2015年6月14日の日記
前回まで,中国Lepai社の新アンプLepy LP-2024A+の改造をしていました。ようやく一段落ついたので,前機種のLP-2020A+の改造をしたいと思います。こちらはその3で終わるつもりでしたが,LP-2024A+の改造をした結果を反映してさらに改良したいと思います。
LP-2020A+のOPアンプを交換したいと思います。ついでに,LP-2024A+では入力のカップリングコンデンサに三洋のOSコンを使ってよい結果を得られたので,こちらもOSコン仕様に変更したいと思います。
LP-2024A+はデジタルアンプICに米Tripath社のTA2024を使っていて,前段のプリアンプはテキサスのNE5532が使われています。後継機種だけあって,こちらの方がプリアンプはオーディオ用の高級品を使っています。一方,LP-2020A+はデジタルアンプはTA2020を使っていて,こちらのほうがTA2024より高級だと思うのですが,前段のプリアンプは汎用の4558を使っています。
私は過去,何度も4558を使っていて親しみがありますし,4558も決して音の悪い石だとは思わないのですが,NE5532と比べるとオーディオ用じゃないのでちょっと気になります。
それに.......。
今まで,使用されているのは新日本無線(JRC)製のNJM4558だと書いてきましたが,どうやら同社製のものじゃない,と言う指摘がインターネット上に出ています。
確かにロゴの字体が違いますし,普通のJRC製のICの型番の表記の仕方とも違うようです。秋月電子さんのwebにあるSOPの4558の写真を見ても全く表記が異なります。わざわざ "JRC 4558" と表記してあるのも怪しげで, ネット上の指摘がどうも正しい感じで,いわゆるリマーク品のような気がします。
半導体などの電子部品ではもとのメーカの表記を消し,新たにどこかの社名を入れたりするリマークが横行しています。特に最近の中国電子産業の隆盛に伴い,ひどくなっている感じです。特にテキサス(旧バーブラウン)のOPA627などのように高級なOPアンプはリマーク品が横行しており,eBayなどで安く出ているものは注意が必要です。特に売り手が中国や香港などといったところだと要注意で,やはり秋葉原などの正規の代理店で買う方がよいと思います。
もっとも,今回の場合,リマークをやったのはLepai社ではないと思います。おそらく,同社は直接,半導体メーカと交渉できるほどの規模じゃないので,半導体はスポット市場から仕入れているのだと思います。その時々で安い半導体を仕入れて自社の製品に組み込んでいるのでしょう。TA2020だってどうも日本のパチンコの廃棄品からハンダを外して使っているらしい,という話もありますから。
それに,Lepai社がわざわざJRCなんて表記する理由はありません。 "使用日製半導体" なんてうたってみてもそれで商品価値が上がるか,というとそれほどじゃないでしょうし,そもそも誰も中を見たりしませんしね。私のようなのは変なやつです。
ただ,半導体の流通市場においては日本のメーカ名の方が高く売れるから,ということでどこかの商社が勝手に "JRC" って書き直したんじゃないかと思います。そんなのが安く大量に出たので買い付けた.....という状況なんじゃないでしょうか。
もっとも,これらは最近の話ではなく,真空管でもたくさんありましたね~。特に,1960年代に米国の真空管産業が斜陽化するとオリジナルのメーカ名が簡単に消せるよう,シルクスクリーン印刷をするようになり,雑巾で拭くと簡単に消えちゃったりして困るものが多いのですが,これは真空管メーカがユーザ(セットメーカ)からの要望で,最初からこうなっているようです。GEとマーキングせずにセットメーカが自社のアンプに搭載するのでFisherという名前にしたいから,と言うわけですね。米軍AT&Tなど,特定の顧客向けにしか製造していない高信頼管などはこのようなことはなく,メーカ名もエッチングや塗装して簡単には消えないようになっています。
民生用の球はそればかりじゃなく,真空管自体が時代遅れとなって,いずれ不良在庫としてどこかへ売却しないといけないので最初からもとのメーカ名が消えるようにしておく,と言うこともあったんだと思います。
でも真空管の場合は管名の表記はフッ酸を使ってガラスの表面にエッチングしてあることが多く,管名は消えないようになっています。さすがに管名まで消えてしまったら使い物にならなくなりますからね.....。このおかげでもとのメーカを推定することができ,私はよくこの手で日本製の真空管を見つけたりしています。管名の表記の仕方でもとのメーカがわかります。日立やNECなどは熱心に輸出していたようで,米国のリマーク品でこういったメーカの球を見つけて買い込んでいます。
ただ,真空管の場合はメーカ名は消えても型番は消えないのでいいですけど,半導体はそうはいきません。型番も消して新しい型番にしちゃう,なんてことも朝飯前で,それに,真空管だと中身が見えるので全く違う真空管の型番をつける,と言うわけにいきませんが,半導体はそうではありませんし,何よりトランジスタにしろOPアンプにしろ,PNPとNPNを間違えたり,よほど定格が違うものじゃなければどんな回路でも使えちゃうので厄介です。OPアンプの場合はデュアルかシングルかを間違えなければ,極端な話,何でも使える,と言う訳なのでどうしようもありません。まあ,私もそれを利用してOPアンプを差し替えて音の違いを楽しんだりしちゃっている訳なんですけど.......(^^;)。
さて,LP-2020A+の方ですが,怪しげな4558を交換し,音のよいOPアンプに取り替えたいと思います。
LP-2024A+はオリジナルはNE5532で,こちらは紛れもなくテキサスインスツルメンツ社製のもののようで,NE5532は前回のブログの性能の一覧表にもあるとおり,性能は非常によく,このOPアンプよりよい性能のOPアンプは少ないし,音もよいので交換する必要はないと思います。といってJRCのMUSES8820に交換しちゃった訳ですけど......(^^;)。
LP-2020A+も同様にMUSES8820に交換したいと思います。
でも,LP-2024A+でも苦労しましたが, 結構これが大変です。LP-2024A+はDIPタイプのOPアンプを使っているので,スルーホール基板からもとのOPアンプを抜く必要があり,大変でした。一方,LP-2020A+はSOPタイプ(表面実装)のOPアンプなので,むしろこっちの方が簡単じゃないかと思いましたが,やはり難しかったです。
なにより鉛フリーハンダなのが困難の原因。融点が高くてなかなか溶けず,溶けたと思ってもすぐに固まってしまうので,簡単にもとのOPアンプがはがれません。無理にはがそうとしてランドまではがしちゃうとあとが大変なので,あきらめました。
そこで,仕方なく,とうとう,LP-2024A+のときと同様,やってしまいました.....。
結局,精密ニッパーで脚を切ってしまいました。その後,もちろん,ランドの部分に残っている脚をきれいに掃除しておきます。
さて,このまま,SOPタイプのOPアンプをハンダ付けしちゃえばそれで終わりなんですけど,やはりいろいろとOPアンプを交換したいと思ったので,変換アダプタをハンダ付けしちゃいました。
この場合,DIP 8PinをSOP 8pinに変換するアダプタが必要です。といって,実はこの逆はたくさんあるんですけど,DIP→SOPというのは非常に少なく,探すのに苦労します。結局,大阪の共立電子さんで見つけたので買いました。台湾製だそうです。
なんか,まるで子ガメが親ガメを載せているような格好で,笑っちゃいますけど,なかなか便利なものです。親ガメ? のDIPのOPアンプは直接ハンダ付けするようになっていますが,これにDIP 8pinのソケットをハンダ付けすれば,OPアンプを自由に交換できます。
よく見かけるSOP→DIP変換アダプタ。今回はこっちじゃありません。
よく,部品屋さんで売られているのはこっちの方です。ちゃんと親ガメが子ガメを載せるようになっています(何のこっちゃ?)。SOPのOPアンプをDIPの基板に挿すためのものです。こっちは値段も安いんですが,今回はこっちじゃありませんのでご注意ください。
非常にハンダ付けがやりにくいですが,何とか基板にハンダ付けしました。ICの向きにご注意ください。#1とあるところがNo.1ピンの位置です。 ちょっと隣の電解コンデンサと干渉するのですが,何とかなりました。もっと小型の電解コンを使うべきでした。
やはり前回で好成績だったJRCのMUSES8820を挿してみました。ソケット式にしたのでほかのOPアンプもテストできます。
さて,次は入力のカップリングコンデンサ。前回は汎用品を使っていましたが,今回はOSコンにします。LP-2024A+で使用してみてなかなか高音がきれいに出て,非常に音がよかったです。
なお, LP-2024A+ではここはスルーホールになっていて,アキシャルリードタイプの電解コンを使えますが,LP-2020A+では表面実装専用になっていて,ハンダ付けに苦労します。前回はリードタイプのコンデンサのリード線を曲げてハンダ付けしています。今回はちゃんと表面実装用のコンデンサを用意しました。
でも,ここはその3でも書いているように,容量的に10μF以上が必要なのですが,さすがにランドの間隔が狭く,10μFでも厳しいです。無理にSOPタイプのOSコンをハンダ付けしましたが,これならリードタイプを使って前回同様にハンダ付けする方がよかったと思います。おまけにサイズの点で10μFで妥協しましたが,カットオフ周波数の観点からできれば30μF以上のものを使いたいところです。
さて,いよいよハンダ付けが終わったらテストします。
ところが......。
残念ながらR ch.しか音が出ません。ガ~ン!!
気を取り直して配線のチェックです。どこかでハンダ付け不良があると思われます。ちょっと手間取りましたが,MUSES8820のNo.1ピン(L ch.出力)が,音量調整用のボリウムの#1ピンに行くところの導通がなく,やはりDIP-SOP変換アダプタの基板のところのハンダ付けが不良だったようです。
と言うような次第で,今回の改造はやはりかなり難しいです。皆さんもハンダ付けにはくれぐれもご注意ください。
さて,音ですが,やはり,音が出て一発,非常に驚きました。ワァ~ッと世界が広がったような感じで,高音が冴え,解像度も高く,また,ノイズレベルも非常に低い感じで,さすがはMUSESシリーズOPアンプと思いました。
決して皆さんにお勧めできる改造じゃありませんが,ようやくこれで最終版としたいと思います。
やはりカップリングコンデンサが10μFのため,前回の結果より悪化しています。-1dBで30Hz~35kHzと言ったところでしょうか。しかしながら,このf特は音量調整ボリウムが最大の状態で,一番,カットオフ周波数が上がる位置での測定です。普段はもっとボリウムを絞った状態で聴きますから,低域のカットオフ周波数はこれよりは低くなっているはずです。
太くなっているのは1MHzの搬送波が乗っているためです。これがデジタルアンプの特徴ですね。
2015年7月12日追記
本機にぴったりの電源を作ってやりました。ご興味のある方はぜひお読みください。