ソニーのAMステレオ対応ラジオ SRF-M100の修理 [ラジオ]
2023年12月17日の日記
ちゃんと,AMステレオのインジケータも点灯しています
ソニーが国内で最初に発売した,AMステレオ対応ポータブルラジオのSRF-M100を持っています。
確か,1992年3月,日本でAMステレオ放送が始まったとき,最初のAMステレオ対応ラジオだったと記憶しています。wikiを見るとアイワのCSD-SR80の方が早いようですが,こちらはラジカセですね。ちょっと,iruchanはこちらは覚えていません。
まだ,iruchanも愛用している,SRF-AX51Vなどは確か,もう少し後だったように思います。
AMステレオ放送が始まったけれど,それを聴こうにも,しばらくはSRF-M100しかない時期があったように思います。”ラジオの製作” (懐かし~)でも特集が組まれましたけど,リファレンスはやはりこのラジオでした。
iruchanは速攻でこのラジオを買って,と思っていたのですが,当時,秋葉原にあった石丸電気(こっちも懐かし~~)で買ったらしく,1999年の日付の入った石丸電気のハンコが押してありました。
石丸電気は電気製品だけでなく,輸入CDを買いによく行きました。どうもありがとうございました。
それにしてもどうしてこんなに遅かったのだろう......
しかも,買っただけで,そのまま保管していました。普段,聴くのは,もっぱら,モトローラのMC13020Pを使った自作チューナーでした。
やはり,ちょっと妙に大きいのと,PLLシンセサイザチューナというのがどうにも気に入らなかったのだ,と思います。
東京,大阪,札幌,福岡などの局はプリセットしてあり,こういう大都市に住む人には便利なラジオなのでしょうけど,iruchanみたいに田舎に住んでいるといちいち,近所の局を登録しないといけない,というのが面倒だし,どうにも反体制派なので,こういう大都市優遇みたいなラジオが気に入らなかったのだ,と思います。
でも,そろそろAMステレオどころか,AM放送自体が終わりが見えてきたので,それこそ30年ぶりに取り出して楽しんでいます。ただ,iruchanはこのラジオ,SRF-AX51Vなどの方が好きで,持ってはいましたが,ほとんど使わず,新品箱入りの状態でずっと保管していました。
やはりいいラジオですね~~。
音質もよいし,非常に高感度だし,ポータブルラジオの最高峰のひとつ,なんではないでしょうか。
実際,オークションなどでも高いし,新品に近いものだと1万円を超えますね。
ということなんですけど,このラジオには困った病気があるんですね......。
内部の電解コンデンサが液漏れして音が出ない,という症状が出るようです。
幸い,iruchanの持っているのはほとんど使っていなかったせいなのか,それとも,対策品だったのか,なんの問題もなく,ちゃんと音が出ます。
と言うことなんですけど,せっかく,新品同様のものを持っているのでこちらは保存用とし,普段用でいまさらながら,もう1台,オークションでジャンク品を購入しました。
ジャンク扱いとのことなので,やはり,音が出ません......
ということだったのですが,チェックしてみると,まったく音が出ないわけではなく,静かな部屋に持っていったら,かすかに音が出ている状況です。
これ,まずはおそらく出力に使われている電解コンデンサが容量減になって音が小さい状況,と思います。
その昔,トランジスタラジオがまだ6石スーパーだった頃,よくあった現象ですね。
6石スーパーだとOTLじゃなく,OPTを使っているので,出力コンデンサはないですけど,段間のカップリングの電解コンデンサが容量減になって音が小さくなってしまうんですね。
SRF-M100はパワーアンプICを使っているはずですが,単電源のアンプでは,BTLアンプでもなければ必ず,直流カット用のストッピング(出力)コンデンサが必要です。真空管のOTLアンプと同じですね。
この場合,スピーカーのインピーダンスが低いので,大容量の電解コンが必要で,SRF-M100も470μFが使われています。これが容量減となっていることが予想されます。
しかし,まあ,1990年代だし,電解コンデンサの容量減というのは普通,優秀な日本製電解コンならそれほど心配しなくてもよい,と思うのですけどね.....。
このラジオの病気はすでに有名で,いろんな先輩諸氏が治療しておられるので,参考にさせていただきました。
要は,この時代,電解コンは低ESR品が開発されたばかりで,封止材との相性が悪く,その電解液が外へ漏れて容量減となるばかりでなく,どうもひどい場合はアルカリ性の電解液のせいでプリント基板のパターンを腐らせて断線させてしまうようです。
いわゆる電解コンデンサの四級塩問題ですね~
第四級塩化アンモニウム塩溶液を内部の電解液として使用していた時代があり,最近の製品は使用していませんし,発熱のひどいコンピュータ用などは固体電解に変わってきているので,問題は減っていると思います。
☆四級塩電解コンデンサの交換
SRF-M100で使用されている電解コンデンサは時代的に電解液に四級塩電解液を使用しているようです。他にもソニーに限らず,四級塩電解コンデンサを使っている製品が80年代末~90年代には多いようなので,注意が必要です。
iruchanが買ったSRF-M100がなんの問題もないのは,おそらく,買ったのが遅かったので,すでにこの問題の対策が取られていて,四級塩電解コンデンサを使用していなかったためではないか,と思います。
実際,実はSRF-M100は2種類あって,前期型と後期型に分かれるようなのですが,iruchanが買ったのは後期型で,今回,オークションで落札したのはやはり,前期型でした。
ひょっとして,後期型はコンデンサは対策済なのかもしれませんが,未確認です。iruchanが買ったのは1999年なので,その頃にはこの問題は広く電機業界では認識されていたので,対策がされていたのかもしれません。
なお,前期,後期の違いはソフトケースの違いと,本体は側面のVOLUMEとPHONESの表記がシルク印刷(前期)か,モールド(後期)か,の違いのようです(一番下に写真を載せました)。
以前,オイルコンやペーパーコンのリークについて書きましたけど,これも封止処理が悪く,封止材として使われているゴムが劣化して内部に水分が侵入して絶縁が低下するのですが,この電解コンデンサの場合も同様で,どうも電極引き出し部分から電解液が漏れてしまう,ようです。
ついでですけど,古いラックスの真空管アンプなど,日本製のオイルコンが使われている場合はすぐにフィルムコンデンサに交換してください。音が悪くなるばかりでなく,出力管が昇天したり,OPTが断線する原因になります。
と言う次第で,問題の電解コンデンサを交換したい,と思います。
さて,取り替えないといけないのは,220μFと470μFのコンデンサです。場所は▼です。
C26,C65の220μFのコンデンサとC64とC53 の470μFコンデンサを交換します。
C65が出力コンデンサで,これが容量減となると音が小さくなります。C53も重要で,これは電源のフィルタコンデンサですが,これが容量減となったり,液漏れしてリークするようになるとVccが低下して音が小さくなったり,最悪,ラジオ全体が動作しなくなります。
C26とC64はデカップリングコンデンサですね。真空管アンプでおなじみだと思います。フィルタと同時に,低周波増幅段が電源を介して結合し,低周波で発振するのを防ぐ目的があります。
半導体のアンプだと全段直結が当たり前なので,普通は0.1μFくらいで,これは高周波ノイズを低減するためのパスコンです。
しかし,なんでこんな大容量なのか.....。
真空管アンプなど,デカップリングのほか,AC電源を使う回路だとリップル低減のフィルタ目的のため,数十μF~数百μFにしますけど,デカップリングが目的なら,WEのアンプみたいにほんの数μFでOKのはずです。
このラジオは電池が電源だし,そんなに大容量は必要ないと思うんですけどね.....。
なお,回路図は国内モデルと海外モデルで異なり,ネット上で入手可能な回路図は海外モデルで,ソニーの場合はAEP modelと書いてあります。アジア,欧州,太平洋地域を意味しています。
残念ながら,仕向地がAEPのモデルの場合,AMステレオ非対応なので,回路は異なります。ピンクで書いている部品は海外モデルの部品番号です。国内モデルと基板上の部品番号が違うので,ご注意ください。iruchanは国内版の回路を持っているんですが,出力部分が欠落していて,海外版から借用して修正しましたが,ちょっと違うかもしれません。
まずは分解します。
背面にねじが4個所と,電池箱の中に1個,ねじがあるので,それらを外します。
電池箱の左右に,ツメがありますので,マイナスドライバーを突っ込んでツメを外せば,簡単にフタが外れます。
ところが......。
何かクサい
四級塩の電解液の臭いでしょうか.....酸っぱい,酢みたいな臭いがします。
基板もねじで留まっていますので,ねじを外し,▲のフレキケーブルを外せば,基板を取り出せます。
オレンジで記載した電解コンデンサを交換します。
幸い,基板パターンへの影響は少なく,スルーホール部分もきれいでした
この部分が腐食してパターンが消えているとちょっと削ってパターンを復活させる必要があります。
470μFは液漏れした跡があります。220μFも底部になにやら黄色い物質が付着しています。メーカは違うので,電解液も少し違う感じです。
それに,負極側がリークする,と言う話でしたけど,一番右の470μFは正極側からリークしているようですし,▼のパターンが断線する個所も,正極側です。
一番左は正常だったようで,▼のチェッカーで400μFくらいの数値を示しましたが,問題を起こすのが予想されるので交換します。
案の定,中国製の部品チェッカーでテストしてみると,そもそも,コンデンサじゃなくて,ものがなんなのか,判断つかないようです。ちなみに確認のため,正常なコンデンサを挿すとちゃんと470μFとか表示しました。
なお,iruchanのは問題なかったですが,液漏れがひどいものはパターンまで腐食し,パターンが断線し,そもそも電源がきちんと供給されない,と言う場合もあるようです。
左側の2個所はもともと導通していますので,右側のQ10のデュアルTr XN4608の#3ピンとの導通を確認してください。右上に拡大図を載せておきました。
もし,この間の導通がない場合,こちらのように,ジュンフロン電線で接続するとOKです。
ただ,どうにもそのXN4608の周辺がきたない......
液漏れした電解液が付着しているのか,XN4608のピンや基板が茶色く変色しているし,何かが付着して,ちょっと盛り上がっている感じです。ヤッバ~~。
一応,アルコールできれいに拭いておきました。
これ,松下製の高PcのPNPと小信号用NPNのTrを1個ずつ内蔵したデュアルTrのようです。本機はタイマーがついているし,マイコンで電源をon,offしているのですが,このQ10で電源を制御しています。
まったく音が出ない,と言う場合はC53 470μFとPNP Trのエミッタをつなぐ▲の写真の裏側にあるパターンが断線してしまって電源を供給していない場合のようです。先ほどの回路図で×とあるところです。その場合はジャンパー線で接続してください。
さて,交換するコンデンサですが,結構,難航しました。
というのはこういう背の低いロープロファイルと呼ばれる電解コンデンサはもはや消滅寸前のようです。部品箱を探したら何個か出てきて,220μFは別メーカのを見つけました。昔,どこかで買ったようです。小型なので,いいコンデンサだと思うんですけどね......。
まあ,そもそもアキシャルリードの部品自体,そろそろ半導体でも抵抗でも,どれもやばい状況なので,しかたないのかもしれませんが......。
とりあえず,なんとか220μFはニチコンのオーディオ用MWシリーズが現行品のようで,秋月で入手可能でした。耐圧が10Vなので,ちょっと大きい(φ8mm×5mm)ですけどね.....。
で,問題は470μF。こちらはいいものがありません。
しかたないので,表面実装用のものが小さなリード線がついているので,それを利用しようか,とも思ったのですけれど.....。
残念ながら,耐圧が6.3V~25V品は全部高さが同じで,10.2mmもあって高杉晋作!
表面実装でこれか? って気がします。
しかたないので,ちょっと値段が高いんですけど,導電性高分子固体電解コンデンサはどうか,と思うと,秋月で売っているPanasonicのは高さ13mmもあります!
千石電商で日本ケミコン製の固体電解を売っていたのでそちらにしました。日ケミのSPCシリーズの6.3V,470μFは大きさがφ6.3mm×8mmで小さいので,こちらにしました。
中央の2個が,問題の四級塩電解コンデンサで,両側が交換用です。
これでようやくコンデンサが交換できました。
☆セラミックフィルタの交換
次に,いつもやることなんですけど,セラミックフィルタを交換したいと思います。
SRF-M100に使われているセラミックフィルタの型番が不明ですが,表記を見ると450Gという文字が見えますので,帯域4.5kHz品と思われます。
まあ,日本だと9kHz間隔で置局されていますので,妥当な帯域か,とは思うのですけどね......。
AMステレオ用に販売された,SFG-450Dの手持ちがまだあるので,交換したい,と思います。これは帯域幅10kHzなので,非常にHiFiです。前回,SRF-A300を改造するときにも使いました。
左:オリジナル,右:SFG-450D
残念ながら,ソニーのサービスマニュアルにも,CF2: FILTER, CERAMICとあるだけで,部品メーカの型番がありません。おまけにどういうわけか,黒いオリジナルの方は4本足です。
ムラタのカタログを見ると,たぶん,CFULA450と思います。足が多いのはGNDが2本あるため,のようです。
ちょっとサイズも大きいし,ピン配置も違うので,苦労しましたが,なんとかSFG-450Dに交換できました
☆ ☆ ☆
こうやって,仮組みして電池をつないでみると大音量で鳴るので,修理完了のようです。
外観は割にきれいですし,普段使うSRF-M100として愛用させていただきます。
2023年12月27日追記
残念ながら,セラミックフィルタの交換はやはりやり過ぎだったようです
というのも,帯域が広くなりすぎ,近隣の局だとひとつ上や,下のチャンネル(±9kHz)でもほとんど音質劣化なく,聞こえてしまいます。
SRF-A300などではこんなことはないんですけどね.....。
ひどい場合,微弱局だと隣接チャンネルの局の方に同調しちゃって本来の局が聞こえません
これ,原因はSRF-M100はバリキャップチューニングだから,ですね。
SRF-A300はバリコン式なので,フロントエンドでも帯域が決まっちゃうのですが,バリキャップはQが低く,帯域幅が広くなり過ぎちゃったのですね。
バリコンだと中波帯はQが100~200くらいはあるので,セラミックフィルタで広くしても意味がないくらいで,SRF-A300などではQダンプのため,直列に抵抗を入れていますが,SRF-M100ではセラミックフィルタの交換はしない方がよさそうです。
と言う次第で,元に戻すか思案中......です。
近隣局だとものすごくHiFiに聞こえる,と言うメリットはあるのですけど.....。
☆ ☆ ☆
iruchanが1999年に買ったのは後期型でした。ちょっと写真をお見せします。
今回,修理したのは前期型です。VOLUMEとPHONESがモールドになったのが後期型です。他にも,ソフトケースの形状が違うそうですが,前期型は本体のみなので,ケースがありません
2023-12-22 00:00
nice!(8)
コメント(0)
コメント 0