2015年12月6日の日記

久しぶりに中国Lepai社(米国でのブランドはLepy)のLP-2024A+をいじります。Amazonなどで3,000円ほどで買えるデジタルアンプです。小型で軽量のアンプなのに驚くほどいい音を出すのでとても気に入っています。専用のアナログ電源まで作ってやりました。スイッチングノイズは出ないのでACアダプタより音はよいと思います。

先代のLP-2020同様,米Tripath社のデジタルアンプICを使っていて,LP-2024A+は同社のTA2024を使っています。ちなみにLP-2020は型番が示すように,TA2020を使っています。このIC自体,2,000円以上しますし,周辺の部品を買っていると軽く1万円は超えるので,製品で3,000円ほどという値段は安いです。実は私もTA2020 IC自体を1個持っているのですが,さすがにコストを考えると自作することは躊躇してしまいます。なにより自作だとケースがださくなっちゃいますからね。Lepaiのアンプはなかなかかっこよいですし,自作ではこんなにかっこよく作ることは無理です。ちなみにTA2024は36ピンのSOPなので自作は無理だと思います。

さて,前回は入力のOPアンプを新日本無線のMUSES8820に取り替えて,今もこれで聴いています。最初からオーディオ用として設計されたものなので,しっとりした音質とローノイズなのはさすがだと思います。

でも,私にはぜひやってみたいことが残っていました。

前回のブログにある,OPアンプの一覧表には出ていませんけど,使ってみたいのはLF356です。最初のJ-FET入力のOPアンプで,1970年代半ばにナショナルセミコンダクタが作ったものです。 同じシリコンウェハー上にバイポーラTrとFETを一緒に作るのは難しかったらしく,ナショセミがBI-FETテクノロジという技術を開発して可能になりました。それまではハイブリッドICと言って,シリコンの基盤上にディスクリートのTrやFETを載せるタイプで,代表的なのがナショセミのLH0032ですね。この石,音がよいことでも知られています。残念ながら今じゃテキサスと合併してしまったのでナショセミは消えてしまいました......。

何で使ってみたいのか,と言うと私が最初にOPアンプを使ったアンプを作ったときに使ったのはこのOPアンプだったからです。音もよく,気に入ってイコライザアンプのほか,SEPP出力段の電流ブースタをつけてパワーアンプまで作りました。パワーアンプは今も現役で,三菱のロクハンの名機P-610を鳴らしています。

ほかにも三栄無線やいろんなところからこのOPアンプを使ったキットが出ていました。

何より音がよかったのも割にオーディオに使われた理由ですが,J-FET入力なのでDCアンプにすることもできたのが普及した理由でしょう。Tr入力のOPアンプではどうしてもバイアス電流が流れるのでDCアンプにはできません。

それに,すぐモールドタイプが出ましたけど,LF356はTO-99のメタルキャンパッケージだったのも魅力でした。と言うより,当時はそれが当たり前だったんですけどね......。どうしてもオーディオマニアだとメタルキャンにこだわっちゃうんですよね~。 製造される数が少ないのか,使う人もいないのか,お店で扱ってなくてメタルキャンタイプのLF356Hは入手は難しく,現在でも入手可能なのはモールドのLF356Nです。一応,日本語のLF356の規格表にはメタルキャンタイプは出てきませんが,英語版には載っているので,今も製造はされているようです。アメリカは軍があるので,今も軍用とか航空宇宙用とかで需要があるのでしょう。

ただ,このOPアンプはシングルなので,デュアルタイプのOPアンプを使用しているLP-2020やLP-2024では使えません。

でも,今はいい時代で,前回もSOPのICをDIPに変換するアダプタを使いましたが,このようなサーキュラー状の電極をデュアルインラインに変換するとともに,シングルのOPアンプをデュアルに変換する基板が売られています。いつかやってやろうと思って,前回と同じく,ほかの部品と一緒に大阪のシリコンハウス共立さんで買ってありました。

ただ,肝心のOPアンプですが,LF356Hが見つからず,探していました。結局,弟分? のLF355Hにしました。LF356Hはまだ手持ちがあったと思いますが,金田式DCアンプのターンテーブル制御アンプに使用するつもりなので,今頃になってLF356Hを探していましたが,見つからず,困っていました。ところが,ちょっと近くの部品屋さんに行ったらLF355Hがあったので買ってきた,と言う次第です。もう古い在庫で売れそうにないし,と言うことで親父さんはおまけで1個余分にくれました.......!!!!!

 LF355Hです。 NSマークが懐かし~~。

  おそらく製造は80年代のものだと思います。働く場所を見つけて喜んでいるでせう。

LF355とは知らなかったのですが,LF356のファミリーで,規格は

 品番 メーカ  ノイズ  GB積 スルーレート 入力

                          (nV/√Hz)       (MHz)       (v/μs)

LF355  NS    20 2.5     5 FET

LF356  NS 12  5 12 FET

LF357  NS 12 20 50 FET 

となっています。これを見て,"LF357が一番いいじゃん! これにしよ~。" なんて思ってはいけません。LF357は内部位相補償コンデンサが小さくなっているだけの話です。LF355356では位相補償コンデンサが10pFですが,357では3pFとなっているので高速なのは当たり前です。

そのため,LF357は100%負帰還をかけると発振します。規格表にもゲインを5倍以下にすると発振する旨,記載があります。LP-2020の初期型をのぞけばLepaiのデジタルアンプのプリアンプはこのブログにもあるとおり,ゲイン可変の反転増幅器となっていて,ゲインは1以下にもなりますから確実に発振します。いまは内部で100%位相補償をするのが普通で,外付け回路にもよりますが,100%負帰還をかけても発振しないようになっています。

LF357はぎりぎりまで位相補償コンデンサを小さくしているため,外部で位相補償をして使うのが前提のOPアンプで,うまく使うと広帯域のアンプが作れます。こういうOPアンプは非常に少ないので,貴重ではあるのですが,アマチュアが使用する場合は避けた方がよいと思います。

 こんな変換アダプタです。

 こんな風になります。

 

まずは横の電解コンから取り替えです。普通のサイズの電解コンだと背が高すぎて邪魔をするので,今回は背の低いOSコンに交換しました。前回,ニチコン・ファインゴールドに交換しているので再交換です。

右側の2つのOSコンは前回交換したものです。入力のカップリングコンデンサで,オリジナルは積層セラミックが使われていますが,ここは前回のブログにもあるとおり,10μF以上ないと低周波のf特が悪いです。音の問題もあるのでOSコン39μFに交換しています。 

 早速載せ替えてみました。

OPアンプの載せ替えは前回,DIP8ピンのソケットをつけておいたので,簡単です。左下にあるNE5532はもとからあるOPアンプですが,トーンコン用で,私はいつもトーンコンは使わないので載せ替えはしていません。

早速音を聞いてみます。

       おぉっ,いいじゃん~#59116;#59116;#59116;!!

このところいつも聴いている,デイブ・ブルーベックの "Take Five" を聴いてみます。 1曲目の "Blue Rondo a la Turk" の冒頭のシンバルの音が冴えきっています。おそらくトルコのジルジャンのシンバルなんでしょうけどね~。その音がとてもきれいで響きが心地よいです。ピアノの高音も美しく,とても自然で倍音が豊かなのがわかります。

やはりメタルキャンのOPアンプは高音が美しいです。思わず何枚もCDをかけ直して聴いてみました。MUSES8820もよかったですが,ちょっとこれには勝てない感じがします。やっぱ,メタルキャンのOPアンプだわぁ~~。MUSES8820もメタルキャンバージョンがあったらいいのに~って思いました(無理!)。

OPアンプのカラヤンじゃなかった,ジャック・ニクラウスでもなかった,え~っと,帝王のバーブラウンOPA627にはメタルキャンタイプがあります。これを2つ使えば絶品の音がする......と思いますが,2つで軽く1万円は超えるのでこれなら2A3でも買った方がよさそうです。

 

2016年12月24日追記 

本機にヘッドホン端子をつけてヘッドホンが使えるようにしました。ご興味のある方はこちらへ。