2017年12月21日の日記

 ちょっと灯がともりました......。

9月から取り組んでいる,オールWEの真空管によるDCプリアンプの組み立てがほぼ終わり,通電試験を始めています。前回の記事はこちらへ.....。

さすがにiruchanもこのような大規模なプリアンプの製作は久しぶりで時間がかかっちゃいます。

やはり,11球式というのは大がかりですね~。いままで,iruchanが作ったのは最大で6球式です。おまけに真空管式プリアンプだとヒータは直流点灯しないといけないし,今回のはDCプリアンプなので,B電源も±Bとなって2系統あるので大変です。

☆ヒータ電源

と言うことでまずはヒータ電源のテストから。

オリジナルは3端子レギュレータLM338を使った+6.3V電源ですが,本機はヒータ電圧Ef=20Vの407A408Aを使っているのと,h-k耐圧の関係で-40Vで点灯しますので,リップルフィルタを使った回路になっています。前々回にも書きましたとおり,ここは定電圧電源じゃなくてリップルフィルタにしています。こちらの方がリップル除去比が大きく,より低雑音になるようです。実は意外に3端子レギュレータも含め,定電圧電源はリップル除去比が小さく,金田氏もB電源のレギュレータはEQアンプ用に2段使用しておられることからもわかるとおり,1段ではリップルが取り切れないことがあります。パワーアンプでも,直熱管のDC点火用にレギュレータに3端子レギュレータを使った場合,1個ではハムが取り切れず,電圧が異なる2個を直列にすることがあります。

リップル除去比については,最後に書きます。

 ただいま通電試験中。

なお,出力電圧は低めで,予定では-40Vでしたけど,-36Vくらいでした(本当は高めというべきなんでしょうけど)。リップルフィルタはベースに挿入した抵抗で電圧は簡単に変更できるのですが,今回は放置プレイとしました。ヒータ電圧は10%くらい低くすると球の長寿命化も期待できますしね。電話の交換機など,わざと最初から10%低い電圧で点灯するようになっていたと思います。

☆B電源

つづいて,B電源のテストです。

まず,+側の412Aのみ挿し,高圧をかけていきます。やはりスライダックがあると便利です。大体,AC60Vくらいになると高圧が出てきます。

ところが.....。

リップルフィルタは無事に動作し,フラットアンプ用の120Vの電圧は出てきますが,EQアンプ用の100Vのレギュレータ出力が出ません。いつまで経っても0Vのままです。

基板をチェックしても間違いはなく,再度,もっと高圧をかけてみると少し電圧が出てきましたが,それでも2Vくらいの出力しかありません。

おっかし~な~#58944;#58944;#58944;

回路図と基板を比較しても間違いはないので,おそらく,回路図のミスではないかと考えました。

残念ながら,きちんと本になって発売されている回路にも結構ミスプリがあるし,特に金田氏のDCアンプシリーズには抵抗値の間違いや万能基板のパターンミスが指摘されています。

今回もそうではないかと考えました。

といって,実機でいろいろ確かめようとすると貴重なTrを飛ばしてしまうことも考えられるので,LTspiceで検証します。

結果は予想どおりで,やはりレギュレータの出力は-2Vくらいになっていて,おかしいです。なぜか極性が反転しているし,そもそもこの回路じゃマイナスの電圧が出るわけないのでSpiceの結果の方もおかしいんですけど.....。

と,ここまで来て,ほかの号のレギュレータの回路を見てみたら,なんとやはりミスプリが発覚。誤差増幅器の5極管のSGの配線が間違っていました。ここは,No.166の図5+105Vレギュレータの回路だと,SGは直接,レギュレータの出力につながっていますが,2SC1775のエミッタとも接続しておかないといけないのです。見方を変えれば,2SC17752SA653がインバーテッドダーリントン接続になっているのが正しいわけですね。

また,iruchanもうっかりしていて,同じ号の図6の+100Vのレギュレータ回路では間違っていないのですが,図5の+105Vレギュレータの方ばかり見ていました。

ただ,同じミスはほかの号でもありますのでご注意ください。EF86とWE420AECC8212AU7)を使ったNo.145(MJ '97.3)は正常ですが,EF86+ECC81No.157('99.12)およびオールサブミニ管DCプリのNo.174(図11のみ。 '03.12)はミスプリです。

 ここは接続しないといけません。

と言う次第で,最終的に電源はこうなりました。まずは412Aによる整流回路とフラットアンプおよびヒータ用電源です。2N64212SC1864はリップルフィルタです。412Aのラッシュカレントを抑えるため,直後のコンデンサは47μFにし,その代わりリップルが増えるのでリップルフィルタで減らす設計としています。

最終的な電源回路です。

AC100Vのパイロットのほか,ヒータおよび高圧のLEDをつけました。最近のLEDは非常に輝度が高いので,電流制限抵抗も昔じゃ考えられないほど大きな値となりました。こうしないと見ていてまぶしいくらいの明るさになっちゃいますので......。

なお,MAINのパイロットはAC6.3Vで点火しています。本当言うと,LEDは逆耐圧が低く,4~5V程度ですので,この記事のように保護用のシリコンDiを逆向きに取りつけないといけませんが,6.3Vではまず問題ありません。

+100Vレギュレータです。

EQアンプ用に,+120V出力にレギュレータを1個,挿入します。金田氏のオリジナルは2段レギュレータとなっています。

問題となった,5847のSGと2SC1775Aのエミッタは接続するのが正しいです。

描き直すとこうなります。

実は,金田氏の真空管式レギュレータはこのように描くと,ごく普通の真空管式レギュレータ回路です。こう描いてくれればいいのに~。昔の真空管の回路の教科書なんかに載っている回路です。誤差増幅器の負荷が2SA872による定電流回路となり,制御Trが2SA6532SC1775Aのインバーテッドダーリントンになっているのが新しいところです。

問題となる,5847のSGと82kΩの接続点ですが,ここが2SC1775Aのコレクタに接続されていないと,分圧抵抗の82kΩが出力に接続されていないことになり,これじゃ当然,出力は出ません!

最初からこのように回路図が描いてあればすぐにミスプリに気づいたんですけどね......。

 完成した電源回路基板

        ☆          ☆          ☆

と言う次第で,気を取り直してシミュレーションをやり直してみます。残念ながら,iruchanが作った404Aのモデルではうまく動かなかったので,EF866267)を使いました。これはNo.145などと同じ回路です。

iruchan版電源回路


 無事に高圧が出ました。

今回,iruchanは整流管412Aの出力は47μFのコンデンサインプットとし,続いてリップルフィルタで120Vとなるようにしています。リップルフィルタの出力のリップル電圧は1.7mVP-Pとなりました。 

こうすると金田氏の412A+2200μFの回路より大幅にリップルが減りますので,EQアンプ用のレギュレータは1段としています。レギュレータは1段でもリップル電圧は15μVP-Pなので問題ないと思います。

 オリジナル電源回路


412Aの直後に2200μFを入れてコンデンサインプット整流としていますが,それだと確かにリップル電圧は47μFの時より小さいです。ただ,これだけの大容量を入れても47μFのときの約1/4にしかなりません。

1st.レギュレータの出力のリップルは0.7mVP-Pです。普通なら十分な値と思いますが,金田氏はオールホーンシステムではハムが気になった,ということで2段式にしておられます。ただ,せっかくレギュレータを入れたのに,リップルフィルタの半分くらいにしかなっていません。リップルフィルタの方は,後で述べるように,まださらにリップルを下げられる余地がありますから,有利だと思います。回路も簡単ですしね。

 出力波形の拡大

オリジナルだと2段のレギュレータを挿入してリップル電圧は5μVP-Pになります。さすがに2段式にするとiruchan版の1/3です。とはいえ,やっぱ,同じような回路を2個も作るのは大変です。貴重な5847も2本いりますしね。

        ☆          ☆          ☆

リップルフィルタとレギュレータのリップル除去比を比較してみます。

リップル除去比はPSRR(Power Supply Rejection Ratio)と言い,入力のリップル電圧/出力のリップル電圧で表され,よく,PSRRとして表現されます。

意外にも3端子レギュレータのPSRRが低いことはよく知られていて,大体,40dBくらいです。せいぜい1/100にしてくれるだけです。カタログ上は60~80dBくらいの値になっているんですが,実際に作ってみるとこんなものです。

今回,レギュレータ回路はどれも同じものを使っていますが,iruchan版の1段式のもので41.3dB,オリジナルの2段式で40.1dBと42.5dBと計算できます。半導体を使ったディスクリートのものでも同じような感じだと思います。

ところが,iruchanが使用した412Aの整流直後に挿入したリップルフィルタは3.13VP-Pもあるリップルを1.77mVP-Pにしてくれるのですから,実に65dBもの効果があることがわかります。

前々回,ヒータ電源にレギュレータとリップルフィルタを採用するか,迷ってシミュレーションを比較して驚きましたけど,やっぱりレギュレータより効果あるんだな~と感心しました。また,レギュレータだとリップル除去比をあげるには誤差増幅器のゲインをあげるしかなく,それは難しい相談なんですが,リップルフィルタだとTrのhFEを大きくしたり,ベースに接続したコンデンサの容量upでさらにリップル除去比を改善することが可能です。hFEが足りなければダーリントン接続する,と言う手もありますし,プリ用の高圧電源なら100Vくらいなので高圧Trにも困らないと思います。それに,リップルフィルタ方式だと能動素子はTr1石だけだし,抵抗も1個だけです。熱擾乱雑音は半導体と抵抗が発生しますから,リップルフィルタはハムばかりじゃなく,ホワイトノイズも小さいです。

今回,真空管式レギュレータを採用しましたが,次回,EF86プリかサブミニプリを作るときはオールリップルフィルタで作ってみようかと考えています.......。

と,思ったのですけれど.......。

このところ,ロシアの6S19Pなんかの球を買ったりしているので,こんなこと▼を思いついちゃいました。ちゃんと動作してしまうやうです......(^^;)。

 

  よゐ子はかういふ悪いことを考へちやゐけません!!



さて,ようやくこれで電源部のチェックが終わりました。次回はEQアンプから調整していきたいと思います。

 

2018年2月17日追記

 

AOC回路のトラブルで再調整です。つづきはこちらへ。