ふたたび電球色LEDについて [模型]
職場の同僚からLEDの点灯回路について質問があったので,ついでに回路を示して回答します。
前照灯にLEDを使用する場合,下記の回路にする,と言うことが模型の本によく書かれています。一見,うまくいくようですし,実際,Nゲージの車両に適用して,うまく動作するようです。ところが,これはぎりぎりセーフというのが実情で,HOゲージ用の大容量パワーパックや昔のレオスタット式のパワーパックを使用した場合,最大出力電圧が16Vとか,12V以上の電圧が出るので,LEDが壊れる可能性があります。これは,車両を逆転させたとき(レールに流す電流の極性を反転させたとき),LEDに過大な逆電圧がかかるためです。図1中のシリコンダイオードDiが電流を阻止し,電流が流れないようにしているのはよいのですが,逆電圧をこのダイオードが100%負担するわけではなく,半分くらいはLEDが負担するため,LEDの逆耐電圧(大体4~6Vくらいしかない)を超えてしまってLEDが壊れるためです。
図1 間違った回路
正しくは,図2の通りとなります。ちょっとわかりにくいですが,シリコンダイオードをLEDにパラに,逆向きに接続するのがミソです。こうすることによって逆向きの電圧がかかった場合,LEDのアノード=カソード間にかかる電圧はシリコンダイオードの順方向電圧0.6Vだけで,十分に安全です。シリコンダイオードは特に整流用の500V,1Aというような大きなものは不要で,スイッチングダイオードと呼ばれる小信号用のダイオードで十分です。小生は東芝の1S1588を使っていますが,これ,実はオーディオマニアには有名なダイオードで,たくさん買い込んであるのです。現在は製造中止です。この回路はLEDを交流で点灯させるために考案された回路で,シリコンダイオードの逆耐圧を300V以上のものとすれば,家庭用のAC100Vを使ってLEDを点灯させることも可能です。
図2 正しい回路
電流制限抵抗Rの値は次のように決めます。 LEDはシリコンダイオード同様,P-N接合部分を順方向(P→N)に流すと,両電極間の電圧Vdは電流によらずほぼ一定の電圧となりますので(定電圧特性という),LEDの発光色にもよるが,大体2~3Vくらいの値となります。したがって,下式により,抵抗を決めます。電流値は5~20mA(抵抗値で言うと200Ω~5kΩ)と言ったところで,LEDの明るさに比例するので,実験して決める。昔の赤色LEDの場合は10mA以上流さないと暗いですが,最近の高輝度LEDの場合は非常に明るいので,電流は小さくてもいいです。また,使用するパワーパックが昔ながらの電圧制御タイプ(レオスタット式,トランジスタ式)などの場合は通常走行するスピードくらいでは暗いので,抵抗を小さめにしないといけないし,逆にDCCなど,PWM方式(パルス式)のパワーパックの場合は低速でも十分明るいので,抵抗値は大きめにします。残念ながら,最適な抵抗値というのはなく,小生は1kΩを基準としています。ちなみにKATOのLEDユニットを点検したら220Ωが使われていました。
次に,両運車やテールライトつきの場合は,シリコンダイオードの代わりにLEDを使えば逆電圧の保護となるので簡単です。まさに一石二鳥とはこのことです。この場合,逆方向の電圧は約2Vとなりますが,LEDの保護として使えます。 もし,両運でそれぞれ前後にテールライトをつける場合は図4の回路を2組用意することになります。
図3 両運の場合 図4 テールライトつきの場合
と,ここまで書きましたが,どうやら最近,図1の回路でシリコンダイオードを使わず,直接LEDを1個使っただけ,と言う回路があるらしいです。LEDはダイオードなので,逆向きは点灯しないのと,結構,規格上の逆耐圧が低くても実際は-12VくらいへっちゃらというLEDがあるらしいので,こんな回路で使っているようですが,電気屋としては推奨しません。
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