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LUXKIT A3600復活への道~その1~ [オーディオ]

2015年8月23日の日記

A3600 元の状態.jpg 譲っていただいたときの状態

今年の2月,いつも大変お世話になっている河童さんからラックスキットのA3600というアンプをいただきました。 

このアンプ,国産最後のオーディオ用出力管8045Gを4本プッシュプルで用いたステレオアンプで,長い間,とてもあこがれていたアンプでしたので,本当にうれしく思いました。

8045G,6AQ8.jpg 8045G(下)と初段の6AQ8(上)

8045GはラックスとNECが共同開発した3極出力管で,プレート損失45W,最大プレート電圧1000V,プッシュプルで最大60Wの出力が得られるという巨大出力管です。国産最大の東芝の6G-B8でもプレート損失35W,最大プレート電圧800V,GEの6550Aでそれぞれ42W,660Vなのですから大変なものです。5層の積層プレートを持ち,真空管でも最後まで技術開発されたカラーTV用水平偏向管をもとに開発されたものです。ドライバとして,専用の6240Gも開発されています。

と言う次第で,もとは水平偏向管なので純粋な3極管構造ではなく,ビーム4極管の3結構造になっているのですが,最新の真空管技術によるプレート構造や各グリッドに大きな放熱フィンを多数取り付けた構造はとてもすごいもので,また,金属製のハカマをはいたベースもとても格好よいものでした。 

開発されたのは1974年のことのようで,本機も発売が1975年のようです。

当時,世を挙げて大きくて立派なことが賞賛され, "大きいことはいいことだ" といわれていた時代で,市販の半導体のアンプも100Wの出力を持っているのが当たり前, と言う時代になりつつある頃でしたから,真空管でも大出力を,ということで開発されたのだと思います。 

しかし,やはり大出力なのが災いし,この球は寿命が短いことでも知られています。特にA3600は出力管が密集した設計になっているのも問題で,管表面の温度が上がり,寿命を縮めている感じがします。8045Gの寿命が尽きると予備の球がないため,市場に残っている中古機種でもGEの6550Aに換装してあるものがほとんどだと思います。

ラックスも社内の補修用在庫がなくなったあとは修理依頼が来ると6550Aに換装して返送したようです。 もっとも,6550Aはもとはだるまみたいな形状をした6550や,英国のKT88と同特性なのですが,これらの球は外径が太く,本機で使用するのは無理があるようです。あっさり細身の6CA7EL34に交換してしまうのが熱的にもよさそうですが,それだとA3500と同じになってしまいます。

また,この真空管は製造された期間がきわめて短く,NECが真空管の製造をやめたのがいつかわかりませんが,国内最後の松下電器が製造をやめたのが1979年と言うことから考えると,その前であるはずですから,ほんの2,3年,というところだと思います。

ラックスもNECが製造中止すると言うことで8045Gをはじめとして50C-A106R-A8など,大量の真空管の発注をして備蓄したようですが,ほどなく底をついたようです。そういえば,プリやドライバの12AX712AU7もずっとラックスはNEC製を使っていましたが,NECが製造中止した後は松下製になり,最後はGEのを使っていたと思います。

ラックスは当時は関西に本社がありましたが,同じ関西系の新日本電気(NEC)と仲がよかったようです。松下も関西系なのに,最後になるまで使いませんでした。松下の12AX7などはゲッターの支柱を省略してプレートに直接ゲッターのリングがついていて,まるで帽子をアミダにかぶったような感じになっていて,こういうことでコストダウンを図ったりしていたり,いまだにこの会社はどの製品でもこんな印象を受けますけどね......。ガラスの成形法が他社と違って頭にスジがついていたりして格好悪く,松下の真空管は好きじゃありません。特に,iruchanよりずっと年配のマニアの方は松下の真空管,というといい顔しない人ばかりですよね.....[雨]

当時,私はまだ小学生でしたが,中学に入ってオーディオに興味を持った頃で,"初歩のラジオ" などに広告が出ていたのでよく覚えています。いつかはこのアンプを使ってみたい.....と思っていましたが,あれから30年以上の月日が流れてしまいました。 

8045G広告(MJ '76.3)s.jpg 昔,あこがれた広告です("無線と実験" '76.3号)   

A3600 original schematic.jpg クリックすると拡大します。 

          オリジナル状態の回路図

幸いなことにいただいたA3600はオリジナルの8045Gが挿してありました。本当に夢のようです。残念ながら,ドライバの6240Gがなくなっていました。まあ,実を言うとこの球は6FQ7で代用できることはよく知られていますので,私も6FQ7で代用します。同じ特性の6CG7でも結構です。6CG7との違いは電極間のシールドがあるかないかですが,でも本来ならシールドがついているのが正規の6CG7なんですけど,シールドつきの6CG7というのはほとんどありません。

6FQ7は同じNEC製のものを持っていましたので,それを使います。真空管の箱から取り出してみてびっくり。全く外観は同じです。おそらくプレートの電極は共用しているのだと思います。 これなら6240Gの代用として使ってみてもまったく違和感なさそうです。

さて,早速,整備に取りかかります。数年前に通電したところ音が出た,とのことなので,回路としては故障していないと思います。ただ,なにぶんにも40年近い年月が経っていますし,コンデンサは劣化しているでしょうからコンデンサはすべて取り替えたいと思います。整流はシリコンDiですが,これも劣化していると事故のもとなので交換しましょう。

また,シャシーやトランスは結構さびが出てきています。これも再塗装して化粧直しすることにします。やはり鉄のシャシーはさびが出てきて大変です。2カ所についている遮熱用の鉄板もさびが目立つので再塗装します。ねじも鉄のもとのねじはかなり錆びているので,真鍮製のものに交換します。オーディオなので非磁性体の方がよいですしね。

速攻でボンネットは知り合いの自動車の鈑金屋さんに再塗装をお願いしました。こういう大きなものはプロにお任せした方がきれいで,また,塗膜もはがれにくいのでよいと思います。快く引き受けてくれました。色も "大体同じ色で" とお願いしていたのですがまさにぴったりの色調でした。ラックスのAシリーズのシャシーはちょっと茶色っぽい色に塗装されていますが,なかなかいい色だと思います。

ボンネット.jpg 鈑金屋さんで再塗装しました。

さすがにシャシーの再塗装は全部品をばらさないといけないのであきらめました。まあ,あまりシャシーの方はさびがひどくなかったのでこのままとします。

また,電源トランスと出力トランスも少しさびが出ていたので,外して自分で再塗装しました。スプレーでやったのですが,やはり粒子が粗く,プロの仕上がりにはとても及びませんでした......orz。

ただ,OPTの銘板を取り付けているM3のトラスねじがさびついて外せません。別にこのネジは単に銘板を取り付けているだけなので交換する必要はないのですが,錆びていてちょっと目立つので交換したいところです。ところが,ねじがさびついてドライバーがねじをなめてしまうくらいで,まずいと思いました。幸い,556を少し吹き付けたあと,秋葉で見つけたENGINEERのネジザウルスという工具を使ってみたら簡単に外れました。 なかなか便利です。

OPTねじ外し.jpg 少しOPTも外装がはがれていました。

    ENGINEERのネジザウルスで銘板を留めているねじを外しました。

トランス塗装中.jpg トランス類塗装中。

トランスは最初,マットブラック(つや消し黒)で塗りましたが,あまりつやがないのも変。半つや消し黒があればよかったのですが,近所の店にはなかったので,この上からタミヤのセミグロスクリヤーを塗りました。 

トランス再塗装.jpg 

  仕上がりはこんな感じです。ねじも真鍮製クロムメッキ品に交換しました。

部品の交換は主要な回路部分がプリント基板になっているので比較的簡単です。

A3600 元の状態-1.jpg 基板の状態。ソケットは錆びています。 

ソケットは中央無線(QQQ)のプリント基板用が使われていました。外周の鉄板が錆びていたので同じものに交換したかったのですが,どうもプリント基板用は製造中止らしく,手に入りません。仕方ないので中国製のタイト製のものを使いました。タイト製は精度が悪いと真空管を割ってしまうので注意が必要ですが,これは大丈夫でした。

出力管のカップリングコンデンサは日通工のフィルムコンが使われています。同じ時期のKMQ60などはオイルコンが使われていて,リークにより出力管のバイアスが浅くなって過電流になってOPTを断線することがありましたが,本機はフィルムコンなのが幸いし,あまりこういうトラブルは聞きません。やはり真空管のカップリングコンデンサはフィルムがよいようです。と言う次第で,これは交換しなくてもよさそうではあるのですが,リードが錆びていましたし,やはり新品に交換しました。

日通工,指月0.47μF.jpg 日通工と指月のフィルムコン 

ERO film capacitor.jpg 

出力管用の0.068μFは独EROのMKTシリーズフィルムコンを使いました。 長年愛用してきましたが,これも製造中止です......orz。 

オイルコンも含め,MPコンやペーパーコンなどのペーパー系コンデンサはセパレータが紙で,これが長年の間に吸湿して導体になって直流が漏れてきますのですべて交換しましょう。特に70年代以降,コストダウンのため端部をゴムで封止しているものが多く,ゴムが劣化して中に湿気が入るようになってリークするようになります。

A3600 元の状態-3.jpg シャシー内部の状態(オリジナル)。

プリント基板上には630V,0.47μFという大きなフィルムコンがありますが,基板の鉄板のカバーが邪魔をしますので,あまりサイズの大きなものは使えませんのでご注意ください。ほかの0.22μFなどはマイラーコンが使われています。Trラジオみたいですね。マイラーはポリエステルフィルムの米デュポン社の商品名ですが,コンデンサの名前にもなっていますね。フィルムコンなので劣化はしにくいので放置でもよいのですが,一応,日精電機製のメタライズドポリエステルフィルムに交換しておきました。

残念ながら,ニッセイの青いフィルムコンはiruchanのお気に入りで,Trアンプでよく使っているんですけど,同社は2010年5月に経営不振に陥り,現在は中国系企業傘下です.......[雨] 。

と言うか,中国のもとのニッセイの現地法人が買収した,と言うわけです。子会社が親会社を救った,と言うわけですね。米Xerox社が現在は富士ゼロックス傘下なのと同じですね。 

さて,お次は電源部を改造します。まだまだ先は長い~~~!!


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