イギリス旅行記~その2:自然史博物館,科学博物館とストーンヘンジ~ [紀行]
2024年2月17日の日記
2月6日未明発の深夜便JAL 41便でロンドンへ行ってきました。
ところが.......
なんと久しぶりに南岸低気圧で大雪
そういえば,2.26事件も大雪の日だったし,iruchanもずっと昔,ワシントンへ仕事で出かけたとき,成田で一晩明かしたのを覚えています。空港は大混雑で,床にみんな寝ているし,カウンターは大行列でした......
調べてみると,2006年1月21日のことだったようです。成田の積雪は13cmでした。
この日のことが頭をよぎったのですが,まあ,飛行機はかなりの大雪でも飛ばないと仕事にならないし,iruchanも大雪の青森空港や新千歳の記憶がありますけど,ちゃんと飛んでいました。ただ,2日連続で紋別空港が閉鎖されて渡道できなかった経験もありますけど.....。
問題は中央線.......
真っ先に止まりそう......と踏んだので,南武線~京急と乗り継いで羽田に無事に着きました。
飛行機は順調に飛んでいるようですし,欠航の表示もわずか2便だけのようです。
安心してゲートで本でも読んで休憩していたのですけれど......。
21:00くらいまで順調に飛んでいたのに,ここでストップ。
なんと,雷警報が出たらしく,地上の作業が止まっているようです。
これは仕方ありませんね。前線の通過前後に積乱雲のせいで雷が出ているようです。
おかげでフライトは2時間遅れ。
でも,なんとか飛んでくれてよかったです。旅程が1日,減るところでした。
飛行機は787。国内では何度も乗っていますが,国際線は2回目です。
深夜便なので,すぐに寝ちゃったのですが,起きてみたら室内はグリーン。
もしかしてオーロラ?
って思っちゃったのですけど.......。
単に液晶のブラインドに陽が当たると緑に見えるだけ,のようです。
ただ,それにしてもこのとき,気がついたのは787って,とても静かなのですね。
飛行機って,ゴォーッとエンジンと機体周りの空気の渦の音がずっとしますけど,787は非常に静かです。新幹線より静かなんじゃ,ないでしょうか。
ヒースローには2時間遅れの8:30に到着。どうもありがとうございました。
あとは簡単,いつものピカデリー線でまずはホテルへ行って,荷物を預けたい,と思います。
ホテルはHammersmithにしました。高級住宅街のKensingtonに近く,治安も比較的よいところ,と思います。何より交通結節点で,ピカデリー線のほか,ディストリクト線もあるので,市内観光にもちょっと距離がありますが,便利だと思います。なにより,中心部のホテルはめっちゃ高いので.....。
さて,ホテルに荷物を預けたら.......そのディストリクト線に乗って,まずはSouth Kensingtonへ。
ここで,博物館を2つ,回りたいと思います。
☆Natural History Museum
自然史博物館,と訳されています。恐竜の化石の展示が有名ですが,地学,天文学などの発見を展示しています。
iruchanのお目当ては始祖鳥の化石です.....。
一度,2017年に上野の科学博物館に来たので,子供と見に行きましたけど,本当の展示場所で展示されている状態を見たい,と思いました。
1860年,ドイツ南部のSolnhofenで発見されたのが最初で,時代によって違うのですけど,iruchanが中坊だったときは見つかった化石は世界で3個という記憶があります。確か,今では10個くらいはあるはずですし,中国でも見つかった,と新聞に出たのを覚えていますが,その後,どうなったか不明です。
ロンドンのは1861年,やはりドイツ南部のLangenaltheimで発見された化石で,ロンドン標本と呼ばれます。
始祖鳥の化石です。ロンドン標本と呼ばれるものです。
でも,なんで2つあるの? って思ったのですけど,単に化石の表と裏ですね.....
おまけに,▼のドードーのとなりにも1個,展示されていて,3つあるのか,と思ったのですが,こちらは説明で複製であることが書かれていました。
ドードーは人気者。みんなこの前で記念撮影していました。"go the way of the dodo" は絶滅する,廃れるという英語のイディオムにもなっています。
ほかにも海竜のものすごい化石群に圧倒されます。
前期ジュラ紀の地層から発見されたロマレオサウルス。
恐竜好きの人はぜひ行くとよいと思います。iruchanは小坊のころは恐竜マニアでしたけど,そのうち電気の方に興味が移っちゃいました......。
☆Science Museum
科学博物館ですが,▲の自然史博物館の北隣にあります。
こちらは産業革命以後の工学の発達を記録,保存している博物館で,社会人になったばかりの頃,訪問しました。あれから20年以上経ちますが,久しぶりに訪れてみました。
お目当てはニューコメンの蒸気機関とBBCのラジオの送信機の展示です。後者は最近,移転したもので,今回,初めてです。
ニューコメンとワットの縦型蒸気機関は入ったところに展示してあります。そのほか,トレビシックの高圧蒸気機関やパーソンスの蒸気タービン,英国製のルノワールの内燃ガス機関も展示されていて,初期のエンジンに興味がある人はたまらないところです。
Newcomen's atomospheric engineと書いてあることが多いです。ピストンの背圧は大気圧のため,どうしても大型になります。
ピストン内の蒸気を凝縮させる水のバルブは人間が手動で開けていたのだ,と思いましたが,▲の蒸気機関は説明にあるアニメーションを見ると自動化されているようです。
展示されているのは1791年製のダービーシャーで使用されていた蒸気機関ですが,なんと1918年まで使用されていたそうです
どうも英国内には実際に可動するニューコメンのエンジンがあるようですが,一度,見に行きたい,と思います。
James WattとMathew Boultonの蒸気機関です。1797年完成で,1885年まで稼働していたようです。友人のMaudのところで鉱石や他の化学物質を砕くのに用いられたようです。
ワットとボールトンは1775年にバーミンガムで共同で会社を設立し,1895年まで活動していました。
トレビシックが1801年に開発した高圧蒸気機関です。彼は非常に小型の蒸気機関を開発しました。従来のワットらの据置型,縦型蒸気機関から脱して,船舶や機関車など,交通機関への応用の道筋を作りました。
ワットの発明は凝縮器をシリンダーから分離し,効率を向上させたもので,また,後にはダブルアクションと呼ばれる,われわれがよく知っている蒸気機関車と同じく,背面にも蒸気を加えるシステムを完成させますが,いずれも,いわゆる大気圧機関の域を出ず,トレビシックの高圧蒸気機関は危険だとして,ネガティブキャンペーンをしています。
Burnley Ironworks製の蒸気機関
すでにモータが実用化されていましたが,20世紀に入ってもなお,蒸気機関が主力として使われました。
1903年製の水平蒸気機関で,紡績工場の動力だったようです。
20tのフライホイールが圧巻。出力は700HPです。
じっと見ていたら,博物館のお兄さんに,"This moves on Thursday. Have a look!" と言われました。木曜日に,午前と午後,動くようです。
蒸気機関の次はタービンですよね。
火力発電の動力源は蒸気機関でしたが,20世紀に入るとタービン発電機が普及します。
1891年にパーソンスが開発した,蒸気タービン発電機です。翌年,Cambridge Electric Supply社に納入され,30年間活躍したタービン発電機だそうです。
こんなに小さいのか,って思っちゃいました......。でも,出力は75kWもあるようです。中途半端な数字だな~,と思ったら,出力100HPということなんでしょう。
フランスのルノワールが発明した内燃機関です。彼は内燃機関の始祖とされますけど,当時,いろんな人がガス内燃機関を開発していて,ルノワールだけではありません。彼はそれなりにビジネスに成功したから有名になった,と言う訳です。フランスのオリジナルはパリで見ましたし,ライセンス生産で英国製があると聞いていましたが,実物はこれです。ロンドン西部のReading Iron Works製のようです。
う~~ん,なんかこうやって比較してみると,随分とイギリスとフランス製じゃ,違うんですね.....
内燃機関と言っても,まだ蒸気機関の呪縛から逃げられていなくて,ピストン両側に点火栓がついていますし,吸い込んだガスの圧縮をしない,非圧縮機関なので,効率も出力も小さいです。出力は0.5HPです。
燃料はガスと言っても気化ガソリンではなく,石炭を高温で乾留した際に発生する石炭ガスです。1792年にマードックが発明しました。この頃にはガス灯のネットワークもできていて,ガスが容易に手に入る頃になっていたので,中小の工場などで,このエンジンはよく利用されたのでしょう
あと,Science Museumは無線関係の展示も2Fにあるのですが,またそれはあとで....。
☆ ☆ ☆
ただ,この日はもうフラフラ。前夜からの深夜便でしたし,さすがに着いた直後から観光しているとしんどいです。
ホテル帰って,いつもよく買っているwasabiという寿司チェーンの寿司でご飯にしました。時差ボケで食欲もありませんしね。wasabiのお寿司はとても美味しいです。
☆ストーンヘンジ
フランスのモン・サン・ミッシェル同様,一度,見に行ってみたいと思っていました。
ところが,学生時分,行こうとしたら,まだインターネットもない時代,そもそもどうやって行くのかって,"地球の歩き方" くらいしか情報源がありませんでしたよね......。
おまけに,とりあえず,ソールズベリまでは鉄道で,あとはバス,と言うことくらいしかわかりません。
なんとか,電車(実際には気動車ですけどね)の時刻くらいはトーマス・クックの時刻表 懐かし~ でわかりますが,地元のバスの時刻が何時なのか,1日に何本あるのか,なんてわかりません。
とするとロンドンからの日帰りができるかどうかわからないし,泊まりになるとホテルも予約しなくちゃいけない,って訳で,結局あきらめました。
今はいい時代ですね。現地のバスの乗り継ぎも含めて,googleさんが懇切丁寧に教えてくれますから.....
ただ,さすがにgoogleさんも電車の料金までは教えてくれないので,とりあえず,鉄道会社がわかったので調べてみると.....
とんでもない料金が出てきます。
ロンドンのヴィクトリア駅~ソールズベリーまでは距離は直線で120kmほどですが,料金は片道£48.50などと出ます。
びっくりで,東京からなら沼津くらいの距離ですが,JRだと2,310円なのに対し,9,000円を超える金額です。
いくら,今は円安だからって,iruchanが前回行ったときは£1=¥140ほどでしたけど,円のレートが当時と一緒でもJRの料金の3倍近いという料金です。
昔はこんなことなかったのに.....,って思いました。
30年ほど前,ヨークの鉄道博物館へ行ったとき,東京~豊橋くらいの距離なのに,日本の半額って,思った記憶があります。それに,英国だとインターシティと呼ばれる225km/hの特急が走っているのに,欧州は特急料金がありませんから,随分安いな,と思った記憶があります。
一体どうして......と思いましたが,例の英国鉄BRの民営化以後,おかしくなってしまったようです。
各路線やサービスを,バラバラの会社に分割した結果,収益優先で各社が料金を定めた結果,のようです。
これでインフラは国が負担しているので,料金は安くできるはずですが,独立採算を考えるとこんな料金になるようです。
そりゃ,そうですよね。鉄道って,黒字路線の収益で,赤字路線の維持を図る,と言う構造的問題があるので,線区ごとに独立採算にしちゃうと,儲からないところの路線はどんどん高くなる訳です。
沼津まで快速で往復したら単純に片道の2倍と考えると,2万円近くする,ということですね.......。
まあ,時間帯別で料金が異なりますし,英国では,長年の慣習として,往復でもほとんど片道と同じ料金くらい,と言うことが多いので,ソールズベリーまでreturn切符を買って往復しても1万円ほどのようですが,それでも日本の倍近い値段です。
おまけに,飛行機みたいに早めに予約すると安いんですけど,▲のWEBで買おうとすると,住所,氏名を入力してアカウントを作らされた上,挙げ句の果て,最後に "英国内居住者でないと発売できません" と出ます
ちゃんと,countryという欄があって,Japanと入力できるんですけどね......
今回,▼の観光バスも含め,各博物館やコンサートを日本で予約したりしましたけど,なにも問題ありませんでした。
と言う次第ですけど,旅行者は鉄道利用の場合,当日券を買うしかなさそうです。
また,ソールズベリー~ストーンヘンジ間は各社のバスが出ていますが,大体,£20くらいです。
と言う次第で,鉄道で行くと,トータルで£90くらいはしそうであきらめ,ロンドンから直接,日帰りのバスツアーがあるはず,と思って探したら,ありました。
Golden Toursと言う会社のSimply Stonhengeと言うツアーが£64でした。
ほかにもいくつかバスツアーがあるのですが,冬場は午後便しかないとか,そういうところが多かったのでここにしました。
ロンドン・ヴィクトリア駅のバス停No.8からバスが8:30から出ます。帰りは14:30頃,と言う弾丸ツアーですけど,帰ってきてからまた別のところに行けるし,便利だと思います。実際,この日はツアーから帰ってきて,ナショナル・ギャラリーへ行って時間が有効活用できました。
ただ,現地滞在時間が2時間ほどなので,これが十分かどうか......iruchan的にはもう1時間あれば,と思いました。
現地のビジターセンターで昼食を食べられますが,2時間では結構厳しいです。
ま,それにしても長年憧れていた,ストーンヘンジへ,1万円ほどで行ける,と言うのは魅力的です。
イタリア系の運転手さんの陽気で楽しいガイドもとてもよかったです。
ビジターセンターはストーンヘンジから2kmほど離れたところにあり,そこから無料バスでストーンヘンジへ行きます。ロンドンからのツアーバスはビジターセンターの駐車場までです。
周囲はのどかな田園風景。土産物屋がずらりと並んでしまう,どこかの国とは違います。羊が寒い中,寝たり,草を食んだりしていました。かなり寒いんですけどね~。羊たちは大丈夫なようです。
ストーンヘンジの周辺は遺跡や,墓地が広がっているため,限られた道路以外は歩くことも,ビルを建てることもできないし,もちろん,そういう理由とは別に,野放図な開発を制限して観光地とはせず,ありのままの姿を保存しよう,としているところはさすがです。
明治時代の鉄道の貴重な遺跡が出てきたからと言っても,その上に巨大ビルをぶっ建てて一私企業が金儲けしようという国とは民度が違いますね.....。むしろ,その遺跡を保存して,海外からたくさんの観光客に来てもらった方が国全体としては儲かる,と言う発想すら全くないようです。