2015年12月7日の日記

 FMでニッポン放送を聴いてます。

今日,関東地区でもFMでのAM局の放送が始まりました。TBS,文化放送,ニッポン放送のAM3局がFMで同時放送を開始しました。昨日から東京へ出張だったので聴いてみました。

これは,2011年7月にTVがデジタル放送に完全に移行し,それまでアナログのTV放送の1ch.~3ch.が使っていた90~108MHzが空いたため,その有効活用として民放各局が求めていたものです。

実際,都市部ではマンションなどの鉄筋構造の建物に住む人が多いこともあり,家の中でラジオが聴けない,という苦情が寄せられていたこともあります。特に,近年ではインバータ制御のエアコンやデジタル機器が増え,これらの機器は中のクロックにより動作するため盛大なノイズを発しますし,ACアダプタなども昔はトランスを使った3端子レギュレータなどのアナログ電源? だったのに近年ではスイッチング電源が主流となっては家中ノイズだらけという状況で,家の中で元々ノイズに弱いAMは聴けないという状況です。

私の家は木造ですが,それでもこれらのノイズにより満足にAMは聴けない状況です。マンションだと電波が遮られるし,余計ひどいでしょう。鉄骨を伝わってノイズがばらまかれる,ということもあると思います。

一方,そもそもラジオが聴けない,という状況では聴取者が減り,CM収入に頼る民放では聴取者の減少は広告料の減少につながり,死活問題です。なおさらインターネットの普及で既存の電波メディアの存在価値が下がり,特に音質の悪いAMラジオはそれこそ存亡の危機というべき状況ですからね。それでAM局がFMでの放送を望むこととなったのだと思います。

ということもあったところへ,東日本大震災もあり,総務省では災害発生時の電波メディアによる情報提供も重要だと考え,2014年1月にAM局のFM帯での放送についての指針をまとめ公表しました。

確かに,radikoなど,ネット放送も普及している状況では今さら電波メディアでラジオを聴く必要もないですし,私もパソコンで仕事しながらラジオをradikoで聴くのが普通になっています。 といって,災害時にスマホやパソコンが動くか,というとそんなことは考えられず,やはり昔ながらのラジオが災害には断然強いので,電波メディアの存続を図る,ということも政策のひとつなのでしょう。当然のことだと思います。

ということで,2014年12月の北日本放送と南海放送を皮切りに各地で民放AM局のFM帯での同時放送が始まっています。3大都市圏では名古屋が一番早く,今年10月1日の本放送開始です。関東は今日です。関西地区は来春というところまでは決まっているようですがまだ具体的な期日は決まっていないようです。

さっそく,ラジオマニアの私は聴いてみようと思いました。

ところが,ラジオマニアなのにFM帯で108MHzまで入るラジオは手持ちがありません.......orz。

実はラジオのコレクションは全部実家においてあり,今,手元にあるラジオで108MHzまで聴けるのはありません。

海外のラジオだとほとんどFMは88~108MHzのもので,海外で買ったラジオだとワイドFMを聴くことができます。私も何台か持っています。FMはバンドの変更をしないとあまり日本の局は聴けません。特に,日本のFMはすぐ上にTVがあったこともあり,IFによるイメージ妨害を警戒してか85MHz以下の局が多すぎて,海外のFMラジオは日本に持ってくるとほとんど使えません。85MHz以上の局がある地域はTVの1ch.がなかった地域でしょう。実際,α-STATIONエフエム京都が89.4MHzなんてかなり高い周波数にあるのに対し,愛知県ではNHK FMの82.5MHzが最高です。 関西は1ch.はありませんでしたが,中京地区は東海TVが1ch.を使っていたせいでしょうか。なお,TVは関西が偶数のチャンネルで,中京地区が奇数というのはもちろん,混信を避けるためでした。

それに,余談ですけどNHKのFM局はどんな基準で置局されているか,というと驚くべき事実に気がつきました。

ラジオ深夜便で1:00以降はFMでもやっていますが,ある日,アナウンサーが "ラジオのバンドをFMに切り替えてください。ダイヤルを少し右に回すとお近くのFM局があります" なんて言ってました。そ~ゆ~決め方だったんですくゎあ~~っ!?

確かにダイヤル式のラジオでやってみるとどこでもこんな感じです。昔は民放のFMなんてほとんどなくて,FM帯はがらがらだったからNHKが勝手にこんな風に決めたのでしょう。 

ちょっと脱線しちゃいました。 

一方,海外製のラジオのAMはフィルタの帯域幅が広く,とてもHiFiなので愛用しています。なお,FM帯のバンド変更はアナログチューニング(バリコン)のものは可能で,自分でバンド変更をして聴いています。 

ところが,このせいでせっかく海外製のカナダMagnasonic社製のMM176Kというラジオを持っているのに,バンド変更をしてしまったので,今はワイドFMが聴けません。

このバンド変更は日本のラジオ用に88~108MHzだったのを76~90MHzにするもので,私のMM176Kでの改造で77.4~90.9MHzが受信できます。いずれこいつもきちんとワイドFM対応の周波数変更をしたいと思います。

また,TVが聴けると称して,76~108MHzになっているラジオが昔ありました。これだとワイドFMは聴くことができます。ただ,PLLシンセサイザ式のものだとTV帯でも0.1MHzピッチで移動できるものはOKですが,1ch. 2ch. 3ch. となっていて周波数が固定されているものはだめです。ちなみにTVの音声周波数はそれぞれ95.75,101.75,107.75MHzでした。これじゃ聴けません。 

ほかに聴けるラジオはないかと探してみますと,ソニーのSRF-18がありました。小型でありながらスピーカを2つ搭載し,スピーカでステレオで聴けるのはとてもうれしいです。感度も音もよくお気に入りです。ただ,これ,AMステレオに改造しようと買ったのですが,残念ながらAMのIFを取り出すことができず,あきらめました。

しかし,このラジオ,FMは76~90MHzで,ワイドFMに対応したものではありません。もっとも,アナログチューニングのFMラジオの場合,少し余裕があり,90MHzより少し上まで聴けるはずです。というのはFMもAMも電波には帯域幅があり,ぎりぎりの同調範囲とすると周波数帯ぎりぎりの局は聴けなくなってしまうからです。 

実際,ダイヤルを回してみますと90.5MHzのTBS,91.6MHzの文化放送までは聴くことができます。 とてもHiFiで,美しい音を楽しめました。残念ながら93.0MHzのニッポン放送は聴くことができません。もしかして,TBSと文化放送はこれを狙っていた......? のでしょうか。

という次第で,今日は本格的にソニーのSRF-18を調整してワイドFM対応ラジオにしたいと思います。 

アナログチューニングのラジオの場合,最終的に同調範囲の調整をして出荷されています。最近は部品代より人件費の方が高いので,アナログチューニングのラジオの方が部品代ではPLLシンセサイザ式のラジオより安いのに非常に数が減っているのはそのせいです。今回,その調整をやり直してFM帯を拡張したいと思います。

でも,これは非常に大変です。相当電気に詳しい人でないと勧めません。メーカの保証もなくなりますし,調整を誤ると使い物にならなくなりますので,自信のある人以外はおやめください。

まずはばらします。フタにねじがありますので,それを外します。ソニーは親切にねじの位置が "" で示されているので楽です。電池箱の中にもねじがあることが多いので気をつけます。やはり電池箱の中に4本ねじがありました。

 電池箱の中にもねじがあります。

ただ,ねじを外してからが大変で,なかなかフタが外れません。なんと,表側のボディと両面テープで貼り付けてありました....。

  FMアンテナの電線を外します。

 ようやくフタが外せましたが.....。

ようやくフタが外れますがこれでも調整はできません。残念ながら,基板はボディ表側に固定されていて,表のボディを外さないとバリコンが調整できません。

何とか基板を外して,バリコンのトリマを見つけます。調整するのはただ1カ所,基板上に "FM OSC" と書かれたバリコンのトリマコンデンサです。

   このトリマです。今の羽根の位置に印をつけておきませう。

FMに限らず,スーパーヘテロダイン方式のラジオは同調回路が2つあり,ひとつはアンテナ入力部で,もうひとつは中間周波数だけ離れた周波数を発振する局部発振器の同調回路です。

ラジオの受信周波数 fin は局発の周波数 fosc で決まります。 fin=fosc±fif です。fifはIFの周波数で,AMは455kHzで,FMは10.7MHzと決められています。AMの場合,PLLシンセサイザ式のラジオなどでは450kHzのことが多いですし,カーラジオでは半分の227.5kHzのこともありますが,FMは10.7MHzがほとんどです。

また,±の符号は普通は-のみです。これを上側ヘテロダインと言います。受信周波数より高い周波数を発振させるのが普通です。AMだと990~2060kHzを発振させるわけです。これが逆に下側ヘテロダインだと80~1150kHzを発振させることになり,周波数は14倍です。バリコンの容量はこの2乗に反比例しますので,約200倍の容量変化が必要です。こうなると1個のバリコンでは無理で,2個以上のバリコンを組み合わせないとAM帯全部がカバーできないことになります。上側ヘテロダインだと容量変化は4倍程度でOKですから,AM帯では上側ヘテロダインが使われます。

ところが,FMの場合,諸外国は+で上側ヘテロダインを用いて98.7~118.7MHzを発振させますが,日本だけはFM帯が76~90MHzと変な周波数帯なのにもかかわらず,さらに局発は-を使い,下側ヘテロダインで設計されています。という次第で,日本で使用されるFMラジオの局発は65.3~79.3MHzで調整されています。

何でこうなのか,というと日本の場合,すぐ上にTVの周波数帯があり,FMラジオの局発がTVの受信周波数に影響を与えてしまうからなのです。でした,というべきでしょうけどね。

なんか本当に日本だけ,FMの周波数はおかしいのに,局発まで変な設計になっていて困ってしまいます。

そこで,今回はこの調整をやり直すわけですが,受信周波数の上限を高くするだけなので,局発の周波数を少し上まで発振させればよい,ということになります。

さて,ワイドFM対応にするには実際,どこまで周波数を上げればよいか,ということになります。

総務省はワイドFMには95MHzまで割り当てており,そこから上はマルチメディア放送といって映像や双方向通信を行う放送が始まる予定です。地デジで使われている方式と同じものです。

といって,95~108MHz帯でマルチメディア放送が始まるからといって,従来のFMラジオで聴けるようにはなっていません。変調方式はデジタル変調で,周波数変調(FM)ではないので聴くことができません。

という次第なので,FMは76~95MHzにできればそれでよい,ということになると思います。 

そうは思うのですが,ソニーやPanasonicなど,ワイドFM対応と謳っているラジオのFMは76~108MHzとなっています。何でかわかりません。

私も一応,108MHzまで対応できれば,と思いましたが,実際はそこまでは調整できませんでした。ここまで対応するには局発コイルの調整か,あるいは取り替えが必要で,あきらめました。うっかりコイルまでいじってしまうと全部の調整をやり直しになってしまいますので。なお,本記事を読んで,オレもやってみよう,と思われた方は測定器がない限り,コイルの調整までは考えない方が無難ですので,ご注意ください。

 

テストオシレータで90MHzを発振させ,まずはラジオのダイヤルを一番高い方に回して90MHzを受信することを確認します。特にラジオと接続するまでもありません。テストオシレータに送信アンテナ代わりの短い電線をつけて発信させるだけでOKです。

実際,SRF-18でも一番右に回して90MHzがきれいに受信できることを確認しました。

次はバリコンのトリマをいじります。その前に,FM OSCと書かれたトリマの現在の羽根の位置に印をつけておきます。うっかり調整し損なっても元に戻せるようにしておきます。

これをすこし左に回し,できるだけ上の方の周波数が高くなるようにします。本機では98MHzくらいまであげることができました。

あとはこの状態で,基板にANTとあるところに1mくらいの電線をつないで実際に放送を聴いてみます。

無事にニッポン放送が聴けます。さらにダイヤルを高い方に回すことができますので,成功です。98MHzくらいまでは受信できそうです。

こうしてふたを閉めて完了です。無事にワイドFMが聴けるようになりました。

なお,こうすると当然ながらダイヤルがずれてしまい,いままで聴いていた位置とは異なる位置で受信しますので,ご注意ください。ダイヤルをプリンタで印刷して書き直す,ということとも考えましたが,まあ上限が95MHzになったくらいで,ずれはたいしたことないのでやめました。 

また,この調整法はアナログチューニングのラジオ共通の調整法です。ほかのラジオで無事にバリコンにアクセスできる状態ならこの調整法でワイドFMを聴くことができます。もっとも,最初にお断りしたとおり,よほど自信のある方でないとおすすめしません。 

それにしてもAM局がFMで,しかもステレオで聴けるので最高です。来年の夏はナイターをステレオで聴くことができるでしょう。AMステレオ開始時にはTBSが大相撲の中継をやっていて,折から若貴全盛の頃で,大相撲がとても人気があった頃でしたから,私もTBSのAMステレオ中継を聴いて楽しんでいました。またステレオで聴けるようにならないでしょうか。

でも,ちょっぴりラジオマニアとしてはAMの地位が下がりそうで,残念です。ワイドFMを聴いた人はもうAMには戻れないらしいですが,確かに,という気がします。

今後,AM帯での放送をやめてFMに移行する局も出てきそうです。 実際,日本の民放は戦後の開始なので,古い局だとAMの送信塔が経年60年といったところで,減価償却が終わる頃です。送信塔を建て替えるくらいならAMやめちゃえ,と考える局が出てきてもおかしくありません。とはいえ,AMの送信エリアとFMじゃ,断然AMの方が広いので,FMで中継するにはたくさんの中継局が必要になるのでそう簡単じゃない,という気はするのですが,今,日本中にボコボコ建っている携帯電話の基地局を借用すればFM中継局の問題は解決します。もしかして,携帯電話の会社と結託してAMやめちゃうところが出てくるかも.......。そのうち,AMはNHKだけ,という時代が来るのではないかと危惧しています。そして,誰もいなくなった......。

日本を含むアジア圏やアフリカ圏のAM局の混信や周波数不足が問題となり, 1978年11月,国際電気通信連合の国際主管庁会議でアジア,アフリカ,欧州圏はAM局の置局間隔が従来の10kHzから9kHzに移行することが決まりました。そのとき,先進国はAMをやめてFMに移行する,という議論がありました。あれから30年を経て,先進国はFMへ移行していくのでしょうか。実際,英BBCもAMで5局あったのを順次,FMに移行しています。ちょっと調べてみたらAMはもう1局だけのようです。なんか,英国のアマチュアラジオの団体BVWSがBBC-4のFMへの移行について反対していたのが昨日のことのように思い出されますけど。それに,そもそも欧州ではFMすらやめてデジタル放送(DAB)に移行することになっています。

日本ではFMのデジタルへの移行は断念することとなりました。FM東京ではマルチメディア放送を開始する予定です。将来,FMをやめてマルチメディア1本にする戦略があるのでは,と思います。と言っても,マルチメディアの先駆け,NTTのNOTTVは私の予想通り赤字続きで来年夏には早々に放送終了です。儲かるわけないと思ってました。ネット配信もあるし,単純にマルチメディアが成長する,というわけでもなさそうで,FMの次の世代は不透明です。そんな混乱の中,AM局は今後どうなるのだろうと考える今日この頃です。

2018年5月1日追記

親切な方からご教示いただきました。

今年初め,本機のワイドFM対応版がソニーから発売されたようです。型番はSRF-19とひとつ上がっています....(^^;)。

FMバンドは76~108MHzまでになっています。ワイドFMだけなら95MHzまでで十分なんですけど......。▲のマルチメディア放送対応じゃありません。これはFMでは同時放送されませんから,たとえ受信できても普通のFMラジオじゃ,聴けませんので。おそらく,海外向け仕様のもののFM下限を少し下げたのではないかと思います。 

正直言って,今どきアナログチューニングのラジオを製造する,っていったら組み立てや調整に非常に手間がかかりますし,SRF-18もワイドFM開始とともに製造中止か,と思っていたのでうれしいです。

さすがはソニー!! って思った次第です。 

     ☆          ☆          ☆ 

2019年3月23日追記

残念ながら,iruchanの予想が当たってしまいそうです。 

今朝の朝刊各紙で報道されていますが,民放連がAMラジオ放送の終了を2028年の制度改正を目指して総務省に要望するそうです。いよいよFMへの一本化がはじまりそうです。

現在,ラジオをはじめとして,ネットに押されて民放各社の収入が減少していて,中でもAMラジオは聴取者が減って,広告料収入が稼げない上,送信所の設備更新も迫っているので,危ないなと思っておりました。

公共放送としての使命が残るNHKはAM継続だと思いますが,民放はなくなってしまうでしょう。一応,民放連もFM送信所の経費がかさむ北海道や離島などはAM継続という方針を残しているようなのですが.....。どうにもiruchanにはAM廃止のための都合のよい口実,としか思えません。結局は設備が高価だし,離島では聴取者もいないので廃止です,と言うことになりかねないと思っています。 

ただ,FMもこちらも安泰でしょうか?

ケータイの5G化がまもなくはじまりますし,メディアとしての電波媒体がラジオではなく,ネットに移行しつつあるので,FM自体も危なそうです。ケータイがつながればネット放送で聞けるわけですしね.....。民放各局も,FM送信設備の維持経費を考えたらネット専業に移行,と言うことになりかねないと考えています。