SSブログ

オールゲルマニウムトランジスタ6石スーパーの製作~調整編・つづき~ [ラジオ]

2012年5月25日の日記

前回,トラッキング調整とIFTの調整が終わったところまででした。この段階になっても,感度が非常に悪くて,まだ放送がかすかにしか入りません。

一応,IFTを調整するときに入力に450kHzの信号を加えたので,出力を見たら,1.8VP-Pありますから,ほぼ,ゲインとしては45dBで,まだかなり低い感じです。IF1段あたり30dBくらいはあるはずなので,60dBくらいにはなるはずです。

IF出力.jpg IF出力です。中間周波数は450kHzにしました。

ということで,IFTのQダンプのせいで感度が下がっていると思いますが,これ以上だと発振するようですので,しかたありません。ほかの原因を考えてみます。

考えられるのはバーアンテナのインダクタンスとバリコンの容量が合っていない,と言うことです。

実際,バリコンの背面にはトリマコンデンサが2つ,ついていて,そのうちの1つはバーアンテナの同調の微調整用です。このトリマを回してもまったく感度が変わらないので,バリコンの容量とバーアンテナのインダクタンスがあっていないことは間違いない感じです。

現在,手に入るポリバリコンは,先日も調べたとおり,アンテナ側が150pFで,局発側が75pFくらいのものです。トラッキングレスバリコンと言います。中波専用ならパッディングコンデンサが不要で,非常に便利です。ただ,BCLラジオなど,短波つきのラジオの場合はアンテナ,局発双方に同じ容量のものが必要で,これはなかなか探さないと見つかりません。真空管の高一用にも何とか使えるので,私は買いだめしてあります。

アンテナ側が150pFだと,同調するインダクタンスは600μHくらいになります。実際,秋葉原などでスーパー用として売られているバーアンテナは600μHくらいのものです。ところが,ジャンク屋さんなどで買ってくると,インダクタンスが異なっていたりするので注意が必要です。ポリバリコンも初期のものはもっと容量が大きかったり,また,等容量タイプのものは違っていたりします。

ということで,基板からバリコンとバーアンテナを外して,容量とインダクタンスをチェックします。バリコンの容量は上記と全く同じでした。普通のスーパー用のトラッキングレスバリコンでした。

結局,問題はバーアンテナです。

実は,これは秋葉原で買ってきたもので,AL-70Xと言う型番のやつです。スーパー用でコアが70mmもあり,とても感度がよさそう,と言うことで買ってきたものです。

ただ,調べてみると,昔,ミツミ(当時は三美電機ですけどね)がAL-70というバーアンテナを出していて,同社のPVC-2Mというポリバリコン用でした。PVC-2Mが最大容量200pFなので,このコイルは437μHとなっています。ひょっとして型番がほとんど同じなので,AL-70Xも450μH位なのかも,と思いました。こうだと確かに受信できません。

それにしてもポリバリコンは偉大な発明だと思います。ソニーが日本初のトランジスタラジオTR-55を開発するときに,セットの小型化のため,バリコンを小型化するよう要求され,ミツミが開発しました。米国製のトランジスタラジオは小型のエアバリコンを使っていますが,どうしても大きくて,ポケットに入るようなラジオじゃありません。と言って余談ですが,実は世界初のトランジスタラジオ米Regency社のTR-1はエアバリコンを使っていて,TR-55より小さいんですけどね。日本製の小型トランジスタラジオはまたたく間に世界中を席捲し,フランスのドゴール大統領が来仏した池田首相に「トランジスタラジオのセールスマン」と言ったのは有名な話です。世界を席巻した日本のトランジスタラジオにはポリバリコンが搭載されていました。

あ,そうそう,忘れていました。バーアンテナに使われるフェライトも日本人の発明ですね。バーアンテナというのも日本製のラジオの特徴のひとつでした。米国製のラジオはループアンテナでした。さすがにトランジスタラジオも米国製はバーアンテナがほとんどですけど。フェライトの発明は戦前なので,うまく使えば強力な電子兵器に使えたはずですが,戦時中は特に活用されなかったようです。八木アンテナと同じじゃなかったでしょうか。シンガポールを占領して英国軍のレーダーらしき謎の電波兵器を接収したらこれが出てきて,何じゃこれ? と言ってたらしいですから,これじゃ戦争に勝てるわけがありません。おまけにシンガポールで入手したマニュアルを執筆したやつが東京の捕虜収容所にいたので,そいつを尋問して,そのマニュアルの中にある,「Yagi aerial arrayとは何か?」 と聞いたらそいつが「それはお国の発明者の名前でしょ?」 と言ったというのは開いた口がふさがりません。

そもそもその捕虜は伍長で,下士官ですが,古参の兵隊がなることが多く,士官学校などの専門の士官教育を受けた人ではありません。マニュアルと言っても操作マニュアルのようなもので,理論的な解説がしてあるわけじゃなかったと思います。それをその捕虜の名前からニューマン文書なんて名前をつけてそれこそ血眼になってレーダーの研究を始めた,というのですからやっぱり戦争に勝てるわけがありませんね。もっとも,アメリカだって,戦後,ロケット開発にあたって捕虜にしたドイツ人技術者から,「ロケットはゴダードから学んだ。」と聞いて,「ゴダードって誰?」って聞き返した,と言うのも有名な話ですから,似たようなものですね。

シンガポール占領の2ヶ月後,1942年4月18日に空母ホーネットを発進したドーリットル隊による東京初空襲がありましたが,米軍は日本のレーダーを警戒し,超低空で東京に進入しました。日本軍にはレーダーがなかったのでその必要はなかったのですが.....。

もっとも,日本が戦争中に研究を進めていた,原子爆弾や殺人光線でなく,戦後にトランジスタラジオで世界を攻撃? したことはよかったと思います。

ちょっと,脱線してしまいました。ということで,基板から外したAL-70Xバーアンテナのインダクタンスを調べてみます。

AL-70X初期インダクタンス.jpg なんと,676μHでした....。

予想は大外れ。ちゃんと600μH以上あります。大きめになっているのは,おそらく,多少ほどいてバリコンと同調することができるよう,調整のために余分に巻いてあるのだと思います。非常に親切なことですね。もし,足りない場合は巻き足さないといけませんが,エナメル線よりリッツ線で巻いた方がQが下がらなくてよいのですが,リッツ線はなかなか入手できませんので,巻き足すのはたいへんです。

ということで,このバーアンテナは多少,余分に巻いてあって,実際に使うときには少しほどくとよい,と言うことがわかりました。作っている人はここまで考えておられるのですね。とても感心しました。

インダクタンスは巻数の2乗に比例しますので,どれだけほどけばよいかは簡単に計算できますが,今の巻数を数えないといけなくて面倒なので少しずつほどいて測定しました.....(^^;)。

といって,せいぜい10回くらいほどくだけだろうと思いました。予想通り,10回ほどいたら607μHになりました。一度,ほどいてしまうと固定するのが面倒ですが,透明エポキシで固定しました。

コイルを元に戻してテストです。今度はガンガン入ります。ボリウムも大幅に絞った状態でしっかり聞こえます。またNHKなども入りますので,これでOKのようです。とりあえず,あとはどこか放送局を受信して,バリコン背面のANTトリマを回して最大音量になるところで止めれば調整は終わりです。

最後に,最終版のプリント基板パターン図をupしておきます。クリックすると拡大しますので,画像を保存していただき,OHPシートに100×75mmになるように印刷すれば,感光基板に焼き付けできますので,ご利用下さい。 

Ge-Tr6石スーパー基板.jpgパターン(裏)

Ge-Tr6石スーパー基板(部品).jpg部品配置です(表)

それにしても,ディスクリートで6石スーパーを作るのが非常にむずかしい,と言うことがよくわかりました。結局,完成まで1週間かかかりました。5球スーパーなら1日で終わり,ですからね。やっぱトランジスタはむずかしい,と言うことがわかった1週間でした。これから何かケースに入れて,楽しむことにしませう。

また,今回,いつもたいへんお世話になっている方から古いTrラジオの基板をいただきました。中に日立製のサーミスタがついていたので,早速,交換しました。ゲルマニウムDiも手持ちの日立製の1N34に交換しましたので,これで半導体はすべて日立製になりました。また,一部ケミコンも容量を計ったらちゃんと記載通りのものがあったので交換しました。やはりゲルマニウムTrにはそれなりの時代に合わせた部品を使ってやりたいものです。

日立サーミスタ.jpg 日立製サーミスタ。ケミコンも時代物です。

最終基板.jpg 最終基板です。

バーアンテナは一部,巻きほどいたので,アンテナコイルにすき間ができています。ちゃんとケースに入れないといけませんね。

 

 


nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント