SSブログ

FUJIC発見! [パソコン]

2015年7月25日の日記

暑いですね~! さすがに子供たちも夏休みなのにこう暑くっちゃどこにも連れて行ってやれないので,どこか涼しいところへ,と考えていたら中一の娘が東京芸大美術館でやっている "冥土のみやげ展" を見たいというので見に行ってきました。河鍋暁斎や円山応挙などの幽霊画を集めた展示会です。私は以前,同じ展覧会を別の会場で見ているので,同じ会場でやっていた "シャルフベック展" を見てきました。 フィンランドの国宝とされる "快復期" の絵が見たかったのですが,見られて大満足でした。

シャルフベック展.jpg "快復期" が見られてよかったです。

それにしても "めいどのみやげ" と入力すると "メイドのみやげ" と変換しちゃうATOKも驚きますね~。IMEよりましだと思ってましたけど。でも案外,メイドのみやげというのもおもしろいかも.....。

さて,絵の展覧会の方は1時間もあれば見られちゃうので,食事もかねてすぐ近くの国立科学博物館へ。近くにはあまり食べるところがないので便利です。

科博は私は20年ぶりです。地球館がリニューアルしたらしいです。

驚いたことに,2Fの技術展示のところで見慣れない大型の真空管式コンピュータが......。 

FUJIC-1.jpg 

  おぉ~っと,これはFUJICじゃないですくゎぁああ~っ!! 

以前,ブログに書いていますが,日本で最初に完成した真空管式コンピュータです。しかし,FUJICは科博に保存されているにもかかわらず,常設展示されていないので非常に残念に思っていました。偉大な科学技術史上の記念物なのに展示されていないのはおかしいといつも思っていました。

FUJICは富士フイルムの岡崎文次氏が完成させた,日本で最初の真空管式デジタルコンピュータで,レンズの光軸計算用として開発されました。レンズの設計は半径方向に多数の入射光がレンズ内でどのように収束され,最終的に焦点を結ぶかを計算する必要がありますが,光の波長によりどうしても収差を生じるので,その収差をあらかじめ計算しておかないといけません。しかし,膨大な量の計算が必要で,計算尺片手の多くの女子職員の仕事でした。これを自動化しよう,と言うわけです。

演算自体はフリップフロップを使えばよいので,それほど難しくはないのですが,初期のコンピュータで問題なのはメモリ。ここまでフリップフロップにしちゃうと真空管の数が膨大なものとなってしまいます。今だって,速度を要求されるキャッシュメモリはフリップフロップがつかわれていますが,メインのメモリはDRAMで,DRAMはフリップフロップじゃありません。単にコンデンサとTrを1個使ったもので,Trのon,offによりコンデンサに1ビットをチャージする,と言うやり方です。だから電源切っちゃうと当然,記憶は消えてしまいますし,切らなくても自然に電荷が放電するので記憶保持動作が必要です。それに,コンデンサのチャージ時間があるので,低速なメモリとなってしまいます。

当時,メモリにはブラウン管が使われていました。表面に蛍光物質を塗り,比較的発光持続時間の長い蛍光物質を使えばメモリとして使えます。最初のD-RAMといっていいでしょう。おまけにランダムアクセスが可能なため,マンチェスター大のMarkⅠやIBM,UNIVACなどの初期の商用機に用いられています。

ところが,やはりブラウン管じゃ取り扱いが大変で, 特に,偏向回路を何とかしないといけませんし,電子回路の設計,組み立てについての知識が必要となります。

そこで岡崎氏は実績のある,水銀遅延線を用いました。これがFUJIC成功の秘訣だったと思います。

水銀遅延線.jpg 英語はmercury delay lineです。

水銀遅延線は水銀を満たしたチューブの片方の端に設けた圧電素子電極から反対側の受電素子にむけて音波を発生し,その伝播時間を利用してメモリとするもので,構造が簡単で,信頼性も高く,初期のコンピュータの主要なメモリとして使われました。EDSACもこれを用いています。もちろん,まだコアメモリすら実用化されていない時代のことです。私だって,コアメモリを実際に使っているシステムや電卓は記憶がありませんし,また,キーボードを使わず,パンチカードでプログラムを入力していた時代も知りませんけど。

出力装置.jpg 電動タイプは出力装置です。

入力装置は岡崎氏自作のパンチカード読み取り装置で,出力は電動タイプでした。米Remington社製です。 

FUJIC-3.jpg 手作りです。 

真空管1,700本を使ったものです。 真空管は種々雑多です。細かい管名を見るにはもっと近づかないといけませんが,6SA7UY-76などのラジオ用真空管が多用されているはずです。それもそのはず,FUJICは手作りで,補助の女性社員と一緒に岡崎氏が秋葉原で真空管を購入し,組み立てたものです。その時々で入手できた真空管がばらばらなので,ST~MT管まで,雑多な真空管が用いられています。

ようやく念願のFUJICを見られて大満足でした。子供ほったらかしで見入ってしまいました.....。 

マグネトロンM-60.jpg 国産マグネトロンM60

第2次大戦中,日本がレーダー用に開発したマグネトロンも展示されていました。有名な受信用のM60は左下です。メタル管のように見えますが,中身はガラスで,MG管です。海軍の2号2型電探に使用されました。右側が励磁用のマグネットです。奥は送信用のM312です。周波数3GHz,せん頭出力 6.6kWでした。

万年時計.jpg 万年自鳴鐘

東芝の創業者・田中久重が作った万年時計は昔から展示されていますが,久しぶりに見ることができました。それにしても今の東芝の不祥事を泉下からどう見ているでしょうか......。 


nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント