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サブミニチュア管DCプリアンプの製作~その4・再びウクライナから愛を込めて~ [オーディオ]

2022年2月14日の日記

前回,現在作っているサブミニDCプリアンプのフラットアンプ出力に使用している,旧ソ連軍用6N16Bが1本,あえなく戦死? しちゃったので,急遽,ウクライナ軍に緊急増派要請することにしました。

1月31日に注文して,2月11日には届きました。なんと12日で,早っ!

ウクライナの球屋さん,郵便局,税関や空港の皆さん,どうもありがとう。

ということで,6N16Bの予備を緊急確保したのですが,ついでに何本か,また旧ソ連の真空管を買いました。

10J12S

10J12S.jpg Svetlana 10Ж12С

ご存じ,WEの310A互換球として,最近脚光を浴びています。キリル文字だと10Ж12Сです。

それにしてもどういう機器に使用していたのか......。まさか,共産党幹部向けにハリウッド映画の再生用として91Aアンプを購入してそれの予備,と言うことはないでしょう.....と,思ったのですけど,マジでそうかも。

日本製では,日本電気のCZ-501Dが互換球で,逓信省納品の電話用ですね。海底通信ケーブルなどの長距離通信に使われていた,無装架線輪(コイル)ケーブルのアンプ用に使われていたようですが,310A10J12Sもこういう機器に使われていたのでしょうか。

iruchanもCZ-501Dを何本か持っていますが,ヒータ電圧が違うし,電極の構造も違い,CZ-501Dはプレートむき出しで,シールドがついていません。ちなみに,よく310Aメッシュプレートなんて表現がありますけど,これは正確にはメッシュシールドですのでご注意ください。

CZ-501DはEf=3.5V,If=1Aなので直接,310Aの代わりに挿せません。ヒータは直列にして6.3Vを供給するとよいでしょう。


また,CZ-501Dは非常にきれいな球なんですが,なんかきれいすぎるし,作りも310Aと違うので,300Bと一緒に,310Aの代わりに使うにはちょっと違うよな,という気がします。

旧ソ連の10J12Sは今まで見向きもされませんでしたが,本家の310Aの入手が困難となり,値が上がっています。作りも310Aそっくりで,ちょっとガラスが下の方がくびれて細くなっているのと,ガラスに色がついていて薄く緑色になっている点が本家と違います。

実はこれはガラスの品質があまりよくない証拠で,マツダのST管が戦時中から戦後,こんな色のガラスになっていますけど,これはガラスに鉛が含まれているからです。

電極はよく似ています。iruchanのは310Aだとスモールパンチと呼ばれるタイプのようです。ただ,どうもメッシュシールドのものはなさそうだし,オークションや球屋のサイトに出ているものを見ると,Date Codeは1965年から1979年とかなり新しいものばかり。1950年代製,というのは見かけません。

それに,どうやらこの10J12Sを正規のWE 310AとしてWE同様,ベースに黄色くプリントして売っている場合があるようなのでご注意ください。裾すぼまりのガラスの外形や,ゲッターが共産圏特有の皿形ゲッターでしたら,もとはSVETLANAの10J12Sです。

と言うことから,うがった見方をするとこの球は内需向けではなく,外貨稼ぎのため,1960年代半ばから310Aの代替として輸出用として作られたのではないかと.....。一部の販社はベースに黄色いペイントでWestern Electric 310Aとプリントして売っていたのでは,という気がします。

amazonあたりでも売っているのは驚きますが,ebayでも1本$60~$120,と言ったところで,かつて310Aが3,500円くらいだった時代を覚えていますけど,それより高い値がついています。

旧ソ連では,米欧系,特に,なぜか欧州ではなく,米国球と同じ規格の球を多く作っていましたが,WEの互換球というのは珍しく,また,10J12SもサンクトペテルブルクのSvetlana工場製のみのようです。他の工場製のものは見られません。それに,どうも製造された数は少ないようで,ebayなどでもあまり見かけませんし,extremely rareと書いてあることも多く,希少な球のようです。なおさら,最初からニセWE310Aを作って西側のオーディオマニアを攪乱しようと狙っていたのか,という気もします。偽造ポンド札を作ってイギリスを攪乱しようとしたベルンハルト作戦かよって?

驚いたことに1970年代末まで製造されていたようで,iruchanのも Ⅸ 72 とプリントされているので,1972年9月の製造のようです。

10J12S-1.jpg サンクトペテルブルクで1972年9月に製造

なお,こちらでも書きましたとおり,現在のSVETLANAブランドの球は,このサンクトペテルブルク工場製のものではないので,ご注意ください。

今回,たった1本,と言うことだったのか,安く,たった£2.20で買うことができました。

最近,中国の湖南省・長沙市にある,長沙恒陽電子有限公司がPSVANEのブランドで310Aの復刻版を作っています。日本では2本で35,000円もするのに驚き! 確か,昔は300Bもそれくらいの値段だったよな~。

それでもよく売れているようです。実際に手にしたことはないですけど,WEBの写真を見ても出来がよさそうです。

6S41S

6C41S.jpg Ulyanov 6S41S

ご存じ,6S33S6С33С)の片割れです。ロシア文字では,6С41Сですので,そのまま,日本では6C41Cと書かれることが多いですけど,キリル文字ではCはSですので,ネット上も6C41Cで検索すると海外のページはほとんど出てきません。ebayも同様です。

レギュレータ用の大型管で,前から気になっていました。送信管の211845を除くと,単3極管としては同じロシアのGM70同様,最大級でしょう。製造は6S19Pを大量に作っていた,Ulyanov工場のようです。

6S33Sは巨大すぎるし,カソード共通で,シングルのアンプとしては使いにくいですけど,6S41Sは適当な大きさで,単3極管なのでシングルのアンプとしても使えるでしょう。

ただ,要注意なのはゲッター。

6S19P同様,こちらの記事にも書きましたが,ジルコニウムゲッターのものが多く,見た目,ゲッターがないので,どうも真空管としては変な感じがします。Eimacなど,高信頼を要求される送信管にはジルコニウムゲッターのものもあるのですが,真空管マニアとしては普通のゲッターの方がよいですね。

前から気になっていましたが,今回,通常のバリウムゲッターのものがありましたので,買いました。こっちの方がやはりかっこよいです。ちょっと見,8045Gみたいですね~~。

6J1B, 6J2B

6J1B, 6J2B.jpg Melz 6Ж2Б & Svetlana 6Ж1Б

今回,EQアンプには6J1Bを使用しています。米Raytheon社の5702と互換性がありますから,差し替えができます。キリル文字だと6Ж1Бです。

ただ,驚いたことに,以前こちらで書きましたけど,なぜか5702と電極の引き出しが同じインライン配列のものと,6111同様の円形のものと2種類あります。一体,どうなっとるんや.....。

使ってみると,円形配置の方がソケットに差してもぐらぐらしないし,使いやすいです。

と思っていたら,円形配置の6J2Bというサブミニ5極管があったので面白半分で買ってみました。特性は6AS6と同じらしく,Gm=3.2mSです。ちなみに6J1B6AK5同等で,Gm=5mSです。

ところが,どうも規格表を見ると,こいつもインライン配列のものがあるようです。いったい,ロシア人はなにを考えとるんや.....[雨]

工場はこういうサブミニ管を作っていた,Melz工場製のようです。Moscow Electro Lamp Worksが社名のようで,その名の通り,モスクワに工場があったようです。

iruchanの6J2Bは製造が1972年製で,ゲッターは古い短冊形のようです。以前買った,6J1Bの方は共産圏の球の特徴である,皿形ゲッターです。

続きはこちらへ.....。

          ☆         ☆          ☆

どうも独裁者プーチンがウクライナ侵攻を決意したようで,子分のベラルーシのルカシェンコと組んで,部隊を集結させているようです。クリミア半島が戦略上の要衝なので,いまもセヴァストポリに軍港がありますけど,そこの領有を恒久化し,ウクライナを支配下に置くため,軍事侵攻することを企んでいるようです。

最終的に併合するのか,それとも親米反露のゼレンスキー政権を倒して傀儡を立てるつもりなのか,かつてのハンガリー動乱(1956)やチェコ動乱(1968)と同じ図式となる可能性が高いように思います。

おそらく,欧米は軍事行動には踏み込めないし,天然ガスの供給を絶たれると困るので,経済制裁も形ばかりのものになるでしょう。結局,西側はなにもできない.....ということをもうひとつの赤い国が横でじっと見ているんじゃないか,という気がします。台湾を侵略しても西側はなにもしないだろう,ということを予想して今はオリンピックやりながら横目で観察しているのではないか,と思います。

iruchanは自由と民主主義,人権を守るウクライナの人を応援します。


2月15日追記

ロシアのサブミニ5極管で,電極の引き出しがインラインのものと円形のものがあることに気がつきましたが,どうやら,末尾のサフィックスで区別するようです。-Bがインライン配置で,-BPが円形配置のようです。

例:6Ж1Б, 6Ж1Б-В6J1B6J1B-V)→インライン配置

6Ж1Б-ВР6J1B-VR)→円形配置

なんですけど.....今回購入した6J2B6Ж1Б-Вとスタンプしてあります。やっぱりよくわからない.....[雨]


2月26日追記

eBayで買った球屋さんがNo longer a registered user.と出ていることを見つけました。2020年からのeBay sellerであったようですが,何かあったようです。

彼が無事でいることを祈るばかりです。


2023年8月5日追記

eBayでwatch listに追加しておくと,たまにsellerからofferが来て,値引きしてくれることがあります。

10J12Sが2本,ペアで出ていたのでwatch listに追加していたら,先日,$10引きのオファーが来ました。

2本で$93だったのが$83になるし,送料入れても$98だったので買っちゃいました。

ただ,驚いたのは売り手は米国人で,コロラドの住所だったんですけど.......昨日,届いたら発送地はロシアのチェリャビンスクでした。

amazonでものを買うと,最近,たまに中国から送られてくる,と言うことがありますけど,びっくりでした。

iruchanはウクライナを支持しているので,ロシア球もウクライナからしか買わないことにしていますが,これはしかたないですね......[雨]

そういや,チェリャビンスクって,2013年2月に隕石が落ちた街ですよね.......。

6J12S.jpg Svetlana製の10J12S

製造は1967年8月で,軍が受け入れたOTK-39という印が押してあります。かと思うと,ВЫПуск Ⅺ 1967というはんこもあり,英訳すると,release 11.1967の意のようです。

とすると,11月には軍から放出されたのか,という気がします。何でそんなに作った早々,放出しちゃったのか....[雨]

まあ,よくわかりませんが,iruchanはWEの310Aは4本しか持っていないし,10J12Sも非常に出来がよいし,いずれ300Bでアンプを作ろう,と思っているので,挿してみたい,と思います。でも,これって,呉越同舟って気もしますけどね.....[雪]

やはり旧ソ連の10J12Sは最近は高くなっているようで,その売り手は今,$120で売っています....[台風]


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JBL SG520もどきアンプの製作~その4~ [オーディオ]

2022年2月6日の日記

JBLのSG520型プリアンプを現代によみがえらせようと,オリジナルのTrを使って基板を作りました。キモとなるGEの2N508も入手したので,作ってみました。GEが作った最初のオーディオ用Trで,ゲルマニウムTrです。

SG520の音はこのTrの良さ,と言うことが言えますけど,SG520はオールゲルマじゃなく,フラットアンプは初段以外はシリコンTrの2N2712, 2N3638を使っています。SG520はオールゲルマ,という風説がまかり通っていますので,ご注意ください。特に,NPNのゲルマは作りにくかったので,NPN Trは大体,シリコンです。

それにしても前回の記事から9年も経っちゃってますね......(爆)。

どうも申し訳ありません。

部品としては,ほぼオリジナルと同じ半導体を入手できましたが,問題はCR類。特に,EQ素子が0.047μFと0.015μFとかなり大きな値です。

普通はEQ素子はマイカか,スチロールコンデンサを使うのですが,こんな大容量のものはないので,オリジナルはペーパーコンを使っているようです。

おまけに各段間のカップリングコンデンサは25μFや2μFなど,大きな値で,オリジナルのアンプではすべて電解コンデンサを使っています。

どうしてもバイポーラTrは入力インピーダンスが低いため,このようなシングルのアンプの場合は1段ずつ,大容量カップリングコンデンサを入れる必要がありますが,フィルムコンデンサはそう大容量のものは作れず,0.1μFくらいが関の山だったので,当時は音の悪い電解コンデンサを使わざるを得ませんでした。

これは半導体アンプでは最初から問題とされ,段間を直結する回路が工夫されますが,結局,1970年代後半にDCアンプが登場するまで,この問題は解決しませんでした。

と言う次第で,実を言うと,JBLのSG520は電解コンデンサの音を聴いているようなもの.....という気がするんですけどね。だから,オリジナルのPhilipsやMalloryの電解コンを探している方も多いと思います。といって,オリジナルと同じ年代の古いものは吸湿したりリークしてもうダメでしょう。

とはいえ,電源のフィルタやデカップリングコンデンサには電解コンを使わざるを得ません。iruchanは電解コンは日本製が一番,と思っているので,今回はニチコンのオーディオ用を使いました。

それと,オリジナルのEQ素子に使われているペーパーコンも吸湿してリークしているでしょうし,容量も経年変化してしまっていて,最初のオリジナルの音とはかけ離れてしまっている,と思います。

また,今はフィルムコンデンサでも20μFくらいのものがありますし,EQ素子も探せば大容量のディップマイカが手に入るはずです。

と言う次第で,iruchanはカップリングコンデンサに電解コンデンサを使いたくないので,今回,カップリングコンデンサは全部フィルムを使うことにします。お気に入りのニッセイ電機のフィルムコンデンサを使います。

EQ素子用には米軍用のディップマイカを使うことにしました。軍では何か,こんな大容量のマイカコンデンサが必要なんでしょうか。経年劣化や温度による変化がほぼない,という信頼性の高さが目的でしょうか。米国製だし,JBLのアンプにはぴったりでしょう。0.047μFと0.015μFがありました。SEコンほどじゃないけど,結構高かったですけどね.....。

と言う次第で,完成した基板はこんな感じになりました。

EQアンプ基板1.jpg 完成したEQアンプ基板

巨大なディップマイカに驚かされますけど.....。今にして思えば,無理してディップマイカ使わなくてフィルムコンでもよかったんではないかと思います。

カップリングコンは青いのがニッセイで,赤はニチコンのフィルムコンだと思います。

EQアンプ基板2.jpg 2N508です。

NJSとありますので,製造中止品を作っているNew Jersey Semiconductor製と思います。オリジナルのGE製も入手しましたけど,ちょっと怖いので,とりあえず,NJS製で試験してあとで交換するつもりです。しかし,それにしても今どき,2N508なんて古いTrの需要があるんでしょうか.....。

なおEQアンプは出力だけ,2N508じゃなく,2N2614を使っていますが,これは耐圧が足りないためです。2N508だとVCEO=-18Vですが,2N2614は-40Vです。

さて,ようやく基板が完成したので,通電して試験します。

こういうときに,昨年作ったトラッキングレギュレータが便利です。可変電圧出力ですし,マイナスも出力できますからね。SG520は-21Vが電源電圧です。

まあ,単に+出力の電源装置でも+と-を逆に接続すればいいだけの話なんですけどね....。

出力にオシロをつないで通電し,入力端子に指を触れてみるとオシロの波形が動くのでうまくいったようです。

sg520 1khz.jpg きれいな1kHzが出力されてひと安心です。

1MHzまでスイープしてもスムーズに出力波形が減衰し,高周波でのピークや発振もなさそうです。ホッ[晴れ]

特にノイズもなく,発振もしていないようなので特性を測ってみました。

基板テスト.jpg 基板テスト中。

☆EQアンプ特性

まずはEQアンプから。

EQ特性1.jpgEQアンプ特性です。

────が実測結果で,──がSpiceによるシミュレーション結果です。………は偏差です。

spice eq.jpg Spiceシミュレーションです。

最初,2N344を使ったら,ゲイン不足で,低域のEQ偏差が数dBにもなり,こちらで作った2SB54のモデルに代えてみたら正常です。実際に,実機も2SB542SB56で作ってみても面白いかもしれません。

Spiceのシミュレーション結果とほぼ一致していました。

実測結果はJBLの公式データとほぼ同じで,1kHzのゲインも32dBと,MMカートリッジ用としては妥当なところです。

低周波は偏差が小さいですが,高い方はどんどん離れていき,最大1.8dBもずれてしまいます。

iruchan的にはNGですけど,まあ,シングルのTrを使った回路ですし,何より古いTrを使っているので,こんなものか,とも思います。また,Spiceの結果とも一致しているので,設計上の問題のようです。特に,NF型イコライザでは,高域では100%負帰還がかかるので,こういう傾向があります。これは黒田徹氏の本にもあるとおり,CR1段のLPFで改善できますが,SG520の個性と思って,放置しようかもと考えています。

☆フラットアンプ

flat特性.jpgフラットアンプ特性です。

こちらはもっと驚き。-1dBでも600kHzくらいまで伸びていて,びっくりしました。普通,ゲルマニウムTrはfTが低くて,よくても数MHzなので,全然ダメだろう,と思っていました。ちなみに2N508でfT=2.5MHz,出力のエミッタフォロアに使われている,2N3215なんてfT=300kHzなんですけどね.....。2N27122N3638は不明ですけど,後者はシリコンですからずっとよいはずです。

ただ,ちょっとゲインが不足気味。フラットアンプなら20dBくらいは必要です。Spiceでも24.6dB@1kHzありますから,ちょっとゲイン不足です。

         ☆         ☆          ☆

ようやくこれでアンプ部はうまく動作することが確認できました。それに,とても特性は良好ですし,オシロで見ても非常にきれいで,動作も安定しています。

これはいい音がする予感.......悪寒かもしれませんけどね......[曇り]

と言う次第で,次回は電源のリップルフィルタを試験します。また,ケースもなんとかしたいと思います。


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サブミニチュア管DCプリアンプの製作~その3・ヒータ電源,EQアンプ編~ [オーディオ]

2022年2月1日の日記

製作開始から,もう1年ほどになろうとしています。

前回の記事からでも半年以上経ちました。すっかり泥沼にはまってしまっています.....[雨]

一応,ケースを購入し,穴開けして組み立てはじめました。金田式DCアンプの試験用にトラッキングレギュレータを作って重宝していますけど,残念ながら,真空管式の場合はバラックで試験するのは危険で,きちんとケースを組み立ててからにした方がよいかと思います。

案の定,EQアンプ用の+100V電源をショートさせてしまい,ものすごい勢いで火花が飛んでビビりました.....[雨]

電源基板のところで+Bの電源線を外しておけばよいのに,うっかり,アンプ側で外してしまい,それを放置していたら,シャシーに触れてバチッでした。

幸い,レギュレータの2SA653も飛ばなかったのでよかったですけど.....キモを冷やしました。

と言う次第で,とりあえず,EQアンプから試験をしているのですが,ここまででも大変でした。

☆ヒータ電源

まず,ヒータ電源は3端子レギュレータを使って,と思っていました。金田氏はLM317Tを使っておられますね。

でも,前回も書きましたとおり,LM317TだとモールドのTO-220なのが面白くないので,メタルキャンで,一回り下の定格のLM350Kを使うつもりでしたが,途中で仏トムソン製のTDC2912KMを入手したのでこちらにしました。こちらは-12Vの3端子レギュレータなので,球のh-k耐圧の点からもいいか,と思ったのですけれど.....。

残念ながら,使用した英国製のトロイダルトランスが海外製なので,当然,1次側が115V入力なのですが,2次側の6.3V端子を直列に使ってもレギュレータの出力が12.6Vにならないどころか,リップルが残っていることがわかりました。

さすがに実際に作る前に気がついたわけじゃなく,LTspiceでシミュレーションして,ということなのでよかったですけど。

LTspiceには3端子レギュレータはLT1086-12が含まれていますので,これでシミュレーションしてみると....

LT1086-12.jpg あちゃ~~~[雨]

全ヒータ電流は1.2Aとかなり大きいので,ちょっと心配していましたが...... 出力は12.6Vにならないし,リップルも残っています。こりゃ,あかんわ......。

一般に3端子レギュレータは入出力の電圧差は2~3V必要で,ある程度余裕がないとリップルが残ります。

ちょっと,今回のトランスでは12.6Vで点火するのは難しそうです。

ということで,結局,ヒータ電源もリップルフィルタにしちゃいました。

ついでに,前回同様,h-k耐圧の観点から+じゃなく,やはり-出力とし,-11~-12Vくらいが出力できるようにしたいと思います。

ヒーター電源(リップルフィルタ).jpg リップルフィルタです。

出力電圧は-10.6Vになっていますが,これはベース抵抗で変化できます。リップルは消え,また,立ち上がり(立ち下がり?)がスローなのもよいです。

まあ,真空管の場合は10%くらい電圧を下げても問題ないですし,球の寿命の観点からも低い方がよいと思います。

なお,制御素子は,前回,WEのMT管を使ったプリの時はにせ物の2SA649を使いましたけど,やっぱにせ物は嫌だなと思って,部品箱を探したら,大変お世話になっている河童さんから, 以前いただいた日立の2SB337があるのを見つけ,起用しました。

2SB337.jpg 日立の2SB337を使いました。

2SA649だとシリコンですが,2SB337はゲルマニウムです。定格はVCEO=-30V, IC=-7A, PC=30Wと十分すぎる定格です。番号からもわかるとおり,かなり後期のゲルマニウムTrですが,オーディオアンプ用に開発されたようです。エミッタ-コレクタ間飽和電圧VCEsat=0.29Vとシリコンが1V前後なのにくらべると非常に小さいです。

リップルフィルタの性能はTrのhFEに依存しますので,ダーリントン接続にしてhFEを稼いでいます。せっかくだから,ダーリントンの相棒は2SA1015の代わりに2SB54あたりを使ってもよかったかも....。2SA1015は東芝が製造中止にしたときに大量に買い込んじゃったんですよね......。

結果は大成功! オシロで見てもまったくリップルは見られません。

非安定化ヒータ電源.jpg フィルタコンデンサの波形です。

安定化ヒータ電源.jpg リップルフィルタ出力です。

整流直後は130mVp-pありますけど,リップルフィルタ出力ではリップルは消えました。一応,表示は128mVp-pと出ますけど,高周波の誘導ノイズですね.....[晴れ]

おまけにVCEsatが小さいのがゲルマの特長なんですが,そのおかげで,驚いたことに電圧降下は1V以下で,実際に作ってみると出力電圧は11.8Vと十分高く,また,完璧にリップルを取り除いてくれました。VCEsatが小さいので当然発熱も少なく,今回のはほんのりとも温かくなりません。

もし,LM317Tなどの3端子レギュレータを使っていたら,損失は3Wくらいになり,かなり発熱するので,大きな放熱器も必要です。リップルフィルタはなかなかよいです。

ヒータ電源基板.jpg 2SB337はコネクタ接続にしました。

フィルタ用コンデンサは秋月でニチコンの16V,33000μFが450円だったので使いました。さすがにデカい!

これだけ大容量のコンデンサを投入しても,リップフルフィルタなしじゃ,さすがに1.2Aもの負荷があると▲の波形のようにリップルは取れません。

ブリッジDiはインド・Panjit international製のショットキーSDI2100を使いました。100V,2Aの定格です。一昔前だとGeneral InstrumentsのW04あたりを使うんでしょうけどね.....。GI社も今はVishayのようです。

普通のシリコンDiを使ったブリッジはさすがに4個もDiを内蔵していると,結構発熱するので,ショットキーにしました。触ってもほんのり温かくなるだけでした。W04だと触れないくらいになるはずです。12AX7×4というような小型の真空管プリでもブリッジDiは意外に発熱するので,ご注意ください。このように小型のブリッジDiはすごく発熱するせいか,やはり壊れやすく,日本製は10年ほどで壊れるので,W04を使っていましたけど,これからはショットキーにします。

☆EQアンプ

さて,ヒータ電源も+Bのレギュレータも完成したので,EQアンプから試験します。

+Bのレギュレータは金田氏は日立の2SA566や東芝の2SB502のほか,NECの2SA653を使っておられますが,お気に入りのNECを起用します。やっぱ,メタルキャンだよな~~[晴れ]

EQアンプは無事に動作しました。

☆フラットアンプ

残念ながら,通電してみるとオフセットが8Vくらいあり,また,調整できません。

AOCの調整範囲を超えちゃっているんですね......[雨]

こういう場合,初段のオフセット調整をやり直さないといけないのですが,金田氏は共通カソードに半固定を入れていませんので,半固定で調整することはできません。

ということなのですが,初段の定電流回路の設定がまずく,初段の6N17Bの動作点が飽和領域になってしまっているのだと思います。

そこで,この定電流回路の設定電流を小さくしてみます。金田氏の設計では3kΩになっていて,定電流回路の出力としては1.8mAくらいです。

今回,真空管が金田氏の6112と異なり,旧ソ連軍用の6N17Bですので,少し特性が違います。

と言うことで,RS=4.3kΩとしてみますとオフセットは1V台となりました。

ところが.....。

どうも片ch.だけ、どんどんオフセットが大きくなっていきますし,出力に使っている6N16Bのカソードが妙に赤く光るな,と思っていたら,そのうちスパークしました。

おそらく,製作不良でカソードが熱で変形し,グリッドとタッチしたものと思います。せっかく軍用のOTKマーキングのものを使ったのに......[雨][雨]

なんや,スターリンもたいしたことあらへんな......。

この球が作られた頃はブレジネフですけどね。iruchanはこのデブのおっさん?はよく覚えています。金正恩なみにチョ~怖かった.....[雪]

もちろん,予備も買ってあったのですが,今まで,球の不良というのはLUXのKMQ-60で使用していた,NECの50C-A10が1本とラジオ用の中古の6X5GTがスパークしたくらいで経験がありません。まさか,NOS(新品未使用)という球でこんなことになるとは思っていませんでした。50C-A10の場合は耐圧ギリギリのLUXの設計が悪いでしょう。

しかたないので,またウクライナから6N16B緊急輸入することにしました。

なんで旧ソ連の球なのにロシアじゃなくて,ウクライナから買うのか.....iruchanはウクライナの人々を応援します。

ということで,また次回,です。


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