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ハイfTトランジスタを用いた高速アンプの製作~その2~ [オーディオ]

2015年10月18日の日記

前回,使用する半導体を紹介したところまででした。そのあと,部品を手配していました。長年,マニアをやっているので部品が蓄積していますが,肝心のTr類も実家に置いてあったりするので取ってきました。
 
部品類.jpg 

ようやく部品がそろったので,今回はプリント基板を作ります。 

回路はいろいろ考えたのですが,今回,終段がハイfTトランジスタと言うことで終段の高周波特性がよいので,極力,広帯域の高速アンプにしたいと思います。できればハイレゾ対応ということで100kHzまでフラットなアンプを目指したいと思います。

ということで金田式DCアンプシリーズNo.106の回路を使わせていただきました。

GOA時代の回路で,とうに現在のDCアンプの回路じゃないんですが,どうにも現在の完全対称回路は好きになれないので,GOA時代の回路が気に入っています。どうしても終段がNPNだけ,と言う回路は大昔の準コンプリメンタリみたいで好きになれません。半導体は真空管と違ってPNPがある,と言うのが最大のメリットだと思うんですが....。

No.106は出力35Wのバッテリー式ですが,AC電源式にします。また,初段,2段目ともにカスコードアンプになっていて,良好な高周波特性が期待できます。

カスコードアンプはミラー効果を低減する効果があり,アンプの高周波特性が改善されます。FMやTVの高周波増幅回路に多用されましたね。

ただ,アンプの場合,実を言うと初段にカスコードアンプを使うのはFETの漏れ電流を小さくするためです。高周波特性はおまけですね。

ただ,2段目は最大ゲインを稼ぎますし,この段の周波数特性を改善するのにカスコードアンプは有効です。

なお,No.106は初段は2N3954かその選別品のFD1840になっています。どちらも値段が高いし,どうも好きになれないので部品箱を探して昔懐かしい東芝の2SK150を起用しました。
 
2SK150.jpg 東芝2SK150

2SK150って "初歩のラジオ" の定番だったデュアルのFETですね(懐かし~)。

ただ,残念ながら2SK150はこういうこともあってか,初心者向け,と言う印象があり,MJなどではほとんど使われなかったと思います。 "初歩のラジオ" で多用されたのは全国の部品屋さんで東芝の半導体が入手しやすい,と言うことがあったのでしょう。 "初歩のラジオ" だと中学生や高校生が対象で,彼らが部品の入手で困らないように,と言う配慮があったのだと思います。もっとも, "初歩のラジオ" は今読み返してみると非常にレベルが高いですね~。UV-211シングルなんて記事があったりして,中学生が211のアンプを作ったんかぁ?,と言う気もしますけど.......(^^;)。
 
2段目はNECの2SA606です。ドライバは同じくNECの2SA606/C959のコンプリです。TO-5のパッケージが懐かしいです。
 
2SA606, C959.jpg NEC 2SA6062SC959
 
2SC959C959じゃなく,ちゃんと2SC959と書かれた一番初期の頃のものだと思います。 
 
実を言うと, "最新オーディオDCアンプ" (誠文堂新光社1978)にはソニーの2SA896の方が2SA606より高周波特性がよい,と書かれているし,2SA896も持っているのでちょっと迷いましたが,定番の2SA606にしました。 
 
熱結合.jpg 熱結合中です。
 
セメダインの透明エポキシで熱結合しました。アラルダイトだと臭いし,硬化後にクリーム色になるため,あまりきれいじゃありませんが,透明タイプなのできれいです。10分硬化というのも早くて楽です。 

電源は,AC電源にしますが,トランスがちょっと悩みの種でした。

最初,ネットで話題になっているLepaiのデジタルアンプの自作電源みたいにトロイダルトランスにしようと思っていました。

でも,なんかしっくりきません。巻線むき出しでかっこわるいのと2次側の電圧が1種類しかないのが原因です。

半導体のアンプはどうしてもドライバ部が終段より電圧が高くなります。まあ,昔のアンプは電源電圧は1種類だけで,終段と共通でドライバとも独立していませんでしたが,高級なアンプは普通,独立しています。

こうなるとトランスはドライバ用と終段用の2種類の巻線が必要なんですが,最近売られているトロイダルトランスはこういう巻線構造になっているものがほとんどありません。

と言う次第で,ドライバだけ別トランスにする,と言うことも考えたのですが結局,実家に帰ったらタンゴのPB-80Sが出てきたのでこれにすることにしました。

残念ながらタンゴトランスを製造していたISOはとうとう,一昨年9月に廃業してしまい,もうタンゴのトランスは入手できません。ISO自身,前身の平田電機が2000年に廃業したときにもとの従業員の皆さんが設立した会社で,幸いにも旧タンゴ時代と同じ規格のトランスを同じ製造器具を使って製造しておられたようですが,オーディオをやる人自体が減ったこともあり,廃業のやむなきに至ったものと思います。

PB-80Sは前身の平田電機時代のもので,半導体アンプの初期の頃に設計されたもので,長い歴史があります。ISO発足後は半導体アンプ用のトランスは製造されませんでしたから,タンゴの半導体トランスはすべて平田電機時代のもので,とても貴重です。

2次側の巻線は2種類あり,終段用とドライバ用に分かれています。終段用の巻線はタップが何個か出ているので,便利です。おそらく最初に設計されたのは1970年代で,正負2電源をもちいた本格的なOCLアンプが出た頃だと思います。

今回,実家に帰って貴重なトランスを発掘? してきたのでこれを使おうと思います。出力的には50Wくらいになるかと思います。
 
TANGO PB-80S.jpg 旧タンゴPB-80S
 
ネット上にはタンゴの真空管用トランスの資料は出ていますが,半導体用が見つからなかったので,タンゴPB-80S,PB-40Sの規格表を載せておきます。ご利用ください。 価格表は1998年時点のものです。
 
 
ドライバ段はDCアンプなので安定化電源にします。まあ,DCアンプだからと言って安定化電源にする必要はないのですが,こうしておく方が安定です。

と言う次第で,今回採用する回路は次の通りです。

2SA1002/C2322パワーアンプ1.jpgアンプ部回路
 
終段のエミッタ抵抗は必ず入れることにしています。 バイポーラTrは温度係数が+のため,熱暴走する危険があります。エミッタ抵抗はこれを防ぐ作用もあるのでなしにすることは考えられません。
 
2SA1002/C2322パワーアンプ電源部1.jpg電源部回路
 
電源部はドライバ段用は誤差増幅器を1石で済ませたごく普通のシリーズレギュレータです。制御Trは往年のNECの2SA6532SC1161のコンプリにしました。ダーリントン接続にしようか,ちょっと迷っています。終段用は単なるコンデンサインプット電源です。最近はハンダ付けタイプのブロック電解がなくなって困ったものです。 
 
プリント基板は前回,新たに開発したアイロン転写方式で作りました。

純粋な金田式DCアンプなら万能基板ですが,私はこれが嫌いなのでプリント基板にしました。万能基板は失敗のもとと考えています。私はよほど簡単な回路でない限り,プリント基板を作ることにしています。
 
2SA1002/C2322パワーアンプ基板.jpg 完成したアンプ基板
 
ドライバ周辺.jpg ドライバ周辺です。
 
今回,パワーTr保護用にポリスイッチを入れてみました。ドライバは昔懐かしい2SA6062SC959です。昔はよかったな~~(泣)。 

さて,次回は電源部とプロテクタ&ミューティング回路を作ります。また,シャシー加工をして実際にアンプを組み立てていきます。
 

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