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前後進ワンハンドルコントローラ(パワーパック)の製作~その1~ [模型]

2012年12月23日の日記

試運転.jpg

   試運転中。KATOのDD51でテストしています。快適です。

いよいよ今年も終わりです。やっぱ12月は "第九" ですよねぇ~。ということでフルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団の1951年の名録音を聞きながらブログを書いています。超名盤と言うことで有名ですが,さすがに1951年ではまだEMIがテープ録音を開始してから間もない時期の録音のためか,あまり音がよくないことでも知られています。その意味でDECCAが録音してくれていれば,と思う人も多いと思いますが,最近,SACDになり,非常に音もよくなりました。

また,単なる偶然か,FMに切り替えたらまた "第九" をやっています。あれっ,という感じですが,12月なのでこんなこともあるのかもしれません。でも,以前,CDでドボルザークのチェロ協奏曲を聴いてて,FMに替えたらこっちでも同じ曲をやっていて驚いたことがあります。こんなこともあるんですね。

でも,今日のFMの "第九" はフルトヴェングラーを聴いたあとじゃ聴くに堪えない。退屈~っ!。誰の演奏? と思ったらノーリントン指揮N響だって。そりゃ退屈だわ~~。

さて,今日のネタは久しぶりに鉄道模型のコントローラ(パワーパック)です。職場で世話になっている人から頼まれました。なんでも,昔使っていたTomixの5001 Power Unitというコントローラみたいのがほしい,と言うことです。私はもっと前の,黄色い金属製のケースに入ったTomy Nine Scaleと書いた香港Bachmann製のコントローラでした(古ッ!)。これ,結構,レバー式のレオスタットがなかなかいいフィーリングで,今も手許にありますが,いいパワーパックだったと思います。確か,整流はセレンのはずです。もっとも,レオスタットと言っても,ベーク板にニクロム線を巻いただけの粗末なものでしたけど。すぐに,KATOも似たような青いパワーパックを出していますが,KATOのはこのレオスタットが堅くて運転しにくく,Tomixの方がいいや,と思いました。もう30年以上前の話ですね......。

まあ,5001ならまだ中古屋さんで手に入りますので,オリジナルを入手したいのならそんなにむずかしいものじゃないと思いますが,何しろ低速で運転したい,と言うことなので,やはりPWM式しかありません。5001はレオスタット式ですから,単なる電流制限形ですね。一般の抵抗制御の直流電車と原理的には同じです。

ただ,このTomixの5001というコントローラは珍しくひとつのつまみで前後進と速度制御ができるようになっています。こんなコントローラは今じゃ見かけませんね。この点からいまだに人気があるコントローラのようです。そういえば,模型屋さんのテスト用にいまだによく使われているのを見かけます。前後進を切り換えるのにつまみを逆に回すだけ,というのはテスト用に向いていますね

また,5001みたいなコントローラだと逆転はつまみを逆に回すだけで,しかも逆転するときに,一度,速度が0になりますから,子供向きでもありますね。うちの愚息(7歳)もそうですけど,フルスピードで走らせておいて,逆転SWを扱うので,「お客さんがブッ飛ぶだろ!」と何度も叱っていますが,やっぱ子供は自分もそうでしたけど,こういう遊び方をするものですしね。

ということで,PWM式にしたTomix 5001と同じ前後進をワンハンドルにしたコントローラを作ろうと思います。

オリジナルのTomix 5001の回路については,大体見当がつきます。2連式ボリウムを使って電位差を取り出すようになっているはずです。実際,調べてみるとぐぅーさんのwebに記載がありました。巻線式の2連ボリウムを使っていて,このように接続すると2本のレールで+12Vから-12Vにスムーズに変化しますね。でも,抵抗制御なので模型は急発進,急停止となるのはやむを得ません。抵抗制御の場合は,実物の電車でもそうですけどモータの特性や車両重量などにあわせて適切な抵抗値としないといけません。模型の場合も同じで,モータの特性が違うとスピードも異なります。この5001というコントローラは古い製品なので,おそらく抵抗値が小さすぎ,電流の大きな昔のNゲージ車両なら割にスムーズに動くのかもしれませんが,最近の車両や鉄コレだとラピッドスタートになると思います。PWM式にできれば最高ですね。

Tomix 5001-1.jpg

      Tomix 5001の回路(ぐぅーさんのご厚意による)

といって,これをPWMにしようなどと考えると意外に難問です。すぐに,以前作った,101系運転台型コントローラーのNゲージ用電流ブースタみたいにドライバ部分はHブリッジドライバ式にすれば前後進できるな,と思いましたが,ブリッジの制御回路はむずかしいです。簡単には思いつきませんでした。なんか,どう考えても逆転SWが必要な感じです。

でも,ようやく回路を思いつきました。コンパレータを2つ使い,ボリウムの基準電圧と比較して回転角の右半分,左半分でHブリッジのMOS-FETのそれぞれの組合せをonにします。やはり2連式ボリウムが必要ですし,コンパレータが1個追加になりますが,逆転SWは必要ありません。コンパレータもいつも使っているナショセミのLM393は2個内蔵タイプなので,基板も大きくなりません。

ということで,いきなり回路です。じゃ~~ん!

前後進ワンハンドルパワーパック4.jpgクリックすると拡大します

タイマIC555でいつもどおり,発振させます。周波数は20kHzにしました。これなら耳に聞こえません。300Hzにすると201系と同じで,以前作ったPWM式コントローラみたいに201系そっくりに走りますが,今回は準備工事? のみにしました。

555の#6ピンにコンデンサのディスチャージ電圧が出ていて,三角波になっています。これを利用し,LM393コンパレータで基準電圧と比較してPWM波を作ります。2連ボリウムを使い,片方がonする電圧の時はもう一方はoffになるようにしておけば,1つのつまみで前後進制御できますね。なお,この2連ボリウムはプリアンプのバランスコントロールとおなじく,互いに逆向きの配線となりますのでご注意下さい。端子番号を書いておきましたので,間違えないようにして下さい。ボリウムの端子は反対側(つまみじゃない方)から見て,左から1,2,3の順番です。カーブはM-Nカーブのものが入手できればベストですが,最近はむずかしいかもしれません。しかたないので,通常のBカーブ2連を使いましたが無理があるようです。

その後,HブリッジドライバICの東芝MP4212に入ります。2SC1815はこのゲートアンプです。MP4212はよくできたモータ制御用Hブリッジドライバで,電流が5Aまで使えるのはもちろん,何よりよいのはブリッジの上半分がP ch. MOS-FETで構成されていることで,MP4410など最近のHブリッジドライバのように上下ともN ch.になっているものが多い中,これはなかなか具合がよいです。上側もN ch.だとゲートドライブ電圧が高くなり,制御部に別の電源を用意しないといけませんから,MP4212は便利です。残念ながらMP4212は製造中止になっているようで,すでに秋葉原などでは入手がむずかしくなってきています。MP4207が互換品ですので,こちらが入手できれば,こちらでもOKです。MP4212は鉄道模型だけじゃなく,ロボット制御などにも使えるので,非常にアマチュアにとってありがたいICですが,N ch.の素子ばかりのHブリッジドライバICばかりとなりました。この場合,制御部用にチャージポンプを使った昇圧回路を内蔵し,制御部用電源としているものもあります。こんなことするくらいなら,ドライバ部にP ch.素子を使った方がいいと思うのですけど。やはり "悪貨は良貨を駆逐する" というグレシャムの法則は半導体にも当てはまるのでしょうか。

また,TA7291Pなど,素子にTrを使ったものもあり,よく使われるICですがこれは制御回路も一緒になっていて,PWM制御には使えません。単にモータをon,offするだけ,と言う機能で,速度制御をするようにはなっていません。PWM制御できるICは限られますので,ご注意下さい。 個人的にはMOS-FETはあまり好きじゃないので,バイポーラTrでHブリッジを構成したICがいいのですが,どれも制御回路つきで,Hブリッジのみと言うのはないようです。

Hブリッジドライバ.jpg MP4212の内部。Hブリッジドライバ

ただ,Hブリッジドライバは単一の電源でモータの回転方向を切り替えることのできる優れた回路ですが,対角に配置されたTrなりMOS FETがonになってモータの回転方向が決まりますが,まかり間違っても上下にならんだ素子が同時にonすると電源をショートしたことになり,過大な電流(貫通電流)が流れて素子を破壊しますから,いかなることがあっても上下の素子が同時にonしないように回路設計をしないといけません。▲の図で言うと,Q1とQ2,Q3とQ4が同時にonしてはいけません。

今回は2連のボリウムの中点付近で,同時にonとなりやすいので,注意して設計します

基準電圧.jpg555の#6ピンの出力電圧とコンパレータの基準電圧

←→の部分で,双方のコンパレータがonしないようにします。調整時にはこうなっていることを確認して,MP4212をハンダ付けするようにして下さい。ハンダ付けしてうっかり電源を入れると過熱してオシャカになる可能性があります。ポリフューズがついていますが,1Aの連続電流を流すと相当熱くなります。なお,555の三角波出力電圧は振幅が1/3Vcc~2/3Vccくらいになっています。

ただ,図で考えるとやはりBカーブのボリウムの使用は無理なようです。M-Nカーブものが入手できなかったので,手持ちのBカーブを使いましたが,これだとPWMの出力がデューティ100%になりませんね。次回,改良します。 

さて,回路が決まったらプリント基板を作ります。いつもの通り,感光基板で作ります。それにしてもやはり感光基板はむずかしいですね。4枚作ったつもりですが,やはり1枚,露光不足で失敗しました。 いつも,頭にきています。感光基板も結構,高いので痛いんですよね~。もぉーっ!

プリント基板.jpg 完成したプリント基板。32×90mmの大きさです。

部品は手持ちの部品のほか,マルツへ行って足りない部品を買ってきました。とりあえず,プリント基板を作ったら部品をハンダ付けしますが,MP4212はまだハンダ付けしないでおきます。MP4212は制御回路が正常に動作することを確認してからハンダ付けします。

プリント基板1.jpg 部品をつけました。

調整中.jpg 調整中です。小さな基板ですね。

▲の図にあるように,ボリウムの中点付近で,必ず出力がoffになる状態を作っておかないと危険です。調整するときは,ボリウムの中点を境にして,2つの2SC1815が交互にonしないといけないので,こうなることを確認します。具体的に言うと,2SC1815にはそれぞれ,2個ずつ1kΩが入っていますので,その両端の電圧を測定し,片方の2SC1815がonしているとき(1kΩに数Vの電圧が出るとき),反対側の2SC1815につながっている1kΩに電圧が出ないことを確認します。私の作った回路では1kΩの両端の電圧は2.6V程度でした。また,中点付近ではどちらも0V近辺であることを確認します。これが確認できたら,MP4212をハンダ付けします。

その後,いよいよ電源を入れて動作を確認します。出力モニタ用のLEDがボリウムの右半分,左半分で交互に点灯すればOKです。ボリウムを右に回したら右側のLED,左側に回したときは左側のLEDが点灯すればよいのです(もちろん,基板にLEDをつける向きによってどちらが点灯するかは変わりますけど)。ボリウムを中点付近にして,両方のLEDが消灯することを確認して下さい。また,終始,MP4212とポリフューズにさわってみて,あっちっちになっていないことを確認して下さい。

ケースはできるだけ小さく,と言うことだったので,タカチのSW-100にしました。65×100×35mmの大きさです。ただ,電源はACアダプタにしてしまいました。本当だったらスイッチング電源内蔵にしたかったのですが,この場合,やはりもっと大きくなってしまいます。

試作機なので,まだインレタやLEDなどをつけていません。Tomixの5001コントローラみたいに前進,後進を表示するLEDをつけたいところです。また,電源SWは必要でした。試作機なので未取付です。そういえば,5001コントローラは2種類あって,初期のものは電源SWがついてません。やはり,不便だったのでしょう。後期型はスイッチが取りつけられています。

試作機外観.jpg 完成した試作機。とても小さいです。

さて,ここまで来たら実際に模型を運転してみます。KATOのDD51でテストしてみました。非常にスムーズに動きます。やはりPWMだけあって,低速もスムーズです。1cm/s以下のスピードも楽勝です。また,つまみを左右に回すと前後進が逆転するのもGoodです。Tomixの5001パワーパックみたいに,ひとつのつまみで前後進と速度調整ができるPWMコントローラがうまくできました。

ただ,まだボリウムの中点付近で余裕が少なく,ちょっとでも右か左に回すと機関車が動き始めます。もう少し余裕があった方がよいようです。また,中点付近で結構モータが唸ります。おそらく,中点付近で,逆方向のMOS-FETが動作し,多少,電流が流れているのだと思います。年末年始で改良したいと思います。

常点灯.jpg PWMなので,常点灯にも対応します。

PWM式なので,出力をごく絞っておくと,停止した状態でも前照灯を点灯させることができます。残念ながら,機関車については,若干の改造が必要ですけど。

つづきはまた次回です。それと,基板はとても小さく作ったので,中古のTomix 5001コントローラを入手して,PWM化改造することもできますね。webを検索しても,誰もまだやったことのある人はいないようです。この基板を取りつければ簡単に改造できます。一度,検討してみたいと思います。


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