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モノラルレコード用CR型イコライザーアンプ(EQアンプ)の設計と製作~その3:測定編~ [オーディオ]

2020年7月12日の日記

CR型EQアンプ1.jpg ようやく竣工しました[晴れ]

中国製のケースのサイズは132×42×169mmです。とても小さいです。〒込みでも$20ほどでしたけど,なかなかかっこよいです。

前回から3ヶ月が経ちました。

もう,世の中すっかり変わってしまい,まだ前回の時はコロナはそれほど拡散していなくて,緊急事態宣言が出たばかりでしたが,まったく先の見えない長いトンネルを皆さんと歩んでいきたいと思います。

最近,iruchanも小松左京の "復活の日" を今ごろ読んだばかりなんですが,驚くほど似た状況が描かれていました。さすがに有名なカミュの "ペスト" は,学生時代,"異邦人" は読んだんですけど,こちらは読んでいません。というより,最近まで,全然本屋さんにありませんでしたね....って言い訳しています。

さて,この間,ケースを手配して,加工していました。

ケースはAli Expressで買った中国製です。押出形材とt6のアルミパネルを使ったかっこいいものです。

ただ,さすがに6mmのパネルの加工は大変。プロの方にNC加工を頼んだ方がよかった感じです。5,000~1万円くらいでやってくれますけど。

なんとか穴開けも終わり,まずは電源からテストします。

電源はバッテリー式にしてもよかったのですが,どうにも電池の消耗が気になって音楽が楽しめない,と言うことがあるので,いつもAC電源式です。

とはいえ,やはり漏洩磁束が心配なので,昔だったら,カットコアか,Rコアか,って感じですけど.....。

でも,今はRSコンポーネンツなどで産業用のトロイダルトランスが簡単に手に入るので,トロイダルにしたいと思います。これだと漏洩磁束はほぼ完璧に低減できるはずです。レギュレーションもよいし,理想のトランスだと思います。

かといって,真空管用はむずかしく,高圧用とヒータ用の低圧巻線が必要なので毎回苦労します。まださすがにトロイダルの真空管用は品種が少ないですね~~。

サブミニDCプリアンプ用にはオランダから直輸入したばかりです。

まあ,さすがに今回はOPアンプ仕様なので,±15Vの電源が用意できればよいので,2次側に15V前後の電圧があるトランスであればOKです。

RSコンポーネンツで,124-3858という品番のトロイダルトランスを買いました。7VAで,2次側は15V×2です。ただ,1次が115Vなので,2次側は13V前後です。3端子レギュレータを使いますが,その場合,最低2Vくらいは余裕がないとうまくレギュレータが動作しませんので注意が必要ですが,整流直後で18Vくらいにはなりそうなので,十分使えそうです。実際,あとで確認してみたら,平滑前の電圧は20VほどありましたのでOKです。

最初,共立電子のHDB-8というトランスにするつもりでしたが,ちょっとサイズが大きいのでこれにしました。基板用なので,少々,取り付けが厄介ですが.....。トランス取付用の基板を別途,作りました。ついでにヒューズホルダもハンダづけしちゃいました。

CR型EQアンプ内部1.jpg 内部です。

青いのがRSコンポーネンツのトロイダルトランスです。プラ製ですけど,放熱のためか,フィンがついています。7VAの容量があるので,全然熱くなりませんけどね。ちなみに全体の消費電力は0.6W程度です。

逆に,LME49720Hは動作中はあっチッチ!

びっくりして規格表を見ると,無信号時の消費電流は10mAなので,消費電力は0.3Wです。これなら意外に熱くなります。表面温度は50℃くらいと思われます。

もちろん,温度についてはメーカの保証範囲ですし,規格表には何も書いていないので,放熱器は不要です。

といって,あまり半導体は熱くなると音がよくない,とiruchanは思っていて,実際,半導体のA級アンプがダメなのも温度のせい,と思っているので,余っている2SC960の放熱フィンをつけておきました......(^^;)。

ケースが小さいので,背の高い部品は要注意です。一番の問題は電源のフィルタコンデンサでしたけど,ルビコンの35V 3,300μFがぴったりでした。

パイロットは,いつものピンク色の高輝度LEDにします。

LEDの点火には,普通だと整流後の直流を使ったり,3端子レギュレータの出力から点灯したりする,と思いますが,これをやっちゃうと,切ったときにボ~~~ッと消えます。

 ボ~~ッと消えてんじゃね~~よ!(チコちゃんの声で!)


って,いつも思ってます.......(^^;)。

これ,iruchanはとても嫌いなので,AC点火します。これだとスパッと消えて気持ちいいです。

ただ,この場合,AC電圧が6Vを超える場合は逆耐圧保護用のシリコンDiを逆向きに接続しないと,LEDが壊れますのでご注意ください。

というのは百も承知なので大丈夫なんですけど......変な現象が出ます。スイッチを切ってもLEDが消えません!

真夏の夜の怪談かぁ~~~~って思っちゃいました。地下鉄に乗るのに,階段を上らないといけない四ッ谷駅というのもチョ~怖いですけど......四谷階段ってこれのことかぁ?

電源を切って,テスターで導通を見てみると,スイッチを切ったら,ちゃんと導通がなくなります。それで,トランスの1次電圧を見てみると,スイッチを切っても95Vくらいあります.....。

何で~~っ?

って思っちゃいましたけど,スパークキラーのいたずらでした。

スパークキラーは接点保護のため,CとRが直列に入っていますが,今回,トランスが小型すぎ,励磁電流を流すくらいのことをしてしまうんですね。

しかたないので,スパークキラーを外したらLEDが消えました。やれやれ......。

CR型EQアンプ.jpg パイロットはピンク色LEDです。

STEREO⇔MONO切り替えSWも設けました。モノラルの時は,入力部でLとRを合成し,出力はch. Rの信号をch. Lにも出すようにしました。

ここまで来たらまずは電源のテスト。無事に±15Vがでました。前回,iruchanが中坊の時に買った,古いモトローラ製の3端子レギュレータを発掘した,と書きましたけど,無事に動きました。でも,モトローラはなくなっちゃいました......。

半導体の名門,モトローラは創業が自動車用ラジオの製造だったので,ブランドがMotorolaなんですけど,1999年,衛星携帯電話事業の失敗から,オンセミに分社化されて消えました。

さて,ここまで来たら電源をアンプにつないで,テストします。

特にヒューズも飛ばないし,また,±Vccをチェックしてもちゃんと±15Vでていますので,大丈夫なようです。

次に,1kHzの正弦波を加えて出力をオシロで見てみますと......こちらも無事に正弦波が出力されますし,周波数を変えると,EQアンプなのでちゃんと振幅が変化しますから,成功のようです。やれやれ~~~~。

☆特性チェック

さて,ここまで来たらf特を測ります。ここまで,長い道のりでした......。

負荷抵抗に100kΩをつなぎ,テストオシレータとオシロで特性を調べます。

☆RIAA

まずは,RIAAから。

RIAA実測1.jpgRIAA再生特性です。

ステレオなので,ch.LとRがあります。

でも.....。

測定してみてがっかり。左右で1dBのゲイン差がある上,偏差もかろうじて±1dBに収まる,と言う程度です。

残念ながら,左右のレベル差はプリアンプを自作するとだいたいこれくらいはあるものですし,NF型はこれを調整しようとすると,すべてのEQ素子の定数が変わっちゃうので,調整は厄介ですが,本機はCR型なので,比較的簡単なので,あとで調整したいと思います。

もう少し,偏差が小さいとよかったのですけどね......orz。

☆ffrr

ffrr実測.jpgffrrです。

英DECCAのffrr特性です。クラシックファンなら必要なカーブだと思いますけど,各社から出ているモノラルレコード用のEQアンプでは搭載してない場合が多いですね。

レコードを聴く人はジャズマニアの方が多いらしいですけど,クラシックマニアはスクラッチノイズが我慢できないんでレコードはやめちゃった,と言う人が多いのだと思います。

また,一応,ステレオLPはRIAA特性が出てから開発されたので,RIAAに統一されているはず.....,なのですが,巷間,ffrrやColumbiaなどのカーブのまま,発売されたステレオLPがあるとの噂が流布していますので,今回,ffrrのみ,ステレオで作ってみました。

こちらは左右のレベル差はほとんどなく,また,偏差も40Hz~20kHzで0.5dB以内に収まっていますので,合格です。

50Hz付近から下の低域はIEC規格のRIAA特性もそうですけど,サブソニックフィルタ特性を持たせる目的で,偏差がマイナスになっても問題ない,と考えています。

☆Columbia

columbia実測.jpgColumbia特性です。

ここからはモノラル専用なので,ch.Rのみです。

米Columbiaや,製造を委託していたWestminsterはこのカーブなので,iruchanには必要なカーブです。こちらもほぼ偏差は-0.4dBくらいまでなのでOKです。iruchanはロジンスキーやWestminsterレーベルが好きなので必須です。

☆NAB

NAB実測.jpgNABカーブです。

米国の放送事業者が策定したカーブで,もとはテープ用のEQカーブだし,欧州系のレーベルでは関係ないのですけど,米国のジャズ系のレーベルでは採用したところが多いです。iruchanは特に使うことはないだろう,と考えているのですが,念のため,つけておきました。

事前の予想どおりで,これが一番偏差が小さく,いい曲線となりました。

さて,ようやく完成したのですけれど,残念ながら,肝心のRIAAカーブがあまりよくないので,次週,調整したいと思います。

       ☆          ☆          ☆

2020年7月19日追記
 
先週,モノラルレコード用のEQアンプを完成させ,まずは特性を調べてみました。
 
ほぼ,英DECCAのffrrや米Columbia,NABのカーブは設計どおりでしたが,どうしてもRIAAだけ偏差が1dBくらいあり,少し不満な結果となりました。今日は少し修正したいと思います。
 
CR型はNF型より音がよいと言われていますし,昔からコアなマニアが自作して楽しんでいましたし,本機もステレオのLPはステレオで再生できるよう,RIAA位置はステレオで楽しめるようにしてあるので,やはりちゃんと調整しておこうと思います。
 
CR型EQアンプのフィルタ回路については,第1回に説明しています。Excelで十分計算できます。
 
まずは,定数が正しいかどうか,Spiceで検証してみます。
 
CR型EQアンプのフィルタ部分は,下記の通りです。
 
CR型EQ素子.jpgCR型EQフィルタ部
 
LTspiceでシミュレーションした結果は▼のとおりで,ほぼ設計どおりです。
 
どうしてRIAAだけ,実際の設計どおりにならないのか,ちょっとわからないのですけど.....。
 
ch.Rは200Hz付近で0.6dBほど下げてやらないといけませんし,ch.Lはおなじく0.8dBほど,逆に上げてやらないといけません。高域も0.5dBほど上げてやらないといけません。
 
どうもロールオフの設定が少し悪いようです。
 
これらの目標値にするため,もう一度,Spiceでシミュレーションしてみました。
RIAA LTspice.jpg
    Spiceでのシミュレーション結果です 
 
が設計値ですが,Spiceで見ても,間違ってはいないようです。30Hz以下で落ちているのはサブソニックフィルタの効果を期待してわざと落としてあるせいです。
 
結局,各定数は,
 
        C1        C2
ch.R    8200pF→9200pF 2800pF→2700pF
ch.L                  7200pF                2700pF
 
としました。ターンオーバー側は2700pF+100pFで設計値の2800pFにしていましたので,100pFを撤去しました。なんか,ロールオフ側が大幅な変更で,ちょっと心配なのですけど.....。
RIAA実測2.jpg調整後です。
 
ようやく40~20kHzの範囲で,ほぼ±0.5dBに収まるようになりました。やれやれ。これでようやくレコードが楽しめます[晴れ][晴れ][晴れ]
  
まだ続きが読みたい,というご奇特な方はこちらへ.....。完成して何枚かレコードを聴いてみました。

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