Spiceによる真空管のシミュレーション [電子工作]
2016年11月8日の日記
最近はiruchanはなんとかLTspiceの使い方を覚えて,アンプやラジオのほか,電子回路の設計に活用させていただいています。 実際に基板を作って回路を作らなくてもシミュレーションができるし,何か不具合があってもSpiceで検証できるのでとても助かっています。
そこで,以前から思っていたことを実行しよう,と思いました。
実は,Spiceは半導体だけじゃなく,真空管もシミュレーションできるのです。
もちろん,リニアテクノロジー社が提供しているフリーのLTspiceや,本格的なSynopsis社のHSpiceなど,有料のものでも真空管はモデルとして含まれていません。まあ,今どき,プロで真空管をSpiceで設計し,製品を販売する会社も人もいませんしね。
でも,Spice自体は1973年に米カリフォルニア大バークレー校で開発されたもので,世界中のエンジニアやマニアたちが開発に携わっていますし,中には凝った人もいて,すでに1990年代に私が読んでいた米誌 "Glass Audio" にも真空管のシミュレーション記事が載っていたので,いつかやってみたいと思っていました。でも当時はLTspiceのようなフリーのものはなく,まだとてもシミュレーションできる状態ではありませんでした。
ただ,今でもSpiceで真空管をシミュレーションするのはなにやら難しそうで,LTspiceを使い始めたのに,まだ取り組んでいませんでした。
一応,LTspiceにはtriodeというモデルがあり,呼び出すことができます。
一応,3極管のモデルはあるのですけど......。
ただ,これはtriode.asyというファイルなんですが,単なるシンボルだけで,シミュレーションをするための内部のサブサーキットは含まれていません。ですから,このモデルを回路図に貼りつけて配線しても,シミュレーション実行をするとエラーが出てシミュレーションできません。
これは,回路計算をするためのサブサーキットが入っていないと言う意味で,単なる図形のデータしか入っていないから計算できません,と言う意味です。
と言う次第で,問題はやはり,真空管のモデリングです。以下は,真空管式ギターアンプ製作センターに載っている方法を使わせていただきました。とてもわかりやすく解説してあり,本当にどうもありがとうございます。あわせてご参照ください。
真空管のSpiceモデル化はしかし,大変です。要は特性曲線を数式化してすべて記述しておけばいいのですが,そもそも特性曲線はメーカが数式化しているわけじゃなく,単に図表として発表しているだけなのでこれを読み取って数式化する必要があります。
ちょっとこれは大変。とても自力でやろうとは思いません。
でも,世の中,とても奇特な方がいて,全世界の真空管をモデル化し,ネット上で発表している方がいます。Ayumiさんという方のAyumi's labというページで,そこで真空管のモデルをダウンロードできます。
これはもう,驚いちゃいます。2A3にはじまって3C33(まあ,特性的には2A3×2と言うような球ですけど),6BQ5などの出力管から5AR4などの整流管も含まれています。 出力管も3C33がそうですけど,ポジティブグリッドの6AC5や欧州管のPX4などの珍しい出力管も含まれています。おまけに6G-A4や6R-A8などの純国産真空管も含まれているのはとても驚きます。
と言う次第で,ありがたくこのAyumiさんのお仕事を使わせていただきます。残念ながらコメント欄なんかでリンクの連絡ができませんでしたので,勝手にリンクを貼らせていただいています。
では,このモデルファイルを使ってLTspiceで真空管のシミュレーションをしていきましょう。もちろん,LTspiceをインストールしないといけませんが,ここでダウンロードできます。
まずはAyumiさんのファイルを少し,改造します。
おそらくはAyumiさんはプロの電子回路設計者なのでSpiceもLTspiceのようなフリーのものじゃなく,HSpiceなどの有料版をお使いなのだと思いますが,そのため,少し文法がLTspiceと異なるのです。
と言っても大したことじゃなく,累乗の演算子 ^ が ** となっているくらいのものです。
まずは12AU7をモデルとしてインポートします。
AyumiさんのWEBからモデルファイルをダウンロードして,12AU7.incファイルを開きます。
単なるテキストファイルなんでメモ帳でいいのですが,一応,Windowsに標準でついているワードパッドで開く方が便利です。なんでかというと,ワードパッドだと文字列の置換ができるからです.....っと思ったのですが,メモ帳で置換機能がなかったのはWindows98まででした。古っ~~!!
と言う次第で,別にワードパッドじゃなくてもメモ帳でOKです。
上記の通り,演算子の ^ を ** に置換しておきます。
それにしても^1.5と言うのがよく出てきますが,これはラングミュアの法則ですね!!
3極管のプレート電流は電圧の3/2乗に比例します。iP=G・VP^(3/2)です。ここで比例定数Gはパービアンスと呼ばれますが,昔習ったよな~と思い出しました。もちろん,私が電子工学を勉強していた頃にはとうに真空管は姿を消していましたけど,大学の実験では真空管をやりました。
そうやって変換した12AU7.incをLTspice所定のモデルファイルの場所にコピーしておきます。LTspiceをデフォルトのまま,インストールするホルダを変更していなければ,C:\Program Files\LTC\LTspice**\lib\sub です。**の部分はLTspiceのバージョンです。
ただ,このファイルは内部の特性を記述しただけのものなので,今度は図形としてのシンボルファイルを作っておきます。
次は先ほどの,troiode.asyと言うシンボルファイルをコピーして12AU7.asyという風に名前を変えておきます。 場所はC:\Program Files\LTC\LTspice**\lib\sym\Misc です。
ただ,これだけじゃもちろんダメで,サブサーキットとして先ほど作った.incファイルを読込むよう,指示しないといけないのでファイルの中身を書き換えます。
単にダブルクリックしちゃうと違う画面になって編集できないので,"プログラムから開く" → "メモ帳" で開きます(今回はワードパッドじゃなくても大丈夫です)。
これは図形データの編集画面で,今回,いじるのはこれじゃありません。メモ帳で開くと,
こうなります。ここで, SYMATTR Value triode とあるところを書き換えて 12AU7 とし,さらに,次の1行を追加しておきます。
SYMATTR ModelFile 12AU7.inc ※ "ModelFile" はこの通りででないとエラーになります。
さて,これでようやくシミュレーションができるようになります。
まずは普通に半導体を使ったLTspiceのシミュレーション同様,回路図を描いてきます。
まずはごく普通にAC解析を行います。▲のようなf特が得られます。
これだけでまずは感動しちゃいます。スゲェ~~!!
でもよく見ると変。フラットになっている部分は20dBくらいなので,12AU7のごく標準的なゲインだと思いますけど,f特は-3dBで16Hz~5.4MHzとなっています。ほんなアホ な!!!
最初,ミラー効果がシミュレーションされていないのだ,と思っちゃいましたが,12AU7.incファイルを見るとちゃんとCg-pが記述されていますので,そうではないようです。
実は,実際の回路に含まれる浮遊容量を考慮していないためです。実際にはCg-pのほか,真空管の入力部にはソケットや配線の容量があり,20~50pFくらいはありますので,もっと入力の容量が大きく,高周波の特性は悪くなります。この辺はこの記事をご参照ください。
それに,入力の信号源も出力インピーダンス0Ωの理想音源で,これでは入力容量によるハイパスフィルタ効果がありません。
だから,この結果はあくまでも理想状態の結果です。それにしても,もし,そうだったら真空管ってこんな広帯域なのか,と思いました。実際には12AU7のシングル増幅器だと上限はせいぜい50~70kHzくらいのものです。
実際には,各配線に数十pFの浮遊容量がありますから,▼こんなものでしょう。
さて,お次は最大出力電圧とひずみ。いったい,クリップする電圧は何Vなのか,ということと,ひずみ率がどうなるか,と言うことに興味が出てきます。
SpiceはFFTの機能がありますが,意外にひずみ率を出すのは面倒なことになります。
iruchanもFFTがあるのは知っていましたし,単純に各高調波を全部合計するとOKなんですけれど,各高調波は単位がdBなので和の計算をするのはチョ~面倒で,暗澹としていましたが,flipflopさんのHPで一発で表示させる方法を知りました。ありがとうございました。ただ,現在(2019年12月),拝見してみるとHPは削除されてしまっているようです。
ひずみの算出はAC解析ではなく,過渡応答解析(transient analysis)となります。1kHzで解析しますが,この場合,1秒とか,長い時間を計算する必要はなく,せいぜい10msec.くらいで結構です。フーリエ変換を用いて計算するので,10波程度,計測時間に入るようにstop timeを設定します。
また,フーリエ変換をさせるためのコマンドをシミュレーションに記述しておきます。
.Four 1k v(n***) がフーリエ変換のコマンドです。これを書いておかないと,▼のログファイルに出力されません。 n*** はデータを出力するノード番号です。テキストボックスの中に手で入力します。改行はctrl+ENTER です。
入力にある,電圧源V1の出力電圧を1mVくらいから変化させて出力の波形を見ていきます。
きちんと入力と出力の位相が反転していることがわかります.....。当たり前ですけどね.....。
さすがに,入力電圧が10Vともなると出力波形はクリップ近くなり,上下非対称の波形となります。奇数次の高調波がすごく増えてきているんですね。
出力波形のひずみ率については,ログファイルに記載されています。ctrl+L で表示されます。
各高調波ごとのパーセンテージが表示され,最後に全高調波ひずみ率が表示されます。
ついでに,FFTの波形を見ることもできます。viewコマンド中にFFTというのがあります。 特にひずみ率を調べたいだけなら表示する必要はありません。
さて,こうやって求めた出力電圧とひずみ率をExcelでグラフにするとこうなりました。
う~~ん,と思わずうなっちゃいました。こんなことができちゃうんですね~~。 これ,実験データじゃないんですからね!!!!
シミュレーションなんだから,ジグザグと誤差を含んだあやしげなグラフになってもよさそうですけど,まるで実測したみたいなきれいなグラフとなりました。
■ と▲はNECのC-R結合増幅データにあるデータです。出力電圧はほぼデータどおりですが,ひずみは3倍くらい違います。まあ,これは実測の方が正しいと思います。当時のひずみ率計が真空管式で性能が悪くて雑音が多い,と言うことも考えられますけどね。
結果として,最大95Vでクリップします。そのとき,ひずみ率は8%を超えちゃいますが,パワーアンプだと入力は最大で1Vですから,そのときのひずみ率は0.1%くらいです。やはり12AU7は優秀なんですね。
実はiruchanは真空管マニアだけれど,真空管アンプが音がよいなんて話はウソっぱちで,人間の耳は1%以下のひずみは検知できないし,半導体のアンプの方が音はよいと思っています。2%くらいになると明らかにわかりますけどね。
だから,真空管アンプが音がよいって言うのはいつも音楽を聴くレベルで人間の耳にひずみが感じられるかどうかのギリギリのあたりにひずみ率が来て,真空管によってひずみが検知できたり,できなかったりする微妙なあたりのひずみ率になるからだ,と思っています。また,ひずみ率によっては1%とか,2%とか,音がよいと思われるくらいの微妙なひずみ率があって,その辺で音のいい球,と言うのが決まるんじゃないかと思います。
さて,これで無事にLTspiceで真空管のシミュレーションができるようになりました。今後,真空管アンプの設計にも使ってみたいと思います。
2016年11月12日追記 ~整流管のシミュレーション~
AyumiさんのSpiceモデル集を見ていて,気がつきました。5Y3や5AR4などの整流管も載っています。 さっそく,実験してみます。
ただ,LTspiceは3極管triodeや5極管pentodeのモデル(と言っても単なるシンボルだけですけどね)がありますが,2極管diodeは出ていません。
と言う次第で,モデルのサブサーキット部分はAyumiさんのモデルが使えますが,LTspice上で使うにはシンボルデータの書き換えが必要となります。
まずは5Y3GTのモデルを作っていきませう。
Ayumiさんの真空管モデル集から5Y3.incというファイルをメモ帳で開き,
例によって演算子の書き換えをします。** の部分です。2極管は特性曲線が1本だけなのでファイルは簡単です。
次にシンボルデータの書き換えです。今度はシンボルデータtriode.asyをメモ帳で開き,
12AU7.asyの時と同様,▲のように書き換えます。SYMATTR ModelFile 5Y3.inc を追加するのも同じです。
また,整流管は2極管なので,当然,グリッドは不要なので最後の部分でgridについての記述は削除し,PINATTR SpiceOrder3 とあるのを SpiceOder2 に書き換えます。最後に 5Y3.asy という名前で保存します。
つぎに,シンボルデータを書き換えます。 次は同じ5Y3.asyをダブルクリックして開くと,
はさみのアイコンでグリッドを削除しておきます。
こうやるといよいよシミュレーションができるようになります。
この前作った6G-A4シングルアンプ電源部のシミュレーション結果。
なんと,本当にちょっと恐ろしいくらい,簡単にシミュレーションができちゃいます。なんて素晴らしいんでしょ!!
AC○○Vを両波整流し,コンデンサ○○μFに突っ込んだら出力のDC電圧は○○Vで,リップル率は○○%になるか,というのはとても難しい問題なのです。 といって,これ,いろんなところで必要だし,きわめて重要な問題なのですけどね。
コンデンサインプット整流の場合の直流出力電圧とリップル電圧については図表があり,負荷電圧/負荷電流で求めた負荷抵抗と入力電圧のほか,コンデンサの容量,トランスの直列抵抗の関数で求めることができます。でも面倒だし,実際やってみると違う,なんてことも多く,多くの場合,実際に組み上がってから調整,なんてなことになると思いますが,こうやると簡単にシミュレーションできちゃいます。
まずはコンデンサインプットの出力電圧が出力が291Vでリップルが8.8VP-P,なんてことがすぐにわかっちゃいます。これ,ホントにめんどくさい話なんですけどね~~。
さらに,Spiceだとリップルフィルタの出力が271Vで,リップル電圧が13.2mVP-Pなんてことがすぐにわかっちゃいます。それにしてもリップルフィルタの効果にも驚きます。リップル低減率実に-56.5dBですね!
また,5AR4を使ってみると出力が320Vくらいになって,大幅upなんてこともわかりました。実験でやると結構大変ですが,実際の通りの結果になって驚いちゃいます。実測データはこの記事をご覧ください。
なお,本モデルは整流管の立ち上がり時間までは考慮していません。シリコンDiみたいにインスタントONですのでご注意ください。▲のグラフで電圧の立ち上がりが遅いのはリップルフィルタのせいです。
と言う次第で,整流管までシミュレーションできちゃうなんて本当に素晴らしいです。
2019年12月22日追記
この記事は整流管のシンボルを作るためのものでしたが,さらに整流管のプレート特性を入れるにはこの記事をご参照ください。
はんだの買いだめ [電子工作]
2016年10月29日の日記
今年の夏,とうとうはんだを1巻,使い切っちゃいました。
使っていたはんだは米Kester社の#44というはんだ。1巻1ポンド(約450g)の重量があります。
なぜかよくわかりませんが,電線やはんだを巻で買う場合,長さではなく,重量で売られています。だから何mなのか,わかんなくて結構困っちゃうんですが,昔からの商習慣なんでしょうね。
使い切ったからと言って,大体,iruchanは10年で1巻くらいのペースなので,また実家に帰って1巻,持って帰ってきました。10年ほど前,3巻まとめ買いしてあるのです。
ご存じの通り,Kesterの#44というのは米国製の真空管アンプなどでよく使われていて,日本でもよく知られたはんだです。開発されてから40年以上経っているようですが,ずっと製造が続けられています。確かに,iruchanも社会人になってから米国のAntique Electronic Supplyで買ってからいつもこれを使っています。溶けやすいし,はんだの "濡れ" がよく,とても使いやすいはんだだと思います。
ちなみに#44というのは内部に含まれているフラックスの番号で,Kesterのカタログを見ると,An outstanding performance feature of this flux is the “instant-action” wetting behavior. と謳っていますから,特に, "濡れ" がよいようです。
はんだというのはやはり速やかに溶けて必要な範囲に広がり,固まったら長期間にわたって安定して固まって亀裂などを生じない,と言うのが優秀なはんだだと思います。特に,この#44というのはその後の文章で,機器の製造工程で高信頼である旨,記載されていますから,信頼性も高いようです。おそらく,真空管マニアの間で人気が高いのはウェスタン・エレクトリックが採用していたからなのではないか,と思います。
ただ,ご存じの通り,昔のはんだは当然,鉛入りです。スズ60,鉛40%と言うのがはんだの定番です。もちろん,このKesterのもこの比率ですが,カタログを見ると63:37とか,50:50とかいうのもあります。
昨今は鉛による公害を恐れて無鉛はんだ(鉛フリーはんだ)が販売されるようになりました。例の欧州連合によるRoHS指令が原因だと思います。はんだが野外などに不法投棄され,土壌汚染をすることを恐れたためのようです。
ただ,アマチュアが使うんだったら有鉛はんだの方がよい,と思います。
無鉛はんだは鉛の代わりに銀や銅,ビスマス,インジウムなどを用いたものですが, 何より無鉛はんだの問題点は融点。
有鉛はんだは183℃ですが,無鉛はんだは大体,200~220℃といったところで,かなり高いのです。
だから,無鉛はんだを使う場合は専用のハンダゴテが必要です。有鉛はんだ用の昔のこては使えないわけじゃありませんが,長時間にわたってこてを押しつけないと溶けないし,溶けたと思ってもすぐに固まってしまうので,能率がよくない上,はんだづけ不良になりやすく,使えません。
無鉛はんだ用のこては温度調節用のダイヤルがついているものが1万円くらいまでで売られていて,買おうかと思っていますが,どれも大型のものばかりでプリント基板用には使いにくいし,といって,iruchanの経験ではこれらのハンダゴテではまだ不十分で,無鉛はんだにはこて先に熱電対が入っていて,コントローラで制御するタイプでないとダメ,という気がします。
でも,このようなはんだステーションというのは確かに,こて先の温度をデジタルで表示して制御する優れものですが,何より高くて最低でも3万円はしますし,ステーションが邪魔でこんなの持ち歩けない,と思います。いちいちステーションまで持ち歩くわけにはいきませんしね。
それに,鉛を使わないはんだというのは昔からあって,オーディオ用と称して銀入りのはんだが売られていました。一度,iruchanも使ったことがあるのですが,仕上がりが悪く,どうにもつやのない汚い仕上がりで嫌になって1回でやめた記憶があります。そもそもオーディオ用なんて称するものにはロクなものがない,と思っているんですけどいかがでしょうか。
と言う次第でiruchanはもう,一生,趣味は有鉛はんだで行こうと考えています。これだとどんなこてでも使えますし,どこへ行ったってはんだごて1本で食っていけますからね......(^^;)。
それで,また新たにKesterの#44はんだを買いだめしました。
でも,先のAESなど,正規のお店じゃ高いんですよね。AESでは$31.95です。日本で買うと,5,000円くらいするようです。 米国からの送料を考えるとまあこんなものか,という気がします。何せ1ポンドもの重量がありますしね。
と言うことでiruchanはeBayで4巻まとめて$60で買いました。送料込みで$95でした。1巻あたり2,600円というところですね。
こんな箱でやって来ました。
なぜか,今回買ったものは白いパッケージに変わっちゃってます。前回買ったもの(左)は今でも入手可能ですが,製造はD.O.M 02/09/06と書いてありますから,ちょっとややこしいんですけど,米国は月/日/年の順で書くはずなので,2006年2月9日の製造のようです。 もちろん,D.O.M.はDate of Manufactureの略です。
ちなみに英国だと日/月/年の順で書く習慣ですので,このような表記は紛らわしいです。
そういや,JRの切符なんかは28.10.29とか書いてありますけど,これじゃ外国の人は何の日付だかわかりませんね。いい加減,こんな表記はやめて,せめて2016.10.29と書くべきだと思います。
Kester社も改めたのか,今年買ったものはMay/06/16と書いてありますから,今年,5月6日の製造です。
太さの比較。0.050インチ(奥)と0.031インチ(手前)
なお,線径は何種類もありますので,ご注意ください。大体,真空管アンプだと0.050インチ(1.27mm),プリント基板用ならもう2つ下の0.031インチ(0.8mm)のものがよいと思います。途中に0.040インチ(1mm) と言うのもあるようですが,見たことがありません。メートル法の欧州向けの製品じゃないでしょうか。どちらか1種類,と言うなら0.031インチを勧めます。
もちろん,鉛は英語でleadですけど,リードじゃなく,レッドと発音しますので,娘(中2)に教えておきました......(^^;)。
Kester社は有鉛はんだの製造中止をアナウンスしていませんし,今回,iruchanが買ったものも今年の製造だったのでまだ製造されているようです。世界的にも有鉛はんだの製造取りやめを宣言したメーカはないし,おそらく今後も有鉛はんだは製造は続けられるものと思いますが,念のため,買いだめしておきました。
これで0.050インチがあと2巻,0.031インチが4巻ありますので,一生分,買ったことになるでしょう。あまったらどうするんだって? 棺桶に入れてくれ~~。あ,これやると欧州連合から叱られるな~。 でも,たぶん,私が死ぬまでに欧州連合は崩壊しているだらうな.......。
アイロン転写式プリント基板製作法 [電子工作]
マーカー回路の製作 [電子工作]
2015年10月6日の日記
なんか急に寒くなってきました。皆さんもお身体ご自愛ください。
さて,今日は頼まれ物です。
某メーカーに勤める友人からの依頼で,マーカーを作ってほしいとのこと。マーカーというのは自動車や電車などの走行試験をする際に,試験区間に入ったとか出たときの目印となる信号のことで,さらに1kmごととか,500mごととかの位置の目印としても使う,とのことです。信号はTTLレベル(5V)くらいあればよいとのことですが,1kmは1パルス,500mは2パルスとしてほしいとのことです。
う~ん,実を言うと,1パルスだと単安定マルチを使えばよいので簡単ですが,2パルスとなると厄介です。1回じゃなく,一定の回数だけパルスを出す回路,というのは案外難しいです。
もちろん,カウンタ回路を使えば簡単ですが,一定の回数をカウントした後,パルスの発振を止めることが必要となります。
今回,2回と言うことなので,バイナリカウンタを使えば,2回のパルスをカウントした後に桁上げ? 用にカウンタICがパルスを出力するのでそれをリセット信号としてパルスの発振を止めればよい訳ですが,発振回路の制御にR-Sフリップフロップなどが必要で,ICが3個ほどいりそうです。
まあ,電子回路の設計者としてはできるだけ回路はシンプルに,使用する素子はできるだけ少なく,と考えちゃうので,今回,単安定マルチと非安定マルチを2個組み合わせた回路にしました。
単安定(モノステーブル)マルチバイブレータは74LS123が有名ですね。ボタンを押すと1回だけ,所定のパルス幅のパルスを1発出力する回路となります。どうしてもボタンを押すと信号が出る回路というのは問題があり,特にデジタル回路には適していません。チャタリングと言って接点が何回もバウンドして一瞬にしてたくさんのパルスを出してしまうからです。こんなのをカウンタ回路に組み込むと,ボタンは1回押しただけなのにカウンタは一瞬にして何十回も進んでしまう,と言うことになります。
これを防ぐために単安定マルチが使われます。接点がチャタリングを起こしても出てくるパルスは1回だけです。
1パルスの方はこれで十分で,パルス幅250msで回路を設計しました。
では,2パルスの方ですが,こちらはまず,ボタンを押すと1sec.の幅のパルスを出す単安定マルチを使います。
次はこの1sec.の幅のパルスを電源として,2Hzのパルスを出力する非安定(ノンステーブル)マルチバイブレータを動作させます。非安定マルチというのは電源が入ると,無限にパルス列を出力する回路のことです。発振回路と同じです。今回,電源が1sec.の間だけなので,結局,2回だけパルスを出力するだけで終わってしまいます。リセット回路はいりません。
と言うことで,設計した回路は次の通りとなりました。単安定マルチも結局,タイマIC 555を使って,合計3個使いました。
1km(1パルス)の出力に入っている赤色のLEDは信号の合成用と電圧調整を兼ねています。500m用(2パルス)とピーク電圧がそろうように調整しています。
電解コンとTrがイナバウアー(古ッ!)しちゃってるのはケースのふたにぶつからないようにするためです。
ボタンスイッチは12mm角のタクトスイッチを使いました。あとでボタンは丸に変えちゃいましたし,LEDも赤→緑にしてしまいました。ところが緑色のLEDは輝度が高すぎ,電流制限抵抗を大きくしました。青色LEDが最後の開発で,一番新しいので輝度も高いのですが,他の色のLEDも最近は輝度が高く,今回使用した緑色は非常に輝度が高かったです。φ3mmのLEDでもまぶしすぎるくらいになってしまいました。
ところが,パルス1発の方は計算通りの出力になりましたが,2発の方がどうもおかしく,なぜか最初の1発目が幅が広いです。まあ,単に目印と言うだけならこれでもいいのかもしれませんが,きれいじゃないですよね。ちゃんときれいな幅のパルスにしたいところです。
ルネサスや新日本無線の555の規格表を見てもこんなことは書いていません。どうもおかしいです。
困ったときのSpice頼みで調べてみますと,ある程度,予想はついていたのですが,非安定マルチの555のNo.6ピンに入っているコンデンサ充電電圧が1発目のパルスは0Vから立ち上がるのに,2発目以降は最初のパルスで充電されているため,もっと高いところから充電されているせい,とわかりました。
これなら,最初からあらかじめこのコンデンサを充電しておけばよいわけで,Vccから100kΩで充電してみました。555の規格表にはない抵抗ですが,うまくいきました。
青線がコンデンサの充電電圧です。
ただ,Spiceのシミュレーション上は75kΩがよかったのですが,実際に回路を組んでみるとうまくいかず,パルスが1発しか出なくなりました。やはりシミュレーションはシミュレーションでしかありません。必ず実際の回路で実験してみる必要があります。
ようやくうまくいくようになりました。友人も喜んでくれました。
鳩時計の "夜鳴き" を止めた話 [電子工作]
2015年8月2日の日記
どうにもこうにも暑くてたまりませんね~。急に暑くなって参っています。皆さんもお体ご自愛ください。
さて,今日は鳩時計の "夜鳴き" を止めたいと思います。
私は鳩時計がとても好きで,小さな頃,まだ機械式の鳩時計を見て喜んでいた記憶があります。最近のものはクォーツ式になり,毎日,分銅を巻き上げる必要もなくなりました。
ただ,うちのはクォーツ式になってもCdSなどのセンサを設けて夜は鳴かない,と言う風にはなっていなくて,夜中もポッ,ポッと鳴いています。
私は全然気にならないですけど,ある日ネットをのぞいていたら集合住宅で隣のお宅の鳩時計がうるさい,と書いている人がいました。確かに,同じ部屋で聞いているとうるさいですし,集合住宅でも壁を伝わって隣のお宅でご迷惑となっているかもしれません。
私が使っているものはちゃんとスイッチがついていて,offにできるようになっていますが,これだといちいちスイッチをon, offしないといけません。
と言う次第で,センサをつけて暗くなったら自動的に鳴くのをやめるようにしました。
これはCdSを使うと簡単です。フォトトランジスタだと応答が速すぎて,逆に使いにくいです。
回路はこのようになります。
右側にあるのが鳩時計内のon,offスイッチで,この機械的なスイッチは常時offとしておき,その接点をフォトMOSリレーが明るいときだけonするようにしています。
使用したCdSは大阪の共立電子で売っていたもので,台湾製のSEN9006というものです。特性は▲の図のようになっていて,暗抵抗5MΩのものです。実際には家の中だとどんなに暗くても多少は明るさが残っているので,実測してから設計した方がよいです。
このCdSは家の中で実測してみると3kΩ~300kΩくらいの間で値が変化します。この抵抗値とTrのベース~エミッタ間に挿入された抵抗値が電源電圧を分圧し,この電圧がTrのベース~エミッタ間電圧VBE(≒0.6V)を超えるとTrがonするようにします。なお,この回路の場合,明るいとTrがonします。常夜灯など,逆にしたい場合は抵抗とCdSを逆にすればよいです。式で表せば,
と言う具合になります。実際には使用したCdSの測定値から検討すると,
1kΩ~4.7kΩくらいの間が適しているように思えます。ところが,最初1kΩで実験したら明るくなってもうちの嫁はんみたいに昼寝? したままで,鳴かず,抵抗値を2.7kΩに変更しました。設置する部屋の明るさによって最適値は変わりますので,可変抵抗にしておく方がよいかもしれません。 もちろん,電源電圧によっても変わりますので,ご注意ください。
なお,フォトカプラにしろ, フォトMOSリレーにしろ,入力側はLEDとなっていて,そのLEDを点灯させるため,最低1.7Vくらいの電圧が必要で,電池1個では無理です。3Vもあれば十分ですが,006Pが余っているので9Vとしました。
2SC1815で直接,負荷をon,offしてもよいのですが,この鳩時計はこのTrでモータを駆動するようになってしまうようですが,このTrでモータ電流をon,offするのは厳しそうで,実際,やってみるとモータが回らなかったのでフォトMOSリレーを入れてみました。
フォトMOSリレーというのはソリッドステートリレーとも呼ばれますが,フォトカプラとよく似ていて,入力側のLEDが出力の素子をドライブするようになっています。
フォトカプラと違うのは,リレー同様,制御する電流の向きは関係ないということと,出力電流は入力の電流とは比例しない,ということですね。
フォトカプラは出力のTrが1個しか入っていないため,電流を制御できるのはあくまでも出力Trのコレクタ→エミッタの方向の電流のみです。リレーだと単に接点なので,反対側の向きの電流も流すことができますし,もちろん,交流も流せますね。この点がフォトカプラは異なります。
また,フォトカプラは入力側のLEDの明るさに比例して出力の電流を制御することができます。と言う次第で,音声信号も伝達できます。もっとも,残念ながら出力Trの周波数特性が悪いので,せいぜい数百Hzくらいまでです。
反対にフォトMOSリレーは単に,入力側のLEDが点灯すると放出された光子をゲート電極に蓄積し,飽和すると出力側の電流が双方向に流れるように設計しています。だから応答もフォトカプラより遅くなります。また,入力と出力間の電流値は無関係で,リレー同様,単に電流をon,offする用途に適しています。
と言うことで使用したのは東芝のTLP-222というフォトMOSリレーです。
別にプリント基板にしなくてもよいほど簡単な回路なんですが,アンプの基板を焼くついでにプリント基板にしてしまいました。CdSはこの裏側に取り付けています。
振り子の部分から下にCdSが飛び出て,外の光を受けるようにしました。
それにしても何で日本では鳩時計と言うんでしょうか? 英語だとCuckoo clockで,カッコー時計のことです。何で外国ではカッコーで,日本ではハトなのか,ちょっと不思議ですね~。
LED照明用PWM式調光器の製作 [電子工作]
2015年6月30日の日記
引っ越しをした際に,ワークベンチを整備しました。長年,オシロや発振器などの計測器を棚の上に置いて,いつでもすぐに使えるようにしたいと思っていました。それで引っ越しのついでにやってしまいました。やはり便利で,ちょっとした計測をするにもすぐに準備できて便利です。
ところが困った問題が発生。照明がうまくないのです。
以前はアーム式のスタンドを使っていましたが,このライト部分が棚のせいで邪魔になり,今度はこっちが頭をぶつけてしまう始末です。 といって,据え置き型のスタンドだと台の部分が机を占領して邪魔ですし,持っているやつはLED1灯式のもので明るいのはいいのですが,1灯式なので点光源となり,これも手の影ができて工作用としては具合が悪いのです。
嫁はんがキッチンで使っている流し台用の蛍光灯の15Wくらいの照明もいいかと思いましたが,最近はLEDのものもあるようですが,これはこれで光っている部分が目に入り,疲れます。
で,いいものはないかとアマゾンで探したら,ショーウィンドーの中の商品を照らすための細長いLED照明がありました。白色と電球色の2種類があり,また,磁石で固定できるようになっているので,スチールの棚にも簡単に取り付けられます。長さも3種類あり,なかなか具合が良さそうです。イルミカ東京さんが販売しています。
早速,買ってみました。
全長600mmのもので,全光束540lmのものを買いました。だいたい,白熱電球の60Wのものが500lmくらいですので,それより明るいし,普通の読み書きやパソコン作業なら十分だと思います。ただ,工作用としては細かいところをみるのに,100Wが必要なときもありますので,そのときは別のLEDスタンドを使うつもりです。
色が電球色があるのもgood! 何より電球色LED大好き人間なので.....(^^;)。
いつもKATOの機関車やこの前は中国Lepai社のアンプなんかも電球色LEDにしていますから。 ただ,この場合デジカメ写真なんかを撮影するときはホワイトバランスを変えないといけないので面倒ですけど。また,輝度は白色より低いので,明るさを求める人は白色LEDの方を買う方がよいと思います。
さて,実際に使ってみると机の面は明るく照らされ,なにより小型で細長いものなのでうまく棚に隠れ,光っている部分は目に入りませんし,線光源になるので影もできにくく,作業をするには快適です。
電源は12VのACアダプタが必要です。本来ショーウィンドー用なのでスイッチはなく,もとの電源部分でコンセントを外すか,別途,テーブルタップのスイッチを利用するのが前提でしょう。
でも,机の照明用だとスイッチはいりますね。それにACアダプタは大嫌いなので電源も何とかしたいところです。
と言う次第で,どうせ電源とスイッチをつけるなら,と言うことで電源内蔵の調光器を作ることにしました。市販されているLED調光器も電源内蔵タイプはないようです。
照明の調光は昔からいろんな回路があります。
電圧が制御できれば調光できるので,スライダックが便利ですが,大きく重すぎるので,よく使われるのはトライアックを用いた位相制御のものです。AC100Vをトライアックでスイッチングして導通角を可変して調光します。
LED照明用の調光器というのは少なく,なによりLEDは直流で点灯する,と言うのが原因だと思います。位相制御された交流を整流して直流化すれば電圧を可変できるので,このようにしたLED用の調光器もありますし,自作している人もいるようです。
ただ,この場合,やはりAC100Vを位相制御してトランスで電圧を下げて,その後,整流して直流にするのでやはりトランスが必要で大きくなります。
と言う次第で,直流を電圧制御すればOKなので,こちらで考えてみます。
簡単にやるのは抵抗制御ですね.....。
直列に抵抗を入れて電流を下げてやれば調光できます。
でもこれじゃ抵抗が発熱しますし,エコじゃありません。
と言う次第で,いつも鉄道模型用のコントローラで使っているPWM式のものを応用します。1,600円ほどで売られているLED照明用の調光器というのも同様の仕組みだと思います。
PWM式は12Vの方形波を出力し,その方形波のパルス幅を制御してLEDの点灯時間を可変することにより調光します。素子はスイッチングをしているだけなので損失が少なく,とてもエコです。
回路はいつも作っているPWM式の鉄道模型用コントローラ(パワーパック)と同じものです。これに逆転器をつければパワーパックになります。今回,初めてプリント基板化しました。もう何回も作っていますが,毎回万能基板で作るのもしんどいので,とうとうプリント基板にすることにしました。
さて,回路です。
いつも通り,タイマIC555で三角波を作り,それと基準電圧とをコンパレータで比較することにより0~100%デューティ可変のPWM波を作ります。
海外で555 1個とダイオード2個でPWM波を作る回路を発表している人もいますが,デューティは5~95%くらいになり,100%可変じゃないので採用しませんでした。私の回路は0~100%まで変化させることができます。鉄道模型だとこうじゃないとまずいですよね。
なお,鉄道模型だとモータがうなるので音が聞こえないよう,スイッチング周波数は20kHzとして,人間の可聴帯域より上にしています。まあ,300Hzでスイッチングすると201系みたいにチョッパ音が聞こえるのでNゲージを運転していても楽しいのですけどね.....。でもDD13からチョッパ音がするのも何だし,ということで私はいつもスイッチング周波数切り替え式で作っています。
スイッチング周波数は▲の式で決定されます。 RはkΩ,CはμFです。ちなみにRA=4.7kΩ,C=0.01μFの場合,RB=100kΩで700Hz,220kΩで300Hzとなります。
今回はLED照明用と言うことでスイッチング周波数は20kHz固定で作りましたが,基板そのものは準備工事としてスイッチング周波数の切り替えができるよう,パターンを作りました。
この基板に電源と逆転SWをつなぐと鉄道模型用PWMコントローラとなります。保護回路もついてます.....(^^)。
これを50×29mmのサイズでOHPに印刷すると感光基板で作ることができますのでご利用ください。
部品箱に転がっている半導体を使いました。当初,制御Trに使用した松下の2SD317Aは30年以上前のものです。 表面は酸化してザラザラです。実は問題が出て,あとで東芝の2SD525と取り替えています。
以前書きましたが,東芝の2SC1815がとうとう製造中止で,まだ部品屋さんの在庫は豊富ですが,すでに偽物が横行しています。どうもやはり中国製のようです。本物より少しサイズが小さく,型番は横書きになっています。純正の東芝製を買いだめしておきましたが,どうも私も以前,偽物をつかんでしまったようで部品箱の中から何個か出てきました。おそらく,似た特性の石の表記を書き換えて販売しているのでしょうけど,互換品として販売するのはかまわないですが,全く同じ型番にするのはどうかと思います。
いらない子なので捨てちゃおうかと思いましたが,私も会社じゃ同じ境遇なのでリストラせずに活用することにしました......orz。
左が偽物で,右が本物の2SC1815です。本物はロゴが縦に横書きされています。
早速,回路をつないでオシロで確認します。ちゃんと20kHzの方形波が出力され,パルス幅もスムーズに変化します。
さて,次はいよいよLED照明をつないでテストしてみます。
ところがここで問題発生。一応調光できるのですが,どうにもスムーズじゃなく,パッと点灯してその後すぐに明るくなってしまいます。おまけに制御Trが結構発熱して,触ると熱くなっています。
PWM式の場合,制御Trは12Vをチョッピングしているだけで,電圧を制御しているわけじゃなく,損失はわずかです。まあ,バイポーラTrだとエミッタ~コレクタ間飽和電圧VCEsatが1V弱ありますので,VCEsat×ICだけ損失が発生します。今回,LEDの負荷は0.5Aくらいですから,損失は0.5Wくらいです。MOS-FETを使うとドレイン~ソース間の電圧はmV単位になりますから,この損失はずっと少なくてすみます。でもなぜかMOS-FETは好きじゃないのでいつものバイポーラを使っています。
もっとも,今の時代,バイポーラTrでスイッチングする意味はほとんどないと思います。損失の問題もそうですが,スピードも遅いし,ドライブ電流(IB)の点でもMOS-FETが断然有利です。MOS-FETを使う場合,▲のような回路となります。出力もドレインから取るようにすると非常に便利です。なお,保護用に負荷とシリーズにポリヒューズを入れてください。スイッチング電源に保護回路がついていますが,念のため,入れておく方がよいと思います。
さて,本機は放熱器もいらないくらいのはずですが,実験してみるとちょっと熱くなっています。
どうにも変なのでオシロで波形を見てみると方形波が崩れてしまっています。ということは12Vじゃない出力部分はそれだけ熱に変化しているので発熱します。スイッチング損失が増えてしまっている状況です。
原因がよくわかりません。Spiceで検証してみましたが,こんなことになりません。モータのようにインダクタンス分が多いと逆起電流でうまくスイッチングができず,発熱することがありますが,LEDは誘導性の負荷じゃないのでこうなるのはおかしいです。
仕方なく,スイッチング周波数を700Hzに下げました。これで方形波は崩れなくなりました。きれいな方形波として出力されています。損失も少ないようで,制御Trも触っても熱くありません。
でも,ちょっと気になることが出てきます。予想はしていたのですけどね.....。
やはり照明本体からピーッと音がします。かすかではあるのですが,スイッチング音がします。静かなときはやはり気になります。
と言う次第で,やはりもとの20kHzに戻したいと思います。でも,なぜ方形波が崩れてしまうのか,原因がわからず,しばらく悩んじゃいましたが,規格表を見直してみて目が点になりました......。
なんと,2SD317Aの遮断周波数fαeは25kHzしかありません。最初,MHzの間違いかと思いましたが,間違いではなさそうです。これじゃ20kHzの方形波が満足に扱えるわけがありません。方形波のスイッチングや増幅には10倍くらいの帯域が必要です。普通,シリコンTrはfαeはパワーTrでも3MHz以上はあるものです。 お前はゲルマニウムTrかよ。こんなに低いfαeのシリコンTrは見たことがありません。びっくりしました。
設計されたのが古い,と言うこともありますが,シリコンTrは普通,利得帯域幅積fTで表しますが,高いのが特長で,これほど低いfTのシリコンTrは知りません。シリコンTrはfTなんて高くて当たり前なので全然気にしていませんでした。ちなみに同時期に開発されたと思われる2SD297(NEC)でもfTは12MHzもあります。残念ながらこんなロートルのシリコンTrに用はありません。速攻でリストラしちゃいました.....。
偽物の2SC1815はちゃんと働いてくれますが,2SD317Aは力不足です。どうかしてる,という感じです。 さすがにちょっと腹が立ったので若い人に代わってもらうことにしませう。
手持ちの東芝2SD525と交換しました。2SD525のfTは40MHzもあります。
ぎりぎりの点灯状態です。さすがにLEDの順方向電圧がばらつくので,この状態だと点灯したりしなかったりするLEDが出てきます。スイッチング周波数は20kHzにしましたので,照明本体からスイッチング音は聞こえません。全くの無音となりました。
一応,念のため,放熱器をつけました。効果抜群で,きちんと放熱してくれます。さすがに点灯当初は全然熱くありませんが,1時間もすると結構熱くなるので,放熱器はつけておいた方がよいと思います。
ケースはタカチのTW7-4-11を使いましたが,断然小さすぎです。もっと大きなケースを使ってください。どうにも何でも小さく作る癖があるので,ダメです。 フタの裏に小さなネオジム磁石を貼り付けてスチールの棚にくっつくようにしました。
散らかってて恥ずかしいですけど.......。こんな調子です。
思わず,
♪明る~いSamsung, 明る~いSamsung, みんな~うち中,な~んでもSamsung~ っと!
悔しいけど,もうこうなんだよな~と,替え歌を歌ってしまいました。この歌のもと歌が歌える人は40歳以上だと思います。
でも,本体に使われているLEDは中国深圳市の宏斉光電子という会社が作っているHT61-2301Wという1素子に3チップ入ったLEDのようです。すでにSamsungの時代は終わった?
【おまけ‥‥‥Nゲージにも使えます】
背面に+,-のジョンソン端子がついているので不思議に思われた方もいらっしゃるかと思いますが,実は,今回の調光器は私が使っている鉄道模型のコントローラ(パワーパック)と同じ回路なので鉄道模型も運転できます!
早速,買ったばかりのKATOのED19を運転してみます。PWM式なので超低速でも運転でき,快適です。保護回路もついていますので,ご活用ください。逆転SWを入れれば,バックも可能です。
2017年1月2日追記
上記,MOS-FETの出力回路を用いて改造しました。ご興味のある方はこちらをご覧ください。