2015年6月30日の日記

引っ越しをした際に,ワークベンチを整備しました。長年,オシロや発振器などの計測器を棚の上に置いて,いつでもすぐに使えるようにしたいと思っていました。それで引っ越しのついでにやってしまいました。やはり便利で,ちょっとした計測をするにもすぐに準備できて便利です。

ところが困った問題が発生。照明がうまくないのです。

以前はアーム式のスタンドを使っていましたが,このライト部分が棚のせいで邪魔になり,今度はこっちが頭をぶつけてしまう始末です。 といって,据え置き型のスタンドだと台の部分が机を占領して邪魔ですし,持っているやつはLED1灯式のもので明るいのはいいのですが,1灯式なので点光源となり,これも手の影ができて工作用としては具合が悪いのです。

嫁はんがキッチンで使っている流し台用の蛍光灯の15Wくらいの照明もいいかと思いましたが,最近はLEDのものもあるようですが,これはこれで光っている部分が目に入り,疲れます。 

で,いいものはないかとアマゾンで探したら,ショーウィンドーの中の商品を照らすための細長いLED照明がありました。白色と電球色の2種類があり,また,磁石で固定できるようになっているので,スチールの棚にも簡単に取り付けられます。長さも3種類あり,なかなか具合が良さそうです。イルミカ東京さんが販売しています。

早速,買ってみました。

全長600mmのもので,全光束540lmのものを買いました。だいたい,白熱電球の60Wのものが500lmくらいですので,それより明るいし,普通の読み書きやパソコン作業なら十分だと思います。ただ,工作用としては細かいところをみるのに,100Wが必要なときもありますので,そのときは別のLEDスタンドを使うつもりです。

色が電球色があるのもgood! 何より電球色LED大好き人間なので.....(^^;)。

いつもKATOの機関車やこの前は中国Lepai社のアンプなんかも電球色LEDにしていますから。 ただ,この場合デジカメ写真なんかを撮影するときはホワイトバランスを変えないといけないので面倒ですけど。また,輝度は白色より低いので,明るさを求める人は白色LEDの方を買う方がよいと思います。

さて,実際に使ってみると机の面は明るく照らされ,なにより小型で細長いものなのでうまく棚に隠れ,光っている部分は目に入りませんし,線光源になるので影もできにくく,作業をするには快適です。

電源は12VのACアダプタが必要です。本来ショーウィンドー用なのでスイッチはなく,もとの電源部分でコンセントを外すか,別途,テーブルタップのスイッチを利用するのが前提でしょう。

でも,机の照明用だとスイッチはいりますね。それにACアダプタは大嫌いなので電源も何とかしたいところです。

と言う次第で,どうせ電源とスイッチをつけるなら,と言うことで電源内蔵の調光器を作ることにしました。市販されているLED調光器も電源内蔵タイプはないようです。

照明の調光は昔からいろんな回路があります。

電圧が制御できれば調光できるので,スライダックが便利ですが,大きく重すぎるので,よく使われるのはトライアックを用いた位相制御のものです。AC100Vをトライアックでスイッチングして導通角を可変して調光します。

LED照明用の調光器というのは少なく,なによりLEDは直流で点灯する,と言うのが原因だと思います。位相制御された交流を整流して直流化すれば電圧を可変できるので,このようにしたLED用の調光器もありますし,自作している人もいるようです。

ただ,この場合,やはりAC100Vを位相制御してトランスで電圧を下げて,その後,整流して直流にするのでやはりトランスが必要で大きくなります。

と言う次第で,直流を電圧制御すればOKなので,こちらで考えてみます。

簡単にやるのは抵抗制御ですね.....。

直列に抵抗を入れて電流を下げてやれば調光できます。

でもこれじゃ抵抗が発熱しますし,エコじゃありません。

と言う次第で,いつも鉄道模型用のコントローラで使っているPWM式のものを応用します。1,600円ほどで売られているLED照明用の調光器というのも同様の仕組みだと思います。

PWM式は12Vの方形波を出力し,その方形波のパルス幅を制御してLEDの点灯時間を可変することにより調光します。素子はスイッチングをしているだけなので損失が少なく,とてもエコです。

回路はいつも作っているPWM式の鉄道模型用コントローラ(パワーパック)と同じものです。これに逆転器をつければパワーパックになります。今回,初めてプリント基板化しました。もう何回も作っていますが,毎回万能基板で作るのもしんどいので,とうとうプリント基板にすることにしました。

さて,回路です。

 クリックすると拡大します。 

いつも通り,タイマIC555で三角波を作り,それと基準電圧とをコンパレータで比較することにより0~100%デューティ可変のPWM波を作ります。

海外で555 1個とダイオード2個でPWM波を作る回路を発表している人もいますが,デューティは5~95%くらいになり,100%可変じゃないので採用しませんでした。私の回路は0~100%まで変化させることができます。鉄道模型だとこうじゃないとまずいですよね。

なお,鉄道模型だとモータがうなるので音が聞こえないよう,スイッチング周波数は20kHzとして,人間の可聴帯域より上にしています。まあ,300Hzでスイッチングすると201系みたいにチョッパ音が聞こえるのでNゲージを運転していても楽しいのですけどね.....。でもDD13からチョッパ音がするのも何だし,ということで私はいつもスイッチング周波数切り替え式で作っています。

              

スイッチング周波数は▲の式で決定されます。 RはkΩ,CはμFです。ちなみにRA=4.7kΩ,C=0.01μFの場合,RB=100kΩで700Hz,220kΩで300Hzとなります。 

今回はLED照明用と言うことでスイッチング周波数は20kHz固定で作りましたが,基板そのものは準備工事としてスイッチング周波数の切り替えができるよう,パターンを作りました。 

 プリント基板が完成しました。

この基板に電源と逆転SWをつなぐと鉄道模型用PWMコントローラとなります。保護回路もついてます.....(^^)。 

 パターン図

 部品配置    (いずれも銅箔面から見た図)

これを50×29mmのサイズでOHPに印刷すると感光基板で作ることができますのでご利用ください。 

 使用した半導体。

部品箱に転がっている半導体を使いました。当初,制御Trに使用した松下の2SD317Aは30年以上前のものです。 表面は酸化してザラザラです。実は問題が出て,あとで東芝の2SD525と取り替えています。

以前書きましたが,東芝の2SC1815がとうとう製造中止で,まだ部品屋さんの在庫は豊富ですが,すでに偽物が横行しています。どうもやはり中国製のようです。本物より少しサイズが小さく,型番は横書きになっています。純正の東芝製を買いだめしておきましたが,どうも私も以前,偽物をつかんでしまったようで部品箱の中から何個か出てきました。おそらく,似た特性の石の表記を書き換えて販売しているのでしょうけど,互換品として販売するのはかまわないですが,全く同じ型番にするのはどうかと思います。

いらない子なので捨てちゃおうかと思いましたが,私も会社じゃ同じ境遇なのでリストラせずに活用することにしました......orz。 

左が偽物で,右が本物の2SC1815です。本物はロゴが縦に横書きされています。 

早速,回路をつないでオシロで確認します。ちゃんと20kHzの方形波が出力され,パルス幅もスムーズに変化します。

さて,次はいよいよLED照明をつないでテストしてみます。

ところがここで問題発生。一応調光できるのですが,どうにもスムーズじゃなく,パッと点灯してその後すぐに明るくなってしまいます。おまけに制御Trが結構発熱して,触ると熱くなっています。

PWM式の場合,制御Trは12Vをチョッピングしているだけで,電圧を制御しているわけじゃなく,損失はわずかです。まあ,バイポーラTrだとエミッタ~コレクタ間飽和電圧VCEsatが1V弱ありますので,VCEsat×ICだけ損失が発生します。今回,LEDの負荷は0.5Aくらいですから,損失は0.5Wくらいです。MOS-FETを使うとドレイン~ソース間の電圧はmV単位になりますから,この損失はずっと少なくてすみます。でもなぜかMOS-FETは好きじゃないのでいつものバイポーラを使っています。

MOS-FET出力の場合 

もっとも,今の時代,バイポーラTrでスイッチングする意味はほとんどないと思います。損失の問題もそうですが,スピードも遅いし,ドライブ電流(IB)の点でもMOS-FETが断然有利です。MOS-FETを使う場合,▲のような回路となります。出力もドレインから取るようにすると非常に便利です。なお,保護用に負荷とシリーズにポリヒューズを入れてください。スイッチング電源に保護回路がついていますが,念のため,入れておく方がよいと思います。

さて,本機は放熱器もいらないくらいのはずですが,実験してみるとちょっと熱くなっています。

どうにも変なのでオシロで波形を見てみると方形波が崩れてしまっています。ということは12Vじゃない出力部分はそれだけ熱に変化しているので発熱します。スイッチング損失が増えてしまっている状況です。

原因がよくわかりません。Spiceで検証してみましたが,こんなことになりません。モータのようにインダクタンス分が多いと逆起電流でうまくスイッチングができず,発熱することがありますが,LEDは誘導性の負荷じゃないのでこうなるのはおかしいです。

仕方なく,スイッチング周波数を700Hzに下げました。これで方形波は崩れなくなりました。きれいな方形波として出力されています。損失も少ないようで,制御Trも触っても熱くありません。

でも,ちょっと気になることが出てきます。予想はしていたのですけどね.....。

やはり照明本体からピーッと音がします。かすかではあるのですが,スイッチング音がします。静かなときはやはり気になります。

と言う次第で,やはりもとの20kHzに戻したいと思います。でも,なぜ方形波が崩れてしまうのか,原因がわからず,しばらく悩んじゃいましたが,規格表を見直してみて目が点になりました......。

なんと,2SD317Aの遮断周波数fαeは25kHzしかありません。最初,MHzの間違いかと思いましたが,間違いではなさそうです。これじゃ20kHzの方形波が満足に扱えるわけがありません。方形波のスイッチングや増幅には10倍くらいの帯域が必要です。普通,シリコンTrはfαeはパワーTrでも3MHz以上はあるものです。 お前はゲルマニウムTrかよ。こんなに低いfαeのシリコンTrは見たことがありません。びっくりしました。

設計されたのが古い,と言うこともありますが,シリコンTrは普通,利得帯域幅積fTで表しますが,高いのが特長で,これほど低いfTのシリコンTrは知りません。シリコンTrはfTなんて高くて当たり前なので全然気にしていませんでした。ちなみに同時期に開発されたと思われる2SD297(NEC)でもfTは12MHzもあります。残念ながらこんなロートルのシリコンTrに用はありません。速攻でリストラしちゃいました.....。

偽物の2SC1815はちゃんと働いてくれますが,2SD317Aは力不足です。どうかしてる,という感じです。 さすがにちょっと腹が立ったので若い人に代わってもらうことにしませう。 

手持ちの東芝2SD525と交換しました。2SD525のfTは40MHzもあります。

 デューティが低いとき。

ぎりぎりの点灯状態です。さすがにLEDの順方向電圧がばらつくので,この状態だと点灯したりしなかったりするLEDが出てきます。スイッチング周波数は20kHzにしましたので,照明本体からスイッチング音は聞こえません。全くの無音となりました。

  デューティ47%のとき 

 フル点灯の状態です。

一応,念のため,放熱器をつけました。効果抜群で,きちんと放熱してくれます。さすがに点灯当初は全然熱くありませんが,1時間もすると結構熱くなるので,放熱器はつけておいた方がよいと思います。 

 実装状態です。

ケースはタカチのTW7-4-11を使いましたが,断然小さすぎです。もっと大きなケースを使ってください。どうにも何でも小さく作る癖があるので,ダメです。 フタの裏に小さなネオジム磁石を貼り付けてスチールの棚にくっつくようにしました。

 

   散らかってて恥ずかしいですけど.......。こんな調子です。

 明る~い! 電球色なのもいいです。

思わず,

  ♪明る~いSamsung, 明る~いSamsung, みんな~うち中,な~んでもSamsung~  っと! 

悔しいけど,もうこうなんだよな~と,替え歌を歌ってしまいました。この歌のもと歌が歌える人は40歳以上だと思います。

でも,本体に使われているLEDは中国深圳市の宏斉光電子という会社が作っているHT61-2301Wという1素子に3チップ入ったLEDのようです。すでにSamsungの時代は終わった? 

 

【おまけ‥‥‥Nゲージにも使えます】

 Nゲージ運転中。

背面に+,-のジョンソン端子がついているので不思議に思われた方もいらっしゃるかと思いますが,実は,今回の調光器は私が使っている鉄道模型のコントローラ(パワーパック)と同じ回路なので鉄道模型も運転できます!

早速,買ったばかりのKATOのED19を運転してみます。PWM式なので超低速でも運転でき,快適です。保護回路もついていますので,ご活用ください。逆転SWを入れれば,バックも可能です。 

 

2017年1月2日追記

上記,MOS-FETの出力回路を用いて改造しました。ご興味のある方はこちらをご覧ください。