SSブログ

6G-A4シングルパワーアンプの製作~その1・さよならタンゴトランス~ [オーディオ]

2016年6月6日の日記

先日,東京の三栄無線がキットとして販売していた,6BX7シングルのSA-523型パワーアンプを修理しました。3極管らしい,低音の豊かな音楽性の高いアンプでした。

6BX7自体は,もとはTVの垂直発振,偏向用の真空管で,オーディオ用ではありません。でも,内部抵抗が1.4kΩと低く,プレート損失も10Wと,オーディオ用としての素質も十分であるため,これをオーディオ用にしたのが東芝の6G-A4です。特に,6BX7は先日の三栄無線のキットの音を聴いてもそれなりに音もよく,管形も小さく,シングルで3W,プッシュプルで10Wくらいは見込めるので,オーディオ用として適していますが,残念ながら双3極管のため,使いづらい面があるのでこれを独立して単独の3極出力管としたものです。

特に,6BX7はプレート損失は先にも書いた通り,10Wありますが,2ユニット同時だと合計で12Wに制限されてしまうため,シングルでは出力は2Wほどが限度です。これを単独で10W使えればもっと出力が取れるはずです。

6BX7はもとはTV用であるため,各社の規格表を見てもオーディオ用としての規格は記載されていません。しかし,誠文堂が出していた,"実用真空管ハンドブック" に記載がありましたので,引用します。たくさん真空管やエレクトロニクスの本を買いましたけど,今までで一番役に立った本かもしれません。数年前まで復刻版が出ていましたが,すでに在庫切れのようです。

実用真空管ハンドブック.jpg 

   よく読んだよな~。復刻版じゃなく,オリジナルです。私のは1978年発行のものです。

実用真空管ハンドブック1.jpg 6BX7の動作例です。 

Ep  Ip  Ec  Po   RL  RK

6BX7 250V 40mA -18.2V 2.25W 3.8kΩ 450Ω

6G-A4 250V 40~49mA -14.4V 2.2W 5kΩ 360Ω

280V 47~57mA -17.8V 3.2W 5kΩ 380Ω 

と言う具合で,Ep=250Vでの動作はほとんど同じですが,すでにプレート損失は10Wに達するため,6BX7ではEp=280Vでの動作は不可です。一方,6G-A4だと280Vでの動作も可能で,そのとき3.2W取れる,と言うことがわかります。6G-A4だと許容プレート損失は13Wなのでこういうことができるわけです。ちなみにプッシュプルだとEp=350Vで出力10Wが得られます。

三栄無線SA-523型アンプ4.jpg三栄無線SA-523型回路図

もっとも,前回の三栄無線のSA-523型アンプの回路と各部電圧を▲に示しますが,プレート電圧は250Vで,ほぼ,上記の規格表の通りの動作です。ちなみに,真空管で各電極の電圧は対カソードの電圧で表します。規格表のEpというのも対カソード電圧です。実際にプレートに供給する電圧はカソードバイアスの場合は,バイアス電圧分だけ上乗せする必要があります。

プレート損失は両ch.とも10Wギリギリで,規格表の合計で12Wというのはオーバーしてしまっています。でも,実際にはプレートが赤熱したりすることもなく,無事に動作します。このアンプ自体,私が使い始めてからでも10年は経っているのですが,問題なく動いているので,球としてはそれほど問題ではないようです。 

と言う次第で,6G-A46BX7の片割れ? なわけですが,これは真空管の時代にはよくあったことで,特に戦後,真空管産業が斜陽化すると新規に設計するとコストもかかるため,既存の真空管の電極や製造用の金型を流用することは多かったようです。

実際,この球は電極の数以外はほとんど同じものです。実はiruchanは東芝製の6BX76G-A4も両方持っています。

東芝6G-A4,6BX7GT-1.jpg どちらも全く電極は同じものです

    東芝製6G-A4     6BX7

ただ,それにしても戦後の新型球として,NECの6R-A850C-A10はラックスや山水など,大手メーカの顧客があったのに比べ,東芝の6G-A4はセットに使われていた記憶がありません。と言う次第で,純粋にアマチュア向けに製造された訳なのですが,大して売れもしないアマチュア向け真空管を製造してくれたとは本当に驚きです。

東芝6G-A4.jpg 東芝6BX7GT.jpg 

   東芝製6G-A4(箱が古~~ッ!)        同じく東芝製6BX7 

実は,6G-A4の入手はとても苦労しました。最初に私が作ったアンプは6G-B8のシングルでしたが,あまり音がよくなかったので,次は3極管を,と考えて6G-A4を入手したいと思っていました。ところが北陸の田舎じゃ入手不可で,名古屋や大阪の電気街を探しましたが見つからず,あきらめていました。

ところが,その頃,秋葉原にはたくさんあったようなんですね~。とうに名古屋や大阪じゃ姿を消していたんですけど。結局,高校生のときに東京のお店の通販で1ペア入手したのが最初で,あと何本か入手することができました。

といって,実際にアンプを作っているのは今なんですよね~。何年経ってんだよ........(^^;)。

というのはなかなか気に入ったシャシーやトランスが手に入らなかったからで,特にシャシーはなかなかいいものがなくて探していました。

最近,名古屋の小坂井電子で,昔,伊藤喜多男氏が愛用されていたような弁当箱シャシーを見つけてこれで作ってみようと思った次第です。本当に小さくて,こういった小型の3極管シングルアンプにぴったりだと思います。

また,出力トランスもタンゴのH-5Sにすることにしました。 すでにタンゴさんも2013年9月に廃業してしまわれましたので,私も最後の1台です。

ご存じの通り,タンゴの廃業は2回目で,最初は2000年10月のことで,創業者の2代目であった平田富弥氏が廃業を決断されたものです。 すでにオーディオの黄金時代は終わり,アンプを自作する人も大幅に減ったのでやむを得ない決断だったと思います。

iruchanもびっくりして,このときは慌てて小遣いはたいて将来必要なアンプのトランスを買った記憶があります。H-5Sもそのときの1台です。幸い,電源用のPH-100Sも同時に入手できたので,ぜひこれで6G-A4シングルのアンプを作ろうと考えていました。

この最中に,もと平田電機の有志の皆さんがタンゴトランスの製造を引き継ぐ,と言う話が出てきてほっと一安心したことを思い出します。この後,有限会社ISOができてタンゴのトランスが復活したのですが,とうとう3年前,ISOさんも廃業されることとなりました。それこそ,iruchanは中学時代以来,ずっとタンゴのトランスを使っていたので本当に残念です。感謝の念を込めてこれらの貴重なトランスを使ってアンプを作りたいと思います。 

Tango PH-100S, H-5S.jpg 使用したトランス

Tango H-5S.jpg タンゴH-5S

Tango H-5S-1.jpg プレートに6G-A4用とあります。

H-5Sにはプレートがあり,6BM86G-A46BQ56V6用ですね。まさにぴったりだと思います。 6V6もとてもいい音のする球ですね。

さて,今回はこれらのトランスを使ってアンプを作りたいと思います。次回は回路の設計です。 


nice!(2)  コメント(0) 

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント