2019年1月28日の日記
さて,今週の休みは先週組み立てたACEの6石スーパートランジスタラジオキットの調整を行いました。
実を言うと,組み立てたままの状態でもほとんど調整なんてしなくてもよいくらい,高感度だったのですけど.....。
一応,iruchanもラジオマニアなので,無調整のまま放っておくわけにはいかないので,調整します。
スーパーのラジオは何カ所も調整する箇所があります。まずはIFTから調整をはじめます。
☆IFTの調整
スーパーのラジオの中間周波増幅回路は回路的には 同調増幅器+バンドパスフィルタ の組み合わせです。
Trラジオの場合はIFTの1次側が同調回路になっていて,2次側には同調用のコンデンサはなく,非同調となっています。真空管の場合は両方とも同調回路となっていて,複同調となっています。
Trラジオの場合は,Trの入力インピーダンスが低く,せっかく2次側を同調回路にしておいてもQが低くなって同調回路にしておく意味がないから,ですけど,初期のTrラジオは真空管ラジオ同様,複同調となっているものがあります。
複同調回路となっている場合は調整が面倒で,1次,2次ともに同じ周波数に同調させちゃうと,単峰特性と言って,通過帯域が狭くなっちゃうので適度に1次,2次の同調周波数をずらして,いわゆる双峰特性にする必要があります。
Trラジオの場合はそもそも同調回路が1次側にしかないので,単峰特性になっちゃいますが,もともとTrラジオ用のIFTのQは低いので普通は問題になりません。
調整は,3個あるIFTの同調周波数をIFに合わせればOKです。
で,問題はIFの周波数なんですけど.....。
一応,JISでは455kHzと決められているんですけど,iruchanはTrラジオの場合は450kHzで調整することにしています。
というのはPLLシンセサイザ式のラジオの場合は450kHzとなっていることが多いですし,AMステレオのラジオは450kHzで調整されているからです。昔のIFTは当然,455kHzで作られていますが,これくらいの同調周波数の変更は可能です。
さて,調整法ですけど,まずはテストオシレータに1mくらいの電線をつないで,アンテナにしちゃいます。ラジオと数十pFのコンデンサをつないで直結する人も多いようですけど,面倒なので横着しています。
テストオシレータを1kHzくらいで変調しておけば,スピーカからピーッと言う音がするので,それが最大になるように調整すればOKです。
一応,iruchanはオシロを持っているので,検波出力をモニターして最大になる位置に調整しました。▼の写真のように,検波用DiのカソードにプローブをつなげばOKです。IFTのコアは局発側から,黄,白,黒という順に並んでいて,最後の黒は検波用Diにつながっていて,これはインピーダンスが低いのでいちばんQが低く,逆に言うと帯域がブロードすぎて調整しにくいので,黄色のコアから調整します。
☆トラッキング調整
これが大変面倒です。真空管の時代は3点調整とか,単一調整なんて言いましたけど,要は,指定された帯域の電波がきちんと受信できるように調整することです。
日本を含むアジア地域では中波の放送波帯は531kHz~1602kHzと決められていますから,この周波数の範囲をきちんと受信できるようにします。
真空管の時代はバリコンがアンテナ側と局発側で等容量の430pFなり360pFなりの容量のものが用いられていて,この場合,局発側のバリコンにパディングコンデンサと呼ばれるトリマーコンデンサを直列につないでいます。このとき,きちんと 受信周波数-中間周波数 が455kHzとなるのは3点しかなく,この3点をきちんと合わせることから,3点調整と呼ばれました。普通は600,1000,1400kHzで一致するようにあわせます。
まあ,真空管の時代でも中波専用のものなどは親子バリコンと言って,アンテナ側と局発側で容量が異なるものを用いましたので,うまく調整すればほぼ全帯域に渡って455kHzとすることができます。
Trラジオではもう今じゃ,短波と組み合わせたラジオというのはほとんどありませんから,大部分,このようなバリコンを使っているし,さすがにTrラジオはエアバリコンなんて使わず,ポリバリコンを使いますので,そうなるとバリコンの羽根の数や大きさがパッと見,まったくわからないので,親子バリコンとは言わず,トラッキングレスバリコンと言います。ポリバリコンじゃ,等容量のものを見つけるのが難しいくらいで,2連のものはほとんどトラッキングレスだと考えてよいと思います。
と言う次第なので,結局,Trのスーパーラジオのトラッキング調整は,まず,局発を531+450で986kHzから,1602+450=2052kHzまで発振させればよいことになります。今だとオシロや周波数カウンタが手に入りますから,これらを使って調整するのが簡単です。
真空管ラジオや短波付ラジオの場合,アンテナ側と局発側で同じ羽根の大きさの等容量バリコンを使っているときはパディングコンデンサが必要となり,また, ━ の曲線は湾曲し,3点でしか同調周波数と局発周波数の差は455kHzとなりません。
ただ,直接,局発コイル(LOSC:コア赤)の両端にプローブをつけるとプローブの容量が邪魔をして周波数が変化しちゃいますから,iruchanは局発のTrのコレクタにつなぎます。予め,ここにプローブをつなげるよう,テストポイント(T.P. ピン端子)を設けておきました。
まずはダイヤル(バリコン)をいちばん低い位置に合わせ,ここで986kHzくらいで発振するよう,赤色のコアを回します。次にダイヤルを高い位置に合わせて今度はバリコン背面にある2つのトリマのうち,局発コイルとパラに入っているCtOSCを回して2052kHzになるようにします。
これを何度も繰り返して986kHzと2052kHzで発振するようにあわせるのですけど,結構,周波数カウンタの表示はばらつきますし,コアやバリコンの種類によってはどうしても調整しきれないこともありますので,ある程度で妥協することも多いです。特に自作する場合は局発コイルもバリコンもバラバラに買ってくるのですからなおさらです。
ACEのCK-606は本当によくできていて,どちらもきちんとあわせることができました。
☆アンテナコイルの調整
さて,この次はバーアンテナについているアンテナコイルを調整します。
これをやらない人も多いですし,放っておいてもたいていはきちんと鳴るので,あきらめてもいいのですけれど,これをきちんと調整すると非常に高感度になりますので,きちんとやっておきましょう。
さて,先ほどのトラッキング調整で,一応,局発は指定された周波数範囲で発振するので一応,カバレージは合っているはずなんですけど,肝心のアンテナコイルとバリコンの同調曲線がうまく中間周波分だけ局発とずれていないとうまく受信できません。▲のグラフで言うと, ━ と ━ の線が平行になっていないといけません。
よく,高い方の周波数の局はうまく受信できるけど,低い方はダメ,とか,その逆という現象がありますけど,これはこのアンテナコイルの調整がうまくいってないラジオです。高感度のラジオは全帯域に渡って非常に高感度です。
この調整はバリコンのアンテナコイル側トリマと,バーアンテナの外周に巻かれているコイルの位置です。指ではさんでずらすとボディエフェクトで調整がうまくいきませんので,セラミック製の調整ドライバなんかでずらします。
テストオシレータで600kHzくらいの周波数を発振させ,ダイヤルも600kHzくらいにあわせます。
このとき,アンテナコイルを左右にずらしてみて,ピーッと言う音が最大になる位置に止めます。マスキングテープなんかで仮止めするとよいでしょう。
今度はダイヤルを高い方にして,1400~1500kHzくらいの周波数を出して,それがきちんと受信できるよう,バリコンのアンテナコイル側のトリマを回したり,アンテナコイル自体をまたずらしたりします。
これをまた何回も繰り返して,どちらもいちばん大きな音がする位置で固定します。
位置が決まったら接着剤で固定します。iruchanはセメダインの透明エポキシで固定しました。
こうするとようやくスーパーのラジオの調整が終わりです。
☆ ☆ ☆
改めて放送を受信してみると,やはり少し下側に移動しています。NHKもきちんと正規の位置で受信できるようになりました。低周波,高周波ともに感度がよく,こういうラジオの場合はノイズも多い傾向がありますが,本機はノイズは少なく,とてもいいラジオだと思いました。
続いて,f特を測定してみました。ご興味のある方はこちらへ。