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さよならアナログ放送 [ラジオ]

2011年7月24日の日記

とうとう,この日がやってきました。今日,アナログの地上波TV放送が終了します。

個人的には自作マニアなので,真空管式TVを自作しようと5BP410BP4などのブラウン管をはじめとして,6BQ6-GT12G-B7などの水平偏向管をはじめとする真空管やターレットチューナなど,いろいろ部品を集めていたので,とうとう間に合わなかった,と言う次第で残念に思っています。まあ,地デジチューナをいずれ手に入れて,TVは映像入力以降を作ればよいので,また作ろうかと思っています。

TV放送は戦前に英,独,米などで研究が進み,特に米国のツボリキンとファーンズワースの活躍がめざましいですね。英国のベアードや米国のジェンキンスは有名ですが,いずれも機械式TVの研究で,機械式では走査線はどう頑張っても100本にならないので,TVとは言えないでしょう。もっとも,ベアード=機械式オンリーという見方は誤りで,彼もBBCがTV放送を開始するにあたり,RCAからアイコノスコープを導入したEMIに対抗して,ファーンズワースの技術を導入して電子式TVの方式を争っています。戦後もBairdブランドのTVを発売したりしています。

電子式TVは受像機は割に簡単に開発できましたが,撮像管の開発が大変で,ツボリキンのアイコノスコープやファーンズワースのイメージディセクターの開発はすごいものだと思います。

技術的にはアイコノスコープが撮像面を電子ビームが走査するのに対し,イメージディセクターは映像が励起した光電子を磁界で集電極の周りに走査させるので,どうしても感度が劣り,蓄積式のアイコノスコープの勝利となりました。

ただ,米国でも判官びいきの人が多いのか,それともツボリキンがロシア移民であるためなのか,また,RCAという大企業のカネで研究をしていたというためなのか,ファーンズワースの方が人気があります。彼はユタ州出身の個人の技術者でした。ライト兄弟のように,アメリカ人達はこういう個人の天才発明家が好きなようです。

ちなみに,Zworykinは日本ではツボリキンと表記しますが,米国では英語読みで,ズォーキンと発音しています。彼自身,どう称していたのか,わかりませんが,米国人はそのように発音します。

英国では1936年,米国では1941年にTVの本放送が始まっています。いずれも戦争で中断しています。ドイツが1935年なので世界初,という主張もありますが,走査線が180本で,しかもナチスドイツのプロパガンダ目的の街頭TVが主体で,一般市民が自由に受像機が買える状況ではなかったので,イギリス人達は高解像度(走査線441本)で,最初の商業放送という意味で世界初と主張しています。たしかに,彼らの主張が正しいと思います。

日本では1953年2月1日に白黒の本放送が開始され,1960年9月10日からカラー放送が始まっています。このときは,カラー放送は白黒TVと互換性がある,RCAが開発したドット順次方式で始まりました。これは正式に米国で規格化され,NTSC方式と名前がついています。米国では日本が白黒で放送開始した同じ年の10月にカラー化されています。

実は,これに先立つこと2年,1951年6月にはフィールド順次方式のCBS方式によるカラー放送が始まっています。これは,同社のゴールドマークが発明し,1フレーム(フィールド)ごとにR,G,Bの画を順に送るもので,残像現象によりカラーに見えるというものです。TVの回路自体はほとんど白黒と同じで,ブラウン管の前にRGBのフィルタを取りつけた円板が回転し,映像の色と同期してカラーにする,と言うものです。これじゃ機械式カラーTVですね。ブラウン管自体もせいぜい10" までで,あまり大型画面にはできません。走査線は405本,24FPSです。

ただ,米国のアマチュア無線の会合で,このCBS方式のカラーTVを見たことがありますが,非常に色がきれいで,とても新鮮に見えたことを覚えています。むしろ,初期のRCA方式のカラーよりきれいだったでしょう。

カラーTVの方式としては脱落しましたが,この方式は撮像管が1本で済んで軽いのでアポロ宇宙船に搭載され,月面からのカラー映像はこのフィールド順次方式でした。

と言う話を聞いていたのですが,本当か? という疑問があり,長年,確認したいと思っていましたが,BSのドキュメンタリーでまさしくこのテーマの番組があり,確認できました。カメラはWestinghouseが作り,ちゃんと小さなカラー円板を回していました。

ただ,フィールド順次だとどうしても各色の画面に時間差ができるので,動きの速い映像は苦手で,色がついてしまいます。アポロ17号の月面離脱,なんて映像で,火花がいろんな色になっていたりするのはこのせいです。ちなみに,先の米国の会合の時も,雷の映像がありましたが,見事に緑色の稲妻になっていました。

当然,従来の白黒TVと互換性はなく,NBCを擁したRCAの猛烈な巻き返しで,従来の白黒TVと互換性のあるドット順次式のRCA方式(後のNTSC)に変わりました。

考えてみると,ドット順次方式はカラー信号の変調方式やシャドウマスクブラウン管の開発など,大変な技術だったのですが,後にRCAが経営破綻したのはこのときの過大な開発投資が原因とも言われています。この後,CEDと名付けたビデオディスクの開発が命取りになりました。RCAも親父のデビッド・サーノフの時代はよかったのですが,息子のロバートの時代になって没落しました。ロゴを変え(例のカミナリマークのRCAからブロック体みたいなRCAになったのも息子になってからです),保険会社を作ったり,果ては牛乳などの食品まで売っていたようです。どこかの某国内のメーカにそっくり,と言う気がします。そういえば,サーノフもロシア移民で,ツボリキンと同じです。同じ境遇なので,ツボリキンを可愛がったのでしょう。

欧州では,電源周波数が50Hzということもあり,PAL方式(走査線625本,25FPS)が主流となりました。NTSCは走査線525本,30FPSでインターレース(飛び越し走査)なので水平偏向周波数は60Hzですね。なんで,TVなのに電源の周波数が関係してるんじゃ? という話になりますが,これはオーディオで言う,ハムと同じ現象が映像に出るからで,当時の貧弱な整流管とフィルタでは直流にしたあとのリップルが防げず,画面が縞模様にになるためです。一応,電源の周波数と同じなら,その縞模様が動かないので,気にならない,と言うわけです。日本ではTVは60Hzに統一し,東日本ではフィルタを増強することで対処しています。いまじゃまったく笑い話ですね。

なんでもアングロサクソン嫌いのフランスは独自にSECAM方式を開発し,共産圏に普及しました。なんで共産圏か,と言うと西側のTVが見られないようにするためです。

と言う次第で,アナログTVは実に政治体制を色濃く反映したシステムでもありました。もちろん,お隣,朝鮮半島も南側はNTSC,北はSECAMです。

しかし,今回はとうとう従来のアナログTVと決別しないといけなくなりました。さすがに,アナログとデジタルを両立させることはむずかしく,完全にデジタル化することとなりました。

まあ,おなじ6MHzの帯域でフルハイビジョンとデータ放送ができ,標準画質なら3チャンネル放送できる,ということではアナログ方式の残る余地はなく,完全にデジタルに移行するのも仕方ないでしょう。データ放送もできて,天気予報なども見られるのはデジタルならではですね。

歴史的瞬間を見ようと,久しぶりにアナログTVを見ようと思いましたが,わが家は6年前にデジタルに移行し,パソコンも地デジ化したので,数年前にVHFのアンテナも撤去してしまい,もう見ることができません。結局,ニュースでその場面を見るだけに終わってしまいました。

北陸の実家を含め,3軒の家を地デジ化しましたが,田舎ほど簡単で,どこも地デジ対応のTVを買って,初期設定をするだけで,映りました。

むしろ,東京や大阪など,VHFでTVを見ていたところが大変で,特に東京だとVHFのアンテナしか建っていないお宅も多く,地デジ対応のTVを買ったが映らない,という苦情が殺到したことでしょう。UHFアンテナを建ててください,なんて言われても,ちんぷんかんぷんという人が多かったのでは,と思います。

わが家のような田舎だと,70年代にUHF放送が始まって,早速,中継局ができ,もともと地上波をUHFで見ていたので,地デジ化は簡単でした。

もっとも,大阪はアナログと同じ生駒からデジタルの電波が出ているから問題は少ないとして,名古屋や東京など,従来のTV送信塔と別のところから発射されている地域になると,せっかくUHFのアンテナが建っていても方向を変えなきゃいけないとか,また,完全地デジ化までは出力を抑えているところも多く,向きを変えても映らない,と言うことが多いようです。地デジはUHFのローチャンネルで放送しますが,都会はすでに,この帯域にアナログのUHF局があるため,デジタル放送の出力を抑えている,と言う話でした。この点,また田舎では,アナログ中継局はどこも50ch.以降のチャンネル配置なので,問題ありません。

それで,都会では都心に同じ周波数で小型の中継局をつけているようですが,これだとまた干渉を起こして映らない,と言うことになるので偏波方向を変え,垂直偏波で中継しているなんて場合もあるようです。これだとアンテナを90゜回転させないと映りませんね。串状になっている八木アンテナの,骨の部分を垂直にしないといけません。

今度は空いたVHFのローチャンネル(90~108MHz)でデジタルラジオが始まりますが,いつからなのか,また受信機は発売されるのか,皆目わかりません。 一応,10月開始のようなのですが,そもそもまだ受信機は発売されていませんし,新聞を読んでも携帯電話向けのマルチメディア放送という次第で,従来のラジオとは異なる感じです。欧州のDABによるデジタルラジオとはまた違うのでしょう。放送局や携帯電話などのいろんな業者やメーカ,官僚などが入り乱れ,まさしく同床異夢で混沌としている,というのが実態です。

一方,UHF帯もハイバンドが空くので,携帯電話に開放されますが,そもそもこの電波帯は非常に使い勝手がよいバンドで,国民共有の財産であるはずで,それならば携帯電話会社に入札させ,高額の使用料を払わせるべきだと思います。欧米ではとうにこのような制度で利用料を徴収しています。ただでさえ,歳入不足で財政再建などと言っている時代に,入札制を導入しないのは理解できません。

それに....,そもそも見るような番組をやっているか,と言うことですね。家に帰ってきても,誰もTVを見ていない,と言う日があります。子供たちはおとなしく本を読んでいたり,遊んでいたりしますし,嫁さんは刺繍をしていたりします。それでオヤジがTVをつけても,やっぱロクな番組やっていない,というのが実態ですね。私はNHK以外見ないことにしていますが,本当に民放はタレント集めて雑談させているだけとか,驚いたことにホームビデオを持ってたった1人で取材した,としか思えない紀行番組とか,低予算の番組のオンパレードで,見る価値のない番組ばかりです。とうとう,ゴールデンタイムで視聴率が10%を越える放送局がない日があった,と先日,新聞に出ていましたが,当然でしょう。

ネットの普及を前にして,TVのデジタル化はほんの一里塚と言う気がするのですが,肝心のコンテンツを製作する側の堕落ぶりは驚かされます。これじゃ誰もTVを見なくなるぞ~~~!!!

という次第で,単に地デジの受信だけでなく,アナログTVの終了はまだまだ尾を引きそう,という感じです。

 


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