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Garrard 301のオーバーホール~その1~ [オーディオ]

2022年9月11日の日記

大変申し訳ありませんが,本項のタイトルから誤解されるといけないので最初に書いておきますが,オーバーホールはプロの職人さんにお願いしました。

英Garrard社の301と言うターンテーブルに憧れていて,ずっと欲しかったので社会人になってしばらくして購入しました。

当時でもこのターンテーブルは高く,安いものでも7万円,高いものだと15万円,と言う感じだったと思いますが,iruchanはドイツから個人輸入しました。たった2万円ほどでした。

まだインターネットもないし,当時読んでいた米誌 "Vacuum Tuve Valley" に載っていた広告で知った業者だと思います。残念ながら,この雑誌,非常に内容が濃く,とてもよい雑誌でしたが,すぐに中絶してしまったのが残念です。

その後,キャビネットを英国の業者に頼んで作ってもらい,以来,20年以上,ずっと使っています。

もともとは英Garrardという会社は宝飾関係の貴金属製品を扱う会社で,英王室の王冠やティアラなども作っている会社です。

その後,1918年に第1次世界大戦が終結し,復員が始まると一般民生用の製品も手がけるようになり,特に西部のiruchanも行ったことのあるSwindonに工場を設置し,ゼンマイやモーターを作って時計や蓄音機の製造を始めたようです。SwindonにはGreat Western鉄道の工場もあり,技術者が多かったようです。

North Star.jpg Great Westerrn Museumにて

SwindonにはGWRの博物館があります。1837年にStephenson社で製造されたGWR第1号のNorth Starが展示されていました。ただ,この機関車,1926年に製造されたレプリカのようです。また,博物館もiruchanが行ったときは町中でしたが,今は移転して駅の西側にあるようです。

301 Transcription Motorは1954年に製造が始まります。アイドラー式で,ゴム製の大きな円盤を介してモーターとターンテーブルを回転させます。折から,ロングプレイのLPが登場し,それ用のプレーヤーとしてよく売れたのはご存じの通りです。

英BBCの制式プレーヤーとして採用されたのもご存じの通りです。

初期はグレーのハンマートーン仕上げになっていて,BBCのもこれです。

と言う次第で,日本ではグレーが人気があるのですが,これは潤滑がグリースで,メンテが大変なのと,プロ用なので酷使されているから避けた方がよい,とVTVにも書いてあり,iruchanは白にしました。これは潤滑がオイルです。

キャビネットは英語ではPlinthと呼ばれますが,日本で作ろうか,とも思ったのですが,英国で安く作ってくれるのがわかったので,注文しました。

ついでにここで落とし穴が......。

iruchanはドイツで301を買ったので......と言うことは周波数は50Hzです[雨]

iruchanは北陸に住んでいるので,60Hzなんです.......[雨]

困ったな.....と思ったら,その英国の兄ちゃんが60Hz用のプーリーも作ってくれました。

残念ながら,Platterとよばれるターンテーブル側面のストロボは50Hz用なので使えませんが,60Hz用のストロボディスクを載せて確認すると回転数調整用つまみのぴったり中央で33 1/3になり,非常によい出来でした。

その後,1965年に401が登場し,その頃製造中止になったものと思います。

Garrard 301-4.jpg iruchanのGarrard 301
  ところどころ塗料も剥がれてくたびれています。
 
Garrard 301-3.jpg モータ周辺

金属類は黄色い粉を吹いたように錆びています。また,すっかりリンクは固渋して動きません。
 
下にシャフトの軸受があります。これと,モータ下部の丸いフタを開けて注油することが必要です。奥の半円形の部品は回転数変更用のカムで,78,33 1/3,45回転に切り替えますが,リンクが固渋してもう,動きません[雨]

1969年には,松下が世界初のダイレクトドライブSP-10を発売し,BBCの制式機に採用されたのもよく知られていますね。

実際,Garrardの301はそもそもアイドラー式なんて原始的な回転機構ですし,内部も見てみるとあまりにも武骨なつくりで,モーターはシンクロナスモータと言えば聞こえはいいですが,隈取りコイルを持って疑似回転磁界を作って回転する隈取りモータです。これだったらDENONのACサーボモータの方がはるかに高級だし,扇風機だって進相コンデンサつきの誘導モータなので,こちらの方が高級です。回転数変換は機械的なリンクを用いてアイドラーとプーリーの接触位置を変えて行っていて,微調整に渦電流ブレーキを使っていたり,電源SWのon,off時に発生するショックノイズを低減するため,スパークキラーが使われている以外は電子的な回路はありません。

う~~~ん,さすがに英国は戦争に勝ったとは言っても,すでに技術的には日独の後塵を拝する状況だった,と言うことを実感するような作りで,まるで骨董品のように思えます。

でも,iruchanはずっとこの美しいデザインが好きで,憧れていました。これにSMEのアームをつけてSPUを使うと最高だろうな.....ってずっと思っていました。

さすがにOrtophoneのSPUは使いませんでしたけど.....。SMEの3007トーンアームも安く入手して使っています。

と言う次第で,ずっと20年以上使っていたのですが,さすがに重いので,実家に置いてあるのがネックで,やはり月に1回くらいしか使わなかったのが仇になり,何年か前から回転数切替のリンクが動かなくなってしまっていました[雨]

リンクが油切れで固渋しちゃっているんですね.....[雨]

早く注油しないと,と思っていたのですが,33 1/3回転で固定して(!)使っていました。

でもこんなこと長く放置していたらロクなことはない,と1月にターンテーブルのねじを緩めて外してみました。

案の定,リンクが固渋して,動きません。おまけに......。

何やら鉄製のリンクの表面に黄色い粉がびっしり.....[雨]

鉄が錆びていると考えても,色がおかしく,金色みたいな黄色みたいな色で,細かな粉を吹いたようになっています。

Garrard 301-1.jpg リンクは錆びています。

左上の方の四角い部品がスパークキラーで,これが容量抜けすると,on,off時にスピーカからショックノイズが出ます。iruchanのも昔は何ともなかったですが,最近,パチッと言うノイズがするようになりました。

黄色い粉については,ググってみてすぐに判明。

なんとカドミウムでした[台風][台風]

ええぇ~~~って思っちゃったのですが,妙に納得。

その昔,真空管式TVやラジオなど,鉄製のシャシーにカドミウムメッキが施してありました。もちろん,鉄のさび止め,と言う目的ですが,カドミウムだとはんだづけできたのも電子機器のメッキによく使われていた理由です。特に,TVやFMチューナだとニアバイアースということでシャシーに直接,はんだづけしてGNDに落とす必要があるので,TVのシャシーはカドミウムメッキしてあることが多かったのです。

他にも,iruchanが持っているTrで,NECの2SA653など,表面が妙に黄色いものがありますけど,これは金メッキじゃなく,カドミウムメッキです。

2SA653, C1161.jpg カドミウムメッキの2SA653とコンプリの2SC1161

まともな? 2SA653も持っているのですけど,今,手許にありません。

もちろん,カドミウムは腎臓障害などを引き起こし,有毒です。日本ではイタイイタイ病などの公害問題を引き起こしました。現在ではRoHS指令を初めとして,いろんな規制で使用禁止となっています。

おそらく,iruchanの301は鉄表面が酸化し,カドミウムメッキが剥がれてきているんだと思います。昔はこんなことになっていませんでした。

と言う次第で,結局,このせいでプロの業者にオーバーホールを任せることにしました。

リンクはカドミウムメッキを剥離し,防錆処理をして業者によっては再メッキしてくれるようです。ばね類やアイドラーなどのゴム製品も新品に取り替えてくれますし,モーターも分解して清掃,軸受の交換もしてくれます。シャシーももとの塗装を剥離して再塗装してくれるので,新品同様になります。まあ,iruchanもそう今後,長生きするわけじゃないし,死ぬまでレコードを聴きたい,と思っているので,オーバーホールすることにしました。

Garrard 301-2.jpg アイドラー周辺

アイドラー支持の金具はすっかり錆びています。銀色の板はアルミ製の渦電流ブレーキで,右下の馬蹄形の磁石でブレーキをかけ,回転数を微調整するようになっています。モータ軸についているプーリーは50Hz用と60Hz用があります。もちろん,▼のストロボも周波数によって違います。

Garrard 301-6s.jpg 左下のコーナーがへこんでいます。

買ったときに,すでに再塗装してある,と思いましたが,どうも下地処理がまずく,簡単に塗膜が剥がれてしまいます。固定用のネジ穴周辺も塗料がはげてしまいました。また,買ったときから,どうも以前,落としたらしく,左下のコーナーがへこんでいました[雨]

これも直してもらって再塗装してもらう予定です。

日本でも業者さんはいますけど,本当に日本で作業しているのか不明だし,米国にも業者はあるのですが,再塗装の際に色が選べるらしく,ピンクや紫なんてのもHPに出ていますけど.....。さすがにこんな色にする気はないし,やはりアメリカ人はなにを考えているのか,まあ,ウランが核分裂する,と聞いて爆弾作っちゃうくらいだから,彼らの感覚はさっぱりわかりません.......[雨]

と言う次第で,iruchanは製造元の英国の専門業者にお願いすることにし,3月にEMSで発送しました。

EMSって,昔からよく利用していますけど,テロ対策か,最近は非常に手続きが面倒になっており,手書きの伝票は原則,受け付けてくれません。郵便局のHPで必要なデータを入力し,プリントアウトして郵便局へ持って行きます。

なんとか梱包して,3月に英国へ発送しました。直前に独裁者プーチンがウクライナに侵攻し,無事に着くかどうか心配しましたが,無事に英国に届いたようです。

では,しばらくさようなら......。

        ☆          ☆          ☆

9月8日に英国のエリザベス女王がお亡くなりになりました。謹んでお悔やみ申し上げます。

前々日にiruchanは英語を勉強しているので,BBCのニュースを聞いていたら,医者の進言で公務を休む,と放送しているので,もしかして,と思っていました。とても残念です。

本来なら,父親(ジョージ6世)は次男なので,王位に就くことはなかったはずですが,兄のエドワード8世が例の米国人のバツイチ女と結婚するため,退位したので,弟が継いだために王位に就くことになりました。

エドワード8世は王冠より愛を優先した,と美談とされることも多いのですが,親ナチであったことも知られています。話題の? ○○協会じゃなくて英国のナチ党の集会に出席したり,退位後,ベルヒテスガーデンの山荘に招かれてヒトラーとも会っています。

反対に,弟のジョージ6世は生まれつき吃音の障害があったにもかかわらず,それを克服し,開戦時の放送は感動的で,"英国王のスピーチ" という映画にもなっていますね。

開戦の演説というと,チャーチルの "I shall never surrender." が有名すぎて,ジョージ6世の演説はあまりTVでも流れませんけど,この映画を見ても,とても感動的で素晴らしい名演説です。

ジョージ6世は戦時中は国民を鼓舞し,ドイツ空軍の空襲があった際もバッキンガム宮殿を離れませんでした。

反対に,エドワード8世が在位していたら,あるいは英国が負けていたら......ナチの傀儡として担ぐ動きがあっただろう,と思います。イギリスのペタンはエドワード8世だったかもしれません。実際,ナチスドイツが勝利した世界を描いた,ロバート・ハリスの "ファーザー・ランド" (文春文庫・絶版)もそう描いています。

エリザベス女王はそんな父の姿をよくご覧になっておられたのでしょう。戦後の苦しい時代,国民に寄り添い,常に勇気づけ続けました。

iruchanは親英米派なので,女王を尊敬していたので,とても残念です。

あの時代,日本でも少ないとは言え,対英米協調派がいましたが,彼らの声はかき消され,社会から抹殺されました。正しいことはなんなのか,視野を広く持ち,世界の大局を見て物事を考える,ということがかつても,また,今ほど重要なことはない,と思います。


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