KATO ED19の整備~常点灯化対応,反対側前照灯点灯防止~ [模型]
2015年11月8日の日記
今日は久しぶりに "スナバ回路" ネタです。どうも長期間,空いてしまい申し訳ありませんでした。
KATOのED19を改造します。模型自体は今年3月の発売です。
実車は1926年の東京~国府津間電化に際して米BaldwinとWestinghouseで6両製造された6010形ですが,1928年には称号規程の改正によりED53形に改められています。形式からもわかるとおり,もとは旅客用です。
ただ,東海道線用としては出力840kWと容量が小さく,結局,1937年,貨物用に改造の上,3~6はED19形として電化されたばかりの仙山線へ転属します。 すでに旅客用はEF53が登場していましたし,貨物用としてもEF10が登場していたので不要になったのでしょう。戦前はもちろん直流電化しかなかったのですが,仙山線は途中に面白山トンネルという長大トンネルがあり,蒸機では重量貨物の牽引は難しいため,トンネル前後の区間のみ電化されました。上越線の清水トンネルもそうですね。結局,日本では戦前の電化区間というのは東海道線や都市部の通勤電車区間をのぞけば電化区間というのはこういった山岳トンネルに限られました。
残った1と2も1941年にはED19形へ改造の上,甲府へ転属となり,全車ED19形となりました。
戦後は全機,飯田線に集結し,ED62に置き換えられるまで活躍しました。現在,1号機が長野県箕輪町の郷土博物館に美しい状態で保存されています。
車体や台車など機械部分はBaldwinで,モータや制御器などの電気品がWestinghouseですが,GE製のED14と異なり, 同じ会社の組み合わせのED10と同じく,丸みを帯びた美しい形状はとても好きです。
さて,模型を改造します。例によって,模型の前照灯がLED化されて久しいですが,モータの高性能化もあいまって,停止中に前照灯が点灯せず,動き出してから点灯するので,どうにも気に入りません。 まあ,昔の電球式のばあいはもとからこうでしたし,電球だと暗いので,そんなに気にならなかったのですが,LEDになると明るいので,気になります。
もっとも,この場合,コントローラ(パワーパック)はPWM(パルス)式のものでないとダメで,昔ながらのレオスタット式やトラコンでは常点灯には対応しませんのでご注意ください。
そのため,停止中にコントローラのツマミをほんの少し動かしてモータが回転する前に前照灯を点灯するように改造したいのですが,これが意外に難しく,単純に基板上に乗っかっているコンデンサを撤去する,と言う方法だけでは走行中に反対側の前照灯のLEDがチラチラと点灯するという困った問題が生じます。 これは,モータのインダクタンス分が邪魔をして,PWM式コントローラがパルスをoffにした瞬間,逆向きの電圧が発生するからです。電球の場合は熱的な時定数が大きいので,逆起電流により点灯することはないのですが,LEDはこの瞬間的な電流でも点灯してしまうのが問題です。
この対策として,私は交流回路用のC-Rスナバ回路の挿入を思いつき,うまくいっています。スナバ回路の原理については私のこの記事をご覧ください。
スナバ回路とは,モータやリレーなど,インダクタンス分を含む回路のon,offをする場合に逆起電力を抑えるためのもので,Nゲージでも有効であることがわかりました。
回路としてはコンデンサと抵抗を直列にしたものをモータにパラに入れればよく,KATOのものの場合,最近はC=0.1μF,R=22Ωとしています。なお,スナバ回路も損失を生じますので,抵抗の値は小さい方が効果が高いのですが,損失を考えるともっと大きい方がよいので,これより小さくしないでください。
さて,今回のED19をまずはばらします。
ところが......。
今回のED19はボディが小さいのが災いし,なかなかボディが外せません。
結局,集電板が邪魔をしているのでこれをピンセットでずらせば,そこからつまようじを▲のように差し込んで,ガラスについているツメを外します。
普通,KATOの電機やディーゼルは前後の前照灯を一体にした基板1枚ですが,今回のED19はTOMIXみたいに前後に基板が分かれていました。このため,基板が小さく,工作は厄介です。
なお,スナバ回路はどちらかの基板に1カ所,取り付ければよく,両方の基板に設置する必要はありません。
まずは常点灯にならない原因である,コンデンサを撤去します。このコンデンサは2つの基板の両方とも撤去してください。このコンデンサはLEDの電流制限抵抗(▲の写真では560Ω)とローパスフィルタを構成するため,PWM式パワーパックを使用してもデューティが上がってこないとLEDが点灯しません。このとき,すでにモータは回転してしまっています。
なお,写真中,←→で示したところに導通があります。特に,上側の矢印のランドにご注意ください。スナバ回路はこの2つの矢印の間を結ぶように挿入します。
残念ながら,最近のチップ部品は本当に小さくなり,こういう回路に使うと便利なように見えて不便です。もう少し大きい方がうまく基板のランドを利用できて便利です。これだとあまりに小さくてランドに届かず,リード線を付け足さないといけません。
何とかハンダ付けしたのですが,これはダメで,ボディに差し込んだら導通不良になり,前照灯がついたり消えたりしてしまいました。基板をボディに差し込む部分にハンダが流れ込んだためのようです。
しかたないので抵抗はアキシャルリードタイプに変更しました。この前,北海道の梅沢無線さんで買ったものです。昔なら1/8Wとか,1/16Wなどのサイズで,非常に小さなものです。秋葉でも売られています。
基板とレールの導通箇所がありますのでハンダ付けする部分には十分ご注意ください。あくまでもスナバ回路がモータの端子にパラに入るようにします。
なお,こうやってもコンデンサがボディ内部の遮光板? と干渉しましたので,▲の写真のように遮光板の内部を一部,ルータで削りました。
一応,配線ができたらレールに載せてテストします。今回,リードタイプの抵抗が100Ωしかなかったので,コンデンサの容量は少しUPしないとダメです。従来通り,0.1μFのままだと反対側のLEDが多少点灯しました。そこで,コンデンサは1μFとしたら,完全に消えました。
ようやくこれでスナバ回路の設置が完了しました。おかげで停止中にも前照灯が点灯するようになり,ご機嫌です。カプラーもナックルカプラーに交換し,ナンバーを貼り付けて整備完了です。本当に小さな古典電機が手に入ってうれしいです。
スナバ回路 この記事もブックマークにキープしておかなくては・・・・(^^;
by トータン (2015-11-09 07:39)
トータンさん,いつもご覧いただきありがとうございます。
今回のは手強かったです。チップの抵抗とコンデンサでうまくいけば楽だったのですが.....。KATOもTOMIXみたいに今後,前後の基板を別にするのでしょうか。そうなるとスペースがなくなり,工作が面倒です。
今まで使わなかった,アキシャルリードタイプのコンデンサを買ってこようと思っています。
by iruchan (2015-11-09 20:28)
おはようございます。
入線おめでとうございます。
ED19ほんと狭いですね~♪
なかなか苦労しました。
やっぱメーカー製コントローラだからでしょうか?
小生の場合、1μじゃ点灯します。
結局10μで落ち着いている状態です。
考えても分からないのでそのままです(^^;)
by ぼち吉鉄道 (2015-11-10 10:26)
ぽち吉鉄道さん,どうもいつもご覧頂きありがとうございます。
本当にED19は小さくて困ります。でも小さい機関車ほど好きなので....。
ちょっとスナバコンデンサが10μFというのは大きすぎますね~。サイズも大きくなるので大変です。
スナバ回路は抵抗を小さくする方が効果が大きいので,抵抗を20Ωくらいまで小さくしてみてください。コンデンサは1μF程度だと思います。
あと,部品が小さいので,ハンダがうまく載っていなくて,中のヤニでくっついているだけというてんぷらハンダになっている可能性もあり,私も常に導通を見ています。モータの端子からスナバコンデンサの両端まで,片側はスナバ抵抗を介して,もう一方はそのまま,それぞれ導通しているかチェックが必要です。
また,コントローラの出力回路および周波数にも依存するようです。
市販のコントローラの場合,PICなどのマイコンを使っていることが多いと思いますが,その場合,出力回路はMOS-FETのドレイン出力となっていると思います。
http://iruchan.blog.so-net.ne.jp/2015-02-09で調べていますが,MOS-FETのドレイン出力,と言うのが一番,逆起電力が大きくなるようです。ぽち吉鉄道さんのもこのような回路になっていないでしょうか。
このばあい,コントローラ内部にスナバ回路をつける,というのも効果があります。
私はTomixの5001パワーユニットをPWM化したときに設置しています。
http://iruchan.blog.so-net.ne.jp/2015-02-01-1
上記のブログのように,コントローラの出力端子に1μF+10Ωくらいのスナバ回路をつけてみてください。
ここだとサイズが大きくてもよいので,思い切って10Ω,1Wくらいの抵抗と1μFのフィルムコンをつけてもよいと思います。
お試しください。
by iruchan (2015-11-10 14:01)