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Electro Motive E-Units & F-Units [模型]

2012年1月3日の日記

正月に実家に帰っていました。残念ながら,TVはロクなのをやってなくて,いつも正月は憂鬱です。歌謡曲やスポーツはあまり好きではないので,本当に見る番組がありません。と言って,実家ではロクに道具もなく,工作をやろうとしてもうまく行きません。

しかたないので,本を読むしかないのですが,今年は ↓ の本の収穫があり,結構楽しめました。

〔本の紹介〕

Brian Solomon著 "Electro Motive E-Units and F-Units"

electro motive.jpg

年末にアマゾンで買いました。昨年,11月に出たばかりのようです。

GM傘下のEMDが作った,一連の流線型ディーゼル機関車EシリーズとFシリーズは,1930年代の流線型流行の時代のひとつの頂点として,とても好きな形式です。ブルドッグノーズと呼ばれるスタイルはとてもかっこよく,模型でも何両か持っています。KATOがE8やF7を出していますね。

そういえば,TVの "逃亡者" (古ッ!)のオープニングでデビッド・ジャンセンが演じる主人公が列車事故に乗じて脱走するシーンで出てくる機関車はE7ですね....。多分,その頃の "刷り込み" のせいか,この機関車,好きなんですよね。それにしても,昔のTVは面白かったな~,と思う人は少なくないでしょう。"コンバット" とか,"ベン・ケーシー" とか"宇宙大作戦" とか。ミスター・スポックが好きだったな~。懐かし~! それにしても全部アメリカ製やな。

EMDは自動車大手のGM傘下なだけあって,圧倒的な資金力と販売力を背景として,北米全域に電気式ディーゼル機関車を販売し,ALCOやBaldwinといった機関車大手の名門を駆逐してしまいます。ほかにもLIMAやFairbanks Morseなどの中小もありましたが,全部駆逐され,いま残っているのはEMDとGEだけです。そのEMDも親会社の破産にともない,現在は米キャタピラー社傘下となっているようです。

"クルマが鉄道を滅ぼした" という本がありますね。Bradford Snellが書いています。私も知っていましたが,この本に書いてある,ロサンゼルスのパシフィック電鉄の状況は悲惨で,GMのほか,石油メジャーも加わって株を買い占め,GM製のバスを普及させるため,会社を解散させた,と言う話は有名です。ロサンゼルスにも一度,行ったことがありますが,いたるところに廃線跡があったのを覚えています。あれがパシフィック電鉄の跡だったんですね。

一方,GMは自社製の機関車を売り込むため,全米最大の貨物顧客という立場も利用し,自社の機関車を買わない鉄道会社から貨物を引き揚げる,と言う手も使ったようです。Gulf Mobile & Ohio鉄道なんか,この手でやられ,そういえば,この前買ったAlcoのDL-109がこの会社のものだったことからもわかるように,ここは最初はEMDを買わなかったようです。また,New Haven鉄道での売り込みについても詳しく書かれています。New Haven鉄道はいまの北東回廊の一角をなし,ニューヨークからニューヘブンまで11,000V,25Hzで電化されています。こんな変な周波数なのは,ドイツ同様,整流子電動機(早い話,直流モータと同じです)を使った際のフラッシュオーバーを避けるためですが,ドイツと違って,もともとこのあたりの商用周波数が25Hzだったようです。

この本ではEMDのディーゼル機関車を売り込んで電化をやめさせた,と書いてありますが,正しくは電機牽引の長距離列車を廃止した,ということで,ニューヘブンまでの電化は維持されています。もともと,ニューヨーク~ニューヘブン間は120kmほどの距離で,ボストンからの列車をわざわざ電気機関車につけ替える手間を考えると,ディーゼル機関車で直通した方が安い,と思ったのも自然なことだと思います。また,1905年以来の電気機関車の老朽化もあり,この際,ディーゼルに置き換える,と考えたのでしょう。

こうして誕生したのがFシリーズ最終機のFL9で,マンハッタン島内の直流第3軌条区間に対応するべく,集電靴を備え,マンハッタン島内は電気機関車として運転することができます。2軸+3軸の変則的な台車構成で,車長も18mとFシリーズ最長となっています。当初はNew Haven鉄道もALCOのDL-109を買っていましたので,こちらを電化改造すると言うことも考えたようですがニューヨーク周辺の高架橋の軸重制限からEMDに変えたようです。ちなみにマンハッタン島内は直流660V第3軌条方式で1906年に電化されています。

結局,New Haven鉄道はこの機関車を全部で60両も購入し,1969年に破産し,Pennsylvania 鉄道とNew York Central鉄道が合併してできたPenn Central鉄道に合流します。この会社も1976年には破産するのはよく知られていますね。

実際,EMDのディーゼル機関車を導入するのと引き換えに電化を廃止したのはBoston & Maine鉄道のHoosacトンネルの区間で,同トンネルは1875年に開通した全長7.6kmです。長大トンネルのため,1910年に電化されていましたが,B&Mは48両のFTを購入し,1946年にディーゼル化されています。ちなみに,このトンネルは建設時の事故でたくさんの人が亡くなっているため,全米随一の心霊スポットとなっているようです。常紋トンネルみたいですね。

GMは傘下のグレイハウンドを含め,バス会社を成長させてバスを売り込むため,航空会社や運河会社の株を買い占め,バスに都合のよいダイヤや設備に改変していくと言うこともやっており,公共交通維持のため,SnellはGMの解体を提案しています。もう30年も前に書かれた本なのに,EMDを売却したり,はからずもGMの破産で,彼の予言が的中した格好になっています。

もっともアメリカの鉄道会社が斜陽化したのはGMのせいばかりではなく,無料の高速道路の普及と,トラック業界の規制緩和で貨物が自動車に移行したからですが,interstate highwayと呼ばれる高速道路がアイゼンハワー政権から造られたというのに驚きます。ドイツのアウトバーンがヒトラーが造ったように,アメリカの高速道路も戦前からか,と思うと違います。日本もアメリカと同じ道を歩んでいる,と言うのに驚かされます。高速道路の無料化はまったく意味がなく,国民に負の遺産を残すだけだと思います。来年度予算が発表されましたが,整備新幹線の700億円がマスコミに叩かれています。高速道路予算はその18倍の1.3兆円にもなっていますが,誰も批判しません。批判するのはこっちの方じゃないかと鉄ちゃんは思います。このままだとアメリカと同じになるぞ~~!!

こういう状況もあり,それに,どちらかと言えば,Baldwinファンなので,ちょっとこの機関車には複雑な気持ちがあるのですが,いかにもアメリカ,という雰囲気の機関車は,のちのフードディーゼルと呼ばれるSD60などの機関車とは違って,流線型の時代の雰囲気を残し,優雅な感じがして,とても好きです。同じく流線型のALCOのPA-1やBaldwinのDL-109などとはまた違った魅力があり,これらの機関車よりもデザイン的には優れていると思います。PA-1やDL-109のデザイナーはドイツ生まれのOtto Kuhlerで,また,"Shark" という愛称があってとても人気のある,BaldwinのRF-16などはパリ出身の有名なRaymond Loewyですが,不思議なことに,EMDの機関車は特にデザイナーはいないようです。この本にも3人の名前が挙がっていますが,特に,有名なデザイナーというわけではなく,エンジニアのようです。それにしても,戦前にデザイナーを活用し,機関車の優美さを競っていた国と戦争をしても勝てるわけがありません。

という次第で,とても好きな機関車なので,本が欲しいと思っていましたが,いままで,EシリーズとFシリーズだけという本は出されたことがなく,この本が初めてだと思います。

1937年,900psの201Aエンジン(何か真空管みたいな型番ですね)を2基搭載し,1,800psのE1が登場します。それまでの流線型ディーゼル車だったBurlington NorthernのZephyrやUnion PacificのM10000などと異なり,非連接車として登場し,デザイン的にも先頭部に空気取入口があったのをやめ,側面から空気を取り入れることにし,大幅にデザインを改良しています。やはり連接車は鉄道事業者としては使いにくく,より汎用性の高い,機関車としてデビューしています。ZephyrやM10000は連接車で,固定編成となっています。いま,新幹線を輸出しようと官民一体で頑張っていますが,苦戦しているようです。やはり,外国ではこのような固定編成の車両は気に入られないのは今も昔も同じようですね。

のちにエンジンの問題点を改良するため,自社製の567エンジンを搭載し,本格的に量産されたのはE3からです。クランクケースが組み立て式だったのをやめ,ダイカストにし,ピストンもアルミ製だったのを鋳鉄製に変更したりしたようです。旅客車用にSGを搭載し,台車も軸重を抑えるのと乗心地を改良するため,A-1-Aの3軸台車とし,この設計もよかったようです。

戦後はE7からですが(厳密にはE7の登場は戦時中の1945年2月ですが,戦後型とされます),E7は傑作機で,エンジン出力も2,000psとなってベストセラーとなりました。その後,発電ブレーキを搭載したE8が登場し,最終的に2,400psのE9と製造され,1960年代後半に製造中止となっています。GEのモータをはじめとする電気品の信頼性も高く,鉄道事業者の評判はよかったようです。

それにしても強力そうなアメロコですが,EシリーズもFシリーズも出力はこんなもので,2,200psのDD51はそんなに遜色ありません。まあ,DD51はトルコンのロスが大きいので,踏面出力ではEシリーズなどの方が大きいと思いますが,DD51でもそんなに悪くない,と言うことはわかります。その意味でもDD51は傑作機ですね。

しかしながら電気式DLは価格が高く,しかも寿命は15~20年くらいらしく,ディーゼル化は非常にお金がかかったことでしょう。また,そのくせ上述のように出力は小さく,何両も重連にしないといけないことは問題で,その点,Union Pacificなどは7,500psのBig Boyを作るなど,蒸気機関車の大出力化に力を注いだのも頷けます。SLだと1両で牽引できるのに,DLだと4両じゃないとダメ,というわけです。一方,メーカとしてはディーゼル機関車だと何両も売れるし,寿命が短ければその取替需要もあるわけで,GMがこの点に目をつけて,EMCを買収し,自社傘下のEMDとしたのも頷けます。アメリカの鉄道会社は目先の人件費やメンテナンスコストの低減にだまされ,電化の方向には進まず,ディーゼル化で失敗したという感じがします。ロシアのシベリア鉄道は電化され,ユーラシア大陸を電気機関車が横断しますが,アメリカ大陸を横断する電気機関車が1両もない,というのは異常だと思います。

ちょっと脱線してしまいましたが,一方,貨物用として1939年に最初のFシリーズとしてFTが登場します。A-B-B-Aの4両編成で6,000psというのがメーカお薦めの編成だったようですが,鉄道会社は,大体,A-B-Bの3両で使用したようです。Fシリーズもベストセラーとなり,全米各社で使用されます。

貨物用のため,SGを搭載せず,台車も軸重を稼ぐため,普通の2軸台車になっているのが特徴です。また,FTの途中から,発電ブレーキを搭載したものも登場し,これが鉄道事業者に受けたようです。ベストセラーとなったF3のあと,F7,F9と登場しますが,Road Switcherと呼ばれる,入換機と兼用できるGP7がバカ売れすると鉄道会社からの返品などもあり,急速に姿を消していきました。Eシリーズより一足早く,1960年に製造中止になっています。Road SwitcherはALCOの方が早く,RS-1が1941年に登場していますが,EMDが1949年にGP7を出すと,瞬く間に市場を席巻してしまいました。EシリーズもFシリーズも片運転台で,後ろを見るときは運転士が窓から顔を出さないといけない構造で,入換がやりにくく,A-BとかA-B-Bという方式で運転するとどうしても終着駅で方転しないとだめで,まだ蒸機が残っていた頃は各地に転車台や三角線もあって,そんなに不便ではなかったのでしょうが,無煙化が進むと不便となってしまったのだと思います。

もっとも,EMDもEシリーズの両運転台バージョンとして,支線区用として1948年にBL2というのを出していますが,凸型になっていて,あまりに不格好で,好きになれません。すぐにGP7が出たこともあり,あまり売れなかったようです。

模型はKATOがE8,F7を出していますし,BachmannもF7などを出しています。人気のある機種なので,BachmannやLife Likeなど,たくさんのメーカが出しています。ただ,E5は古い日本製(熊田貿易)のものがあるだけで,ぜひほしいと思っています。E5はステンレスボディをもち,Burlington & Northern向けに作られました。"銀釜" ですね。BL2もLife Likeが出しています。

Nゲージの米国型はSpookshow氏のページがいいです。リンク許可ももらいましたので,リンクを張っておきます。

この本はこれらEMDのEシリーズとFシリーズの歴史を,当時の雑誌や業界誌などを丹念に調べ,まとめた本です。筆者の親父さんも含め,たくさんのマニアの素晴らしい写真を載せて,とてもよい本だと思いました。

今年の正月はこの本でたのしく過ごせました。

EMD FT.jpg 正月に愚息(6歳)と運転会をしました。

Intermountain製のFT。なかなかディテールもよく,動力もスムーズです。おそろしく低速で進むのに驚きます。

 


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