それで,これも誤植だろう,と思ってしまいました。

でも,改めて,クラウンのFM-100型ラジオの回路や東光のカタログを見てみると.....,

なんと,やはりコンバータ用のIFTだけ,同調コンデンサがないんです。

Crown FM-100 schematic.jpgクラウンFM-100型回路

やはり,コンバータ用のIFTだけ,同調コンデンサがありません。IF段はついています。

東光FM用IFT結線図.jpg東光カタログ'71から

    中間周波用        コンバータ用

うっかりしていました。FMはすべて同調コイルがついていると思っていました。TV用の場合,真空管やTrの電極間容量を利用して同調コンデンサがないものがありますが,FMもコンバータ用のものだけ,つけられていないんですね。

さすがに同調コンデンサのない,コンバータ用のIFTなんて持っていないので,FCZ研究所の10.7MHzIFTを改造します。同調コンデンサのリード線を切って外しちゃいます。

FCZ 10.7MHz局発用改造.jpg  部分のリード線を切ります。

FCZ 10.7MHz局発用改造1.jpg 同調コンデンサを外しました

ようやくこうやって再度,基板に取りつけてみると発振しました。

今まで,LTspiceでシミュレーションしたときはすべて同調コンデンサがついていましたが,ちゃんと発振していました。

ただ,Spiceで動いたからと言って実際の回路が動くわけじゃありません。この逆は,まずないと思って間違いないんですけど。

この部分は並列共振じゃなく,直列共振になっているんですね。失敗でした。IFTと局発コイルをつなぐコンデンサは10.7MHzに共振しないといけないのでちゃんと容量を決める必要があります。並列にコンデンサが入っているとうまくいかないようです。

局発コイル周辺.jpg 局発周辺

コイルはφ0.5mmのUEW(ポリウレタン)線で何度か試作しました。これはコイル径5mmで,6回巻が適当でした。

局発上限.jpg ようやくきれいに発振するようになりました。

        ☆        ☆        ☆

1914年9月,英仏の宣戦布告から1ヶ月後,事前に入念に策定したシュリーフェン作戦の想定どおり,ベルギーを蹂躙し,パリへ向けて快進撃を続けていた最右翼のドイツ第1軍を率いる将軍クルックは40年前の皇帝ナポレオン3世を捕虜にしたセダンの戦いの大勝利の再現をもくろみ,敵の第5軍を包囲殲滅するべく,東に向きを変えます。
 
その隙を突いて,パリ防衛を任されていた老獪なフランスのガリエニ将軍は敵の右側面と伸びきった補給線を突き,攻撃します。戦況は一進一退を繰り返しますが,とうとう,タクシーまで使って援軍を送り続けたフランスが勝利し,ドイツ軍は越えたばかりのマルヌ川を渡って一気に100kmも後退し,パリを目前にしてドイツ軍は敗北します。有名なマルヌの戦いですね。フランスはガリエニのおかげで危機一髪の窮地を逃れました。一方,補給の軽視はドイツ陸軍ばかりでなく,我が帝国陸軍の悪いところです。
 
シュリーフェンの後任で参謀総長を務めていたモルトケ(普仏戦争の勝利の立役者の大モルトケの甥)は国王のヴィルヘルム2世にこう言ったと伝えられています。"陛下,この戦争は我々の負けです"。
 
こうして1918年11月の休戦にいたるまで,4年にわたる長い塹壕戦が始まることになりました。26年後,この教訓を生かし,今度は独仏国境の森林地帯を機甲部隊が突破してパリが陥落します。フランスはここからは来ないだろう,と高をくくっていました。シュリーフェンは6週間の計画を立てていましたが,今回はわずか1ヶ月でした。1940年6月,ヒトラーがさも愉快そうにエッフェル塔を見上げている映像が残っていますね。
 
        ☆        ☆        ☆
 
iruchanは無事に局発の作動に成功して泥沼の西部戦線を脱出してパリに向けて前進再開です。さっそく,参謀本部に打電します。
 
          "西部戦線異状ナシ"  .......か?       
 
                              つづく かな

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表面実装部品のはんだづけ [電子工作]

2018年4月13日の日記

ここのところ,iruchanも仕事で表面実装部品のはんだづけをしないといけないことが増えました。そもそもTO-92など,リード部品が減ってしまい,表面実装の部品でないと世の中存在しないものが増えてきたのでしかたないです。

表面実装の部品はSMDとも言いますが,これはSurface Mount Deviceの略です。以後,SMDと書きます。

世の中,軽薄短小化がどんどん進み,とうとう虫眼鏡どころか,顕微鏡でないと見えないくらいの部品が増えて困ったものです。特に,抵抗やコンデンサなんか,今では1005が主流となり,これなんて1mm×0.5mmです。さらには今じゃ,0402なんてのもあり,これなんて,0.4mm×0.2mmですから,うっかり吸い込んだら大変です。そのうち春になると中国大陸からSMD部品が風に乗って飛んできて,花粉症じゃなくて,チップ症という病気がはやるんじゃないかと思います.........怖っ!!。

まあ,今までも小型のSMD部品はあったし,1990年代でも実際にICなど,SOPのものがあったので,たまに使いましたけど,今じゃDIPなんて絶滅危惧種のパッケージになってしまい,SOPしか販売されない,と言う場合も少なくありません。

ICのパッケージは大まかに次のような感じです。

ICパッケージ.jpg 各種ICパッケージ
リニアテクノロジーではLT1490AHはMS8,LTC3588はMSE10と言っているようです。

IP系

Inline Packageの略で,たいていは2列になっているのでDual Inline Packageの略でDIPと言ったりします。80年代は主流のパッケージでした。OPアンプのDIP8ピンとかTTLのICの14ピンとか,今でもたくさん使われていますが,新規のICでこのパッケージで出ることはOPアンプをのぞけばもうないと思います。

もちろん,ピンの数が少ないものはピンが1列でになっていて,Single Inline Packageの略でSIPと言います。ヘッドホン用のICなど,TA7376APとかそうでしたね。

SOP系

Small Outline Packageの略で,これからSMDとなります。

今はこのパッケージが主流ですが,もっと小さなパッケージに移行しつつあり,IP系同様,過去のものとなる日も使いでしょう。

SOPだとピンピッチは1.27mmとDIPの半分です。また,さらに小さなSSOPやMSOPというのもあります。SSOPはピンピッチが1mm,0.8mm,0.65mm,0.5mmとあります。MSOPはピンピッチが0.65mmと0.5mmのものです。さらに,本体の厚みの薄いTSOPやTSSOPというのもあって,はっきり言って収拾がつきません.....。

問題はSOP系の場合,会社ごとに呼び方がバラバラなのも問題で,そもそもMSOPのMはminiの略というところもありますし,microの略という会社もあります。

それにしてもピンピッチが0.5mmなんて,ひとくちに0.5mmって言っちゃいますけど,手作業ではんだづけするのは限界です。

それにしてもICはDIPまでは2.54mmピッチで,トランジスタなどもそうでしたが,SSOPのICからmmになりました。長い間,インチに悩まされ続けましたけど,ようやくメートルに切り替わったようです。米国の力も落ちたな.....。

SON系

ここまではピンがついていて,まあ,ICから脚が出ているようなパッケージでしたが,脚が邪魔! というメーカさんがいて,とうとう亀みたいに脚を引っ込めちゃったパッケージがこれです。脚の分だけ,幅が小さくできますね。

ICの外周に金属製の電極が顔を出しているだけで,そのまわりにはんだづけします。

なお,いずれもICのピンが4方向に出ているものもあり,それらは今までの名称の頭にQがついています。

BGA系

こんどは,そのはんだ部分が邪魔! と怒るメーカさんがいるので,とうとう側面にはんだづけしなくなってしまい,ICの腹にボール状のはんだ突起を設けたやつです。スマホ用のICなんか,こればかりだと思います。

これはリフロー炉で基板全体を加熱してはんだを溶かしてはんだづけするタイプのため,手作業ではんだづけすることは完全に不可能です。

そもそも,IC自体,抵抗みたいに非常に小さくなってしまったので,手作業ではICをマウントすることすら無理で,マウンターで基板に載せますが,部品が小さくて動いちゃうので接着剤みたいな機能があるクリームハンダで仮止めしてリフロー炉で過熱します。

そもそもリフローって何? って感じですけど,reflowの略で,その前にフロー炉というのがあり,いわば溶けたはんだの風呂に昔からの裏面にはんだづけする基板を浮かべてはんだづけしたのに対し,表面側をはんだづけするための加熱炉のことです。

さて,手作業ではんだづけするのはSOP系までだと思います。それ以降の物はリフロー炉を使わないとはんだづけできないでしょう。といって,SOP系と言っても,ピンピッチが0.5mmのものなんて,こんなのはんだづけできるの~~~~!! って言うくらい小さいんですけどね。

iruchanは仕事でLTC3588を使うことになりました。ピエゾ素子などの圧電素子が発生する電圧のスイッチングレギュレータICです。1.8~3.6Vの間の4段階の一定電圧を出力してくれます。

LTC3588回路.jpg回路はこんなのです。

ピン間隔は0.5mmです。▲の写真にあるとおり,正直言ってこんなのはんだづけできるんかい!! って怒りたくなるくらい小さいです。

でも,一応やり方はあります。

まず,大事なのがフラックス。SMD部品のはんだづけには必須,と言っていいです。白光やホーザンなどから出ていますから買っておかないといけません。

でも,臭いが変。どこかで嗅いだことのあるような.......。

そう,イソプロピルアルコールの臭いですね。模型ファンならプラモデルの塗装剥離剤として知られています。iruchanも愛用しています。なんと,はんだづけのフラックスはIPAを主体とするアルコール系の材料のようです。

これが,どうもはんだをうまく広げてくれる性質があるようです。

もともと,電子工作用のはんだにはヤニと呼ばれるフラックスが中心に入っています。これをなんでヤニと呼ぶか,と言うと松ヤニが原料だったからで,そんなの今どき松ヤニなんて使ってへんやろ,と思ったら今も木を乾留して作っているそうで,マジで松などのヤニだそうです。英語ではrosinといいます。

ただ,このヤニは使ってみるとわかるのですが,あまりはんだを広げてはくれません。むしろ,余分なところに広がらないようにするためのような感じで,SMD部品のような小さな部品に対してははんだのまわりを阻害し,うまくはんだづけできない原因になってしまいます。

SMD部品にはやはり専用のフラックスを使い,はんだもヤニなしはんだの方がよいのではないかと思いますが,ヤニなしのはんだはほとんど売られていないので,はんだ自体は従来のものを使います。

LTC3588基板flux.jpg フラックスを塗ります。

ICを基板に載せたらフラックスを塗布します。ランドだけじゃなく,ICのピンにも塗ります。

それにしてもこのIC,▲の写真をご覧いただくとわかりますが,なんと,GNDはICの腹にある電極です。本当に悪魔のようなICです。なんでこんなことやってんだ,と思いましたが,要は放熱のためなんですね。

どうやってはんだづけするんだよっ!って思いましたが,なんとかあらかじめパターンにはんだをつけておいて,ICを載せたあと,パターンを加熱してはんだづけしました。ホッ。

LTC3588基板solder.jpg はんだづけします。

普通のTrみたいに1本ずつはんだづけしてもよいのですが,1mmピッチのSOPのICまでで,さすがに0.5mmピッチだとあきらめて全部いっぺんにはんだづけしないとダメです。

LTC3588基板de-solder braid.jpg ブリッジ部分を吸い取ります。

当然,そんなことやっちゃうとICのピン全部がブリッジしちゃうのですが,それは気にしません。

その後,ハンダ吸い取り線で余分なはんだを吸い取っちゃいます。

ここで肝心なのは,▲のように,吸い取り線にフラックスを塗っておくことです。こうするとうまくきれいにピン部分以外のはんだを吸い取ってくれます。

LTC3588基板solder-1.jpg ICのはんだづけができました!

やってみると意外にきれいにできます。あとはルーペでピンの隙間がちゃんと確保されているか,確認します。

もし,ブリッジしてしまっていたら.....再度はんだごてを当ててブリッジしたはんだを取り除きたいのですが,小さすぎてやはりうまくいきません。全部はんだを溶かして最初からICをつけ直すか,カッターでブリッジしたところだけ切っちゃうのが一番手っ取り早いかと......(^^;)。

LTC3588基板(実装後).jpg ほかの部品もつけて完成です。

抵抗やコンデンサは2012サイズ(2.0×1.25mm)を使っています。CR類はこれが限界だと思いますが,これですら,現在は少なくなってきています。

入力に1kHzくらいの交流を加えるとちゃんと3.2Vの直流が出てきます。成功しました。

ところが.....。

これだけ苦労したのに,LTC3588を使った▲の回路の中国製の完成基板が秋月やAmazonで¥800~¥1,200で売られているではないですか!! おまけにこのIC,MOUSERで750円くらいする高いICなんですが,完成基板でこの値段とは.......orz。


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ゲルマニウムトランジスタ スーパーヘテロダイン方式FMラジオの製作~その1~ [ラジオ]

2018年4月11日の日記

先月,米国バンドのFMラジオを日本バンドに変更するのがうまくいったのに気をよくして,自作のFMラジオを調整したいと思います。

iruchanはゲルマニウムトランジスタが大好きで,本ブログでも,Cherryの4石レフレックスラジオキット6石8石スーパーをゲルマニウムTrで作ったり,完全にプリント基板から自作したラジオも2種類作りました。ひとつは国産Trを使ったもので,もう一つは英Mullardのガラス封止の砲弾型Trを使ったものです。

どれもうまくいきました。お気に入りはMullardのTrを使ったもので,OC44OC71を使っています。それこそ,トランジスタ黎明期の本当に初期のTrで,そんなTrが今も使えるのに驚きましたし,感度もよいし,音もよいのにびっくりしました。今もそのラジオでNHKニュースなんかを聴いています。

さて,今日はいよいよFMラジオを作っていきます。フルディスクリートで,しかもゲルマニウムTrを使ったスーパー式のものです。

残念ながら,やはりFMは難しく,過去の製作記事をさんざん探したのですが,ゲルマニウムのスーパーFMラジオの記事は2つの記事しか見つかりませんでした。ひとつは無線と実験に載っていた,カーステレオのクラウンFM-100型と,単行本の "ラジオの組み立て"(吉本猛夫著,元文社1965年刊行)です。

クラウンのは自社の新製品を紹介するための記事ですが,詳しい設計手法や回路も載っていて参考になります。また,"ラジオの組み立て" の方は著者が東芝の柳町工場勤務と奥付に書かれていて,これもどちらかと言えば,東芝のFMラジオの設計記事,みたいな感じです。いずれにしてもプロの技術者が測定器を使って組み立てた内容で,あまりアマチュアが一から作るための記事,という感じではありません。やはり難しいのですね。

おそらく,TrのFMラジオは作るのも調整するのも難しいので,測定器を持たないアマチュア向けの製作記事としては敬遠されたのだと思います。それに,iruchanも記憶が薄れているのですが,ディスクリートのFMラジオキットというのはなかったと思います。AMだとCherryのほか,ACEやHOMERのキットがありましたね~。今,売られているFMラジオのキットはICを使ったものですし,肝心のフロントエンド部分は事前にコイル類を調整してあって,無調整でFM局が受信できる,と言うものですよね。

さすがにFMともなるとSGやディップメータなど,測定器がないと調整できません。おそらく,製作記事もほとんどないし,実際にTrを使ってスーパーのFMラジオを作った人も少なかったと思います。真空管のFMラジオというのはわりに製作記事があるのですけどね。

それに,日本の場合,FM放送の開始は1969年で,すでにTrと言ってもシリコンが当たり前になっていた時代ですから,余計にゲルマニウムの記事が少ないのだと思います。

とはいえ,試験放送は1960年に始まっていたし,69年までにはほぼ全県でNHKの放送が実施されていたので,HiFiマニアの人は作ることを考えていたし,先の記事や本も出たのは60年代に入ってすぐくらいのことですから,実際に作ろうとした人はいたようです。

iruchanはシリコンTrが実用化されてからの生まれなので,ゲルマニウムTr世代じゃないんですが,本にはたくさんゲルマニウムTrの記事が出ていたし,実際,メーカ製のラジオもかなり遅くまで外観はとてもモダンなのに,中身はゲルマニウム,と言う時代が続いたので,とてもゲルマニウムTrには親しみが湧きます。中学になって初めて2SC372(懐かし~~)を使ったラジオを作ったとき,シリコンTrに驚いたことがあります。外形もゲルマニウムだと金属缶なのに,シリコンはモールドになっちゃっていて,例のシルクハットみたいな形状に違和感をおぼえたのを今も思い出します。

もう,あれから30年も経っていますが,ゲルマニウムTrを使ってFMラジオを作ってみたいと思います。

さて,まずは使用するゲルマニウムTrなんですが......

NEC transistors-1.jpg NECのゲルマニウムTrたち

部品箱をひっくり返してかき集めました。黒いNECのTrは河童さんからいただいた中古のものですが,全部生きていました。黒いのはたいてい通信用で,普通は市販されていないものです。通信用=電電公社用と考えてよく,VHF帯の中継器などに使われたものだと思います。

規格を載せておきます。

       VCEO(V)  IC(mA)  Pc(mW)  hFE  fT(MHz)

2SA56    -15     -50     150    40   300  

2SA213    -15     -2       15    -    140

2SA244    -25     -30     200    -    400

2SB101    -30     -50     125    -    1.2

2SB163    -30     -100     125    70    0.8

FM用のTrだと松下の2SA71が有名です。太めの金属缶ケースで,シールド電極を持った4本脚になっています。もとは蘭PhilipsのOC171です。FM用のTrを開発するのに各社苦労していた時期に欧州からカネで技術導入して作ったので,ちょっと反則という気がするのですけどね.....。ということで,2SA71も持っているのですが,反体制派のiruchanはブルジョワは嫌いなのでFA選手は2軍落ちです。実際,2SA71ってデブでおいしいもの食べ過ぎて太った,という感じがしてあまり好きになれないんですよね........(^^;)。

結局,NECのTrを使うことにし,スタメンは2SA56(RF,conv)+2SA244(IF)+2SB101(LF)+2SB163(output)のラインナップで臨みます。ちょっと2SA213は定格が心細く,うっかりすると飛ばしてしまいそうで,ベンチで代打要員です。

さて,次はバリコンやコイル類です。

幸い,まだポリバリコンのFM用は入手可能です。2連の最大20pFくらいのものです。国産のミツミやTWDのものも入手できると思います。黒いプラでできた韓国製のが最近,秋葉で売られていますが,どうも絶縁のポリエチレン樹脂が弱くて破れる,と言う話を聞きました。

問題はコイルやIFT。

コイルは数μHのものが必要です。発振コイルだと0.1μHくらいですので,ほとんどが空芯となります。普通は市販されていないので,エナメル線で自作しないといけません。

これ,大変なんですよね~。

やはり,FMはこれが最大の問題だと思います。

自作すると巻数や直径,線径によりインダクタンスが大幅に変わるので,うっかりすると(しなくても)とんでもないところで発振して,まったく局が受信できない,と言うことになります。せめてオシロか周波数カウンタがあると,発振している周波数が確認できて,調整できるのですけど。

ということで,メーカ製のラジオなどに使われている,コア入りでねじで調整できるやつが入手できると楽ですし,実際,東光やミツミのカタログには載っていたり,メーカ製ラジオには使われているので,こういったのが入手できるといいのですが,市販されていることはほとんどありません。

幸い,熊本のFCZ研究所が長年,ハムバンド用のコイルを販売していて,FM用に使える80MHz帯と144MHz帯のコア入り可変インダクタがありますので,使わせていただきます。アンテナコイルやバンドパスフィルタには80MHzを,発振コイルに144MHzを使うとよいと思います。また,10.7MHzのIFTもあるので,ありがたく使わせていただきます。

ただ,FCZのコイルはもう10年くらい前に製造中止になっています。iruchanもあわてて買いだめしたものです。現在は中国製の互換品が手に入るようですが,品質の面でやはりFCZの方がよいようです。

FCZ 10S10.7.jpg FCZの10.7MHz IFT

非常によくできていて,壺型コアを上からかぶせるようにして調整します。実測したところ,インダクタンスは4.79μH,Q=8.09でした。内蔵されているコンデンサは51pFのようです。

なお,FCZ製じゃなく,ジャンクなどで古いFM用IFTを使う場合はいくつか問題があります。また書きたいと思います。

Ge Tr FMラジオ基板.jpg 基板が完成しました

プリント基板は100×75mmです。ちょっと無理で,もう少し大きな基板にすべきでした。一応,これで低周波部分も入っていて,スピーカを直接つなげます。

次回は調整編です。

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