2013年1月4日の日記

皆様どうもあけましておめでとうございます。また本年もどうぞよろしくお願いします。

さて,正月休みでJBLのSG520プリアンプを模擬したアンプを作っています。前回は,キモとなるGEの2N508などのゲルマニウムTrを入手したところまででしたが,この休みでプリント基板を作りました。やっぱりそうですけど,部品を買い忘れたのか,いくつか足りないので未完成ですが,途中経過をご報告します。

回路図はJBLのサービスマニュアルに記載してあります。日本のメーカは最近は極めて保守的で,昔はサービスセンターに行って,○○○○の回路図をくれ,というと親切にコピーしてくれたりしたものでしたが,最近はほとんどダメでしょう。企業秘密とか,製造物責任とか,理解できますが最近の日本企業は本当に不親切です。ちょっとでも古い機種だと修理すら受け付けてくれなかったりします。その点,JBLはこのように昔の機種ですらマニュアルまでwebで公開しているのは感心します。

もっとも,JBL以外の会社はwebなどで公開している場合はほとんどないと思います。ただ,米国だと国が広くサービスを満足に行えないので,やはり下請けやサービス専門の会社に委託することが多く,そのためのサービスマニュアルが作られていて,有料で販売しているところもあります。日本メーカのものも多く,英語版しかありませんけど,時折,利用させていただいています。

さて,JBLのSG520はトーンコントロールやフィルタ,ゲイン調整用のトーン発振回路など,いろいろ不要な回路も多いので,ばっさり削ってしまいます。結局,作ろうとしているのは下図の通りです。トーンコントロールなんて作っておいても結局,常にフラットで使用することになりますからね。

全回路図です。

回路的には,アンプ部はトーンコンを省略した程度です。電源部は,ちょっといじりました。何よりオリジナルの回路は保護回路がありません。うっかり,調整中にレギュレータ用の2N176を飛ばしてしまうことも考えられるので,電流制限型の保護回路を入れました。2SA640と3Ωの回路がそれです。部品箱にあった中古の2SA640を使いましたが,小信号用のPNP型ならなんでも使えます。 2SA640って,昔はプリの定番だったTrですね.....。

整流はやはりファーストリカバリにしました。普通のシリコンDiだとチーッとかジーッとか言うノイズがツィータからします。ダイオードのスイッチングノイズです。ショットキーDiでもいいのですが,私はファーストリカバリの方が好きです。実を言うとゲルマのダイオードも持っています。いずれ差し替えようかな.....。 

いつもの通り,"花子" でパターンを描いて,感光基板に焼き付けました。いつも,感光基板に焼き付けるのはハラハラしますが,今回はうまく行きました。ポイントとしては,やはり紫外線ランプをちゃんと使用することで,日光や蛍光灯ではまず無理,と考えた方がよいと思います。私はちびライトとか,専用の焼付機でなく,普通のスタンドにFL10Bという紫外線ランプをつけただけのものでやっていますが十分です。ただ,時間的には過剰なくらいで十分で,説明書には5分などと書いてあることが多いと思いますが,倍以上の時間をかけて焼き付けました。

 

 エッチングできました(右:フラットアンプ,左:EQアンプ)

それにしても▲の回路図を見て驚きますが,電解コンの多いこと。単純なシングルのアンプを必要なゲイン分だけ,接続しているだけの回路なので,カップリングコンデンサやエミッタ抵抗のバイパスコンデンサ,電源のデカップリングやブートストラップ回路など,電解コンばかりです。小容量の0.05μFなどのコンデンサはペーパーコンですが,どちらも容量抜けでしょう。段間のカップリングコンデンサは2μFや4μFですが,これらもすべて電解コンデンサです。これらが容量抜けしたりすると完全に音が変わりますし,最悪の場合,音が出なかったり,リーク電圧で電位が変わり,Trを飛ばしたりしますので,SG520はオーバーホールが必要です。

さすがに,段間のカップリングにケミコンを使うのはいやなので,できるだけフィルムコンにしました。特にカートリッジとの接続が25μFの電解コンになっているのは困りますね。それで,この部分までフィルムコンを奮発しました。でも,サイズが大きすぎ。SG520はジャズファンなどに人気のある音のよいアンプなので,Malloryとか,Spragueなどの米国製電解を買って電解コンにしてもよかったかもしれません。といって,今どきSpragueも身売りされて,今はどこかのアジア系の会社の傘下でしょうね。それに,あまりサイズの大きなコンデンサというのは誘導を拾ってノイズの原因になりますので,注意が必要です。電解コンデンサもオーディオ用のELNAのセラファインにしましたが,通常品より倍くらい大きさが違うので,プリント基板の製作は大変でした。もし,オリジナルどおり,カップリングなどにも電解コンデンサを使っていたらもっと基板は小さくできたと思います。でも,音は全然でしょうね。

 EQアンプ基板。2N2614以外は2N508です。

バイパスコンデンサ以外はフィルムコンにしました。青いのは今はなきニッセイ電機製のフィルムコンです。小さくて非常に気に入っていたのですけどね....。抵抗も,ニッコームにしました。やはりプリアンプには金属皮膜抵抗ですよね。中学の頃,初めてプリを作ったとき,本にカーボン抵抗はノイズが多いので,プリアンプには使わない,なんてことが書いてあり,いまだに墨守しています。今どきのカーボン抵抗は十分ノイズも小さく,大丈夫だと思いますが,どうしてもプリには金属皮膜抵抗を使ってしまいます。

EQ素子に0.047μFと0.015μFのスチコンが必要です。JBLのマニュアルをみると,ほかの番号のコンデンサとパーツ番号が一緒になっています。と言うことはペーパコンなのでしょうか。マニュアルにある不鮮明な基板の写真を見てもペーパーコンのようです。web上のSG520の中身の写真を見るとスチコンになっているものもあるようですが,ほかのコンデンサが取り換えられたりしているので,あとで取り換えたものだと思われます。それにしてもそれぞれ47000pFと15000pFなのですが,とんでもない大容量で,スチコンにするとかなり大型になります。普通,スチコンはこの2桁くらい下の容量のものばかりです。と言って,アマチュア無線用などに0.1μFなどのものもありましたので,過去には製造されていたようです。手持ちがないので,今捜索中です。スチコンもとうに製造中止になっています。 ポリプロピレンにしてもよかったのですが,やはり時代が古いので,スチコンにしたいと思います。ディップマイカでこの容量のものも製造されていますが,こんな大容量のものがアマチュアの手に入るとは思えません。

 フラットアンプ基板。古めかしいTrが並んでいます。

フラットアンプはスペースが余ったので,上の方に電源部を焼き付けてしまいました。やはり別基板とした方がよかった感じです。フラットアンプは2N27122N3638がシリコンTrです。JBLのSG520はオールゲルマニウムTrと思っている人が多いと思いますが,シリコンTrも使われています。大きな酸金抵抗は回路図にあるとおり,5Wの4.7Ωですが,これだと1A近く消費していることになります。こんなに電流が流れているとは思えないので,いずれもっと小さいものに取り替えるつもりです。もっとも,電源に保護回路をつけていますので,0.2A以上は流れないようにしています。

次回は足りない部品を買ってきて,ハンダ付けしていよいよ電源を投入したいと思います。

追記

回路図で,2N3638のエミッタに入っている240kΩは240Ωの誤りです。どうもすみません。