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欲シガリマセン,勝ツマデハ。~マイクロエースEF13の整備~ [模型]

2014年11月15日の日記

EF13-10.jpg 竣工後の姿です

以前,ワールド工芸のEF13を製作しました。戦時中の凸型電機としてあまりにも有名なこの機関車は物資窮乏の折からみすぼらしい姿で登場し,鉄道車両の中のゲテものとされていますが,凸型電機でこれほど大型のものはほかにありませんし, スイスのクロコダイルことCe6/8型に似て模型としてはなかなか格好よく,製作して所有しています。それに,戦時中の苦労を偲ぶこともまた,大変大切なことであると思います。

1944年,太平洋戦争の激化とともに貨物需要が急増し,また関門トンネルの開通に伴って電気機関車が不足したため,当時の主力電気機関車であったEF12を基本として製造された機関車です。性能的にはEF12同等ということで,モータ出力も同じです。EF12を基本とした,と言うよりはむしろ,EF12の簡略版ととらえた方がよさそうです。

時局の折から不要不急とされた設備をごっそりこそぎ落とし,ボディも普通の箱形とせず,凸型として鋼材を減らしています。肉厚もt2.3mmからt1.6mmにして薄くしています。そのほか,高速度遮断器を省略し,主制御器も弱め界磁段を廃止したり,主ノッチ数もEF12の25段から18段に減らしています。主回路などの電線径も200mm2から100mm2に細くして銅を節約しています。元空気だめも普通は4個であるのに3個に減らしていますし,普通2台搭載するMGも1台にしたり,省略をしています。このため車体重量が不足し,牽引定数が小さくなってしまうため,コンクリートで死重を積んでいるのは有名です。また,車体重量が小さいのと相まってノッチ数が少ないので空転を抑えるため,砂箱が大型になっているのも特長です。

また,パンタグラフは電車用のPS13が採用されているのは有名です。それにしても普通の機関車のパンタグラフは空気上昇式で,圧縮空気がないと上昇しませんが,PS13は電車用のため,ばね上昇式です。フックを外すといきなり上昇してしまうので,機関区では取り扱いに困ったでしょう。普通の機関車の場合は竹竿の端に小さな十字架のような金具をつけたものを使い,圧縮空気ができるまでベビコンを動作させるために手動でパンタグラフを上昇させていました。 もっとも,電気機関車といっても交流のものや新幹線はばね上昇式です。手動で上げるなんてことやると感電しちゃいますからね。ちなみに欧州の高速鉄道は空気上昇式で,パンタの枠内やスリ板内に空気配管を通し,パンタやスリ板が破損したら自動的に下降するようになっています。

EF13は戦時中の設計ですが,実際に戦時中に製造されたのは1~6,11の7両のみです。番号が飛んでいるのは1~10が日立製で,11~15を受注した川車の11号機が先に落成したためのようです。ところが川崎車輌は工場が空襲に遭い,その後の製造ができなくなり,EF13の製造は11号のみに終わっています。そこで,一説によると東芝が受注した32~35号機を12~15として納入したらしいです。EF13が31両で終わっているのもそのせいでしょう。でも,東芝さん,そのときちゃんと会計処理しました?

終戦直後は戦時中よりもっとひどい物資不足に陥ったわけですが,新規に設計し直すよりも従前の設計を踏襲した機種を製造する方が都合がよいため,全部で31両が製造されています。

模型の方はワールド工芸のほか,マイクロエースが今年8月に発売しています。登場時のものと上越型,また,EF58旧型とボディを交換して普通の箱形車体になったバージョンの3種類が発売されました。うっかり予約するのを忘れ,買いそびれましたが,最近,joshin webを見たら在庫ありになっていて,注文しました。

私が組み立てたワールド工芸のものは戦後,しばらく経ってからの形態になっているし,ボンネット先端に前照灯が移動した上越型も魅力なのですが, 戦時中の登場時のものを買いました。

さて,いつもの通り前照灯回路の変更により常点灯対応化工事と,ナックルカプラーへの変更を行います。

ところが,なんと買ったままの状態でレールに載せてみると常点灯に対応? しているようで,停車中にも前照灯が点灯します。前照灯が点灯した後,コントローラのツマミをかなり回さないと動力が動きません。ある意味,動力の性能が低いので常点灯に対応してしまうのですね。

これならいつものスナバ回路の設置などの常点灯化改造は不要な感じです。しかし,よく見てみると,停車中や低速での走行中は反対側の前照灯がほぼ全開,という感じで点灯してしまいます。これじゃだめですね......。

EF13-3.jpg やっぱ,あかん......。 

右向きに走行中の写真です。反対側の前照灯が点灯してしまうのは,モータのインダクタンス分で逆起電圧が発生しているためで,この電圧を吸収するため,LEDにパラにコンデンサが入っていいて,普通ならこうならないはずですがうまくいっていないようです。と言うことでやはりスナバ回路を挿入することにしました。

と言う次第で,まずはボディを外そうとしますが,非常に厄介でした。どうにもボディ下部から固定しているツメを探してみますが,見つかりません。つまようじを差し込んでボディを少し広げようとしてもボディが硬くて無理です。実は,ボディはダイカストでできてて,単にボディは被せてあるだけ,なのです。 となるとそのままそうっと上の方にずらしてばらすしかありません。ドライバなどを使って無理にやるとボディが金属製なので塗膜がはがれますのでご注意ください。しかし,かなり難儀しました。ようやくボディを片方だけ少しずらすことができ,後は力仕事となりました。

簡単に済ますのなら動力台車の1個を外して集電用の銅板が出てきますのでこれにCとRをハンダ付けしてもよかったと思います。 

EF13-1.jpg 矢印の方向に少しずつずらします。

EF13-2.jpg 

   ボディ内部の様子。キャブはダイカストです。

キャブ部分がダイカストでできているとは思いもしませんでした。前後のボンネット部分はABS樹脂のようです。 

EF13-5.jpg 前照灯基板(上面)

LEDはチップタイプの電球色のものを使っていて,輝度も高いですが,ボンネットの上に前照灯がついている上越型はオレンジ色で,とても暗いようです。私は上越型を持っていませんが,みなさん暗いと書いていますね。

普通は,この基板についているコンデンサ(C1,C2)を外すことにより停車中にも点灯する常点灯に対応できますが,今回はもとから常点灯に対応? しているのでコンデンサは撤去しませんでした。しかし,この場合でも反対方向の前照灯が点灯しますので,その対策としてスナバ回路の装着が必要です。でも,この基板の上面には設置できそうにありません。 

EF13-4.jpg 基板の裏側(下面)

基板の裏側にモータ用のランドと呼ばれる銅箔部分がありますので,そこにCとRを直列にしたものをハンダ付けしました。 今回,Cはいつも通り0.1μFですが,Rは68Ωにしました。前回のKATOのEF10などは22Ωでしたが,これはモータの直列抵抗の違いによるものです。今回,EF13のモータを実測したところ,直列抵抗は79Ωでしたので,これに近い値と言うことで68Ωにしています。今回,スナバ回路のRをKATOと同じく22Ωにしたら効果はあまりありませんでした。やはりモータの直列抵抗に近い値にする必要があるようです。なお,基板にわざわざ+,-とシルク印刷されていますが,CとRはどちら側につけても構いません。

EF13-7.jpg スナバ回路設置後の状態

完全にとはいきませんでしたが,ほぼ反対側の前照灯は点灯しなくなりました。▲の写真と比べてみてください。

EF13-8.jpg ナックルカプラーの取りつけ状態

マイクロエースの機関車にナックルカプラーを取りつけるのは容易で,ナックルカプラーの基部をでカッターで少し細くしてやるとカプラーポケットにはまるようになります。 

EF13-9.jpg こんな感じです。

デッキにあるT形の突起は手ブレーキで,これも第1エンド側のみ設置されています。これを操作する人が乗るデッキの床も木製です。ほかに必要な手すり類も徹底的に省略されています。なお,このデッキは第1エンド側のみで,第2エンド側は床が設けられていないのが定位です。▼の写真を見ると第2エンド側にもデッキ床面がありますね.....。

EF13-12.jpg 

側面のエアタンクは片方は1個のみです。反対側は2個ついています。単なる板車輪になっている先輪は目立つので何とかスポーク車輪にしたいと思います。

EF13-11.jpg 正面。ナンバーは白ペンキ塗りでした。でも18番って!? 

戦時中に完成したのは先に書いたとおり,1~6,11の7両のみなので,これらの番号なら納得できますが,"戦時型・登場時PS13" っていうのに18番とは不思議です。EF13 18だと1946年7月の落成です。まあ,戦後も物資不足がひどく,戦時中に落成した機関車と同じか,もっとひどい状態だったかもしれないので,この番号でもいいのかもしれませんが。

でも,なかなかディテールよくできていますし,ぶどう色1号のボディもなかなかいい色です。動力もちょっと電圧高めのようですが,スムーズに動きます。前照灯も電球色になっていて,なかなかいい感じです。この前出たばかりのKATOのEF10と重連して運転会でもして戦時中の苦労を偲ぶことにしませう。


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ぼち吉鉄道

iruchan様
はじめまして、こんばんわ。
ぼち吉鉄道と申します。
いつも見識の深い記事をありがとうございます。
以前から、参考にさせていただいていた記事があり、一度お礼をと思っていました。
特に加減速コントローラーとスナバ回路は勉強になりました。
加減速回路は、ほぼ真似をして作製しました。
が、発熱があんなにすごいとは思わずヒートシンクなしで制作しまして…。
とても使えないものになってしまいましたが…。
それにしても、電子回路の詳しさには感服させられます。
ラジオもさることながら、プラズマテレビのコンデンサまでとはびっくりしています。
小生宅も、37インチですが同じ機種がありいずれ参考にしたいと思います。
少しご確認したいのですが、スナバ回路での抵抗を停止時で測定しその値を回路に使用されていますが、逆起電力の吸収であれは、回転時の抵抗でないと大きくなると思うのですが問題ないのでしょうか?
それと、スナバの抵抗が低いのでチップ抵抗だとW数が合わないと以前の記事にありましたが、問題ありまさんか?
突然で恐縮ですが、ご教授ください。
よろしくお願いします。
by ぼち吉鉄道 (2014-11-17 18:51) 

iruchan

ぽち吉鉄道さん,どうもいつもご覧いただきありがとうございます。

自動加減速コントローラはHOゲージ用に作って,最大3Aで作っています。Nゲージだとせいぜい0.1Aくらいですので,ほとんど熱くならないと思います。HOゲージでお使いでしょうか。この場合も多くても1Aくらいだと思いますのでほとんど熱くならないと思います。ただ,ヒートシンクなしだと熱がたまって意外に熱くなることがあるので,小さなもので結構ですのでヒートシンクはつけてください。特に自動加減速コントローラはPWM式じゃないので,損失が大きいです。

日立のプラズマTVは必ずこうなるようです。もっとも自前で修理するのは危険ですので,できればサービスの人にお任せください。

また,スナバ回路については詳しい設計法が岡谷電機のHPに出ています。モータの直列抵抗は回転時でも変わりませんので(逆起電圧のため,外から見たら見かけ上,小さくなりますが,定数としては変わらない),停止しているときの値で結構です。

それよりもご使用になっているコントローラの周波数やモータのばらつきなどで変わりますのでいろいろカットアンドトライで決めないといけないようです。

実はスナバ回路の抵抗の損失は意外に大きく,特に私のコントローラのように周波数が高いと大きくなり,0.5W位になるので1/4W型の抵抗だとオーバーしてしまいますが,問題ないと思います。1/2W型だと形状が大きくなってしまいますので今のところ放置しています。
by iruchan (2014-11-17 20:32) 

ぼち吉鉄道

iruchan様
こんばんわ。
回答ありがとうございます。

スナバ回路もう少し勉強します。
今後ともよろしくお願いいたします。
by ぼち吉鉄道 (2014-11-18 18:05) 

iruchan

こんばんは。iruchanです。いつも私のブログをご覧いただきありがとうございます。

残念ながらKATO派なのでTOMIXのものでスナバ回路を試したことがありません。いずれ実験してみたいと思います。モータのインダクタンスがメーカにより異なるので,カットアンドトライが必要です。

PWM式の自動加減速コントローラ,私も考えていますが,まだ自作のものは通常のシリーズレギュレータ式です。うまく動作しましたが,3Aの大容量で作ったのがたたり,図体が大きいので最近はもっぱらTOMIXの5001コントローラをPWM化したものを使っています。

PWMの自動加減速コントローラの完成を楽しみにしております。

私のPWM式コントローラや自動加減速コントローラを参考にしていただいているようですので大変申し訳ありませんが下記の点,気になりましたので,追加・変更するとよいと思います。

まず,出力のMOS-FETにフリーホイーリングダイオードが必要です。モータからの逆帰電流を電源に返すためのものでMOS-FETと逆向きにつけます。すなわちMOS-FETのドレインにダイオードのカソードを,ソースにアノードをハンダ付けします。こうしないとうまくMOS-FETがOFFできません。

また,フォトカプラはTLP621は鈍足で,1kHzの方形波すら通りません。私も鉄コレ式制御器のブースターを作ったときに困りました。出力にフォトTrではなく,フォトDiを使ったものが必要で,AVAGOなどのフォトカプラを使ってください。

チョッピング周波数を高くするとうまく動作しない,というのはこの2つが原因だと思います。

詳しくは下記を参考になさってください。

http://iruchan.blog.so-net.ne.jp/2011-01-16
by iruchan (2014-11-18 20:49) 

ぼち吉鉄道

iruchan様

再度、回答及びチェックありがとうございます。
ダイオードは、回路作りながら抜けていることに気付いてました(^^;
完成時に、まとめて修正したいと思います。
フォトカプラですが、小生の回路での使用部分はDC制御部分だと思いますが、影響を受けるのでしょうか?
オペアンプ部分で、PWM信号と比較したものを出力するタイプの回路と認識しています。
それにしても、教えていただいたフォトダイオード…なかなか高価ですね。
小生ごときの技術力に合うのか、採用を躊躇ってしまう価格でした。
by ぼち吉鉄道 (2014-11-19 19:51) 

iruchan

ダイオードはなくてもよいのですが高周波になるほどMOS-FETが電流を切りにくくなるので入れた方がよいです。

いまいちよくわからないのですが,フォトカプラについては,555の三角波出力が1/3Vcc以上の電圧になるのでレベルシフトの意味で入れておられるのだと思います。ご教示いただいたとおり,ここはDC電圧の比較だけのようですので,低速のものでよいでしょう。

完成するのを期待しております。
by iruchan (2014-11-19 21:25) 

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