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コンデンサチェッカーの製作 ~その3・テスト編~ [オーディオ]

2015年12月5日の日記

とうとう今年も12月ですね~。年賀状の準備を始めました。

さて,先週末に完成したコンデンサチェッカーを今回,テストしてみます。

まずは単純に抵抗をいくつかつないで表示される電流値で確かめてみます。10MΩを4個直列にはんだづけしたものでテストしてみます。

抵抗テスト結果.jpg まあまあいい感じです。

低い方でずれているのはラジケータの特性が放物線みたいになっていたせいです。JIS規格準拠の高価なメータを使えば問題ないでしょう。 

で,次はいよいよコンデンサのチェックをしてみます。

ところが.......。

テスト結果(入力部回路変更前).jpg 何だ,これは~っ!?。

ちょっと意外です。200Vより300Vの方がリーク電流が小さくなっています。なんか変~!。これじゃ 負性抵抗 だよな~。 

と思っちゃいました。と言って純粋にマイナスの抵抗なんてなくて,負性抵抗とは∂V/∂i がマイナスになるだけのことなんですが,コンデンサや抵抗など,受動素子がこのような特性を示すことはありません。

負性抵抗と言えば普通は半導体で,有名なのはエサキダイオードですね~。ゲルマニウムDiの一種で,このような特性を示すものがあります。これを発明した江崎玲於奈氏はノーベル賞を受賞しました。もっとも,エサキダイオード自体,青色LEDのように広く用いられる素子ではなく,素子としての利用はそれほどありませんでした。江崎氏がノーベル賞を受賞したのはトンネル効果の発見にありました。何気ない物理現象から大発見をするのは非凡な才能です。

ほかには4極管がプレート電圧が低いときにこのような特性を示します。ダイナトロン現象ですね。もっとも,真空管の場合は2個目のグリッドとして挿入したスクリーングリッドがプレートより近いし,プレート電位が低い場合は電子がそっちの方に流れるので当然の現象です。これを防ぐためにビーム4極管や5極管が発明されました。 

さて,本機の話です。これって,俺もコンデンサでノーベル賞か!? と思いましたけど.....(^^;)。

やはりそんなバカなことはありません。 

実を言うと,大発見か,とも思ったのです。でも,このまま進めると某インチキ細胞みたいなことになりますね。間違ったデータを鵜呑みにしてはいけません!!!!

実際,他のコンデンサを測ってみると同じ傾向があり,どのコンデンサも200Vのときより300Vの方がリーク電流が小さくなります。

と言う次第なので,コンデンサの問題ではなく,やはりチェッカーの回路自体に問題がありそうです。

しばらく原因がわからず,頭を抱えましたが,とりあえず測定中の波形をオシロで見てみて気がつきました。

DC 200V波形.jpg 何じゃこれ?

200Vのときだけ,こんな三角波が観測されます。P-Pで20Vくらいになっています。これ以外の50Vや100V,300Vではきれいな直流です。何か,異常発振しているようです。

検査する電圧がきれいな直流じゃなく,リップルを含んでいると試験対象がコンデンサなので,当然,直流分はカットしますが,脈流はそのまま流れてしまいます。 肝心のリーク電流のみならず,脈流まで測定してしまうことになるので正確な測定ができなくなります。

調べてみると,負荷が小さいときにスイッチング電源のパルスが抜けて間欠発振する現象のようです。

今回,NJM2360を使用した昇圧チョッパ回路を構成していますが,負荷が小さいため,電圧が高くなり過ぎて調整するために発振が停止し,電圧が下がってくるとまた発振する,と言う具合で,発振→停止→発振→‥‥‥を繰り返しているようです。この間隔が私のチェッカーでは30Hzくらいのようです。

JRCが発行しているアプリケーションノートを見ても,対策はあまりありません。部品のばらつきを考慮していないとか,負荷の変動を考慮していないとか,はなはだ無責任(失礼!)な対策しか書いていません。まあ,平均値としてはテスターで測っても200Vを表示するので,スイッチング電源としては正常な動作ということなのでしょう。

しかたないので,いくつか回路中の抵抗を替えてみたりしてみましたがダメです。

実は,電源に昇圧チョッパ回路を使っているので,スイッチングするために発生するリップルが漏れてくることは,多少懸念はしていました。その場合は出力電圧がリップルを含んでいるのですから平滑してやればいいやと思ってました。まあ,スイッチング周波数が20kHzと高いので,フィルタはそんなに厳重なものでなくてもよいはずで,単純に0.1μFを入れていただけでしたが,こんな低い周波数だとフィルタの定数が全然足りません。  

それで昇圧チョッパ出力に大容量の電解コンをつないでみても同じで,かえって三角波の周波数が低くなってメータの針がゆっくり左右に振れる始末。やはりこのような試験器には最終的に定電圧電源でないといけないようです。といってそれじゃ回路が大がかりになりすぎます。

最悪,100Vや300Vでは発生しないことから200Vをあきらめてほかの電圧にしようかとも思いましたが,よく考えてみると脈流だけ電流検出抵抗(1kΩ)を流れないようにすればよいはずなので,バイパスコンデンサを接続することとしました。

簡単にSpiceでシミュレーションしてみますと,1000μFを挿入すればP-Pで1mVくらいになりそうです。 

結果は備後! じゃなかったビンゴでした!

コンデンサチェッカ回路2.jpg 

         ▲ これで最終の回路図です。 

再びコンデンサをつないでチェックしてみると100V→200V→300Vときれいにリーク電流は増えていきますし,指示する値も大幅に小さくなりました。 

と言うわけで,ようやくトラブル退治ができました。本当に電子回路って,考えたとおり動かないし,作ってからのトラブル対策が大変ですね~。

【テスト結果】 

さて,いよいよお楽しみ。完成したコンデンサチェッカーで片っ端から古いコンデンサをチェックしてみました。

国産オイルコン,MPコン,フィルム.jpg テストした国産の古いコンデンサ 

中古オイルコン,MPコン結果.jpg  経年40年以上のコンデンサの結果です。

オイルコンやMPコンは修理中のLUXKITのKMQ60やA3600で使用していたコンデンサです。 どれも経年40年と言ったところです。

予想どおりこれらのオイルコンやMPコンはアウトでした。特に250V,0.22μFのMPコンのリークが激しいです。300V時に50μAも流れます。もし,出力管のグリッドリーク抵抗が100kΩだとするとバイアスが5Vも狂うことになります。危ね~~!。 

一方,フィルムコンは優秀で,私も中学時代よく使った日通工の平べったい灰色のフィルムコンはリークは40年経っても0μAです。 Trラジオなんかでよく使われるマイラコンデンサと呼ばれる緑色のキャンディみたいなコンデンサも問題ありませんでした。

ちなみにオイルコンやMPコンはKMQ60のもので,フィルムコンはA3600に使用されていたものです。 

50C-A10PPのKMQ60はOPTが切れてしまうトラブルが非常に多く,原因はOPT内部の防湿処理が甘く,中の銅線が腐食して切れてしまうのが,最大の原因と思っていますが,カップリングコンデンサのリークによる過電流も原因のひとつだと思います。8045GPPのA3600は出力管がより大型なのにもかかわらず,あまりOPTが切れた,という話を聞かないのはカップリングコンデンサがフィルムだったせいかもしれません。もっとも,どちらも固定バイアスのアンプなので,バイアス回路のトラブルによる過電流→OPT断線という場合も多かったと思います。

ついでに,先日,河童さんから送っていただいた写真にあったNOBELCONは私も1個持っていました。これなんかおそらく1950年代の製造なので経年60年と言ったところだと思います。 

NOBELCONテスト状況.jpg

60年前に作られたと思われるNOBELCON製ペーパーコンは優秀でした。300Vを印加してもリークは0μAと優秀で,現在でも十分使用可能です。 外周が樹脂でがっちり固められていて,しっかりした構造だからでしょうね。それにしてもまだ終戦からそれほど経っていない頃の製造で,まだ日本人も貧しかった頃の部品だと思います。そんな頃の製造でも今でも使えるよい品質の部品を作っていたとは驚きます。なんか,しみじみしちゃいました。

同様に,松下製の赤いフィルムコンも優秀で,リークは0μAでした。40年くらい経っていると思いますが,やはりフィルムコンは優秀です。

次は新品未使用のものを調べてみます。オイルコンはいわゆるN.O.S.のもので,未使用ですが,20年くらい前のものです。

国産オイルコン,MPコン.jpg 国産のオイルコン,MPコン 

   下2つは中古ですが,上2つは新品です。 

n.o.s.オイルコン,フィルム結果.jpg 新品でもオイルコンはダメでした。

さすがにオイルコンでも未使用のものは全くリークが出ないものもありましたが,少しリークが出ます。これらは80年代に買ったもので,経年20年と言ったところですが,リーク値としてはまだ小さいですが,カップリングコンデンサとしての使用は避けた方がよさそうです。

フィルムコンは内外各社のを調べましたが,どれも全く問題ありませんでした。 

最後に電解コンも調べてみました。なお,電解コンデンサは極性があります。間違えないようにしてください。

電解コンデンサ1.jpg テストした電解コンデンサ  

電解コンデンサ結果.jpg 電解コンデンサの結果です。 

米軍放出の250V 27μFですが,リーク電流は80μAといったところで古いペーパーコン並みです。これも経年40年という感じですが,ほかのデータを見ても,電解コンデンサのリークはこんなもののようです。もっとも,電解コンはカップリングには使用しないので,特に問題はないと思います。 

なお,本機にはフォーミング機能を持たせました。テスト用のプッシュスイッチの接点を閉じて,出力に高圧をずっと出すようにしています。コンデンサのテスト時はTESTポジションにし,フォーミングをするときはFORMINGにします。

formingスイッチ.jpg フォーミングスイッチを設けました。 

古い電解コンデンサは絶縁皮膜の特性が劣化して,低い電圧で絶縁が破壊されることがあります。

日本製のものではぶつかったことはありませんが,米国製のケミコンはよくあります。米国製のケミコンはいきなり高圧をかけてはいけません。ご注意ください。

米国のケミコンは人気があり,金属製のバンドじゃなくてベークライトのベースに固定する方法やスリーブがなくてアルミ缶むき出しの銀色の姿は真空管にマッチしますし,音もよいと言われているので私もとても好きです。でも性能はいまいちな感じです。 ケミコンは日本製が一番のようです。

以前,米Mallory製のブロックコンデンサを5球スーパーに使ったことがありますが,いつものように普通に電源SWを入れ,高圧をかけたらいきなり整流管がスパークし,フューズが飛んでびびったことがあります。

知らなかったのですが長年放置されていた米国製のケミコンはこうなること多いらしく,AWA Journalの過去の記事にも forming なる言葉が出ていることに気づきました。米国の真空管マニアの間では常識らしく,古いケミコンを買ってきたら必ずフォーミングをしてから使用するのは当たり前のようです。日本製のケミコンだといきなり高圧をかけてもフューズが飛んだりしたことはありません。

フォーミングは低めの電圧をかけて絶縁皮膜を回復させることで,100~200Vくらいの高圧に電流制限抵抗を入れてケミコンに電流を流します。

本機はせっかく高圧を発生させる回路があるので,簡単にできるようにスイッチを設けました。今後はフォーミングをしてから使用することにします。 

やってみるとおもしろいもので,最初は数10μA~数mAくらいの電流が流れますが徐々に小さくなっていくのがわかります。絶縁被膜が回復し,絶縁抵抗が上昇しているのでしょう。

dischargeボタン.jpg テストのあとは放電しましょう。

試験をした後,そのままコンデンサを取り外すと感電することがあります。放電用のボタンを設けたので外す前に押しましょう。 

こうやってようやく長年の懸案だったコンデンサチェッカーが完成しました。古い真空管アンプやラジオを修理するのに便利です。皆さんもいかがでしょうか。 リークするようなカップリングコンデンサは危険なことは当然ですが,"音が出ない" という原因にもなります。おかしな場合はカップリングコンデンサを外して本機でチェックするとよいと思います。

 


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