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表面実装部品のはんだづけ [電子工作]

2018年4月13日の日記

ここのところ,iruchanも仕事で表面実装部品のはんだづけをしないといけないことが増えました。そもそもTO-92など,リード部品が減ってしまい,表面実装の部品でないと世の中存在しないものが増えてきたのでしかたないです。

表面実装の部品はSMDとも言いますが,これはSurface Mount Deviceの略です。以後,SMDと書きます。

世の中,軽薄短小化がどんどん進み,とうとう虫眼鏡どころか,顕微鏡でないと見えないくらいの部品が増えて困ったものです。特に,抵抗やコンデンサなんか,今では1005が主流となり,これなんて1mm×0.5mmです。さらには今じゃ,0402なんてのもあり,これなんて,0.4mm×0.2mmですから,うっかり吸い込んだら大変です。そのうち春になると中国大陸からSMD部品が風に乗って飛んできて,花粉症じゃなくて,チップ症という病気がはやるんじゃないかと思います.........怖っ!!。

まあ,今までも小型のSMD部品はあったし,1990年代でも実際にICなど,SOPのものがあったので,たまに使いましたけど,今じゃDIPなんて絶滅危惧種のパッケージになってしまい,SOPしか販売されない,と言う場合も少なくありません。

ICのパッケージは大まかに次のような感じです。

ICパッケージ.jpg 各種ICパッケージ
リニアテクノロジーではLT1490AHはMS8,LTC3588はMSE10と言っているようです。

IP系

Inline Packageの略で,たいていは2列になっているのでDual Inline Packageの略でDIPと言ったりします。80年代は主流のパッケージでした。OPアンプのDIP8ピンとかTTLのICの14ピンとか,今でもたくさん使われていますが,新規のICでこのパッケージで出ることはOPアンプをのぞけばもうないと思います。

もちろん,ピンの数が少ないものはピンが1列でになっていて,Single Inline Packageの略でSIPと言います。ヘッドホン用のICなど,TA7376APとかそうでしたね。

SOP系

Small Outline Packageの略で,これからSMDとなります。

今はこのパッケージが主流ですが,もっと小さなパッケージに移行しつつあり,IP系同様,過去のものとなる日も使いでしょう。

SOPだとピンピッチは1.27mmとDIPの半分です。また,さらに小さなSSOPやMSOPというのもあります。SSOPはピンピッチが1mm,0.8mm,0.65mm,0.5mmとあります。MSOPはピンピッチが0.65mmと0.5mmのものです。さらに,本体の厚みの薄いTSOPやTSSOPというのもあって,はっきり言って収拾がつきません.....。

問題はSOP系の場合,会社ごとに呼び方がバラバラなのも問題で,そもそもMSOPのMはminiの略というところもありますし,microの略という会社もあります。

それにしてもピンピッチが0.5mmなんて,ひとくちに0.5mmって言っちゃいますけど,手作業ではんだづけするのは限界です。

それにしてもICはDIPまでは2.54mmピッチで,トランジスタなどもそうでしたが,SSOPのICからmmになりました。長い間,インチに悩まされ続けましたけど,ようやくメートルに切り替わったようです。米国の力も落ちたな.....。

SON系

ここまではピンがついていて,まあ,ICから脚が出ているようなパッケージでしたが,脚が邪魔! というメーカさんがいて,とうとう亀みたいに脚を引っ込めちゃったパッケージがこれです。脚の分だけ,幅が小さくできますね。

ICの外周に金属製の電極が顔を出しているだけで,そのまわりにはんだづけします。

なお,いずれもICのピンが4方向に出ているものもあり,それらは今までの名称の頭にQがついています。

BGA系

こんどは,そのはんだ部分が邪魔! と怒るメーカさんがいるので,とうとう側面にはんだづけしなくなってしまい,ICの腹にボール状のはんだ突起を設けたやつです。スマホ用のICなんか,こればかりだと思います。

これはリフロー炉で基板全体を加熱してはんだを溶かしてはんだづけするタイプのため,手作業ではんだづけすることは完全に不可能です。

そもそも,IC自体,抵抗みたいに非常に小さくなってしまったので,手作業ではICをマウントすることすら無理で,マウンターで基板に載せますが,部品が小さくて動いちゃうので接着剤みたいな機能があるクリームハンダで仮止めしてリフロー炉で過熱します。

そもそもリフローって何? って感じですけど,reflowの略で,その前にフロー炉というのがあり,いわば溶けたはんだの風呂に昔からの裏面にはんだづけする基板を浮かべてはんだづけしたのに対し,表面側をはんだづけするための加熱炉のことです。

さて,手作業ではんだづけするのはSOP系までだと思います。それ以降の物はリフロー炉を使わないとはんだづけできないでしょう。といって,SOP系と言っても,ピンピッチが0.5mmのものなんて,こんなのはんだづけできるの~~~~!! って言うくらい小さいんですけどね。

iruchanは仕事でLTC3588を使うことになりました。ピエゾ素子などの圧電素子が発生する電圧のスイッチングレギュレータICです。1.8~3.6Vの間の4段階の一定電圧を出力してくれます。

LTC3588回路.jpg回路はこんなのです。

ピン間隔は0.5mmです。▲の写真にあるとおり,正直言ってこんなのはんだづけできるんかい!! って怒りたくなるくらい小さいです。

でも,一応やり方はあります。

まず,大事なのがフラックス。SMD部品のはんだづけには必須,と言っていいです。白光やホーザンなどから出ていますから買っておかないといけません。

でも,臭いが変。どこかで嗅いだことのあるような.......。

そう,イソプロピルアルコールの臭いですね。模型ファンならプラモデルの塗装剥離剤として知られています。iruchanも愛用しています。なんと,はんだづけのフラックスはIPAを主体とするアルコール系の材料のようです。

これが,どうもはんだをうまく広げてくれる性質があるようです。

もともと,電子工作用のはんだにはヤニと呼ばれるフラックスが中心に入っています。これをなんでヤニと呼ぶか,と言うと松ヤニが原料だったからで,そんなの今どき松ヤニなんて使ってへんやろ,と思ったら今も木を乾留して作っているそうで,マジで松などのヤニだそうです。英語ではrosinといいます。

ただ,このヤニは使ってみるとわかるのですが,あまりはんだを広げてはくれません。むしろ,余分なところに広がらないようにするためのような感じで,SMD部品のような小さな部品に対してははんだのまわりを阻害し,うまくはんだづけできない原因になってしまいます。

SMD部品にはやはり専用のフラックスを使い,はんだもヤニなしはんだの方がよいのではないかと思いますが,ヤニなしのはんだはほとんど売られていないので,はんだ自体は従来のものを使います。

LTC3588基板flux.jpg フラックスを塗ります。

ICを基板に載せたらフラックスを塗布します。ランドだけじゃなく,ICのピンにも塗ります。

それにしてもこのIC,▲の写真をご覧いただくとわかりますが,なんと,GNDはICの腹にある電極です。本当に悪魔のようなICです。なんでこんなことやってんだ,と思いましたが,要は放熱のためなんですね。

どうやってはんだづけするんだよっ!って思いましたが,なんとかあらかじめパターンにはんだをつけておいて,ICを載せたあと,パターンを加熱してはんだづけしました。ホッ。

LTC3588基板solder.jpg はんだづけします。

普通のTrみたいに1本ずつはんだづけしてもよいのですが,1mmピッチのSOPのICまでで,さすがに0.5mmピッチだとあきらめて全部いっぺんにはんだづけしないとダメです。

LTC3588基板de-solder braid.jpg ブリッジ部分を吸い取ります。

当然,そんなことやっちゃうとICのピン全部がブリッジしちゃうのですが,それは気にしません。

その後,ハンダ吸い取り線で余分なはんだを吸い取っちゃいます。

ここで肝心なのは,▲のように,吸い取り線にフラックスを塗っておくことです。こうするとうまくきれいにピン部分以外のはんだを吸い取ってくれます。

LTC3588基板solder-1.jpg ICのはんだづけができました!

やってみると意外にきれいにできます。あとはルーペでピンの隙間がちゃんと確保されているか,確認します。

もし,ブリッジしてしまっていたら.....再度はんだごてを当ててブリッジしたはんだを取り除きたいのですが,小さすぎてやはりうまくいきません。全部はんだを溶かして最初からICをつけ直すか,カッターでブリッジしたところだけ切っちゃうのが一番手っ取り早いかと......(^^;)。

LTC3588基板(実装後).jpg ほかの部品もつけて完成です。

抵抗やコンデンサは2012サイズ(2.0×1.25mm)を使っています。CR類はこれが限界だと思いますが,これですら,現在は少なくなってきています。

入力に1kHzくらいの交流を加えるとちゃんと3.2Vの直流が出てきます。成功しました。

ところが.....。

これだけ苦労したのに,LTC3588を使った▲の回路の中国製の完成基板が秋月やAmazonで¥800~¥1,200で売られているではないですか!! おまけにこのIC,MOUSERで750円くらいする高いICなんですが,完成基板でこの値段とは.......orz。


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ひかわ

よい記事です、
FT232RLが0,65mmピッチで困っていました。
すいとり線にフラックスなのです
ね。
大変助かります、ありがとーございます
by ひかわ (2018-05-11 20:39) 

iruchan

ひかわさん,どうもお褒めいただきありがとうございます。FT232RLも小さいですね~。

吸い取り線を使ってSMDのICをハンダづけする,というのは知っていましたが,以前やったときはうまくいかず,あきらめていました。

吸い取り線にフラックスを塗るとうまくいく,というのはiruchanのアイデアではありません。確か,トラ技に書いてあったような気がしますが,これはうまくいきます。是非お試しください。
by iruchan (2018-05-11 22:15) 

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